旧民法・法例(明治23年)

法律取調委員会 民法草案議事筆記 第57回

参考原資料

備考

  • 未校正のテキストデータです.
民法草案取得篇第五十七回議事筆記
自第七百六十九條至第七百八十三條
(尾崎委員)
ヤリマシヨウ
第七百六十九條朗讀ス
第二節 社員ノ權利及ヒ義務
第七百六十九條 會社ハ契約ノ日ヨリ始マル但明示又ハ默示ニテ他ノ期限又ハ條件ニ服シタルトキハ此限ニ在ラス〔第千八百四十三條〕
各社員ハ前同一ノ日ニ於テ及ヒ前同一ノ留保ヲ以テ其約束シタル出資ノ差出ヲ實行スルコトヲ要ス若シ之ヲ爲サヽルトキハ其社員ハ當然果實竝ニ利息及ヒ金額ニ對スルトキト雖モ遲延ノ爲メ損害アルトキハ其賠償ヲ負擔ス〔第千八百四十五條第一項、第千八百四十六條〕
(修正案) 左ノ如ク修正ス會社ハ契約ノ日ヨリ始マル但明示又ハ默示ニテ他ノ期限ヲ定メ又ハ條件ヲ付シタルトキハ此限ニ在ラス各社員ハ會社ノ始マル暗ニ於テ其約束シタル出資ノ差出ヲ實行スルコトヲ要ス若シ之ヲ爲ササルトキハ其社員ハ當然果實及ヒ利息ヲ負擔ス且遲延ノ爲メ損害アルトキハ出資ノ金圓ナルトキト雖トモ其賠償ヲ負擔ス
(栗塚報吿委員)
之ハ修正ガ御座イマス
(南部委員)
「商法ニハ出資ヲ差入ルル」トアル、之ハ「出資ヲ實行スル」トアル
(村田委員)
商法ハ登記ヲシタトキカラ始マリマシヨウ
(本尾報吿委員)
第三者ヘ對シテハ登記ヲシテカラデナケレバ始マリマセン
(村田委員)
ソウスルト此處ハドウデス
(本尾報吿委員)
之ハ社員間デ御座イマスカラ幾分カ違ヒガアロウカト思ヒマス
(栗塚報吿委員)
第三者ニ對スル樣ナ公吿ガナケレバ會社ハ無形人デモ何デモ無シ一人一人ト同ジデス
(南部委員)
九十四條ニ比照スルト除名セラルルモノト云フコトハ民法ニナイ、其レカラ負擔シタル出資ヲ差入レタルトキハト云フノハ九十四條ニ在ル、唯商事ハ百分ノ七ト利息ガ定マツテ居ル去レバ商事會社ハ特別ノ利息トスレバ宜シイ、民法ハ總テ損害賠償ダカラ格別ノ差ヒハナイ、唯除名スルト云フコトガナイバカリダ
(本尾報吿委員)
其處丈ケノ違ヒデス
(南部委員)
之ハ除名スレバ會社ガ解散スルダロウ
(栗塚報吿委員)
會社ガ成立ツ前ト思フ、五人カ六人多クテ十人位ノ人デ初メハ一個人ト看做シテ居ルカラ
(南部委員)
商法ノ方ハソウデナイ、其處ガ違ウ
(栗塚報吿委員)
民事ノハ各個人ガ義務ヲ負擔シテ居ルト云フノガ正則ニナツテ居ル「民事會社ハ當事者ノ意思ニ依リ無形人ト爲スコトヲ得」ト云テアルカラ平生ハ無形人デナイ
(南部委員)
其處ガ違フ
(淸岡委員)
七百六十六條ヲ修正シタ處カラ見ルト此處ノ精神ガ少シ違ヒバセヌカト思フ
(栗塚報吿委員)
違ヒハシマスマイ、資本ヲ株式ニ分ツトキハ商法ノ規定ニ從フテ商法通リニシテ仕舞ツタノデスカラ
(淸岡委員)
契約ノ日ヨリ始マルト云フ處ガ此處デハ素ヨリ民事商事ノ別ナク云フテアル樣ダガ、初メノ處デ考ヘテ見レバ民事商事ノ拔キ書ヲ以テ公吿スルト云フ處カラ見テモ餘程違ツテ居ル
(栗塚報吿委員)
矢張リ公吿スルノハ同ジコトデス商法ノ十九條デス
(淸岡委員)
末項ヲ刪ツタガ、此處デモドウシテモ但デモ加ヘテ商事會社ノ組織デアルトキハ商事ノ方ニ依ラナケレバナラヌト云フコトヲ知ラセンデハ困ル
(栗塚報吿委員)
其レハソウナツテ居ルノデス、資本ヲ株式ニ分ツトキハ商法ノ規定ニ從フデスカラ六十六條ハ意味ハ一ツモ改マリハシマセン唯無形人ト爲スト云フノヲ無形人ト爲スコトヲ得ト云ツタ丈ケデス
(淸岡委員)
處ガ起案者ノ旨意ト修正ト違フト思フ
(栗塚報吿委員)
六十六條ハ改メハシマセン唯諄々シイカラ刪ツタノデス
(尾崎委員)
出資ヲ爲サヌ折モ除名スマイガ此書方デハ除名セヌ樣ニナル
(栗塚報吿委員)
除名ト云フノハ一ツ出來テカラノコトデスカラ會社ガ初メニ成立チマスマイ
(淸岡委員)
愈良ケレバデスケレドモ私ニハ少シ分ラヌ、六十六條ノ旨意ガ起案者ノ旨意ト修正ト少シ違ウト思フ
(栗塚報吿委員)
六十八條ハ旨意ガ少シ違ヒマス
(南部委員)
民事ノ會社ト商事ノ會社ト其レ丈ケ違ウカト云フコトヲ講究シナケレバナラヌ
(栗塚報吿委員)
貴君ト私ト婚禮シテ一人ガ居ナクナツテモ婚禮ガ解ル、婚禮ガ自然ニ止ムノト同ジコトデス、其レニ基イテ居ルノデス金ガ集ツテ居ル會社ナレバ金ノアル限リダカラ人ニハ一向分ラヌ
(村田委員)
此條ハ良イト思フ
(栗塚報吿委員)
此處デ商法ト牴觸ハ起案者ニ聞カナケレバナラヌ、ソウシタコトナラバ何條ニ當ルト云フコトハ上デ分リソウナモノダ
(南部委員)
之デヤツテ宜シウ御座イマシヨウ、之ハ牴觸シテ居ルト思フ、商法デハ出資ノ差出シヲセヌトキハ除名スルト云フ、此方ハ除名ノ條ハナイ、民法ト商法ト牴觸シテ居ルニハ相違ナイガ牴觸シテモ民事ハ之デ宜シイト云フナレバ格別デス
(栗塚報吿委員)
私モ牴觸ガ無イトハ申シマセンガ其レヲ一々正シテ行キマスカ
(淸岡委員)
商事會社ト民事會社ノ區別ヲ七百六十八條ト六十六條ト切リ分ケテ置クト
(栗塚報吿委員)
六十六條ハ變リハアリマセン彼ノ前デス
(淸岡委員)
其前ナレバ會社ノ社名ヲ付シ抔ト云フ項ヲ刪ル譯モナイ
(栗塚報吿委員)
之ヲ刪ツタハ不要ダカラデス
(淸岡委員)
不要バカリデハナイ、意思ガ無形人ニアルトキハ無形人ニナルト云フノハ起按者ガ隨意デ民事ノ會社ダカラト云フ理窟デス
(栗塚報吿委員)
民事會社ハ佛蘭西ノ法律デハ總テ無形人デナイト云フテ居ル其理窟ハ私ガ無形人トスレバ第三者ニ害ヲ及ボスカラ商事會社ト同ジ制定デ世間ニ知ラセテ置カナケレバナラヌノデ御座リマスカラ尾崎サンノ御懸念モ無形人トシテアツタ以上ハ一人ガ退社スレバ會社ガ消滅スルカシナイカ
(淸岡委員)
六十六條デ商法ニ從フト云フト本條デモ契約ノ日ヨリ始マルト云フノハ取除ケデモナケレバドウカト思フ
(栗塚報吿委員)
之ハ資本ヲ株式ニ分ツタ會社丈ケノコトデス
(淸岡委員)
處ガ起案者ハ其積リデ書イタノデナイ、總テ會社ハ契約ノ日ヨリ始マルト云フノハ民事會社ノハ株式ニ分トウガ、分ツマイガ此通リヤツタノダロウ、併シ株式ニ分ツトキハ商法ニ從フト云フト
(南部委員)
社員間ノ權利義務ヲ規定シタモノデスカラ第三者ニ對スルコトガ重モニナツテ居ル
(淸岡委員)
社員ノ權利義務ト云フ上デハ云ヘルケレドモ契約ノ日ヨリ始マルト云フコトハ大體ノコトヲ云フタ條ダロウト思フ、解釋ノ仕方デ見ルト契約ノ日カラ始マルト云フケレドモ株式ニ分テハ商法ニ從フト云フナレバ差支ガナイガ起案者ト違フ
(栗塚報吿委員)
起案者ノ旨意ニハ背キマス併シ會社ガ契約ノ日カラ始マルノハ株式ニ分ツタ會社デモ分タヌ會社デモ契約シタ日カラ成立ツ、併シ別段ノ期限デモ定メテアレバ此限デナイト云フテ御座イマス
(淸岡委員)
處ガ商法ニハ契約ノ日カラ始マルト云フコトハナイ登記ノトキカラ始マル、故ニ明亮ニスルナレバ「商法ノ規定ニ從フトキ」トカ云フ字ヲ加ヘレバ完全ニナリヤセヌカト思フ
(栗塚報吿委員)
ソレハ七百六十六條ニ民事會社ガ當事者ノ意デ無形人トスルコトガ出來ル、無形人トスレバ登記公吿ヲスルト云フテアリマスカラ假令社員間デ契約ノ日カラ始マツテモ無形人ノトキハ登記公吿ノ日カラ始マラナケレバナラヌ、商法ニ云フタ會社ノトキハ商法ノ通リ登記公吿ヲシナケレバナラヌ
(淸岡委員)
ソウナツテ來ルト契約ノ日ヨリ始マルト云フハ惡ルイ
(栗塚報吿委員)
其レハ同ジコトデス、無形人トナツタトキハ登記公吿ヲシロト云フノデアリマスカラ
(淸岡委員)
之ハ民事會社バカリヲ云フタモノト今日ハ解釋シナケレバナラヌガ元トハソウデナイ
(南部委員)
元トハ民事會社バカリデス六十六條ニ在リマス
(淸岡委員)
意思ニ依テ無形人ト爲スト云フコトニナツテ來ルカラ無形人ト爲スニハ
(南部委員)
ソンナラ元トノ通リ意思ガ無形人ト爲ストキハ無形人トスルトシテモ商事會社ノ方式ニ從テ拔キ書ヲ以テ公布シナケレバ登記公吿ノ日カラ始マラヌト云フコトニナルカラ元トノ通リデモ牴觸シテ居ルト見ナケレバナラヌ
(淸岡委員)
登記公吿ヲ爲サントシテモ之ガ生ズル丈ケノコトデ若シシナクツテモ契約ノ日カラ始マル
(栗塚報吿委員)
無形人トナルト栗塚ト云フ名デ無ク捕鯨會社ト云フ名デ取引ヲスルカラ世間ニ知レテ居ラナケレバナラヌカラ登記公吿ヲシナケレバナラヌト云フノデ御座リマス
(淸岡委員)
以前ノ通リナレバ無形人ト爲ストキハ縱令登記公吿ガ無クテモ無形人ト爲シテ取扱ツテ裁判ガ出來ル
(栗塚報吿委員)
併シ第三者ニ對シテハ登記公吿ガ無クテハ始マリマセン、無形人トシタ以上ハ登記公吿ガ無ケレバ第三者ニ對シテイケナイト云フノデ御座リマス
(淸岡委員)
第三者ニ對シテイケナイト云フノガ見ヘルカネ
(栗塚報吿委員)
其レハ六十一條デ分リマス
(南部委員)
商法ト牴觸シテ居リマス所ハ單リ此條ノミナラズ起案者ヘモ意味ヲ聞キマシテ此方カラ商法ノ意味ヲ以テ斯樣ナ旨意ニシテハドウカト充分ニ「ボアソナード」ノ理由ヲ盡サセテ報吿委員デ調ベテ出シタラ宜シウ御座リマシヨウ
(委員長)
之ハ牴觸シタト云ヘバ牴觸スルガ牴觸セヌト思フ
(栗塚報吿委員)
此處バカリデハ御座イマセン全體ノコトデス
(委員長)
其レガ宜シイ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決シ第一項商法ト牴觸ノ廉ハ起案者ノ質問ノ上報吿委員ニテ調査スルコトトス
第七百七十條朗讀ス
第七百七十條 社員カ會社ニ對シ自己ノ藝術又ハ勞力ヲ約束シテ之ヲ會社ニ供スルコトヲ欠キタルトキハ其社員ハ他ノ社員ノ撰擇ニ隨ヒ會社ニ對シ或ハ其義務ノ履行ヲ欠キタル當時ヨリ會社ノ受ケタル損害ノ賠償或ハ其時間又ハ藝術ヲ會社外ニ用ヒテ得タル利益ノ交付ヲ負擔ス〔第千八百四十七條〕
(修正案) 「社員」ノ下「約束シテ」迄ヲ左ノ如ク改ム就員ニシテ會社ニ對シ自己ノ藝術又ハ勞力ヲ約束シタル者カ
(栗塚報吿委員)
「社員ニシテ會社ニ對シ自己ノ藝術又ハ勞力ヲ約束シタルモノナルカ」ト修正致シマス
(村田委員)
「ニシテ」ハ嫌厭ダ
(南部委員)
勞力ト藝術ト違ヒマスカ
(栗塚報吿委員)
違フデス
(南部委員)
先キヘ行クト同ジニナル
(村田委員)
違ツテ宜シイ、藝術ハ知慧ニ係ツタコトデ、勞力ハ働イテ仕事ヲシテ行クノダ
(栗塚報吿委員)
知慧ニ勞力ヲ假シタノハ勞力トハ申シマセンカ
(村田委員)
日本デハ勞力トハ云ヘマイ
(栗塚報吿委員)
向フノハ入リマス
(村田委員)
日本デ勞力ト云フト知慧ヲ假シタノハ入ラヌ
(南部委員)
ソウスルト先キノ勞力ト云フコトハ無クナツテ仕舞フ
(村田委員)
其レハ略シタノダカラ加ヘレバ宜シイ
(委員長)
修正ガ宜シイ樣デス
(村田委員)
先キノ方ニモ伎藝バカリデ略シテアルガ勞力モアルノダロウ
(栗塚報吿委員)
無論入リマス
(村田委員)
其レナラ前ノ勞力ト云フ字ヲ刪ツタ方ガ宜シイ
(栗塚報吿委員)
伎藝トバカリデハ勞力バ入ラヌト見ヘマスガ
(村田委員)
ソンナラ前デ勞力ヲ入レナケレバ宜イ
(南部委員)
先キノ藝術トアル處ハ勞力ハ入ラヌト見マスカ
(村田委員)
ソウデス、ソンナラ前デ藝術又ハ勞力ト云ハヌンデ宜シイ
(栗塚報吿委員)
原文デハ字ガ違ツテ屠リマスガ意味ハ同ジコトデス
(村田委員)
「スキル」ノ方ニハ勞力ハ入リマセン
(南部委員)
ソウスレバ勞力ノトキハ負擔スルニ及バヌ
(村田委員)
云フテナイカラ負擔スルニ及バヌ
(南部委員)
ソウ拘泥シテハ困ル
(村田委員)
拘泥デナイ初メニ藝術又ハ勞力トアルカラ
(栗塚報吿委員)
御加ヘニナルノハ至極宜シイ初メニ例ガアリマスカラ
(南部委員)
入ツテ居ラヌト云フノハ酷イ
(村田委員)
入ツテ居ラヌト云ハレテモ仕方ガナイ
(尾崎委員)
勞力ト藝術ハ兼テ云テ先キデ省イテ居ルカラ之デ宜シイ
(委員長)
コウ云フ文例ニテ前ニ書イテ後チハ省イテ一ツニ含マセサルト云フノナレバ其文例デ一切先キモ一方ヲ書イテ一方ヲ略セバ宜シイガ時トシテハ兩方ヲ書キ又時トシテハ一ツ外書カヌト云フノハ困ル是レ等モ多數ノ人ニ分ラヌト云フコトニナリ公衆ニ間ヘバ書イテナイ方ハ入ツテ居ナイト云フニ違ヒナイカラ
(尾崎委員)
コウ云フコトハ先逹テモアツテ入レタコトガアリマス
(委員長)
入レタコトモアリ入レヌコトモアルト云フノハ困ル前ニ揭ゲタラ引戻シテ一ト言丈ケ擧ゲルカ或ハ兩方擧ゲルカ一定ニセヌト良クナイ
(南部委員)
時間ト云フノハ分ラヌ
(栗塚報吿委員)
醫者ノ如キハ脈ヲ診ル丈ケデ脈ヲ診ナカツタ、ソウシテ他ヘ往ツテ居タ爲メニ時間ガ何時間ト云フ樣ナコトデ
(西委員)
却テ時間ハ勞力バカリノ樣ニ見ヘマスネ
(尾崎委員)
ドウモソウ見ヘマス
(栗塚報吿委員)
或ハ其時間卽チ藝術ト云フモ同ジコトデス
(西委員)
藝術ハ藝術ノ方ニ價ガアルカラ
(栗塚報吿委員)
藝術ヲ刪ツテ勞力バカリニナスツテハ如何デス勞力ノ賃貸ト云フ處ニモ勞力丈ケデスカラ
(尾崎委員)
勞力デ藝術モ籠テ居ルト見レバ宜シイ
(栗塚報吿委員)
生命保險會社ニ居ル醫者ガナツテ私ハ金ハナイガ診察ヲスル、其レハ勞力トモ云ヘマシヨウ
(南部委員)
勞力トシテハドウデス
(尾崎委員)
時間ハ刪リマスカ
(南部委員)
「時間又ハ勞力」トシタ方ガ宜シウ御座イマシヨウ
(委員長)
「其時間」ヲ刪ツタ方ガ宜シイ
(南部委員)
義務ヲ缺イタル時間デ御座イマスカラアツタ方ガ宜シウ御座イマシヨウ
(委員長)
ソウデハアルマイ
(栗塚報吿委員)
會社ニ供スル爲メデアルニ旅行ヲシテ御醫者サンガ來ナイ時間デス
(委員長)
其時間ハ損害賠償ノ内ニ入リハセヌカ、損害賠償外ニ時間ガアリ樣ハナイ
(南部委員)
會社ノ損害ヲ償フカ或ハ自分ノ得タ利益ヲ寄越スカト云フノデス
(委員長)
他ノ道ナラ損害賠償ニナルカ、得タ利益ニナルカ孰レカデ、其外ニ時間ノアリ樣ハナイ
(尾崎委員)
時間ヲ云ハレテ勞力バカリニシテ時間ヲ刪ツタラ宜カロウト思フ
(南部委員)
併シ實際時間デ勘定シテモ宜シイト云フノデ御座イマスカラ
(栗塚報吿委員)
時間ヲ他デ使ウト云フノハ卽チ他デ働イタト云フノデ御座イマスカ
(尾崎委員)
其利益ハ會社ヘ入レルカラ無クテモ宜シイ
(南部委員)
前ノ藝術ヲ刪リマシヨウ
(栗塚報吿委員)
損害ノ賠償或ハ其勞力ヲ會社外ニ用ヒテ得タル利益デ宜シウ御座イマス
(委員長)
其レデ宜シイ
(淸岡委員)
時間ヲ負擔スルト云フノデハアリマセンカ
(栗塚報吿委員)
ソウデハアリマセン
(南部委員)
時間ヲ負擔スルト云フノハ分ラヌ
(栗塚報吿委員)
時間ヲ會社外ニ用ヒテ得タル利益ト云フノデ御座イマス
(委員長)
先キヘ行キマシヨウ
本條左ノ如ク決ス
社員ニシテ會社ニ對シ自己ノ勞力ヲ約束シタル者カ之ヲ會社ニ供スルコトヲ缺キタルトキハ其社員ハ他ノ社員ノ撰擇ニ隨ヒ會社ニ對シ其義務ノ履行ヲ缺キタル當時ヨリ會社ノ受ケタル損害ノ賠償或ハ其勞力ヲ會社外ニ用ヒテ得タル利益ノ交付ヲ負擔ス
第七百七十一條朗讀ス
第七百七十一條 動產ト不動產トヲ問ハス特定物ノ所有權ヲ會社ニ出資ト爲スコトヲ述ヘタル社員ハ會社ニ對シ賣主ニ對シ物ノ追奪面積又ハ數量ノ不足及ヒ隱レタル瑕疵ノ擔保人タリ〔第千八百四十五條第二項〕
若シ社員カ物ノ收益ノミヲ會社ニ約シタルトキハ賃貸人ニ等シク擔保ノ責ニ任ス
(修正案) 「賣主ニ對シ」ヲ「賣主ノ如ク」ト改メ「賃貸人ニ等シク」ヲ「賃貸人ノ如ク」ト改ム
(栗塚報吿委員)
「賣主ノ如ク賃貸人ノ如ク」トヤリマシタ
(尾崎委員)
成程其レガ宜シイ
(村田委員)
「賣主ニ於ケル如ク」ト云フ樣ニ書イテアル
(南部委員)
賣主ニ於ケル如クト云フト、何カラ何々ニ於ケルト云ハナケレバ分ラヌ
(委員長)
先キヘ行キマシヨウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第七百七十二條朗讀ス
第七百七十二條 若シ結社契約ヲ以テ社員中ニテ一名又ハ數名ノ管理人卽チ業務擔當者ヲ指定シタルトキハ其各自ハ己レニ付與セラレタル委任ノ權限ヲ踰エサルコトヲ要ス〔第千八百五十六條第一項〕
權限ノ定マラサル管理人卽チ業務擔當者ハ共同ニテ又ハ各別ニテ管理ノ通常ノ所爲ヲ爲スニ止マル〔第千八百五十七條〕
又管理人卽チ業務擔當者ハ會社ノ目的中ニ存スル最大重要ノ所爲ヲ共同ノミニテ爲スコトヲ得異議アル場合ニ於テハ爭ハレタル所爲ヲ中止スルコトヲ要シ其所爲ハ會合シタル社員議決權ノ多數ヲ以テ之ヲ決ス〔第千八百五十八條〕
(修正按) 第二項「卽チ業務擔當者」ノ七字ヲ刪ル第三項「共同ノミニテ」ヲ「共同ニテノミ」ト改メ「得」ノ下「但」ノ一字ヲ加ヘ「多數」ヲ「過半數」ト改ム
(栗塚報吿委員)
前ニ「管理人卽チ業務擔當人」トヤリマシタカラ是處モ「卽チ業務擔當人」ヲ刪リマシタ
(村田委員)
業務擔當者ガ良カロウト思フ商法デモソウナツテ居ルカラ
(栗塚報吿委員)
初メニハ云ハナケレバナラヌデシヨウ
(村田委員)
初メモ「一名又ハ數名ニ於ケル擔當者」デ宜シイ
(南部委員)
初メヲ刪ルノハ良クナイ
(村田委員)
商法ニハ「業務擔當者」トナツテ居ル
(南部委員)
商法ト一所ニスルニハ及バヌ
(栗塚報吿委員)
一ツハ御置キニナツタ方ガ良イ
(尾崎委員)
三項ハ
(栗塚報吿委員)
三項ハ「又管理人ハ會社ノ目的中ニ存スル最大重要ノ所爲ヲ共同ニテノミ爲スコトヲ得但異議アル場合ニ於テハ爭ハレタル處爲ヲ中止スルコトヲ要シ其所爲ハ社員ノ多數ヲ以テ之ヲ決」ト致シマシテ「會合シタル」ト「議決權」ハ起案者ガ刪ツテ來マシタ
(西委員)
過半數デハアリマセンカ
(栗塚報吿委員)
無論過半數デ御座イマスガ、比較多數トカ完全多數トカラ書クナレバ過半數デ御座イマスガ、起案者カラ「アブクルテーマグルム」ダト云テ來レバ過半數デ御座イマスガ、未ダ問合中デ御座イマスカラ
(村田委員)
七百六十五條ニモ藝術ト云フコトガアル、アレモ勞力トシナケレバナリマセン
(南部委員)
ソウデス金圓又ハ勞力ヨリトスレバ宜シイ
(栗塚報吿委員)
七百六十五條ハ「金圓又ハ勞力ヨリ成ルコトヲ得」ト致シマス
(村田委員)
會社定款ト云フダカラ此處モ會社契約デ宜カロウ
(栗塚報吿委員)
其レデモ宜シイ
(委員長)
ソウ修正シマシヨウ
(村田委員)
管理人ハ業務擔當者ノ方ガ良イ樣ダ商法ナドハ「マネシア」ハ業務擔當者トナツテ居ル此處モ同ジコトダ
(委員長)
之ハ良イデシヨウ「管理人卽チ業務擔當者」ト一度書イテ其レカラ先キハ管理人ニト書イテモ違ハヌカラ宜シウ御座イマシヨウ
(南部委員)
「カルクード」ガ商法ノ九十一條ヲ引イテ居リマス九十一條ハ業務擔當ノ任アル云々トアツテ此處ハ委任シテナイ處ハ民法デハイケヌ積リガ、商法デハ委任シテ無クテモ廢罷ノ權ガアルト云フテ居ル其レガ違ヒマス
(委員長)
其レガ違ウネ
(南部委員)
矢張リ民事ト商事ト違ウ所デシヨウ代務人ハ民法ト違ツテ居リマスカラ
(委員長)
民事デハ委任ガナケレバ廢罷ノ權ガナイ、商事ナレバ廢罷ノ權ハ委任ガナクテモアル樣ニナル
(南部委員)
ソウデス
(栗塚報吿委員)
之モ起案者ニ聞ク箇條ニナツテ居リマス
(委員長)
先キヘ行キマシヨウ
本條ハ左ノ加ク決ス第一項「結社契約」ヲ「會社契約」ト改ム第二項「卽チ業務擔當者」ノ七字ヲ刪ル第三項左ノ如ク改ム又管理人ハ會社ノ目的中ニ存スル最大重要ノ所爲ヲ共同ニテノミ爲スコトヲ得但異議アル場合ニ於テハ爭ハレタル所爲ヲ中止スルコトヲ要シ其所爲ハ社員ノ多數ヲ以テ之ヲ決ス
第七百七十三條朗讀ス
第七百七十三條 若シ結社契約ヲ以テ何レノ社員ニモ管理權ヲ與ヘサリシ場合ニ於テ總社員ノ一致ニテ之ヲ定メサルノ間ハ社員ノ各自ハ前條ニ定メタル所爲ヲ同條ニ記載シタル條件ニ從ヒテ爲スノ權ヲ有ス〔第千八百五十九條第一號〕
(栗塚報吿委員)
「結社契約」ヲ「會社契約」ト致シマス
(南部委員)
商法ノ八十八條ニ當リマス、之ハ餘リ違テ居リマセン唯總社員ノ一致ヲ以テ定メザル間ハト云フノガ文面ニ現ハレヌ丈ケデ意味ハ同ジコトデス
(委員長)
先キヘ行キマシヨウ
本條ハ「結社契約」ヲ「會社契約」ト改ム
第七百七十四條朗讀ス
第七百七十四條 結社契約ヲ以テ管理人ニ選任セラレタル社員ハ正當ノ原由アルトキ又ハ管理人タル社員ノ承諾ヲ併セ總社員ノ同意アルトキニアラサレハ其委任ノ期限内ハ其解任ヲ爲スコトヲ得ス〔第千八百五十六條第二項〕
結社契約以後ノ所爲ヲ以テ選任セラレタル者ハ之ヲ選任シタルト同一ノ方法ヲ以テ其承諾ヲ要セスシテ其解任ヲ爲スコトヲ得〔同上〕
(修正按) 「管理人タル社員ノ」八字ヲ刪リ承諾ノ上「其」ノ一字ヲ加ヘ「委任」ノ上ノ「其」ノ一字及ビ「解任」ノ上ノ「其」ノ字ヲ刪ル第二項「解任」ノト一ノ「其」ノ字ヲ刪ル
(栗塚報吿委員)
之モ「結社」ハ「會社」デ御座イマス之ハ一項ノ「又ハ管理人タル社員ノ」ヲ刪リマス其他「其」ト云フ字ヲ刪リマス
(村田委員)
「會社契約以後ノ所爲ヲ以テ」ト云フノハ
(栗塚報吿委員)
「アクト」デ御座イマスカラ「契約」デ宜シイノデス
(南部委員)
「合意」ト直シタカラ「合意」ガ宜シイ
(栗塚報吿委員)
合意ヲ以テトシテハ如何デス
(村田委員)
合意ガ宜シイ
(委員長)
合意デ宜シイカ
(南部委員)
七百八十四條モ契約トアリマスカラ契約トシマシヨウ
(栗塚報吿委員)
契約デ宜シウ御座リマス
(尾崎委員)
合意デ約束シテモ一方ノ承諾ヲ經ナイデ解任シテモ宜シイカ
(南部委員)
ソウデス選任シテアルト同一ノ方法デ宜シイ會社ノ規則デ其レヲ改メルト會社ノ規則ヲ改メルコトニナル其レデ本人ガ承諾ヲ經ナケレバナラヌ其後ニヤツタノハ會社契約ニ關係無ク元ト總員デヤツタラ總員デヤツテ宜シイ
(淸岡委員)
結社契約ノ方ガ宜シイ
(南部委員)
商法モ會社契約トアリマス
(栗塚報吿委員)
原文ニハ以後ノ契約ヲ以テトアリマス
(委員長)
コウ云フ處ハ「解任ヲ爲スコトヲ得ス」ヨリ「ラルル」ノ方ガ良イ樣ダ社員ガ解任スル樣ニ見ヘル
(南部委員)
「之ヲ解任スルコトヲ得ス」トシテハ如何デス
(委員長)
其方ガ良イ
(栗塚報吿委員)
ソウシテ二項ヲ「之ヲ解任スルコトヲ得」ト致シマス
(委員長)
「社員ハ之ヲ解任スルコトヲ得」デ宜シイカネ會社ト云フモノガ居レバ宜シイカ
(尾崎委員)
其承諾ト云フノハ社員ノ承諾ヲ併セテ總社員ノ同意ガアツタ折ハ之ヲ解任スルコトガ出來ル
(南部委員)
七百七十六條ヲ御覽ナサイ「處分ハ之ヲ定ム」トアリマス
(委員長)
其レハ完全多數ト云フモノガアルカラ宜シイ
(栗塚報吿委員)
社員ノ同意アツタ折ハ社員ヲ解任スルコトヲ得デ御座リマス
(南部委員)
七百五十九條ニモアリマス
(委員長)
ソウスルカ
(南部委員)
契約以後ノ契約ト云フト最初ノト後ノトドウ云フ譯デ違ウカ、最初ニハ承諾ガナケレバ出來ナイ、會社ガ出來タ以上ハ約束デ雇バレルカラ構ハヌト云フノカ
(栗塚報吿委員)
會就定款ニ影響ハ來マセンカラ假令會社契約ノ定款ガアソテ社員ノ一致デナケレバイケナイ、多數デハ撰任ガ出來ナイト定マツテ其人ガ死ンデ代ハツタ人ガ出テ多數デ定メタ、其代ハリニスルノハ多數デ宜シイト云フノデス
(南部委員)
過半數デ定メレバ過半數デ宜シイ
(委員長)
之デ食事ニシマシヨウ
本條ハ左ノ如ク決ス
會社契約ヲ以テ管理人ニ選任セラレタル社員ハ正當ノ原由アルトキ又ハ其承諾ヲ併セ總社員ノ同意アルトキニアラサレハ委任ノ期限内ハ之ヲ解任スルコトヲ得ス會社契約以後ノ契約ヲ以テ選任セラレタル者ハ之ヲ選任シタルト同一ノ方法ヲ以テ承諾ヲ要セスシテ之ヲ解任スルコトヲ得
(委員長)
ヤリマシヨウ
第七百七十五條朗讀ス
第七百七十五條 社員又ハ社員ニアラサル管理人ヲ選任シタル方法ノ如何ヲ問ハス若シ其中ノ一人又ハ數人ノ死亡、辭任又ハ解任アリテ是等ノ事件ニ因リ會社ノ解散セサルトキハ社員議決權ノ多數ヲ以テ其補闕ヲ爲ス
(修正按) 「多數」ヲ「過半數」ト改ム
(栗塚報吿委員)
「議決權」ハ皆刪リマス
(村田委員)
社員ノ管理人ト云フノハ掛リガ惡ルイデハナイカ、「社員ナルト否トヲ問ス」ト云フ樣ニ書クト宜シイ
(栗塚報吿委員)
社員又ハ社員ニアラザルデス、社員ナル管理人ト社員デナイ管理人トデス
(栗塚報吿委員)
佛文デハ社員又ハ社員デナクトアリマス
(村田委員)
每時ノ文例ダト社員ハ管理人ニ掛ラヌ
(淸岡委員)
ソウハ讀メナイ、社員ノ管理人ト社員ニアラザル管理人ダ
(尾崎委員)
之デ良ク分ル
(西委員)
讀ンデ疑ヒハアリマセン
(栗塚報吿委員)
直セバ管理人ノ社員タルト否トヲ問ハズ之ヲ選任シタル方法ノ如何ヲ問ハズト書カナケレバナラヌガ其レハ可笑シイ
(淸岡委員)
原按デ宜シイ
(栗塚報吿委員)
佛文デハ管理人社員又ハ社員デナイトアリマス
(淸岡委員)
「多數ヲ以テ其補闕ヲ爲ス」ト云フト多數ガ補闕ノ任ニ當ル樣ニ見ヘハセヌカ
(村田委員)
ソウハ讀メナイ多數ヲ以テトアルカラ
(淸岡委員)
多數ノ人ガ爲スカ
(村田委員)
多數ノ人ガ定メル
(南部委員)
補闕ヲ刪ツテモ宜シイ
(栗塚報吿委員)
補闕ヲ選任スデ御座イマス
(淸岡委員)
多數ニテ一人ノ代ハリヲスル樣ニナル
(南部委員)
其補闕ハ社員ノ多數ヲ以テ之ヲ決スデ宜シイ
(栗塚報吿委員)
「補闕ヲ決ス」デ宜シイ
(委員長)
「補闕ヲ決ス」ガ宜シイ
本條ハ左ノ如ク決ス
「議決權」ハ起案者ニ於テ刪リ「其補闕ヲ爲ス」ヲ「其補闕ヲ決ス」ト改ム
第七百七十六條朗讀ス
第七百七十六條 會社定款ノ執行ニ付キ爲スヘキ總テ其他ノ處分ハ亦社員議決權ノ完全多數ヲ以テ之ヲ定ム
定款ヲ變更スルコト又ハ定款ニ定メサル所爲ヲ爲スコトニ關シテハ總社員ノ一致ヲ必要トス
右ハ其定款又ハ法律ノ之ニ反スル規定ヲ妨ケス
(修正按) 第一項ハ「完全多數」ヲ「過半數」ト改ム
(栗塚報吿委員)
「完全多數」ハ殊更ニ「完全多數」ト書キ、外ノハ多數ト書イテアルノハ、外ハ完全多數デナイト云フ嫌ヒガアルガ、何ノ爲メニ完全多數ト云フ字ヲ入レタカト云フテ聞キニヤツテアリマスカラ返答次第デ「完全」ト云フ字ハ消ヘルダロウト思ヒマスカラ假リニ御置キヲ願ヒマス
(尾崎委員)
「總テノ其他ノ」ト云フ字ハナケレバナラヌカ
(栗塚報吿委員)
前ニ在リマシタカラ其レデ「其他ノ」ト云ヒマシタ
(委員長)
「議決權」ト云フ字ヲドウシテ刪ルノダロウ
(栗塚報吿委員)
其處ヘ出席シテロヲキク人丈ケノ樣ニ聞ヘルカラ「議決權」ヲ刪ルト云フノデ御座リマス
(南部委員)
商法ノ八十三條ト同ジデス重複ダト云フノデス
(村田委員)
定款ヲ變更スルト云フコトハ定款ニ爲シタル所爲ヲ爲スト云フノデスカ
(栗塚報吿委員)
定款ニ外レルト云フノデ御座イマス、定款ヲ履マサルコトデス
(村田委員)
定款ニ反シタル所爲ヲ爲スコト又ハ定款ニ揭ゲナイコトヲ爲ストキハ
(栗塚報吿委員)
成程定款ヲ變更スルヨリ「定款ニ背キ又ハ定款ニ定メサル所川爲ヲ爲スコトニ關シ」ト云フノデス
(淸岡委員)
元譯ニハ定款ニ觸ルルコトトアル
(栗塚報吿委員)
之ハソウ御改メニナル方ガ宜シウ御座イマシヨウ
(村田委員)
詰リ定款ニ違反シタルコトトシタ方ガ宜カロウ
(栗塚報吿委員)
「定款ニ違フコト」デモ宜シイ
(委員長)
前項ト同ジニナリハセヌカ
(栗塚報吿委員)
アレハ執行デス
(委員長)
定款ノ執行ニ付テ爲スベキコトノ外ダロウ
(栗塚報吿委員)
外ノ處分ト云フハ前條ノ外デス
(委員長)
前條ノ外ト云フノナラ總テ入ルダロウ
(南部委員)
執行ニ關シテ入ルノデス
(委員長)
前ノハ定款ノ執行ニ付テ爲スベキ總テノ其他ノダカラ法律ニ揭ゲテナイモノノ處分ハト云フノダロウ
(栗塚報吿委員)
管理人ヲ選任スルコトハ別ニ云フガ其外ノコトハ
(南部委員)
「其他會社定款ノ執行ニ付キ盡スヘキ總テノ處分ハ」デモ宜シイ
(栗塚報吿委員)
其他ハ入ラヌコトデス何カ無イカト云フト前條ニ云フテ居ル外ノモノモ矢張リ多數デナケレバナラヌ
(尾崎委員)
其他ヲ刪ロウ
(淸岡委員)
其他ヲ刪ルト前條ヲ置イタコトガ分ラヌ
(南部委員)
其レデハ「其他會社定款ノ執行ニ付キ」ガ宜シイ
(委員長)
「其他」ヲ上ヘ入レ樣、之ハ商法ト重複カ
(南部委員)
重複シテ居リマス
本條ハ左ノ如ク決ス其他會社定款ノ執行ニ付キ爲スヘキ總テノ處分ハ亦社員ノ完全多數ヲ以テ之ヲ定ム定款ニ違フコト又ハ定款ニ定メサル所爲ヲ爲スコトニ關シテハ總社員ノ一致ヲ必要トス第三項ハ原按ニ決ス
第七百七十七條朗讀ス
第七百七十七條 若シ第三者カ會社ト業務擔當ノ任アル社員ノ一人トニ對シテ同本性ノ債務ヲ負擔シタルトキ其第三者カ二箇ノ債務ヲ消滅セシムルニ足ラサル金圓又ハ有價物ヲ右ノ社員ニ辨濟スルニ於テハ其社員ハ會社ノ債權ノ價額ニ比較シタル自己ノ債權ノ價額ノ割合ヲ以テスルニアラサレハ自己ノ債權ノ辨濟ニ充當スルコトヲ得ス然レトモ債務者ノ爲シタル充當ハ之ヲ遵守スルコトヲ要ス〔第千八百四十八條〕
然レトモ若シ債務者カ社員ノ債權ニ付キ全部ノ充當ヲ爲スニ正當ノ利益ヲ有セスシテ其充當ヲ爲シタルトキハ社員ハ辨濟ニ於テ其割合ニ應スル部分ヲ會社ニ交付スルノ責ニ任ス
債務者又ハ社員カ有効ナル充當ヲ爲サヽルトキハ第四百九十三條ニ從ヒ法律上ノ充當ノ規則ヲ適用ス
(修正按) 「業務擔當」ノ四字ヲ「管理」ト改ム
(栗塚報吿委員)
「業務擔當」ハ管理ト改メマス「部分」ハ翻譯デ「持分」ニ改マリマシタ
(村田委員)
二項ノ部分ト云フノハ今迄ノ字デスカ
(栗塚報吿委員)
ソウデス
(村田委員)
正當ノ利息デハアリマセンカ
(栗塚報吿委員)
正當ノ權利ト云フ意味デスカラ「利益」デス「利息」デハ何ノコトカ分リマセン
(淸岡委員)
二項ハ同ジコトノ樣ニ思フガソウデハアリマセンカ
(栗塚報吿委員)
又ハ一都デス、之ハ全部ノ充當田ヲ爲ス
(南部委員)
前ハ利益ヲ生ジ此處ハ利益ヲ生ゼヌ場合デス
(淸岡委員)
社員ハ割合デ充當ヲ受ケルシ次ノ項ハ利益ヲ生ゼズシテ充當ヲ社員ニ爲シタトキハ矢張り社員ノ割合ヲ以テ行クノデシヨウカ
(南部委員)
前ノ然レドモカラ上ハ唯持テ來タトキノ話シデ、然レドモカラ下ハ債務者ガ自分ノ利益ノ爲メニ充當シタノデス
(栗塚報吿委員)
之ハ會社ノ方ヘ出ストカ社員ノ方ヘ出ストカ
(淸岡委員)
然レドモ以ドハ債務者ノ爲シタル所爲ヲ進守スルト云フノハ債務者ニ對シテノ充當ハ債務者ノ定メタ通リニシナケレバナラヌガ、會社ト社員ノ權ハ割合ヲ付ケナケレバナラヌト云フノダロウ
(南部委員)
此前ハ債權者ガ充當スルノデス
(淸岡委員)
債權者ハ卽チ社員デ、會社カラモ借錢ガアル自分ノ方デ貸シタノモ右リルトキカ
(南部委員)
債權者ガ充當スル場合ト債務者ガ充當スルトキトアリマス
(村田委員)
默ツテ居レバ兩方ヘ分ケナケレバナラヌ
(栗塚報吿委員)
是レ等ハ商事會社ニハ起ラヌ論デス
(淸岡委員)
持分ト云フノハ
(栗塚報吿委員)
持分ト云フノハ勝手ニ譯シテ來ナケレバナラヌカラ直リマスガ、分ケ前ト云フ者ガ分ケル場合ガ御座リマス、自分ノ部分ト云フノデス「分ケ前」トカ「持前」トカ「取リ前」トカ云フノデ權利モ義務モ持分ニナル
(淸岡委員)
此處ハ前項ノ處カラ云フト正當ノ利益ヲ有シテ充當シタトキハ前項ノ如ク割前ヲ以テ債權ヲ充當スル樣ニナルト云フコトデアリソウナモノダ
(南部委員)
部分ト云フ方ガ宜シイ樣ダ
(栗塚報吿委員)
「部分」ノ方ガ宜シウ御座イマス社員ノ持分ト云フ意味デハナイカラ
(淸岡委員)
「部分」ニシテ分リ惡イ
(栗塚報吿委員)
之ハ部分ト御換ヘヲ願ヒマス
(委員長)
之ハ良ク翻譯局ト相談セヌト良クナイ
(栗塚報吿委員)
何處デモ「ハーク」ト云フタラ持分ト譯ソウト云フノデ直シマシタガ、之ハ社員ノ部分ト云フノデ御座イマセンカラ
(村田委員)
應ズル方ト云フ方ガ宜シイ
(委員長)
「部分」ノ方ガ分ル
(栗塚報吿委員)
「都分」ト御改メナスツテ翻譯ト相談シマス
(村田委員)
「社員ハ其辨濟ニ於テ」トカ「右辨濟ニ於テ」トカ云ハヌト分ルマイト思フガ、何カアリマセンカ
(栗塚報吿委員)
アリマセン
(南部委員)
前項ニ債權ノ辨濟トアルカラ無クテ宜シイ
(村田委員)
「サツチ」ト云フ字ガアリマス
(栗塚報吿委員)
「辨濟ニ於ケル割合」トアリマス
(南部委員)
「於ケル」ガ宜シイカ知レヌ
(淸岡委員)
全部ノ充當ト云フト金額ヲ拂フテ仕舞ツタ樣ニナル
(南部委員)
此「其」ハ辨濟ヲ指シテ居ルノダロウ
(栗塚報吿委員)
ソウデス
(南部委員)
全部ノ充當ト云フ處ガ餘リ縁ガ長キニ過ルカラダ
(村田委員)
正當ノ利益ヲ有セザル社員ノ充當ヲ爲シタルト書ケバ良ク分ル
(南部委員)
債務者ガ利益ヲ有セザルデス
(栗塚報吿委員)
債務者ノ利益ト云フモノハ抵當ニ入ツテ居ル物ヲ受出ストカ何トカ云フノデス
(淸岡委員)
之ハ然レドモ以下ヲ心得テ置ケバ少シモ効ハナイ樣ニナル、其トキニ債務者ト約束シテ我ノ方ヘ拂ヘト云フテ呉レト云フト同ジニナル
(尾崎委員)
其選バレル場合ハ利益ガナケレバナラヌゾヨト云フノダ
(栗塚報吿委員)
利益ノ無イトキハ社ノ方ヘ取ルゾヨ
(淸岡委員)
ソンナラ然レドモ以下ハ無用ニナル二項ノ利益ヲ有セズシテト云フコトガアレバ充分ダカラ
(淸岡委員)
ソウデハナイ、上ノ方デハ利益ヲ有スルトモ有セズトモ何トモ云ハズニ
(栗塚報吿委員)
是レ丈ケニスルト馴レ合ヒデ社員バカリガ儲ケガアソテ會社ガ損ニナツテイケヌカラ縱令會社ガ爲シタ充當田ガ存スト云テモ其レハ充當ノ利益ヲ存シテ居ルトキニ限ルゾヨ左モナケレバ社ノ方ヘ取ルゾヨ
(淸岡委員)
佛蘭西ノヲ見ルト假令約束ガアツテモイケヌトアル佛蘭西デハ然レドモ債務者ガ充當ヲ定メテ置イテモイケナイ
(南部委員)
利益ヲ有スルト云フノハ如何カ
(淸岡委員)
其レハ分ツテ居ル、下ノ利益ヲ有セズシテヤツタトキハ配當シナケレバナラヌ利益ガアツタトカ、ソウハ行カヌ云フコトハ二項ノ裏デ充分見ヘテ居ル、ソウシテ見レバ上ノ然レドモ以下ハ私ノ最初ノ解釋通リデハナイカト思フ最初ノ解釋ハ内輪デハ社員ト會社トハ假令自分ノ方ヘ受取ツタニシテモ其レハイケナイ、社員ハ會社ノ方ヘ持テ行カナケレバナラヌ、其レカラ其債務者ヘ對シテハ債務者ガ私ノ方ヘ受取ツタト云フコトヲ證明シテアルカラ何時迄モ社員ニ充當シタモノト看做シテヤラナケレバナラヌゾト云フ旨意ニ見タ
(栗塚報吿委員)
ソンナコトハナイ第三者ヘ對シテ御前ガ社員ヘ對シテ拂ツテ來タガ、彼ハ會社ガ取ツタゾヨト云フコトハナイ、前項ヘ持テ來レバ社員デ宜シイ會社ヘ持テ來レバ會社デ宜シイ、社員ガ默ツテ取ルコトハ出來ナイ、利益ガナケレバナラヌ
(淸岡委員)
其レデハ私ノ初メノ論ニ近クナル
(栗塚報吿委員)
前項デハ會社ト管理ノ任アル者ニ金ヲ借リテ居ル社員ノ債務ヲ消滅スルニ立派ニ持テ來レバ宜シイガ足リナイ金ヲ持テ來レバ社員ニ辨濟シタトキハ會社ニ出シタ比較ヲ以テシナケレバ自分ノ債權ニ充當スルコトハ出來ヌゾヨ
(淸岡委員)
其レデ債務者ガ一向闕係シナイ債務者ハ社員ヘ拂ツタト云フテスマシテ居テ宜シイ
(栗塚報吿委員)
左樣デス
(淸岡委員)
ソウ云フ御旨意ナラ宜シイ
(栗塚報吿委員)
會社ニ充當ノ權利アルガ誰モ爭ハナイ會社ヘ持テ來レバ會社ト見、社員ニ持テ來レバ社員ト見ルカト云フニ、社員ニ持テ來テモ會社ヘ持テ來タト見ルゾ
(尾崎委員)
誰ヘ持テ來テモ極マリガナイ、社員ガ債權モ兼ネテ居ルトキハ利益ノアル拂ヒ方ハ宜シイガ利益ノナイトキハ會社ト半分ニシナケレバナラヌ
(南部委員)
前ニ二ツ書イタノ前ノ分ハ利益ヲ有シテ居ル
(栗塚報吿委員)
註ニ明カニ云フテ居リマス債務者ガ債權者ノ爲メニ拂ツテモ自在デアル、併シ云フテ來タ通リヲ遵守スル爲メニ社員ガ儲ケヲスルカ知レヌ其レヲ防グ爲メニ第二項ヲ置イテアル
(委員長)
二項ノ所ハ充當ヲ爲スト云フノヲ二ツ操リ返ヘシタノハ良クナイ
(栗塚報吿委員)
今度賠償スベキトキハ賠償ノ責ニ任ズト云フ樣ナコトデ、社員ノ貸權ニ付キ正當ノ利益ヲ有セズシテ充當ヲ爲シタルトキハト云フノデス
(委員長)
「有セスシテ全部ノ充當ヲ爲シタルトキハ」ト云ツタラ宜カロウ
(淸岡委員)
全部ト云フト百圓ハ百圓デ拂ツタト云フコトニナル
(委員長)
此處ハ全部ニ充當シタトキノコトヲ云フノダ
(淸岡委員)
全部ノ充當ト云フノハ割合ツテ持テ行カズ一方ヘ持テ往ツタトキト云フノデス
(栗塚報吿委員)
ソウデス
(南部委員)
外ニ書キ樣ハアリマセン
(栗塚報吿委員)
委員長ノ御氣付キノ樣ニ書キ直スコトハ出來マセンカ、「債權ニ付キ正當ノ利益ヲ有セシメスシテ」デハ分リマセン
(南部委員)
「有セスシテ之ヲ爲シタルトキハ」デモ宜シイ
(栗塚報吿委員)
其レガ宜シウ御座イマシヨウ
(委員長)
分ラヌコトハナイガ餘程分リ惡イ
(西委員)
「其充當ハ之ヲ」ガ宜シウ御座イマシヨウ
(尾崎委員)
債權ニ付キ全部ト云フト百圓ヲ百圓持テ來タ樣ニ見ヘル
(西委員)
債權ノ全部ト云フノトハ違ヒマス
(淸岡委員)
全部ハ無イ方ガ良ク分ル
(委員長)
無イ方ガ分リ良イ
(南部委員)
ソウスルト社員ノ債權ニ充當シタルコトニナツテ分リ惡イコトニナル、全部ガ惡ルケレバ字ヲ變ヘテモ宜シイ
(委員長)
全部ト云フノハ會社ト社員ト併セテ二百圓ヤツタト云フノダロウカ
(栗塚報吿委員)
ソレニ違ビアリマセン
(委員長)
此處デハ皆返ヘシタモノト見テ起草者ガ書イテ居ラヌガ
(栗塚報吿委員)
ソウデス
(西委員)
社員ト會社ニ二百圓借リガアツテ百五十圓持ツテ來タトキハ七十五圓ヅツ取ラナケレバナラヌ其レデ利益ノアツタトキハ社員ガ取ツテ餘ツタル分ヲヤレバ宜シイ
(淸岡委員)
餘ツタ分ヲ債權者ニ持テ來ル場合ハナイ會社ノ名前デ借リタ金ト一個デ借リタ金ト兩方アルカラ會社ニ百圓外借リガナイトキニ百五十圓持テ來ル筈ハナイ
(西委員)
會社ノ管理人ダカラ持テ行キマシヨウ
(栗塚報吿委員)
ソウデス、金ガ二タロニナツテ受取ル人ハ同ジデス充當デモ宜シウ御座イマス
(南部委員)
併シ社員ノ債權ニ付キ充當ヲ爲スト云フト何ダガ社員ノ債權、バカリニ充當田シタ樣ニナル
(栗塚報吿委員)
アツテ差支ナイ
(委員長)
「之ヲ爲シタルトキハ」トシ樣
(南部委員)
「辨濟ニ於ケル割合」ト云テハドウダロウ
(淸岡委員)
「辨濟ニ於ケル割合ニ應スル」ト云フト可笑シイ
(栗塚報吿委員)
「辨濟ニ於ケル割合ニ應スル部分ヲ」カ
(淸岡委員)
元トノ通リガ宜シイ
(委員長)
「互ヒノ割合ニ應スル」ト云ヘバ宜シイ
(淸岡委員)
「割合ノ部分」デ宜シイ
(栗塚報吿委員)
ソウデス「辨濟ニ於ケル割合部分ヲ會社ニ交付スル」ガ宜シウ御座リマシヨウ
(委員長)
「於ケル」ハ可笑シイ
(西委員)
「其辨濟ノ割合部分」ガ宜シイ樣デス
(栗塚報吿委員)
佛蘭西文ダト辨濟ノ中カラ自分ノ持分會社ニヤルベキ分ガ幾ラ、會社ノ借リガ幾ラ、假令バ自分ノ貸シテ居ルノガ百圓デ會社ノ貸シテ居ルノガ五十圓ノトキハ引イテヤラナケレバナラヌ
(南部委員)
「辨濟ノ内割合ノ部分ヲ會社ニ交付スル」カ
(淸岡委員)
良カロウ
(南部委員)
「其辨濟ノ内割合ノ部分ヲ會社ニ交付スル」
(委員長)
其レガ良シイ先キヘ行キマシヨウ
本條ハ左ノ如ク決ス第一項ハ報吿委員ノ修正ニ決ス第二項ハ左ノ如ク改ム然レトモ若シ債務者カ社員ノ債權ニ付キ全部ノ充當ヲ爲スニ正當ノ利益ヲ有セスシテ之ヲ爲シタルトキハ社員ハ其辨濟ノ中割合ノ部分ヲ會社ニ交付スルノ責ニ任ス第三項原按ニ決ス
第七百七十八條朗讀ス
第七百七十八條 管理人タルト否トヲ問ハス社員ニシテ會社ノ債務者カ會社ニ對シテ負擔シタル物ノ一分ヲ其債務者ヨリ受取リタル者ハ場合ノ如何ニ拘ハラス自己ノ部分ノ爲メ受取證書ヲ與ヘタルトキト雖トモ其共同社員ニ之ヲ利セシムルコトヲ要ス〔第千八百四十九條〕
(修正按) 「會社ニ對シ」ノ下「債務者ヨリ」迄ヲ左ノ如ク改ム會社ニ對スル債務ノ一分ヲ
(栗塚報吿委員)
此處ハ餘程修正致シマシテ「會社ノ債務者ヨリ會社ニ對スル債務ノ一分ヲ受取リタル者ハ」ト致シマス
(村田委員)
之ハ修正ガ宜シイ
(委員長)
「其債務者」ハ刪ツタカ
(栗塚報吿委員)
「會社ノ債務者ヨリ」ト出テ居リマスカラ刪リマシタ
(南部委員)
括觚ヲ刪ツテ良カロウ
(淸岡委員)
管理人ナラ仕方ガナイガ、自分ノ金ハ取レヌ
(栗塚報吿委員)
會社ニ對スル債務デ御座イマス
(淸岡委員)
會社ノ爲メ受取ツタノヲ受取書ヲ出スノハ變ダ
(南部委員)
會社ノ債權ヲ取テモ其レデ自分バカリ利スルコトハ出來ナイ、共同者ニ利サナケレバナラヌ
(栗塚報吿委員)
受取ハ一人シテ出シテ居テモ恰度共同債權者ガアツテ其中ノ一分ハ金ヲ拂ツタトキハ共同所有者ガ利サナケレバナラヌト云フノデスナ
(尾崎委員)
實ハ云ハズトモ同ジコトダ
(淸岡委員)
佛蘭西ノハ誠ニ良ク分ツテ居ル
(栗塚報吿委員)
佛蘭西法デハ會社ノ債務者ガ無資力ニナツタトキ受取ツタモノト云フコトヲ見テ居ルガソンナコトヲ見ルニ及バヌ
(南部委員)
其レハ大キニ御尤モデス
(委員長)
括觚ハ無イ方ガ宜シイ
(南部委員)
括觚ノ法律ハ良クアリマセン
(栗塚報吿委員)
圏點デモ宜シイ著シイ文字ト云フコトヲ見セルノデスカラ
(委員長)
之ハ本文ニナルト餘リ御念入リノ樣ニナル
(南部委員)
括觚ハ圏點ノ代ハリデスカラ同ジコトデス
(栗塚報吿委員)
「自己ノ持分ノ爲メトシテ」トシテハドウデス
(村田委員)
「自己ノ部分トシテ受取證書ヲ與ヘタル」
(淸岡委員)
「如何ナル場合ニ拘ハラス」ト云フコトヲ刪ルカ又ハカラ下ヲ刪ルカ孰レカニスルガ宜シイ
(南部委員)
上ヲ刪ルガ良イ
(淸岡委員)
括觚ヲ置イタリ割註ヲ置クノハ不體裁トハ思ハヌ、佛蘭西民法第千八百四十九條ト云フ括觚ヲ置タノハ良クナイ
(栗塚報吿委員)
是レ等ハ圏點ノ代ハリデスカ、何々ノ場合ヲ除クト云フノモアツテ權ウマイト思ヒマス
(委員長)
「場合ノ如何ニ拘ハラス受取證書ヲ與ヘタルトキト雖トモ」
(栗塚報吿委員)
其受取證書ハ我ノ物ダト云フコトヲ書イテ受取ル
(委員長)
ソンナラ「場合ノ如何ニ拘ハラス」ヲ刪ルガ宜シイ
(村田委員)
「如何ナル場合ニ於ケルト雖トモ共同社員ニ之ヲ利セシムルコトヲ要ス」デ宜シイノダ
(尾崎委員)
「如何ナル場合」ハ邪魔ニハナラヌ
(栗塚報吿委員)
「總テノ場合ニ於テ」トナスツテハ如何デス
(南部委員)
ソウスルト自己ノ持分ノ爲メニ掛ル樣ニナル
(淸岡委員)
如何ナル場合ニ於テモ自己ノ持分ニ掛ル樣ニナル
(栗塚報吿委員)
「總テノ場合ニ於テ其共同社員ニ之ヲ利セシムルコトヲ要ス但自己ノ持分トシテ受取證書ヲ與ヘタルトキト雖トモ亦同シ」ト云フノデ御座イマス
(委員長)
文章ハ其方ガ良ク分ル、但ニシ樣カ
(尾崎委員)
宜シウ御座イマシヨウ
(淸岡委員)
「如何ナル場合ニ於テモ亦自己ノ持分ノ爲メ受取證書ヲ與ヘタルトキト雖トモ」ト二ツニシマスカ
(栗塚報吿委員)
ソウスルト二ツニナリマス共同社員ヲ利セシムルコトヲ要スガ主デ自己ノ持分ノ爲メ受取リタル證書ヲ與ヘタルトキト云フノデ御座イマス
(委員長)
先キヘ行キマシヨウ
本條ハ左ノ如ク決ス
管理人タルト否トヲ問ハス社員ニシテ會社ノ債務者ヨリ會社ニ對スル債務ノ一分ヲ受取リタル者ハ場合ノ如何ニ拘ハラス其共同社員ニ之ヲ利セシムルコトヲ要ス但自己ノ持分ノ爲メ受取證書ヲ與ヘタルトキト雖トモ亦同シ
第七百七十九條朗讀ス
第七百七十九條 支配人タルト否トヲ問ハス各社員ハ其過愆又ハ懈怠ニ因リ會社ニ加ヘタル損害ヲ補償スルノ責ニ任ス
此損害ハ社員カ他ノ業務ニ於テ會社ニ得セシメタル利益ト相殺セラルヽコトヲ得ス但其業務カ互ニ牽連シタルトキハ此限ニ在ラス〔第千八百五十條〕
(栗塚報吿委員)
「支配人」ハ「管理人」ノ誤リデ御座イマス
(村田委員)
「得ス」デハナイ「得」トアリマス
(南部委員)
「得ス」デナケレバイケナイ
(栗塚報吿委員)
牽連シタルトキデス「補償」ハ「賠償」トシテハ如何デス
(南部委員)
九十二條ハ少シ違ツテ居ル
(委員長)
先キヘ行キマシヨウ
本條ハ「支配人」ヲ「管理人」ト改メ他ハ原案ニ決ス
第七百八十條朗讀ス
第七百八十條 結社契約ヲ以テ管理人ヲ指定セサル爲メニ業務ヲ擔當シタル社員ハ會社ノ業務ニ自己ノ業務ト同一ノ注意ヲ加ヘサルトキニアラサレハ其過愆ノ責ニ任セス
(栗塚報吿委員)
九十二條ガ其儘デス立派ナ重複デス
(村田委員)
之モ業務ヲ擔當シタルデハイケナイ管理ノ任アル社員トシナケレバナラヌ、七百七十七條デソウ直ツテ居ル
(栗塚報吿委員)
少シ違ヒマシヨウ、彼ハ管理人デスガ、之ハ管理人デハアリマセン、管理人ヲ指定センガ爲メニ管理ノコトヲシナケレバナラヌ人デス
(淸岡委員)
同ジコトデス、管理ノ任アル社員ダカラ
(栗塚報吿委員)
社カラ任ジタトカ自ラ任ジタトカ申サナケレバナリマスマイ
(委員長)
管理人ヲ指定セザル爲メト云フカラ重複ニナル
(尾崎委員)
業務擔當デ宜シイ
(委員長)
七十七條モ業務擔當トヤロウデハナイカ
(栗塚報吿委員)
宜シウ御座イマス
(淸岡委員)
商法ノ方ハ責任ヲ持タシテアリマス、此方ノ方ハ注意ヲ加ヘザルニ非ザレバ過愆ニナルノデ幾分カ輕イ
(栗塚報吿委員)
同ジコトデス
(淸岡委員)
シナクテモ構ハヌ
(南部委員)
シナケレバ損害ヲ受ケル
(淸岡委員)
シナケレバ過愆ガナイ、義務ガアルトシテアレバ岡目デ見テ居ルコトハ出來ナイ
(南部委員)
商法ハ業務ニ關係シタトキノ話シデシヨウ
(淸岡委員)
ソウシナクテモ宜シイ
(委員長)
シナケレバ業務ガ出來ナイ
(栗塚報吿委員)
商法ノ八十八條ニ權利ヲ有ストアリマス
(松岡委員)
商法ノ方ガ嚴重ナノダ商法ニハ「正整ニ」トアルカラ
(栗塚報吿委員)
正整ナル商人ノ義務ヲ缺カナケレバ償ヒヲ出サンデ良カロウ
(南部委員)
正整ナルト云フ字ニ論ガアツタガ同ジコトデス
(委員長)
先キヘ行キマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第七百八十一條朗讀ス
第七百八十一條 各社員ハ會社資本ニ於テ處分スルコトヲ得ル金額ナキトキハ會社ニ屬スル物ニ關スル必要及ヒ保持ノ出費ヲ自己ノ權利ノ割合ニ應シテ分擔スルノ責ニ任ス〔第千八百五十九條第三號〕
(修正案) 「會社資本ニ於テ」ヨリ「トキハ」迄ヲ刪リ左ノ如キ但書ヲ加フ但會社資本ニ於テ處分スルコトヲ得ル金額ナキトキニ限ル
(栗塚報吿委員)
此處モ前ノ修正ノ樣ニ修正致シマシタ
(淸岡委員)
何ゼ修正シマスカ同ジコトダ
(栗塚報吿委員)
各社員ガ資本中デ處分スルコトハ一ツモナイ、ソウ御讀ミナサル嫌ヒハナイカト云フノデス、ソウ見ヘテハナラヌ、各社員ガコウ云フ費用ヲ負擔シナケレバナラヌ併シ會社ノ金ガアツタラ負擔スルニ及バヌゾヨ
(南部委員)
眼目ハソウダ
(淸岡委員)
但ト云フノハ場合ヲ云フトキデコンナコトハ當リ前ダカラ但ニスルノハ諄々シイ樣ニナル
(南部委員)
之デ分レバ宜シウ御座イマス
(栗塚報吿委員)
「金額アルトキハ此限ニ在ラス」デモ宜シウ御座イマス
(尾崎委員)
修正ガ宜シイ
(村田委員)
修正ガ良イ
(委員長)
修正ノ方ガ良ク分ル
(西委員)
原文デモ分ル
(委員長)
此儘デ置キマスカ
(南部委員)
之ハ商法ノ九十六條デ御座イマスガ九十六條ハ出資ヲ保有スル義務ハナイト云フコトヲ云フテ居リマスガ、ドウ云フ譯カ分ラヌ
(委員長)
保持ノ出費ト云ヘバ會社ノ出費トハ違ウダロウ
(松岡委員)
保持ト云フノハ會社ノ維持ト云フノデシヨウカ
(南部委員)
物ノ方デス
(松岡委員)
商法ノ九十六條ハ出資ノ額ヲ定メレバ損ガアツテモ充分ニ出サナケレバナラヌト云フコトヲ定メルコトハナイト云フテアリマス
(栗塚報吿委員)
之ハ無形人ヲ見テ居ル、民法ハ無形人ヲ見ナイノデ御座イマスカラ
(南部委員)
併シ商法モ七人以下ノ會社デス
(松岡委員)
皆デ出シ合ウコトニナルカラ妙ダ
(淸岡委員)
佛蘭西ノ八百五十九條ノ三項ハ違ヒマスネ、一方ガシ樣ト云フノニ我ハ其割前ヲ出サヌトハ云ハサヌ
(南部委員)
同ジコトデス
(淸岡委員)
其レダカラ十人寄テヤルノヲ一人否トハ云ハセヌト云フナラ宜シイガ、之ハ可笑シイ
(栗塚報吿委員)
必要及ビ保持ノ費用デスカラ
(淸岡委員)
何時迄モ出シテ行カナケレバナラヌト云フト大變可笑シイ
(栗塚報吿委員)
同ジコトデス彼方デモ始終出サセル義務ガアレバ出サセマス
(淸岡委員)
鳥渡本文ヲ見ルト自分ガ出サヌトキハ何時迄モヤラナケレバナラヌ樣ニ見ヘル
(南部委員)
之ハ佛蘭西ト違ツテ居ルト云テアル
(淸岡委員)
出資ガアツタトキハ平等ニ負擔シナケレバナラヌ一人免ガルルコトハ出來ナイト云フコトニ書イテ置テハ格別
(南部委員)
此衣ノ條デ顛覆シテアル
(松岡委員)
否ト云フタラドウスル
(南部委員)
イケナイ、併シ半バ以上ノ滅失ニナツタトキハ解散スル
(栗塚報吿委員)
九十六條トハ牴觸デス
(委員長)
牴觸ノコトヲ起按者ニ話スカ
(南部委員)
之ハ無形人ヲ形造ル場合デスカラ身代ヘ行クデス
(松岡委員)
或ハ適用場所ガ安ラカナ道理ノアルモノデハナイカ左モ無イト字ノ儘デ解釋スルト後家サマヤ貧乏士族ナドハ困ル
(栗塚報吿委員)
私ノ考デハ後家サンヤ貧乏士族ノ入ル會社ハ民事會社ニ無イ樣デス之ハ兄弟トカ叔父甥トカト云フ者ガ寄ツテ開墾シ樣トカ何トカ云フノデ御座イマスカラ
(南部委員)
ソウハ限ルマイ
(松岡委員)
漸ク算斷シテ金ヲ入レテ置イテ此樣ナコトガ出來ルト困ル
(淸岡委員)
之ハ問フタ上ニシタ方ガ宜シウ御座イマシヨウ
(委員長)
其レガ良カロウ
(栗塚報吿委員)
起案者ガ一般ノハ佛蘭西ノ法律デ商事會社ノ外ハ無形人デナイト云フ積リデ御座イマス
(委員長)
商事會社ニ適用セヌナラ宜シイカ
(南部委員)
無形人ノモノモコウカト云テ聞イテ見タラ宜カロウ無形人デナイト云フコトガ頭マノ中ニ殘ツテ居テ書クカラ可笑シクナルノカ知ラヌ
(委員長)
質問スルニシテ先キヘ行キマシヨウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決シ無形人ノ會社モ本條ノ規定ニ依ルモノナルヤ否ヲ起按者ニ質問スルコトニ決ス
第七百八十二條朗讀ス
第七百八十二條 右ニ反シ業務擔當者タルト否トヲ問ハス各社員ハ會社ヲシテ自己ノ出資外ニ會社ノ爲メ有益ニ立替ヘタル金額ヲ返還セシメ又ハ會社ノ利益ノ爲メ善意ニテ負擔シタル約務ヲ確認セシメ又ハ會社業務ノ爲メ自己ノ財產ニ受ケタル避クルコトヲ得サル損害ヲ賠償セシムルコトヲ得〔第千八百五十二條〕
(修正案) 「負擔シ」ヲ「結ヒ」ト改ム
(栗塚報吿委員)
「負擔シタル」ハ「結ヒタル」ノ方ガ良カロウト思フ
(村田委員)
「善意ニテ爲シタル」ガ宜シイ
(委員長)
「爲シタル」ガ良イ
(栗塚報吿委員)
前デハ錢ヲ出ス、唯金ヲ出セバ償ガ取レル
(村田委員)
「約束」ノ方ガ良クハナイカ
(栗塚報吿委員)
今日迄約束トヤツテ居リマス
(松岡委員)
之ハ百一條ダ
(淸岡委員)
理由書ニ約務ヲ負擔シタル場合ト誤解スル嫌ヒガアルト云フカ、誤解ハアルマイ
(栗塚報吿委員)
會社ガ約務ヲ負擔シタト云フ樣ニ聞ヘルト云フ恐レガアル
(淸岡委員)
自分ガシタ約束ヲ會社ヲシテ確認セシムルカラ其嫌ヒハアリマスマイ
(栗塚報吿委員)
矢張リ「負擔シタル」ノ字ヲ置キマシヨウカ
(淸岡委員)
其方ガ良イ
(委員長)
原文ノ儘ガ宜シイ
本條ハ原按ニ決ス
第七百八十三條朗讀ス
第七百八十三條 會社業務ノ爲メ社員ノ立替ヘタル金額ハ其使用ノ日ヨリ右社員ノ利益ニ於テ當然利息ヲ生ス
之ニ反シ各社員ハ自己ノ業務ノ爲メ會社資本中ヨリ取用ヒタル金額ノ利息ヲ當然會社ニ對シテ負擔ス但此場合ニ於テ一層大ナル損害アリタルトキハ之ヲ賠償スルコトヲ妨ケス〔第千八百四十六條第二項〕
(修正按) 第二項「取用ヒ」ヲ「引出シ」ト改ム
(南部委員)
二項ハ百四條デス除名スルト取引ヲ會社ニ引受ケル處デス
(松岡委員)
百三條ニ在ル
(栗塚報吿委員)
百三條デス
(淸岡委員)
引出ストカ取用ヒトカ云フノハ借用シタノダロウ
(栗塚報吿委員)
左樣デス
(淸岡委員)
利ヲ定メテ借用スレバ
(南部委員)
利ヲ定メタノハアリマセン
(淸岡委員)
會社カラ借ルカラ會社ニ對シテ負擔スル
(栗塚報吿委員)
商法ノ百三條ニ會社ノ金錢ヲ自己ノ用ニ供シタルトキハト云フコトガアリマス
(尾崎委員)
其レハ百分ノ七カ
(松岡委員)
民法デハ百分ノ六ダロウ
(尾崎委員)
商法ノハ義務アリデスカ
(松岡委員)
「義務アリ」デス、民法ノ利息デ合ハヌトキハト云フノデシヨウ
(淸岡委員)
「引出シ」ハ原書ニハ合ツテ居リマシヨウカ「取用ヒ」ノ方ガ良クハナイカ、假令バ農業ヲスルモノナレバ肥料ノ爲メニ社ヲ結ビ貸付ヲスルトキハ資本中カラ集メテ自分等ガ借リテヤルトキモアル、ソウ云フトキ當然利息ヲ拂フ證文デモ書イテアルデシヨウ其場合ニハ一層大ナル損害ガアツテモ知ル道理ガナイ
(南部委員)
ソウ云フ場合デハナイ
(松岡委員)
商法デハ自己ノ用ニ供シタルトアル
(栗塚報吿委員)
恰度其レデ宜シイノデス自分ノ爲メニシタラバト云フノデスカラ
(松岡委員)
淸岡サンノ云フ樣ニ社員ガ金ヲ出シ合ツテ借リルノハ尋常普通ノ利ヲ計ルモノ社員ガ一分ヲ借リル貸スト云フコトハ止メル意味デハナイ
(淸岡委員)
ソンナコトハナイ
(松岡委員)
左モナケレバ賠償ト云フコトハナイ
(栗塚報吿委員)
恰度前ノ裏ダト云フテ居リマス
(淸岡委員)
銀行カラ金ヲ出シテ來ルノモ引出シト云フカラ之ハ勝手デヤルノダガ勝手ト云フコトハ見ヘナイ
(委員長)
自己ノ業務ノ爲メトアルカラ恰度其通リナリマシヨウ
(淸岡委員)
自己ノ爲メデナケレバ人ノ爲メト云フコトハアリマスマイ
(委員長)
今日ハ是レ迄ニシテ置キマス