旧民法・法例(明治23年)

法律取調委員会 民法草案議事筆記 第60回

参考原資料

備考

  • 未校正のテキストデータです.
民法草案財產取得篇第六十回議事筆記
自第八百十四條至第八百二十七條、附保險ニ關スル議
(委員長)
保險論カラ先ニヤリマシヨウ
(淸岡)
私抔ハ別ニ研究ハシテ見マセンガ兩方同ジモノガ彼地ヘ行キ是地ヘ行キシテハ不都合ニハ違ヒナイカラ何方等カ片付ケタイ
(栗塚)
起案者ノ案ニ依リ起案者ニ相談スル方ガ宜イト云フ視モアツタガ併シソウスルト其コトニナルト議シテ置イテカラデナケレバ、去リトテ今何方ヘ置クガ宜シイカト云ヘバ誰シモ商法ヘ入レルト云フ說ガ多イノデス
(淸岡)
入レルナレバ商法デス
(栗塚)
又海上保險ノコトヲ研究シナケレバデ、ソウスルト陸上ノ方ハ民法海上ノ方ハ商法ト云フヨリモ一ツ此議場ニ於テ保險ノ是非ヲ言ハナケレバナラン、陸上保險モ彼方ハ入レタラ便利ト云フ說モアリ又先ヅ起案者ニ二人ノ意見ヲ聞イテ改メル說モアリマスガ茲ノ決議デ陸上保險モ海上保險モ併セテ彼方等ヘ置クトナレバ便利ガアロウカト思ヒマス
(委員長)
報吿委員ハ皆其論カ
(栗塚)
併シ報吿委員中ニモ起案者ニ問フテ起案者二人ノ意ニ任カシテ宜カリソウナモノト云フ、恰ド會社ノ所デモ起案者ノ意ヲ聞テ改メナケレバナランコトニナツテ居ルカラト云フ說モアツタガ併シ二ツヲ別ニ置クコトハ出來ヴ、セン一ツニシナケレバナランスレバ海上保險ハ是非商法ノ中保險ノコト詣、アルカラ陸上保險ハ何所ノ國デモ這入テ居ランカラ商法デアル民法ノ中ニ書イタ例モナイカラト云フ說ガ報吿委員中ニ多イノデアリ一、ス
(委員長)
二ツニセート云フナレバ保險條例ヲ別ニスルカ或ハ商法ニスルカニ外カナラン民法ニ半分書キ又特別法ニ半分書クト云フコトハ出來マセン
(南部)
左樣デス陸上保險ノ中デモ矢張兩方ニ跨テ居リマスカラ
(栗塚)
スレバ商法ノ報吿委員ノ所デ矢張之ヲ參酌致シワ、シテ彼方等ノ保險ノ所デ補ヒタイト思ヒマスソウシテハ如何デスカ
(委員長)
民法商法ニ保險ガアルカラ兩方ニ書ク譯ケニハ往カンカラ今報吿委員ノ論デ一緒ニスレバ何ウスルカ民法ニ一緒ニスルコトハ往キマスマイ
(元尾崎)
佛蘭西ハ何ウナツテ居ルカ
(栗塚)
佛蘭西ハ特別法ニナツテ居リマス
(元尾崎)
會社ノ組織ニ關シタコトハ商法ニアツタ方ガ當リ前ノ樣ニ思フ、ケレドモ「ボアソナード」ハ海上ノ方丈ケ別ニシテ陸上ノ方丈ケハ民法ニ入レタイト云フ旨意デアリマスカ
(栗塚)
左樣矢張商事デナイカラト云フ、民事デアルカラト云フニ過ギマセン恰ド會社ヲ民事デモ商事會社ト云フ民事ニハ土地ノ開墾ノコトトカ民事會社トスルヲ極メテ云テ居ルノデアリマス恰ド商法デ海上保險ヲ云フノ都合ダロウト思フ
(元尾崎)
斯ウシタラ宜カロウト云フ理由ハ出ナイ樣ダ何方等カ極メテ置クガ宜シイナ
(委員長)
極メテ置イタ方ガ宜シイカ特別法ニ悉皆スルカ又ハ商法ニ置クヨリ仕方ガナイ
(元尾崎)
商法ニモ屬シソウナモノデス
(栗塚)
會社ノ條ハ全體商事會社ト此方等ト引合シテ「ボアソナード」ト「ロエスレール」ニ問フ積リデアリマス
(元尾崎)
陸上保險ハ商法ニ入レルハ昨日讀ダ所ハ何フモ商法ニ這入ント權衡ガ惡イデ御座イマシヨウ
(栗塚)
事柄ハ會社契約ノ原則ヲ說イテ居ルノダカラ保險トハ少シ違フノデアリマス
(村田)
商法ニ入レルガ宜シイガ讀ム丈ケハ讀デハ如何二日バカリ通讀シタラ分ルデシヨウ
(南部)
讀ンデモ同ジコトデス
(元尾崎)
商事ヘ入レタ方ガ宜シイト思ヒマス
(西)
商事ハ商法ニ載テ居ル所ガ範圍ガ廣クナツテ居ルカラ一體ヲ申セバ矢張何所マデモ民法ニアルモノノ中カラ商事ニ關スル所ハ商法ニ引クガ當然デアリマシヨウガ今日ハ商法ノ範圍ガ廣クナリマシテ既ニ民事會社トシテ見ルベキモノモ幾ンド商事ニ這入テ仕舞譯ニナツテ居ル場合デアツテ見レバ陸上丈ケハ是非民法ヘ置カナケレバナラント云フ必要モナカロウト思ヒマス矢張一ツニ商法ニ纏メマシタ方ガ却テ混雜デナクツテ宜シイト思ヒマス
(委員長)
ソンナラ大槪一方ニ纏メル說ガ多ヒカラ其積デヤツテ見マシヨウ
(淸岡)
民事會社ヲ民法ニ置イタ以上ハ保險モ云ハナケレバナラン道理ハアリソウダ
(委員長)
宜シイカモ知レマセンガ斯ウ云フ理窟ニ書イテ會社ノコトモ「ボアソナード」ノ起案ノ上ニ付テ困ルカラ其譯ヲ言テ斯ウシヨウト思フガト言テ致シマシヨウ目的ハ此方ノ都合デ相談致シマシヨウ
(元尾崎)
海上法ト云フノガアリマスカ
(栗塚)
商法ノ中ニアリマス
(元尾崎)
一體陸上ノモノト少シ違フデシヨウ
(栗塚)
違ヒマス「ボアソナード」ノ論旨ハ陸上會社ハ商事デナイト云フノデアリマス
(淸岡)
民事會社ト云フノガアルカラネ
(元尾崎)
私ハ民事會社デモ商法ヘ入レルガ宜シイト思フノデス
(栗塚)
起案者ニ相談シタラ、目的ノ何タルヲ問ハズ無形人會社ハ皆商事會社トハ見ナイソレカラ無形人デナイモノハ民事會社ト云テ宜シイ
(西)
ソレナレバ宜シイ
(淸岡)
ソレナレバ宜シイ
(元尾崎)
赤十字社ノ如キハ何ウナルカ
(栗塚)
アレハ民事會社デシヨウ
(元尾崎)
會社ヲ結ンデ利ヲ圖ルモノハ商事トシテ利ヲ圖ルヤ否ヲ以テ區別シテハ如何
(南部)
赤十字社ハ會社デハアリマスマイ「ボアソナード」ノ主義デハ
(栗塚)
兎モ角モ無形人ヲ成シテ居ルノデアリマス、アレデ負債モ出來ルカラ橋本綱常ト云フ人一人デハナイダロウ
(南部)
各自ノ利益ヲ圖ランモノハ會社デナイト云フ
(栗塚)
會社ハ二人又ハ其他利益ヲ收ムル爲メニハ出來ヌト民法中ニアリマス
(元尾崎)
此法律ニ定メタ會社號ハ利益ノ配當ナイモノハ會社トハ云ヘヌト云フ原則ハナイ
(栗塚)
ソウデス
(元尾崎)
茲惠病院抔ニ係ル訴訟ハ何ウカ無形人ト思ハナケレバナラン
(委員長)
ソウ見ナケレバナラン
(元尾崎)
無形人ト云フモ會社ト云フモ同ジコトデス
(南部)
會社デ無形人デナイモノガアリマス
(村田)
航行保險ハ商事デナイ樣ニ思フナ
(委員長)
航行保險丈ケ置クコトハ出來マセン
(村田)
陸上保險ノ中航行保險ハ利益ノ爲メヤルノデハナイカラ會社ノ民事會社ニ於ケル如キデアリマスカラ商事ノ性質デハナイ
(南部)
航行ノ方ハ商法ノ方ヲ刪ルト云フ論ダネ
(村田)
ソウデス
(委員長)
商人ノヤルノハ民法ニ經テヤラナケレバナラント云フニナルネソレハ煩雜デ溜ランデシヨウ法律ノ解釋ニハ宜シイガ賣際ニハ困ルダロウ
(村田)
商事會社ハ商法カ
(栗塚)
會社ハ無形人ヲ成シタモノ縱令民事會社ト雖モ商法ニ讓ル積リデアリマス
(元尾崎)
保險抔ハ無論利益ノ爲メノ保險會社ニ違ヒナイカラ商事ニ入レルトシテハ如何
(委員長)
ソレデ孰レ起案者ニ聞ク積リデアリマスカラ起案者ノ考ヘモアルカラ兎ニ角商事ノ方モ研究シテ民法ハ民法報吿委員デ兩方トモ徒勞ニ屬スコトガアツテハ往カンカラ皆サンノ意見モヒドイ違ヒモナイカラ一ツニスルガ多數ナラソウ致シマシヨウ
(今村)
ソウ極マレバ實ハ報吿委員デ其保險ノコトヲ調ベナケレバナラン場合ニ際シテ居ルガ商法ノ方ニ聞クト商法ノ方デモ整テナイソウデ民法ト引合シテ見タソウダガ民法中カラ幾ツカ持テ入レタイ箇條ガアルソウデ商法ニ於テ其コトヲ云テ商法ノ方ノ報吿委員ト聞テシナケレバナリマスマイ
(委員長)
商法ノ報吿委員ト民法報吿委員ト相談シテ貰テソウ致シマシヨウ、ソレガ濟デカラ起案者ニ問テ宜カロウ
(本尾)
畏リマシタ
保險ノコトハ商法報吿委員ト民法報吿委員ト打合ノ上起案者ニ問フコトニ決ス
(委員長)
ソレデハヤリマシヨウ
第八百十四條朗讀ス
第二節 終身年金權
第一款 終身年金權ノ設定
第八百十四條 終身年金權ハ動產若クハ不動產ノ元本ノ移付ノ報酬トシ又ハ爲シ若クハ爲スヘキ勤勞ノ報酬トシテ有償名義ニテ之ヲ設定スルコトヲ得〔第千九百六十八條〕
又贈與又ハ遺囑ヲ以テ無償名義ニテ終身年金權ヲ設定スルコトヲ得〔第千九百六十九條〕
此終ノ場合ニ於テハ終身年金ハ恩惠所爲ノ方式、與ヘ並ニ受クルノ能力及ヒ財產ノ處分スルコトヲ得ヘキ部分ニ付テハ無償名義ノ所爲ニ特別ナル規則ニ從フ〔第千九百六十九條、第千九百七十條〕
(修正案) 第一項「爲シ」ノ下「タル」ノ二字ヲ加フ同條第二項左ノ如ク改ム又終身年金權ハ贈與又ハ遺囑ヲ以テ無償名義ニテ之ヲ設定スルコトヲ得同條第三項終身年金ヲ左ノ如ク改ム終身年金權ハ惠與ノ方式授受ノ能力及ヒ處分スルコトヲ得ヘキ財產ノ部分ニ付テ無償名義ニ特別ナル規則ニ從フ
(栗塚)
一項元本ノ移付ノ報酬トシ又ハ爲シタル若クハ爲スベキトシマシタ之ハ七百八十七條デ社員ハ自己ノ選任シタル又ハ選任スベキト云フ彼所ノ文章デ對イデ參タノデアリマス、次ノ項ニハ「又終身年金權ハ贈與又ハ遺麟ヲ以テ無償名義ニテ之ヲ設定スルコトヲ得」ト致シマシタ恰ド前項ト同ジ文例ニ致シマシタ第三項ハ此終リノ場合ニ於テ終身年金權ハト入レ恩恵上ノト云フ字ヲ惠與ト云フ字ニ直シマシタソレカラ「授受ノ能力」ト致シマシタ及ビ財產ト云フ字ヲ刪リ「及ヒ處分シ得ヘキ財產ノ部分ニ付テハ無償名義ニ特別ナル規則ニ從フ」ト致シマシタ
(槇村)
無償名義ノ中ノ特別ノ規則ニ從フノデスカ
(栗塚)
左樣デス
(委員長)
無償名義ニ於ケルト云フ譯ニハ往カンカ
(槇村)
左樣於ケル特別ナレバ宜シイデシヨウ
(村田)
無償名義ニ特別ナル規則ニ從フト云テモ宜シイノデスネ
(元尾崎)
右償名義ト云フノハ金ヲ出スノデスカ
(栗塚)
左樣デス
(村田)
無償名義ニデシヨウ無償名義ヲ支配スル特別ナル規則ト英文ニアル
(栗塚)
支配トアレバ宜シイ
(元尾崎)
其方ガ分ル
(槇村)
無償名義ノト云フガ當リ前ダナ
(元尾崎)
英文ニハ動產不動產トアルノデス
(委員長)
佛蘭西文デ何ウカ元本ノ意味デ書イテモ宜シイ
(元尾崎)
動產不動產デ宜シイダロウ
(南部)
元本ト云フノハアツテモ宜シイダロウ
(村田)
動產不動產ト云フト元本ト云フハオカシイノデス
(元尾崎)
日本文ト佛蘭西文トヲ用イタハオカシイ
(栗塚)
動產ヲ漫リニ使フヨリハ移動不動ノモノト云タガ何ウモ往カンノデス
(元尾崎)
動產不動產ト云フヲ日本デ使テ居ルカラ無理ニ佛蘭西言葉ヲ產ミ付ケナケレバナランコトハナイ
(栗塚)
ソウスルト斯ウ云フトキハ樂ニナルノデスガソレモ出來マセンカラ產ノ字ヲ付ケルノデス
(元尾崎)
移動ノ時分ト云フノダカラ
(西)
併シ此所ハ年金ト云フノダカラネ年金ハ是カラ出ルノダカラ動產若クハ不動產ノト云フテハ何ウカ
(栗塚)
事柄ハ元本ト云フコトガナクツテ分ルカ
(元尾崎)
分ル所デハナイ當リ前ソレデ宜シイノデス
(栗塚)
私ガ家ハ貴君ニ賣テ金ハ今拂ハンデモ宜シイ年金權ニシテ下サイト云フ資本ニハ相違ナイ
(淸岡)
產ノ元本ト云フハ二ツアル樣ダナ文字上工合ハ惡イネ
(村田)
元本ハイラヌナ
(委員長)
元本ト云フガナイト一方ノ報酬デアリサヘスレバ元本カラ出ルカラ利子ト見ヤセンカ利息ノ生ズルアリ生ゼヌノモアル利息ノ生ズルノハ元本カラ產出スガ利息ガ年金トナルト云フハ元本ト云フ字ガアレバ見ヘルカネ
(村田)
動產不動產ヲ得ルトキモ動產ノ元本ヲ得ルト云ハナケレバナランナ
(村田)
年金權ヲ生ズルハ別ダ
(西)
別ノ話デハナイソレガ旨意デアリマス
(南部)
註ニソウアル
(村田)
註ガ惡イノデス
(元尾崎)
一寸言テ見ルト元金ノ資本ト云フノカ
(栗塚)
動產不動產ヲ元金トシテ其元金ノ報酬ダ
(元尾崎)
ソウスレバ別ノコトニナリマス假令バ不動產ノ元本トシテト云フ家ヲ貴君ニ上ゲルカラ年金ヲ百圓ヅツ下サイト云フハ之ニ當ラン家ノ代トシテ假令バ千圓ノ家ヲ上ゲル家ノ代トシテ千圓來ルカラ年々幾ラ呉レト云フニナルノデアリマス、不動產ノ元本ト云フト家ヲ上ゲルデナクシテ家ノ代物ヲ一萬圓ノ家ハ歩行デナイ併シ家ノ代物ダ上ゲルニ依テ斯ウナルノデソレデハ借リニナランデシヨウ
(南部)
ソウハ見ヘマセン金ノ元資ト云フコトダ
(元尾崎)
金ノ元資ト云フコトハ云ヘヌ
(南部)
日本ノ言葉ニハ幾ラモアルノデス
(西)
私ハ年金ニ依テ生ズルコトヲ云フノダカラ元本ノ字ハ維持說デアリマス
(南部)
元本ト云フ字ガ置ク方ガ宜シイ
(元尾崎)
移付シタル財產トヤツテハ何ウカ元本ト云フト日本デハ金ノコトバカリニ聞ヘル
(南部)
ソウデナイ是迄元本ト云フ字ヲ用イテ居リマス
(元尾崎)
家デモ元本ト云フカ
(村田)
元本ト云フハ金ノコトデ元本ト云フト一ト塊リニ金ト云フコトニ大槪ニ使テ居ル
(淸岡)
「ナル」ニシヨウ
(委員長)
動產不動產ナル元本トシヨウ
(元尾崎)
元本ヲ置クカナ
(委員長)
宜カロウデハナイカ
(村田)
私共ハソウハ思ハヌガ元尾崎サンノ云フ通リ金デヤルヨウニ見ヘルカラ
(淸岡)
動產ナルナレバ宜シイ
(槇村)
元本ト云フ字ヲ是非入レナケレバナランナレバ其不動產引渡スカ其代リニ生ジタル利息ヲヤルト云フノダナ
(委員長)
ソレヲ見セルノデス
(元尾崎)
其家ハ自分ガ住フカモ知レン住フカラ報酬トシテ遣ルト云フコトモアルカラネ利子ガ出ルカラト限タコトハナイ
(委員長)
利益ガアルカラ云フノデス
(栗塚)
如何デスカ「ナル」ト極マツタ以上ハ進ミマシヨウ
(元尾崎)
移付ト云フハ直サヌカ
(栗塚)
讓渡トシタイ、ガ跡デ一定ニ改メル積リデス
(村田)
英文ニハ勤勞ノ報酬トアリマス
(栗塚)
佛文モソウデス寧ロ勤勞ノ報酬ト動產不動產ノ代價ト云フ方ガ實ハ宜シイ
(元尾崎)
終リノ場合ト云フハ
(栗塚)
終リノ場合ト云テ參タノデス
(元尾崎)
終リノ場合ト云フハ變ダネ
(村田)
之ハ使ヒ來タモノダカラ宜シイダロウ
(南部)
使ヒ來タモノダカラ宜シイ
(村田)
英文ハ財產ノ部分ニ付テト云フハ、處分シ得ベキ、財產ノ元本ニ付テトアリマスガ
(栗塚)
佛蘭西ハ此通リデアリマス
(元尾崎)
無償名義ノ特別ナルダナ
(委員長)
無償名義ニ於ケルカ
(栗塚)
無償名義ニ於ケル特別ナルヲ止メテ特別ナル規則ニ從フトヤツテハ如何
(西)
宜シイデシヨウ
(委員長)
宜ケレバ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ第一項二行目產ノ下ヘ「ナル」ノ二字ヲ加ヘ其他報吿委員ノ修正ニ決ス
第八百十五條朗讀ス
第八百十五條 終身年金ハ對價物ヲ供給シタル人ニアラサル他ノ人ノ利益ノ爲メ之ヲ要約スルコトヲ得
此場合ニ於テ終身年金ハ要約者ト諾約者トノ間ニ於テハ有償名義ノ契約ノ規則ニ從ヒ要約者享益者トノ間ニ於テハ贈與ノ規則ニ從フ然レトモ贈與ノ方式ニ從ハス〔第千九百七十三條〕
又終身年金ハ有償又ハ無償ノ名義ニテ移付シタル元本ニ付キ之ヲ扣留スルコトヲ得
(修正案) 第一項「他ノ人」ヲ「者」ト改ム
(栗塚)
年金ノ下「權」ノ一字ヲ脫シタノデス、此所デハ「他ノ人」トアルヲ「者」ト改メマシタ
(村田)
人ニアラザル他ノ者デ宜シイ
(栗塚)
重音ニナリハセンカ
(村田)
ソウデスカ矢張修正ガ宜シイ
(栗塚)
二項要約者享益者トアルハ要約者ト享益者トシテ「ト」ノ一字ガ這入リマス
(村田)
英文ニハ贈與ニ要スルト云フ字ガアルガ、アリマセンカ
(栗塚)
御座イマセン併シ意味ハソウデ御座イマス
(村田)
終リノ元本ト云フ字ガ宜カロウカ
(南部)
之ハ宜シイ
(栗塚)
終リノ元本ニ付之ヲ扣留スルヲ得ト云フノハ「無償名義ニテ移付シタル元本ノ上ニ」トシタイ
(元尾崎)
何ウ云フコトカ之ハ元本ニ付之ヲ扣留スルコトヲ得ト云フハ何デス
(淸岡)
贈與規則ニ從ヒ方式ニ從ハズハ何ウカ一寸六ケ敷イネ
(栗塚)
末項ハ報吿委員ノ說ハ維持シナイ、終身年金權ハ元本ノ上ニ付テスルコトヲ得ト云フ意味ダカラ第八百十四條ヘ置クベキダロウニ第八百十五條ニ云フノハ設定方法ノコトヲ云ハヌ場合ニ設定スルコトヲ得ト云フト終身年金ハ有償又ハ無償名義デ移付シタ元本ノ上ニ設定ガ出來ル意味ダカラ十四條デ云フベキデアルカラ第八百十四條ノ一二項ノ間ヘ入レテ呉レト云テ來マシタ
(南部)
スルト三項目ヲ又遺囑者ノ名義ニテ設定スルト云フハ宜シイ
(槇村)
元本ノ上ニ扣留ニ設定スルコトヲ得ト云フハ何ウ云フコトカ
(栗塚)
私ノ家ハ貴君ニ遣ル併シナガラ年金權丈ケハ之デ下サイト云フノデス
(元尾崎)
扣留ニ因ルト云フノハ何ウナルカ
(栗塚)
年金權トシテ取テ在ルノデス
(元尾崎)
扣留抔ト云フヨリ書樣ガアリソウナモノデス
(村田)
留保ダネ
(元尾崎)
其方ガ分リガ宜シイ
(栗塚)
留保ガ宜シイデシヨウ
(元尾崎)
義務ハアルガ無償名義デ只遣ルナレバ元本ハナイ筈ダガ何ウ云フモノカ
(栗塚)
用收權ト同ジデアリマス
(元尾崎)
只此方等ハ取ルノデシヨウ
(栗塚)
只物ヲ遣リ或ハ金ヲ取テ遣リマシテ其年金權丈ケハ留保シテ置クト云フノデアリマス
(元尾崎)
矢張用收デスネ
(南部)
元本丈ケハ只デ年金權ハ死デ仕舞ヘバアリマセン
(栗塚)
今ノ高利貸ハソウデ、先キニ利息丈ケ引テ仕舞フ
(元尾崎)
ケレドモアレハ無償デナイ
(栗塚)
アノ理窟ニナルノデス
(元尾崎)
無償名義ト云ヘバ例ヘバ有償名義ハ財產ヲ遣テ其代リニ年金ヲ取ルノカ
(栗塚)
否、年金ヲ取ルト云フデハナイ年金ヲ取ルノガ有償名義デハナイ只釣リヲ取テ物ヲ遣ル只物ヲ遣ラント云フノガ有償名義デス
(元尾崎)
家ヲ遣テ償フ爲メ年金ヲ取ルハ有償名義又何モ遣ラズ只取ルハ無償名義デスカ
(栗塚)
ソウデナイ
(元尾崎)
呉ル方カラ云フト無償名義物ヲ貰フハ年金權ヲ貰フノデス
(栗塚)
私ガ椅子ヲ貴君ニ只上ゲルハ無償名義デ併シソレニ腰ヲ掛ケル權ハ私ニ留保シテ置ク、ダカラ貴君ニ椅子ガ移テモ腰ヲ掛ケル權利ハ私ガ留保シテ居ルノデス
(元尾崎)
家ヲ遣テ其代リニ償フ年金權ヲ取レバ無償デハナイ
(南部)
家ノ所有權ヲ留メテ置虛有權丈ケ遣ルノデアリマス
(元尾崎)
無償デハナイデハナイカ
(栗塚)
虛有權ト支分權ト一ツノ物ニ就テアルソウスルト家屋ガ在ル其家屋ノ所有權ヲ貴君ニ賣タハ有償デアリマス只上レバ無償名義デソウスルト家屋ニ住居スルケレドモ又人ニ賃貸シテ宜シイ權ヲ私ガ留保シテ居タスルト名前丈ケハ貴君ニ移タノデ併シナガラ何ヲ貴君ガ得タカナレバ虛有權ヲ得タノデ其虛有權ヲ有償又ハ無償ト云ヘルデシヨウ
(元尾崎)
ソレハ分タガ年金ノ話ダ
(栗塚)
年金權ガソレデアリマス用收權卽チ年金權デアリマス糟ヲ遣テ正味ハ此方ヘ取テ置クノデ其糟ヲ有償又ハ無償デ出來ルノデス
(槇村)
百圓ノ家賃ノ家ヲ遣テソウシテ内五十圓丈ケハ此方ガ一生取ルト云フコトダ
(栗塚)
左樣デス
(元尾崎)
不動產ハ一萬圓ノ償ヒガアル之ヲ貴君ニ上ゲ私ハ年年百圓ヅツ年金ヲ下サイト云フ約束シタ之ヲ無償ダネ
(栗塚)
無償デアリマスソレデ留保爲スデアリマス
(元尾崎)
留保シテ無償ニナル年金ヲ取ルハ卽チ有償デハナイカ
(栗塚)
移付スルハ金ヲ取テ移付スルノデス
(元尾崎)
年々取ル年金デシヨウ
(栗塚)
年金ヲ代價トシテ設定ニナツタノハ或ハ年金丈ケヲ貴君ニ取テ置イテ虛有權丈ケ下スツタノカ
(元尾崎)
財產ヲ貴君ニ上ル其代リ年々百圓二百圓ナリ終身來コソウト約束シテ遣テ仕舞其設定部分ガ、只ハ遣ラヌ年金ヲ取ル爲メニヤルノデス
(栗塚)
第八百十四條ノ一項デ有償名義デアリマス年金ハ有償名義デアリマス
(元尾崎)
有償無償名義ト云フノハ何モ遣ンデ年金ヲ遣ルト云フノハ無償名義デアロウ
(栗塚)
ソウ
(委員長)
何モ遣ンデハナイ
(元尾崎)
スルト私ハ年々上ルトソレハ無償デシヨウ
(南部)
無償名義デ年金設定デス
(元尾崎)
スルト三ツニ分レテ居ルガ、無償名義ニテ移付シタル元本ト云フカ分ラン元本ヲ遣ラズ年金ヲ取ルノハ無償デシヨウ
(栗塚)
無償ノ年金設定デス
(元尾崎)
物ヲ遣テ年金ヲ取ルノダカラ無償ト云フハ分ラン
(栗塚)
有償無償ト云フハ移付スル上ニ付テ或ハ無償或ハ有償ノコトガアルト云フ移付ノ仕方ニ依ル又設定ノ仕方ニ依テ有償アリ無償アリソレカラ此所ハ何カナレバ留保デ有償設定無償設定留保設定ト三ツアルト申シテ宜シイ
(元尾崎)
何ウモ私ニハ分ラン
(村田)
今ニ追々分テ來ル
(栗塚)
私ハ母ニ年金ヲ遣テ居ル
(元尾崎)
ソウデシヨウソレガ無償デシヨウ此末項ハ母ガ金ヲ持テ貴樣ノ悴ダカラ遣ル併シ死マデ年金ハ留保シテ置度カラ息子ニ家屋ヲ呉レルガ年金丈ケハ留保シテ置クト云フトキデス
(栗塚)
母親ニ年金權ヲ只遣ルノデハナイ母親カラ私ニ公債證書モヤルカ年金權ニシテ置クト云フノデス
(元尾崎)
卽チ有償ニナルノダネ
(栗塚)
無償ダ
(委員長)
償ヲ取ラズニダカラネ栗塚ノ阿母サンガ公債證書千圓ノ公債ヲ五十圓ヅツ拂タラ有償ダガ只ダカラ無償デス
(栗塚)
無償名義ヲ移付シタル公債證書ヲ母親ガ留保シテ年金權設定スルノデス
(元尾崎)
公債證書ヲカ或ハ阿母サンガ家ヲ持テ居ルガ大キナ家ハ入ラヌカラ貴樣ニ遣ル其代リ乃公ニ年々年金ヲ來コセト云フスルトソレヲ宜シイト云フソレガ無償カ
(栗塚)
ソレハ有償デス
(元尾崎)
公債證書ダト無償家ダト有償カ
(槇村)
ソレハ往カン
(委員長)
品物ハ有償年金證書ハ無償デハ困ル
(栗塚)
家モ公債證書モ同ジデアリマス
(元尾崎)
何ウモ混ジテ居ル樣ダ
(委員長)
二項ノ所デ然レドモト云フノハ留保ニ限テ前ノ有償名義ノ契約ノ規則ニ從フト云フモ留保ニ從ハナケレバナランデシヨウ
(栗塚)
左樣デハアリマセン贈與ノ方式ヲ除ノ外其規則ニ從デアリマス
(南部)
ソウ致シマセント有償名義ハ無論這入テ居ルノデアリマス
(栗塚)
有償名義ノ贈興ノ方式ニ從フモ從ハヌモ御座イマセン
(元尾崎)
規則ニ從ヒ方式ニ從ハヌト
(栗塚)
今ノ方法ヲ殘シテ置クト殘ラズ遣ルコトハ出來マセントカ能力ガ何ウトカ云フノデ併シナガラ公證人ノ前デシナケレバナラン去リナガラ行ルベキ極方ニハ從ハナケレバナラン
(村田)
元本ト云フ主義ニナルノカネ元本ト云フト金バカリニナツテ居ル
(南部)
金ノ場合ニハ金ノミニ見テ居ルノデ前ニ定義ヲ示シテアルカラ動產不動產トナル元本ダカラ間違ヒナイ
(元尾崎)
動產不動產ニト云フト宜シイ
(栗塚)
財產ト云ヘバ宜シイノダ
(元尾崎)
ソウヤルガ宜シイ元本ト云フハ代品物ノトキモアルカラ
(淸岡)
今頻リニ論ガアルガ元本ニ付扣留スルコトヲ得ト云フヲ留保ニ因リトシテ宜シイ
(栗塚)
元本ニ因リ之ヲ設定スルコトヲ得トシタ
(淸岡)
原書ガソウカネ
(栗塚)
十四條ノ二項ト比較スルト分ル
(淸岡)
違フト思フノハ留保ニ因リ之ヲ設定ト云フト元本ヲ留保シタ場合之ヲ設定スルコトノ樣ニ聞ヘル豫テ年金權ト云フモノヲ取ランデ置クコトガ出來ルト云フノデハナイカ
(栗塚)
留メテ年金權トスルコトガ出來ル
(淸岡)
年金權ヲ移サント云フノデハナイカ
(南部)
ソウデシヨウソレガ留保デアリマス
(栗塚)
文例ハ用收權同樣ニシタノデス
(村田)
之ハ用收權ノ虛有權ヲ遣レルト同ジコトダ
(淸岡)
ソウ御覽ニナツテ居ルカラ此通リニ修正シタノデスガ違ヒハセンカト疑ヒヲ起シタノデアリマス
(南部)
違イハシマセン
(委員長)
貴方ノ解釋ハ同ジニナルヤ貴君ハ貰タ物ヲ返シ樣ニ矢張留メテ置イテモ再ビ返シト云フガ出來ル
(栗塚)
用收權ヲ留置ニ因テ設定スルコトヲ得ト彼方ニアリマスネ
(南部)
留保ヨリ留置ガ宜シイ
(淸岡)
彼所ニ使フノト同ジモノナレバ留保デ宜シイ
(槇村)
八百十四條第三項ハ此條字ノ如クシマシヨウ
(栗塚)
無償名義ニテ之ヲ設定スルコトヲ得トヤリマシヨウ
(委員長)
宜カロウ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ「年金」ノ下ヘ「權」ノ一字ヲ加ヘ二項「要約者」ノ下ヘ「ト」ノ一字ヲ翻譯ニテ加フ
第三項ハ刪テ第八百十四條第二項ヘ移シ左ノ如ク修正ス
又修身年金ハ有償又ハ無償ノ名義ニテ移付シタル元本ノ上ニ留保ニ因リ之ヲ設定スルコトヲ得
第八百十六條朗讀ス
第八百十六條 終身年金權ハ債權者若クハ債務者ノ終身ヲ期シ又ハ第三者ノ終身ヲ期シテモ之ヲ設定スルコトヲ得〔第千九百七十一條〕
此終ノ場合ニ於テ若シ契約カ有償ナルトキハ其組成ニ付キ右第三者ノ承諾ヲ必要トス然レトモ此承諾前ニ辨濟シタル利子ハ之ヲ取戻スコトヲ得ス
(槇村)
第三者デ宜シイカ
(栗塚)
左樣デス之ハ斯ウ云フコトヲ起草者ニ間フテヤツテ居ルノデ此所デ終身年金ト云フモノハ債權者カラ年金ヲ取ル人又ハ遣ル方ノ終身ヲ期シテ出來又第三者ノ終身ヲ期シテ出來ルソレヲ第三者ノ終身ヲ期シテト云フトキハ母ノ例デ云フト貴樣ニ家ヲ安ク賣テ遣ルカラ年金ヲ出シナサイト云フ母親ハ第三者デ母親ノ生テ居ル内ハ私ノ年金權ヲ來コセト母ニ直接ニ出サヌ私ニ出セト弟ニ對テ云フニ親ノ地面遣リタイ只遣ルガ或ハ貴樣金ヲ持テ居ルカラ母親ニ遣ルト直グト使フカラ母親ノ生テ居ル間ハ私ニ來コセト云フコトガ出來ルト云テ居ルノデ註ノ說明シヲ見ルトソレデハ斯ウ云フ場合ハ何ウカ佛蘭西ニモ伊太利ニモ白耳義ニモアルガ母ノ終身ヲ期シテ例ヘバ「ビスマーク」ノ生テ居ル間ハ御前ニ年金ヲ遣ルト云フコトハ其第三者ヲ期スト云フコトヲ見テ居ルノハ恰モ賭博ト同ジデ射幸契約ノ所デ第三者ガ縁ニ由リモナイ人ノ終身ヲ期シテ年金權ヲ彼我ノ間ニ與ヘテ置クコトニナルカソウ云フ場合ヲ見タカト聞ニヤツタノデス何ゼナレバ其場合ヲ見テ居ルト次ノ項ガ出テ第三者ノ受託ヲ必要トスル、「ビスマーク」ノ承諾ガナケレバナランガ恐ラクハ起案者ガ風ト入レタノデハナイカト思ヒマス
(元尾崎)
併シ餘所ノ國ニハ澤山アルゼ
(栗塚)
博奕同樣ニナリハセンカ
(淸岡)
八百十五條ノ一項ニアル供給シタル人ニアラザル他ノ人ハ卽チ第三者デ其第三者ノ終身ヲ期シテ設定ガ出來ルノダロウ
(栗塚)
左樣デス
(元尾崎)
ソレハ違フヨ之トハ違フ、八百十五條ノ一項ハ私ガ村田君ト契約シテ淸岡君ニ年金權ヲヤルト云フノダ
(淸岡)
所ガ有償ナルトキハ私ノ承諾ガナケレバナラン
(元尾崎)
十六條ノ場合ハ村田君ニ終身年金ヲ遣ルノデ
(槇村)
之ハ承諾ハオカシイネ
(南部)
之ハ質問中ダカラ
(委員長)
ソレデハ之ハ前預ケニシテ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ起案者ニ質問中ニ付未定
第八百十七條朗讀ス
第八百十七條 終身年金權ハ同時又ハ順次ニ數人ノ終身ヲ期シテ之ヲ設定スルコトヲ得〔第千九百七十二條〕
此場合ニ於テハ用收權ニ關スル第百三條ノ條例ヲ適用ス
(村田)
數人ノ終身ヲ期スト云フコトハ英ノ第八百十五條ニハ數人ノ享益者ノ爲メニ之ヲ設定スルトアリマス
(栗塚)
ソレハ意味ガ違イマス
(村田)
違イマスマイ
(栗塚)
享益者ト云フコトニナツテ要約者ト享益者ノ間ニ於テ贈與ノ規則ニ從フトスルト要約者ト託約者トナイコトニナルデシヨウ
(村田)
享益者ハ物ヲ貰フ丈ケノ話ダ託約者ハ這入ラヌ
(栗塚)
此所ハ債權者トサヘ御覽ニナレバ宜シイ
(元尾崎)
ソウ直シテ宜シイ數人ノ終身ヲ期シト云フト第三者モ這入テ居ルカ
(栗塚)
御前ガ死ダラ兄ニ遣ル兄ハ享益者デアルト云テモ宜シイ兄ハ何カト云ヘバ債權者カモ知レン詰リ年金ヲ取ルコトガ出來ルト云フノデアリマス
(元尾崎)
數人ト云フト數人ノ債務者ガ貰テ居ルカモ知レン或ハ第三者モ這入ルカモ知レン
(村田)
二人ノ爲メニモ遣レルト云フノダカラ此場合ハ三人アレバ三人ノ爲メニ遣レル數人ノ終身ヲ期シテト云フノダ
(元尾崎)
只數人ト云フト第三者モ這入ル樣ニ見ヘル
(村田)
ソウ債權者ハ何ウト云フコトガナケレバナラン
(元尾崎)
只數人ト云フハ譯ガ充分デナイ
(委員長)
前カラ續テ居ルカラ之ヲ離レテ見ルト迷フガ續ヲ見ルト迷フコトハナイ
(村田)
數人ノ債權者ハトカ何トカ書カント往カン
(栗塚)
要約者託約者ト云フガアルト云フヲ見セタノデ、スルト託約者ト要約者ハ享益者デアロウト見ヘルカラ年金權ハ本來ヲ云フト債務者ノ差ハナイ筈デ第三者享益者又債權者ガ享益者ニナルコトモアル、ソコデ享益者ト云フ者ハ始終第三者ニ對シテ使フ言葉ニナツテ居ルト云フコトニナツテ居ルノダロウスルト其字ヲ使フト第三者ノ命ト云フコトバカリデ債權者ノ命ト云フコトハ這入ラヌコトニナルカラソレハ惡イデシヨウ
(委員長)
債權者ト書イテモ享益者ト書イテモ詰リハ同ジダネ
(元尾崎)
ソレハ同ジダガ此譯文デハ數人ノ終身ヲ期シテトアルノデ十六條ニハ第三者ヲ期シテモ出來ルト云フガアルカラ數人ト云フハ第三者モ加ハル樣ニ見ヘル
(委員長)
ソレハ同時又ハ順次ト云フニ分ツノデ同時又ハ其次ト云フコトデ區別スルノデアロウト思フ
(栗塚)
同時又ハ順次ニ債權者ノ終身ヲ期シテ之ヲ設定スルコトヲ得デアリマスネ
(村田)
ソレナレバ宜シイ
(元尾崎)
ソウ云フ、意味ナノデシヨウ、ソウ直シマシヨウ
(委員長)
債權者ト云フコトヲ入レテモ宜シイ
(元尾崎)
其方ガハツキリ致シマス
(槇村)
スルト第三者モ債務者モ這入ラヌネ
(栗塚)
左樣デス
(委員長)
私ノ死マデ年金ヲ上ルトハ云ヘヌダロウ
(栗塚)
云ヘルノデス
(委員長)
十七條ハ
(栗塚)
十七條ハ貰フ方ノ人ノコトヲ云フノデス第三者ハ享益者トハ書ケヌト云フノダカラ
(村田)
佛蘭西文ノ儘カ
(栗塚)
大勢ノ命ヲ期シテトアルノデ年金權ハ頭ノ上ニ据ヘルコトガ出來ルトアリマス
(委員長)
八百十六條ヲ聞テ共ニヤツテハ如何
(栗塚)
ソウ願イマス
(槇村)
皆這入タ方ガ宜シイ
(元尾崎)
用收權ニ順ジテトアルカラ用收權ノ所ノコトバカリデス、順ト云フハ三人ニ順次年金ヲ遣ルト云フト親ニシテアツテモ若シ子ガ先ニ死ネバ孫ニ行クガ順次ダ
(栗塚)
債權者デモ宜シイガ第三者ノ終身ヲ期シテト云フコトハ返答ノ分り次第申上マス
(委員長)
ソレデハ先ヘヤリマシヨウム
本條ハ原案ニ決ス
第八百十八條朗讀ス
第八百十八條 有償名義ヲ以テ設定シタル終身年金權ノ契約ハ若シ年金權ヲ設定スル爲メ終身ヲ期セラレタル人カ合意ノ當時ニ於テ既ニ死亡シタルトキハ當事者双方其死亡ヲ知ラスト雖モ無効ナリ〔千九百七十四條〕
若シ右ノ人カ合意ノ當時ニ於テ既ニ罹リタル疾病ノ爲メ六十日ノ期間内ニ死亡シタルトキハ其契約ハ當然解除セラル〔第千九百七十五條〕
(村田)
之ハ無論ダ
(栗塚)
一項ハ彼ノ「ビスマーク」ノ話デス
(元尾崎)
二項ハ何ウナルノデスカ六十日ノ間ニ死ンデ双方ガ知テ居タカ知ラヌトカ書イテナイガ
(栗塚)
六十日ノ間ニ死亡スレバナイモノニシテ
(元尾崎)
前ニハ死亡ヲ知ラズト雖モトアリマスガ此所ニハ知ラズト雖モトハナイガ
(栗塚)
當然解除セラレテアリマス何ゼナレバ勿論射幸契約デアリマスカラ宜イトハ申シナガラ六十日内ニ死デ仕舞テ恰ド私ト貴君ト契約シテ私ガ年金權ヲ是カラ差上ゲルニ依テ家ヲ貴君ノ家ヲ私ガ買フタ年金權トシテ上ゲタ其人ハ直グニ死ダ六十日間ニ死ダ家ヲポント取テ仕舞バ酷ヒデハナイカト云フノデ六十日間ト云フモノガ這入タノデアリマス
(元尾崎)
ケレドモ知ラズニヤレバ酷ヒケレドモ知テ今大病ダト併養生ヲ能クスレバ往ルト一ツ乃公ノ家ヲ貴樣ニ遣ル併シナガラ乃公ガ終身假令バ千圓ノ家ヲ遣ルカラ年々二百圓來コセ其代リ明日ニモ死カモ知レン若シ乃公ガ十年モ生タラ貴樣ガ損ト云フコトヲ知テヤルモ無効力
(栗塚)
左樣デス如何賭博同樣ノ契約ニモセヨ餘リ酷ヒカラト云フノデス
(村田)
「ビスマーク」ノ身ニ關係ノアルモノハ分テ居ルカラヤロウト思フ者ガ死デ仕舞ヘバ是非金ヲ取ルト云フコトハ出來マセン
(南部)
佛蘭西ハソウナツテ居ル
(栗塚)
千九百七十四五條ヲ此ニ引イタノハ第三者ト云フハ起案者ノ云フニ第三者デハナイ法律ヲ知テ居ルカラ自慢デ說明シデスガ第三者ヲ享益者ト見ルノハ訝カシイト云フノデス
(元尾崎)
理窟ハ偖テ置キ知テ居テモト云フナレバ書イテ置ント間違フ前ニハ當事者双方死亡ヲ知ラズト雖モ無効ト云フテ宜シイ
(栗塚)
ソレデ宜シイデシヨウ
(南部)
右ノ人ガトアリマスカラネ
(元尾崎)
貧乏人ニコンナコトハナイネ、理窟丈ケハ六十日ト延バシタノハ何ウ云フモノカネ寧ソ佛蘭西流義ナレバニ十日ニモシテ置ケバ宜シイ
(南部)
註ニハ疾病云々トアリマス
(西)
註ニハアラザルベシトアリマスネ
(元尾崎)
併シ何ウデモ宜シイ
(栗塚)
家ヲ取タ人ハ苦敷イノデスネ
(村田)
刑法抔ハ歐打創傷二十日ガ極タツタガ之ヲ重クシタノデ怪我ヲシタノハ二十日以上トシタガ中々容易ニ癒ルモノデハナイト云フノデアリマシタ
(元尾崎)
三週間位デ死ヌ者ハ死ヌネ
(委員長)
佛蘭西ヨリ長クシタノハ理由ガアルノカ伊太利デモ引タノカ
(南部)
自分ノ考ヘデシヨウ
(槇村)
註ニハ疾病ニ罹リ二十日或ハ四十日ヲ經過シテ死セザル者ハ此限ニ在ラザルベシトアリマス
(元尾崎)
ケレドモ二十日位ヒバ宜シイノダロウ知ラズニ無論無効デ宜シイノダロウ
(南部)
詭譎ガアツタラ無論ダロウ
(委員長)
二十日ハ餘リ短ヒカラト云フノカモ知レン
(西)
矢張六十日位ヒバ宜シイカモ知レン
(村田)
宜シイデシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第八百十九條朗讀ス
第八百十九條 無償名義ニテ設定シタル終身年金權ハ設定者ニ於テ讓渡スベカラス且差押フヘカラサルモノト定ムルコトヲ得〔第千九百八十一條佛訴第五百八十一條〕
右ノ約款ハ設定證書中ニ記入セラレタルトキニアラサレハ第三者ニ之ヲ對抗スルコトヲ得ス
養料トシテ無償ニテ終身年金權ヲ設定シタルトキハ其年金權ハ贈與又ハ遺囑ニ於テ特ニ定メズト雖モ當然讓渡スヘカラス且差押フヘカラサルモノタリ〔同上第五百八十二條〕
此條例ハ贈與シタル財產ニ付キ贈與者ノ利益ニ於テ扣留シタル終身年金權ニ之ヲ適用セス
(修正) 第三項「當然」ノ上ヲ左ノ如ク改ム養料トシテ無償ニテ設定シタル終身年金權ハ
(栗塚)
末項「養料トシテ無償ニテ設定シタル終身年金權ハ當然讓渡スヘカラス且」云々ト改メ「拍留」ヲ「留保」ト致シマシタ
(元尾崎)
前ノハ養料デナクシテ何デモ出來ルノデシヨウ
(栗塚)
左樣
(元尾崎)
卽チ世襲財產ガ出來ルノデスネ
(栗塚)
世襲ハ何ウデシヨウカ
(元尾崎)
金持ノ町人抔ハ華族ニ世襲財產ガ出來タガ我々ニモソウシタイト云フ論ガアツタ
(委員長)
無償名義デハ遣ル方モ讓渡モ出來ズ差押ガ出來ズト云フト何ウカ
(栗塚)
イヤ、出來ル方デス終身年金丈ケガ出來ヌノデス
(村田)
所謂恩給ダ其他ノモノハ押ヘルコトガ出來ルノデアリマス
(委員長)
一項ノ有償名義デ終身年金權デモノハ押ヘラルルコトガ出來ヌカラ
(栗塚)
定ムルコトヲ得デアリマス
(委員長)
左樣カ
(栗塚)
末項ハ贈與シテ自分丈ケノ購與シタ人ハ御前ニヤルカ己レノ方ニ留保シテ置クト云フ年金權ノ債主ガ押ユルコトガ出來ルノデアリマス
(委員長)
無償デ恩惠ノミノモノニ限ルノダネ
(村田)
養料トシテト云フノガ肝腎ダ
(栗塚)
ソレハ別デス
(元尾崎)
之ハ至極宜ササウデス
(委員長)
宜シウ御座イマスカ
(槇村)
宜シイ
(委員長)
宜シケレバ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第八百二十條朗讀ス
第八百二十條 終身年金權ノ讓渡スヘカラサルコト及ヒ差押フヘカラサルコトハ是等ノ禁止ノ一ノミヲ要約シタルトキト雖モ二者共ニ存立ス
是等ノ禁止ハ決シテ滿期ノ利子ニ之ヲ適用セス
(修正案) 第一項左ノ如ク改ム終身年金權ノ讓渡及ヒ差押ノ禁示ハ其一ノミヲ要約シタルトキト雖トモ二者共ニ存立ス同條第二項「是等」ノ二字ヲ「此」ニ改ム
(栗塚)
之ハ餘リクダクダ敷イカラ「終身年金權ノ讓渡及ヒ差押ノ禁止ハ其一ノミヲ要約シタルトキト雖モ二者共ニ存立ス」ト致シマシタ
(元尾崎)
滿期ノ利子ト云フハ何ウ云フコトカ
(栗塚)
此等ノ禁止ヲ此禁止ト致シマシタ
(元尾崎)
早ク使テ仕舞ヘバ宜シイ年金權ヲ受取タラ直グ物ヲ買ヘバ宜シイ
(栗塚)
既ニ現ハレタル利子トモ申サレズ又利子ト云フ字ハスツカリ入レル樣子デアリマスカラ
(南部)
年金權限デ利子ト使フハ何ゼカ
(村田)
支拂ト云フコトダ
(南部)
其利子トハ少シ違フ
(栗塚)
期限ガ來テ拂ハレタルト云フコトデ御座イマス
(槇村)
終身年金ヲ拂フト云フ拂ヒ渡シタガ金ハ取ラルル渡シタ金ハ差押ヘラルルト云フカ
(栗塚)
公債證書ヲ假令華族ノ世襲財產ナリ其利子ハ押ヒテモ宜シイノデス
(槇村)
滿期ノ利子カネ
(村田)
利子ト云ヘヌモノモアル年々ノ割付金ノ如キモアルカラ
(槇村)
滿期ノ利子デハ分ランネ
(村田)
利子ト云フ字ハ直ル樣子デス
(槇村)
何ト直ルカ
(栗塚)
多分賦金トナル樣デス
(槇村)
ソレナレバ分ルガ
(南部)
賦金ノ滿期デアリマシヨウ
(村田)
拂ヲ期限ガ來タナラバト云フノダ
(栗塚)
前ノ契約編ハ皆利子トヤツテ來テ居リマスカラ
(委員長)
一項ハ何ウデスカ
(元尾崎)
分テ居リマス
(槇村)
差押フルコトハ出來マセン契約シタモノナレバ讓リ渡スコトモ出來ルト云フカ
(栗塚)
左樣
(元尾崎)
滿期ト賦金ニ適用スルト云フ法律ノ理窟カモ知レンガ酷ヒヤウダ
(栗塚)
滿期ノ賦金ニ適用ストナルト酷ヒノデスガ仕合ニ適用センノデス
(元尾崎)
債主ノ爲ニハ酷ヒ年金ヲ貰テ居ル表ハヒドイ取テ來ル直グニ取ラルノデスカ
(南部)
仕方ハアリマスマイ
(淸岡)
ソレヲ引立ラレテハ差押フベカラザルノ効能ガナイ
(栗塚)
年金權ヲ始メカラ、況ンヤ滿期ニナツテ係ルコトハ出來マセント云テアルカラ
(淸岡)
ソレヲ以テ生命ヲ繋デ行ク爲メ確イ約定スル所ガ折角シタ約定ガ賦金ヲ受取ル直グ引立ラレテハ明日カラ生活ガ出來ヌ
(南部)
直グ米ヲ買ヘバ宜シイ
(元尾崎)
併シ買フ迄ニ取ラレテハ困ル
(村田)
ソレハ孰レ賦金ノ取レタ時分ニハ返ヘス積リデアロウ
(淸岡)
ソウ云ヘバ世襲財產モ同ジコトダカラ
(村田)
百年ノ中ハ世襲財產ハ誰カ幾許取ルト分テ居ルガ之ハソンナ世話ハ出來マセンノデスカラ
(淸岡)
貴君ガ金ヲ貸スニモ無抵保デ貸スコトモナイソレヲ貸セバ其者ノ不調法ダカラネソコヲ云ヘバ同ジコトデス
(村田)
元サヘ押ヘラレナケレバ權ハヌト思フ若シモ押ヘラレタナラバ又人ガ金ヲ借ルコトガ出來ル
(元尾崎)
ソウ云フ論ナレバ華族世襲財產ダ
(淸岡)
世襲財產ノ樣ナ精神ニ何分カ保護シテ宜シイ
(村田)
世襲財產ハ宮内大臣カラ戶主ニ知ラレテ居ルカラ宜シイ之ハソウハ往カヌ
(元尾崎)
之ハ何ウモ仕方ガナイ
(委員長)
宜カロウ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第八百二十一條朗讀ス
第二款 終身年金權ノ契約ノ効力
第八百二十一條 債務者ハ年金權ヲ設定スル爲メ終身ヲ期セラレタル人ノ生存中ハ其年金權ノ利子ヲ拂フコトヲ要ス但特別ノ合意アラサルトキハ其年金權ノ買戻ヲ行フコトヲ得ス〔第千九百七十九條〕
(修正案) 「要ス」以下ヲ左ノ如ク改ム要シ且買戻ヲ行フコトヲ得ス
(栗塚)
之ハ少シ改メマシタ旨意ハ同ジヨウデスガ原文ヲ直譯スル旨意ガ宜シイト思ヒマス「生存中ハ其年金權ノ利子ヲ拂フコトヲ要シ且買戻ヲ行フコトヲ要ス但シ買戻ニ付特別ノ合意アルトキハ此限ニ在ラス」ト致シマシタ
(元尾崎)
終身ヲ期セラレタルハ期シタルデハナイカ
(槇村)
期シタルト云フト他ノ人カラニナルカラ
(栗塚)
年金ト云フコトガ元來惡イノデ年金ト云フヨリモ歳入トカ何トカ云ヘバ嵌マル
(元尾崎)
年金デ宜シイダロウ
(南部)
歳入ナレバ年金ダロウ年金權ノ賦金トテスレバ其方ガ宜シイ
(元尾崎)
生存中ハ年金權ヲ拂タツテモ宜サソウダ
(委員長)
年金ヲ賦金トヤツタラ分ルデシヨウ
(元尾崎)
賦金ト改ムルカ
(栗塚)
跡デ殘ラズ改メマス
(委員長)
先ヅ假リニ賦金ト讀ンデ居タラ宜シイデシヨウ
(南部)
宜シイデシヨウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第八百二十二條朗讀ス
第八百二十二條 利子ハ債權者日割ヲ以テ之ヲ得取ス但其支拂ヲ月又ハ一層長キ時期ヲ以テ爲スヘキトキト雖モ亦同シ
然レトモ若シ利子ヲ前拂スヘキトキハ既ニ始マリタル時期ノ利子ハ全部負擔セラル〔第千九百八十條〕
(修正案) 左ノ如ク改ム利子ハ其支拂ヲ每月爲スヘキトキ又ハ一層長キ時期ヲ以テ爲スヘキトキト雖モ債權者日割ヲ以テ之ヲ得取ス然レトモ若シ利子ヲ前拂スヘキ場合ニ於テハ支拂時期ノ始マリタルトキ其期分ノ利子全部ヲ拂フヘシ
(栗塚)
本條ハ修正シテ、「利子ハ其支拂ヲ每月爲スヘキトキ又ハ一層長キトキ時期ヲ以テ爲スヘキトキト雖モ債權者日割ヲ以テ之ヲ得取ス」ト致シマシタ
(元尾崎)
利子ト云フハ賦金ノコトカネ
(栗塚)
左樣デス
(村田)
之デ宜シイ樣デス
(元尾崎)
日割ヲ以テト云フハ
(栗塚)
日割勘定スルコトデス
(元尾崎)
年金ハ一年幾ラデ年金デシヨウ
(南部)
到底死ダトキノ話デス
(栗塚)
一年幾ラト見テモ三ケ月デ來コセトカ月幾ラ來コセトカ云フコトモアリマシヨウ、然レドモ若シ利子ヲ前拂スベキ場合ニ於テハ支拂時期ノ始マリタルトキ一期ノ分ニ付全部ヲ拂フベシトアリマス
(村田)
踏込ダラ取レヌト云フノダナ
(栗塚)
期ガ始マランニヤルコトハ出來マセン
(元尾崎)
三ケ月分一月ノ始メニヤルト約束デアル一月ニ死ンデモ一ケ年ハ取レルト云フノダネ
(栗塚)
左樣デス
(淸岡)
拂フベシデ宜カリソウナモノデス始マリタルトキハトヤリタイガ何ウカネ
(栗塚)
始マリタルトキニデスネ
(元尾崎)
支拂時期ノ始マルトキハ一ケ年ノ全部ヲ拂フベシデ宜シイダロウ
(村田)
ハノ字ガ重ナルネ
(槇村)
前ノ爲スベキトキガ分ランダロウ
(栗塚)
後ノ一層長キ時期ニト云フヲ見セタイ爲メニ入レタノデアリマス
(委員長)
又ハガ、アルカラ一層長キハ入ラヌカモ知レヌ
(栗塚)
「每月」デ切テモ宜シイ
(委員長)
又ハナクモ分ル是迄ノ文例デス
(栗塚)
每月ヲ以テ爲スベキト云フ方ニ讀ムネ
(委員長)
見テモ宜シイ
(淸岡)
每月爲スベキヲ刪テ每月又ハ一層長キ時期ヲ以テカ
(栗塚)
一層長キ時期ニ於テ爲スベキトキト雖モカ
(槇村)
ソレナレバ宜シイ
(栗塚)
兎モ角モ爲スベキハ刪リマシヨウ「利子支拂ヲ每月又ハ一層長キ時期ニテ爲スヘキトキト雖モ」カ
(槇村)
ソレナレバ宜シイ
(栗塚)
兎モ角モ爲スベキハ刪リマシヨウ「利子支拂ヲ每月又ハ一層長キ時期ニテ爲スヘキトキト雖モ」カ
(村田)
「以テ」ガ宜シイヨ
(元尾崎)
每月爲シ又ハ一層長キ時期ヲ以テ爲スベキトキト雖モトシテ「爲ス、爲スヘキ」トシテハ何ウカソウ云フ文例ハ澤山アリマスゼ
(栗塚)
宜シウ御座リマシヨウ「シ、ス」デ宜シイ
(西)
時期ニトヤツテハ往カンカ
(元尾崎)
ソレハ宜シイ每月又ハ一層長キ時期ニトシテ置ウ
(栗塚)
宜シイ
(淸岡)
トキハノ「ハ」ハ入レント往カント思フ
(西)
些ト其氣味ガアルネ
(淸岡)
前拂ヲシテト云フ理窟ハ宜カロウ
(南部)
ソウ見テモ差支ナイ
(村田)
全部ハ前拂ノ理窟ニナル
(栗塚)
トキハト入レヨウ差支ナイ
(南部)
同ジコトダゼ
(西)
前拂ハ一期ノ始マツタトキデナケレバト云フ樣ニ見ヘルカラト仰シヤルガ若シ前拂ニスル場合ニ於テ支拂時期ノ始マツタトキハ其一期ノ部分ト云フコトニ云テモ構ヒマセン
(委員長)
此所ハ前拂ダカラ時期ノ始マルトキニ拂フノデナイ始メテカラ拂フト云フノデアリマスカラ、先ヘヤリマシヨウ
本條ハ「每月」ノ下「爲スヘキトキ」ト入レノ說ヲス採ラス其他報吿委員ノ修正ニ決ス
第八百二十三條朗讀ス
第八百二十三條 利子ノ支拂ナキトキト雖モ若シ債權者カ解除ノ權利ヲ留保セサルトキハ其支拂ノ缺無ノ爲メ契約ノ解除ヲ請求スルコトヲ得債權者ハ賣却ヨリ生スヘキ元本ヲ以テ利子ノ支拂ヲ保スル爲メ債務者ノ財產中ニテ利子ヲ受クルニ足ルヘキ部分ヲ差押ヘ之ヲ賣却セシムルコトヲ得ルノミ但他ニ參同スヘキ債權者アルトキハ之カ參同ヲ受ク〔第千九百七十八條〕
年金權カ無償名義ニテ設定セラレ又ハ贈與シ若クハ贈遺シタル元本ニ扣留セラレタルトキモ亦右同一ニ處辨ス
(修正案) 第一項左ノ如ク改ム債權者ハ解除ノ權利ヲ留保セサルニ於テハ利子支拂ノ缺無ノ爲メ契約ノ解除ヲ請求スルコトヲ得ス只債權者ハ債務者ノ財產中ニテ利子ヲ受クルニ足ルヘキ部分ヲ差押ヘ之ヲ賣却セシメ其賣却ヨリ生スヘキ元本ヲ利用シ利子ノ支拂ヲ得ルノミ但他ニ參同スヘキ債權者アルトキハ之カ參同ヲ受ク
(槇村)
之ハ修正ガ能ク分ル
(西)
宜サソウデス
(村田)
債權者ハ解除ノ權利トアリマスガ此上ニ契約ト云フ字ガアリマスネ
(栗塚)
成程佛蘭西ニハ御座イマセン
(村田)
元本ト云フハ一二ハ物ニ依テ違フネ物ト金ト違フネ
(南部)
ソレハアルカモ知レン
(栗塚)
旨意ハ異リマセン
(元尾崎)
二項ハ無償名義ニテ設定セラレ若シ何モヤランデ只年金ヲ幾ラヅツ遣ロウト極メテモ若シソレヲ拂ハヌトキハ財產ニ係テ行クノカ
(栗塚)
左樣デス
(南部)
無償名義ニテ品物ヲ遣タデシヨウ
(元尾崎)
ソウバカリデナイ
(栗塚)
設定セラレテソウシテヤラヌトキハ取ルコトガ出來ルノデス契約ガ成立テ居ランカラ變ナモノデアルカラ迷惑デハナイカト思フガ仕方ガナイ
(村田)
貰ヘバ取ル權利ガアルカラ
(西)
隨分酷ヒガ併シ仕方ガナイ
(栗塚)
條件履行セシトキハ止ヲ得ン
(元尾崎)
缺無ト云フハ何ウ云フコトカ
(栗塚)
支拂ガナカツタト云フノデス
(元尾崎)
缺無ト云フハ全テ遣ラヌ樣ニ見ヘルガ
(村田)
是迄言テ來タラ仕方ガナイ
(元尾崎)
缺無ト云フハオカシイデハナイカ、之ハ遣ロウト云テ三文モ遣ラヌ樣ニ見ヘル初メ一年遣テ二年目ニ遣ラヌノモ這入ルト何ウカ
(委員長)
容易ニ斯ウ云フ字ヲ變ヘテハ往カン是迄極テ居ルカラネ今少シナサルト耳馴レテ來マス、元金取戻シト云フナレバ分ルガ契約解除スト云ヘバ何ウモ解除ト云タラ全テ止メテ仕舞ハト云フ自分ガ利子ヲ貰フコトヲ止ムト見ヘルガ何ウカ
(栗塚)
一方デ家カ何カ遣タ物ヲ返サナケレバナラン
(委員長)
ソウ見ヘヌデハナイカ留保センダロウ利子支拂ノ缺無ガアツテモ契約ノ解除ヲ請求ガ出來ヌト云フ之ガ出來ルモノトスレバ利子ヲ貰フコトハ出來ヌト云フニナル
(栗塚)
一方ガ解除デアリマスカラ契約解除ヲ請求スルコトガ出來ル
(委員長)
元本ヘハ關係ヲ持マイ
(栗塚)
契約解除ハ何カナレバ初メ年金設定シタヲ止メテソレヲ有償名義ナラ遣タ物ヲ取消スノデス
(委員長)
ソコ迄云フノデスカ
(栗塚)
左樣デス
(委員長)
元金取戻シ請求カ
(南部)
契約ハシタ有償名義ノ契約デ八百十五條移付ノ保充トシテ貰テ其元本ヲ取還シテアリマスカラ
(槇村)
何トカナイト足リヌ樣デス
(村田)
分リマシヨウ
(栗塚)
解除ト云フモノハ契約編デ明瞭デアリマスカラ解イテ元ノ儘ニナルノデス
(村田)
元ノ姿ニナルノデスネ
(委員長)
土地ナレバ土地ヲ遣テ無償名義デ遣テ或ハ有償名義デ遣タコトト見ル此利子ト離レナイナレバ宜シイガ然ルニ利子丈ケハ消滅シテカ
(栗塚)
其トキ解除トハ書ケマセンカラ
(委員長)
分リハスルデシヨウ分レバソレデ宜シイ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第八百二十四條朗讀ス
第八百二十四條 年金權ノ債務者ハ年金權ヲ設定スル爲メ終身ノ期セラレタル人カ利子滿期ノ日ニ生存セシ證カ供セラレサルトキハ其利子ノ支拂ヲ拒絕スルコトヲ得〔第千九百八十三條〕
生存ノ保證書ハ其人カ現居所ノ地ノ「コンミユーヌ」長又ハ受持區公證人ヨリ之ヲ交付ス〔千七百九十一年三月六日ニ決議シ同二十七日ニ頒布シタル佛國勅令第十一條、千八百三十九年六月六日ノ勅令第一條〕
(修正案) 第一項「生存セシ證カ」ヲ「生存セシ證ノ」ト改ム同條第二項「現居所ノ地ノ「コンミユーヌ」」ヲ「現住所ノ戶」ト改ム
(栗塚)
前項ヲ「生存セシ證ノ」トシテ次ハ「現住所ノ地」ト云フ所ニ至テ報吿委員中ニ於テモ困却致シマシタ、今日ハ之ヲ區戶長ト致シタ所ガ市町村ト云フモノガ出來マシタカラ市且町ノ戶長モ入レナケレバナラン
(委員長)
市町村長デ宜シイダロウ
(栗塚)
ソレデハ足リマセンノデ、所ガ市長ハ假令バ東京府ニシテモ市長ガアツテモ矢張戶長ガアルノデス
(委員長)
市長ニナレバ戶長ガ市長ニナルノダ市長ヲ戶長ガ兼ヌルダロウ
(栗塚)
東京ハ矢張戶長ト云フモノヲ置クトアリマススルト戶長モ入レナケレバナランソレカラ今村君ノ說デ「現住地ノ戶籍掛リニ又ハ受持官吏ニ」トシタラ宜カロウト云フ論モアリマ、シタ
(委員長)
ソンナラ身分取扱人トヤツテハ如何
(西)
人事編デハ身分取扱人ト致シマシタ
(栗塚)
生存ノ保證書ハ其人ノ現住地ノ身分取扱人又ハ受持區公證人ヨリトスルカ
(委員長)
身分取扱人トシテ置キマ、シヨウ
(元尾崎)
戶籍取扱人トシテハ往カンカ
(村田)
身分取扱人トスルト何ダカ官吏ガ身分取扱人ニ見ヘル
(元尾崎)
戶籍取扱人トシテ宜シクハナイカ
(栗塚)
戶籍取扱人區戶長ト云ヘバソレガ身分取扱人デス
(委員長)
戶籍トハ云ヘナイノデ戶籍ト云フ方ハ一軒ノ家ニ何人居ルカヲ調ベル方デ身分取扱人ハ人間ハ如何ナル人間カ誰ノ子デ幾日生ンデ何歳ト云フ方ダカラ今ハ格別ハナイガ内務省ト裁判所デスルノダカラ先ヅ假ニ身分取扱人トシテ置キマシヨウ
(元尾崎)
假ニソウシテ置キマシヨウガ生存セシ證ヲ供セラレザルハ何ウカ
(村田)
英文ハ證ヲ己レニ供セラレザルトキハトアリマス
(栗塚)
利子滿期ノトキハ生存セシコトノ證ナキニ於テハトヤリマシタガソレヨリモ證ニ供セラレザルガ宜シイダロウト云フノデアリマス
(槇村)
證ニ供セラレザルト云フト向フカラ此方ヘ供シナイトナル
(栗塚)
債務者ニデスネ終身ノ期セラレタル人ハ利子滿期ノ日ニ生存セシ證ガ債務者ニ供セラレザルトキ私ハ否デゴザルト云ヘル
(村田)
己レニトシテハ如何
(南部)
生存ニ供セラレザルデ宜シイ
(元尾崎)
證ヲ己レニ供セラレザルトキデ宜シイ
(栗塚)
若シ年金權ヲ設定スル爲メ終身ノ期セラレタ人ハ利子滿期ノ日ニ生存セシ證ヲ債務者ニ供セラレザルトキハ債務者ハ利子ノ支拂ヲ拒絕スルコトヲ要スト云フノデ、ダカラ債務者ニ供セラレザルトシタノデアリマス
(南部)
證ヲ債權者ヨリ供セザルトキハト云フカ
(槇村)
其方ガ宜シイ
(委員長)
期セラレタルトキ債權者ヨリトシテハオカシイ
(元尾崎)
ソウデアリマセン
(南部)
其間ノ人ガ死ダリ生タリシタ時分死デ仕舞タラ證書ヲ持テ往クニハ及バヌ
(村田)
死ダラ臭レト云フノダカラ
(元尾崎)
ヤラレ方デスゼ
(委員長)
債權者ヨリト入レテ宜シイデシヨウ
(元尾崎)
債權者ヨリ供セラレザルトキハ支拂ヲ拒絕スルコトブ得カ
(栗塚)
註ニハ年金ヲ取ル人ハ債權者ヨリ供セザルニアリマス
(槇村)
其方ガ宜シイ
(栗塚)
「證ヲ債權者ヨリ供セサルトキハ其利子ノ支拂ヲ拒絕スルコトヲ得」ト致シマシヨウ
(委員長)
宜シイデシヨウ、ソレデハ是デ食事ニ致シマス
本條ハ左ノ如ク修正ス
第八百二十四條年金權ノ債務者ハ若シ年金權ヲ設定スル爲メ終身ノ期セラレタル人カ利子滿期ノ日ニ生存セシ證ヲ債權者ヨリ供セサルトキハ其利子ノ支拂ヲ拒絕スルコトヲ得生存ノ保證書ハ其人現住地ノ身分取扱人又ハ受持區公證人ヨリ之ヲ交付ス
(委員長)
始メマシヨウ
第八百二十五條朗讀ス
第三款 終身年金權ノ消滅
第八百二十五條 若シ有償名義ニテ設定シタル年金權ノ債務者カ利子支拂ノ爲メ約束シタル抵保ヲ供スルコトヲ缺キ又ハ供シタル抵保ヲ減少スルトキハ債權者ハ契約ノ解除ヲ請求スルコトヲ得但既ニ得取シタル利子ノ何等ノ部分ヲモ返還スルノ責ニ任セス〔千九百七十七條〕
右同一ノ權利ハ贈與シ又ハ贈遺シタル元本ニ付キ扣留シタル終身年金權ノ本主ニ屬ス
其解除ハ若シ年金權ヲ設定スル爲メ終身ノ期セラレタル人カ終局判決前ニ死亡シタルトキハ之ヲ宣吿セス
(修正案) 第三項「終局判決」ヲ「確定判決」ト改ム
(村田)
英文ニハ雜時スル爲メト云フ字ガアリマスガソンナ字ハ使テアリマセンカ
(栗塚)
支拂ト云フ字ガ使テ居ルノデ矢張出スコトデシヨウ
(槇村)
何々又同ジト書イタノト此所ニハ本主ニ屬ストアリマスネ何フ云フモノデスカ
(栗塚)
同一ノ權利ハ終身年金權ノ本主ニ屬スノデアリマス
(淸岡)
本主ニモ屬スト云フ旨意デスカ
(栗塚)
詰リ終身年金權ノ本主ハ右ノ權利ヲ有スデアリマス
(淸岡)
矢張同樣ニスルト云フ譯ケデシヨウ、右ノ同一ノ權利ハ本主ニ屬スト云フハ上ノ前項ヲ云フ樣ニ聞ヘル
(南部)
同一ト云フノガアルカラ右ト同ジ權利ハ是々ニ屬スト云フノダカラ前ハ一般ヲ云ヒ此ハ特別ニ贈與購遺ヲ云フノダカラニモト此ヘ云フ譯ニモ行キマスマイ
(委員長)
購與贈遺ニ付テ區別シタノデアリマスネ
(西)
元本ノ上ニトナルノデシヨウ
(栗塚)
ソウデシヨウ
(元尾崎)
確定判決前ニトヤルノデスカ
(栗塚)
左樣デス
(南部)
詰リ確定スベキ判決デス判決シテ仕舞タラ宣吿セシバ無論ノ話デス
(元尾崎)
終局判決デ往キマセンカ
(南部)
中間判決終局判決ト訴訟法ニアリマスカラデス
(村田)
宜サソウデス
(淸岡)
死デ仕舞タラ仕樣ノナイ話ダ自然ニ解除ニナルカラ、ナゼコンナコトガ入用カネ、併シ事柄ハ分リマス
(委員長)
宜シクバ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第八百二十六條朗讀ス
第八百二十六條 普通法ニテ許シタル銷除卽チ無効及ヒ廢罷ノ原由ハ終身年金權ニ之ヲ適用ス
終身年金權ハ尙ホ要約セラレタル買戻、更改、合意上ノ釋放、混同及ヒ時効ニ因テ消滅ス
然レトモ終身年金權カ第八百十九條及ヒ第八百二十條ニ從ヒ法律ノ條例又ハ人ノ處分ニ憑リ讓渡スヘカラス又ハ差押フヘカラサルモノナルトキハ其終身年金權ハ時効ニ係ラス
總テノ場合ニ於テ利子ハ滿期後五ケ年ヲ以テ各別ニ時効ニ係ル
(修正案) 第三項「人ノ處分」ヲ「契約」ト改ム
(栗塚)
本條ハ人ノ「處分」ト云フヲ契約ト改メマシタ
(村田)
普通法ノ許シタルト云フコトハ如何デシヨウ英文ニハ法律ニ於テ普通ニ許サレタリトアリマス
(元尾崎)
何ウ云フコトデスカ例ヲ擧ゲテ承リタイ
(栗塚)
未丁年者トカ詐俗ニ出デタトカ承諾ガナケレバ往カヌトカ云フノデス年金權ヲ契約ト云タ以上ハ云フマデハナイ
(村田)
民法普通法ト云フノハ面白クナイ
(南部)
普通ノ規則ヲ適用ストヤツタゼ
(元尾崎)
許可シテ買戻シタトアリマスガ
(南部)
買戻シノ契約ヲ初メカラシテ居ル
(元尾崎)
要約アル買戻シトスルカ
(栗塚)
併シセラレタル位ヒ宜サソウデハアリマセンカ
(元尾崎)
要約シタルノ方ガ分リ易イ
(栗塚)
シタリデモ意味ハ害シマセン
(南部)
幾ラモアリマスカラ一般ニ直サント往ケマスマイ
(栗塚)
併シ分ルコトハ分リマスネ
(淸岡)
此所等ハ分ランコトハナイ
(元尾崎)
年金權ハ五年經テバ遡ルコトハ出來マセンガ
(栗塚)
左樣デス五ケ年丈ケ取レル終身年金權ト云フ義ハナイノデスカラ差押フベカラザルモノト渡スベカラザル者ハ時効ニ係ラヌ併シナガラ利子丈ケハ五ケ年デ時効ニ係ルト云フノデス
(委員長)
宜シクバ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第八百二十七條朗讀ス
第八百二十七條 終身年金權ハ年金權ヲ設定スル爲メ終身ノ期セラレタル人ノ死亡ニ因リ消滅ス但第八百十八條ニ記載シタルモノヲ妨ケス〔第千九百八十二條〕
然レトモ年金權ノ本主カ債務者ノ責ニ歸スヘキ不正ノ原由ニ因リ死亡シタル場合ニ於テ若シ年金權カ有償名義ニテ又ハ贈與若クハ贈遺ノ負擔トシテ設定セラレタルトキハ契約又ハ恩惠所爲ハ解除セラレ債務者ハ既ニ拂ヒタル利子ノ何等ノ部分ヲモ回收セスシテ其得取シタル財產ヲ返還ス
若シ前ニ同シク年金權ノ本主カ債務者ノ過愆ニ因リ死亡シタル場合ニ於テ年金權カ直接ニ贈與又ハ贈遺セラレタルトキハ利子ノ支拂ハ裁判所カ其本主ノ生命ノ繼續期ト推測シテ定メタル期間内ハ利害ノ關係人ノ利益ニ於テ繼續セラル
(修正案) 第一項「終身年金權ハ」ノ下「年金權」ノ三字ヲ刪リ「之」ノ一字ヲ加フ同條第二項「恩惠所爲ハ」ヲ「惠與ハ」ト改ム
(栗塚)
最初ニ「終身年金權ハ之ヲ設定スル」云々トシテソレカラ「恩惠所爲ハ」ハ惠與ト云フ字ニ改メマシタ
(元尾崎)
殺シタトキノ話デスネ
(栗塚)
左樣デス、其人ガ生テ居ルト年金ヲ遣ラナケレバナランデシヨウ之ハ危險ナコトデス
(元尾崎)
末項ハ分ランネ
(委員長)
生命ノ繼續期ト推測シテト云フハ凡ソ五十年生ルト見テ三十年位ヒデ死ダラ跡二十年表向往ケルノカ
(栗塚)
左樣デス
(淸岡)
二項抔ハ之ハ惡イネ
(委員長)
之ガナケレバ財產相續抔ハ早ク死ネバ宜イ抔ト思フカラネ、若シ前ニ同ジクト云フコトガアルノデスカネ
(南部)
前ト同ジコトデアリマス
(委員長)
債務者ノ責ニ歸スベキ不正ノ原由ニ因リトアレバダガ前ニ同ジクト云フト此方ガ原由ニ因リ死亡シタリダカラネ
(南部)
此所ハ直接ニ贈與又ハ贈遺セラレタルトキト云フニ係テ居ル丈ケデ其外ハ同ジコトデ御座リマス
(委員長)
前ニ同ジクト云フハ前項ト云フノダロウ
(南部)
左樣デス
(委員長)
責ニ歸スベキ迄ハ同ジコトデ跡ハ違テ居ル
(南部)
不正ノ原由デ死ダノデス
(淸岡)
前ニ同ジク責ニ歸スト云フ丈ケデソレヲ同ジクト云タノデアリマシヨウ
(南部)
ソウデハ御座イマセンヨ
(元尾崎)
只遣タトキノ話デスネ
(南部)
過愆ト云フモ籠テ居ルノデス
(元尾崎)
過愆ハ不正ノ原由トハ違フダロウ
(南部)
同ジコトデス
(淸岡)
過愆懈怠ノトキハ違フダロウ
(南部)
不正ト書イタノハ註ニモアリマスガ「故殺犯ニアラスシテ云々アリマス不正ト云フハ故殺シタバカリデハナイ
(委員長)
不正ト云フハ故殺マデ係ルト見ヘル
(南部)
註デハソウ御座イマセン
(委員長)
オカシイ
(元尾崎)
過チデ殺シタトキハ有償名義ニ依テ前ノ方法ニナルノデシヨウ
(南部)
左樣デス
(元尾崎)
不正デ拵ヘタトキハ三項ニ這入ルノデスガ三項ノ場合ニ過愆トアルハ不正デ故殺シタトキハ何ウナルカ
(南部)
之ヲ行クノデス
(元尾崎)
不正ト過愆トハ違フデシヨウ
(南部)
民法デハ違ヒマセンノデス
(元尾崎)
日本文デ見ルト違フ樣ニ見ヘルネ
(南部)
直接ノ贈與又ハ贈遺セラレタルト云フノハ全ク意ガ違フ
(元尾崎)
只貰タトキノ話デ止メタラ一方丈ケ得スル勘定ダ
(栗塚)
過愆ノ中ニ兎モ角モ籠テ居ルト云ハナケレバナラン
(元尾崎)
兩項トモ過愆若クハ不正トヤツテハ如何
(南部)
前ノ過愆ト云フニ不正ガ籠ルトスルガ宜シイ
(栗塚)
註ニモ一ツコトニ論ジテ居ルカラ「若シ前ニ同シク年金權ノ本主カ債務者ノ責ニ歸スヘキ不正ノ原由ニ因リ死亡シタル場合ニ於テハ」トシテハ如何
(委員長)
ソレナレバ宜シイ
(元尾崎)
ソレガ宜シイデシヨウ
(栗塚)
殺ス意ハナクツテヤツタノモ這入ルノデス
(元尾崎)
歐打創傷ダナ
(委員長)
債務者ノ責ニ歸スベキトサヘアレバ宜シイ
(元尾崎)
ソレト不正ノ原由ニ因リデスネ
(南部)
ソレデハソウヤリマシヨウ
(西)
同ジコトニナルデスネ
(栗塚)
若シ年金權ガ直接ニ又ハト入レマスカ
(元尾崎)
上ノ文字ヲ取テ入レルガ宜シイ
(南部)
ソレハ宜カロウ
(元尾崎)
期間内ト云フコトハ期間デ宜シイデシヨウ
(栗塚)
期間ト云フ名詞ニナツテ居ルノデス
(委員長)
死亡シタル場合ニ於テ云々ト死ダトキニ贈遺カ否ヲ見ルヤウニ見ヘルガ既ニ購遺シテアリ又ハ贈與シテアルモノヲ云フノダロウ
(栗塚)
左樣デス
(村田)
直接ニヤツタノデス
(委員長)
場合ニ於テ死亡シタル場合ニ於テ贈遺セラレタルトキハト云フノダカラ死ダトキニ遺ル樣ニ見ヘル
(南部)
此間報吿委員デノ論デハ贈與ト前ニモ場合ニ於テ設定セラレタルトキトアルカラ直サナケレバナランコトデ止マツタノデセラレタルデ分ルト云フノデス
(元尾崎)
御說ノ通リデ其方ガ正當ノ讀方ト思ヒマス
(元尾崎)
既ニ設定シタルモノニ及バヌ樣ニ見ヘル之ハ設定アリシトキト過去デナケレバナラン
(栗塚)
矢張リ場合ニ於テト云フノデ何ウシテモネ
(淸岡)
死亡シタル場合ニ於テ設定ノシヨウガナイ
(村田)
前ノ八百二十六條ニハ死ダトキハ無効ト云テ居ルカラソンナモノハ出來ヨウハナイ殊ニ年金ハ終身ニ設ケルト始メニアリマスカラ死デカラ贈ルト云フコトハナイ
(委員長)
理窟ハアルガ文字通リニ講釋スレバダネ
(村田)
前項カラ見レバ分ランコトハナイ
(栗塚)
ソレデ若シモヲ入レテアリマス
(西)
場合ニ於テ購遺ノアリシトキハトアル
(南部)
贈遺デモシタル場合トアルカラ
(委員長)
死ダラ遣ル前ニ出來サヘスレバ宜シイノダロウアレヲ過去ニ書ケバ宜シイ
(元尾崎)
若シ年金權ガ直接ニ購與又ハ贈遺セラレタルトキ年金權ノ本主ハ債務者ノ責ニ歸スベキ不正ノ原由ニ因リ死亡シタル場合ニ於テ云々ト書ケバ宜シイ
(村田)
スルト年金權ヲ設ケタトキガ眼目ニナルカラ
(槇村)
設定セラレテアリシトキハカ
(淸岡)
併シ之ヲ宜カリソウナモノデス
(栗塚)
死亡シタル場合ニ於テ解除セラレト云ヒタイノデス
(元尾崎)
斯ウ云フモノガ死ダ場合ハ斯ウ、斯樣ナ者ガ死ダトキハ斯ウトナレバ同ジコトデス
(南部)
債務者ノ責ニ歸スベキト云フガ本デ、ケレドモ設定ノシヨウガ違フ丈ケハ二三項デ區別シテ居ルカラネ
(栗塚)
贈與又ハ贈遺セラレタルトキニ死ダトキ場合ト斯ウナルノデ同ジコトヲ疑ヒヲ起スト、ヒヨツトシテ設定セラレタトキ死ダラバト讀ムヨウニナル
(委員長)
佛蘭西文ハコウカネ
(栗塚)
矢張コウデス英文モ同ジデ、セラレタルモノナルトキト入レマシヨウ
(槇村)
ソレガ宜シイダロウ
(元尾崎)
同ジコトダ
(南部)
既ニト云フ字ヲ入レテ、ハ何ウカ
(元尾崎)
ソンナラ宜シイ
(委員長)
設定セラレタルノ上ハ既ニヲ入レレバ宜シイ
(村田)
ソレナレバ間違ヒナイ
(槇村)
既ニト云フト死亡シタトキ取極メルモノダケレドモ早斯ウト云フ樣ニ見ヘル
(淸岡)
既ニト云フト其トキデモ出來ル樣ダ
(南部)
元ノ通リガ宜シイ
(西)
設定セラレテアリシトキトシテハ如何
(委員長)
ソウスレバ間違ナイヨウデス
(村田)
ソレハ往カヌ餘リ直譯過ル
(栗塚)
設定セラレタリシトキハトシテ如何
(槇村)
設定セラレテアリシトキハトシテ宜シイ
(委員長)
タリシデモ宜シイ
(栗塚)
ソレデハタリシトヤリマシヨウ
(委員長)
ソレデハ是デ措キマシヨウ
本條ハ第三項左ノ如ク修正シ他ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
前ニ同シク年金權ノ本主カ債務者ノ責ニ歸スヘキ不正ノ原由ニ因リ死亡シタル場合ニ於テ若シ年金權カ直接ニ贈遺セラレタリシトキハ利子ノ支拂ハ裁判所カ其本主ノ生命ノ繼續期ト推測シテ定メタル期間内ハ利害ノ關係人ノ利益ニ於テ繼續セラル