旧民法・法例(明治23年)

法律取調委員会 民法草案議事筆記 第34回

参考原資料

備考

  • 未校正のテキストデータです.
民法草案財產篇人權ノ部第三十四回議事筆記
自第四百八十三條至第四百九十四條
(委員長)
始メマシヨウ
第四百八十三條朗讀ス
第四百八十三條 特定物ノ債務者ハ引渡ヲ爲スヘキ當時ニ於テ存スル形狀ニテ其物ヲ引渡スニ因リ義務ヲ免ル但第四百三十九條ニ於テ條件付ノ義務ニ於テ危險ノ事ニ關シ記載シタルモノハ此限ニ在ラス
 若シ物カ債務者ノ費用ニテ保存若クハ改良セラレ又ハ其過愆若クハ懈怠ニ因リ損壞セラレタルトキハ償金ハ第一章第二節及ヒ第三節ニ從ヒ當事者互相ニ之ヲ負擔ス〔第千二百四十五條〕
(委員長)
第一章第二節ハ用收者ノ權利デスカ
(栗塚報吿委員)
ソレハ人權ノ方デシヨウ、本部ト云ハナケレバ分リ惡イデシヨウガ此部ノ第一章第二節及ビ第三節トヤリマシヨウ
(村田委員)
條件付ハ未必條件ノコトデスカ
(栗塚報吿委員)
左樣デス
(渡委員)
宜シウ御座イマシヨウ
(淸岡委員)
引渡ヲ爲スベキ當時ニ於テ存スル形狀ニテ其物ヲ引渡スト云フト一寸考ヘルト、傷ンデ居テモ、ソレニ關係セヌト云フモノガ出テ來ヨウト云フモノデス、併シ危險ノ事ニ關シテハ行ケマイガ、左モナケレバ傷ンデ居タラソレナリデ宜イトナリマス
(栗塚報吿委員)
併シナガラ危險若クハ損壞ヘデアレバ、償金ヲ取ルト云フノデ、只其形狀デヤレト云フコトヲ云タモノデアリマス
(淸岡委員)
約束シタトキニ傷ミ所ハナカツタト思テ約束シテ受取トキニ至テ傷ンデ居タト云フハ
(栗塚報吿委員)
第三百五十四、五條ヲ讀ムト、尙ホ能ク分リマス、其原則カラ生ズルモノデ、則チ第三百五十四條ニ諾約者ハ特定物ノ引渡マデ善良ナル管理者ノ注意ヲ以テ其物ヲ保存スベシ云云トアリマス、然レドモ諾約者ハ其物ノ看守ニ付キ同一ナル責ニ任ズルノミ云々トアリ如何ニモ左樣アリソウナモノデアリマス
(淸岡委員)
ソレカラ採テ來ルト疎末ニモナリソウモナイト見ヘル
(栗塚報吿委員)
ソレデ善良ナル管理者ノ注意ヲ以テシナケレバナラント云フコトヲ說キ明シデ、之ト對照シタ條デアリマス
(委員長)
互相ハ宜シイデスカ
(南部委員)
宜シイデシヨウ
(委員長)
互相ト云フノハ約束シタ者ハ約束サレタ方カラ償フ、損ヲサセタ者ハサセラレタ方カラ償ヲ取ルト云フニ見ルダロウト思フ、互相ハ之デモ御互ヒト云フノデハアリマスマイ
(栗塚報吿委員)
左樣デス御互ヒデハアリマセン
(淸岡委員)
過愆懈怠ナレバ過愆懈怠ノ方カラ取ルガ宜シイ、改良サレタラ改良サレタ方カラ取ルガ宜イト云フノデシヨウ
(委員長)
互相ト云フノハ大槪向ウカラ來レバ、此方カラモヤル故差引勘定ダカラ、此レハ一方ダカラ互相ト云フノハ如何ダカ知ラヌ、辭書ハ互相トナツテアリマスカ
(栗塚報吿委員)
左樣デス
(委員長)
ソウ云フ字ニ定マツテ居レバ宜シイ
(渡委員)
「シスブロクコン」ハ何ト譯シマスカ
(栗塚報吿委員)
對スルト云フ字ニナツテ居リマス
(淸岡委員)
當事者互ヒニ負擔セヨト云フハ、頭マ割ニシテ負擔セヨト云フニ見ヘマス
(委員長)
此前一遍アツテ互相ト云フ字ヲ變ヘ樣ト云テシルシヲ付ケタコトガアルダロウ
(栗塚報吿委員)
彼レハ當事者互ヒニ、各當事者ト直シタ所デアリマシヨウ
(鶴田委員)
契約ノ所デハ、契約ハ互相間ノ法律ト使テアリマス
(委員長)
此レハ能ク調ベテ見テ愈々互相ト云フ字ヲ使ウナレバ始終之デ行カナケレバナラン、スルト意味ガ違ウカラ
(栗塚報吿委員)
印ヲ付ケテ置キマシヨウ
(委員長)
外ニ論ガナケレバ先ヘヤリマシヨウ
本條第一章第二節トアル上ヘ「此部ノ」ノ三字ヲ加ヘ「互相」ノ二字ハ尙ホ取調ルコトトシ他ハ原案ニ決ス
第四百八十四條朗讀ス
第四百八十四條 若シ債務カ金圓ニ係ルトキハ債務者ハ其撰擇ヲ以テ金若クハ銀ノ國貨又ハ強制通用ヲ有スル紙幣ヲ與ヘテ義務ヲ免ル
 債務者ハ如何ナル法律上ノ變更カ貨幣ノ名價又ハ其正味ノ配合ニ付キ生スルモ約束シタル數額多クモ又少クモ決シテ負擔セス〔第千八百九十五條第二項〕
 前記ノ二箇ノ規則ノ一ニ外ツルヽ合意ハ無効タリ但第四百八十六條第二項ニ記載シタルモノハ此限ニ在ラス
(南部委員)
數額ヨリト云フ意味ガアリマスカネ
(松岡委員)
矢張リ「ヨリ」デシヨウ
(栗塚報吿委員)
少クモ、多クモデス
(南部委員)
「約束シタル數額ヨリ」トシタ方ガ宜シイデシヨウ
(尾崎委員)
ソレナレバ能ク分リマス
(淸岡委員)
強制通用ハ、宜イカ知ラン
(南部委員)
強制通用ハ今行ハレテ居ル政府ノ紙幣ト註ニ云テアリマス
(淸岡委員)
強制ノ字ヲ強テ使ハナクモ宜サソウナモノデス
(松岡委員)
日本ナレバ則チ強制スル紙幣デス、自然法ヤ經濟法ニハ背クガ、日本ノ有樣ニシテハ仕方ガナイ、之ハ此丈ケノモノデアルカラ、強テニ忌ムベキモノデハアリマスマイ
(淸岡委員)
強制通用ト云フモノガ西洋ニアルトシテモ日本デハ強制通用ノ紙幣ガアリモシナイニアルト云フハ如何ナモノカ
(栗塚報吿委員)
併シ今日ノ紙幣ハ是非強制スルノデアリマス
(淸岡委員)
甚ダ不祥ナコトデスガ之ハ財政困難ノトキデス
(栗塚報吿委員)
併シ日本ノ紙幣ハ強制デアリマシヨウ、彼レハ否デアリマストハ申セマセヌデシヨウ
(淸岡委員)
左樣云フトキニ用ユル強制ナレバ宜シイガ
(栗塚報吿委員)
ソレ丈ケデアリマス、私ガ紙幣デ拂テ貰フノハ否ト云フコトハ出來マセヌノデアリマス
(淸岡委員)
成程今日ノ紙幣一圓ヲ一圓ニ通用サセルハ強制デモアロウガ、今金ト銀ノ差ガアルニ付テハ紙幣ヲ持テ行クヨリハ金銀ヲ持テ行ク方ヲ悦ブカ知レンガ、強制ト云フノハ此間商法ノトキニモ實ニ政府ノ財政困難ノ時デ例ヘバ一圓ノ紙幣ヲ以テ一圓銀貨ヲ引上ゲテ來ルト云フ樣ナ壓制スル場合ニ用ユルノダカラ我國デハソンナコトハアリマセヌ
(松岡委員)
ケレドモ強制ト云フモノハ惡イモノト定義ヲシテ見ルト左樣デスガ、ソレ丈ケニ爲ヨト云フ命令モ強制執行ダカラ、壓制ト云フノデハナイ、否ト云ハレヌト云フノデ一人ニスルナレバ壓制ダケレドモ左樣デハアリマセヌ
(淸岡委員)
幾分カ制裁ヲ付ケナケレバナランガ制裁ヲ付ケルニシテモ一圓ハ一圓一アス
(松岡委員)
實ハ何トシテモ強制流通ニハ相違ナイ
(渡委員)
起案者ハ今ノ紙幣ハ強制通用ト云フカ知レヌガ、商法デ云フ強制ト之トハ同一デナイ樣ナ結果ニナツテ來ルト考ヘラルル
(松岡委員)
私ハ左樣ハナラヌト思フ「ロエスレー」ハ日本ノ紙幣ニハ論及セヌノデ、只歐羅巴ノ學者ハ壓付ケテヤルヲ強制ト唱ヘ價格ヲ立テヤルノハ流通紙幣ト見タノデシヨウ
(渡委員)
左樣、デナイ、商法ノ強制紙幣ト云フハ全價格ヲ有スル紙幣トノ區別ガアルト云フノデ、強制紙幣ハ内國ノ事變ニ際シ、或ハ戰事、非常ノ際抔ニ止ヲ得ズ金銀貨ノ少ナツタ故、紙ヲ發シテ必ラズ外ノ紙幣ト金銀貨ト差ヲ生ズルニモ拘ハラズ、此ハ一圓ハ一圓デ取リ、金銀貨ト同ジニ心得ロト壓シ通スカラデス、併シナガラ元トノアル時分ニハ拵ヘナイ、戰事非常ノ際一時布クノ法デ全價格ヲ有スルハ通常ノ紙幣デ、其二ツヲ併セテ「ボアソナード」ガ強制通用ト云フハ解シ難イ
(委員長)
ソレデ左樣デスガ、普通銀行紙幣、兌換銀券抔ノ如キハ強制通用デハナイ、只今ノハ政府發行ノ兌換銀券デナイモノガアル今日本政府デ云ヘバ強制通用デアリマス「ロヱスレー」ハ今ノ政府發行ノ紙幣ト兌換銀券、其他銀行紙幣迄籠メテ云フガ「ボアソナード」ハ先キノ條デ云テ居ル、此レハ外ノモノハ宜イ、第四百八十四條デハ金銀貨ヲ云タモノト思フ
(渡委員)
私モ左樣見マス、此間商法ニ云フタ強制通用トハ性質ガ違ヒマス
(委員長)
強制流通ハ同ジデス
(渡委員)
商法ニ云フ強制ハ事ニ臨ンデスルモノ、此ノ強制ト云フノハ其積リデハナイ、今日ノ流通紙幣ヲ云フノデシヨウガ、法律ニ書ケバ同ジ性質ニナツテ來ル、此所ハ流通紙幣ハ皆ナ強制ダカラ宜イト云フコトハ云ヘヌ
(淸岡委員)
全價格ヲ有スル積リデシヨウ
(南部委員)
此間商法ノ會ニ論ガアツテ、誠ニ不都合ナコトガ出來受取ラヌトナツタラ、現今ノ紙幣ヲ受取ラスコトハ出來マセヌ、誠ニ不都合ト云フ論デ、今日強制通用ハ民法ハ今日ノ紙幣ト見レバ宜シイ、決シテ弊害ハアリマセヌ
(渡委員)
假リニ御同樣ニ見タ所デ、若シ商法ニ彼ノ儘存スルナレバ商法デ云フ強制通用ト民法デ云フ強制通用トハ性質ガ違ウデシヨウ
(南部委員)
民法ノ強制通用ハ今ノ貨幣ト見レバ差支ナイ
(渡委員)
左樣見ラレナイ強制通用紙幣ト全價格ヲ有スル紙幣トアリマス
(南部委員)
全價格ヲ有スル兌換銀券ト見タラ宜シイ
(渡委員)
其位デ濟ムナレバ彼ノ席デ左樣八釜敷云フニ及バヌ
(南部委員)
今ノ譯ナレバ宜シイデシヨウ
(淸岡委員)
強制通用ト云テモ我國ノ相場ヲ立テヤル通用ハ許サヌカラ、強制通用ダノ、全價格ヲ以テ通用スル紙幣抔ト云フハ、内國政府ノ制度ヲ知ラヌカラデ、強制通用ハ甚ダ不祥ナ場合ニ設ケルノデ、我國今日通用スルモノヲ強制通用ノ名ヲ付ケナクモ宜シイ
(委員長)
淸岡サンハ御承知ニナランガ、強制通用ハ不祥デハナイ、國民ガ銘々力役シテ互ヒニ助ケナケレバナラン上カラ、皆放任シテ是ヨリ外ニ道ガナイ故ニ幾分カ力ヲ協合セ樣ト云フガ紙幣ヲ造ルヨリ外ハナイカラ紙幣補助ト云フコトハナイ話デ、中々二年ヤ五年デ濟ムモノデナイカラ、ソレハ殘テ居ルトキハ矢張リ強制通用ノ紙幣ハ存シテ居ル幾ラカナイコトハナイ位ノモノデ、日本現時ノ紙幣ハ何カト云フハ見ンデモナイ、全體國ニ強制通用ノ紙幣ハアルモノト承知ニナツテ、第二ニ日本現在ノ紙幣ハ何カト云フハ政府發行ノ紙幣太政官札ノ大阪デヤツタノモ強制通用ノ紙幣ヲ發シタト同樣デ、仕方ナシニ政府ハ價格ヲ擇バズ一圓ト極メタラ、ソレハ取ルトキハ一圓ト看做シ、決シテ八十錢ノ價格ダカラ八十錢ト云フコトハ出來ヌ、ソウスルト一圓ト看做シテ取ラセルカラ、自然強制通用ノ性質ニナルアレガ愈變ツテ兌換銀券ガ多クナツテ、太政府ノ札ハナクナルカモ知レヌ、必ラズ之ヲナクシタラ此際ハ國ノ不幸ト云フコトハナイ、今日ニナツテ見レバ、アルナシヲ問ハズ此強制紙幣ハ是非アルモノトシテ、金銀貨ノ本位ト同ジ價ヲ持ツモノト云フコト丈ケハ御承諾下スツテヤラヌト、今日ノモノハドウシテモナイ不時ノ世ノ中ニ行ハルルトナレバ議論ガ起ルカラ、御維新ノトキヤツタモノデ仕方ガナイ
(淸岡委員)
成程今日ノ兌換銀券ニシテモ、若シ政府デ換ヘルコトモ出來ヌトキハ、矢張リ強制ニナリマスカ
(委員長)
兌換銀券ハ一圓ハ一圓デ取ルト云テハ居ラヌカ、銀貨ト換ヘルカラ、一方ノ札ハ左樣デナクモ一圓デ取テヤルカラ
(淸岡委員)
若シ日本銀行デ斷ハルトキハ、必ラズ兌換銀券モ低落スルデシヨウ
(委員長)
低落スルトキハ國庫ハ豫防シテ居ルカラ、一方ノ太政官札ノ相續ニナツテ居ル方ノ大藏省札ハ其譯ニ行カヌノデ、之ハ是非下ゲテハナラヌカラ、政府モ人民モ、共ニ一圓ハ一圓デ取ルトシナイト、租稅ヲ拂ヒニ來タトキ、一圓ハ一圓デ取ラナケレバナラン、兌換銀券ノ方ハ八十錢ノ相場ノトキハ八十錢ノホカ取ラヌ、箇樣ナコトガ出來ルノデス
(淸岡委員)
下ル道理ハナイ、拂ヒサヘスレバ宜シイ
(委員長)
金銀貨ヲ積デ置ケバ下ガル氣遣ハナイガ、國ガ不幸ニ陥テ換ヘルコトノ出來ヌトキハ下ル下レバ兌換銀券丈ケハ一園ガ八十錢ニナツテモ仕方ガナイ、一方ノ大藏省札ハ是非共一圓ハ一圓デナケレバナラン政府モ租稅ニ一圓デ取ルノデス
(松岡委員)
此間商法ヲ議スル時分今考ヘルト本文ヲ能ク見ズニ註ニ強制ト云フ字カラ喫驚リシテ論ガ八釜敷クナツタノデ、今本文ヲ見ルト全格ヲ有ス流通紙幣ヲ以テ辨濟スルコトヲ得トアリマス註ニハ檢束スル樣ナ紙幣ヲ以テ受取ラヌデモ宜イ、何ゼナレバ又引換ヘルニモ手間モ要シ、損ガ行クカモ知レヌ、併シナガラ紙幣モ法律ノ力デ、拒ムベカラザル義務アレバ、強迫名義デ一般通用スベキモノダゾヨ、左樣云フモノハ設令金銀貨、貨幣ハ低落シテモ否トハ云ヘヌトアリマス、然ルニ彼ノ商法ノ場合ニ建言シテ何デモ行カヌト云フコトニナリマシタ
(委員長)
アレハ聞クコトニナツテ居ルガ、私ハ疑ヒハナイ
(松岡委員)
詰リ商法ノ樣ナ意味ニ致シマシテ、法律ヲ以テ否應ハ云ハセヌ、物ノ名ヲ付ケレバ強制デ、其強制紙幣ガアレバ矢張リ騰貴シヨウトモ、低落シヨウトモ、否應ハアリマセヌ、本位ノ貨幣ニ比較シテ來マスカラ
(委員長)
ソレハ兌換銀券ノ方デス
(松岡委員)
實ハ日本ノ紙幣ト銀券トハ差ガ立チ、實際取引ノ差ガ立チマス
(委員長)
差ノ立チ樣ハナイノデ、今迄日本兌換銀券ハ矢張リ強制通用ノ紙幣ヤラ分ラヌ、不換紙幣デアツタカ左樣デハナイノデス
(松岡委員)
兌換紙幣ニナリマシテ、實際便利ガ能クナルト、銀ヨリハ紙幣ガ高クナルコトモアリマシヨウ、併シナガラ複本位ニ以テ行クト今デモ差ガ立チマス
(委員長)
金銀ノ差ノ如ク、多少位置デハ差ガアルカモ知レヌガ、世ノ中デ認メナイ
(松岡委員)
法律デ認メナイガ、其所デ商法ノ案ト此度ノトハ今見ルト變リハアリマセヌ
(淸岡委員)
委員長ノ御說デ、各國共ニ強制通用ハ別ト云フ論モアリマシタガ、時アツテハ日本ノ強制紙幣ヲヤラナケレバナラン場合モアリマシヨウガ、ソンナコトヲシナクモ、全價格ヲ以テ流通セシムルノデ、ソレハ幾分カ強制ノ場合モアル、卽チ明治四五年ノ頃政府ハ一圓ハ一圓ニセヨト云フ命令ヲシタコトモアル、彼レハ強制ヲ見タ樣デスガ、併シナガラ外國ノ所謂強制トハ違ヒ、全價格ニ復サレタ丈ケノコトデ、外國デ云フ強制流通紙幣ト云フモノハ、今日我國ニハ行ハルルモノデアリマセヌ、併シ道理上カラ云フト、我國ノ流通紙幣ハ強制シテ居ルニハ相違ナイガ、格位ガ違フト思イマス
(渡委員)
「ロヱスレー」ノハ平常ノモノト定メタノデ、前ノ強制流通ト云フ紙幣ハ事變ニ際シテ國亂ノ際拵ヘル紙幣ダカラ、如何ニ事情ガアツテモ、人民ノ義務トシテ、否デモ應デモ取ラナケレバナラント云フノデ、今日本ノ流通紙幣ノ如キハ「全價格ヲ以テ」ト云フニ當ルノデシヨウ
(委員長)
左樣デハナイ、全價格ヲ以テ流通スルト云フノハ現今ノ大藏省紙幣ト思フト往カヌカラ大藏省紙幣ハ卽チ強制流通ノモノト見ナケレバナランデシヨウ、固ト維新ノ時太政官ノ札ト云フモノハ、人民ノ不幸ト十年ノ戰爭ノトキ造タノガ元ニナツテ居リ、其他ノ理由デ以テ造タノデハナイ、此紙幣ハ是非強制通用サセテ、又全價格ヲ以テ流通スルトハ今日ノ兌換券ノ如キハ幾ンド全價格ヲ以テ行クノデ、之ハ一圓ニ命ジテハナイノデアリマス
(渡委員)
其說ハ御座イマスガ、太政官札ハ相續紙幣ニナリマスト、強制流通ト看做スガ宜イト云フ御旨意ニナリマスト、成程履暦ハ強制ガ形チヲ變ヘテ、今ノ紙幣ニナリマシタガ、若シ彼レガ強制紙幣デアツタナレバ、中頃差ガ出來テ、ソレヲ一圓ガ七八十錢ニナツタ如キ性質ニナツテ流通シタトキ強制流通シナケレバナラン必要ガアロウガ、公ニ政府ガ認メタトモ云ヘヌ樣ニ思ヒマス
(委員長)
公ニ認メテハ居ラヌガ、租稅ニハ一圓ハ一圓デ取テ居ルノデス
(渡委員)
強制通用ナレバ是非價格ノ低落シタモノヲモ、人民ニ其通リ通用シナケレバナラン性質デアリマスガ、ソレハ左樣ハ出來マセヌ
(委員長)
其トキ商法ヤ民法ノ如キハ、刑事ニ係テ居レバ格別デアリマスガ、強制執行ノ法律ヲ以テヤレバ、其法律ナシニヤツタラ、其所デ價ヲ名付ケルハ何ト云フカ、一圓ヲ一圓ニ流通サセル丈ケダカラ、依テ強制紙幣ノモノト看做スト法律デ云タノデハナイ、是カラ後チ支那トデモ戰爭ヲスル樣ナトキニハ強制執行ニ依テ、此紙ハ強制紙幣ダトシテ、人民モ政府モ之ヲ避クルコトハナラントナルノデスガ、彼ノ時分ニハ法律ガ不備ダカラデスガ、今日カラ看做セバ彼レハ強制流通ノ性質ト見ナケレバナラン
(渡委員)
其方ノ主義ニ至テ居リマスガ、彼レハ皆ナ日本デハ各國デ云フ、所謂ル強制紙幣ノミヲ何時ニテモ持テ居ルト云フコトニナリマス
(委員長)
銀行紙幣ト彼レヲ換ヘテ、今日兌換券ト換ヘタ方ハ人民ノ自由デ政府ガ怠レバ人民ハ價格ヲ低落スル
(松岡委員)
詰リ金銀紙幣デモ構ハヌ、今日本ノ紙幣ノ性質ハ強制シテ通用サセル紙幣カヲ比較スルノデ、勝手ニ大阪ト東京ノ間ニ差ガ立テバ法律ガ許スカ否ヤヲ見レバ、何ノコトハナイ、此法ガ大事ナレバ、商法ノ方ハ此ト照シテ直ス迄デアリマス
(委員長)
商法ト此原案トノ差ハナイト思フ、商法ハ精ハシイノデ、民法ハ大綱ヲ擧ゲタ丈ケデアリマス
(松岡委員)
彼ノ方ハ一般紙幣ノ性質有ラユルモノヲ擧ゲタコトニナリ、今日本ノ紙幣ハ一種デアリマシヨウ
(委員長)
一種デハナイ、三種アリマス、卽チ大藏省紙幣、兌換銀券、銀行紙幣トアリマス
(松岡委員)
商法デハ今日ノ銀行紙幣ハ別デ、政府ノ紙幣ハ一般ノ價ヲ許シタモノデハアリマセヌ
(委員長)
一般ニ價ヲ許スハ兌換銀券デアリマス
(渡委員)
「ロエスレー」ハ今ノ紙幣ヲ見テ書イタノデアリマス
(委員長)
左樣デス
(鶴田委員)
今ノ樣ナ解釋ハ宜シウ御座イマスガ、商法ト合セヌデハ不都合デシヨウ
(委員長)
合セルノデスガ、大體ハ合セテ居リマス
(松岡委員)
法律上差ノ立ツコトハ一モナイデシヨウ
(委員長)
法律上差ヲ許シタコトハナイケレドモ、自然世ノ中デ信用ガナクナリ、所謂兌換銀券ヲ持テ銀ヲ呉レト云テモ呉レヌト云フト、一圓ガ八十錢ニナルノデ、ソレデ差ガ生ズル、ソレサヘナケレバ全價格ヲ以テ通用スルモノデアリマス
(淸岡委員)
強制ト云フノハ刪リマシヨウ
(栗塚報吿委員)
刪テ通用シナカツタトキハ大變デアリマス
(鶴田委員)
商法ト合ハヌデハ往カヌカラ、又同ジニシタラ重複ダカラ商法ニハ強制流通紙ト又全價格ヲ以テ流通スル紙幣ト二ツアルカラ、民法ハ大樣デ宜ケレバ強制流通ノ一ヲ擧ゲルト、全價格ヲ以テ流通スル紙幣ハ打捨テ居ル樣ニ見ヘルカラ、此所ハ流通紙幣ト書イテ置キ、商法ハ二ツ書クガ宜シイデシヨウ
(栗塚報吿委員)
兌換紙幣ハ銀ノ價格ト見テ居ルノデ、紙幣トハ見ナイノデス
(松岡委員)
ソレダカラ紙幣ノ字ガナイノデス
(栗塚報吿委員)
左樣デ御座イマス
(鶴田委員)
銀行紙幣ハ時アツテ價格ノ低落スルコトガアルカモ知レヌ
(栗塚報吿委員)
アレハ矢張リ銀貨デアリマス
(鶴田委員)
併シ何時モ引換ヘテ呉レル紙幣デハアリマセン、銀券トハ違ヒマス
(栗塚報吿委員)
恵比壽樣ノ付イタノヲ見ルト政府ノ金ニ換ヘルトアリマスカラ
(鶴田委員)
強制通用デス
(栗塚報吿委員)
強制通用ノモノハ通貨ニ換ヘルト云フノデアリマス、銀行ノハ強制通用デハアリマセヌ
(鶴田委員)
強制通用ニ換ヘルノダカラ、全價格ヲ以テ換ヘル紙幣デス
(栗塚報吿委員)
銀行ノ紙幣ハ否ト云フコトガ云ヘルノデアリマス
(淸岡委員)
今日デハ否トハ云ヘヌノデス
(渡委員)
左樣強制スルコトハナイ
(栗塚報吿委員)
併シナガラ否ト云フトキハ何ニスルカナレバ政府ノ金ニ換ヘルノダカラ云フ者ハアリマスマイ
(鶴田委員)
言フコトハナラヌノデ其所デ強制ト云フノデス
(栗塚報吿委員)
銀行紙幣ハ強制デアリマスカ
(淸岡委員)
先ヅ強制デアリマス
(栗塚報吿委員)
何時ノ法律カ知ラヌガ左樣ハナリマセヌデシヨウ
(委員長)
銀行ノハ強制トハ違フガ、政府ガ認メテ居ル丈ケノコトデ、是非一圓ヲ一圓ニ通用セヨト云フハ大藏省ノ札ヨリハアリマセヌ、鶴田サンノ言フ樣ニ、民法ニ大綱ヲ擧ゲテ商法ニ細カニシテ、此所ハ、金若クハ銀ノ國貨又ハ通用紙幣トカ何トカシタラ如何デスカ
(渡委員)
ソレハ宜ササウデス
(松岡委員)
詰リ本體ノ性質ハ、金デモ銀デモ肩ヲ並ベテ持テ行カレテ、義務ヲ免カルル強制シテアルカラデシヨウ、何ノ樣ナ紙幣デモ、紙幣ハ金銀同樣ナ譯ト云フノデシヨウ
(南部委員)
不承知ヲ言テハナラヌト云フノハ、百圓ナレバ銀百圓デモ、紙幣百圓デモ持テ行ケバ免カルル旨意ダカラ、全價格ヲ以テ紙幣ヲ入レルコトハ出來マセヌ、全價格ヲ以テト云フト、安クナレバ五十圓デモヤラナケレバナラン
(委員長)
鶴田サンノ言フノハ強制通用ヲ用ユルガ、其他ノ紙幣ハ百圓ガ百圓ニ換ヘラルルナレバ否トハ言ハレナイ樣ニシタイト云フノデ、金デモ、銀デモ、銀行紙幣デモ、百圓ニ通用スルナレバ宜イデシヨウト云フノデス
(南部委員)
此一項ハ卽チ債權者債務者ト同一ノ地位ナレバ、債權者ハ債務者ヲ一層寛大ニセラルル旨意デ、金百圓デモ銀百圓デモ紙幣百圓デモ宜イト云フノダカラ、此旨意ニ變ハル樣ニナル、若シ百圓ノモノヲ持テ行テ五十圓ノ相場ナレバ如何シマスカ
(委員長)
其所モ鶴田サンノ云フノハ、金ノ代リニ銀ヲ持テ行テモ差ガアルカラ、矢張り金ノ一圓ヲ借リ、銀一圓ヲ持テ行テモ行カヌト云フコトガアルカモ知レヌ
(南部委員)
行ケル旨意デ御座イマス
(委員長)
金若クハ銀ノ國貨ト云フモノハ卽チ此差ガ付クカラ、宜イト云フノデ、若シモ歐羅巴ノ金貨ト日本ノ銀貨ト云フノ差ガアレバ行カヌト云フコトハナイ
(南部委員)
ソレヲヤルト云フ旨意デアリマス
(松岡委員)
鶴田サンノ說ニスルト、紙幣ヲ以テスルコトガ出來ルト云フノデ、暗ニ全價格ヲ有シテアルナレバト云フ條件ヲ含マセテ居ル旨意デ、左樣ナルト、紙幣ハ殆ンド強制ノ紙幣ノミトナルノデス
(鶴田委員)
強制ハ無論全價格ヲ持タセナケレバナラン旨意デシヨウ、之ヲ持タセヌト強制ニナラヌ、銀行紙幣ハ全價格ヲ以テ通用シテ居レバ、ソレデモ宜イ、銀券デモ全價格ヲ以テ通用シテ居レバ、ソレデモ宜シイト云フノデス
(村田委員)
金貨銀貨デモ、百圓デ宜イノデシヨウ
(委員長)
便利ハ鶴田サンノ言フノガ便利デシヨウ、前ニ金デ借リテモ紙幣デ拂フト云ヘバ自由ヲ與ヘテアリマスガケレドモ、紙幣ハ大藏省發行ノ紙幣デナケレバナラン、兌換銀券ヲ以テハ往カヌト云フハ不自由デシヨウ、通用スレバ金ノ代リニ紙幣ヲ持テモ宜イト云フハ便利デシヨウ
(栗塚報吿委員)
第一如何ナル債務者ガ債務ヲ辨濟シ、債權ハ如何ナルモノデ執行シタル問題デ、流通貨幣ハ金銀貨紙幣カト法律ガ書クノデス
(委員長)
今借金ヲ拂ヒマスニ何圓トアリマス、日本デ云フト、金銀兩本位ノ國ダカラ、金銀ヲ以テ行カナケレバナラン、其代リニ持テ行クニハ大藏省ノ札ヲ揃ヘテ、百圓持テ行カナケレバナラント云フノト、或ハ兌換銀券ト交ゼテ持テ行クモ第一國立銀行札ヲ持テ行クモ一方ハ承諾スルトセヌトノ違ヒデ、大藏省札バカリ揃ヘ難イカラ其トキハ價サヘ違ハヌナレバ宜イトシナケレバナラン
(栗塚報吿委員)
撰擇ハ債務者ニアリマシヨウ
(委員長)
債務者ハ強制通用ノモノヲ與ヘテ義務ヲ免カルト云テ、銀行紙幣ヲ以テ義務ヲ免カルルコトハナイト云ヘマシヨウ、ソレハ行カヌト裁判官ガ言テ是非大藏省札ヲ以テシロト云フニ違ヒナイカラ
(南部委員)
ソレナレバ百五十圓持テ行カナケレバナラント云フコトニナリマス
(渡委員)
「強制」ト云フ字サヘ除レバ宜シイ
(松岡委員)
扨テ貨幣ニハ銀行紙幣モアル、併シナガラ法律ノ上カラ言フト、金銀モ同樣デス、今一ツ政府カラ出シタ強制通用ノ紙幣ハ如何ナルモノカナレバ、一向差ガナイモノト極メタ丈ケデ、若シ差ガナイモノヲ持テ來タナレバ、人ガ否應云フノハ法律ガ慮ランデモ宜シイ、銀行紙幣ニ信用ガアツテ、通用スレバ慮ルニ及バズ、又銀行ノ信用ガ惡クナツテ仕舞ヘバ強制丈ケノ價ヲ持タヌカラ左樣ガ市場ノ價ノコトハ第二ニシテ、凡ソ政府デ見ルト、金銀貨ハ強制通用ノ紙幣ト同斷ト云フ丈ケニ止メタ方ガ宜シイ
(委員長)
ソレハ經濟上不注意ノ點ハ免カレナイト云フノデ、兌換ノ金カ強制紙幣カト云フ原則ノミニシテ、此所デハ商法ノ如ク書イテ置ケバ餘程人ト人トノ間ニ議論ヲ來タス憂ガアリマスカラ、惑ハナイ樣ニシテ置キ度イ
(松岡委員)
強制ノ字ガナイモノハ差支ナイト思フガ、若シ差ノ立ツコトガアレバ、全價格ヲ有スル論ガアレバ、法律ハ公然市場ノ價ヲ求メルト見ル、左樣スルト強制ノ字ハナクトモ、商法ニ如何ナル制限ガアツテモ、民法ハ一般ノモノデスカラ
(委員長)
商法通リニ書クト云フノデス
(鶴田委員)
違ウ譯ハナイ、金ヲ取ルニ商事ト民法ト違ヒ樣ハアリマセン
(松岡委員)
強制通用ナレバ一圓ニ通リ、又時々ニ價ガアルト差ガ立チ、民法ガ極メテナイカラ差丈ケノ市場ノ價ヲ持テ行クハ無論デアリマス
(鶴田委員)
全價格ヲ以テト云フハ差ノ立ツモノデハアリマセヌ
(松岡委員)
差ガ立ツモノデアリマス、又差ガ立ツモノト法律ハ見ナケレバナラン、強制通用ハ全價格ヲ有スルト、有セヌノトアルノデスカラ、ソレハ不可抗ヲ許ス
(渡委員)
松岡サンノ論ハ強制ト云フコトヲ置イテ、政府ノ流通紙幣ハ無論銀行紙幣デモ同ジ價ヲ持テ居レバ、請取リ渡シヲスル譯ダカラ、強制ト云フハアツテモ差支ナイト云フ論デスカ
(松岡委員)
此法デ見ル場合デハナイト云フノデス
(渡委員)
鶴田サンノ論ニシテモ強制ト云フ字ヲ取テモ之ハ政府ノ流通紙幣ハ無論銀行紙幣ガ同等ノモノナレバ無論行クノダカラ、畢竟價ガ同ジナレバ何ノ紙幣デモ宜イト云フ精神ニスルニハ強制ト云フヲ殊更ニ書ク場合ガ便利ト云フハ貴君ノ意味デ、價ガ同ジナレバ受取ルトナルノデ、ソレデ貴君ノ議論デモ、法律ガ立入タ積リデハナイト云フノデ、結果ハ同ジニナルノデアリマシヨウ
(南部委員)
商法ノ會議ノ時分全價格ヲ有シタル流通紙幣ヲ以テ辨濟スルヲ得トアルケレドモ強制通用ト全價格ヲ有スルトノ差ハ全價格ヲ有スル方ハ否ト言ハレルト報吿委員カラ辯ゼラレタガ、今民法ノ本條ニ債務者義務ヲ免カルルヲ以テ全價格ヲ有シテ流通スル紙幣ヲ入レルハ甚ダ宜シクナイ、畢竟此紙幣ノ騰貴或ハ下落ノ際ハ豫テ極メテ置クト第四百八十五條ニ載テアリマス
(淸岡委員)
差ガ立タトキニ、ソレデモ受取ラヌト云フコトハ言ヘヌトキト全價格ヲ有シテ居レバ、今日強制紙幣デナクツテモ宜シイ、全價格ノ流通ヲ有シテ居ルトキハ銀行紙幣デモ宜シイ
(南部委員)
左樣ハ行カヌノデス
(淸岡委員)
銀行紙幣ニ差ガ立テ居ルトキハ辨償スル「ロエスレー」ノ旨意デハアリマスマイ
(南部委員)
商人ト云フ者ハ左樣ハ行カヌ、卽チ向ウカラ一錢ノ差デ受取テモ、明日二錢ノ差ニナルカ知レマセヌ、ソレヲ無理ニ受取ラセルコトハ出來マセヌ
(淸岡委員)
明日一錢下ルカ、五厘下ルカ知レヌト云フト、全價格ヲ以テ流通スル紙幣トハ云ヘヌ、將來ハ、イザ知ラズ先ヅ當時現場ニ於テ現實ノ價格ノアルモノデナケレバ、全價格ヲ以テ流通トハ云ヘヌ、銀行モ潰レルカモ知レヌガ、今日先ヅ潰レル景況ガナイカラ、銀行ノ紙幣デモ渡スコトガ出來ルト商法ニ極メテアリマス、然レバ政府デ許シテ、公然發シタモノデ、銀貨デモ強制デモ、宜シト云フコトハ流通ヲ廣クシ融通ヲ付ケタノデ、民法ノ方モ此旨意ニ外ナラヌ、差ガナケレバヤラシテ宜シイノダカラ、民法ト商法ト同一ニシテ宜イト云フ鶴田サンノ說ハ私モ宜シイト思ヒマス
(南部委員)
全價格ヲ以テ通用ト云フト、百圓ノモノハナケレバ行カヌノデ、九十圓ノモノヲ以テ、百圓ニ壓シ付ケルコトハ出來マセヌ、左樣スルト、民法ノ第四百八十四條ノ旨意ガ違フト云フノデアリマス
(松岡委員)
鶴田サンノ說ハ強制ノ字ヲ削ルノデスカ
(鶴田委員)
私ハ此所ハ漠然ト云テ置キ、強制ノ字ハ刪テ流通紙幣ト云フコトニシテ置キタイ
(松岡委員)
流通紙幣ナレバ、如何ナル紙幣ヲ以テモ構ハヌトナリマス
(鶴田委員)
全價格ヲ保テ居レバ宜シイ
(松岡委員)
今日ノ紙幣ハ宜イガ「ロエスレー」ノ云フ所デ見ルト、強制通用ノモノガ出ラルルト思フ、其出タ時分、此所ニ強制ノ字ガナケレバ價ガ違フト云テモ、民法第四百八十四條ヲ御覽ナサイト云ワレマス
(鶴田委員)
私ハ流通ト書クモ、全價格ヲ保ツ流通紙幣ト云フ積リデアリマス
(松岡委員)
其時ノ相場ヲ指スノカ、全價格ヲ云フノデスカ
(鶴田委員)
一圓ハ一圓ヲ保ツト云フノデス
(松岡委員)
ソレハ強制デス
(委員長)
拂ヲスル當時全價格ヲ有シテ居ルモノト云ハナケレバナラン
(松岡委員)
左樣ナルト、時ノ相場デ高下ガ出來ルノハ金銀貨ト同樣ノモノト認メルハ六ケ敷イ、畢竟紙デ拵ヘタノデアリマスガ、法律ハ強制流通トスルハ金銀ト突付ケラルルモノデス
(委員長)
貨ハ幣如何ナルモノカ、貨幣ノ講釋ナレバ金銀デ拂タモノハ何々ト云ハナケレバナランガ、貨幣ノ講釋デナイカラ、何ヲ以テモ拂ヒ出スコトガ出來ルカ否ヤダカラ價ヲ持ツ紙幣ナレバ宜シイ、其紙幣ハ設令昂リ下リガアルモノデモ、拂ヒ渡シヲスル當時百圓ガ百圓ノ金銀貨ト同ジナレバ宜シイ然ラバ世ノ中ノ流通ガ易クナルデシヨウ
(松岡委員)
其所ハ難儀ト思フ、強制ダカラ實際ハ今申ス法律上強制ノモノガ出來タラ、時ノ相場ガアレバ持テ行カレルト云ハナケレバナラントスルト適當ノ價アル紙幣トシナケレバナラン
(委員長)
八十五條ハ合意センケレバ外ノ紙幣ヲ以テハ行カヌカラ、不承知ヲ言テ見レバ、私ガ兌換銀券デモ持テ行クト、否大藏省札ト云フテ拒ムコトハ出來マセヌ
(南部委員)
左樣云フコトハナイ譯デアリマス
(委員長)
金銀貨ニ差ハナイト宜イケレドモ差ガアルデシヨウ
(南部委員)
差ガアレバ鶴田サンノ說ニシテモ持テ行カレヌ
(委員長)
強制通用ヲ有スル紙幣トアリマスカラ
(南部委員)
拒マヌトキハ何デモ宜シイ
(委員長)
私ハ赤イ紙幣ヨリ黒イ紙幣ガ宜イト云フデシヨウ
(栗塚報吿委員)
拒ムハ何カ得ガアルカラデスガ、ソレハ強制通用デハ往カヌノデス
(松岡委員)
本條ノ第二項ヲ見テ下サイ第二項ハ強制通用紙幣ハ銀行紙幣ト同等ダト云テ、ソレハ少々違テモ一圓ナレバ一圓持テ戻スルゾヨト云フノデ、ソレヲ時ノ相場デ出來ルナレバ、流通スレバ宜イトハ云フタ、所ガ但ヲ見ルト三箇ノモノハ同等ノモノゾト示シテアル
(渡委員)
二項ヲ解スルコトモ亦御說ノ通リニ解シテ居ルガ、併シナガラ重ニ八十四五條ノ精神ヲ併セテ考フルト、此民法ニモ必ラズ全價格ノ品物デナケレバ取引シテモ宜イ、約束ガ出來ルト裏ヲ云テ居ルカラ、必ラズ八十四條ニハ何デモ強制紙幣ノ外受取ラヌト云フ、ソレデナケレバ義務ハ免カレヌト云ハヌデモ宜イ、若シ其通リノ精神ナレバ八十四條ノコトハ云ハヌデモ宜イ畢竟ハ流通ノ紙幣デサヘアレバ宜イ、若シ差ガアツタラ其差ヲ塡メタラ宜イト云フ旨意デス
(松岡委員)
ソレハ悉ク違ヒマス、八十五條ハソンナコトヲ云フノデハナイ見樣ガ違ヒマス八十五條ニ一、二、三ト並ベテ、三ハ法律ノ變更ガアツテモ金百圓借リタニ、其時ハ銀ト銅デアツテ、今日ノ所デハ金八分、銅二分ニナロウトモ其モノニ向テハ百圓ト云テ宜シイ、又銀百圓ト云テモ強制紙幣ナレバ百圓持テ行ケバ宜シイノデ、多クモ少クモスルコトハ出來マセヌト云フノダカラ、一項ハ強制紙幣ハ政府ガ金銀同一ノモノト認メタモノニ限ルノデ、之ハ強制ノ字ヲ除ケテハ行カヌノデス
(渡委員)
ソレハ間違デ、畢竟精神カラ云フト、強制通用ヲ以テ義務ヲ免カルト云タラ外ノモノハ免カレナイト、法律ガ云フノダカラ左樣ハ極メタクナイ、ソレハ必ラズシモ強制通用ノ紙幣ニハ限ラヌ、銀行ノ紙幣デモ、何紙幣デモ、世上ニ流通ノモノナレバ何デモ宜イト云フ法律ニシタイ、併シナガラ差ガ出來、一圓ガ八十錢トナルモ取レト云フテハナラヌ、ソレハ分ケナケレバナラン所ガ民法ニハ一ニ強制流通ノ紙幣ノミトアリマスカラ、銀行紙幣デハ往カヌト云フノデス、故ニ一樣ニシタイ
(鶴田委員)
商法ハ金銀通用ノコトハ細カニ行フガ宜シイ、民法ハ總括シタ原則ヲ指シテ云ヒ、若シソレガ往カヌナレバ商法ト同ジ樣ニシナケレバナラント云フノデアリマス
(松岡委員)
度々申スモ同ジデスガ、此條ハ細カイモノニハ見ラレナイ、卽チ二項ニアル通リ金ガ小サイナロウガ、銀ノ目方ガ多クナロウトモ、紙幣ガ變ハロウトモ否トハ云ハヌデス
(委員長)
二項ハ金銀ノコトヲ云タノデハアリマセヌ
(松岡委員)
相對デ自由ニ出來ルカ否ヤト云フ問題デ、拂フ者ハ常ニ少イモノヲ以テ拂ヒ度イノデアルカラ法律ハ公平ニ定メナケレバナラン、ソレハ紙幣デモ、金銀デモ宜イゾヨ、設令多少ノ差ガアロウトモ以前ノ百圓ハ三種ノ内、何レデモ百圓ト云フノデ、多クモ少クモセラレナイ、紙幣ハ強制紙幣デナケレバナラント云フノデス
(委員長)
前ノ講釋ハ宜シイガ、詰リ強制ト云フ字ガ惡イ、私ハ強制紙幣ト云フノハ「ボアソナード」ハ商法ノ規定前ニ書イタカラ、強制紙幣デナケレバ世ノ中ニ信用ガナイカラ、金銀貨ト云ヒ、跡八十五條デヤレルト云フ旨意デシヨウ、今日商法ハ彼レ丈ケ、範圍ヲ定メタル以上ハ其方ガ世ノ中ノ便利ガ宜イカラ、民法モ狹クテハ往カヌ、商法ハ廣ク、民法ハ狹クトト云フコトハナイト思フ
(渡委員)
同一ニナラナケレバナランノデス
(鶴田委員)
金ノ取リ樣ニ、二種アツテハ困リマス
(栗塚報吿委員)
詰リ全價格ヲ有セヌモノモ取ラナケレバナランガ、ソレハ出來マセヌ、併シ之ハ商法ニ規定ニナリマシタ箇條ヲ以テ、民法報吿委員デ議シテ見マシヨウ
(委員長)
報吿委員デモ茲デ言フ議論デハ往カヌカラ起草者ノ「ボアソナード」ニ聞テ是丈ケ違ウガ此會デハ同樣ニスル考デスガ、併シ民法商法ト同ジ文ニ並ベルモ宜クハアリマスマイカト云テ質問スルガ宜イ
(渡委員)
ソレガ宜シイ
(栗塚報吿委員)
併シナガラ歸着ハ同ジデアルト思ヒマス
(委員長)
左樣デアロウガ、法律ニ強制紙幣トアル以上ハ否ト云フモ、是非取レト云フコトハアリマスマイ爲メニ裁判モ經ナケレバナランコトニナルト、裁判官モ困ルデシヨウ
(栗塚報吿委員)
銀行紙幣ハ否ト云フコトガ言ハレルデシヨウ
(尾崎委員)
否トハ言ハレヌノデス
(松岡委員)
否ト言ハレタモノハ納稅ノミデス
(渡委員)
否トハ言ハレヌノデシヨウ
(委員長)
此ガ出タラ否ト云フコトガ言ヘルダロウ
(栗塚報吿委員)
今日言タラ如何シマスカ
(松岡委員)
今日ハ言ヘヌノダロウ
(栗塚報吿委員)
ソレナレバ彼レハ強制デシヨウ
(委員長)
強制トハ云ヘヌ、強制ハ大藏省ノ不換紙幣ヨリ外ハ言ヘヌノデアリマス
(栗塚報吿委員)
否ト云ヘヌノデス、左樣シタナレバ、彼レデモ銀行ノデモ強制紙幣デシヨウ
(委員長)
銀行ガ身代限スルト、價ガ下リ、其時一圓ハ一圓ト云フコトハ言ヘヌ
(松岡委員)
要スル所強制ト云フヲ除イテ、通用紙幣トシテ時ノ相場デ、金ナリ銀ナリニ匹敵スル丈ケ持テ行ケバ宜イトナリマスカ
(委員長)
私ハ鶴田サンノ云フ通リ、商法ト同ジニシタイケレドモ、緻密ニ書クノハ不細工ダカラ、一所ニ括メテ全價格ヲ有シテ流通スル紙幣ト云フ如キニ書イタラ宜カロウト思フ
(松岡委員)
全價格ヲ有スルト云フハ、法律ガ命ジタコトデスカ、或ハ時ノ相場ガ全價格ヲ有スルノデスカ
(委員長)
私ガ書ケバ、時ノ相場ガ全價格ヲ有スルトシナケレバナラン
(松岡委員)
左樣スルト、二項ハ書キ換ヘナケレバナラン
(委員長)
書換ヘテモ宜イデシヨウ、之ハ起草者ニ聞クガ宜シイ
(栗塚報吿委員)
ハイ
(尾崎委員)
論モアツタガ、之ハ廣クシテ置クガ宜シイ
(栗塚報吿委員)
私ハ商法ハ時ノ相場デ始終ヤルト云フハ分ラヌト思ヒマス
(鶴田委員)
私共ハ重ニ商法ト一定ニシナケレバナラント思フ
(松岡委員)
私等ハ些トモ變ハラヌト思フ
(鶴田委員)
貴君ノハ直段サヘ變ハラヌトキハ宜イト云フノデシヨウ
(栗塚報吿委員)
銀行ト云フモノハ信用上成立モノデ、信用ガ一朝地ニ堕レバ紙幣トモ言ヘヌ、紙屑同樣デアリマス、然ルニ政府ノ紙ハ信用ガナクトモソレデ行クノデスカラ
(松岡委員)
之ハ「ボアソナード」ト「ロエスレー」ニ示シテ宜イ
(栗塚報吿委員)
「ボアソナード」ニ示シタノデ宜イデシヨウ、經濟學者デ論ジテ居ルカラ「ボアソナード」ニ問ヘバ宜イデシヨウ
(鶴田委員)
此案ハ「ロエスレー」モ同ジデアロウト思フ
(淸岡委員)
起案者ハ同ジデシヨウ
(松岡委員)
時ノ相場ヲ以テ動スコトハ見ナイト思フ
(淸岡委員)
我々モ時ノ相場ヲ以テトハ云ハヌ、全價格ヲ以テ論ズルト云フノデス
(松岡委員)
強制ニ非ズシテ、直グニ通用スルハ如何ナルモノデスカ
(委員長)
銀行紙幣抔ハ相對デ受取ルトキハ、大藏省紙幣ト同ジニ通用スレバ、全價格ヲ以テ通用スルノデ、若シ差ガ生ジテ、一圓トアルモノガ九十五錢ニシカ通用セヌト云フト、全價格ヲ以テノ通用デハナイ「ロエスレー」ノ書イタハ餘程注意シテ書イタト思フ
(渡委員)
「ロエスレー」ハ一向眞向デ書イテ來タノデ御座イマシヨウ
(栗塚報吿委員)
ソレデハ第四百八十五六條ハ飛バシテハ如何デアリマスカ
(委員長)
講究スルコトニシテ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ起案者ニ質問スルコトトシ未定
第四百八十五條朗讀ス
第四百八十五條 右ニ反シ辨濟ヲ要求スルコトヲ得ル當時ニ於テ爲換市價ヨリ生スル貨幣又ハ紙幣ノ互相ノ騰貴又ハ下落ノ差ハ債務者ノ意ニ適スル法律上ノ貨幣ヲ以テスル平均價額ノ辨濟ニ因リ當事者ノ間ニ之ヲ塡補スヘキ合意ヲ爲スコトヲ得
(鶴田委員)
金銀紙幣トカ、強制紙幣ノ下落ノトキハ下落ノ場合ガアツタト、法律ガ見ルノデ、其場合ニハ塡補シテ合意ガ出來ルト云フノデスカ
(南部委員)
左樣デス
(栗塚報吿委員)
併シ矢張リ紙幣デ拂フコトモ出來ルノデアリマス
(委員長)
「ボアソナード」ガ紙幣ノミト云フ精神ナレバ、市價ヨリ生ズル貨幣ト云フコトハ云ヒソウモナイ、彼レヲ籠メテ居ルコトナレバ前ノ方モ、銀行紙幣モ、兌換銀券モ、籠テ居ラナケレバナラン
(南部委員)
貨幣ト云フハ金銀モ籠テ居ルノデス
(委員長)
市價ガ生ズルト云フノダカラ先ヅ紙幣ト見ヘル
(南部委員)
左樣バカリデハアリマセヌ
(委員長)
併シナガラ紙幣ガ不換紙幣ノミ指シテ居ルトハ見ヘナイ
(鶴田委員)
紙幣ハ差ガナイト云フガ、此所ニハ市價トアリマス
(栗塚報吿委員)
差ガナイトハ申セマセヌ
(松岡委員)
此所ハ約束デスヨ、約束ガナケレバ一圓ト書タ所ヘ紙幣ヲ突付ケラルルノデス
(鶴田委員)
要求スル當時ニアツテデス
(栗塚報吿委員)
其コトヲ約束シテ置クノデス
(鶴田委員)
辨濟スル當時ニアツテトアリマス
(栗塚報吿委員)
當時ノ相場デ初メニ合意デ約束ガ出來ルト云フノデアリマス
(松岡委員)
設令合意デモ、前條ノ樣ニ何ノ紙幣ハ取ラヌト云フ樣ナコトハ言ハレヌト云フノデス
(栗塚報吿委員)
私等ノ說ニスルト、銀行ノ紙幣ハ取レヌト云フコトハ言ヘル言ヘナイト云フノハ獨リ政府ノ強制通用ハ權力ガアルカラ言ヘヌト云フノデアリマス
(委員長)
前ノ條ト連絡シテ之モ質問スルコトニ致シマシヨウ
本條モ前條同樣起案者聞クコトニ決シ未定
第四百八十六條朗讀ス
第四百八十六條 若シ負擔シタル金額カ金貨又ハ銀貨ノ價額ヲ以テ指定セラレタルトキハ債務者ハ獨リ爲換相場ノ損失ヲ受ケ又ハ其利益ヲ得テ常ニ法律上ノ他ノ貨幣ヲ以テ義務ヲ免ルヽコトヲ得
 若シ負擔シタル金額カ金貨又ハ銀貨ヲ以テ辨濟セラルヘキコトヲ要約シタルトキモ亦同シ
 若シ辨濟カ外國ノ貨幣ヲ以テ爲サルヘキコトヲ合意シタルトキハ債務者ハ前記ノ二箇ノ條例ニ記載シタル如ク自己ノ撰擇スル法律上ノ貨幣ニテ其外國貨幣ノ價額ヲ供給シテ常ニ義務ヲ免ルヽコトヲ得
(南部委員)
此條ハ動キマセヌ
(松岡委員)
設令金貨デ定メテモ紙幣デモ爲換相場ニ違ヒガアロウガ總テ壓シ付ケラルルト云フノデスカ、ソレハ強制ノモノデナケレバナラント云フノデ
(渡委員)
我々ノ望ムノハ銀行ノ紙幣デモ何デモ相場丈ケノ全價格ヲ有スレバ何デモ良イコトニシタイト云フノデ、此所デ左樣ナルナレバ第四百八十五條モ左樣シタイト云フノデス
(南部委員)
此方ハ前ノ強制通用ノ紙幣デナケレバナランガ、前ガ變レバ自然變ハルノデアリマス
(栗塚報吿委員)
法律上ノ貨幣ト云フノハ四百八十四條ノホカナイト云フノデアリマス
(委員長)
君等ハ左樣見ルノダガ、私ハ前ノ「ボアソナード」ノ精神ハ強制通用ノ紙幣ヲ見テ、此所ハ法律上ノ貨幣ハ銀行紙幣迄這入ルト思タ、或ハ「ボアソナード」ハ前ハ金銀貨ト同ジモノト云ヒソレカラ次第ニ緩メテ居ルト思ツタノデス
(松岡委員)
私ハ矢張リ上ハ金、銀貨、紙幣ノ三種ト思ヒマス
(南部委員)
此所ハ貨幣デ紙幣ハ這入ラヌデシヨウ
(渡委員)
ソレハ這入ラヌデシヨウ
(尾崎委員)
紙幣モ這入テ居ルデシヨウ
(南部委員)
這入リマセン前ノ條ハ金ナレバ金ヲ以テ換ヘルコトガ出來、銀ナレバ銀ヲ以テ換ヘルコトガ出來ルト云フノデ、紙幣ハ這入リマセヌ
(栗塚報吿委員)
無論紙幣モ這入リマス
(南部委員)
註ニハ金銀ノコトバカリホカアリマセヌ
(委員長)
八十五條ノ法律上ノ貨幣ト云フノハ何カ
(栗塚報吿委員)
矢張リ紙幣モ這入リマス
(鶴田委員)
貨幣又ハ紙幣トアリマス、ソレカラ貨幣、紙幣、金銀ト云フハ法律上ノ貨幣ト云フト、紙モ金銀モ這入ルノデシヨウ
(栗塚報吿委員)
左樣デス、ソレダカラ法律ト云フノガアリマスノデ、法律上貨幣ト云ヘバ、其内紙幣金銀貨幣ガ這入テ居リマス、特ニ貨幣トアルハ別デス
(淸岡委員)
此ヲ書イタ時分ニハ、未ダ貨幣ハナイダロウカラ、之ヲ通貨トスルカ又ハ國貨ト云フコトハ止メテ貰イタイ
(栗塚報吿委員)
國民ノ貨幣ト云フコトデアリマス之モ矢張リ御預リデアリマス
(南部委員)
先キヘヤツテハ如何目デスカ
本條モ起案者ニ問フコトトシ未定
第四百八十七條朗讀ス
第四百八十七條 銅貨ハ五圓ヨリ多クニ付キ又五十錢已下ノ補助銀貨ハ五十圓ヨリ多クニ付キ之ヲ與フルコトヲ得ス但右ニ反スル合意アルトキハ此限ニ在ラス〔千八百十年八月十八日佛國勅令〕
(修正) 「五圓」ヲ﹇ 一圓」トシ「五十圓」ヲ「十圓」ト改ム
(栗塚報吿委員)
修正シテ「一圓」ト「十圓」トニ致シマシタ、之ハ今日日本ガ左樣ダソウデス
(淸岡委員)
之ハ民法ニ揭ゲルハ宜クナイト思ヒマス、之ハ貨幣條例ニ任カセテ宜シイ、元老院デモ其論ガアリマシタガ固ヨリ民法デヤルベキモノデハアリマセヌ
(松岡委員)
貨盤條例に讓ルガ宜シイ、之ハ一言モアリマセヌ
(渡委員)
ソレガ宜シイ
(村田委員)
貨幣條例ガアリマスカラ
(南部委員)
ソレナレバ總テ任カセテ宜シイガ、ソレデハ金ヲ持テ行コウガ、銀ヲ持テ行コウガ、構ハナイ、或ハ相場ニ依テト云フコトモ見ナケレバナランデシヨウ
(渡委員)
ソレハ相對デ宜シイガ、是非ト云フハ謂ハヌ方ガ宜シイ
(南部委員)
何ゼナレバ第四百八十四條ニ於テ撰擇ヲ以テ義務ヲ免カルルコトガ出來ルトアル以上ハドウカ半分持テト云フコトハアロウ
(渡委員)
ソレハ隨分アロウガ、ソレハ貨幣條例デ寸法ヲ極メテ居ルカラ、民法ニ規定スルニハ及バヌ
(栗塚報吿委員)
合意デ出來ルナレバ民法中ニアルベキデアリマス
(渡委員)
ソレナレバ逐條ニ「合意ハ此限ニ在ラス」トヤラナケレバナランガ、ソンナ必要ハナイ
(淸岡委員)
此ハ理窟ヲ言ハズ、行政上ノ都合ニ依テヤルノデアルカラ貨幣條例ニ任カストシマシヨウ
(南部委員)
行政上ノ都合デヤル氣遣ヒハナイ、民法上ノ權利ヲ以テ拒ムコトモ出來ルカラ、矢張リ民法ニ規定スベキモノデス
(松岡委員)
併シナガラ此ハ貨幣條例ニ任カセルガ宜シイ、金銀兩本位抔ハ世界デ八釜敷ク云フ
(村田委員)
併シ民法ニアルベキデス
(栗塚報吿委員)
義務ヲ免カルルヤ否ヤト云フノダカラ、民法ニアルベキデシヨウ
(鶴田委員)
何レデモ宜シイガ、貨幣條例ガアレバ特別法デ宜サソウナモノデス
(南部委員)
權利義務ガ分ラヌカラ左樣ナ說モアルガ、權利義務ハ民法ニ定メルハ極マツテ居リマス
(淸岡委員)
銅錢抔ハ拂ヒヲスルト一圓ノモノハ五十錢ニスルコトモアルカラ五圓ニシヨウガ、十圓ニシヨウガ、勝手ニ出來ルノデ、民法ノ壓制ヲ受クベキ民事上ノコトデハアリマセス
(松岡委員)
餘所ノ國ノ法律デ民法ニアリマスガ之ハ貨幣法ラシイ
(尾崎委員)
佛蘭西民法ニハアリマスマイ
(村田委員)
刪テモ宜イ
(南部委員)
民法ノ區域ヲ狹クスル旨意ナレバ宜イ、仕方ガナイ
(渡委員)
貨幣條例ニ讓ルトシヨウ
(栗塚報吿委員)
多數ナレバ左樣致シマシヨウ
(鶴田委員)
多數デ刪ルトシテ、先ヘヤリマシヨウ
本條ハ貨幣條例ニ讓ルコトニ決ス
第四百八十八條朗讀ス
第四百八十八條 金圓ノ貸借ニ特別ナル規則ハ第八百十八條ニ之ヲ定ム
(栗塚報吿委員)
本條中第八百十八條トアルハ翻譯デ第八百七十八條トナリマス
(松岡委員)
之ハ宜シイ、先ヘヤリマシヨウ
本條ハ「第八百十八條」トアルヲ翻譯ニテ「第八百七十八條」ト改メ他ハ原案ニ決ス
第四百八十九條朗讀ス
第四百八十九條 若シ辨濟ヲ爲スヘキ場所カ當事者ニ因リ定メラレサリシトキハ辨濟ハ債務者ノ現實ノ住所ニ於テ之ヲ爲ス但或ル契約ニ關シ後ニ記載スルモノ及ヒ第三百五十三條ニ從ヒ特定物ノ引渡ニ關スル條例ハ此限ニ在ラス〔第千二百四十七條〕
 若シ當事者中其住所ニ於テ辨濟ノ爲サルヘキ者カ詐僞ナクシテ住所ヲ變換シタルトキハ辨濟ハ其新住所ニ於テ之ヲ爲ス然レトモ其當事者ハ爲換相場ノ差額及ヒ人ノ往復又ハ負擔シタル物ノ運送ノ補足費用ヲ他ノ當事者ニ計算ス
 辨濟ノ其他ノ費用ハ債務者ノ負擔タリ〔第千二百四十七條〕
(鶴田委員)
「ナサレタリ」ハ「ナシタリ」ニシマシヨウ
(松岡委員)
「場所ヲ當事者カ定メサリシトキハ」云々トシテ宜シイ
(栗塚報吿委員)
「辨濟ヲ受クヘキモノ」ニシテハ如何
(尾崎委員)
受クベキデス
(栗塚報吿委員)
私ガ貴君ニ馬ヲ賣レバ馬ヲ持テ來ナケレバナラント云フノデス
(淸岡委員)
辨濟ヲ爲スベキモノガ轉宅シタトキデ、私ガ義務者デ芝ニ居タノガ、淺草ヘ行タトキト云フノダカラ爲スモノデ宜イ
(尾崎委員)
現住所ニ於テ之ヲ爲スト云フノダカラ
(淸岡委員)
拂ヒヲスル債務者ヲ逐缺ケナケレバナラン其費用デシヨウ、其費用ハ逐缺ケタ人ニ損ハサセラレナイカラ、辨濟ヲ爲スベキ者ガデス
(尾崎委員)
辨濟ヲ爲スベキデス
(南部委員)
「受クヘキ」ト云テモ「爲サルヘキ」ト云テモ往カヌ
(尾崎委員)
當事者中トアルカラ受クベキハ惡イ
(松岡委員)
辨濟スルノ住所ヲ定メナケレバナラン、一町ト極メタニ、二町トナツタラ往復ガ掛ルカラ、其費用ハ轉宅シタ方カラ拂ハナケレバナラン方ノ旨意ニ立テナケレバナランデシヨウ
(尾崎委員)
爲ス場所デス
(松岡委員)
辨濟ヲ爲スベキ者ガデ宜シイ
(村田委員)
若シ詐欺デ逃ゲタラ如何シマスカ
(南部委員)
詐欺ハ別デス
(南部委員)
兩方逃ゲテ居ルカラ爲サルベキデ宜イデシヨウ
(鶴田委員)
ケレドモ爲サルベキデハ定マツタ場合ヲ云フノデスカ
(南部委員)
何レデモ宜イデシヨウ
(鶴田委員)
場所ヲ極メナケレバナラン
(南部委員)
債務者ハ無論デアリマス
(尾崎委員)
此ハ原案ガ宜シイ
(淸岡委員)
爲スベキ者デモ宜イデシヨウ
(鶴田委員)
ナサルベキデ、兩方ニ係ルトハ讀メマセヌ
(南部委員)
債權者ノ住所デ約定シタトキモ、兩方ヲ見ルノデアリマスカラ「ナサルヘキ」デ宜イ
(栗塚報吿委員)
爲スベキト云フト、債務者ノモノニナルカラ、兩方掛ケナケレバナラン
(松岡委員)
此所バカリ「ナサルヘキ」ト書イタラ兩方掛ルト見ヘルカ知ラヌ
(南部委員)
殊更ニ置クヨリ仕方ガナイ
(松岡委員)
一種特別ニヤツテ置キマスカ
(鶴田委員)
詰リ引渡人ガ移タトキデスカ
(栗塚報吿委員)
何レカ分リマセヌ
(松岡委員)
貴君ノ家デ引渡スト、約束スレバ私ノ方デ持テ行カナケレバナラン、私ノ家デ渡スト云ヘバ、貴君ガ取リニ來ナケレバナラン
(栗塚報吿委員)
「抑モ辨濟ノ場合ハ結約者ノ爲メ頗ル重要ナルコト多シトス」ト註ニモアリマス、依テ何レヘモ付カズシテ宜イデシヨウ
(委員長)
「場所ヲ當事者カ定メサリシ」云々トシテ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ「若シ辨濟ヲ爲スヘキ場所ヲ當事者カ定メサリシトキハ」ト改メ他ハ原案ニ決ス
第四百九十條朗讀ス
第四百九十條 辨濟ヲ爲スヘキ期節ニ關スルモノハ第四百二十三條乃至第四百二十八條ニ於テ之ヲ規定セリ
 若シ辨濟ノ爲メ定メタル日カ法律上ノ休暇日ナルトキハ辨濟ハ其翌日ニアラサレハ之ヲ要求スルコトヲ得ス〔佛商第百六十二條第二項〕
(鶴田委員)
法律上ノ休暇日トシテ置クノハ宜シイカ
(松岡委員)
所ガ商法ニハ祭日迄見テアリマスカラ、法律上ノ休暇ト云フハ如何ナル休暇ト云フハオカシイデハナイカ
(淸岡委員)
法律上ノ休暇ト云フト親ノ祭リモ休暇ヲ賜ハル
(委員長)
宜ケレバ此デ置テ食事ニ致シマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
(委員長)
始メマシヨウ
第四百九十一條朗讀ス
第二款 辨濟ノ充當
第四百九十一條 同一ノ債權者ニ對シ同一ノ本性ノ數箇ノ債務ヲ有スル債務者カ之ヲ悉ク消スコトヲ得サル辨濟ヲ爲ストキハ債務者ハ辨濟ノ當時ニ於テ其何レノ債務ヲ償還セントスルヤノ意ヲ述ヘ且此ノ如ク爲シタル充當ヲ受取證書中ニ記入セシムルコトヲ得〔第千二百五十三條〕
 然レトモ債務者ハ債權者ノ承諾ヲ得ルニアラサレハ債權者ノ利益ノ爲メ定メタル期限ノ至ラサル債務ニ付キ充當ヲ爲シ又費用及ヒ利息前ニ元金ニ付キ充當ヲ爲シ又一分宛數箇ノ債務ニ付キ充當ヲ爲スコトヲ得ス〔第千二百五十四條〕
(修正) 第二項「利息前ニ」ヲ「利息ニ先チ」ト改ム
(淸岡委員)
「償還セントスルノ意ヲ述ヘ且」云々トシタイ
(南部委員)
「且其充當」トシテモ宜シイ
(村田委員)
「其充當ヲ」デ宜サソウナモノデス
(松岡委員)
「此ノ如ク爲シタル」ハ何ノコトヤラ分ラヌカラ、之ハ「其充當」トシマシヨウ
(渡委員)
左樣致シマシヨウ「且」モ要ラヌデシヨウ
(栗塚報吿委員)
「且」ハナイト往カヌ
(委員長)
先ヘヤリマシヨウ
本條ハ「セントスルヤノ」「ヤ」ノ一字ヲ刪リ此ノ如ク爲シタルノ下「其」ノ一字ヲ加ヘ、第二項ハ「利息前ニ」トアルヲ「利息ニ先チ」ト修正シ其他ハ原案ニ決ス
第四百九十二條朗讀ス
第四百九十二條 債務者ニ因レル有効ナル充當ノ缺無ニ於テハ債權者ハ自ラ自由ニ受取證書ニ於テ辨濟ノ充當ヲ爲スコトヲ得但會社契約ニ關シ第七百七十七條ニ記載スルモノハ此限ニ在ラス〔第千八百四十八條、第千八百四十九條〕
 若シ債務者カ異議ナク又異議ヲ留保セスシテ受取證書ヲ受諾シタルトキハ債務者ハ自己ノ方ニ錯誤アリ又ハ債權者ノ方ニ詐欺若クハ欺瞞アリタルトキニアラサレハ充當ヲ非難スルコトヲ得ス〔第千二百五十五條〕
(修正) 第一項「證書」ノ下「中」ノ一字ヲ加ヘ「ニ」ノ下「於テ」ノ二字ヲ刪ル同條第二項「若クハ」ヲ「卽チ」ト改ム
(鶴田委員)
有効ナルハ前ニ何レノ債務者ヲ償還セントスルト云フコトデスカ
(栗塚報吿委員)
左樣デス
(鶴田委員)
無効ナル充當デハナイカ
(南部委員)
無効ナル充當デハ往カヌノデ、充當ヲスルカ、センカ、又ハ充當ヲシテモ、無効ナル充當ノ場合ニハト云フコトデアリマス
(鶴田委員)
其場合ニ自ラ債權者ガ充當スルト
(栗塚報吿委員)
貴君ニ私ガ三口借リガアル、所ヘ金ヲ持テ行テ、一ト口ホカ入ラントキ、私ハ何トモ言ハヌトキハ、私ノ上ゲマシタ金ハ、貴君ハ勝手ニナサルノデ、三口ノ内何レカヲ消スノデアリマス
(鶴田委員)
ソレガ有効ナル充當ト云フカ
(栗塚報吿委員)
私カラシナカツタトキデアリマス
(鶴田委員)
充當ヲシナカツタトキト見ヘル
(南部委員)
此所ハ債務者ヨリ有効ナル充當ヲナサザリシニ於テハトシテ如何デスカ
(栗塚報吿委員)
宜シイデシヨウ
(村田委員)
今迄モ缺無ト云フコトヲヤツタカラ
(南部委員)
ソレナラバ「ニ因レル」モ宜イデシヨウ
(鶴田委員)
「因レル」ハ往カヌ
(松岡委員)
「自由」ハ往カヌ
(南部委員)
「自由ニ自ラ」トシテハ如何
(村田委員)
宜イデシヨウ
(松岡委員)
宜イトシテ、先ヘヤリマシヨウ
本條第一項「債務者ヨリ有効ナル充當ヲ爲ササルニ於テハ」云云トシ第二項「若シ」ヲ「卽チ」ト改メ其他ハ原案ニ決ス
第四百九十三條朗讀ス
第四百九十三條 若シ充當カ債務者ニ因テモ又債權者ニ因テモ有効ニ爲サレサルトキハ充當カ當然成ルコト左ノ如シ
 第一 期限至リタル債務ヲ先ニシ期限ノ至ラサル債務ヲ後ニス
 第二 費用及ヒ利息ヲ先ニシ元金ヲ後ニス
 第三 若シ債務カ總テ期限ニ至リ又ハ總テ期限ニ至ラサルトキハ債務者カ辨償スルコトニ最モ利益ヲ有スルモノヲ先ニス
 第四 若シ債務者カ此ヲ辨償スルヨリモ彼ヲ辨償スルニ付テモ最早利益ヲ有セサルトキハ最モ先キ期限ノ至リタル債務又ハ滿期ノ最モ近キ債務ヲ先キニス
 第五 諸事カ相ヒ均シキトキハ充當ハ割合ニ應シテ之ヲ爲ス〔第千二百五十六條〕
(栗塚報吿委員)
本條ノ「第一期限至リタル」トアルヲ「期限ノ」ノトシテ「ノ」ノ一字ヲ加ヘ及ビ第二ノ「元金」トアルハ「元本」ト翻譯デ直リマス、ソレカラ第四ノ「若シ債務者カ此辨償ヲスルニヨリ」トアル「ヨリ」ヲ刪リ「辨償ヲスルニ付テハ」ト致シマシタ、ソレカラ第五ハ「總テノ債務者カ何レノ點ニ於テモ相均シキトキハ」云々ト致シマス
(松岡委員)
「債務者ヨリモ債權者ヨリモ有効ニ爲ササリシ充當ヲ當然ニ」トシテハ如何
(南部委員)
有効ニ充當ヲ爲サザリシトキハトシテハ如何
(松岡委員)
宜カロウ
(淸岡委員)
「當然ニ」トシテハ如何
(尾崎委員)
第五モ修正ガ宜シイ
(鶴田委員)
先ヘヤリマシヨウ
本條ハ第一項ハ「若シ債務者ヨリモ又債權者ヨリモ有効ニ充當ヲ爲ササルトキハ充當カ當然ニ成ルコト左ノ如シ」トシ第一ハ「期限ノ至リタル」云々トシ第二「元金」トアルハ「元本」ト改メ第四「若シ債務者カ此ヲ辨償スルヨリ」トアル「ヨリ」ヲ「ニ付テモ」トシ第五「總テノ債務者カ何レノ點ニ於テモ相均シキ」云々ト改ムル報吿委員ノ修正ニ決ス
第四百九十四條朗讀ス
第四百九十四條 前記ノ諸規則ハ交互計算ニテ爲シタル拂込ニ之ヲ適用セス此拂込ハ之ヲ爲シタル者ノ貸方ニ之ヲ記入ス
(松岡委員)
之ハ申分ナシ
(尾崎委員)
本日ハ之迄ニ致シマス
本條ハ原案ニ決ス