法律取調委員会 民法草案議事筆記 第37回
参考原資料
- 法律取調委員会 民法草案第二編人權ノ部議事筆記 , 自 第三十五回 至 第三十七回 [国立国会図書館デジタルコレクション]
備考
- 未校正のテキストデータです.
民法草案財產篇人權ノ部第三十七回議事筆記
自第五百二十六條至第五百四十條
明治二十一年三月十三日午前第九時十五分開會
(委員長)
始メマシヨウ
第五百二十六條朗讀ス
第三節 合意上ノ釋放
第五百二十六條 全部又ハ一分ニ付テノ債務ノ合意上ノ釋放卽チ免除ハ有償名義又ハ無償名義ニテ成ルコトヲ得
初ノ場合ニ於テハ釋放ハ狀況ニ隨ヒ代物辨濟、更改、和解又ハ解除ヲ成シ次ノ場合ニ於テハ贈與ヲ成ス然レトモ何等ノ特別ナル公式ニモ從フコトヲ要セス
破產シタル債務者ニ債權者ノ協議ヲ以テ許與シタル寬假契約ト稱スル一分ノ釋放ハ商法ヲ以テ之ヲ規定ス〔佛商第五百七條〕
(栗塚報吿委員)
「寛假」トアルハ翻譯シテ「協諧」ト改メマシタ
(淸岡委員)
次ノ場合ニ無償名義ノ場合トシタラ宜サソウナモノデス、解除ヲ成シ贈與ヲ成シト續ケテ、然レドモトアリマスガ、然レドモガ次ノ場合丈ケニ掛ツテ居ル樣ニ見ヘマスルガ左樣デスカ
(栗塚報吿委員)
次ノ場合ノミデアリマス何ゼナレバ贈與ト云フモノハ有式契約ノ内デ御座イマシテ一種ノ手續ガアリマス、公證人ノ面前デナケレバナリマセヌ、釋放ノトキハ贈與デアルケレドモ公式ニ從ハヌデモ宜イト云フカラ次ノ場合ノミデアリマス、外國ノ文ハ句讀ガ切テアリマスカラ次ノ場合ガ判然致シマスガ日本文デハ分リマセヌ
(淸岡委員)
分リマセヌ、上ヲ「成シ」トシテ下ヲ「成ス」トシテ讀ケテアリマスカラ悉皆上ヘ掛ツテ仕舞ヒマス上ノ「解除ヲ成シ」ヲ「成ス」トシテハ如何
(栗塚報吿委員)
ソウスルト「又」ト云フ字デモ加ヘマスカ
(松岡委員)
ソレハ宜シウ御座イマシヨウ
(栗塚報吿委員)
「然レトモ何等ノ公式ヲモ」ハ次ノ場合ノミトハ見惡ウ御座イマス
(淸岡委員)
「又」ト入レルトマタ分リ易イ
(今村報吿委員)
上ノ二ツニハ掛リ樣ハアリマセヌ、上ノ二ツハ公式ト云フコトハナイコトデアリマス
(栗塚報吿委員)
「又」ト入レマスカ、皆サン如何デスカ、原文デモ「成シ」ト云フ字ハナイノデ淸岡ノ說デ「成ス」トスルガ宜イト言ハレマスガ「又」ト入レテハ如何デス
(委員長)
宜カロウ
(松岡委員)
我々ノ見ル所デハ貴クハ思ヒマセヌ
(栗塚報吿委員)
釋放ト云フモノハ之ハ彼ノ人ガ屡々講義ヲ書タガ人ニ物ヲ與フル許リ贈與カト問ヒ掛ケラレタトキニ義務ヲ免カレシムルガ贈與ト云フカラ、無論講義ニ過ギナイガ、法理學上論ズレバ贈與ニナルト云フノデス
(松岡委員)
ソウ云フ高尙ナコトヲ云フト左樣ニナルガ併シ民法上贈與ハ皆制限ガアルカナレバ一萬圓ヤツテモ之ヲ一切取ラヌカラト云フテモ構ハヌノデス
(今村報吿委員)
ケレドモ有償名義ト無償名義ト定メタ以上ハ結果ガ違ヒマス、是カラ先キハ皆駄目ヲ詰メテアリマス
(淸岡委員)
有償名義ノトキハ
(栗塚報吿委員)
更改ト看做スコトモ和解ト看做スコトモ又ハ解除ト看做スコトモアリマス
(淸岡委員)
等シク釋放ニシテデスカ
(栗塚報吿委員)
有償名義ノトキハデス
(松岡委員)
「或ルコトヲ得」ト云フハ自然ノコトヲ云フノデスカ、人ガ成スノデハナイノデスカ
(栗塚報吿委員)
釋放カラ言葉ヲ立タカラ、人ガスルコトヲ得デアリマス
(今村報吿委員)
元來釋放ガ有償名義ト云フハオカシイノデアリマス
(淸岡委員)
代物辨濟ナケレバ免除デモ釋放デモナイデハアリマセンカ
(栗塚報吿委員)
今迄馬一頭ヨコセト云タノヲ金デモ宜イト云タノデアリマス
(松岡委員)
義務ノ釋放ト云ヘバ其樣ナモノヲ以テ來ルノハ牽強附會デス
(栗塚報吿委員)
翻譯デハ商法ノ破產ノ所デ斯樣ナ字ヲ使ヒマシタカラデス
(淸岡委員)
前項抔ノコトハ幾ンド微妙ナ理論デスネ
(栗塚報吿委員)
併シ裁判官抔ノ法理學研究ニハ必要ダロウト思ヒマス
(淸岡委員)
ソウ云フ場合ニハ必要デシヨウガ代物辨濟シタラ釋放ヲ受ケタモノデハアリマセヌ
(栗塚報吿委員)
馬ヲヨコセト云フ義務ハ釋放ダト云フノデス
(松岡委員)
ソレハ理窟デアツテ、成立タ義務ノ元ガ消ヘタモノナレバ馬ノ代リニ牛ヲ取ルニシテモ釋放ト云フカ、分ラヌノデス
(栗塚報吿委員)
併シ新規ニ義務ガ生ジタモノト見ルカラ舊義務ハ消ヘタト云ハナケレバナラン
(今村報吿委員)
理窟ハ面白イノデス
(松岡委員)
面白クナイ釋放ト云フノハ許スト云フノデスカラ
(今村報吿委員)
ケレドモ辨濟ト云フ原則ガアル、約束通リシナケレバ辨濟ハ成立ヌ、當リ前ノ辨濟ノ外ノコトヲシタナレバ百圓ノ金ヲ借リ、一圓ヤツテハ辨濟トハ云ヘヌデシヨウ、例ヘバ馬ヲ遣ル所ハ犬ノ子ヲ一頭ヤツタラ許スト云テモ辨濟トハ言ヘヌデシヨウ
(松岡委員)
ソウナレバ百圓ノ所ヘ九十九圓遣タラ辨濟トハ云ヘヌカ
(南部委員)
ソレハ和解デス
(今村報吿委員)
場合ニ依テ和解カハ知レヌガ、辨濟トハ云ヘマセヌ
(松岡委員)
ソウ云フモノヲ釋放トハ云ヘヌカ
(栗塚報吿委員)
釋放トハ云ヘヌ、有償名義ノ釋放スルトキハ斯樣ナモノゾヨト云フノデス
(松岡委員)
ソレダカラ理窟許リデス
(今村報吿委員)
義務ノ釋放ト云フ文字ガ惡イト云ヘバ義務ヲ移付スルト同ジデ、有償名義無償名義ハ移付ト見レバ宜シイ、一向オカシイコトハナイ當リ前ノコトデアリマス
(南部委員)
無償名義ノ所ハ釋放トナツテ居ル、併シナガラ無償名義ノ釋放ハ遣テ仕舞ト云フノデ、前ノ義務ヲ許シテ後ノ義務ト換ヘルト少シモ區別ハナイト謂テ居リマス、細カニ論ズルトドウシテモ左樣ナリマス
(今村報吿委員)
理窟上少シモオカシコトハアリマセヌ
(淸岡委員)
理窟ハオカシイナイガ、斯樣ナコトヲ云テ民法ニ揭ゲナケレバナランカ
(栗塚報吿委員)
民法ヲ書キマシタ以上ハ仕方ガナイ、契約篇抔ハ理窟詰メノモノデスカラ言ヒ過テ却テ恐レアル論ガアリマシヨウケレドモ、有ルト有ラユル學者ノ論ジタモノヲ書キ擧ゲテ題ニ書イタカラ、單純ノ原則ヲ並ベテ、其一原則カラシテ十個條二十個條ノ理窟ヲ引出ス書方デナク、結局原則ハ見ヘナクナツテソレカラ出タ結果デス
(淸岡委員)
ソレデハ民法ト云フモノデハナイ
(栗塚報吿委員)
法トシテ完全ナルモノデ之ガアレバ註釋モ入ラヌシ、法律學研究モ餘程樂デシヨウト思ヒマス
(村田委員)
一條カラ云フノダカラ今云テモ仕樣ガナイ
(南部委員)
此所許リデハアリマセン
(今村報吿委員)
最モ其感觸ノ起ルノハ前置條例デアリマス
(栗塚報吿委員)
物ニ有體アリ無體ナルモノアリト云フカラ始マツタノデアリマスカラ法律學ノ說キ明シ樣ノモノハ僅カ五百條カ千條ニシテ千五百條計リハ其理窟カラ出シテ、釋放ハ代物辨濟抔ノ次第ハ云ハヌデモ宜シイノデスガ充分說キ明シタイカラデス併シ爲メニ云ヒ過シタ嫌ヒモアリマシヨウガ、先ヅ今日ノ所デ私等ガ師弟ノ間柄デハ是程能ク書イタモノハ恐クハナイト思ヒマス日本法律トシテハ最初申シタ通リ財產ハ權利ナク物ニ有無體アリト云フカラ說キ明シタノデアリマス
(今村報吿委員)
私ハ師弟ノ間柄デハナイガ、簡單ニ書イテ、種々ナ場合ヲ入レテ紛雜ナ法律ニ遡テ裁判スルヨリモ實際ハ餘程便利デアリマス
(栗塚報吿委員)
實際裁判官ニ取テ報吿委員ニデモ駄目押シテ有リ難イト云テ居リマス、佛蘭西法抔ハ餘程長イモノト云フガ此カラ見ルト短イモノデス
(鶴田委員)
ドウモ仕方ガナイ我々ニハ之ヲ書キ直スコトハ出來マセン
(尾崎委員)
先ヅ分タ以上ハ宜シイ
(委員長)
ソンナコトヲ云テモ死ンダ子ノ齡ヲ數フル樣ナモノデアルカラヤルコトニシタ方ガ宜シイ
(鶴田委員)
合意上ノ釋放ハ義務ノ釋放シタラ宜サソウナモノデス
(今村報吿委員)
佛蘭西法ト比較シテ甚ダシキ違イハ御座イマセヌ、人事編ハマダ出來マセヌカラ分リマセヌガ、二千五百條位ニナリマス
(委員長)
宜シケレバ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ第二項ノ「解除ヲ成シ」トアルヲ「解除ヲ成ス又次ノ場合」云々ト修正シ第三項「寛暇」ハ「協諧」ト翻譯ニテ直リ其他ハ原案ニ決ス
第五百二十七條朗讀ス
第五百二十七條 債務ノ釋放ハ明示又ハ默示ナルコトヲ得然レトモ疑アルトキハ釋放ハ推定セラレス但法律ヲ以テ特ニ定メタル場合ハ此限ニ在ラス
(松岡委員)
鶴田サンノ仰シヤツタ合意上ト云フハ如何ナリマスカ
(鶴田委員)
私ハ默示ナレバ自然ト釋放ニナツテ仕舞フト思ヒマス
(松岡委員)
元ト合意ニナツタモノヲ釋放スルノデスカ
(栗塚報吿委員)
釋放ヲ合意デスルノデス
(委員長)
表題ノ合意上ノ釋放ト云フノヲ鶴田サンノ考ヘデハ債務ノ釋放トシテハ如何ゾト云フノカ
(栗塚報吿委員)
殊更ニ「ボアソナード」方佛蘭西ニハ債務ノ釋放トアルヲ改メタノデアリマス、元ト合意上ノ釋放ノミヲ云フコトデアルカラト云フノデアリマス
(鶴田委員)
ケレドモ默ツテ打捨テ置クハ釋放ニナルノデシヨウ
(栗塚報吿委員)
ナリマセンソレハ入ラヌト云フノハ前ノ辨濟更改合意上釋放ト混同免責時效ト此レ丈ケノコトデアリマス、默ツテ催促セズニ居テ、三十年トカ十年經テ、釋放サレタノハ合意上ノ釋放デハアリマセヌ
(鶴田委員)
默示モ合意デスカ
(栗塚報吿委員)
默示モ矢張リ合意デアリマス
(今村報吿委員)
合意上釋放トスルコトハナイ其邊ハ我ハ佛蘭西ノ法律ト表題デ反對スルゾト云フノデス
(委員長)
之ハ全編ヲ通シテ見テ之レデ
本條ハ宜ケレバ先ヘヤリマシヨウ本條ハ原案ニ決ス
第五百二十八條朗讀ス
第五百二十八條 主タル債務者ニ爲シタル債務ノ釋放ハ保證人ニ義務ヲ免レシム〔第千二百八十七條第一項〕
連帶債權者ノ一人ニ爲シタル釋放ハ此ノ債務者ニ義務ヲ免レシム但債權者カ他ノ債務者ニ對シ其權利ヲ留保シタル場合ハ此限ニ在ラス此場合ニ於テモ留保ハ釋放ヲ受ケタル者ノ部分ヲ扣除シテノミ其效アリ〔第千二百十五條第千二百八十四條第千二百八十五條〕
不可分債務ノ債務者ノ一人ニ爲シタル釋放ニ付テモ亦同シ然レトモ若シ債務カ其本性ニ因リ不可分ニシテ債權者カ他ノ債務者ニ對シ其權利ヲ留保シタルトキハ債權者ハ訴追セラレタル債務者ニ受刑者ノ部分ヲ計算シテ全部ニ付キ其權利ヲ行フ
(鶴田委員)
一二項ハ宜シイ
(栗塚報吿委員)
第三項ノ債權者他ノ債務者ニ受惠者ノ部分ヲ計算シテ全部ニ付其權利ヲ行ト云フハ隨分駄目押シノ條デアリマス
(淸岡委員)
第二項ノ「扣除シテノミ」トアル「ノミ」ト云フノハ何所カラ云フノデスカ
(南部委員)
其外ハ效ガナイゾヨト云フノデアリマス
(鶴田委員)
三人連帶ナレバ一人丈ケ除キ二人ニ效ガアルト云フノデス
(淸岡委員)
留保シタモノ丈ケ效ガアルト云フノデシヨウ
(栗塚報吿委員)
釋放ヲ受ケタ者丈ケニデス
(松岡委員)
此所ハ只釋放ヲ受ケタ分ハ扣除シナケレバナラント云フノカ
(栗塚報吿委員)
義務ヲ免カレシムト云フノハ、留保シタ場合ハ免カレシメヌゾヨ、併シナガラドレ丈ケノ效力アルカナレバ釋放シタモノ丈ケハ除カナケレバナランゾヨト云フノデアリマス
(松岡委員)
除イテ其跡ハ效ガアルゾヨ云フコトニナリマス
(栗塚報吿委員)
前ノ義務ヲ免カレシメタカラ留保スレバ免カレシメヌ、併シドレ丈ケ貨値ガアルカナレバ、義務ヲ免カレシメタ部分丈ケハ除カナケレバナラント云フノデアリマス
(松岡委員)
ソウデハナイ、除イテノミダカラ
(鶴田委員)
「ノミ」ト云フ二字ヲ刪テ仕舞ヒ「扣除シテ其效アリ」トシタ方ガ宜シイ
(渡委員)
其方ガ宜シイ
(栗塚報吿委員)
留保ノ效力ハ釋放ヲ受ケタ部分ニハナシト云フノデアリマス
(鶴田委員)
ソレダカラ「ノミ」ハ要ラヌデハナイカ
(栗塚報吿委員)
除イタモノノ外丈ケハ效ガナイト云フノデス
(淸岡委員)
我々ハコンナ文章ヲ見タコトガナイカラ分ラヌ
(栗塚報吿委員)
留保ハ釋放ヲ受ケタモノノ部分ヲ扣除スル、卽チ除クノ外效ガアルト云テモ宜シイ
(委員長)
部分ノミヲ除キトシタラ宜シイデシヨウ
(栗塚報吿委員)
釋放ヲ受ケタル部分ノミヲ扣除シテ其效力トヤリマシヨウカ、矢張リ分リマセヌ部分ヲ除クノ外扣除シテデハ如何デス
(淸岡委員)
「ノミ」トアルカラ分カラヌノデス
(栗塚報吿委員)
扣除スルニアラザレバ其效ナシト云フモ同ジデス
(松岡委員)
ソウ云タラ惡イデシヨウ、若シ一緒ニシタラ皆效ガナイカ、左樣デハアリマスマイ
(尾崎委員)
意味ハ分ツテ居リマス
(今村報吿委員)
除キマシタ殘リニノミ效力アリト云フノデアリマス
(鶴田委員)
殘リノミナレバ宜シイガソウハ讀メヌノデス
(栗塚報吿委員)
部分ヲ除キ其效アリトシテハ如何
(尾崎委員)
ソレナレバ宜シ簡單ニシテ分リマス
(委員長)
ソレナレバ扣除シテ其效アリデモ宜シイ
(今村報吿委員)
此文章ハ恰度三段ニナツテ居ル連帶義務者ノ一人ニナシタル釋放ハ義務ヲ免カルルガ本則デ但書デ取除キガ出來テ、又今一ツ但書ガ出來原書ノ意味ハ此場合ニ於テモト云フ字ガアリマス、留保ガ出來ルト雖モ、其釋放ヲ受ケタ部分ヲ除カナケレバ留保ニ效ガナイト云フノデアリマス
(渡委員)
原書ノ通リニシテ宜シイ、矢張リ留保ハ釋放ヲ受ケタ部分ヲ扣除シタノミデナケレバ效ナシトシナケレバナラン、ソレヲ反對ニシテ效アリトシタカラ分ラヌノデス
(栗塚報吿委員)
扣除スルニアラザレバ其效ナシデス
(渡委員)
其方ガ直譯ダカラ宜シイ
(鶴田委員)
其方ガ宜シイ
(今村報吿委員)
一寸注意致シマスガ釋放ヲ受ケタモノノ部分ヲ扣除セザレバ效ナシト云フト初メカラ留保スル時分ニ除イテシナケレバ效ガナイト聞ヘテ困リマス如何ナルコトヲ云テモ留保シヨウトモ效ハ除イタ殘リデナケレバナイト云フノデス
(栗塚報吿委員)
殘リモノノ上ニ付テノミ效アリト云フノデス
(南部委員)
第五百二十一條ニ「ノミ」ト云フ字ヲ使イマシタガアレト同ジデアリマス
(渡委員)
ドウモ少シ嫌ヒガアリマス、矢張リ此效アリト云フ方ガ宜シイ
(鶴田委員)
「ノミ」丈ケヲ刪リマシヨウ
(委員長)
「ノミ」丈ケ刪リマシヨウ
(渡委員)
ソレハ差支ナイ
(栗塚報吿委員)
併シ「ノミ」ヲ刪ルト殘リモノト云フ意味ハ見ヘマセヌ
(鶴田委員)
「ノミ」ト云フ字ハ殘リモノノミトハ讀メマセヌ
(栗塚報吿委員)
扣除シテ而シテ殘ツタモノノミ效アリトス
(鶴田委員)
斯樣ナ所ヘ「ノミ」ト云フ字ヲ使フモノデハアリマセヌ
(淸岡委員)
日本文ニハコンナコトハ書キ樣ハナイ
(栗塚報吿委員)
「ノミ」ハ刪リマシヨウ之ヲ刪ツテモソウ云フ意思トスルハ宜シイ
(鶴田委員)
債務ガ其本性ニ因リ不可分ト云フハ疑ハシイガ本性デナクトモ不可分ノモノガアルカラ斯ウヤツタノデスカ
(南部委員)
不可分ノコトヲ御覽ナサルト分リマス意思ニ因リ本性ニ因ル不可分トアリマス
(鶴田委員)
意思ニ因ル不可分ハ此通リデスカ
(南部委員)
意思ニ因ルハ分ルコトガ出來ル金ガ何ウハ勘定スルコトガ出來マス
(鶴田委員)
不可分デモ意思ニ因ル方ナレバ前ト同樣ニハ往カヌノデスカ
(南部委員)
左樣デス
(委員長)
前ノ有償名義無償名義ノコトヲ云フノカト思ツタラ、ソウデハナイ、受惠者ト始終合意上ノ釋放ヲ受ケタモノノ樣ニナル
(栗塚報吿委員)
合意上モ入リマシヨウガ無償名義ノミト云フニ聞ヘル感觸ガ少シクハアリマス釋放ヲ受ケタト云フモノノ錢ヲ出シテ居ルノデスカラ之ヲ受惠者ト云フト具合ガ惡ウ御座イマス
(淸岡委員)
當リ前ノ民法ハ左樣デスガ此民法ハソウデハアルマイ
(栗塚報吿委員)
否何ゼナレバ釋放サレタモノト云ヘバ無償名義有償名義モ這入ルガ此所デハ受惠者ト云フハ無償名義ノモノノミニ聞ヘマス
(今村報吿委員)
言葉ヲ換ヘル爲メニ原書ヲ換ヘタモノト見ヘマス
(寺島報吿委員)
先キニモ斯樣ナノガアリマス
(栗塚報吿委員)
釋放ヲ受ケタル者ト致シマシヨウ
(委員長)
ソウデシヨウ
(栗塚報吿委員)
ソレニ相違御座イマセヌ
(委員長)
序ガアレバ「ボアソナード」ニ聞クガ宜シイ
(栗塚報吿委員)
註ニモ無償名義トハ居テ居リマセヌ
(今村報吿委員)
無償名義ニバカリ掛ツテハ一向譯ガ分リマセヌ
(淸岡委員)
有償名義ノモノバカリニアルナレバ釋放ト云フ論ハナイ「ボアソナード」ハ矢張リ釋放ト見テ居ルデシヨウ
(松岡委員)
代物ヲ取タ人ナレバ云ヒ樣ハアリマセヌ
(淸岡委員)
代物ダカラ代物丈ケハ受惠者デス
(松岡委員)
ケレドモ承諾ノ上ダカラ必ラズ恩惠デハナイ
(委員長)
前項ニ釋放ヲ受ケタルモノトアルカラアレト同ジニシナケレバ往カヌデシヨウ
(栗塚報吿委員)
アレト同ジデアリマス
(今村報吿委員)
詰リ同ジ語ガ重ナルカラ書キ分ケタノデシヨウ
(栗塚報吿委員)
訴追ヲ受ケタリト云フノハ釋放ヲ受ケタリト分リマス
(鶴田委員)
矢張リセラレタルダカラ、訴追ヲ受ケタル債務デスネ
(松岡委員)
六十六條ニハ訴追セラレタル債務者トヤリマシタ
(栗塚報吿委員)
「釋放ヲ受ケタル者ノ部分ヲ計算シテ全部ニ付其權利ヲ行フ」ト致シマス
(鶴田委員)
ソレデ宜シカロウ
(委員長)
宜ケレバ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ第二項「ノミ」ノ二字ヲ刪リ第三項末文「受惠者」トアルヲ「釋放ヲ受ケタル者」ト修正スルコトニ決ス
第五百二十九條朗讀ス
第五百二十九條 一人ノ保證人ニ爲シタル債務ノ釋放ハ主タル債務者及ヒ他ノ保證人ニ義務ヲ免レシム〔第千二百八十七條第二項及ヒ第三項〕
(修正) 債務ノ下「其モノ」ノ三字ヲ挿入ス
(栗塚報吿委員)
修正ト申ス程デモアリマセヌガ文字ヲ加ヘタノデス「一人ノ保證人ニ爲シタル債務其モノノ釋放ハ」トシマシタ此保證人ノ義務ト保證人ニ爲シタル債務ノ釋放ト云フト保證人ノ債務ト人ガ見ルガソレデハ往カヌノデス私ガ借主デ御座イマス松岡サント今村サンガ、保證人デ寺島君モ保證人ヲシタトキ保證人ノ一人ノ今村サンニ債務ハ免カレシムルゾヨト云フト今村君ノ債務ト見ルダロウガ、ソウデハナイ今村君ニ栗塚ノ債務ハ御前ガ保證シテ居ルケレドモ保證ノコトヲ許シテヤルカラト云タコトデアリマス債務ト云フノハ本人ノ債務ト云フノデアリマスカラ債務其モノトシタラ分ルデシヨウ
(淸岡委員)
本人ニ對シテ主タル債務ノ釋放トシタラ宜シイデシヨウ
(南部委員)
債務ハ二ツナイノダカラ主タルハイラヌ
(淸岡委員)
ケレドモ保證人ハ從タル債務者デシヨウ
(南部委員)
債務ハ二ツノモノデハアリマセヌ保證人ノ負フタ債務モ主タル人ノ負フタ債務ノ一ツデアリマス
(松岡委員)
ソウ云フコトヲ並ベテ云ハヌデモ一人ノ保證人ニ爲シタル保證人釋放ノ反對ダカラ並ベテ云タラ債務其モノト云フコトハナイデシヨウ
(尾崎委員)
此儘デ宜シイデシヨウ
(松岡委員)
「其モノ」抔トハ入レタクナイデス
(栗塚報吿委員)
註ニモ「其モノ」トアリマス保證人ヲ釋放シタノデハナイ債務自カラト譯シテアリマス
(尾崎委員)
保證人ニ許シタ時分ニハ他ノ保證ニアロウトモ本人ニアロウトモ皆ナ免カルルト云フ丈ケデス
(今村報吿委員)
左樣デス
(鶴田委員)
之ハ債務ヲ免ズルノ條デス
(栗塚報吿委員)
一條ヲ二ツニ分ケタノデス、五百二十八條ノ一項ト二項三項ヲ云タノデ此處ヲ揭ゲタノデス
(鶴田委員)
三十二條ト付イテ居ルト却テ宜シイガ彼所ト離シタカラ分ラヌノデス
(栗塚報吿委員)
格別修正說ハ維持致シマセヌ
(淸岡委員)
佛蘭西ノ第二十八條二項ヲ引イテモ言葉ノ立テ方ガ違ウ保證人ニ付與シタラ合意上ノ釋放卽チ主タル債務者ヲ釋免スルト云テアリマス
(栗塚報吿委員)
次ノ項モ保證人ニ釋放シタカラトテモ到底主タル債務者ハ免カレシメヌゾヨ又保證人一人分釋放シタトテモ他ノ保證人ハ免カレシメヌゾヨト云フソコデ保證人ニ釋放スルト云フケレドモ若シ釋放ガ債務其モノニ掛ツタトキハ免カレシメルゾヨト云フノデソコデ保證人ニ爲シタル釋放ト云フノハ只御覽ナサルト往カヌ釋放ハ債務自ラデアルゾヨト云フノデス
(淸岡委員)
保證人ニ爲シタルハ主タル債務者ニ關係シメイト云フ條デ、主タル債務ヲ釋放シタルトキハ保證人ニハ免除スルガ主タル債務者ハ免除シナイト云フノデシヨウ
(栗塚報吿委員)
佛蘭西デ云フノハ一人ノ保證人ニ爲シタル釋放ト許リ云テ居ル釋放シヨウトテ他ノ保證人ニハ義務ハ免カレヌゾヨ又保證人一人釋放シテモ債務者ハ免カレヌゾヨト云テアリマス併シ「ボアソナード」ノ云フノハ一人ノ保證人ニ爲シタ債務ノ釋放ナレバ矢張リ債務者モ消ヘルゾヨト云フコトヲ云ヒ出シタノデ債務ト云テモ保證人ノ債務ノ消ヘタノデハナイノデス、ソレ故「其モノ」トシマシタガ敢テ修正ハ維持致シマセヌ
(渡委員)
佛ノ第千二百八十七條二項三項ヲ引イテアリマスガ之ハ第五百三十三條ヘ引ケバ宜シイノデス
(松岡委員)
代物辨濟更改デ義務ヲ蒙ラヌモノハ辨濟シタモノニナツテ居ル釋放ト云ヘバ誰ヘシテモ一人ニスレバ向フノ人ハ二度取レル筈ハナイ
(栗塚報吿委員)
恰度更改ハ矢張リ義務アリト云フ所ガ消滅スルノダカラ釋放ハ義務ノ消滅ト見レバ宜シイ
(松岡委員)
無論ノ話デス
(栗塚報吿委員)
一人ノ保證人ニ爲シタル釋放ハト讀ンデハナラヌ此所ハ債務ノ釋放者ト修正シテ讀ムノデス
(委員長)
先ヘヤリマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第五百三十條朗讀ス
第五百三十條 債務ノ釋放ヲ受ケタル共同債務者及ヒ保證人ハ債權者ヨリ共通ノ免除ヲ得ル爲メ實際供給シタル價額ニ付テノミ他ノ共同債務者又ハ共同保證人ニ對シ求償權ヲ有ス
(松岡委員)
事務管理ノ所デシヨウ
(南部委員)
ソウデシヨウ、併シ更改ト釋放ナレバ同ジデス
(淸岡委員)
釋放ヲ受ケタルト云フノハ一切拂ツテ人ニ損ヲサセルハ不公平ダカラデシヨウ
(南部委員)
釋放ヲ受クル原因ガ物ヲヤツテ釋放ヲ得ト云フノデス
(鶴田委員)
釋放ヲ得ルニ付ケテ金ヲ出シタト云フノデシヨウ
(南部委員)
釋放ヲ得ル爲メ金ヲ拂タノデ代物辨濟ノ時分ト同ジデス
(栗塚報吿委員)
松岡サンノ保證人ニナツテ金ヲ借リ私ノ分ハ何カヤレバ南部サンノ爲メニ求償權ガアルゾヨト云フノデス
(鶴田委員)
代物辨濟シタ其場合デスカ
(南部委員)
其場合ニ求償權ヲ有ス其外ノ場合ハ求償權ヲ有サヌノデス
(松岡委員)
自分ノ出シタモノヨリ餘分ノモノハ取レヌ理窟デシヨウ
(南部委員)
左樣デス
(委員長)
宜シケレバ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第五百三十一條朗讀ス
第五百三十一條 債務者ノ一人ニ爲シタル連帶又ハ合意上ノ不可分ノ單純ナル釋放ハ他ノ債務者ノ部分ニ付キ一人ノ債務者ヲ免シ又ハ其一人ノ部分ニ付キ他ノ債務者ヲ免ス〔第千二百十條〕
若シ天然上ノ不可分ノ釋放カ債務者ノ一人ニ爲サレタルトキハ債權者ハ他ノ債務者ノ各自ニ對シ全部ヲ請求スルノ權利ヲ留保ス然レトモ受惠者ノ部分ハ其各自ニ對シ價額ヲ以テ之ヲ計算スルコトヲ要ス
(修正) 第一項「連帶」ノ下「ノミ」ノ二字ヲ加ヘ「不可分ノ」ノ下「ノミ」ノ二字ヲ加ヘ「單純ナル」ノ四字ヲ刪ル同條第二項「天然上ノ」ヲ「本性ニ因レル」ト改ム
(栗塚報吿委員)
「受惠者」トアルハ「釋放ヲ受ケタル者」ト直シマス
(松岡委員)
此修正ハ明修正デス
(鶴田委員)
此條ハ第五百二十八條二三ノ所ト牴觸シテハ居リマセンカ
(栗塚報吿委員)
彼レガ不可分ノミト連帶ノミノ釋放デ御座イマス債務ハ免カシメヌノデス
(南部委員)
連帶ヲ止メテ連合ニシテ不可分ヲ止メテ連帶ニスルカ
(淸岡委員)
二項ノ「本性ニ因レル不可分ノミノ釋放」トシテハ如何
(松岡委員)
益明瞭デス
(栗塚報吿委員)
ソウ致シマシヨウ
(鶴田委員)
跡ノ連帶者ハ連帶ノ殘テ居ルノデスカ
(栗塚報吿委員)
左樣デス假令バ四人ノ連帶義務ヲ負フテ居テ内一人釋放シテ下スツテ連帶ニ及バヌ云フト本性ニ因レル不可分ノミノ釋放ヲ受ケタモノガ一人アルト云フノデス
(淸岡委員)
不可分丈ケヲ免ジテ價額ヲ計算スルト云フハ何所デスカ
(南部委員)
不可分ヲ止メタカラ可分ニナツタノデス
(淸岡委員)
全體價格ノ釋放ヲ受ケタノデハナイ
(栗塚報吿委員)
馬一頭ヲ三人デ分ケナケレバナラン義務者ガアツテ内一人不可分ニ及バヌト云ハレタカラデスカ之ヲ分ケルコトハ出來マセヌカラ見積ツテ價格デ算盤ヲ立テルト云フノデス
(松岡委員)
百圓ノ馬デ三人不可分ノトキ一人ヲ免ジタノデ二人カラ取タ時分ニ免ジテヤルト云フト、止ヲ得ズ三十三圓三十三錢三厘ハ是非出サナケレバナラン理窟デシヨウ
(委員長)
此所ハ何故「コンセルベー」ト云フ字ヲ留保ト譯シマシタカ
(栗塚報吿委員)
成程此所ハ變デス「全都權利ヲ保存ス」デ御座イマス之ハ翻譯局ヘ問フテ直シマシヨウ
(南部委員)
之ハ成程「保存」デシヨウ
(栗塚報吿委員)
「保存」ト假リニ直シヲ願ヒマス
(委員長)
ソウシテ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ第二項「留保」トアルヲ保存トシ「受惠者」トアルハ「釋放ヲ受ケタル者」トシ他ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第五百三十二條朗讀ス
第五百三十二條 債權者ハ左ノ場合ニ於テハ債務者ノ一人ニ連帶又ハ合意上ノ不可分ヲ釋放セント欲シタリト推定セラル
第一 若シ債權者カ自己ノ擔保ノ權利ヲ留保セスシテ債務者ノ一人ヨリ其者ノ債務ニ於ケル部分ナリト述ヘタル金額又ハ有價物ヲ受取リタルトキ〔第千二百十一條第一項及ヒ第二項〕
第二 若シ債權者カ自己ノ擔保ヲ留保セスシテ債務者ノ一人ニ對シ〔其者ノ部分ナリト〕稱シテ裁判上ノ請求ヲ爲シタルニ其一人請求ニ承服シ又ハ辨濟スヘキノ言渡ヲ受ケタルトキ〔第千二百十一條第三項〕
第三 若シ債權者カ異議ヲ留保セスシテ債務者ノ一人ヨリ引續キ十年間債務ノ利息又ハ利子ニ於ケル其者ノ部分ノ辨濟ヲ受ケタルトキ〔第千二百十二條〕
(栗塚報吿委員)
本條ハ第二ノ所ニ括觚ガアリマスガ之ハ除ク方ガ宜シウ御座イマス
(松岡委員)
「利息」トアルハ「利子」ト云フカ未ダ一定シマセンカ
(栗塚報吿委員)
「利息」「利子」ハ孰レ一定シナケレバナラント翻譯局デモ申テ居リマス
(淸岡委員)
「欲シタリト推定セラル」ト云フハ如何ナル場合デスルカ
(栗塚報吿委員)
釋放シヨウト思フタノダト推定スルト云フノデス
(淸岡委員)
釋放シタモノト定メテ仕舞フ場合デスカ
(栗塚報吿委員)
左樣デス
(松岡委員)
第三ノ利息、利子ハ孰レ三島君ノ所デ文法ヲ直スデシヨウ
(栗塚報吿委員)
利息ト云フノハ當リ前ノ利息、利子ト云フノハ年金權ノ利子デアリマス、之ハ一方ノ利子ト云フハ穩カナラヌカラ何トカ翻譯デ直シマシヨウ佛蘭西デハ利子卽チ利息、利息卽チ利子トアリマス
(淸岡委員)
拂ヒ期限ノ至ラザルモノト云フハ如何
(栗塚報吿委員)
未ダ滿期デナイモノデアリマス
(淸岡委員)
其分割シタルト云フノハ下ノ項ヲ云フノデスカ、上ノ方ニハ拂ヒ期限ニ至リシ年金額又ハ利息ノミニ付テ失フト云フハ一週年間デスカ
(栗塚報吿委員)
失フト但デ別ニシテ一週年間引續キマシタラ失ハザルノデス
(松岡委員)
ソレダカラ跡ニ殘タ本人ハ失ハヌ、但辨濟ハ一週年引續キマシタラ格別總テノ連帶ヲ失フト云フ理窟デス所デ年金入額又ハ利息ト云フノハ年金ニ付キ何ゾ利息ト云フノガ付クノデハナイデシヨウ
(栗塚報吿委員)
年金ト云フ利子デス
(松岡委員)
ドウモ普通ノ利息デハオカシイ
(栗塚報吿委員)
併シ言葉ノ立方ガ佛蘭西ノハ年金ノ方ヲ先キニ言葉ヲ立テテアリマス
(尾崎委員)
十年ハ長イト思ヒマス
(鶴田委員)
五年位ガ宜シイデシヨウ第一ノ場合抔ハ一遍拂テ仕舞タノデシヨウ
(委員長)
拂蘭西ハ何年デスカ
(栗塚報吿委員)
十年デス、只債權者ガ連帶ヲ釋放シヨウト明カニ言テ居ラヌニヤラセルノダカラ不容易ニシテ置ク丈ケノコトデハナイカト思ヒマス
(松岡委員)
併シナガラ其者ノ部分ト云フノデ只ノ推測デハナイ餘程強イモノデ私ノ部分ト云ヒ宜シイト云テ受取ルカラニハ壓シ付テモ怪我ハナイデシヨウ私ハ年金ノ方バカリトスルト尙ホ宜シイト思フ
(淸岡委員)
年金抔ハ普通ハ十年借リテ利ノミ拂テ居ルモノハ日本ニ限ラズ何所ニモアリマスマイ
(尾崎委員)
滅多ニハナイコトデ先ヅ宜シカロウ
(委員長)
先キニヤリマシヨウ
本條ハ第三ノ「利息」「利子」ハ翻譯局ニテ調ベルコトトシ其他ハ原案ニ決ス
第五百三十三條朗讀ス
第五百三十三條 一人ノ保證人ニ爲シタル保證ノミノ釋放ハ主タル債務者ニ義務ヲ免レシメス且保證ノ釋放ヲ受ケタル一人ノ部分ニ對スルニアラサレハ他ノ保證人ニ義務ヲ免レシメス但保證人カ其間ニ連帶ナル場合ハ此限ニ在ラス此場合ニ於テ若シ債權者カ第五百二十八條第二項ニ記載シタル如ク他ノ保證人ニ對シ自己ノ權利ヲ留保セサルトキハ總テノ保證人ハ義務ヲ免カル〔第千二百八十七條第二項及ヒ第三項〕
(鶴田委員)
之ヲ一番先キヘ出スト云フト宜シイデス
(栗塚報吿委員)
義務ノ釋放ヲ先ヘ言ヒタイカラデシヨウ
(鶴田委員)
日本ニハ是迄斯樣ナモノハアリマセヌガ斯ウ云フ法律ガ出マスルト是非連帶トシナケレバナラン
(栗塚報吿委員)
連帶ト推定セラレズデアリマス
(淸岡委員)
中程ニアリマス但保證人ハ連帶ナル場合ハ此限リニ在ラスデスネ、之ハ義務ヲ免カレヌト云フコトデスカ
(栗塚報吿委員)
保證ノ釋放ヲ受ケタ一人ノ本人ニ對スルニ在ラザレバ免カレルト云フガ其反對デ免カレヌト云フノデス此場合ニ總テ保證人ハ義務ヲ免カレテアリマス連帶ノ場合ニハ一人ヲ免カレシムルカラデス
(淸岡委員)
所ガ此場合ニ於テハ如何デスカ
(栗塚報吿委員)
又但書デス
(淸岡委員)
此場合ニテ保證人ハ留保シナケレバ義務ヲ免カレテアリマスカラ上モ下モ免カレデシヨウ
(栗塚報吿委員)
此條デハ保證人ガ釋放ヲ受ケテ一人ノ本人ニアラザレバ他ノ保證人ニハ免カレシメズト云タガ、連帶ノトキ他ノモノニ免カレシメヌゾヨト云フノデ但ガ又付クノデ第五百二十八條ノ文章ト同ジデアリマス
(鶴田委員)
所ガ彼所ハ場合ニハ免カレシムルノデス
(尾崎委員)
留保サヘシテ置イタラ跡ノ保證人ニ係レルガ留保シテ置イタラ免カルルダネ
(鶴田委員)
此限ニ在ラズト云タラ自己ノ權利ヲ留保シタルトキハト書カヌト、此限ニ在ラズガ照應シナイ
(栗塚報吿委員)
斯ウ云フコトデス但保證人ガ其間ニ連帶ナル場合ニ於テハ若シ債權者第五百何條ニ定メタ是々ノトキ、義務ヲ免カレテ宜シイノデス
(尾崎委員)
意味ハ宜シイガ書樣ガ惡イノデス
(栗塚報吿委員)
免カレシメルト云フノハ此限ニ在ラズデス
(淸岡委員)
連帶デモ留保シテナケレバ免カレヌカ
(栗塚報吿委員)
左樣デス
(委員長)
栗塚ノ說ハ一所ニスベキモノデハアリマスマイ後ノ分ヲ說キ明ス爲メニハ宜シイ、我輩ノ考ヘデハ保證人連帶デ一人ノ人ニハ免カレシメヌ連帶デ五人保證スル場合ガアルハ別ト云テソレカラ二十八條ノ場合留保シタラ別ト云フノデハナイカ
(栗塚報吿委員)
此限ニ在ラズト云タハ如何ナルコトカナレバ斯ウ云フコトゾヨト云フノデス
(委員長)
ソンナレバ此限ニ在ラズハ刪テ仕舞フガ宜シイ
(栗塚報吿委員)
併シ貴君方ハ此儘ニシテ御分リニナレバ結構デス
(鶴田委員)
留保シタルトキハ總テ義務ヲ免カレシメズト書イテソレカラ此限ニ在ラズトシテ然ルニ第五百二十八條ニ依テ自己ノ權利ヲ保留シタルトキ他ノ保證人ノ義務ヲ免カレシメズトシテ宜シイ
(栗塚報吿委員)
別項ニシテ讀ムト宜シイ此場合カラ下ヲ說キ明シタラ宜サソウナモノデス
(鶴田委員)
分ルコトハ分リマス
(渡委員)
但保證人ハ其間連帶ナル場合ハ除キ若シ債權者ガ五百何條云々義務ヲ免カレトシテハ如何デス
(栗塚報吿委員)
除キデハナイノデス
(松岡委員)
義務ヲ免カレハ免カレシメズノ上ノ反對デス
(栗塚報吿委員)
保證人ハ其間ニ連帶ナル場合ニ於テ此限ニ在ラズシテ若シ債權者トシテハ如何
(委員長)
ソウスレバ宜シイ
(松岡委員)
アラズシテハオカシイ連帶ノ場合ニ於テ免カレデス仕舞ヒニ義務ヲ免カレト云フノデス
(栗塚報吿委員)
意味ハソウアリマス
(委員長)
先ヘヤリマシヨウ
本條ハ「他保證人カ其間ニ連帶ナル場合ニ於テ若シ」云々トシ「ハ此限ニ在ラス此場合」ノ十字ヲ刪リ他ハ原案ニ決ス
第五百三十四條朗讀ス
第五百三十四條 債權者ノ動產質又ハ抵當ノ抛棄ハ債權其モノヲ減セス然レトモ若シ保證人カ自ラ義務ヲ約スルニ當リ此擔保ニ付キ代位ヲ期シタルコトヲ證明スルトキハ保證人ハ其抛棄ニ基キ債權者ニ對シ其義務免除ヲ請求スルコトヲ得〔第千二百八十六條第二百三十七條〕
(修正) 「擔保」ノ上「物上」ノ二字ヲ加フ
(栗塚報吿委員)
此所ノ修正ハ債權其モノヲ減セズ併シ保證人自カラ其義務ヲ約シ其擔保ト云フハ保證人ノ擔保トナル恐レガアリマスカラ此物上擔保ニ付代位ヲ期シタルヲ證明スルトキハトシテ「物上」ノ二字ヲ加ヘマシタガ此條ハ第五百五條ニ關係モアリマスカラ彼所ヲ議ストキ此所モ議スル樣ニシテソレ迄ハ未定ニ願ヒマス
(松岡委員)
私抔ハ證明ト云フ字ハ不同意デス
(委員長)
ソレデハ此條ハ未定ニシテ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ第五百五條ト關係スルヲ以テ同條ニ至リテ議スルコトトシテ未定
第五百三十五條朗讀ス
第五百三十五條 一人ノ共同債務者又ハ一人ノ保證人カ連帶不可分又ハ保證ノ單純ナル釋放ヲ得ル爲メ債權者ニ與ヘタルモノハ債務ヲ減セス且他ノ共同義務者ニ對スル何等ノ求償ノ目的トモ爲ルコトヲ得〔第千二百八十八條〕
(修正) 「連帶」「不可分」ノ下各「ノミ」ノ二字ヲ加ヘ「保證ノ」ノ下「ノミ」ヲ加ヘ「單純ナル」ノ四字ヲ刪ル
(栗塚報吿委員)
本條ノ修正ハ「保證人ハ連帶ノミ又ハ不可分ノミ」トシテ前ト同ジ樣ニ改メマシタ恰度先刻カラ申シタ裏ヲ申シタノデアリマス
(尾崎委員)
「單純ナル」ハ刪リマスカ
(栗塚報吿委員)
左樣デス
(南部委員)
「連帶ノミ不可分ノミ保證人ノミ」デアリマス
(委員長)
保證人抔ハ世話ヲ燒イタラ償ヒ位呉レソウナモノデス
(淸岡委員)
併シ別段ニ與ヘルノデスカ
(南部委員)
債務ノ幾分カヲ與ヘルノデシヨウ
(鶴田委員)
債務者ガ債權者ヘ返ヘシタコトヲ與ヘルト云フカ
(栗塚報吿委員)
進物デシヨウ
(鶴田委員)
モノナレバ物トシテハ如何
(栗塚報吿委員)
ドウモ物トモ言ハシタノデス
(南部委員)
物デモ事デモ宜シイノデス
(栗塚報吿委員)
與ヘタル物トナス、ナスコトヲ爲スデス
(村田委員)
佛蘭西デハ與ヘタ物丈ケハ差引クノデス
(渡委員)
原書ニハ與ヘタルモノトアリマス、爲スコトニシヨウ
(南部委員)
保證ノミデス
(村田委員)
保證バカリ拔イテ呉レト云フノデス
(淸岡委員)
佛蘭西ノデハ反對ニナツテ居リマス
(栗塚報吿委員)
左樣デス
(淸岡委員)
之ハ成程内所デ袖ノ下デモヤツテ義務ヲ免カルルコトヲシタラ、迚モソンナ話モアリマスマイカラ何レ私ヘ是丈ケ辨償スルカラ連帶保證ヲ除イテ貰イ度イト云フトキ債權者ハソレ丈ケノ保證ヲ免除スルニ違イハナイ
(尾崎委員)
「ボアソナード」ハ佛蘭西ノ法ハ甚ダシキモノナリト云テ居リマス
(村田委員)
併シ取タ代リニ危イモノガアリマス
(尾崎委員)
取ラヌ樣ニスルガ宜シイ
(鶴田委員)
五百三十條ニハ物ヲ供給シテ釋放ヲ受ケタ場合他ノ保證人ニ要求權ヲ與ヘ普通ニソウ云フ場合ヲ籠メテ見テ居ルカラ詰リ求償ノ目的デ共通ノ免除ヲ得ル爲メ實際供給シタト釋放ヲ得ル爲メト同ジデシヨウ
(南部委員)
補充ニ取タ物トアリマス
(鶴田委員)
之ハ釋放ヲ得ル爲メ債權者ニデス
(委員長)
私ニハ物ト云フハ分ラヌ
(淸岡委員)
此所ハコトトシテハ宜シイ
(渡委員)
單ニ人ニ贈リ物ヲシタトキ所謂付與シタルヲ以テ差引コトハ出來マセヌコトハ分テ居ル、言フ迄ハアリマセヌ
(栗塚報吿委員)
詰リ二口ノ理窟デシヨウ「ボアソナード」ハ權利者ガ之ヲ許ス釋放ヲ與ヘルト大損ヲスルカモ知レヌ今迄千圓貸シタモノヲ或ル事柄ヲシタ爲メニソレ丈ケヲ差引ト千圓ノ内百圓ヲ受ケタ爲メ跡ノ九百圓丈ケハ保證人ニ對シテ取レヌト云フコトガ生ズルト之ヲ取タ爲メニ後ニ至テ甚ダ混雜ナ場合ガアル、又ソウデナクシテ之ヲ跡デ以テ係ロウト思フト彌縫ンテ此モノ丈ケハ保證ヲ釋放デナク免カレサセテ仕舞フコトガアルカモ知レヌ此所デハ保證ノミノ釋放デ、然ルヲ一體ノ義務マデヤル樣ナコトガアロウト云フノデス
(南部委員)
若シ金ヲ受取タトナレバ保證人ハ本人ニ對シテ求償權ヲ有スル樣ニナル左樣ナツテハ迷惑デ斯樣ナ理窟ハナイト頻リニ云テ居リマス
(栗塚報吿委員)
保證人ト債權者ト馴レ合ウト債務者ガ甚ダ迷惑スル之ニ依テ保證ヲ免カレ樣トシテ債權者ニ物ヲヤルト迷惑スルカラデス
(淸岡委員)
矢張リ五百三十條ノ例デス
(鶴田委員)
五百三十五條ト此條ハ似タ樣ナモノデスガ之ハ何ヲ與ヘタノダカ曖昧トシテ居ル
(尾崎委員)
之ハ何物ヲ與フルカ分ラヌ
(淸岡委員)
求償權ヲ固トヨリヤルニハ及バヌカラ債務ノ減ゼヌト云フコトハナイ
(南部委員)
債務ヲ減ジ求償權ガナイトハ云ハレマセン
(松岡委員)
債務ノミ入レ求償權ヲ持タシタラ如何ナル害ガアルカ債務者カラ云フト同ジデシヨウ
(南部委員)
ケレドモ其金ハ元トヘ入ラヌノデスカラ保證丈ケヲ免レテ貰フソウスルト卽チ動產質ヲ減ジタト同ジ權衡ニナル對人權ノ抵保デ之ヲ除イタト同ジデス
(尾崎委員)
馴合ヲ防グノデス
(淸岡委員)
債務ヲ減ジテ求償權ニシテモ其代リ保證人ノ方ハ求償權ヲ與ヘテ見レバ保證人ガドウカナルカラ債務者ガ傷ムコトハアリマセン
(尾崎委員)
保證人ガ無ウナルカラ自分ノ方ヘ全額求メラルルコトニナルデス
(淸岡委員)
保證人ト云フモノハ債主ヲ滿足セシムル爲メニ立タノデ負債主ハ保證人ガ無クナツテモ保證人ハナイ方ガ宜シイノデシヨウ
(南部委員)
保證人ハ眞ニ免カルルト云フナレバ格別鳥渡禮ヲシテ脫イデ仕舞フダカラ、ソレハ往カヌト云フノデス
(淸岡委員)
拔イテモ宜シイデシヨウ
(委員長)
債權者ト保證人ト馴レ合テ脫ケ樣トスル場合ヲ防グノデスカ
(栗塚報吿委員)
左樣デス拂蘭西ニハ保證人ノミ釋放デ物ヲ取タト云フ債權者ハ一人モナイト云フ只單純ニ保證人ヲ釋放シテ物ヲ取タラ取リ放シニシテ仕舞フコトハ佛蘭西ニハ幾ラモアルト云フ債權者ニ賂賄ヲ使ツテ義務ヲ免カレ樣トスルコトハ幾ラモアリマス
(松岡委員)
併シ債務者ニ害ハナイ只廢シテモ本人ニ害ガアルトハ云ヘヌデシヨウ
(栗塚報吿委員)
ソレ丈ケハ一向咎メハナイ出シタ丈ケ求償權ヲ與ヘルハ穩カナラヌ何ゼナレバ馴合デ保證人ハ一文モ出サナカツタカモ知レヌ
(松岡委員)
出サナクテモ私ハ害ハナイト元ト私ノ千圓ノ債務ヲ二重ニ拂フコトハナイ千圓ハ誰カラ拂テモ私ニ皆係ツテ來ルダカラ
(栗塚報吿委員)
保證人ガ千圓ノ借錢ノ内百圓拂フ義務ヲ免カレ樣ト思テ債權者ガ取ツタナレバ跡ノ負債主ニ向テ百圓取ルコトモ出來ル
(松岡委員)
ソレハ減セズニスルカラデス
(栗塚報吿委員)
減ズル譯ハナイ何ゼナレバ保證人ハ詰リ自分ノ擔保ヲ負フタノデス
(淸岡委員)
債務ヲ減ジナケレバナラン
(南部委員)
債務ヲ減ズルノデハナク釋放スル場合ニ金ヲ出シタモノ丈ケハ重モニ債務ノ内ヘ加ヘテ鶴田サンバ淸岡サンニ向テ求償スルコトハ出來マセヌ
(栗塚報吿委員)
債務ノ内幾分カ拂タノハ宜シイガ不可分ヲ免カレ樣ト云フニ出シタモノハ債務ニ影響ヲ及ボサヌト云フノデソコデ連帶ノミ釋放ノ不可分ノミノ釋放トアリマス
(淸岡委員)
一人釋放シタ時分ニ義務ヲ免カレタイトキ金ヲ出スガ負擔スベキ部分ヲ先ヅ拂テナケレバ債權者ハ釋放シテ呉レル氣遣イハナイ其トキ鶴田サンガ淸岡ト連帶シテハ居ラレナイカラト云フ場合ニ五十圓丈ケ拂テ連帶丈ケヲ除クト云フタラ如何デス
(南部委員)
債務ハ辨償シタラ求償權ガアリマスガソウデハナイノデ此所ハ其外ニ錢ヲ出シテ只連帶ニ係テ居ル關係ヲ斷テ貰ヒ度イ其代リニ幾分カ賃ヲ上ゲルト云フ場合デ債務ヲ辨償シタ場合デハアリマセヌ
(淸岡委員)
賃ヲ止メルトハ見ヘマセヌ
(南部委員)
其場合デス
(淸岡委員)
保證ノ釋放ヲ得ル爲メ債權者ニヤルノダカラ義務ヲ免カルル爲メ與フルナレバ何レ債務者ノ債務ヲ何分カ償ハナケレバ出來マセヌ筈デス
(南部委員)
ソウデハナイノデス連帶ノミノ釋放デハナイ貴君ノ說デハ債務ノ釋放ト混淆シテ仕舞フ
(淸岡委員)
連帶ノミノ釋放ニ債務ヲ拂フカモ知レヌ所ガ保證人ハ保證ヲ免カルル爲メニ債務ヲ拂ハナケレバナラン
(南部委員)
債務ヲ拂フ場合ニハ至ラヌノデアリマス
(鶴田委員)
之ハ釋放ヲ得ル爲メト云フト或ル場合ニハ得ズ場合モアリマスカ
(南部委員)
得タ場合ト思ヒマス
(委員長)
之ハ反對ニ思フ全體釋放ハ成立ヌト思フ、得樣トシタガ物ヲ與ヘタリシテヤル場合ハ孰レ成立ヌ場合ニ得樣トシタガ實ハ許サヌト云フ債務ヲ減セヌカラ保證ハ成立テ居ルモノダ
(南部委員)
ソレハ保證ノミノ釋放トアリマスカラ無論出來マス
(鶴田委員)
出來ルガ三十五條ノ場合ハ出來タ場合カ否ヤ
(南部委員)
無論出來タノデス
(委員長)
私ハ出來ナカツタ場合ト思フ
(南部委員)
債權者ガ許シサヘスレバ三十五條デ出來マス
(鶴田委員)
出來ルケレドモ此場合ハ債務ヲ減ゼズトアリマスカラ出來マセヌト云フノデス
(委員長)
遂ニ債務ノ方ガ減ゼヌト保證ノ實ヲ擧ゲナケレバナランデシヨウ、スルト義務者ガ拂ハヌトキハ拂ハナケレバナラン
(南部委員)
二人借リテ居ル甲乙ノ場合ニ甲ハ釋放シテ貰フト云テ金ヲ幾ラカ出シタノデス
(委員長)
ケレドモ債務ノ爲メデハナイ
(南部委員)
債主ガ承知スレバ二人ノ關係ハ別ニナル所ヲ釋放ヲ得ルコトヲ認メタニ債權者ガ許シテモ二人ノ關係ヲ解クコトハ出來マセヌト云フコトハアリマセヌ
(委員長)
ソレハ許スコトハ出來マセヌ債務ヲ減セズトアリマス
(南部委員)
ソレハ矢張リ百圓ハ百圓デト云フノデス
(委員長)
懷ロ錢ヲ持テ來タ者ハ債務ニ關係ヲ持タヌ無益ニヤツタモノト同ジデ矢張リ義務者ガ金ヲ拂ハヌトキハ保證人ガ其レヲ負擔シナケレバナラン
(南部委員)
ソウデハナイ保證人ハ免カルルガ百圓ヲ少クスルコトハ出來マセン
(委員長)
債務者バカリガ酷ヒ目ニ逢テ保證人ハ錢ヲヤツテ逃ゲラルルカ
(南部委員)
左樣デス
(委員長)
ソウ云フ精神デハナイト思ヒマスガ之ハ先ヅ他日ノ考按トシテ先ヘ移リマシヨウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第五百三十六條朗讀ス
第五百三十六條 特定物ヲ引渡シ又返還スヘキ義務ノ釋放ハ債務者ノ利益ニ於テ讓戾又ハ讓渡ヲ惹起セスシテ所有者ノ回狀ノ權利ヲ存立セス
(修正) 「權利ヲ存立セス」ヲ「權利ヲ存立セシム」ト改ム
(栗塚報吿委員)
回狀ハ「回收」ト翻譯デ直リマス
(今村報吿委員)
此條ハ駄目中ノ駄目デアリマス
(栗塚報吿委員)
之ハ斯樣ナコトデス、特定物ヲ引渡シ又ハ返還スベキ義務ヲ釋放シタラ到底其釋放デハ斯ウ云フコトハ起ラヌゾヨ如何ナルコトガ起ルカナレバ特定物引渡シ義務ノ釋放シテモ讓リ戻ハ起ラヌゾヨ、ソレナラ返還スベキ義務ヲ釋放シテモ讓渡シハ起セヌゾヨ所有權ノ回復權利ハ存立スルト云フノデス、貴君ガ私ニ物ヲ賣テハ引渡スノ義務ガアルノデシヨウ其引渡シノ義務ヲ釋放シテ引渡スニ及バヌト言タラ迚モ讓リ戻スト云フコトハ起リハセヌゾヨ矢張リ所有者ノ栗塚ニ回收ノ權利ガアルゾヨト云フノデスガ之ハ駄目中ノ駄目デス
(松岡委員)
特定物ノ引渡義務ノ釋放ハ所有權ニ關セヌト云フノカ
(栗塚報吿委員)
寄托契約デ貴君ノ馬ヲ私ガ預ツタノデスルト私ハ馬ヲ還ヘス義務ガアル所ヲ其義務ヲ貴君ガ釋放シタデ還スニ及バズト言タノデスソレデモ讓リ渡シト云テハナラヌゾヨ取ロウトスレバ取レズ還ス義務丈ケガナクナツタト云フノデス
(南部委員)
實ニ無益ナ話デ此品物ハ引渡スニ及バヌト言タラヤツタト同ジデ實際上區別ハアリマセヌ無用ナ條デアリマス
(栗塚報吿委員)
私ガ村田委員カラ馬ヲ預テ返ス義務ハナイト云フタトキ讓リ渡シガアツタカナレバソレハ起セヌ矢張リ馬ヲ牽ク權利ガアル併シ栗塚カラハ返サナケレバナラン義務ガアルカナレバソレハナイト云フノデ私ハ賣テモ宜サソウニ見ヘルデハアリマセンカ
(尾崎委員)
遂ニ取ラレルハ釋放ノ效ハナイ
(淸岡委員)
此等ナ馬鹿ラシイ法律ハナイ
(松岡委員)
此等ハ法律學ノ哲學デス
(鶴田委員)
斯ウ云フ哲學ハ人ヲ害シマス
(尾崎委員)
貰テ又回收訴權デ取ラルル弊ガ起リマス
(栗塚報吿委員)
報吿委員中ニハ論モアリマシタガ報吿委員ノ資格デ刪ルト云フモ何デスガ、詰リ釋放ト云フノハ義務ノ釋放ゾヨ義務ヲ釋放スルト斯ウ云フ義務マデ釋放ガ出來ルゾヨ斯ノ如キ引渡シノ義務ヲ釋放シテ返還ノ義務ヲ釋放シタラ讓リ戻シ讓リ渡シモアツタロウト思フダロウガ、ソレハナイト云フヲ示スノハ「ボアソナード」ガ意ヲ用ヒタノデ伊太利、佛蘭西ニハナイカラ注意シテ見ロヨ、義務ヲ釋放シテモ所有權ニ傷ハ付カヌゾヨ、人權ノミ釋放シテモ物權ハ存シテ居ルカラト云フ旨意デアリマスカラ之ヲ刪テ何ウカナレバ一向差支ハナイ話デアリマスカラ先ヅ申上ゲテノ上デト云フノデアリマシタ
(尾崎委員)
之デモ害ガナケレバ宜シイガ害ガ生ジソウデアリマス
(南部委員)
代言人抔ハ直グヤリ出スニ相違ナイ
(栗塚報吿委員)
當人モ言テ居ルガ特定物引渡シヲ釋放シタト云フト裁判官ノ解釋ハ三百七十八條ニ云フ如ク效力ノアル樣ニ解釋シナケレバナラント云テ居リマス
(松岡委員)
家ヲ貸シタガ返還スル義務ハ許スト言ヘバ丸デヤツテ仕舞ハナケレバナラン返還スル義務ハ免スト云フト御預リ見タ樣ニナルト云フノデス
(栗塚報吿委員)
單純ナル占有者ト云フノデ私ニ米ヲ十俵賣テ引渡シノ義務丈ケ釋放シテ上ゲ樣ト云フト義務ハナイガ如何ナル位置カナレバ貴君ハ占有者ニ米ヲ持テ居ルノデ讓リ戻シガアツテ破談シタモノデハナイト云フノデス
(尾崎委員)
理窟ハ左樣デシヨウガ實際渡スニ及バヌト言テ見レバ己レノ物ト思フデシヨウ
(村田委員)
併シ斯樣ナコトハアル、馬ハ貴君ニ預ケテ良クシテ呉レルカラ私ヘ返スニハ及バヌ貴君御乘リナサイト言タノデ所ガ貴君ハ飼門料ヲ良クセヌカラ私ハ取リ返スコトガ出來ル
(南部委員)
品物ヲ預ケルトキ返シテ貰ウニハ及バヌト云テ預ケルモノハアリマセヌ
(村田委員)
改良シテ貰ヲウト思フカラ預ケタノデス
(南部委員)
貴君ノハ契約ヲ履行セヌカラ取リ返スト云フソレハ條件付デス
(村田委員)
私ノ腹ノ中丈ケノ條件付デス
(松岡委員)
ソレハ往カヌノデス
(鶴田委員)
日本流デハ所有權ノ移轉シタモノデス
(南部委員)
之ハ理論カラ起タ條デス
(村田委員)
人權ハヤツテモ物權デ、何時迄モ遂テ行クト云フノデス
(栗塚報吿委員)
訴訟ノ種ニナルト思ヒマス
(委員長)
之ハ訴訟ノ種子ニナルト云フ理由ヲ以テ刪除シテ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ刪除ニ決ス
第五百三十七條朗讀ス
第五百三十七條 連帶債權者ノ一人ノ爲シタル債務其者又ハ連帶ノミノ釋放ハ債權ニ於ケル其一人ノ部分ニ付テノミ他ノ債權者ニ對抗セラルヽコトヲ得〔第千二百九十八條第二項〕
若シ義務カ不可分ナルトキハ債權者ノ一人ノ爲シタル釋放ハ他ノ債權者ニ害スルコトヲ得ス他ノ債權者ハ第四百六十六條ニ從ヒ全債權ヲ行フ〔第千二百二十四條第二項〕
(栗塚報吿委員)
本條中「其者」トアルハ「其モノ」ト翻譯デ直リマス
(淸岡委員)
「對抗スルコトヲ得」デスカ
(栗塚報吿委員)
左樣デス釋放ハ他ノ債權者ニ之ヲ對抗スルコトヲ得デアリマス
(鶴田委員)
連帶義務ノ釋放ハ債權者ニ之ヲ對抗スルコトヲ得トシマスカ
(南部委員)
之デハ惡イ
(栗塚報吿委員)
「債權者ニ之ヲ」トヤラント往カヌ之ヲト云フハ釋放デス
(松岡委員)
對抗ヲ向ケ付ケルト云フノデス
(鶴田委員)
「其モノ」ハ無クトモ宜シイデシヨウ
(渡委員)
「其モノ」ハ無クトモ宜シイ
(栗塚報吿委員)
人權物權其モノト云フノガ通過シテ來マシタカラ置コウデハアリマセンカ
(松岡委員)
後ニハ皆ナ除キマシタ
(栗塚報吿委員)
一人ノ部分ハ何ノ部分カナレバ債權ニ付テノ分ト云フノデアリマスカラ
(松岡委員)
一人ニ爲シタル釋放ト云フモノハ其爲シタ人ノ一分丈ケト云フノデシヨウ
(栗塚報吿委員)
其一分ハ何ノ分カナレバ債權ノ一分デアリマス
(鶴田委員)
向ケ付ケル方ノ債務者デスカ
(尾崎委員)
左樣デス
(鶴田委員)
合意ノ不可分、所謂本性ニ因ル不可分ナレバ此通リデスガ此所ノ不可分抔ハ矢張リ前債權ヲ行ハレマイト思ヒマス
(栗塚報吿委員)
御尤モデス此所デ不可分ト云フノハ本性ニ因ル不可分デアリマス
(尾崎委員)
付テノミハ入用デス
(栗塚報吿委員)
一人ノ部分ニ付テニ非ラザレバ他ノ債權者ニ之ヲ對抗スルコトヲ得ズデアリマス
(松岡委員)
非ラザレバ如何ト云フト下ハ得ズト云ハナケレバナラヌカ
(栗塚報吿委員)
左樣デス
(委員長)
宜シケレバ先ヘ移リマシヨウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第五百三十八條朗讀ス
第五百三十八條 債權者カ債務者ノ約務ヲ記載シタル原證書ヲ任意ニテ債務者ニ交付シタルトキハ右ノ證書ニ免責ニ關スル何等ノ附記ヲモ爲サスト雖トモ債權者ハ債務ノ釋放ヲ爲シタリト推定セラル但債權者ノ右ニ異ナリタル意思ヲ有セシコトヲ證スルノ權利ヲ妨ケス〔第千二百八十二條〕
公證人證書又ハ判決書ノ寫卽チ正本ノ任意ノ交付ハ此等ノ書類カ執行ノ書式ヲ具フルトキト雖トモ債務ノ釋放ヲ推定セシムルニ足ラス但裁判所カ事實ノ狀況ニ因リ其釋放ヲ考定スルコトヲ妨ケス〔第千二百八十三條〕
其他債務者右ノ證書ヲ保有スルトキハ反對ノ證アルマテハ債權者ノ方ヨリ任意ノ引渡アリタルコトヲ推定セシム
(修正) 第二項「判決書ノ」ノ下「寫卽チ」ノ三字ヲ刪ル同條第三項「引渡」ヲ「交付」ト改ム
(栗塚報吿委員)
本條ノ修正ハ「判決書ノ寫卽チ」トアル「寫卽チ」ノ三字ヲ刪リ末項債權者ノ方ヨリ任意ノ引渡アリタルトアル「引渡」ヲ「交付」ト改メマシタ
(松岡委員)
其他債務者右ノ證書ト云フハ如何デスカ
(栗塚報吿委員)
債務者ノ約務ヲ記載シタル原證書ヲ任意ニテ貴君ニ貸金ノアツタ證書ヲ任意デ交付アリタルコトヲ推定スデス
(松岡委員)
否エ其他ト云フノデス
(栗塚報吿委員)
其他ハ前二項ノ外デアリマス
(松岡委員)
付與シテ居レバ任意ノ交付ガアツタト推定スルト云フノデ上ノヲ刻ムダノデスカ
(栗塚報吿委員)
左樣デス
(尾崎委員)
之ハ珍デス債權者ノ手ニ證文ガアル負債ノ證書ヲ渡シテナイカラ推定セヌト云フ理モ出マスガ如何シモ變ナモノデス
(南部委員)
併シ鳥渡御考ヘヲ願ヒタイハ實ハ但書ハ書イテ大槪ノ推定スルノデアリマス
(栗塚報吿委員)
註ノ意味カラ云フト裁判所ガ事實ノ狀況デ釋放ヲ許スゾヨト云フノデアリマス
(委員長)
其他反對ノ證ガナイト推測セラルルノデス
(栗塚報吿委員)
只佛蘭西文ト書キ違ヘタ丈ケノコトデアリマス
(松岡委員)
如何デシヨウ矢張リ上ノト同ジニシテハ、訴訟法ト關係シテ執行時分ニハ判決書ノ正本ノ働キヲ定メナケレバナランガソレニシテモ前項ノ但書ノ通リシテ證明スレバ格別一緒三シテ宜クハアリマスマイカ
(栗塚報吿委員)
同ジデ御座イマス善イ惡イハ存ジマセンガ同ジデス佛蘭西文ヲ見ルト千二百八十三條ヲ見ルト「證書ノ正本ヲ前モ後モ括メテ證書ノ正本ヲ任意ニテ引渡タルノ推定セシム若クハ負債ノ釋放ヲ推定セシム但シ反對ノ證ヲ妨ケス」ト云フノデ之ハ其裏ヲ云タデス
(松岡委員)
一項デハ佛蘭西ト同ジテシヨウカ同樣ニシテ宜カリソウナモノデス
(栗塚報吿委員)
末項ガアリマスカラ御心配ハアリマスマイ
(鶴田委員)
先ヅ之デ宜シイデシヨウ
(淸岡委員)
下ノ項ニハ任意ノ交付アリタルト推定セシムトアリ前項ニハ任意ノ交付トアリマスガ之ハ判決書ノ任意ノ交付ト云フモノハ推定セラルルニ足ラズトシテ下ニ債權者ノ方ハ任意ノ交付アリタルト推定セシムト書ク要ハナイ樣デスガ
(松岡委員)
又但書ニ戻テ來ナケレバナラン
(淸岡委員)
上ノ方ノ任意ハ除ク方ガ宜イ
(栗塚報吿委員)
交付ノアツタトキハアツタカラト云テ推定セヌゾヨ交付ノアツタト看做スゾヨデアリマス
(淸岡委員)
任意ノ交付アツタモノト推定セシムルト云テ上ノ推定ハナイカ
(栗塚報吿委員)
末項ハ任意ノ交付ノ又推定デス
(南部委員)
任意ノ交付ノ又推定テアリマシテ推定ガ違ヒマス
(尾崎委員)
上ノ條ハ釋放ヲ推定スルノデス
(南部委員)
債務者證書ヲ持テ居レバ任意ノ交付ト推定ス併シナガラ判決書ヤ何カハ一槪ニ義務ヲ釋放シタトハ推測セヌト云フノデス末項ハ任意ノ交付ガアツタナイカヲ推定スルノデス
(栗塚報吿委員)
昨日ノ預リ問題ハ六ケ敷イカラ明日ニ讓リ今日ハ今二條ヤツテハ如何デス
(委員長)
左樣シマシヨウ、之ハ宜シケレバ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第五百三十九條朗讀ス
第五百三十九條 債權者カ全證書又ハ債務者ノ署名若クハ證書ノ總テ其他ノ緊要ナル部分ヲ有意ニテ毀滅シ扯破シ又ハ抹殺シタルトキハ前條ニ記載シタル區別ニ從ヒ任意ノ引渡ト同一ノ度合ニテ債務ノ釋放ヲ推定セシム其毀滅、扯破又ハ抹殺ハ若シ其證書カ當時債權者ノ占有ニ係リシトキハ反對ノ證アルマテ債權者ニ因リ又ハ其承諾ヲ以テ爲サレタリト推定セラル〔第千三百三十二條第一項〕
(修正) 「引渡」ヲ「交付」ト改ム
(淸岡委員)
扯破抔ニ因テ釋放ト推定スルハ困リマスネ
(尾崎委員)
珍ラシイ
(栗塚報吿委員)
切リ取タト云フノデス細カニ切テ仕舞フノデス
(鶴田委員)
寸斷スルノデスカ
(栗塚報吿委員)
左樣デス
(村田委員)
毀滅ハ粉々デ扯破ハ摺り破ルノデス
(淸岡委員)
コンナ字ハ使フマイデハナイカ
(栗塚報吿委員)
寧ロ毀滅ノ内ニ入ルカラ扯破ハ刪リマスカ
(松岡委員)
毀滅ト抹殺ガアレバ宜シイ
(南部委員)
刪ラヌデモ宜シイデシヨウ、刪テ效ガアルカナレバ何ノ效モアリマセヌ
(淸岡委員)
日本通用ノ文字ヲ使ヲデハナイカ扯破抔ト云フ字ハ使ハヌ字デス寧口裂クト云フ字ニシテハ如何デス
(栗塚報吿委員)
文字丈ケノ論ナレバ翻譯ノ方ト相談致シマス
(鶴田委員)
全體二項ハナクトモ宜シイノデス
(渡委員)
無論ノコトデス
(委員長)
次ヘヤリマシヨウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第五百四十條朗讀ス
第五百四十條 債務ノ釋放ハ其明示ナルト默示ナルト又直接ニ證セラレタルト適法ニ推定セラレタルトヲ問ハス反對ノ證アルマテ有償名義ニテ爲シタリト推定セラル
然レトモ若シ釋放カ互ニ與ヘ又ハ受クルノ能力ナキ者ノ間ニ於テ成ルトキハ其釋放カ有償名義ニテ爲サレタルコトノ直接ノ證ヲ供スルコトヲ要ス
(松岡委員)
爲シタリト推定スデ宜サソウナモノデス
(鶴田委員)
受ケタ丈ケハ無能力ト云フノデスネ
(南部委員)
相手ハ是非無能力デナケレバナラン
(渡委員)
互ニ與ヘルコトニ付テノ無能力デス
(鶴田委員)
ソレハ往カヌ又ハト斷ジテ居リマス
(尾崎委員)
又ノ字ハ要リマセヌ
(栗塚報吿委員)
與ヘルコトモ、受ケルコトモ、能力ガナイト云ノデス
(鶴田委員)
左樣ハ讀メマセヌ、一方バカリデハ往カヌカ
(淸岡委員)
一方デモ宜シイデシヨウ
(栗塚報吿委員)
雙方デナケレバ往カヌノデスソコデ互ニ受ケル能力ガナイト云フノデス
(尾崎委員)
互ニト云フコトハ要リマセン
(渡委員)
何レモ無能力者デス
(淸岡委員)
「若クハ」トシテハ如何デス
(松岡委員)
一方デナケレバナラン病人ハ醫者ニ物ヲヤルノハヤル權ハアルガ醫者ハ貰ハヌト禁ズルノダカラ直ニト云フハ惡イノデス
(栗塚報吿委員)
醫者ガ病人ニ物ヲ貰フコトハ出來マセン併シ貰フ權ハアルノデス
(松岡委員)
ソレヲ法律ガ止メタノデス
(栗塚報吿委員)
醫者ニヤル權ガナイノダカラ貰フ權ガナイデ卽チ直ニナイノデス病人ガ醫者ニ物ヲヤレヌノハ若シ病人ニヤル權ガアレバ貰ヘルガ醫者ニ外ノ人カラナレバ貰ヘルノデ病人モ亦外ノ人ナレバ與ヘラルルノデス
(村田委員)
ソレハ左樣云フ意味デス
(淸岡委員)
釋放ト見ヌト云フノデスカ
(栗塚報吿委員)
只此所デ憂ルノハ贈與ヲ恐レルノデ有償名義ナレバ宜イト云フノデス醫者ニ物ヲ賣テ錢ヲ取タノナレバ宜シイノデス
(尾崎委員)
宜シイ
(渡委員)
宜シイトシマスカ
(尾崎委員)
有償名義ナレバ子供ガヤツテモ權ガアルト云フノデスネ
(鶴田委員)
ドウモオカシイ
(栗塚報吿委員)
互ヒノ間ニ能力ナキ者ノ間ニ釋放ガナルトキトナスツテハ如何デス
(淸岡委員)
有償名義ナレバ能力ガナクトモ宜シイト云フノハオカシイ
(栗塚報吿委員)
能力ト云フノハ幼年者ト云フ樣ナ能力デハナイ有償名義ナレバ出來ル能力アル無償名義デハ出來マセヌト云フ能力デアリマス故ニ直ニハ必要デアリマス
(南部委員)
出來ル丈ケノ能力ハアルノデス
(栗塚報吿委員)
病人ト醫トノ關係ダカラ贈興ハ出來マセヌガ賣買ハ出來ルト云フノデス
(委員長)
宜シケレバ今日ハ是レデ置キマス
本條ハ原案ニ決ス
于時午後第四時閉會ス