旧民法・法例(明治23年)

法律取調委員会 民法草案議事筆記 第56回

参考原資料

備考

  • 未校正のテキストデータです.
民法草案取得篇第五十六回議事筆記
自第七百五十四條及ヒ第七百二十至第七百六十八條五條修正再議
(箕作委員)
ヤリマシヨウ
第七百五十四條朗讀ス
第十三章 交換
第七百五十四條 交換ハ一方ノ當事者カ己レノ得取シ又ハ己レニ約束セラレタル物又ハ權利ノ對價ト看做サレタル物ノ所有權又ハ總テ其他ノ權利ヲ他ノ一方ニ移轉シ又ハ移轉スルコトヲ約スル契約ナリ〔第千七百二條〕
若シ互ニ讓渡シタル權利ノ一カ價額ニ於テ他ノモノニ劣ルトキハ其不均等ハ金圓又ハ其他ノ者ニ於ケル補足額ヲ以テ之ヲ塡補ス
若シ金圓ニ於ケル補足額カ受取リタル有價物ノ對換トシテ供給セラレタル有價物ノ價ニ超ユルトキハ其契約ハ賣買ト看做サル
(修正案) 第一項「己レノ」三字ヲ刪リ「得取シ」ノ下「タル物若クハ權利」ノ八字ヲ挿入シ「物」ノ下「又ハ」ヲ「若クハ」ト改ム第二項「塡補」ヲ「均一ニ」ト改ム第三項「供給セラレ」ヲ「供給シ」ト改ム
(栗塚報吿委員)
修正ガ御座リマス
(村田委員)
修正ガ宜カロウ
(栗塚報吿委員)
佛蘭西ノ定義ガ惡ルイカラト云テ直シ掛ケマシタガ如何ニモ諄々シクナリマス
(淸岡委員)
「若シ」以下ハ必要カネ
(栗塚報吿委員)
貴君ノ馬ト私ノ犬ト交易シタトキニ餘リ甚ダシキ差ガアルト云フノデ私ガ金ヲ付ケテ出シタ貴君ノ馬ガ百圓デ私ノ犬ガ十圓ノトキ私ガ九十圓付ケタガソウスルト犬ノ代ヨリ餘程金ガ多イ
(箕作委員)
佛蘭西ニハ論ガアル少シデモ物ガ入レバ交換トスルカト云フ問題ガアルカラ其レヲ決シ樣ト云フノデス
(村田委員)
品物ガ御供ニナルカラダ
(南部委員)
ソウスルト折損デモ何デモ云テ行クカラ
(箕作委員)
賣買ノト看做サルル以上ハソウデス
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第七百五十五條朗讀ス
第七百五十五條 當事者ハ對換トシテ供給シ又ハ約束シタル物又ハ權利ニ關スル總テノ妨碍及ヒ追奪ノ擔保ヲ互ニ負擔ス〔第千七百四條〕
若シ當事者ノ一方カ己レニ約束セラレタル權利ヲ得取セサリシトキハ自己ノ撰擇ヲ以テ或ハ金圓ニ於ケル對價ヲ要求シ或ハ契約ノ解除ヲ請求シテ自己ノ與ヘタルモノヲ取回スコトヲ得但何レノ場合ニ於テモ損害賠償ヲ受クヘキトキハ之ヲ受ク〔第千七百五條〕
此場合ニ於テ解除ハ取戻ニ服スル不動產ニ付キ權利ヲ得取シタル第三者ニ對シテ之ヲ行フコトヲ得ス但第三百七十二條第一項ニ從ヒ請求ノ公示前ニ其第三者ノ名義ノ登記又ハ記入アリタルコトヲ要ス
(修正案) 第二項「損害賠償ヲ受クヘキトキハ之ヲ受ク」ヲ「損害賠償ヲ妨ケス」ト改ム
(栗塚報吿委員)
二項ノニ約束セラレタル權利トアリマスカラ分リマスガ駄目押シニ「物又ハ權利」ト致シマス報吿委員デハ入レヌ積リデ御座イマシタガ此處デ云ハヌト入ラヌト仰シヤルダロウト思ヒマスカラ入レマス
(淸岡委員)
宜シウ御座イマシヨウ
(箕作委員)
得取セザルト云フト自分ノ勝手デ得取シナイ樣ニナル
(栗塚報吿委員)
報吿委員デモ其論ガアリマシタ
(村田委員)
得取スルコトノ出來ナイノダカラ
(箕作委員)
「得取スルコトヲ得サリシ」トシタラ良カロウ
(栗塚報吿委員)
其レガ良ウ御座イマシヨウ、其レカラ「損害賠償ヲ受クヘキトキハ之ヲ受ク」ハ「損害賠償ヲ妨ケス」ト修正致シマス
(箕作委員)
之ハ「損害アラバ之ヲ受ク」ト云フノガ本統ダ
(南部委員)
ソウデスカ
(箕作委員)
「妨ケス」デモ宜シイ
(西委員)
「損害アラバ」ノ方ガ宜シイ
(栗塚報吿委員)
ソヲ致シマシヨウ
(箕作委員)
先キヘ行キマシヨウ
本條ハ左ノ如ク決ス
第二項「若シ當事者ノ一方カ己レニ約束セラレタル物又ハ權利ヲ得取スルコトヲ得サリシトキハ自己ノ選擇ヲ以テ或ハ金圓ニ於ケル對價ヲ要求シ或ハ契約ノ解除ヲ請求シテ自己ノ與ヘタルモノヲ取回スコトヲ得但何レノ場合ニ於テモ損害アラス其賠償ヲ受ク」ト改ム
第七百五十六條朗讀ス
第七百五十六條 賣買ノ規則ハ交換ニ之ヲ適用ス但左ノ例外ハ此限ニ在ラス
第一 交換ハ配偶者ノ間ニ許サル但互ニ供給シタル價額ノ不均等カ間接ノ利益ヲ成ストキハ贈與ヲ禁制シ又制限スル規則ノ適用ヲ妨ケス
第二 定マリタル期間内ニ於ケル交換ノ任意ノ解除ニシテ當事者ノ一方又ハ雙方ノ爲メニ要約セラレタルモノハ第六百六十四條ニ從ヒ賣買ノ豫約カ第三者ニ對抗セラルヽコトヲ得ル條件ニ從フニアラサレハ之ヲ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
第三 交換ハ折損ノ爲メ之ヲ銷除スルコトヲ得ス〔第千七百六條、第千七百七條〕
(修正案) 第一項「交換」ノ上ニ「左ノ例外ヲ以テ」ノ七字ヲ挿入シ但書ヲ刪ル第二號「解除ニシテ」ヲ「隔解除カ」ト改メ「モノハ」ヲ「□□ 」? 改メ「之ヲ」ヲ「其解除ヲ」ト改ム
(栗塚報吿委員)
「賣買ノ規則ハ左ノ例外ヲ以テ交換ニ之ヲ適用ス」トヤリマシタ、第二號ハ「任意ノ解除ハ當事者ノ一方又ハ雙方ノ爲メニ要約セラレタルトキハ」ト致シマシテ「之ヲ其解除ヲ」ト致シマス
(西委員)
元ノ通リガ良イ
(箕作委員)
格別良イ修正デモナイ
(村田委員)
「左ノ例外ハ此限ニ在ラス」ハ可笑シイ刪ルガ良イ第一ノ但書ハ犬ト馬ノ一件ニハイケナイノダネ
(栗塚報吿委員)
百圓ノ抵當ニ編笠一蓋ト云フノハイケナイノデス
(箕作委員)
「オツポゼー」ト云フ字ハ色々考ヘテ見マシタガ、何處デモソウハイケマセンガ此處デハ何ニ對シテ何ニヲ云ヒ立ルコトヲ得ズトシタラ宜カロウト思ヒマス
本條ハ原案ニ決ス
第七百五十七條朗讀ス
第十四章 和解
第七百五十七條 和解ハ當事者カ交互ノ讓合又ハ捐給ヲ爲シテ既ニ發シタル爭ヲ結了シ又ハ發スルコト有ルヘキ爭ヲ豫防スル契約ナリ〔第二千四十四條第一項〕
和解ハ其組成、有効、効力及ヒ證據ニ付テハ下ノ改樣ヲ以テ合意ノ一般ノ規則ニ從フ〔第二千四十四條第二項〕
(修正案) 第一項「發」トアルヲ皆「生」ト改ム
(栗塚報吿委員)
「發シタル」ハ「生シタル」ト修正致シマス
(箕作委員)
實ハ「摘給」ハ刪テモ宜シイ
(南部委員)
讓リ合ウト同ジコトデス
(淸岡委員)
捐給ト云フノハ物ヲヤルノデシヨウカ
(村田委員)
讓リ合ウト云フト兩方デ我慢ヲシ合ウノダ
(南部委員)
捐給モ我慢スルノデス
(尾崎委員)
豫防ト云フノハ面白イ
(淸岡委員)
豫防ハ日本ニハ澤山アリマス
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第七百五十八條朗讀ス
第七百五十八條 無能力者ニ關スル和解ノ有効ニ付キ要セラレタル條件ハ此法律ノ第一編ニ之ヲ定ム
國「デハルトマン」、「コンミユーヌ」及ヒ公設所ニ關スル和解ハ行政法ヲ以テ管知セラル〔第二千四十五條〕
(修正案) 第二項「デハルトマン」以下ヲ「府縣市町村」ト改メ「行政法ヲ以テ管知セラル」ヲ「行政法ヲ以テ之ヲ管知ス」ト改ム
(栗塚報吿委員)
「國府縣市町村及ヒ公設所ニ關スル行政法ヲ以テ之ヲ管知ス」ト修正致シマシタ之ハ人事篇デヤル積リデス
(淸岡委員)
幼者ナラ後見人ガヤルト云フノデシヨウ
(栗塚報吿委員)
後見人ガヤルノニ裁判所ノ許シヲ受ケルトカ何トカ云フコトデス
(松岡委員)
和解ト云フノハ幾分カ損ヲシナケレバナラヌ
(栗塚報吿委員)
讓リ合ヒカ揖給カ執レカバ免セナイ
(淸岡委員)
モウ止メマシヨウト云フノガ捐給カ
(箕作委員)
先キヘ行キマシヨウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第七百五十九條朗讀ス
第七百五十九條 和解ハ法律ノ錯誤ノ爲メ之ヲ銷除スルコトヲ得ス但錯誤カ相手方ノ詭譎ニ出ツルトキハ此限ニ在ラス〔第二千五十二條第二項、第二千五十三條第二項〕
(淸岡委員)
之モ宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第七百六十條朗讀ス
第七百六十條 和解ハ偽造ノ書類又ハ無効ノ名義若クハ所爲ニ憑リ承諾シタルモノトシテ之ヲ銷除スルコトヲ得ス但是等ノ事ヲ陳辯スルコトヲ得ヘキ當事者ニ於テ僞造又ハ法律カ所爲ノ無効ヲ附着セシメタル事實ヲ知ラサリシトキハ此限ニ在ラス〔第二千五十四條、第二千五十五條〕
(修正案) 「若クハ」ヲ「卽チ」ト改メ「當事者ニ於テ」ノ下ニ「書類ノ」三字ヲ加ヘ「又ハ法律」以下ヲ左ノ如ク改ム又ハ所爲ノ法律上無効タルヘキ事實ヲ知ラサリシトキハ此限ニ在ラス
(栗塚報吿委員)
分リマセンカラ修正致シマシタ「無効ノ名義卽チ所爲ニ憑リ」ト致シマシタ
(村田委員)
所爲ヨリ銷除ノ方ガ良クハナイカ
(栗塚報吿委員)
銷除ノ方ガ良イカ知レマセン
(南部委員)
名義卽チ銷除ト云フノハ如何カ知ラヌ
(栗塚報吿委員)
卽チ契約ニ憑リト云ヒ度イノデス
(村田委員)
所爲ニ憑リデハ分ラナイ
(松岡委員)
兎モ角モ卽チトシナケレバナラヌ
(栗塚報吿委員)
其レカラ「但僞造又ハ」ヲ「書類ノ偽造ヲ知ラス又ハ所爲ノ法律上無効タルヘキ事實ヲ知ラサリシトキハ」ト致シマス
(南部委員)
僞造ノ書類ト云フコトヲ知リツツヤツテハイケナイ
(松岡委員)
「憑リ」ト云フ字ガ大事ノ字ダ
(南部委員)
「僞造ヲ」ノ下ノ「知ラス」ハ入ラナイ樣ニナツタ
(淸岡委員)
前項デハ僞造ノ書類ニ依テ承諾シタル譯デ御座ル後ニ聞ケバ僞造デアツテモイケヌト云フ樣ニ聞ヘル
(尾崎委員)
僞造ヲ知リナガラ承諾シタ
(栗塚報吿委員)
實ハ「此限ニ在ラス」ノ書キ樣ガ惡ルイノダ
(淸岡委員)
無効ノ名義卽チ所爲ヲ知リツツヤツタトキハイケナイト云フコトニナル
(松岡委員)
知リナガラ承知シテヤツタ者ハ
(栗塚報吿委員)
「和解ハ何々スルトキニ非サレハ之ヲ銷除スルコトヲ得ス」ト原文デハ云テ居ルノデス、其レヲ但トシタカラ御疑ガ出ル樣ニナリマス段々終リヲ讀ムト原文ニ反對スル樣ニナリマス
(淸岡委員)
得ズト云フ處迄ハ縱令知ロウガ、知ルマイガ銷除ガ出來ナイト外讀メナイ
(栗塚報吿委員)
ソウデハナイ銷除スルコトガ出來ルコウ云フコトニハト云フノデス
(松岡委員)
所爲ヲ知リテ承諾シタル者ハ其偽造無効ヲ援唱シテ銷除スルコトヲ得ズト書カナケレバナラヌ
(栗塚報吿委員)
殘ラズ御讀ミニナルト宜シイノデス知ラザリシトキデナケレバ銷除スルコトガ出來ヌ
(松岡委員)
「無効ノ名義卽チ所爲ヲ知リテ承諾シタル者ハ之ヲ銷除スルコトヲ得ス但事實知ラサリシトキハ此限ニ在ラス」トハ出來マセンカ
(栗塚報吿委員)
此間モ報吿委員デ但ニシタノハ惡ルイカラト思テ色々考ヘテ見マシタガ諄々シクナツテ溜ラヌ
(松岡委員)
例ガアリマシヨウカ
(栗塚報吿委員)
前ノ文章モソウデス、和解ハ法律ノ錯誤ノ爲メ云云ト書イテアルノデス
(南部委員)
直スト却テ分ラヌ樣ニナル
(淸岡委員)
前ノ樣ナ錯誤デ畢竟自分ノ錯誤ヲ云フ處デ自分ガ誤ツテモ銷除ハ出來ヌ併シ相手方ガ詭譎ヲ以テ誤ラシメンハト云フノナラ良ク文章ガ分ルケレドモ
(尾崎委員)
知ツテシタノハ僞造無効ノ所爲ダニ因テ其レデハ取消セヌゾヨト云フノダ
(松岡委員)
憑リト云フノハ確ト憑リ掛ル樣ニナル
(栗塚報吿委員)
何ゼ承諾シタカト云フト僞造ノ證文ト云フコトヲ知テ居タガ、面倒ダカラ和解ヲ知タトキハ銷除ガ出來ヌ
(松岡委員)
佛蘭西法デ云ヘバ明カニ無効ニ付テ和解シタトキデナケレバ取消セル、明カニ承諾スレバ取消セナイト云フ詰リ佛蘭西デハ承諾シタルモノトシテト云フ處ニナル
(栗塚報吿委員)
之ハ御置キニナツテハ如何デス
(松岡委員)
憑リモノトシテ銷除スルコトヲ得ズト云ノハ分ラヌデシヨウ
(南部委員)
僞造ニ憑テ承諾シタルモノトシテ銷除スルコトハ出來ヌ
(栗塚報吿委員)
和解ヲシタ處ガ僞造ノ書類ダ無効ノ名義ダ
(村田委員)
陳辯スルコトヲ得ベキト云フ字ガアリマスカ
(栗塚報吿委員)
アリマス
(淸岡委員)
所爲ニ憑リ承諾シタリトノ申立ヲ以テトシタラ宜カロウ
(尾崎委員)
其方ガ良イカ知レヌ
(松岡委員)
其レガ少シ穩カダロウ
(栗塚報吿委員)
承諾シタル者ハ和解デス承諾シタルト云フノハ和解ヘ係ツテ居ルノデスカラ承諾シタル如クト云フノデス
(松岡委員)
如クト云フト尙ホオカシイ
(南部委員)
「トシテ」ハ恰度如クニ當テ居ル
(松岡委員)
僞造ヲ知ラスノ「知ラス」丈ケヲ止メ樣
(南部委員)
其レガ良カロウ
(栗塚報吿委員)
承諾シタリトテ其僞造無効デ之ヲ消スコトハ出來ヌ併シ初メカラ知ラナカツタラ出來ルゾヨト云フコトデス
(尾崎委員)
先キヘ行キマシヨウ
本條ハ左ノ如ク決ス
和解ハ僞造ノ書類又ハ無効ノ名義卽チ所爲ニ憑リ承諾シタルモノトシテ之ヲ銷除スルコトヲ得ス但是等ノ事ヲ陳辯スルコトヲ得ヘキ當事者ニ於テ書類ノ僞造又ハ所爲ノ法律上無効タルヘキ事實ヲ知ラサリシトキハ此限ニ在ラス
第七百六十一條朗讀ス
第七百六十一條 定マリタル爭ノ一箇又ハ數箇ノ原由ニ憑リ爲シタル和解ハ若シ新ニ發見シタル證書ニ因リ當事者ノ一方カ爭ノ一箇若クハ數箇ノ目的ニ付キ何等ノ權利ヲモ有セサリシコト又ハ他ノ一方カ之ニ付キ完全ニシテ且爭フコトヲ得サル權利ヲ有セシコトノ顯ハレタルトキハ事實ノ錯誤ノ爲メ亦之ヲ銷除シ又ハ取消スコトヲ得〔第二千五十四條、第二千五十七條第二項〕
若シ確定シタル判決又ハ攻撃スルコトヲ得サル契約ヲ以テ既ニ爭ヲ結了シタルニ其判決又ハ契約ヲ知ルコトニ付キ利害ノ關係アリシ當事者カ之ヲ知ラサリシモ亦同シ〔第二千五十六條〕
然レトモ若シ和解カ當事者雙方ノ前來ノ原由ニ憑リ爲スコト有ルヘキ總テ何等ノ爭タリトモ之ヲ結了シ又ハ豫防スルコトヲ目的トシタルトキハ當事者ノ一方ノ利益ニ於ケル確定證書ノ發見ハ其證書カ相手方ノ所爲ニ因リ扣留セラレタルトキニアラサレハ銷除ヲ生セス〔第二千五十七條第一項〕
(修正案) 第一項「銷除シ又ハ取消スコトヲ得」ヲ「銷除スルコトヲ得」ト改ム第二項「知ルコトニ付キ利害ノ關係アリシ」ヲ「知ルノ利害ヲ有スル」ト改ム第三項「原由ニ憑リ爲スコト有ルヘキ」ヲ「原由ヨリ生スルコト有ルヘキ」ト改メ「總テ」ノ下ニ「ノ」ノ一字ヲ挿入ス
(村田委員)
當事者雙方ノ間ニト入レタラ良カロウ
(南部委員)
其レハイケナイ
(松岡委員)
銷除卽チ無効、無効卽チ銷除
(南部委員)
無効、銷除、取消ト三ツアリマス
(西委員)
「總テノ」ト「ノ」ノ字ヲ入レマスカ
(栗塚報吿委員)
入レマセン
(松岡委員)
總テノト云フト、何等ノト云フ字ヲ刪ラナケレバナラヌ
(淸岡委員)
總テノト云フ方ガ良イ、「利害ノ關係アリシ」ヲ「利益」トシタノハドウ云フ譯デス
(栗塚報吿委員)
分リマシヨウ、第一項ニ原由ト云フコトガアリマスカラ本條ハ左ノ如ク決ス定マリタル爭ノ一箇又ハ數箇ノ原由ニ憑リ爲シタル和解ハ若シ新ニ發見シタル證書ニ因リ當事者ノ一方カ爭ノ一箇若クハ數箇ノ目的ニ付キ何等ノ權利ヲモ有セサリシコト又ハ他ノ一方カ之ニ付キ完全ニシテ且爭フコトヲ得サル權利ヲ有セシコトノ顯ハレタルトキハ事實ノ錯誤ノ爲メ亦之ヲ銷除スルコトヲ得若シ確定シタル判決又ハ攻撃スルコトヲ得サル契約ヲ以テ既ニ爭ヲ結了シタルニ其判決又ハ契約ヲ知ルコトニ付キ利害ノ關係アリシ當事者カ之ヲ知ラサリシトキモ亦同シ然レトモ若シ和解カ前來ノ原由ヨリ生スルコト有ルヘキ總テノ爭ヲ結了シ又ハ豫防スルコトヲ目的トシタルトキハ當事者ノ一方ノ利益ニ於ケル確定證書ノ發見ハ其證書カ相手方ノ所爲ニ因リ扣留セラレタルトキニアラサレハ銷除ヲ生セス
(栗塚報吿委員)
其方ガ分リ良イ
(淸岡委員)
利益バカリデナイ害モアルダロウ
(松岡委員)
利害ト云フノハ必ズ兩方アルモノデハナイ、コウ云フ處ハ關係アルト云フ字ハ元トノ方ガ良イ樣ダ
(淸岡委員)
「知ルノ利益ヲ有ス」ト云フノハ惡ルイ
(村田委員)
知テ居レバ利益ヲ有スル
(栗塚報吿委員)
「知ルコトニ付キ利益ヲ有スル」デ宜シイ
(南部委員)
元トノ儘ニシ樣
(松岡委員)
元トノ儘ガ良イ
(栗塚報吿委員)
爲スコトアリト云フダカラ當事者雙方間ニデスカ當事者雙方ハ入ラヌ樣デス
(松岡委員)
御尤モ
(南部委員)
宜シイ樣ダ
(松岡委員)
總テノ爭ヲ結了シ又ハ豫防スルコトヲ目的トシタルデ良カロウ
(南部委員)
其レデモ宜シイ
(淸岡委員)
確定證書ト云フノハ可笑シイ
(栗塚報吿委員)
裁判所ノ言渡ノ樣ナモノデス
(淸岡委員)
裁判言渡書ナレバ宜シイガ其レバカリデハアルマイ
(栗塚報吿委員)
公證人ノ認メタ立派ナモノデス
(村田委員)
前來ノ原由ト云フノハ分ルカ知ラヌ
第七百六十二條朗讀ス
第七百六十二條 有効ナル和解ハ當事者ノ各自ノ利益ニ於テ互ニ認知セラレタル權利又ハ利益カ既ニ生シ又ハ豫見セラレタル爭ニ係リシトキハ當事者ノ間ニ於テ確定判決ノ純然タル權利認定ノ効力ヲ生ス此場合ニ於テ右ノ權利又ハ利益ハ前來ノ原由ニ憑リ保有セラレタリト看做サル但當事者雙方ニ更改ヲ爲スノ意アリシトキハ此限ニ在ラス〔第二千五十二條〕
若シ之ニ反シ互ニ供給セラレ又ハ約束セラレタル權利又ハ利益カ全部若クハ一分ニ於テ爭ニ係ラサリシトキハ和解ハ右ノ權利又ハ利益ニ付テハ物權又ハ人權ヲ生シ移轉シ若クハ消滅スル有償名義ノ合意ノ規則ニ從フ
(修正案) 第一項「各自ノ利益ニ於テ」ノ八字ヲ刪リ「認知セラレ」ヲ「認知シ」ト改メ「係リシトキハ」ノ下ニ「其」ノ一字ヲ加ヘ「純然タル」ノ四字ヲ刪リ「此場合ニ於テ」ヲ「此場合ニ於テハ」ト改メ「右ノ」二字ヲ「其」ノ一字ニ換フ第二項「供給セラレ」ヲ「供給シ」「約束セラレ」ヲ「約束シ」「利益カ」以下物權迄ヲ左ノ如ク改ム利益ノ内爭ニ係ラサリシモノアルトキハ其モノニ付テハ和解ハ物權
(栗塚報吿委員)
修正ガ御座リマス
(松岡委員)
權利又ハ利益ト云フノハ可笑シイ
(淸岡委員)
權利又ハ利益ノ内ハ惡ルイ
(栗塚報吿委員)
權利又ハ利益ニシテ
(南部委員)
「利益ノ全部若クハ一部ニシテ爭ニ係ラサリシモノアルトキハ」トシタ方ガ良イ
(淸岡委員)
其方ガ良イ
(栗塚報吿委員)
七百五十三條ニ熟議賣却ハ派分ノ行爲ト看做サレト云フノハ卽往ニ遡テ効ガアルカラ元トカラ所有者ト看做ス
(松岡委員)
併シ此權利認定ハ其レカラ次ギノモノガ生ズルノデ是レデハ看做スト云フコトハ出來ヌ
(栗塚報吿委員)
認定ト云フ字ハ惡イカ知リマセン
(南部委員)
其レデ保有ト云フ字ガ出テ來タノデス
(栗塚報吿委員)
判決ハ人ノ權利ガ元トカラアツタト認定スルノデ
(松岡委員)
確定判決ト同ジニナルト云フコトダケダロウ
(栗塚報吿委員)
其レデ純然タルト迄有ツタノデス
(淸岡委員)
生ジ生ズトアルカラ間違ヒマスネ
(栗塚報吿委員)
利益ハ既生トハ出來ナイカ知ラズ
(南部委員)
「生シ若クハ」トシタラ良カロウ
(松岡委員)
今ノ條ハ「權利卽チ利益」デハアリマセンカ
(村田委員)
「權利認定」ヲ刪ロウデハアリマセンカ、詰リ和解ハ確定ノ効力ヲ持ツト云フノダカラ
(栗塚報吿委員)
元來佛蘭西法デ唯確定ノ効ヲ生ズト云フガ、偖テ判決ト同ジ効力ヲ生ズト云フノハドウ云フコトカト云フニ就テ大ヘン議論ガアツテ、其レヲ避ケル爲メニ確定判決ノ如キ權利認定ノ効力ヲ生ズルト云フテ居リマスカラ權利又ハ利益ヲ權利トシテモ宜シウ御座イマス
(南部委員)
ドウ云フ譯デ利益ト云フカ質問シタラ宜カロウ
(栗塚報吿委員)
聞イテヤリマシヨウ
(淸岡委員)
權利認定ノ効力ヲ生ズト云フノハ
(栗塚報吿委員)
詰リ和解ノ効力ハドヲ云フ効力カト云フト裁判ト同ジ効力ガアル、裁判ト同ジ効力ト云フノハ權利認定ト同ジ効力ガアルト云フノデ御座イマス
本條ハ假リニ報吿委員ノ修正說ニ決シ「利益」ノ文字ハ起案者ニ質問スルコトニ決ス
第七百六十三條朗讀ス
第十五章 特定會社
第一節 會社ノ本性及ヒ設立
第七百六十三條 會社ハ二人又ハ數人カ其間ニ配當セラルヘキ利益ヲ收ムル爲メ財產ヲ共通シ又ハ共通セント約スル契約ナリ〔第千八百三十二條〕
(松岡委員)
實ハ契約ハ現在ノモノヲ規定シテアルカラ「セソ」ト云フコトハ入ラヌノダソウシテ會社ガ共通セントスル約束ナレバ會社ガ成立タヌ
(栗塚報吿委員)
其レデ會社ガ成立テ居ル
(松岡委員)
セントスル約束デハ未ダ利益ガ收マラヌ、數人ト云フノハ無數ト云フコトニ見ヘルダロウカ、二人又ハ二人以上ト見ヘルダロウカ數トハ二人以上ヲ數ト云フカラ五、六人ト云フコトニナル
(栗塚報吿委員)
二人以上ハ尙ホオカシイ
(淸岡委員)
特定會社ノ處デ特定ノ會社ノコトヲ論ズルト云フコトハアリマセンカ
(栗塚報吿委員)
アレハ包括會社デス、包括會社ハ別ニ書キマス
(松岡委員)
民事會社モ利益ヲ收ムルモノデナケレバ會社ニナラヌ
(松岡委員)
水ヲ防ギ堤塘ヲ築クノハ會社ニナラヌ
(尾崎委員)
先キヘ行キマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第七百六十四條朗讀ス
第七百六十四條 會社ハ包括又ハ特定ナリ〔第千八百三十五條〕
包括會社ニ特別ナル規則ハ此編ノ第二部第二章ニ之ヲ定ム〔第千八百三十六條乃至第千八百四十條〕
特定會社ハ各社員カ或ハ定マリタル物ヲ共通シテ利用スル爲メ或ハ作業ヲ成シ又ハ定マリタル職業ヲ行フ爲メ其定マリタル物ノ出資ヲ爲シ又ハ之ヲ約スル會社ナリ〔第千八百四十一條、第千八百四十二條〕
(修正案) 第三項「各社員カ」ノ四字ヲ刪リ「行フ爲メ」ノ下ニ「各社員カ」ノ四字ヲ挿入ス
(栗塚報吿委員)
末項ヲ「特定會社ハ或ハ定マリタル物ヲ共通シテ利用スル爲メ或ハ作業ヲ成シ又ハ職業ヲ行フ爲メ各社員カ定マリタル」ト致シマシタ
(松岡委員)
又ハ定マリタル職業ノ「定マリタル」ハ刪ツテ宜カロウ
(栗塚報吿委員)
其レデ宜シイノデス
(松岡委員)
左モナケレバ皆定マリタルヲ刪ルカ
(栗塚報吿委員)
下ノハ刪ツテモ宜シイ
(南部委員)
「定マリタル職業ヲ爲シ」トシタラ宜カロウ
(栗塚報吿委員)
其レハ諄々シイ
(南部委員)
「或ハ」ト云フト定マリタルガ被ラヌ樣ニナル、ソウスルト包括會社ニナル
(松岡委員)
實ハ包括ト特定ヲ分ケルノハ惡ルイ商法ニモ在ル通リ會社ガ斯々スルト云ヒサヘスレバ宜シイノダ
(村田委員)
「作業ヲ爲シ」ト云フノハ英文ニハアリマセン、「定マリタル職業ヲ爲シ或ハ定マリタル商業ヲ爲シ」トアル
(南部委員)
「定マリタル作業ヲ爲シ又ハ職業ヲ行フ」トシタラ宜カロウ
(淸岡委員)
一ツハ職業ニシタ方ガ良イ
(栗塚報吿委員)
詰リ企業ヲ成就セザル爲メデアリマス
(松岡委員)
下ノ「定マリタル」ハ最モ刪ルガ宜シイ此會社ハ出資如何ニ在ル出資ガ確定スレバ行フ事業ハ無限ノ便益ガアルトモ其會社ハ特定會社トアル、ソウスレバ會社ハ事業ノ制限ガアツテモ出資ニ制限ガナケレバ包括ダ
(村田委員)
包括特定ハ金ノ方カラ行ク樣ダ
(栗塚報吿委員)
ソウデス
(松岡委員)
上ノ定マリタルハ刪ルガ良イ
(栗塚報吿委員)
上ノハ入リマス
(村田委員)
償却ト云フ字ヲ入レ度イ
(栗塚報吿委員)
アリマセン
(南部委員)
定マリタル物ヲ共通スル爲メト云フノハ出資ヲ爲スノデ定マリタル職業ヲ爲ス場合ニハ「定マリタル」ト云フノハ入ラヌ
(栗塚報吿委員)
出資ヲ爲シ之ヲ約スル會社ナリトアリマス、ソウスルト定マリタル出資ヲ爲スノガ必要デス其レハ共通スル爲メニモヤリ、職業ヲヤル爲メニモヤル
(南部委員)
ソンナラ上ノ定マリタルモノニ皆係ツテ來ル
(松岡委員)
「定マリタル物ノ出資ヲ爲シ其物ヲ共通シ利用シ或ハ作業ヲ爲シ又ハ職業ヲ爲シ」ト云ヘバ宜シイ
(栗塚報吿委員)
ソウデス特定會社ハ會社デアル、其會社ハ定マリタル物ノ出資ヲ爲シ又ハ約束ヲスル會社デアル、ソレカラ何々ノ爲メ其レヲ共通シ利用スル爲メ或ハ作業ヲ爲シ企業ヲ成就スル爲メ又ハ職業ヲ行フ爲メトアリマス
(淸岡委員)
上ノ「定マリタル物」ト云フコトヲ刪ルコトハ出來ヌ
(村田委員)
定マツタル物ヲ出シ之ヲ出ソウト云フ約束デヤル其レハコウ云フモノダト云フノダ
(栗塚報吿委員)
矢張リ又ハ定マリタルノ「定マリタル」ヲ刪レバ良イノデス
(松岡委員)
ソウ云フト上ノ定マリタルハ出資ト縁ガナイ樣ニナル
(栗塚報吿委員)
縁ガアリマス特定會社ハ或ハ物ヲ共通シテ利用スル爲メトヤツテ終リヲ各社員ガ定マリタルトヤリマシヨウカ
(松岡委員)
其レガ宜シイ
(栗塚報吿委員)
特定會社トハ各社員ガ定マリタル物ノ出資ヲ爲シ又ハ之ヲ約シタル會社ニシテ之ヲ共通シテ利用スル爲メ或ハ作業ヲ爲シ又ハ職業ヲ行フ爲メノモノナリ
(村田委員)
「モノナリ」ハ可笑シイ
(淸岡委員)
「會社ナリ」トシタラ宜カロウ
(松岡委員)
目的トスルモノトス
(栗塚報吿委員)
「特定會社ハ各社員カ定マリタル物ノ出資ヲ爲シ又ハ之ヲ約シタルモノニシテ其物ヲ共通シテ利用スル爲メ或ハ作業ヲ爲シ又ハ職業ヲ行フヲ目的トスル會社ナリ」デモ「行フ爲メノ會社ナリ」デモ宜シイ
(南部委員)
「行フヲ目的トシタル會社ナリ」カ
(淸岡委員)
「又ハ之ヲ約束シ」トシタラドウデス
(栗塚報吿委員)
「特定會社トハ」ト云タ方ガ宜シイ
(南部委員)
其レデモ宜シイガ少シ重過ギル初メノ樣ニ「特定會社ハ物ヲ共通シテ」トヤツテ「又ハ定ムル」ノ五字ヲ刪ツタ方ガ良イ
(松岡委員)
「共通利用シ作業ヲ爲シ職業ヲ行フ爲メ」トシタラ宜カロウ
(栗塚報吿委員)
二ツニ大別シテアリマスカラ共通シテハ具合ガ惡ルイ「定マリタル」ヲ刪ツテ「各社員カ」ヲ入レテ「其」ト云フ字ヲ刪ルガ良イ
(村田委員)
初メノ「各社員」ハアツタ方ガ良イ
(栗塚報吿委員)
其處デ旨意ガ違ウノデス各社員ガ作業ヲスルノデナイ、職業ヲスルノデナイ會社ガスル爲メニ各社員ガ錢ヲ出スカラ其レデ終リヘ以テ來タノデ御座イマス
(西委員)
其レデ良サソウデス
(淸岡委員)
上ノ「或ハ」ヲ刪リ度イ
(南部委員)
之ハ文例デス
(栗塚報吿委員)
再調査ノトキニ讓ツテハ如何デス
(淸岡委員)
「定マリタル」ト云フ字ガアレバ「或ハ」ガ必要ダケレドモ「定マリタル」ヲ刪レバ照應シナイ樣ニナルカラ「或ハ」ト云フ字ハ入ラヌ
(栗塚報吿委員)
其方ノ「或ハ」デハアリマセン「或ハ利用スル爲メ或ハ職業ヲ行フ爲メ」ト云フ「或ハ」デ御座イマス
(西委員)
之デ宜シウ御座イマス
(尾崎委員)
先キヘ行キマシヨウ
本條第三項ヲ左ノ如ク改メ他ハ原案ニ決ス
特定會社ハ或ハ物ヲ共通シテ利用スル爲メ或ハ作業ヲ成シ又ハ職業ヲ行フ爲メ各社員カ定マリタル物ノ出資ヲ爲シ又ハ之ヲ約スル會社ナリ
第七百六十五條朗讀ス
第七百六十五條 社員ノ出資ハ或ハ動產又ハ不動產ノ所有權若クハ收益權或ハ金圓勞力又ハ藝術ヨリ成ルコトヲ得〔第千八百三十三條第二項〕
出資ハ不均等及ヒ別異ノ本性タルコトヲ得
(南部委員)
之ハ論ハアルマイ若シ論ガアレバ再調査ガ宜シイ
(尾崎委員)
「別異ノ本性」ト云フノハ可笑シイ
(淸岡委員)
實ニ此二項ハ分ラヌ
(南部委員)
ソンナニ惡ルイコトハアルマイ、混同デ出資ヲヤツテモ宜シイ
(淸岡委員)
別異ノモノト云フノハ上デ盡シテアルダロウ
(南部委員)
之ハ平均ニ無イコトヲ出シタノデスカラ
(淸岡委員)
「別異ノ本性」ハ
(南部委員)
別異ノ本性ハ餘計ナコトカ知ラヌ
(松岡委員)
動產ノ所有權ヲ會社ニヤツテ金圓ハ動產外カ
(栗塚報吿委員)
勞力ヤ藝術ニ對シテノ話シデス
(南部委員)
上ノ動產ハ金圓ヲ除イタノダロウ
(栗塚報吿委員)
ソウデス
(松岡委員)
藝術ト云テモ其レガ物ヲ成セバ權利ト云フ、金圓ハ動產ニ非ズトハ云ヘヌ
(栗塚報吿委員)
道具ヲ出ソウト云フ人モアロウ金ヲ出ソウト云フ人モアルト云フノダカラ宜シウ御座イマシヨウ
(村田委員)
金圓ト動產ト別ニスレバ動產ノ中ニ入ツテナイ
(尾崎委員)
書イテ置イテモ宜シイ
(松岡委員)
金圓ハ金錢ニナツタノダロウ
(栗塚報吿委員)
金圓ニナツタノデス
(南部委員)
再調査ニ讓ロウ
(松岡委員)
「別異ノ本性」ハ刪ロウ
(栗塚報吿委員)
民事會社ハ物ガ同ジ樣ニ出ルノダカラ同ジ金高ヲ出サナケレバナラヌト思フカ知レヌガソウデ無イ
(今村報吿委員)
斷然刪ルガ良イ
(淸岡委員)
却テ迷ヒヲ生ズル
(松岡委員)
不均等モ必要デナイ資本ヲ株式ニ分ツト云フコトガアルカラ同ジニシ樣ト思テモ出來ナイカラ分ツテ居ル
(淸岡委員)
其レハ宜シイガ別異ト云フノハ瞠着シテ居ル
(尾崎委員)
出資ハ不均等ナルコトヲ得ト云フト餘リ短イカラ斷然刪ロウ
(南部委員)
不均等ハ置キマシヨウ
(尾崎委員)
「不均等」丈ケハ置イテモ宜シイ
(栗塚報吿委員)
「出資ハ不均等タルコトヲ得」ト致シマス
本條第二項ハ左ノ如ク改ム出資ハ不均等タルコトヲ得
第七百六十六條朗讀ス
第七百六十六條 民事會社ハ當事者ノ意カ之ヲ無形人ト爲スニ在ルトキハ無形人ヲ成ス
此場合ニ於テハ會社ニ一ノ社名ヲ付シ且其契約ハ商事會社ノ公吿ノ爲メ法律ノ定メタル方式ニ從ヒ拔書ヲ以テ之ヲ公吿スルコトヲ要ス
會社ニ社名ヲ付シ又ハ結社契約ヲ公吿シタルノ所爲ノミヲ以テ社員ニ會社ヲ無形人ト爲スノ意アリト推定セラル
(南部委員)
廣吿ハアツテ登記ハ無イデス
(栗塚報吿委員)
公示ノ爲メノ方ガ良カロウト思ヒマス、ソウスルト登記モ入リマスカラ
(村田委員)
斷然ソウシマシヨウ
(南部委員)
「拔書ヲ以テ」ヲ刪ツテ「之ヲ公示スルコトヲ要ス」トシタラ宜カロウ
(松岡委員)
「登記公吿スルコトヲ要ス」トシタラ宜カロウ
(南部委員)
公示デ登記モ見セタラ良カロウ
(松岡委員)
公示ト云フノハ商法デハ一向云ハヌカラ
(栗塚報吿委員)
「商事會社ノ公示ノ爲メ法律ニ定メタル方式ニ從ヒ登記公吿ヲスルコトヲ要ス」デモ宜シイ
(村田委員)
「之ヲ登記公吿スルコトヲ要ス」デ宜シイ
(尾崎委員)
其レデ宜シイ
(栗塚報吿委員)
二項ハ「結社契約ヲ登記公吿シタルトキハ」トシナケレバナリマセン
(淸岡委員)
登記公吿ヲスレバ意アリト推定スル位デハナイ
(南部委員)
社名ヲ付シタバカリデモ意アリト推定スル登記ヲシテモ意アリト推定スルト二ツアリマス
(松岡委員)
之デ責任ヲ帶ルカ知ラヌ或ハ社名ヲ付ケテモ登記公吿ヲシナケレバ會社ノ扱ヒヲシナイトシタラ宜カロウ之ハ義務ヲ負ハセルバカリニ止マルカ知ラヌ
(栗塚報吿委員)
社名モ無シ登記公吿モ無イトキハ貴君ニ金ヲ貸シタトキハ貴君バカリニ外係ラヌ三人デヤツテ社名ヲ付シタトキハ三人ニ係ル
(松岡委員)
社名ヲ付スバカリデ登記公吿ヲシナイデ其レヲ無形人トスルコトハ出來マイ之ハ重大ノ問題ト思フ
(栗塚報吿委員)
無形人トスレバ公吿ヲスル
(松岡委員)
會社ニ社名ヲ付シタラバダロウ
(栗塚報吿委員)
又ハ登記公吿シタ丈ケデ無形人ト見ル
(松岡委員)
其方ガ宜シイガ社名ヲ付シタバカリデモ無形人トナルノハ宜シクナイ
(村田委員)
貴君ノ云フ樣ニスレバ登記公吿ヲシナケレバ會社ト云ハレヌ
(松岡委員)
勿論ソウデス
(南部委員)
社名ヲ付ケレバ無形人トスレバ皆其積リニナルカラ
(尾崎委員)
會社ニ社名ヲ付シ結社契約ヲ登記公吿シタラ良カロウ
(南部委員)
無形人トナレバ公吿ヲスル公吿スレバ無形人トナルト云フト馬鹿ラシイ
(尾崎委員)
社名ヲ付シタバカリデ無形人トナツテ害ガアルカ
(松岡委員)
共通デ何時デモ分ケラレル、無形人トナレバ銘々ノ財產ヲ離レテ仕舞フ
(南部委員)
共益商社ナドハ社名ヲ付シテ居ルカラ無形人ダ
(松岡委員)
ソウスルト社員ニ關係ノ債主ガ出テ來テモ、アレハ私ノ錢デハナイ、會社ノ錢デ御座ルト云フ樣ニナル
(尾崎委員)
有限責任デ無限トハ云ヘヌ
(南部委員)
之ハ無形人デ宜シイ大ヘン便利ダ
(栗塚報吿委員)
註ノ四百二ト三トヲ御覽ナサイ、社名ヲ付シテ無形人ニシテモ害ハナイ
(村田委員)
末項ハ刪レバ良イ
(淸岡委員)
末項ハ刪ツテモ第一項ガ分ラヌ
(南部委員)
無形人ト爲ス意ハ何處カラ推測スルカト云フト社名ヲ付セバ意アリト推定スル
(松岡委員)
社名ヲ付セバ登記公吿シマスカ
(栗塚報吿委員)
無形人トナレバ登記公吿スルト云フコトデス
(松岡委員)
ソウ云フ意味ニハ讀メナイ社名ヲ付スレバ法律ガ無形人ト爲ス意ガ有ツタト推定スルトアル
(南部委員)
其レデハ前ハ社名ヲ付セバ登記公吿ニ及バヌト云フノカ
(松岡委員)
「ボアソナード」ハ登記公吿ヲシナクモ無形人ト看做スゾヨト云フ
(栗塚報吿委員)
ソウデス、無形人ト見ル以上ハ登記公吿スル
(松岡委員)
社名ヲ付シテ居レバ登記公吿ヲ爲スト雖ドモ無形人トスル外讀メナイ
(南部委員)
社名ヲ付セバ無形人トナルカラ卽チ登記公吿ヲ受ケナケレバナラヌ
(栗塚報吿委員)
社名ヲ付シタ丈ケデ無形人トシ樣ト思フ意ガアルト推測スル其意ガアルト云タ以上ハ公吿シナケレバナラヌ
(村田委員)
三項ヲ刪ロウ
(南部委員)
其レデハ尙ホ分ラヌ
(栗塚報吿委員)
刪ラナケレバナラヌト云フ理由ハ
(村田委員)
前ニ無形人ト爲スノ意ガアルトキハ無形人ト爲ストアルカラ
(南部委員)
ソンナラ登記公吿ヲシテカラ無形人トスルト云フコトヲ書カナケレバナラヌ
(松岡委員)
佛蘭西ノ法文ニ對シテ攻撃シタリ改正スル心持デ書クカラ此樣ナコトニナルノダ民事會社ハ法律上ノ人ニナレルヤ否ヤハ佛蘭西デ論ガアル
(栗塚報吿委員)
貴君ノ御論ハ若シコウ云フニスレバ斯樣ナ害ガアルト云フナラ分リマス
(松岡委員)
仕舞ノ處ハ何ヲ推定スルカ
(栗塚報吿委員)
意ヲ推定スル意ガ有ツタラ無形人トスル其意ハドウシテ知ルカト云フニ斯樣ナコトガアレバ多分無形人ニシ度イカラ名ヲ付ケタノダロウ
(松岡委員)
其レナラ上デ無形人トナレバ登記公吿ヲシロト云フ公吿ヲスレバ無形人トスルト云フ公吿ヲスレバ無形人トスルト云フノハ何ノコトカ分ラヌ
(栗塚報吿委員)
結社契約ハシタケレドモ無形人トスル意ハナカツタ各自ガ責ヲ負オウデハナイカト云フ意デヤツタ其レデ之ハ默ツテ居タラバ三人デ公吿シテ居ルカラ無形人ト看ルゾヨ
(松岡委員)
其レ丈ケノコトデ無形人ト看ルゾヨ其レナラ社名ヲ付ケテジツトシテ居レバ無形人ト看ルゾヨ
(西委員)
餘リ嚴酷ニ見ルカラデシヨウ登記シタラバ之ヲ無形人トスルノ意ガアルモノト見ルゾヨ登記ト云フ所爲デ見ヘテ行ク社名ヲ付シタノモ素ヨリソウデス
(淸岡委員)
會社ガ社名ヲ付シテ默ツテ居タトキニハ登記公吿ヲシナカツタトキハ無形人トナルノ意ガアルト推測スル
(南部委員)
此場合ニ於テ登記公吿ヲスル
(淸岡委員)
登記公吿ヲスレバ宜シイガ其レヲセズニ怠ツテ居ルトキハ矢張り無形人ト爲ス意ノアルトキハ會社ニ一ノ社名ヲ付シ登記公吿ヲ爲スコトヲ要ストシナケレバナラヌ當事者ノ意ガ之ヲ無形人ト爲スノ意アルトキハ社名ヲ付シテ公吿スルコトヲ要ストシナケレバナリマセン
(栗塚報吿委員)
ソウ云フコトデス
(淸岡委員)
此文章デハソウハ讀メナイ
(尾崎委員)
「此場合ニ於テ」ト云フ處デ分ルダロウ無形人トナツタ場合ニハドウスルカト云フト必ズ法律ニ定メタル方式ニ從ヒ登記公吿スル
(南部委員)
淸岡サンノ御說ハ二項ト三項ト倒置スレバ良イノデスカ
(松岡委員)
諸君ハ文章ヲドウ御覽カ知ラヌケレドモ會社ニ社名ヲ付シタ者ハ登記公吿ヲサセル積リダ已ニ登記公吿ヲシタ者ハ無形人ト推定スルト云フ樣ニ讀メルト宜シイガソウハ讀メヌ
(栗塚報吿委員)
末項ガアル爲メニ初メニハ登記公吿ヲセヨト云フテ終リニ至テハ社名ヲ付シタバカリデモ無形人ト看做ストアルカラ前ニ要ストアツテ後ニハ入ラヌコトニナルト云フ御論ガアリマシヨウカソウデハナイ
(松岡委員)
ソウデス其通リ書イテアル無形人ト看做ストアル
(栗塚報吿委員)
第一項デス
(西委員)
一項ハ公吿ノ仕方ガ擧ゲテアル新聞ノ廣吿デモ宜シイノデス二項ノトハ違ウ
(栗塚報吿委員)
之ハ甚ダ惡ルウ御座イマシタ字ガ違ヒマスカラ「契約ヲ公示シタル」ト御直シ下サイ新聞ヘ廣吿シテモ宜シイノデス
(松岡委員)
ソウダロウ
(村田委員)
上ノ方ハ宜シイノダ
(栗塚報吿委員)
ソウデス
(松岡委員)
意ガアルトキハト云フノハ惡ルイ
(栗塚報吿委員)
其處ガ原則デス之ハ手續ノ話シデ無形人デ出來ル無形人トスレバ是レ丈ノコトヲシナケレバ人ニ分ラヌ
(淸岡委員)
人ニ分ラズ且無形人トナラヌト云ハナケレバナラヌ
(栗塚報吿委員)
契約ハ同意カラ成立ツ
(松岡委員)
二項ト三項ト置キ場ヲ換ヘタラ宜カロウ
(栗塚報吿委員)
「無形人ト爲スノ場合ニ於テハ」トシ樣
(南部委員)
「此場合ニ於テ」デ良カロウ
(栗塚報吿委員)
「民事會社ヲ無形人ト爲ス場合ニ於テハ」ト云ハナケレバナラヌ
(南部委員)
終リハ話ヲシタノダカラ變ヘズトモ宜シイ
(尾崎委員)
之デ宜シイ
(南部委員)
「民事會社ハ當事者ノ意ニ因リ之ヲ無形人ト爲スコトヲ得此場合ニ於テハ」云々トスレバ良イ
(栗塚報吿委員)
考カラ實ニ移ルノデ色目ヲ使ツテ色ガ出來ナイ話デ是非手ヲ握ラナケレバナラヌ、肉ト肉ト押付ケナケレバナラヌト云フ話シニナル
(村田委員)
ソウデナイ貴君ノ方ガ肉ト肉ト付ケナケレバナラヌト云フノダ南部サンノ說ガ一番良イ樣ダ
(栗塚報吿委員)
「民事會社ハ當事者ノ意思ニ依リ無形人ト爲スコトヲ得」デモ良イ
(松岡委員)
其レガ宜シイ、商法ノ方デ「共算商業組合ノ契約ハ會社ニ關スル此法律ノ規定ニ從フコトヲ要セス」トアル、縱令社名ヲ付ケテ居ロウトモ會社ノ手續ヲ履シタルトキ登記公吿ヲシナケレバ無形人ト云フ權利モ義務モ持タヌ其レヲ說クニハ此處ヘコウ書イテ置クト商法デ云フ共算商業組合ト瞠着スル、其レダカラ刪ル
(栗塚報吿委員)
會社デモ益我務ヲ負ヒ一個人デモ義務ヲ負フ場合ガ出ルデス
(松岡委員)
其トキ公吿ヲセヌ者ヲ無形人ト看做スト云フノハ餘計ナ話ダ
(村田委員)
刪テ宜シイ
(南部委員)
當事者ノ意ニ依ルガ良イ
(松岡委員)
「當事者ノ意ニ因リ」デ宜シイ
(栗塚報吿委員)
其レデ末項ヲ刪ルカ
(村田委員)
「一ノ社名」ト云フノヲ刪ロウ
(栗塚報吿委員)
刪ツテモ宜シイ
(尾崎委員)
刪ロウ
本條ハ左ノ如ク決ス
民事會社ハ當事者ノ意ニ因リ之ヲ無形人ト爲スコトヲ得此場合ニ於テハ會社ニ社名ヲ付シ且其契約ハ商事會社ノ公示ノ爲メ法律ノ定メタル方式ニ從ヒ之ヲ登記公吿スルコトヲ要ス末項刪除ス
(尾崎委員)
ヤリマシヨウ
第七百六十七條朗讀ス
第七百六十七條 合意ノ一般ノ規則ハ會社ニ之ヲ適用シ殊ニ當事者ノ承諾竝ニ能力、目的、原由及ヒ證據ニ關スルモノハ會社ニ之ヲ適用ス〔第千八百三十三條第一項、第千八百三十四條〕
商事會社ニ特別ナル規則ハ商法又ハ特別法ニ之ヲ定ム〔第千八百七十三條〕
(村田委員)
「會社ノ契約ニ之ヲ適用ス」ト云フ字ハアリマセンカ
(栗塚報吿委員)
アリマセンガ有ル方ガ分リ良イ樣デス
(南部委員)
「會社ニ之ヲ適用ス」デモ分ル
(村田委員)
會社ニ何ニ適用スルカ分ラヌ
(南部委員)
會社ノ合意ニ之ヲ適用スル
(淸岡委員)
末項ハ刪ロウ、餘計ナ話シダ
(南部委員)
之ガ無イト大變デス
(淸岡委員)
ソンナラ罪ヲ定メルトキハ「刑法ニ定メル」ト一々云ハナケレバナラヌ
(南部委員)
ソウ一々云フモノデナイ
(淸岡委員)
コンナコトヲ云ヒ出シテハ際限ガナイ
(栗塚報吿委員)
之ハ登記ノ方ニモアリマスカラ宜シイデハアリマセンカ
(淸岡委員)
商法ガ後ニ出ルトキハ之ガナイト分ラヌガ日本デハ商法ガ却テ先キヘ出ル位ダカラ入ラヌ
(南部委員)
原則ハ民法ニ因ルト旨意ガ裏ニ在ル
(尾崎委員)
先キヘ行キマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第七百六十八條朗讀ス
第七百六十八條 目的ノ商事タラサル會社ハ商法ニ從ヒ資本ヲ株式ニ分チ且之ヨリ生スル有限責任ヲ以テ合資又ハ無名ノ會社ノ組織ヲ受クルコトヲ得但之カ爲メ民事會社タルコトヲ妨ケス〔千八百十年四月二十一日ノ鑛山ニ關スル佛法律第八條第四項及ヒ第三十二條〕
買主ハ同一ノ場合ニ於テ鑑定人ノ評價シタル物ノ現時ノ價額ト債權者カ第七百二十七條ニ從ヒ賣主ノ權利ニテ己レニ返還スヘキ金額トノ差額ニ逹スルマテ債權者ニ對シテ自己ノ負擔スルモノヲ辨濟シテ亦其債權者ノ訴ヲ止ムルコトヲ得
(栗塚報吿委員)
之ハ商法ノ百五十五條ト全ク反對セズ之ハ餘程大問題デモアロウト思ヒマス報吿委員ノ多數ハ之ガ當リ前デアルト云フ商事ト民事ノ會社ノ區別ハ商法デモ出來テ居ルガ目的ニ依テ商事民事ノ區別ヲ立ルガ本統デアル何モ資本ヲ株式ニ分ツテモ商事會社トナルモノデナイ、民事會社ナラ何處迄モ民事會社資本ヲ分ツテモ商事會社ト云フコトハナイト云フノガ多數デ御座イマス商法デ云フノハ民事會社デモ資本ヲ分ケレバ商事會社ゾヨト云フテアリマスカラ孰レカ一ツニ決シナケレバナリマセン
(南部委員)
私モ之ハ商法ガ良イト思フ性質カラ云フト幾ラ株式タルコトヲ分ツテモ民事タルコトヲ失ハナイ併シナガラ株式ニ分ツト株式ガ段々流通シテ行ク流通シテ行ク處ノ點ヲ以テ見ルト商事ノ性質デアロウト思フ卽チ茲ニモ商法ニ從ヒ資本ヲ株式ニ分ツト迄起案者ガ書イテ居ル資本ヲ分テハ商事會社ト見テ置ケバ良カロウト思フ
(栗塚報吿委員)
詰リ裁判上ノ話シダ
(尾崎委員)
商事ニ非ザル會社ト云フノハ
(栗塚報吿委員)
礦山ヲ開クトカ云フノデス
(尾崎委員)
建築ヲスルトカ云フノダガ株式ヲ分ツト株式ハ賣買モスルシ利益ガアレバ配當モスルカラ株式ニ分ツモノハ商法ダロウ
(栗塚報吿委員)
會社ノ目的カラ商事ト民事ト區別ヲ立テタ以上ハソウハ申セマセン
(南部委員)
獨乙モ其通リ英吉利モ其通リデス
(尾崎委員)
株式ニ分ツタ以上ハ商事トナリソウナモノダ
(村田委員)
商事ノ方ニ近イ樣ダ
(栗塚報吿委員)
民事會社ト雖ドモ株式ニ分タトキハ商事會社ト看做スト商法ノ起案者モ云フテ居リマスカラ
(南部委員)
佛國デモ商事會社トスル傾キガアルト起案者ガ云フテ居リマス民事會社デモ商法ヲ適用シテ行クト云フカラ寧ロ商事會社ト見テ置イタ方ガ宜シイ
(淸岡委員)
起案者ニ刪ツテ貰ウガ良イ
(栗塚報吿委員)
起案者ハ刪リマセン唯但書ヲ刪リサヘスレバ良イノデス
(淸岡委員)
但ヲ刪ルト上ノ掛リ方ガ違ツテ來ル
(栗塚報吿委員)
「商事タラサル會社ト雖トモ」トスレバ宜シイ
(南部委員)
其方ガ良イ
(松岡委員)
「目的ノ商事タラサル會社ト雖トモ資本ヲ株式ニ分チ且之ヨリ生スル何々ヲ組織スルトキハ商法ノ規定ニ從フ」トハ云ヘヌカ
(淸岡委員)
其レガ良イ
(栗塚報吿委員)
「受クルコトヲ得」トシテ「但商法ノ規定ニ從フ」ト云テモ宜シイ
(松岡委員)
合資ノ會社ニ株式ハオカシイ
(南部委員)
「會社ト雖トモ資本ヲ株式ニ分ツコトヲ得但此場合ニ於テハ商法ノ規定ニ從フ」
(淸岡委員)
之ハ民法ノ上カラ立ル辭ダカラ「色モ」ハ良クナイ
(栗塚報吿委員)
但丈ケヲ御刪リニナレバ宜カロウト思ヒマス
(南部委員)
合資又ハ無名ノ會社ノ組織ト云フノハ分ラヌコトダ
(松岡委員)
佛蘭西ニハ差金會社ト云フノガアル株式デ無限責任ト云フノハ責任ノ人ガ出來テ差金會社ヲ拵エル今ノ商法ニハ其レガ一切無イ
(尾崎委員)
此旨意デハ差金會社モ出來ルゾヨト云フコトニナル
(村田委員)
此處ハ有限無限ハ入ラヌコトダ
(南部委員)
「資本ヲ株式ニ分ツトキハ商法ニ從フテ」宜シイ
(栗塚報吿委員)
原文デハ其目的ノ商事デナイ會社ガ出來ル民事會社ヲ止メルコトナシニ合資又ハ無名ノ會社ヲ受取ルコトガ出來ル資本ヲ株式ニ分ツコトト其レガ爲メニ生ズル處ノ有限責任ヲト此二ツヲ以テ但商法ニ從フト書テアルノデス
(松岡委員)
此合資ハ商法デ云フ合資トハ考ガ違ツテ居ルダロウ
(西委員)
「目的ノ商事タラサル會社ト雖トモ」トシ度イ
(淸岡委員)
「資本ヲ株式ニ分ツトキハ目的ハ商事タラサル會社ト雖トモ商法ノ規定ニ從フ」トスレバ良イ
(村田委員)
同ジコトダ
(南部委員)
資本ヲ株式ニ分ツトキハ商法ノ規定ニ從フデ宜シイ
(松岡委員)
「會社ハ其目的商事タラサルトキト雖トモ資本ヲ株式ニ分ツトキハ」トスルガ良イ
(栗塚報吿委員)
「會社ハ其目的民事タルトキト雖トモ」トスレバ良イ
(村田委員)
其處ハ矢張リ商事タラザルト云ハナケレバナラヌ
(松岡委員)
「民事タルトキト雖トモ」デナケレバ良クナイ
(栗塚報吿委員)
「會社ハ其目的商事タラサルモ資本ヲ株式ニ分ツトキハ商法ノ規定ニ從フ」
(尾崎委員)
其レガ良カロウ
(南部委員)
之デ宜シイ
本條ハ左ノ如ク決ス
會社ハ其目的商事タラサルモ資本ヲ株式ニ分ツトキハ商法ノ規定ニ從フ
(栗塚報吿委員)
其レカラ七百二十五條ノ留保ノ分ヲ御ヤリ下サイ之ハ起案者ガ改メマシタ
第七百二十五條第三項朗讀ス
買主ハ同一ノ場合ニ於テ鑑定人ノ評價シタル物ノ現時ノ價額ト債權者カ第七百二十七條ニ從ヒ賣主ノ權利ニテ己レニ返還スヘキ金額トノ差額ニ逹スルマテ債權者ニ對シテ自己ノ負擔スルモノヲ辨濟シテ亦其債權者ノ訴ヲ止ムルコトヲ得
(栗塚報吿委員)
「自己ノ」ハ翻譯デ刪リマス其レカラ報吿委員デ修正シテ「現時ノ價額ト第七百二十七條ニ從ヒ賣主ヨリ己レニ返還スヘキ金額トノ差額ニ逹スル迄賣主ノ債務ヲ辨濟シテ債權者ノ訴ヲ止ムルコトヲ得」ト修正致シマス
(松岡委員)
丙ガ來ツテ買戻ヲ爲サントスルトキ丁ガ云フニ此差額ノ三百圓ヲ汝ニ與ヘルゾヨト云フノダ
(栗塚報吿委員)
ソウデス御前ハ一體買戻權ガアルノデハナイ金ガ欲シイノダカラ我ガ御前ニ金ヲヤルト云フコトガ云ヘルト云フノデス
(松岡委員)
買戻付キデ賣テ居ル人ガ親ニ向イテ我ノ權利ニ代ハツテ買戻セト云フコトヲ之デヤリハセヌカ
(栗塚報吿委員)
其レハ違イマス
(松岡委員)
七百二十六條ノ二項ヘ行クカ
(栗塚報吿委員)
ソウデス
(松岡委員)
此條ハ上デ買戻ノ權能ヲ行フ次ノ條ハ所有權ヲ移スノカ
(淸岡委員)
鑑定人ノ評價ト云フノハ代價ヲ原價デ返ヘストキデナイ場合カ
(松岡委員)
其場合ダ私ガ貴君ニ地面ヲ賣テアル、買戻シダカラ安ク賣テアル
(淸岡委員)
ソウバカリハ云ヘヌ私ガ高ク買テアルニ貴君ノ買戻ノ時分ニ安クナツタトキハ
(松岡委員)
其時分ハ直グニ戻ス
(栗塚報吿委員)
賣主ト買主ノ間デハナイノデス賣主ト云フト淸岡サンノ御親ノ樣ニナリマスガソウデナイ淸岡サンカラ私ガ地面ヲ買ヒ何時デモ金ヲ持テ來レバ上ゲルト云フ約束デ五百圓デ宅地ヲ買タ、ソウスルト淸岡サンガ來タノデハナク淸岡サンノ債權者ナル尾崎サンガ入ツテ淸岡サンニ貸ガアルカラ御出ナサレタノダカラ金サヘ拂ヘバ宜シイ淸岡サンガ來タトキハ是非地面ヲ上ゲナケレバナラヌ其時私ハ、ドウスルカト云フト屋敷地面百坪今日五百圓ヨリ低ケレバ差引イテ貴君ハ一文モ取レナイカラ債權者ガ來ヨウ筈ハナイ大變良クナツタ千圓ニ買ツタトキハ淸岡サンモ金ガナイ、貴君ハ買戻テ賣レバ得ニナリマシヨ、貴君ハ詰リ金ガ欲シイノダカラ鑑定人ニ付ケテ貰ヒマシヨウ、淸岡サンガ仰シヤツタカラ五百圓デ上ゲルケレドモ貴君ハ金サヘ上ゲレバ宜シイノダカラ鑑定人ニ作ラセマシヨウト云テ作ラセテ千圓トナル、元々五百圓ハ引クコトガ出來ルカラ千圓ト云フ額ト淸岡サンカラ私ニ返ツテ來ル五百圓ヲ差引イテ見ルト五百圓ヲ尾崎サソニ上ゲテ貴君訴ヘルコトハ出來ナイト云フコトニナリマス、淸岡サンカラ御出ニナレバ私ハ其レハ出來マセン
(淸岡委員)
分ルダロウ
本條第三項ハ左ノ如ク決ス
買主ハ同一ノ場合ニ於テ鑑定人ノ評價シタル物ノ現時ノ價額ト第七百二十七條ニ從ヒ賣主ヨリ己レニ返還スヘキ金額トノ差額ニ逹スルマテ賣主ノ債務ヲ辨濟シテ債權者ノ訴ヲ止ムルコトヲ得