法律取調委員会 民法草案議事筆記 第59回
参考原資料
- 法律取調委員会 民法草案財產取得編議事筆記 , 自 第五十九回 至 第六十五回 [国立国会図書館デジタルコレクション]
備考
- 未校正のテキストデータです.
民法草案取得篇第五十九回議事筆記
自第七百九十九條至第八百十三條
明治二十一年五月二十八日午前第八時三十五分開會
(委員長)
ヤリマシヨウ
第七百九十九條朗讀ス
第七百九十九條 淸算人ハ總テノ場合ニ於テ速ニ毀損又ハ滅盡スヘキ物ヲ移付スルコトヲ要ス
若シ滿期ノ債務ノ辨償ノ爲メ其他ノ動產物ヲ移付スルノ必要アルトキハ之ヲ移付スルコトヲ得
不動產ニ關シテハ淸算人ハ社員ノ特別ナル委任ニ憑ルニアラサレハ之ヲ抵當トシ又ハ移付スルコトヲ得ス
此終ノ場合ニ於テ移付ハ公賣競落ニ因ルニアラサレハ之ヲ爲スコトヲ得ス但熟議上ニテ約定スルコトヲ許シタルトキハ此限ニ在ラス且右ハ總テ社員ノ多數決ニ因ル
淸算人ハ社員ノ名ヲ以テ原吿又ハ被吿トシテ訴訟ヲ爲スコトヲ得
淸算人カ會社ノ債務又ハ債權ニ付キ承諾シタル和解及ヒ仲裁ハ第三者ト通謀シタル詭譎ノ爲メニアラサレハ之ヲ攻撃スルコトヲ得ス
(修正案) 第二項「辨償ノ爲メ」ノ下左ノ如ク改ム必要アルトキハ其他ノ動產物ヲ移付スルコトヲ得
(栗塚)
二項ヲ「辨償ノ爲メ必要アルトキハ其他ノ動產物ヲ移付スルコトヲ得」トヤリマシタ
(村田)
「移付」ト云フノハ「デスポース」トナツテ居リマスガ「アリエネーシヨン」デスカ
(栗塚)
「アリエネーシヨン」デ御座イマス、併シ「移付」ト云フ字ハ「讓渡」トナリマス「デスポース」トナツテ居レバ英文ガ惡イノデス、併シ四項ハ英文モ「アリエネーシヨン」トナツテ居リマス
(元尾崎)
一體之ハ賣ルコトヨリ外ニナイノデスカ
(栗塚)
起案者ノ註ハソウ書イテアリマス、分配スル爲メデ御座イマスカラ
(元尾崎)
物ニ依テハ疊ンデ買フトカ何トカ云フコトガアリマシヨウ、其レハ處分スルコトデ、淸算人デハナイ、社員ノ多數デヤルコトデアリマシヨウ
(村田)
併シ「デスポース」デモ惡ルイコトハナイ、早ク淸算人ガ金ニシテ置カヌト腐ツテ仕舞フ樣ナ場合ダカラ此終リノ場合ノ移付ト云フノハ突然ダカラ「其付ハ」トシタラ良カロウ「其」ト云ヘバ前ノ不動產ノ有ト云フコトガ分ルカラ
(南部)
同ジコトデス此終リノ場合ト云フコトガアルカラ
(元尾崎)
「競落」ハドウ云フ字カ
(村田)
競リ落スト云フノダ
(栗塚)
競馬デ馬カラ落チタ樣ナモノデス
(元尾崎)
餘程可笑シイ
(淸岡)
「競リ落ス」ト讀マナケレバ競落デハ分ラヌ
(槇村)
「攻撃」ト云フノハ可笑シイ
(南部)
商法ニモ幾ラモアリマス
(淸岡)
マダ「駁撃」ノカガ宜シイ
(栗塚)
後トデ直スデ御座イマシヨウ
(村田)
「且右ハ總テ社員ノ多數決ニ因リ」トアルガ、英文デハ「社員ノ多數決ニ因テ之ヲ爲スコトヲ要ス」トアル
(栗塚)
多數決ニ因ラナケレバナラヌト云フコトデ御座イマシヨウ
(元尾崎)
「攻撃」ト云フ字ハ變ヘラレマセンカ
(栗塚)
翻譯ト相談シテモ宜シウ御座イマスガ今迄ズツト使ツテ居リマスカラ
(元尾崎)
「排斥」トハ出來マセンカ
(西)
防禦ニ合セルニハ攻撃デナケレバイケマスマイ
(栗塚)
「エキセブシヨン」ガ排斥ニ當リマスガ之ハ此方ヨリ棒ヲ以テ向ツテ行クノデ御座イマスカラ、受太刀ニナルノデハナイ攻メ太刀ニナルノデ御座イマス
(元尾崎)
進撃ト云フノダ
(村田)
末項ハ第三者トノ間ニ「淸算人ト第三者ト通謀シテ」トシタラ宜カロウ
(栗塚)
初メノ「淸算人」ヲ刪リマシヨウカ
(村田)
初メハアツテモ宜シイ「社員ヨリ之ヲ攻撃スルコトヲ得ス」トスレバ宜シイ「淸算人カ」ト云フト淸算人ガ攻撃スル樣ニナル
(南部)
ソウ云フト「攻撃サルル」ト云フノデナイカラ淸算人ガ攻撃ヲ受ケルコトハナイ
(栗塚)
「之ヲ攻撃スルコトヲ得ス」トスレバ宜シイ
(南部)
次ノ條ノ三項デ「各別ニ之ヲ爲スコトヲ得」ト云フノハ誰ガ議決ヲスルカ分ラヌ
(元尾崎)
終リノ淸算人ハ無クテモ宜シイガ「第三者ト淸算人ト」トスルガ良カロウト思フ
(大尾崎)
之デ分ル
(栗塚)
英文ニハ「彼レトソウシテ第三者ト」トアルカラソウ云フ議論ガ出タノデシヨウ
(大尾崎)
先キヘ行キマシヨウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第八百條朗讀ス
第八百條 淸算ノ總計算ハ社員ノ認可ヲ受クルコトヲ要ス
右ノ計算ヲ認可スルニハ社員ノ多數決ヲ以テ足レリトス
其議決ハ併合セラレタル總テノ計算ニ付キ又ハ計算ノ或ル部分ニ付キ各別ニ之ヲ爲スコトヲ得
認可セラレスシテ仕直スコトヲ得ヘキ計算ハ淸算人ノ費用及ヒ注意ヲ以テ之ヲ爲ス若シ仕直スコトヲ得サルトキハ淸算人ハ代理ノ規則ニ從ヒ其過愆ニ因テ加ヘタル損害ノ責ニ任ス
淸算人ノ己レニ委任セラレタル權限ニ憑リ又ハ前條ニ從テ爲シタル所爲ハ常ニ善意ナル第三者ノ爲メ之ヲ維持ス
(修正案) 第三項「併合セラレタル」ノ七字ヲ刪リ「計算ニ付キ」ノ下「合併ニテ之ヲ爲シ」ノ八字ヲ加フ第四項「認可セラレスシテ」ヲ「認可セラレス且」ト改メ費用ノ下「及ヒ注意」ノ四字ヲ加フ
(栗塚)
修正致シマシタ三項ノ「併合セラレタル」ヲ刪リマ、シテ「總テノ計算ニ付キ合併ニテ之ヲ爲シ又ハ計算ノ或ル部分ニ付キ」ト致シマス之ハ原文ガ其通リデ御座イマスカラ
(淸岡)
部分ヲ云フトキハ全部ヲ立テ居ルカラ是レ等モ全部ノ方ガ宜シイ
(南部)
「總テノ計算ハ合併シテ之ヲ爲シ」ガ宜シイ
(栗塚)
ソウスルト「又ハ計算ノ或ル部分ハ各別ニ之ヲ爲ス」ト云ハナケレバナリマセン
(槇村)
「部分ニ付キ」ノ方ガ宜シイ
(元尾崎)
「一ト纏メニテ」トヤルガ宜シイ
(槇村)
其議決ハ合併ニテ之ヲ爲スト云フ樣ニナル
(南部)
「其議決ハ總テノ計算ヲ合併シテ之ヲ爲シ」トシ樣
(槇村)
其レガ良イ
(元尾崎)
「合併」ト云フノハ可笑シイ
(淸岡)
併合ト合併トハドウ違ヒマスカ
(栗塚)
違ヒマセン
(元尾崎)
「計算ヲ合シテ之ヲ爲シ」トスレバ宜シイ
(栗塚)
其レデモ宜シウ御座イマス、其レカラ四項ハ「認可セラレスシテ」ト云フノヲ「認可セラレス且」ト致シマス「注意ヲ以テ」ト云フ字ヲ刪リマス
(淸岡)
注意ト云フノハ淸算人ノ費用デ淸算人ニヤラセルト云フノデハアリマセンカ、淸算人ノ費用ト云フ丈ケデハ取分ケテ此方デヤル樣ニナル
(栗塚)
其レデハ困ル
(南部)
少シ其氣味ガアル
(淸岡)
淸算人ニヤリ直サセルノダカラ「注意ヲ以テ」ハ有ル方ガ宜シイ
(村田)
「注意」ト云フ字ハ可笑シイ
(大尾崎)
舊譯ニハ「費用及ヒ勞力ヲ以テ之ヲ爲ス」トアル
(南部)
「淸算人其費用ヲ以テ之ヲ爲ス」ト云ヘバ宜シイ
(元尾崎)
今一應確カメル爲メニ「自ラ費用ヲ以テ之ヲ爲ス」ト云ヘバ尙ホ宜シイ
(栗塚)
「淸算人其費用ヲ以テ之ヲ爲ス」ト致シマシヨウ「自費ヲ以テ」デモ宜シイ
(西)
「其費用ヲ以テ」デ分リマシヨウ
(元尾崎)
「認可セラレス」ト云フノハ何トカ直リマセンカ
(栗塚)
佛文ハ承諾セラレズト云フノデ御座イマスガ、初メニ「認可ヲ受クルコトヲ要ス」トアリマスカラ其レデ認可トシタノデ御座イマシヨウ
(南部)
商法ナドモ認可ト云フテアル
(栗塚)
其レデハ報吿委員デ「認可」ト修正シタコトニ致シマシヨウ
(元尾崎)
末項ニ「之ヲ維持ス」ト云フノハ可笑シイ
(栗塚)
前ニ「第三者ノ爲メニ維持セラル」ト云フコトガアツテ大變八釜シウ御座イマシタ
(南部)
「セラルル」ト云フノハ成ル丈ケ省カヌト良クナイ
(栗塚)
後チニ一體ニナリマシヨウ
(大尾崎)
先キヘ行キマシヨウ
本條ハ左ノ如ク決ス第三項左ノ如ク改ム其議決ハ總テノ計算ヲ合セテ之ヲ爲シ又ハ計算ノ或ル部分ニ付キ各別ニ之ヲ爲スコトヲ得第四項報吿委員ノ修正ニ決ス
第八百一條朗讀ス
第八百一條 若シ民事會社カ株式ヲ以テ組織セラレタルトキハ商事株式會社ノ規則ニ從ヒテ淸算ヲ爲ス
(村田)
之ハ刪テ宜シイ
(南部)
刪ルコトハ跡ニ止メテアル
(栗塚)
起案者ト相談スル委員長ノ考デ御座イマスカラ
(村田)
七百六十八條ガ彼ノ通リナツテ居ルカラ刪ルガ宜シイ
(西)
詰リ重複ダ
(大尾崎)
先ヘ行キマシヨウ
本條ハ原安不ニ決ス
第八百二條朗讀ス
第八百二條 會社ノ淸算ノ後ハ不分ニ存スル財產ノ配當ハ舊社員ノ各自又ハ其承權人ヨリ之ヲ請求スルコトヲ得但當事者カ此法律第四十條ニ從ヒ不分ニ留マルコトヲ會社解散ノ後ニ合意シタル場合ハ此限ニ在ラス
(修正案) 社員ノ上「舊」ノ一字ヲ刪リ「不分ニ留マルコトヲ」ヲ「不分ニテ存スルコトヲ」ト改ム
(栗塚)
善社員ノ「舊」ノ字ヲ刪リマシタ、今迄社員ト中シテ參リマシタ成程淸算ノトキハ舊社員ニ相違アリマセンガ、此處バカリ舊ノ字ヲ入レルノハ變デ御座イマスカラ刪リマシタ、其レカラ不分ニ留マルト云フノハ文ヲ爲サヌ樣デ御座イマスカラ「不分ニテ存スル」ト致シマス
(南部)
「此法律」ト云フ字ハアルマイ
(栗塚)
左樣デス「此法律」ノ三字ハ刪リマシタ
(元尾崎)
「不分ニ存スル」ト云フノハ
(栗塚)
分レザルト云フコトデ御座イマスカラ「不分」ハ「未分」トナルデ御座イマシヨウ
(元尾崎)
渾沌タルトキダガ、不分ノ財產ト云フノハドンナモノデシヨウ
(栗塚)
家デモ地面デモアリマス
(槇村)
先キヘ行キマシヨウ
本條ハ左ノ如ク決ス
會社ノ淸算ノ後ハ不分ニ存スル財產ノ配當ハ社員ノ各自又ハ其承權人ヨリ之ヲ請求スルコトヲ得但當事者カ第四十二條ニ從ヒ不分ニテ存スルコトヲ會社解散ノ後ニ合意シタル場合ハ此限ニ在ラス
第八百三條朗讀ス
第八百三條 配當部分ノ組成又ハ各當事者ニ對スル其配付ニ付キ當事者ノ一致セサルトキハ相續及ヒ其他財產ノ共通ノ派分ノ爲メ此事ニ關シ此法律及ヒ民事訴訟法ニ定メタル規則ヲ遵守ス〔第千八百七十二條〕
(大尾崎)
「相續ノ爲メ財產共通ノ派分ノ爲メ」ト見レバ宜シイ
(栗塚)
ソウデス
(元尾崎)
共通財產ノ派分ノ爲メニ設ケタ法律ノ中ニ在リマスカ
(栗塚)
ソウデス
(元尾崎)
其他財產共通派分法ト云フノハ
(栗塚)
包括名義デ財產ヲ獲得スル場合ニ在リマス
(南部)
配當派分ノ組成法ハ如何ナル風ニ分ツト云フコトヲ云フノダロウ
(栗塚)
ソウデス
(元尾崎)
何ノ財產ダカ一向分ラナイ、何ノ配當カ
(栗塚)
突然此處ヲ御覽ニナルト御分リニナリマスマイ
(元尾崎)
英文デハ前ノコトヲ受ケテ來テ居ルガ日本文デハソウハ讀メヌ
(南部)
前條デ受ケテ來テ居ル
(村田)
配當部分ノ組成ト云フノハ財產ヲ分ツ丈ケノコトダ
(栗塚)
ソウデス
(元尾崎)
原文ニハ其財產ト云フコトガアル「其財產配當部分」トシテハ如何デス
(南部)
八百六條ニモ「配當ハ」ト云テアツテ「財產」ト云フコトハナイ
(村田)
先キヘ行キマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第八百四條朗讀ス
第八百四條 會社資本中ノ物ニテ配當ニ因リ各社員ニ歸シタルモノニ關スル各社員ノ權利ハ會社解散ノ日ニ遡リ他ノ社員ヨリ其物ニ付キ付與シタル權利ハ解除セラル〔第八百八十三條〕
(修正案) 「關スル」ノ下「各」ヲ「其」ニ改メ「遡り」ノ下「テ効力ヲ有シ不分中」ノ九字ヲ挿入ス
(栗塚)
修正ガ御座イマス
(元尾崎)
之ハドウ云フコトダロウ
(村田)
人ニ讓ツタトカ質ニ入レタトカシタノデス
(元尾崎)
其レガ無効ニナツテハ困ルダロウ
(南部)
部分中ニ入レタラ惡イ
(元尾崎)
假令バ私ノ持テ居ル部分ヲ貴君ニ抵當ニ入レテ金ヲ借リタ
(南部)
部分中ニ入レタラ配當デ誰ノ部分ニナルカ分ラヌ、未定デス
(元尾崎)
未定グケレドモ私ノ分ガ千圓ノヲ八百圓ノ抵當ニ入レタ處ガ解散シテ尾崎サンノ分ヲ私ガ貰フト云フコトハ出來マセンカ
(南部)
地面ハ貴君ガ私ヘ質ニ入レタノダカラ誰ノ分ニナルカ知レヌ
(栗塚)
假令バ千圓取レルカラ千圓ト云フノナラ宜シウ御座イマスガ儲ケヲ差引キスルコトハ出來マセン
(村田)
家ヲ十人デ持テ居ルノダカラ
(南部)
七百九十條ヲ御覽ニナレバ分リマス
(元尾崎)
皆ニ屬シテ居ル物ヲソンナコトハ出來ヌ道理ダ
(南部)
貴君ガ取テ仕舞ヘバ權利ガアルデス、九十條ハ權利ノ場合デス
(元尾崎)
付興シタルト云フノハ第三者ニ付與シタノダロウ
(栗塚)
ソウデス
(淸岡)
第三者ニ付與シタルト云フノハ入ラヌ
(南部)
前ニモ入レテアリマス
(槇村)
「第三者ニ」ト入レタラ宜カロウ
(栗塚)
入レタ方ガ宜シウ御座イマス
(南部)
之ハ「セラルル」ト云ハナケレバナラヌカ
(栗塚)
「之ヲ解除ス」ト致シマシヨウ
(槇村)
「之ヲ解除ス」デ宜シイ
本條ハ左ノ如ク決ス
會社資本中ノ物ニテ配當ニ因リ各社員ニ歸シタルモノニ關スル其社員ノ權利ハ會社解散ノ日ニ遡リテ効力ヲ有シ不分中他ノ社員ヨリ其物ニ付キ第三者ニ付與シタル權利ハ之ヲ解除ス
第八百五條朗讀ス
第八百五條 共同配當者ハ配當ヲ以テ約束セラレタル權利ニ於テ受クルコト有ルヘキ妨碍及ヒ追奪ニ付キ其各自ノ部分ニ應シテ互ニ擔保人タリ〔第八百八十四條〕
若シ共同配當者ノ一人カ無資力ナルトキハ其一人ノ負擔シタル賠償ノ部分ハ被擔保人ヲ加ヘテ他ノ各共同配當者ノ間ニ之ヲ分配ス〔第八百八十五條〕
(修正案) 「配當ヲ以テ約束セラレタル權利ニ於テ」ヲ「配當ニ因リ得取シタル權利上ニ」ト改ム末項「分配ス」ヲ「分ツ」ト改ム
(栗塚)
「配當ニ因リ得取シタル權利上ノ」トヤリマシタ
(槇村)
之ハ修正ガ宜シイ、十人ノ内一人ノ無資力デ其レ丈ケノ儲ケヲ十人ニ分ツテ被擔保人モ其一部分ヲ受ケナケレバナラヌ
(栗塚)
左樣デス
(元尾崎)
假令バ家ヲ三人デ持テ此家ニ百圓ノ借金ガアルカラ返ヘサナケレバナラヌト云フ三十三圓某ヅツ出シ合ヘバ宜シイガ一人ガ無資力デ出セヌトキハ二人デ出シテ置イテヤル、併シナガラ家ガアルニ因テ其物ヲ幾ラカ取ルコトガ出來ソウナモノダ、何モナケレバ損ニナルガ家ガ五百圓ノ償ガアレバ
(栗塚)
其レハ資本カラ出スト云フコトデ御座イマス
(南部)
配當スル内村田サンノ財產ヲ私ガ貰ツテ居ル、村田サンガ未分ニナラヌ前ニ他ヘ賣ツタ場合ニハ村田サンガ擔保人ニナラナケレバナラヌ
(元尾崎)
被擔保人ヲ加ヘテ他ノ各共同者間ニ之ヲ分ツト云フノハ
(南部)
村田サンノ無資力者ノ場合ニハ私モ一所ニ外ノ人モ一所ニ損害賠償ヲ出サナケレバナラヌ、ソウスルト平均シテ仕舞フ
(元尾崎)
村田サンノ樣ナ財產家ナレバ擔保センデ宜シイ、外ノ村田サンナラ擔保シナケレバナラヌ
(大尾崎)
先キヘ行キマシヨウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第八百六條朗讀ス
第八百六條 配當ハ成年者ノ間ニ爲サレ且動產有價物ヲ目的トシタルトキト雖モ不分ノ財產中ニテ受クヘキ部分ノ四分一ニ超ユル折損ヲ被リタル者ノ利益ニ於テ之ヲ銷除スルコトヲ得〔第八百八十七條乃至第八百九十二條〕
折損ノ爲メ賣買ノ銷除ノ行用ニ付キ第七百三十四條以下ニ定メタル條件ハ會社ノ配當ノ折損ニ關スル銷除ニ付キ遵守セラル
(元尾崎)
折損銷除ハ分ラナイ
(栗塚)
賣買ノ折損ハ餘程損ヲシタトキデ御座イマス、佛蘭西ニ「レジヨン」トアリマス
(南部)
「遵守ス」ハ適用モ同ジコトダロウ
(栗塚)
同ジコトデ御座イマス
(南部)
「淸算者ノ間ニ爲シ」デ宜シイ
(栗塚)
末項ハ「折損ノ爲メ賣買ノ銷除ニ付キ何々ニ定メタル條件ハ會社ノ配當ノ折損ニ關スル銷除ニ之ヲ適用ス」トナスツテハ如何デス
(槇村)
其レガ宜シイ
(村田)
「行用」ト云フノハアツタ方ガ良カロウ
(栗塚)
ソウスルト先キモ「銷除ノ行用ニ之ヲ適用ス」ト云ハナケレバナラヌ
(槇村)
部分ノ四分ノ一ニ超ユル折損ヲ蒙リタルモノノ利益ニ於テト云フノハ
(栗塚)
貴君ガ配當ヲ得タ處ガ四分ノ一損ヲシタ四百圓取レルモノガ三百圓モ取レヌトキハ其損ヲ蒙リタル人ノ利益ノ爲メニ配當ヲ止メテ仕直ス
(元尾崎)
「蒙リタル爲メニ」デ宜カロウ
(栗塚)
ソレデ宜シイ
(元尾崎)
不分ノ財產中デヤルト云フノハ分ラヌコトダ
(栗塚)
分ラヌコトデ御座イマスガ、不分ノ財產中カラ出タト云フノデ御座イマス
(大尾崎)
不分ノ財產ト云フト分タヌ折デモ損ヲ受ケタ者ガ配當ヲ受ケタ折ハト云フ樣ニ見ヘル
(栗塚)
然カモ原文ニハ「不分ノ財產中ニテ彼レニ行クヘキ」トアリマスガ「彼レニ」ト云フコトガアリマセンガ人ノ爲メト云フコトハ先キヘ出テ居リマスカラ
(南部)
「自己ノ受クヘキ部分ノ」デ宜カロウ
(元尾崎)
「受ケタル部分」デナケレバ分ラヌ
(西)
未ダ受ケテナイカラ「受クヘキ」ト云フノダロウ
(栗塚)
「其人ニ行カナケレハナラヌモノ」ト云フノデ御座イマス
(元尾崎)
受クベキ權ノアル部分ト云フノダ
(栗塚)
ソウデス「時ト雖トモ各社員其受クヘキ部分ノ四分ノ一ニ增加スル折損ヲ蒙リタルトキハ」デス
(槇村)
「各社員」デハ總體ノ損ニナル
(大尾崎)
「自己ノ受クヘキ」デ宜シイ
(栗塚)
誰正ガ受ケルカ分リマセン
(元尾崎)
原文ニハ過失ニナツテ居リマス
(南部)
「受ケタル部分ノ」トハ云ヘナイ「受ケタル部分カ」トデモ云ハナケレバナラヌ
(栗塚)
「社員ノ受クヘキ部分ノ四分ノ一ニ超ユル折損ヲ蒙リタルトキハ之ヲ銷除スルコトヲ得」デモ宜シイ
(元尾崎)
其處ハソレデモ宜シイガ「不分ノ財產中ニテ受クヘキ」ト云フノハ分ラヌ餘リ簡單ニナリ過ギタ之ハ不動產ハ無論デスネ
(栗塚)
不動產ハ別ニアリマス、不動產ハ無論デ御座イマス
(南部)
折損ハ不動產ノコトバカリデス
(槇村)
「受クヘキ部分カ」ト云フノダ
(栗塚)
ソウデス
(元尾崎)
「折損ヲ蒙リタルトキ」ト云フガ折損ハ後チニ受ケタ樣ニナル、俗ニ云フト「折損ハ」ト云フノグ
(栗塚)
「害ヲ蒙ムリ」ト云フノデス
(大尾崎)
四分ノ一ト云フト云フノハ據リ處ガアリマスカ
(栗塚)
佛蘭西、伊太利、白耳義ニ在リマス
(元尾崎)
銷除ト云フ字ハ困ル
(栗塚)
取消シト云フ字デ御座イマス
(槇村)
折損ハ損失ト違ヒマスカ
(南部)
場合ガ二ツ外アリマセン賣買ノトキト分配ノトキトニ四分ノ一以上損ヲ蒙リタルトキバカリデ御座イマス、損失トハ違ヒマス
(栗塚)
「不分ノ財產中ニテ社員ニ歸スヘキ部分ノ四分ノ一ノ折損ヲ蒙ムリタルモノアルトキハ其モノノ爲メニ之ヲ」トスレバ宜シイ
(南部)
ソウスルト社員トモノト違ヒマス
(槇村)
書イテアルト社員ト云フ字ヲ除クト云フダロウ
(槇村)
「タルトキト雖モ其配當ヲ受ケタルモノガ其受クヘキ部分ノ四分ノ一ニ超ユル折損ヲ蒙ムリタルトキハ」
(淸岡)
受クベキモノハ可笑シイ
(栗塚)
「配當者」ト云ヘバ宜シイ
(槇村)
「配當ヲ受クルモノ」ガ宜シイ
(元尾崎)
原文ニモ「受ケタルモノ」トアル、「蒙ムリタルトキハ其モノノ爲メニ之ヲ銷除スルコトヲ得」
(槇村)
ソレナラ原案デ宜シイ
(栗塚)
「配當者」ガ宜シイ
(元尾崎)
「被配當者」ダ
(栗塚)
「其配當ヲ受ルモノカ其受クヘキ部分ノ四分ノ一ニ超ユル折損ヲ蒙ムリタルトキハ」
(南部)
「其」ガ二ツアル
(栗塚)
「自己ノ」トシテモ宜シイ
(南部)
ソレガ宜シイ
(栗塚)
ソウスルト「賣買ノ折損ニ關スル銷除」ト云ハナケレバナラナイカ知レマセン
(南部)
ソウシナイデモ宜シイ
(槇村)
先キヘ行キマシヨウ
本條ハ左ノ如ク決ス
配當ハ成年者ノ間ニ爲シ且動產有價物ヲ目的トシタルトキト雖モ其配當ヲ受クルモノカ自己ノ受クヘキ部分ノ四分ノ一ニ超ユル折損ヲ被ムリタルトキハ其者ノ爲メニ之ヲ銷除スルコトヲ得折損ノ爲メ賣買銷除ニ付キ第七百三十四條以下ニ定メタル條件ハ會社ノ配當ノ折損ニ關スル銷除ニ之ヲ適用ス
第八百七條朗讀ス
第十六章 射倖契約
前置條例
第八百七條 射倖契約ハ契約者双方若クハ一方ノ利益又ハ損失ニ關スル其効力ノ全部又ハ一分カ將來ニシテ且不的確ナル事件ニ繋ル合意ナリ〔第千百四條、第千九百六十四條〕
(修正案) 「利益又ハ損失」ヲ「損益」ト改メ「將來ニシテ且」ヲ「將來ノ」ト改ム
(栗塚)
修正ガ御座イマス
(槇村)
將來トスルト意味ガ違ヒマスカ
(栗塚)
「將來ニシテ且」ト云ヒ度イノデ御座イマスガ、「將來」デ分リマスカラ修正致シマシタ
(淸岡)
「將來ニシテ且」ガ良カロウ二ツノ條件ニ係ルモノダロウ
(元尾崎)
將來ニ不的確デ宜サソウナモノダ
(槇村)
將來ニ不的確ト云フト先キニ分ラヌト云フコトニナル
(栗塚)
亞米利加カラ船ガ入ルカ入ラヌカ分ラヌ、ソウシテ現在ノコトデハイケヌ、後々ノコトダト云フノダカラ不的確丈ケデ宜シイノデス
(大尾崎)
先キニ分ラヌコトガ一ツト、確カデナイコトト二ツニナル
(南部)
將來ヲ一ツノ條件ニ見テ不的確ヲ一ツノ條件ニ見レバ將來ニ不的確デ同ジコトデス
(槇村)
原案デ宜シイ
(栗塚)
「ニシテ且」ト云フコトガ申セレバ宜シイ
(淸岡)
「將來ニシテ事件ニ繋ル」ト云フコトハ或ハ云ヘヌカ知レヌ
(南部)
「將來且不的確」トシタラ宜カロウ
(元尾崎)
「將來ニ且」ガ宜カロウ
(西)
「將來且」ガ宜シイ
(栗塚)
「將來且」ト致シマス
(槇村)
先キヘ行キマシヨウ
本條ハ左ノ如ク決ス
射倖契約ハ契約者雙方若クハ一方ノ損益ニ關スル其効力ノ全部又ハ一分カ將來且不的確ナル事件ニ繋ル合意ナリ
第八百八條朗讀ス
第八百八條 契約ハ其本性ニ因リ又ハ當事者ノ意思ニ因リ射倖ノモノタリ
博奕及ヒ賭事終身年金權又ハ其他終身權利ノ設定、陸上及ヒ海上ノ保險、海上ノ利益ニ於ケル貸借卽チ冒險貸借ハ其本性ニ因リ射倖ノモノタリ〔第千九百六十四條〕
其他ノ契約ハ其成立又ハ効力カ停止又ハ解除ノ偶然ノ條件ニ繋ルトキハ當事者ノ意思ニ因リ射倖ノモノタリ
(修正案) 第二項「博変」ノ上ニ「本性ニ因ル射倖契約ハ」ノ十字ヲ加ヘ「冒險貸借」ノ下「ナリ」ノ二字ヲ加ヘ其本性云云以下ノ數字ヲ刪ル
(栗塚)
修正ガ御座イマス日本文デハ修正ノ方ガ順ガ良カロウト思ヒマス
(南部)
「其他ノ」ト云フコトハ元トノ通リニシタ方ガ宜シイ
(淸岡)
定義ヲ定メル處ダカラ此文ガ宜カロウト思フ
(村田)
併シ初メノ一項デ本性ニ因ルモノト當事者ノ意思ニ因ルモノト二ツアル、本性ニ因ルモノハ之レダト云フノダカラ上ヘアゲテ宜カロウト思フ
(南部)
私ハ二ツトモ元トノ儘ガ宜シイト思フ
(村田)
原案ノ儘デ宜シイ「海上ノ利益ニ於ケル貸借」ハ刪ツタ方ガ良カロウト思フ商法ヲ見レバ委シク云テアルカラ
(栗塚)
「海上ノ利益ニ於ケル貸借」丈ケヲ刪リマシヨウ
(南部)
併シ管理人ノ所ナドニモ置キマシタカラ之モ置イテ宜シイ
(元尾崎)
置イタ方ガ宜シイ「利害ニ關スル」トシタラ宜カロウ
(村田)
利益ニ繋ル貸借ハ惡ルイト思フ「保險貸借」ト云フコトヲ云ヒ度イト思フ
(栗塚)
保險貸借ハ云フテアリマス
(元尾崎)
刪ルカ刪ラヌカラ決シマシヨウ
(栗塚)
報吿委員テモ刪ルト云フ論ガアリマ、シタガ何モ刪ルニハ及バヌト云フコトデ御座イマス
(元尾崎)
「海上ノ利害ニ關スル」トシ度イ
(南部)
「利害ニ於ケル」ガ宜シイ
(栗塚)
之ハ翻譯デ改メサセマシヨウ
(南部)
「其本性ニ因リ」トアル「其」ト云フ字ハ入リマスカ
(栗塚)
「其」ハ無クテモ宜シイ
(槇村)
先キヘ行キマシヨウ
本條ハ左ノ如ク決ス
第二項「利益」ヲ「利害」ト改メ「其本性」ノ「其」ヲ刪ル
第八百九條朗讀ス
第八百九條 海上保險及ヒ海上ノ利益ニ於ケル貸借ハ海商ニ關スル法律ニ因テ管知セラル〔第千九百六十四條〕
(修正案) 「海商ニ關スル」云々ヲ「海商法律ニ因リ之ヲ管知ス」ト改ム
(栗塚)
「海商法律ニ因リ之ヲ管知ス」ト致シマス
(村田)
「海上保險及ヒ保險貸借」デ良カロウ
(栗塚)
其レデモ宜シイ
(元尾崎)
其レハ修正シタ方ガ宜シイ
(淸岡)
海上法律ト云フノガアリマスカ
(南部)
商法ニ海上ト云フコトガアリマス
(淸岡)
「商法ニ因リ」デ宜シイ
(元尾崎)
海上法ト云フノガアルカラ宜シイ
(槇村)
先キヘ行キマシヨウ
本條ハ左ノ如ク決ス
海上保險及ヒ冒險貸借ハ海商法律ニ因リ之ヲ管知ス
第八百十條朗讀ス
第一節 博奕及ヒ賭事
第八百十條 若シ博奕カ博奕者ノ勇氣、力量、巧技ヲ發逹スヘキ本性ナル體躯ノ運動タルニアラサレハ其約務履行ノ爲メ裁判上ノ訴權ヲ許サス〔第千九百六十六條第一項〕
賭事ニ基ク訴權ハ右ノ如キ運動ヲ爲ス人ノ利益ニ關シ又ハ農業、工業若クハ商業ニ係ル作業ニシテ賭者ノ直接ニ參カルモノノ成功ニ關スルニアラサレハ亦之ヲ許サス
若シ右ノ博奕又ハ賭事ニ於テ約束セラレタル金額又ハ有價物カ情況ニ照シテ過度ナリト見ユルトキハ裁判所ハ之ヲ減スルコトヲ得ス全ク其請求ヲ棄却スルコトヲ要ス〔第千九百六十六條〕
(修正案) 第二項「利益ニ關シ」以下ヲ左ノ如ク改ム利益ニ關シ又ハ賭者ノ直接ニ參カル農工商ノ作業ノ成功ニ關スルニアラサレハ之ヲ許サス第三項「全ク其請求ヲ棄却スルコトヲ要ス」ヲ左ノ如ク改ム且其請求ヲ全ク棄却スルコトヲ要ス
(元尾崎)
「ノルマントン」號ヲ探ガシタトキノ五百圓ハ訴ヘラレルカネ
(栗塚)
訴ヘラレマシヨウ、二項ハ「利益ニ關シ又ハ賭者ノ直接ニ參カル農工商ノ作業ノ成功ニ關スルニアラサレハ之ヲ許サス」ト修正致シマシタ
(大尾崎)
驅ケツコ抔ハ宜シイカ
(南部)
競馬角力ナドハ宜シイ
(栗塚)
併シ自分デ角力ヲ取ラナケレバイケマセン
(大尾崎)
碁ナドハ宜シイナ
(村田)
併シ罰ハ受ケナケレバナラヌ
(元尾崎)
「ノルマントン」號ノ中ヘ入ルカネ
(南部)
アレハイケナイ
(大尾崎)
本人ガ探シテ取レバドウシマス
(南部)
探シテ取レバ宜シイ、交誼ニナルカラ
(元尾崎)
其レハ一ツノ問題ダ
(栗塚)
末項ハ「且其成業ヲ全ク棄却スルコトヲ要ス」ト致シマス
(元尾崎)
「約束シタル」デ宜カロウ
(栗塚)
「シタル」デ宜シウ御座イマス
(南部)
此「且」ト云フ字ハ響カヌ樣ダ
(淸岡)
「得スシテ全ク」トシタラ宜カロウ
(元尾崎)
「且」ト云フ字ヲ強クシタノダ
(村田)
「然レトモ其請求ヲ」デ宜カロウ
(南部)
「但其請求ヲ」トスルカ
(槇村)
但ガ宜シイ
(淸岡)
但ハ可笑シイ、全體此文章ハ禁ズルコトヲ得ト云フ風ニ見ヘル文章デス、其レヲ得ズトスレバ其通リニスルカト云フ樣ニナル
(南部)
スルカト云フニソウデナイ、但ト云フノデス
(淸岡)
「得スシテ其請求ヲ全ク棄却スルコトヲ要ス」ガ宜シイ
(南部)
「得スシテ」トハ云ヘマセン
(元尾崎)
但ヲ入レヌガ宜シイ
(槇村)
原案デ宜シイ
(栗塚)
原案ニシマシヨウ
(元尾崎)
二項ハ利益ニ關スルバカリデナイ、其人自ラデナケレバ訴權ハナイノデシヨウ
(南部)
之ハ動詞ノ方デスカラ利害ノ關係ガアレバ宜シイ
(元尾崎)
日本文デハ關係ガアレバ宜シイ樣ニ見ヘルガ英文デハ白ラ角力ヲ取ル人デナケレバ出來ナイ
(栗塚)
ソレハソウデス一番初メト云フトキニ訴權ヲ與ヘルカト云フト勇氣力量ヲ發逹サセルトキデナケレバイケナイ、人カラ論ズルトコウ云フ人デナケレバイケナイ
(元尾崎)
假令バ兩人デ角力ヲ取ル、此方ノ者ガ勝ツ、此方ノ奴ガ勝ツト云フ賭ヲスル、自分ガ取ラズトモ幾ラカヤルト云ヘバ利益ニ關スルトハ云ヘマイ
(栗塚)
ソウ云フ譯デハナイノデス
(南部)
自分ノ馬ヲ出シテ競馬ヲサセテモ宜カロウ
(元尾崎)
其レハ出來ナイ、自分デ乗ツテ駆ケ回ツタ人ガヤルノダ
(南部)
其レハ出來ソウナモノダ
(栗塚)
其レハ「又ハ農工商」ノ方ニ入ルノデス、運動ヲ爲ス人ノ爲メニ非ザレバ之ヲ許サズ又ハ何々ニ關スルニ非ザレバ之ヲ許サズデ御座イマス
(槇村)
「運動ヲ爲ス人又ハ利益ニ關シ」トシタラ宜カロウ
(栗塚)
其レハイケマセン、運動ヲ爲ス人ノ作業ニナリマスカラ「運動ヲ爲ス人ニアラサレハ之ヲ爲スコトヲ得ス」トスレバ宜シイ
(淸岡)
ソレヲ云フト保險者デモ同ジコトニナル
(元尾崎)
註ニ讓ルカ
(南部)
運動ヲスル人ガ資ケレバ利益ニ關スルト見レバ宜シイ
(元尾崎)
原文デハ自分ガ賭ヲスルノガ自ラスル樣ニナル
(南部)
「運動ヲ爲ス人ノ爲メ又ハ賭者ノ直接ニ參カル農工商ノ作業ノ成功ノ爲メ」トスレバ宜シイ
(槇村)
下ノ「亦」ハ入リマスカ
(栗塚)
入ラヌ樣デス
(南部)
前項ヲ受ケテ居ルカラ有ルカガ宜シイ
(槇村)
處ガ前項ニ在ルカラ削ルガ宜カロウ
(淸岡)
之ハ金デヤリマスカ
(南部)
金デモ品物デモ鰻飯デモ宜シイ
(大尾崎)
碁モ良カロウ
(栗塚)
註ニアリマス碁將棊ガ上手デモ職爭ニ勝ツコトモナシ兵隊ヲ引卒スルコトガ上手ニナツタト云フコトモナイカラ許サヌトアリマス
(元尾崎)
先ヅ許ストシテ置コウデハナイカ
(栗塚)
訴權ヲ與ヘル程ノ理由ハナイ
(大尾崎)
彼奴ハ碁ヲ知ヲヌカラダ
(栗塚)
併シ碁ヲ夜徹シ御打チニナツテモ構ヒマセン唯裁判所ニ訴ヘテ金ヲ取ルコトハ出來マセン
(西)
「亦」ハ刪ツタ方ガ宜シイ、前項デハ裁判上ノ訴權ノコトヲ云テ直グニ說キ明スノダカラ
(南部)
其レハ違ヒマス
(淸岡)
博奕ト賭事トハドウ云フ違ヒガアリマスカ
(南部)
少シ違ウ
(元尾崎)
賭事ト云フノハ彼奴ガ勝ツタラ幾ラヤルト去フノデ、博奕ハ自分ガヤルノダ
(村田)
尾崎サンノ碁ヲヤルノハ博奕ダ
(淸岡)
上ノ博奕デモ賭ニナツタ場合ノコトヲ云フノグロウ、其レヲ今一ツ二項デ委シク働キ方ヲ云フタノデシヨウ
(大尾崎)
之モ亦許サズ
(淸岡)
勇氣體量ナドハ許シマシヨウ、許シテモ賭事ニ基ク訴權ハコウデナケレバイケヌト云フノデシヨウ
(槇村)
自分デシナケレバイカヌ
(淸岡)
博奕デナケレバ許サヌ、併シ勇氣力量ハ許スガ、本人ガヤラナケレバ許サヌト云フノダ
(槇村)
ソウダガ、又ハ以下ハ違ウダロウ
(南部)
勇氣力量ハナクテモ宜シイ
(元尾崎)
賭事ト博奕ト區別ガ付クト角力ヲ取ルノハ博奕カ
(栗塚)
博奕デス
(元尾崎)
碁ヲ打ツノハ博奕ダガ競走ハ
(栗塚)
競爭モ博奕デス
(元尾崎)
ソウスレバ二項ハ博奕ニ基クト云ヒソウナモノダ
(村田)
博奕ハ前ニ云フテアリマス
(西)
賭事ハ人ノ事ヲヤル、博奕ハ自分デヤルノダロウ
(栗塚)
ソウデス
(南部)
同ジ樣ナモノデスガ又バカラ下ハ違ウ、又ハカラ下ハ人ノデモ宜シイ
(元尾崎)
人ノデモイケヌ
(栗塚)
註ニ一ハ政府トカ東京府トカデアツタ、今ニ幾ラヤルト云フ其ヤルト云ハレタ會社カラ訴ヘルコトガ出來ル、或ハ船大工ガ船ヲ造ツテ立派ナ船ダト思ツテ試シテ呉レヌカト云フトキ自分ガ乗ラズトモ船代金ハ直接ニ預ツテ居ル
(元尾崎)
ソウスルト角力取デモ自分ガ角力ヲ教ヘ込ンデ肥ラセテヤレバ宜シイ
(村田)
角力ハイケナイ其レガ爲メニ農工商ト云フコトガアル
(大尾崎)
先キヘ行キマシヨウ
本條ハ左ノ如ク決ス
第二項左ノ如ク改ム
賭事ニ基ク訴權ハ右ノ如キ運動ヲ爲ス人ノ爲メ又ハ賭者ノ直接ニ參カル農工商ノ作業ノ成功ノ爲メニアラサレハ亦之ヲ許サス
第三項「約束セラレ」ヲ「約束シ」ト改ム
第八百十一條朗讀ス
第八百十一條 其他ノ場合ニ於テ博奕及ヒ賭事ハ法定又ハ天然ノ何等ノ義務ヲモ生セスシテ之カ爲メ爲シタル債務ノ認知、更改又ハ保證ハ無効タリ〔第千九百六十五條〕
然レトモ有能力者ガ右ノ約務ニ憑リ任意ニテ辨濟シタルモノニ付テハ取戻スコトヲ許サス但勝者ノ方ニ於テ詭譎又ハ欺瞞アリタルトキハ此限ニ在ラス〔第千九百六十七條〕
(修正案) 第一項「生セスシテ」ヲ「生セス且」ト改ム
(槇村)
「法定」ト云フノハ
(栗塚)
法律デ定メタ義務ト云フノデ御座イマス
(元尾崎)
有能力者ニ限ラズ無能力者デモ良カロウ
(栗塚)
無能力デハイケマセン、二、三歳ノ赤児ガヤツテハ知リマセンカラ
(淸岡)
勝者ノ方ニ於テト云フノハ
(栗塚)
勝ツタ者ノ方デ騙シテハイケヌゾヨ
(淸岡)
受取ツタトキニ欺瞞シタノカ
(栗塚)
小児ヲ欺瞞ノハイケヌゾヨ
(淸岡)
受取ルトキ誰ガ訴ヘルトカ何トカ欺瞞シテ受取ル丈ケノ策略ヲシタノダ
(村田)
ソレモ入ルダロウ
(栗塚)
小児ヲ瞞シテ勝ツタトキハト云フノデ御座イマス
(淸岡)
「任意テ辨濟シタルトキハ取戻スコトヲ得ス」トシテ、全體之ハ無効デシヨウ
(栗塚)
無効有効ヲ論ジナイ拂フテ仕舞ヘバ取返ヘスコトハ出來ナイ、向ウデ瞞着シテ取タトキハ取返ヘシテ宜シイ、假ヘバ
(淸岡)
小児ト云フノニ欺瞞詭譎ガアツテハ困ルデハナイカ
(栗塚)
骨子ヲ指ノ間ニ挾ミテ蓋ヲ開ケルトキニ取換ヘテ來ルトカ又骨子ノ中ヘ鉛ヲ入レテ置クトカシテ小児ヲ瞞着スノデ御座イマス
(大尾崎)
之ハ宜シイ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第八百十二條朗讀ス
第八百十二條 官許ヲ得サル富講ハ訴權ナキ博奕及ヒ賭事ト同視セラル
被吿カ初ヨリ當事者ハ約束シタル金額又ハ有價物ノ引渡及ヒ辨濟ヲ實行スルニ意ナク只互ニ相場昻低ノ差額ヲ計算スルノミノ意アリタルコトヲ證スルトキハ商品又ハ公ノ證券ノ投機ノ定期賣買ニ付テモ亦同シ〔第千八百八十五年三月二十八日ニ議定シ□□□□ニ頒布シタル佛法律〕
商品又ハ公ノ證券ノ投機ノ定期賣買ニ付テモ初メヨリ當事者ハ約束シタル金額又ハ有價物ノ引渡及ヒ辨濟ヲ實行スルニ意ナク只互ヒニ相場昻低ノ差額ヲ計算スルノミノ意アリタルコトヲ被吿カ證スルトキハ亦同シ
(栗塚)
之ハ悉皆修正致シマシタ
(大尾崎)
結構々々
(村田)
原案デ宜シイ
(元尾崎)
「亦同シ」ト云フノハ訴ヘラレヌト云フノカネ
(栗塚)
博奕賭事ト同視セラルルト云フノデ御座イマス
(大尾崎)
修正ガ宜シイ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第八百十三條朗讀ス
第八百十三條 若シ前二條ノ場合ニ於テ被吿ヨリ無効ノ抗辯ヲ對抗セサルトキハ判事ハ職權ヲ以テ右無効ノ抗辯ヲ補充スルコトヲ得但契約又ハ請求ニ於テ債務カ博奕、富講又ハ相場差額ニ關スル賭事ヲ原由トスルコトヲ明示シタルトキニ限ル
(修正案) 「差額」ノ下左ノ如ク改ム差額ノ賭事ヲ原由トスルコトノ明白ナルトキニ限ル
(栗塚)
之モ修正ガ御座イマス
(元尾崎)
前二項ト云フノハ
(栗塚)
前二項ハ富籤ト賭博デ御座イマス
(元尾崎)
裁判官ガ見タ處デ之ハ富講デアルカ或ハ眞ノ博奕デアルカト云フコトガ明白ナルトキニ限ツテ被吿ノ抗辯ヲ補充シテヤルト云フト、其レヲ訴ヘテ來タラ貴樣ハ訴ヘル權ガナイト云テ刎ネ飛シテヤリソウナモノダ
(村田)
其理窟ダ
(元尾崎)
ケレドモ被吿ヲ喚出ス樣ダ
(南部)
極ク初メハ分ラヌカラ喚出サナケレバナリマセン
(元尾崎)
明白ニ分ツテ居レバ喚出スニ及バヌ受付ケヌト云フタラ宜カロウ
(大尾崎)
訴訟法ハ訴ヘテ來レバ何デモ被吿ヘ送逹スルコトニナツテ居リマスカラ、ソコデ對審ヲシタ上デナケレバ分ラヌ
(栗塚)
被吿カラ之ハ私ハ拂ヒマセン賭博デ御座イマスカラ
(元尾崎)
ソレニモ答辯書ヲ拵エナケレバナラヌカラ錢ガ掛ル
(南部)
調ベテ見テ博奕デナイカ知レヌ
(元尾崎)
之ハ賭博デ勝ツタノデスト云フタラドウシマス
(栗塚)
書記局デ喚出シマスカラ裁判官ハ見ナイ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
于時正午閉會