法律取調委員会 民法草案議事筆記 第32回
参考原資料
- 法律取調委員会 民法草案第二編人權ノ部議事筆記 , 自 第二十九回 至 第三十四回 [国立国会図書館デジタルコレクション]
備考
- 未校正のテキストデータです.
民法草按人權ノ部議事筆記第三十二回
自第四百四十八條至第四百六十二條
明治二十一年二月二十九日午前第九時二十分開議
(委員長)
ヤリマシヨウ
第四百四十八條朗讀ス
第四百四十八條 義務カ各別ナル二箇又ハ數箇ノ目的ヲ有スルモ債務者カ其中ノ一箇又ハ數箇ノ給付ニ因リ義務ヲ免ルヘキトキハ其義務ハ擇一ナリ〔千百八十二條〕
與フヘキ物ノ撰擇ハ債務者ニ屬ス但其撰擇カ債權者ニ許與セラレタルトキハ此限リニ在ラス〔千百九十條〕
然レトモ債權者ハ擇一ニテ負擔シタル數箇ノ物ノ一分ヲ受クルコトヲ債權者ニ強ヒ又債權者ハ其一分ヲ與フルコトヲ債務者ニ強ユルコトヲ得ス〔千百九十一條〕
(修正案) 末項一分ノ上ニ何レモ「各」ノ字ヲ挿入ス
(栗塚報吿委員)
三項ノ一分ノ上ニ「各」ト云フ字ヲ入レマス原文ノ意味ハ「各」ト云フ字ガ入テ居ルコトニナツテ居リマス、米ヲ十俵カ大豆ヲ十俵ヤルト云フテ置キマシタ其中米ヲ五俵豆ヲ五俵ト云フコトヲ債權者ニ誣ユルコトハ出來ナイ、勿論貴君ニ私ガ米ヲ十俵カ又ハ大豆ヲ十俵カ上ゲレバ私ノ義務ハ免カレル、然ルニ十俵ノ中ノ何俵カヲ上ゲテ義務ヲ免レルコトハ出來ナイ、其レデ「各一分」ト云フノガ宜シイト思ヒマス
(淸岡委員)
目的ヲ有スルト云フ「有スル」ノ字ハナケレバナリマセンカ、上ノ條デハ刪リマシタガ
(栗塚報吿委員)
數個ノ目的ヲ有スルデ御座ヒマスカラ刪ルコトハ出來マセン
(淸岡委員)
「目的トスルモノ」デ宜カロウ
(栗塚報吿委員)
「義務ノ目的カ各別ナル二箇又ハ數個ナルトキ」トスレバ宜シウ御座リマスガ、原案ノ儘デ只「有スル」ト云フ字ヲ刪ルコトハ出來マセン
(松岡委員)
「數個ヲ目的トスル」トハ云ヘセンカ
(栗塚報吿委員)
ソウハ云ヘマセン、目的ノ爲メニ何々ヲ以テ居ル類定物包括物ヲ目的トシテ居ル
(南部委員)
「撰擇ヲ債權者ニ許與シタルトキハ」トシテ宜カロウ(栗塚報吿委員)宜シウ御座ヒマス
(鶴田委員)
第三項ハ如何ナル意味デアリマスカ
(栗塚報吿委員)
私ガ擇一ノ義務ヲ持テ居ルト假令バ米ヲ十俵上ゲマスカ又ハ大豆ヲ十俵上ゲマスカト云フ約束ヲシテ居ル、其トキハ米ヲ十俵上レバ大豆ヲ上ゲズトモ宜シイ、又大豆ヲ十俵上ゲレバ米ハ上ゲズトモ宜シイ、處ガ私ガ米十俵ノ内七俵丈ケ御受取ナサイト云フコトハ出來ナイ、又米七俵ニ大豆七俵ヲ上ゲルト云フコトモ出來ナイト云フノデ御座リマス
(鶴田委員)
宜シウ御座ヒマシヨウ
(委員長)
宜シケレバ先キヘ行キマシヨウ
本條ハ左ノ如ク決ス
第二項「撰擇カ債權者ニ許與セラレタルトキ」ヲ「撰擇ヲ債權者ニ許與シタルトキ」ト改ム
第三項「一分ヲ」トアルハ何レモ「各一分ヲ」ト改ム
第四百四十九條朗讀ス
舊第四百五十三條 撰擇ヲ有スル當事者カ孰レタルヲ問ハス若シ二箇ノ物ノ一カ意外ノ事ニ因リ滅失シタルトキハ義務ハ單純ト成リ殘ル所ノ物ニ存ス〔第千百九十三條第一項〕
若シ二箇ノ物カ全ク滅失シタルトキハ義務ハ消ユ
若シ二箇ノ物ノ一カ意外事又ハ不可抗力ニ因リ其價額ノ半ヨリ多クニ付キ損壞又ハ喪失シタルトキハ其物ハ最早債務者ノ撰擇ノ目的タルコトヲ得ス
(栗塚報吿委員)
「多クニ付キ」ハ「多キ部分ニ付キ」ト翻譯デ改メマス
(淸岡委員)
「孰レタルヲ問ハス」ト云フノハ如何ナルコトデスカ(栗塚報吿委員)義務者デモ債權者デモト云フ意味デ御座ヒマス(淸岡委員)ソレデハ「當事者カ」デハナイ「當事者ノ」ダロウ(南部委員)「當事者ノ」デ宜シイ
(尾崎委員)
二項ノ物ガ滅失スルノハ自己ノ過愆デモアツテ自然ニ消失スル物ノ賣買ノトキ向フカラ代金ヲ取リ、此方カラ品物ヲヤルト云フト代金ハ只取リニナルカ
(栗塚報吿委員)
ソウデハアリマセン、契約ハ成立テ居リマスガ(尾崎委員)成立テ居ルガ向フノ所有物ニナツテ居ル故ニ消ヘルト云フノデ御座ヒマスカ
(栗塚報吿委員)
左樣デス、成立テ居レバ金ハ唯取リデス
(松岡委員)
特定デナケレバイケナイ、米何石ト云フノデハ何時迄經テモ消ヘ樣ハナイ
(鶴田委員)
物ニ依テ消ヘルノダ
(栗塚報吿委員)
亞刺比亞ノ極ク良ヒ馬ト仙臺馬ト孰レカ上ゲマスト云フト亞刺比亞馬ガ死ネバ仙臺馬ヲ上ゲネバナリマセンガ、兩方トモ死ネバ義務ハ免レル
(鶴田委員)
眞中ニ意外ノ事ト云フ字ノアリマセンノハ前ノヲ受ケタノデアリマシヨウカ、仕舞ニモアルノニ眞中バカリナイ
(尾崎委員)
矢張リ眞中モ意外ノ事ダロウ
(鶴田委員)
ソウシテ次ノ項ニハ意外ノ事バカリデモナク不可抗力モアル
(淸岡委員)
二項ハ前ノ項ト一緒ニシテ仕舞ツタラ宜カロウ、二項ニ分ケタモノダカラ意外ノ事ガナイト云フ論ガ出ルノダ
(栗塚報吿委員)
「若シ二箇ノ物カ全ク滅失シタルトキハ義務ハ消ユ」ト云フ下ニ佛蘭西ノ千百九十五條ガ引イテアリマス、其二ケ條カラ以テ來タカラ二項ニシタノダロウト思ヒマス
(鶴田委員)
成程出ガ違ツテ居ルカラ別ニシタノカ
(尾崎委員)
一緒ニシタ方ガ宜シイ
(委員長)
前ニバカリ意外ノ事又ハ不可抗力ト書イテ、後ニハ書カズシテ置ケバ宜シイノダ、ソシテ仕舞ニ不可抗力トアルカラ違フカト思ヘバ違ハナイ
(松岡委員)
意外ノ事ト云ヘバ不可抗力ハ何時デモ見ヘルノデシヨウ
(栗塚報吿委員)
之ハ二項ヲ一項ニ併セテモ何モ差支ヘアリマセン(南部委員)併シ第一項ハ滅失シタコト次ギハ二箇ノ物ガ滅失シタコト三項ハ半以上損壞シタコトヲ云フノダカラ矢張リ別ニスルガ宜シイ
(栗塚報吿委員)
末項ニ不可抗力ヲ入レタト云フ講釋モ何モアリマセン
(渡委員)
末項ノ「不可抗力」ヲ刪ルガ宜シイ
(村田委員)
刪ルガ宜シイ
(栗塚報吿委員)
ソレデハ不可抗力ヲ刪テ「意外ノ事ニ因リ」ト致シマシヨウ
(委員長)
「又ハ不可抗力」ヲ刪リマス
(渡委員)
前ノハ滅失後ノハ喪失ト云フノハ分ラヌ、譯字ハ措テ事柄ニ違ヒガアリマスカ
(栗塚報吿委員)
違ヒハアリマセン「ペルシユー」ハ「失フ」ト云ヒ「ペリユー」ハ「滅フル」ト云フノデス
(渡委員)
譯字ハ當ツテ居ルガ、事柄ガ違ハナケレバ同一ニシ度イ(栗塚報吿委員)滅失ト云フハ滅ビテ仕舞フコトト死ンデ仕舞フコト、喪失トハ失フコトデ原文ガ違ツテ居リマスカラ此儘ニ御置キヲ願ヒマス
(委員長)
此等ハ後ニ調ベテ原案ノ方ヲ變ヘテ貰ヘバ宜シイカラ標シヲ付ケテ置ヒテ貰ヒマシヨウ
(南部委員)
後ニ調ベテ同ジナレバ一緒ニスルコトニシマシヨウ(委員長)其レデハ次ギニ移リマス
本條ハ左ノ如ク決ス
第一項「當事者カ」ヲ「當事者ノ」ト改ム
第三項「又ハ不可抗力」ノ六字ヲ削ル
第四百五十條朗讀ス
舊第四百五十四條 若シ撰擇ヲ有スル當事者カ數人ノ相續人ヲ遺シテ死亡シタルトキハ其數人ノ相續人ハ不可分義務ノ事項ニ於テ記シタル如ク唯一ノ撰擇ヲ行フ爲メ協合スルコトヲ要ス
或ハ實物提供ノ方法ニテ債權者ニ因リ或ハ正當ナル方式ニ於ケル請求ニテ債權者ニ因リ一旦有効ニ行ハレタル撰擇ハ他ノ當事者ノ承諾ナクシテ最早言消サルヽコトヲ得ス
(栗塚報吿委員)
有効ニ行ハレタル撰擇ハ御分リニナリマスカ(松岡委員)「行フタル」ト云テモ宜カロウ
(栗塚報吿委員)
左樣デス「行フタル撰擇ハ他ノ當事者ノ承諾ナクシテ最早之ヲ言消スコトヲ得ス」デ御座ヒマス
(松岡委員)
有効ニ撰擇ト云フノハ貴君ガ馬ヲ持テ行キ、向フガ受取タノモ之ニナリマシヨウ
(栗塚報吿委員)
ソウデス
(鶴田委員)
「債務者ニ因リ債權者ニ因リ」ハ「債務者ヨリ債權者ヨリ」デハイケマセンカ
(栗塚報吿委員)
左樣デス人デ御座ヒマスカラ「ヨリ」ノ方ガ宜シヒカ知レマセン
(南部委員)
「行ハレタル」トアレバ「ニ因リ」デナケレバナリマセンガ「行フタル」トスレバ「ヨリ」デ宜シイ
(委員長)
修正シマシヨウ
(松岡委員)
四十九條ノ末項ハ「目的トスルコトヲ得ス」ガ宜シイ(栗塚報吿委員)一部分ガ消ヘタレバ目的トハナレヌト云フノハ酷デ御座ヒマシヨウ、米ヲ十俵上ゲ樣ト云フテ一俵消ヘタレバ目的物ニナレヌト云フノハ酷デ御座イマシヨウ
(淸岡委員)
半分ト云フト四分九厘迄燒ケタトカ、損壞シタトカ云フトキニ其燒ケタ物ヲ
(鶴田委員)
缺ケタ物ト全キ物トアルトキハ缺ケタ方ヲ貴君ニ上ゲマシヨウ
(栗塚報吿委員)
孰レカ撰ブコトニナルガ、良ヒ方ヲ取テ、惡ヒ方ヲ上ゲルト云フコトハ出來マセン二ツトモ十分ノ四ガ缺ケタルトキ五分以上遺ツテ居レバ目的トナルノデス
(淸岡委員)
茲ハ二ツノ物ノ一ツガ、デス自分ノ過愆ナラ無論ノ話シダ
(栗塚報吿委員)
併シ十分ノ物ガ一部缺ケテモイケマセンカ、唯十分ノ物ガ五分ト云フノガ氣ニ入ラヌノデ御座ヒマシヨウカ
(淸岡委員)
一部缺ケテモ暇ノ付カヌ物ガ御座ヒマス、假令バ米三俵ノ内一俵燒ケテモ、大豆三俵ト米二俵ノトキハ米二俵ノ方ガ良イカラ強テ爭ハズトモ宜ヒガ、物ニ依テハ半分ドコロデハナイ、三分通リ損壞シテモ玉ニ瑕デ頗ル困ル、其レハ半分ヨリ多キ部分デナケレバ撰擇シテ債權者ニ突キ付ケルト云フコトハ道理上ニ於テ爲シ得ザル話シダ
(委員長)
貴君ノ仰シヤルノハ前條デスカ
(淸岡委員)
前條デス
(栗塚報吿委員)
昨日ノ論ト同ジコトデス
(南部委員)
彼レハ未必條件デ、之ハ擇一義務デス
(鶴田委員)
之ハ二ツアツテ一ツガ壞ハレタガ壞ハレガ尠ナイカラ之ヲ取ツテ呉レト云フテ全キ物ヲヤラズシテ、濟ムカ
(南部委員)
其レハ擇ブ權ガアルカラ仕方ガナイ
(淸岡委員)
擇ブ權ヲ與ヘタ丈ケノコトデス、其レヲ半分燒ケタトキニハ最初ト同等ノ權ヲ持テ居ルト云フコトハナイ
(栗塚報吿委員)
此書物ヲ上ゲマスカ、此本ヲ上ルカ孰レカデ宜シイ此方ノ本ハ大變汚レタルトキ此方ヲ上ゲマシヨウト云フ
(尾崎委員)
其レハ私ガ承知シタ場合ノトキデアリマシヨウ、ソウスルト、淸岡サンノ云フ通リ大變困ル元トノ約束ハ二ツトモ變ハリハナイト思テ約束シタ其レヲ壞ハレタ物ヲ受取レト云フコトハ出來ナイ
(南部委員)
若シ一ノ物ナラバ如何シマス、貴君ノ御損ニナリマシヨウ、壞レタノハ天然カラ來タノデドウモ仕方ガナイ
(淸岡委員)
之ハ恩惠上ノ契約ナラ孰レデモ仕樣ガナイケレドモ恩惠上ト云フモノデモナイ、假令バ尾崎サンニ借錢ガアル、併シ私ハ金ヲ拂フ譯ニハ行カヌ、私ガ田地ヲ持テ居ル、家ヲ持テ居ル、其レヲ上ゲマシヨウ何卒ソレデ御勘辨下サイ、處ガ家ガ半分燒ケタ、此半分ヲ尾崎サンニ上ゲルト云フ其樣ナ不道徳ナ事ハ出來ナイ
(南部委員)
其レデハ特定物ノトキ一ノ物ガ半分燒ケタルトキ其レヲ受取レト云フノハ酷ダト云フノト同ジコトダ
(松岡委員)
其レトハ違フ
(栗塚報吿委員)
其位ノモノデアルカ半分ト云フ處デ制限ヲ付ケテ居リマス、一體ヲ云フト遺ラズ無クナツテモ損ヲシナケレバナリマセン
(松岡委員)
一ツノ時分ニハ如何スルカト云フト、夫レハ茲ヘ持テ來テハ惡ルイ
(栗塚報吿委員)
恰モ採擇ノ權ガ債權者ニ在ルノト同ジニナル、其レガ目的物トナレヌトナレバイケマセンガ、併シ一部缺ケテ居レバ私ニ選人權ガアル、貴君ニ權ガアルカラ貴君ノ欲スル物ヲ採ルカ左樣ニハイカヌ目的物ニナレルカナレヌカト云フニ全キ通リニナレル、毀損ノトキデモ一部分ノトキハ出來ル、恰モ表紙ガ取レテモ書籍ニナレルト云フノデス、唯半バト定メルノガ惡ルイト云フ御論デ御座リマシヨウ、十分ノ一ヲ十分ノ二トスルト云フ御論デ御座ヒマシヨウ
(淸岡委員)
一ノトキハ仕方ガナイ、此通リニ壞レマシタ、併シ最初約束モ御座ルカラト云ツテ上ゲルナラバ宜シイガ二ツアツテ一ツガ燒ケテ良ヒ物ヲ遺シテ置ヒテ燒ケタ方ヲヤルノハ良クナイト云フノデス
(栗塚報吿委員)
其レハ撰擇ノ權ハ私ノ方ニ在ル仕方ガナイ
(淸岡委員)
撰擇ノ權ガアルト云テ良イ物ヲ遺シテ、惡イ物ヲヤルト云フ事ハナイ、單一ノトキハ仕方ガナイガ、二ツノ物ガアツテ半分ヤツテ目的トナルト云フコトハナイ
(南部委員)
恰度權衡ヲ得テ居リマス採擇ノ權ガ債權者ニ在ルト良ヒモノヲ取ル
(渡委員)
昨日ノ四百三十九條ノ精神カラ出テ來タノデス
(淸岡委員)
二ツアツタトキ一ツガ傷デハ約束ヲシタトキノ儘ナレバ宜ヒガ、意外ノ事デ傷ミタルトキハ傷ミタル物ヲヤル
(委員長)
其レハ債權者ノ方ニ權力ノアツタトキト同ジニナル(栗塚報吿委員)始終債權者ノ方ニ擇一ツ權ヲ持居ルトキバカリ御想像ニナルノデス
(鶴田委員)
ドウモ仕方ガナイ
(委員長)
一方ヲ良クスレバ一方ガ惡クナルカラ仕方ガナイ
(栗塚報吿委員)
成ル可クナラ撰擇ノ權ヲ債權者ガ有シテ約束スル樣ニスレバ宜シウ御座リマス
(委員長)
其氣遣ヒノアルトキハ最初約束シタトキ定メテ置ケバ宜シイ
(栗塚報吿委員)
目的物ガ効能ノナキコトトナリタルトキ假令バ馬ノ足ガ一本折レタルトキハ、イケヌゾヨ其レハ品質ノ處デ出來ルダロウト思ヒマス、ソウスレバ目的タルコトハ出來マセン
(委員長)
先キヘ行キマシヨウ
本條ハ左ノ如ク決ス
第二項「債務者ニ因リ」ヲ「債務者ヨリ」ト「債權者ニ因リ」ヲ「債權者ヨリ」ト改メ「行ハレタル」ヲ「行フタル」ト改メ「言消サルルコトヲ得ス」ヲ「之ヲ言消スコトヲ得ス」ト改ム
第四百五十一條朗讀ス
舊第四百四十九條 撰擇カ債務者ニ屬スルトキ二箇ノ物ノ一カ其過愆ニ因リ滅失シタルトキハ義務ハ其殘ル所ノ物ニ存シ債務者ハ滅失シタル物ノ價額ヲ與ヘテ其義務ヲ免ルヽコトヲ得ス〔第千百九十三條第一項〕
若シ二個ノ物カ債務者ノ過愆ニテ順次ニ滅失シタルトキハ債務者ハ後ニ滅失シタル物ノ代價ヲ負擔ス
又二箇ノ物カ同時ニ滅失シテ債務者カ其二箇ニ對シ又ハ一箇ノミニ對シ過愆アルトキハ撰擇ハ一又ハ他ノ物ノ價額ヲ得ル爲メ債權者ニ轉移ス〔第千百九十三條第二項〕
(鶴田委員)
「三項ノ一又ハ他ノ物ノ額」ト云フノハ一ツガ自分ノ過愆ヲ滅失シタ
(栗塚報吿委員)
二ツガ無クナツテ、一ツカ又ハ二ツニ對シテ過愆ガアルトキデス
(鶴田委員)
二ツトモ過愆デ一時ニ滅失シタトキデモ擇リ方ハ義務者ニ持セテ宜カロウ
(南部委員)
ソウシナイト自分ガ壞シテ置ク樣ニナル一ツハ天災デ壞ハシテ、一ツハ自分ガ壞シタルトキ
(鶴田委員)
之ハ天然デ壞ハレタトキハ仕方ガナイ
(栗塚報吿委員)
二個ノ物ガ無クナツテ一箇ノ物ニ對シテ權ノアルトキノ場合ヲ想像シテ御覽ナサイ
(鶴田委員)
一箇ガ天災デ壞ハレ一個ガ過愆デ壞ハレタルトキハ一ハ代價ニナルデシヨウ
(尾崎委員)
ソレハ左樣ダ
(松岡委員)
過愆ノ物ガ一秒先キヘ無クナリ、意外ノ方ガ一秒遲クナレバ遲イ方ガ遺リマシヨウ
(鶴田委員)
二個トモ天然デ無クナレバ義務ガ無クナル、一個ナレバ一ツ無クナル
(南部委員)
其レガ分リ惡イデシヨウ
(栗塚報吿委員)
第三項ハ愈微妙ダ、二個ノ物ガ同時ニ滅盡シ其二個ノ滅盡ニ付キ又ハ其一ノ滅盡ニ付キ債務者ノ過愆ノ場合ヲ想像シテ居ル、抑モ二個ノ物同時ニ滅盡シ債務者其一ニ就テハ過愆アツテ其他ノ一ニ就テハ過愆ナシトノコトハ最初一見スル處ニテハ實奇怪ナル樣ニ見ヘル、然レドモ洪水若クハ火災ノ際債務者少クモ二個ノ物ノ中其一ヲ救フコトヲ得可カリシニ配慮ニ乏シク二個ノ物共ニ救フコトヲ得ザリシトキ、又假令バ牽挽ノ馬若クハ乘馬ヲ約務シタルトキノ如キハ固ヨリ其乘馬ヲ以テ車ヲ牽カシム可カラザルニ乘馬ヲモ牽挽ノ用ニ供シテ遂ニ河中ニ溺ラシメタリトセンニ此債務者ハ乘馬ニ付テハ嘗テ豫期ス可カラザル意外ノ變災ヲ惹起シタルモノナレバ乘馬ニ付テハ過愆ガアル、然レドモ牽挽ノ馬ニ付テハ過愆ガナイ、次條ノ說明モ亦用ユルコトガ出來ルトアリマス
(鶴田委員)
天災ノ方ガ死ンデ仕舞ツタカラ仕方ガナイガ、自分デ乘馬ニ荷ヲ積ケテ牽ヒテ死ンダノハ責ヲ負ハナケレバナリマセン(松岡委員)先刻淸岡サンノ說ヲ贊成シタトキカラ見レバ此場合ハ衝突シハシマセンカ、貴君ノ說ニスレバ債務者ニ撰擇ノ權ヲ持タセルダロウ
(鶴田委員)
撰擇ノ權ハ債務者ニ持タセナケレバナリマセン
(松岡委員)
自分ガ不調法デ良ヒ物ヲ天災デ無クシタ、ソウシテ惡イモノハ自分ノ過チデナクシテ惡イモノノ錢ヲヤルト云フ
(鶴田委員)
過愆ノアル物ガ一ツデアツテ過愆ノ方ヲ償ヘバ宜シイ、一個ノ方ハ誰レガ持ツテ居テモ滅失スルノダ
(栗塚報吿委員)
二個ニ對シテ過愆ノアルトキハ宜シイト云フノデス
(鶴田委員)
其レハ第二ノ論デス、先ヅ第一ハ天災ニ入ラセル譯ハナイ、前ノ處モ豫テ債務者ガ選ムコトニナレバ此處モ債務者ガ擇バナケレバナリマセン
(栗塚報吿委員)
二個ノ物ガアルトキハ債權者ノ轉移スルコトハ御許シニナリマシヨウカ
(南部委員)
其レモイケナイノダロウ
(鶴田委員)
其方ヲ第一ニ訴ヘタデスカ
(栗塚報吿委員)
私ガ乘馬カ牽馬ヲ上ゲマシヨウト云テ二ツトモ無クシタトキハ二ツトモ不調法ダカラ貴君ガ乘馬ノ代價ヲ呉レト仰シヤツテモ、牽馬ノ代價ヲ呉レト云テモ宜シイト云フコトハ御許シニナルト思ヒマス
(南部委員)
總テノ條ヲ御覽ニナレバ分リマス、次ギノ條デハ債權者ガ過愆デ破リタル場合ニ二個ノ物ノ一ツガ債權者ノ過愆デ一箇ガ意外ノ事デ破レタルトキハ債務者ガ義務ヲ免カレル若シ左樣デナイトキハ債權者ガ壞ハシテ良ヒ物ヲ取ル樣ニナルカラ其權衡ヲ見ナケレバナリマセン
(鶴田委員)
債務者ノ方デ孰レデモ宜シイト云フ權ヲ持ツテ居ルト云フノヲ債權者ノ方デ壞ハセバ債務者ノ方ニ權ガ持タセテアル、元來擇一ノ權ハ孰レカ適法ノ權利ガアルト云フカラ前ノ條モ負ケテ於テ茲ニ至テ前ノ方ニ移ルト云フコトハナイ
(栗塚報吿委員)
此書籍ヲ貴君ニ上ゲルト云テ私ノ處爲デ滅盡サセタトキ私ニ權利ガアルト云フコトハ云ヘナイ
(鶴田委員)
前ノ場合デ表紙ノ破レタル方ヲヤルト云ツテ宜シイ(栗塚報吿委員)孰レカ上ゲルト云フタガ、之ヲ燒イテ仕舞タカラ之ヲ上ゲマシヨウ、二ツトモ無クナツタトキハ私ガ撰ブ權利ヲ持テ居ルト云フコトハアリマスマイ
(鶴田委員)
自分ガ過チデヤレバ撰ブ事ガ出來ナイデモ孰レデモ付ケラレル
(委員長)
過愆ト意外トノ區別ヲ付ケルノダガ天災ト云フコトガ分ルカ
(栗塚報吿委員)
二ツノ物ガ無クナツテ二個ニ對シテ過愆ノアツタトキト一ノ物ノ過愆ノアツタトキデ御座ヒマスカラ一ツハ天災デナケレバナリマセン假令バ二頭ノ馬ガアツテ、一ハ私ガ殺シ一ハ燒ケ死ンダトキヲ云フノデス
(委員長)
過愆ノ物ハ債權者ニ撰擇ノ權ガ移ルガ、意外ノ事迄撰擇ノ權ガ債權者ニ移ルト云フハ不權衡ダ
(渡委員)
之ハ佛蘭西法ヲ其儘持テ來タノダ
(委員長)
佛蘭西ノハ天災ハ這入ツテ居ラヌ一ハ過愆ニ依テ滅失シ、一ハ天災ニ依テ滅失シタ場合ノ通リニ撰擇ノ權ガ債權者ニ移ルト之ヲ解釋スルトキハ四十九條ノ道理ト反對シテ牴觸シテ來ル、如何シテモ意外ノ場合ハ撰擇ガ債權者ニ移ラヌトシナケレバナラヌ
(南部委員)
二頭ノ馬ガアツテ一方ハ具合ガ惡ルイ、一方ハ良イト云フ、甲ノ馬ガ病死シタ場合ガアリマシヨウ、一方ノ馬ガ傳染病デ死シ一方ガ遺ツテ居テハ不都合ダカラ殺シテ仕舞フト云フコトガ出來マシヨウ
(委員長)
一方ハ抗拒スベカラザル力ニ依テ流レタノヲ其物ノ價迄モ指圖シテ取ラレルト云フコトハナイ
(南部委員)
義務者ニ制限シテ義務者ニ權ノナビ樣ニシテ置カヌト撰擇ノ權ガ義務者ニ在ルカラ二個ノ者ニ一時ニ無クナツタ場合ハ同時ニ無クナツタカラ證據立ヲスルモ難ヒ、此場合ニ過愆ノ義務者ガ免カレルコトハ出來ナイ爲メニ債權者ニ選擇ノ權ヲ與ヘタノデアリマシヨウ
(委員長)
茲デ債權者ニ與ヘルノハ宜シクナイ、自分ノ過愆デヤツタバカリナレバ宜シイガ、若シ一個ノ物ガ天災デ無クナツタト云フ不可抗力ガ此中ヘ入ルナレバ文草モ書換ヘナケレバナリマセン(南部委員)之ガ過愆デ無クナツタト云フト他ノ一個ハ過愆デナイト云フコトガ分リマス、過愆デナケレバ意外ニ違ヒアリマセン
(栗塚報吿委員)
卽チ天災デス
(村田委員)
委員長ノ說ニスルト一個ノミト云フコトヲ刪ラナケレバナリマセン
(委員長)
文章ハ分ルガ道理ガ合ハヌ、一方ハ過失、一方ガ天災ノトキハ孰レニモ依ラヌモノデ、債權者ニモ撰擇ノ權ガ與ヘラレナイ、債務者ニモ與ヘラレナイ
(南部委員)
假令バ人ガ死ニマシテ事業ニ就テ權利ノ消長ニ關係アルトキ、二人死ンデ孰レガ先ニ死ンダカ分ラザルトキハ年ノ多イ方ガ先キヘ死ンダト云ハナケレバナリマセン、茲ノ同時ニ滅失シタ場合ニ一個ハ如何スルカト云フニ過愆ノ物ノ撰擇權ハ債權者ニ在ル、若シ債務者ニ在ルトスレバ高ヒ方ガ意外ノ事ニ依テ滅盡シタト云フカ知レマセン、又左樣ニ云フガ當リ前デス
(委員長)
其意ガ分明ニ分ツタトキハ如何スルカ
(南部委員)
賣買ヲ約シタ以上ハ賣主ガ負擔シテ居リマスカラ注意ハ充分ニシナケレバナリマセン
(鶴田委員)
箇樣ナ愚法ハ我輩贊成シナイ
(松岡委員)
鶴田サンノ論ニスルト「一ノミノ過愆ノトキハ撰擇ハ債務者ニ存スル」トスレバ宜シイノデスカ
(鶴田委員)
一ツガ天災ノトキハ一ツノ過愆ノ額ガ償ヒノ額ニナル(松岡委員)過愆ノ場合デナイ樣ニナル
(鶴田委員)
過愆ノ二ツアツタトキ一頭ノ馬ヲ殺シタルトキハ矢張リ一ツダロウ眞中ノ條ハ二ツトモ過愆デ日限ニ前後ガアツタバカリデ況ンヤ三項ハ過愆ノアツタ物ヲ以テ價ヲ定メテ宜シイ
(松岡委員)
「ボワソナード」ニ聞ヒテ見度ヒト思フ
(栗塚報吿委員)
次ノ條ヲ御覽ニナルト聞クニ及バヌコトニナリマシヨウ
(委員長)
ソレデハ先キヲヤリマシヨウ
第四百五十二條朗讀ス
舊第四百五十條 撰擇カ債務者ニ屬スル右ト同一ノ場合ニ於テ若シ負擔シタル二箇ノ物ノ一カ債權者ノ過愆ニテ滅失シタルトキハ債務者ハ義務ヲ免カル但債務者カ殘ル所ノ物ヲ與ヘテ滅失シタル物ノ價額ヲ己レニ償還セシムルコトヲ撰ムトキハ此限ニ在ラス
若シ二箇ノ物カ債權者ノ過愆ニテ滅失シタルトキハ債務者ハ自己ノ撰擇ヲ以テ一又ハ他ノ物ノ價額ヲ己レニ償還セシムルコトヲ得
若シ二箇ノ物カ一ハ債權者ノ過愆ニ因リ他ハ意外ノ事ニ因リ同時ニ滅失シタルトキハ債務者ハ義務ヲ免レ債權者ニ對シテ取戾ヲ求ムルコトヲ得ス
(南部委員)
本條ニ修正ガ御座ヒマス「右ト同一ノ」ヲ刪リマシテ冒頭ニ「右ト同シク」ト入レマス
(鶴田委員)
此三項ト前條ト表裏ニナツテ居ル
(南部委員)
同ジコトニナツテ居ルデアリマシヨウ、何トナレバ債權者ガ過失デアツタカラ債權者ガ義務ヲ免カレル、前條ハ義務者ニ權ガアツタカラ債權者ニ轉移スルノデシヨウ
(鶴田委員)
勿論義務ハ免カレルガ、默シテ居ラナケレバナラヌ(栗塚報吿委員)併シ意外ノコトデモ債權者ノ不調法デモ義務ヲ免カレル
(鶴田委員)
其一物ノ過愆ニ依テ滅失シタ物ガ甚ダ價値ノ高イ物デ、又意外ノ事デ死シタル馬ハ安ヒトキ私ノ方ニ擇ブ權ガアル
(栗塚報吿委員)
高イ安イト供フ想像ハアリマスマイ、同ジ物ト見ナケレバナラヌ
(鶴田委員)
高イ安イガアルモノト見ナケレバナリマセン、然ラバ過愆ニ依テ滅盡シタ物ハ價ガ高イカラ安イ方ヲ貴君ニ上ゲ樣ト云フ、安イ方ガ意外ノ事デ義務ヲ免カレル丈ケデハイケナイ、義務ヲ免カレタル上ニ償ヲ取ラナケレバ前ト合ヒマセン
(南部委員)
選擇ノ權ガ債務者ニ在ルカラ違ウノデス、若シ債權者ニ在レバ反對デス
(鶴田委員)
元ト二箇ノ品物ノ中一箇ハ過愆デ無クナツタノガ高イ品物デ、意外ノ方ノ安イ物ヲヤロウト思テ居タカラ償ヒヲヤツテ呉レテモ良カロウ、償金ヲ止メレバ前ノ條ノ選ブ權ヲ向ウニ持タセルト同ジニナル
(南部委員)
其レハ違ツテ居リマシヨウ、義務ヲ免カレレバ引渡スベキ物ヲ引渡サズニ濟マス
(鶴田委員)
債權者ノ方ニ過愆ガアツテ高ヒ馬ノ方ガ死ンデ仕舞テ安イ馬ハ天變デ死ンデ仕舞ツタトキ擇一ノ方デハ安イ方ヲヤロウト思テ居ル
(松岡委員)
ドウモ權衡ガ惡ルイ
(栗塚報吿委員)
前ハ如何スルト權衡ヲ得マスカ
(鶴田委員)
過ツタ丈ケノ品物ノ償ヲ向ウニ取ラセレバ宜シイ(栗塚報吿委員)二項ノ過愆ノアツタトキハ
(鶴田委員)
擇一ノ權ヲ向ウニ持タセル
(委員長)
二項ハノ通リニ過愆デ死ンダトキ撰擇ガ債權者ニ在ルガ、一方ガ天災ノトキハ鶴田サンノ論ニモ同意ハセヌガ、鳥渡他ノ條項ヨリ推シテ考ヘテ見レバ鶴田サンノ云フ樣ニ債務者ガ自分デ失ツタ價ヲ拂ヘバ宜シヒト云ヘバ其處ガ如何ダカ分ラヌ
(栗塚報吿委員)
今ノ御論ニスルト第一項ト同ジコトニナリマス(南部委員)鶴田サンノ御說ニスレバ前條ノ二箇ノ物ガ同時ニ滅失シテ債務者ハ二個ニ對シ過愆ノアルトキハトナリマスネ
(尾崎委員)
五十一條ノ末項ノ一個ハ天災、一個ガ過愆ノトキハ(鶴田委員)一箇ノ過愆ノ方ハ償ハナケレバナリマセン
(渡委員)
一個ハ天災デ、一個ガ過愆ノトキハ孰レモ撰ブ事ガ出來ヌト云テアルガ、又ハ一個ノミヲ削ルト、二個ガ同時ニ無クナリ一個ガ過愆ノアツタトキハ入レラレナイ
(南部委員)
今少シ先キヲヤツテ見マシヨウ
(鶴田委員)
我輩ノ說ニスレバ義務ヲ免カレル迄ハ宜シヒガ、「但債權者カ殘ル所ノ物ヲ與ヘテ滅失シタル物ノ價額ヲ己レニ償還セシムルコトヲ撰ムトキハ此限ニ在ラス」トアル、二個ノ物ガアツテ壞ハレタトキハ上ゲナイト云フノハ宜シイガ、良ヒ方ヲ壞ハシテ惡イ方ヲヤツテ、滅失シタ價ヲ返シテ呉レト云フコトニナツテ居ル、ソウスレバ先キノ項ノ一個ハ意外ノ事デナクナル、一個ハ債權者ガ過愆デナクナツタトキハ擇一ノ權ヲ主張シテ、安イ方ヲ御前サンニ上ゲル積リデアツタト云フ
(栗塚報吿委員)
其危險ハ自然カラ出タノデ御座イマシテ、茲ハ債權者カラ出タノデ御座イマス
(鶴田委員)
二箇ノ物ヲ與フル約束ヲシテ、擇一ノ權ハ私ガ以テ居ル、貴君ガ一箇ヲ壞ハシテ、一個ハ天然デ壞ハシタトキ私ガ惡イ方ヲ上ゲ樣ト思ツテ居リマシタ、良ヒ方ヲ壞サレタカラ御釣リヲ呉レト云フテモ良ヒ道理ダ
(栗塚報吿委員)
第三項ハ債務者ノ過愆デス
(鶴田委員)
債權者ノ過愆ダ、五十二條ハ
(栗塚報吿委員)
五十二條ハ債權者ノ過愆デス
(松岡委員)
ドウモ鶴田サンノ說ハ良ヒ樣ダガ、今一二條先キニ行カナケレバ分ラヌカラ、先キヘヤリマシヨウ
(委員長)
其レデハ先キニ行マス
本條ハ「右ト同一ノ」ヲ「右ト同シク」ト改メ冒頭ニ揭クルコトトシ全體ノ旨意ハ未定
第四百五十三條朗讀ス
舊第四百五十一條 撰擇カ合意ヲ以テ債權者ニ與ヘラレシトキ二箇ノ物ノ一カ債務者ノ過愆ニテ滅失シタルニ於テハ債權者ハ殘ル所ノ物ヲ請求シ又ハ滅失シタル物ノ價額ヲ請求スルコトヲ得
若シ二箇ノ物カ共ニ債務者ノ過愆ニテ滅失シタルトキハ債權者ハ一又ハ他ノ者ノ價額ニ付キ撰擇ヲ有ス〔第千百九十四條〕
若シ二箇ノ物カ一ハ債務者ノ過愆ニ因リ他ハ意外ノ事ニ因リ同時ニ滅失シタルトキモ亦同シ
(修正案) 冒頭「撰擇カ」ノ三字ヲ刪リ與ノ上「撰擇ヲ」ノ三字ヲ挿入シ「ラレ」ノ二字ヲ刪ル
(村田委員)
三項ノ場合デ債權者ハ割合ガ良ク過ギハシナイカト思フ、前ノ方ハ債權者ハ撰擇ノ權ガアル、此方ハ債權者ニ撰擇ノ權ガアル
(南部委員)
ソレハ少シ御覽ガナイトイケナイ、債務者ガ品物ヲ持テ居ルト云フコトヲ御覽ニナラヌトイケマセン
(村田委員)
撰擇ノ權ガ債務者ニアレバ一ハ天災、一ハ過愆ト云ヘバ過愆ノ方サヘヤラセレバ宜イ
(南部委員)
品物ガ債務者ノ手中ニ存スルト云フコトヲ考ヘナケレバナリマセン
(村田委員)
一ガ過愆、一ガ天災ノトキハ過愆ノ方サヘヤレバ宜シイ
(南部委員)
債務者ト債權者ト互格ノ位置ニ居ルモノト見ルト大變違フ
(松岡委員)
五十二條デモ債務者ハ必ラズ物ヲ持テ居ル者トハ云ヘヌ
(南部委員)
債務者ノ手ニ品物ノアル方ガ多イカ、債權者ニ品物ノアル方ガ多イカト云フト、債務者ノ方ニ品物ノアルトキガ多イ
(委員長)
大切ナ處ダカラ虛心平氣デ議シテ貰ハヌト困ル、五十一條ノ末項ヲ見ルト一ハ過愆一ハ意外ノ事ニ依リ滅失シタトキハ債權者ハ孰レデモ請求ガ出來ル、天災ニテ斃レタル方デモ、過愆ニテ壞ハレタル方デモ宜シ、一個ハ五十兩一個ハ百兩ノ品デモ、百兩ノ方ガ死ンダ馬ノ價ヲ出セト云フコトガ云ヘル、又五十二條ノ末項ハ義務者ガ義務ヲ免カレテ、約束ハシテ居タケレドモ債權者ガ過チノ爲メニ損シタカ或ハ天災デ滅失シタカ知レヌガ物ガ無クナツテ仕舞ツタトキハ義務ハ免レルケレドモ失ヒタル物ヲ取返ヘスコトハ出來ヌカラ債權者ハ失ツタ斗リデ默シテ仕舞ハナケレバナラヌ、五十三條ハ二箇ノ物ガ共ニ滅失シタ時債務者ノ過愆ナレバ債務者ガ撰ミテ取レル、其レト同樣ニ一方ガ天災、一方ガ過愆ノトキハ二箇ガ過愆ト同ジニ債權者ガ選ムコトトナルカラ過愆ト云フノモ一方ハ天災、一方ハ過愆ト同樣ニ債權者ガ負擔ヲシナケレバナラヌト云フハ不權衡デハアルマイカ
(栗塚報吿委員)
只今ノ第三項ハ御許シニナリマシヨウカ
(委員長)
其ハイカヌ、恰度前ノ條ヲ逐フテ考ヘレバ不權衡デシヨウ、五十一條デハ二箇共ニ失ツタトキハ債權者ニ移ルノガ當然デアルガ、一箇ガ天災一個ガ過愆ノトキハ茲ト同ジク不權衡ガアル、總テ過愆ト看做スト云ヘバ宜シヒガ、天災ト云フコトガアツテ、抗拒スベカラサル力デ、コウ云フコトニナツタト云フトキハ法律ガ過愆モ天災モ同樣ニシテ同クノハ不都合ト思フ
(栗塚報吿委員)
四百五十三條デ御座リマスカ
(委員長)
四百五十三條モ五十一條モ不權衡ダト思フ、五十二條デハ三條ト一條トノ不權衡ノミナラズ五十一條デハ債權者ノ過愆デ、一方ハ物ヲ失ヒ、一方ガ天災ノトキハ債務ハ何モ取還ヘスコトハ出來ナイ
(南部委員)
債務者ヲ制裁スル旨意ダト云フコトガ註ニ云テアリマス
(栗塚報吿委員)
併シ四百五十三條ノ末項ノ如キハ債權者ニ撰ム權ガアツタトキニ債務者ノ過愆デ物ガナクナツタトキ、四百五十一條ノ末項ハ元來債務者ニ權ガアツタノガ、債權者ニ移ルノガ惡ルイト云フノカト思ヒマシタガ、左樣デモナイノデスガ
(鶴田委員)
其レハ私ノ一個ノ論デス
(栗塚報吿委員)
四百五十三條ノ末項モ惡ルイト云フ論ヲ伺テ見レバ債權者ニ撰ム權ガアルトモ、債務者ノ過愆ノトキバカリ外咎メルコトハ出來ナイ
(委員長)
二ツノ問題ニナル、五十一條ノ末項ニテハ何故ニ債權者ニ義務ガ移ルカト云フ論ガアル、其レト人爲ト天災ト混淆シテヤルノハ宜シクナイト云フ論ト二ツアル
(村田委員)
元トノ譯デハ二個共ニ同時ニ滅盡シテ、一個ハ天災ニ出テ、一個ハ債權者ノ過愆ニ出デタルトキ五十一條ニアリマス、之ハ譯ガ惡イカラ
(委員長)
畢竟「ボアソナード」ガ違ヘズトモ宜シイト云フカ又ハ違ヘルモノトスルカ、天災ト人爲ト混淆スルハ良クアルマイト云フ論ガアルカラ今一應聞イタラ宜カロウ、又五十一條ノ處ノ債權者ニ移轉スルハ如何ト云フコトヲ聞イテ見タラ宜シカロウト思フ
(栗塚報吿委員)
四百五十三條ノ末項デ、孰レデモ撰ムトキ一個ハ私ノ不調法デ燒ケマシタ、一個ハ天災デ雷火デ燒ケテ同時ニ滅失シマシタ、其ノトキ鶴田サンガ債權者デ孰レカ撰ムトキハ如何ナリマスカ、鶴田サンノ撰ミデ代價ヲ取ルノガ宜シイト思ヒマスガ(鶴田委員)天災ト過愆ニ依テ出タノダカラ
(栗塚報吿委員)
意外ノ事變デ無クナツタトキハ義務ガ消滅スル、併シナガラ一個ハ遺ル
(鶴田委員)
一個遺ラナケレバ二個トモニ償ハセル、一個遺レバ一個ニ依ルト云フノガ原則デシヨウ
(栗塚報吿委員)
代價ヲ孰レデモ取レルト云フ權利ガ意外ノ事ヲヤツタトキハ無クナツテ仕舞ヒマス、始終意外ノ事デヤツタトキハ擇一ガ無クナルト云フノデスカ
(鶴田委員)
ソウデス
(栗塚報吿委員)
ソウスルト詰リ擇一義務ガ無クナツテ單一義務ニナルト云フノデス
(南部委員)
議案ノ旨意ハ意外ト過失ノトキハ過失ノ方ヲ主ニシテ行クト云フノデス
(栗塚報吿委員)
債務者ニ過愆ガ一ツデモアツタトキハ單一ハ無クナツテ仕舞フト云フ理窟ニ此案ガナツテ居ルノデス、債務者ニ過愆ノアツタトキハ恩惠ハ施サヌゾヨト云フノデス
(渡委員)
天災ヲ目的ニスルト、過愆ヲ目的ニスルト、丸ルデ違ツテ來ルカラ大變ナ問題ダ「ボアソナード」ニ聞イテモ決シテ受付ナイダロウ
(栗塚報吿委員)
之ヲ受付ケレバ擇一義務ガナクナツテ仕舞フ(委員長)「ボアソナード」ガ今一層調ベテ理窟ガ合フ樣ニスレバ宜シイガ、片言ノ理窟ヲ云フカラ良クナイ
(栗塚報吿委員)
私ノ方デハ片言ニナラヌト思ヒマス、何トナレバ債務者ノ手ニ在ルモノデ、一個ハ天變デ壞ハレタ物、一個ハ自分ノ手デ壞ハスコトガ出來ル、同時ニ無クナツタトキハ擇一權ガアルゾヨト「ボアソナード」ガ云フノデス、一個ニデモ不調法ガアレバ矢張リ擇一ノ權ガ債權者ニ存シテ居ルト云ノデス
(委員長)
其處ガ片言ト云フノダ、双方トモ過愆ナレバ宜シイガ、一方ハ人爲デハナイ、人爲デナイ者ガ人爲ト同ジ責ヲ致ハセルト云フノガ不都合ダ、天災デヤツタモノハ如何スルカト云フ別ノ條項ヲ設ケレバ宜シイガ天災デモ自分ノ過チト同樣ニスルト云フノハ是レ丈ケ細カニ法律ヲ書イテアルニ釣合セテ見ルト不都合ト見フ
(松岡委員)
如何シテモ合イマセン
(村田委員)
道理ニ合ハヌ
(栗塚報吿委員)
併シ問フテハ見マシヨウガ今少シ御研究ニナレバ分リマス、四百五十一條デ債務者ノ撰擇スルノハ債權者ニ移ルト云フノハ通ゼヌト云フノハ宜シイガ五十三條ノ三項ガ通ゼヌト云フノハ分リマセン
(南部委員)
今一條ヤツテ見マシヨウ
本條未定
第四百五十四條朗讀ス
舊第四百五十二條 撰擇カ債權者ニ屬スル右ト同一ノ場合ニ於テ二個ノ物ノ一カ債權者ノ過愆ニテ滅失シタルトキハ債務者ハ義務ヲ免ル
若シ二箇ノ物カ共ニ債權者ノ過愆ニテ同時ニ滅失シタルトキハ撰擇ハ一又ハ他ノ物ノ價額ヲ己レニ與ヘシムル爲メ債務者ニ轉移ス
右ニ同シキ同時ノ滅失ノ場合ニ於テ若シ物ノ一ハ債權者ノ過愆ニ因リ他ハ意外ノ事ニ因リ滅失シタルトキハ債務者ハ義務ヲ免レ債權者ニ對シテ取戾ヲ求ムルコトヲ得ス
(修正案) 冒頭撰擇ノ上「右ト同シク」ノ五字ヲ加ヘ「右ト同一ノ」ノ五字ヲ刪ル
(鶴田委員)
同ジコトダ
(松岡委員)
「一又ハ他ノ物ノ價額」トアリマスノハ
(栗塚報吿委員)
二個ノ物ガ滅失シテ居ルカラデ御座イマス
(松岡委員)
「一ノ物ノ價額」ト云フノデアリマシヨウ
(栗塚報吿委員)
二ツノ中ノ一ツト云フノデス
(尾崎委員)
同ジコトヲ云フタノダ
(渡委員)
「務」ノ字ト「權」ノ字ト違ツタ丈ケダ
(委員長)
之デ食事ニ致シマシヨウ
本條未定
于時午後零時五分休憩
午後第一時三十分開會
(尾崎委員)
ヤリマシヨウ
第四百五十五條朗讀ス
第四百五十五條 前數條ノ明文ニ從ヒ擇一ノ義務カ一箇ノ物ノミニ存スルニ至リタルトキ又ハ撰擇カ其權利ヲ有スル當事者ニ因リ物ノ一ニ付行ハレタルトキハ其効力ハ停止ノ條件付ノ義務ノ事項ニ於テ第四百二拾九條ニ記シタル如ク遡リテ効力アリ
(栗塚報吿委員)
「既往ニ遡リテ効アリ」ハ、未必條件停止條件解除條件ノ所ト擇バヌ間ハ未必條件ト云フ理窟デアリマス初メカラ擇ンダモノト看做スノデアリマス
(淸岡委員)
効力ガ遡テ効アリト云フノハ具合ガ惡ルイ
(尾崎委員)
擇一撰擇ノ權ハ債務者ニ在リデ、ソレカラ家ガナクナツテ一戶殘ツテ、今度遡ル場合ニナルト、右ノ内ヤルト云タ一軒ノ家ハ擇一先生住居シテ居ルト、家賃モ取立ラレナイ
(南部委員)
取立テマセヌ
(尾崎委員)
一ニナツテ居リ遡テ効アルト云フノハ
(栗塚報吿委員)
私ガ貴君ニ此家ヲ上ゲマシヨウト云フノデス(尾崎委員)所ガ一方ノ家ハ無クナツテ、其所デ私ガ効力ヲ得テ居ルカラ、遡テ取ル場合ニ至テハ、貴君ガ住ツタ家賃ハ私ガ拂ハナケレバナランカ
(栗塚報吿委員)
我ガ身ガ住ツテ居テハ果實ニナリマセヌ、果實ヲ自分デ取タ果實デアリマス
(尾崎委員)
ドウシテモ家賃ハ拂ハナケレバナラヌデシヨウ
(南部委員)
金ヲ他ヘ貸シタ折ニハ取ラナケレバナラン
(栗塚報吿委員)
收益ヲ以テ果實トハ云ヘヌ
(南部委員)
家ヲ賣ルト約束シテ、所有權ヲ移セバ買主カラ家賃ヲ取ルト云フコトデスカ
(尾崎委員)
貴君ガ住メバ左樣ナリマス
(南部委員)
ソンナコトハアリマスマイ
(尾崎委員)
左樣ナラナケレバナラヌデシヨウ、人ノ家ニ住ウ譯ニナリマスカラネ
(南部委員)
人ノ家デ所有權ハ移テモ、引渡ガナイカラ、引渡ノ義務一部分ハ後ニアルト云フ場合デ、其引渡ノ場合ガナイニ家賃ヲ拂フト云フコトハアリマスマイ
(尾崎委員)
然ラバ燒ケタラ如何シマスカ
(南部委員)
貴君ノ損ニナリマス
(尾崎委員)
前ノ權衡カラ見ルトドウデスカ
(南部委員)
ソレハ間違ツテ居リマシヨウ、所有權ト引渡トハ違ヒ、引渡ノ期限ヲ何年何月マデト極メル譯ハナイ、直グ引渡ヲシテ宜シイノデス、所有權移轉ノトキハ別デアリマス、所有權ガ移テカラ引渡ノ義務ガ生ズルノデアリマスカラ、ソレヲ一緒ニシテハ違ヒマシヨウ
(栗塚報吿委員)
所有權ガ移ル、直グ家賃ヲ拂ハナケレバナラヌト云フコトハアリマセヌ、偖テ立退カヌデ御前ノモノダカラ御前ノモノヲ借リタゾヨト云フト、賃借リ契約ガ成立ツノデアリマス
(鶴田委員)
今約束シテ、ソレカラ引渡シテ、引渡前ニ物ヲ拂ハセラレテハ溜ラヌデシヨウ
(淸岡委員)
代金ヲ拂テアルノナイノト云フコトハ未必條件ノ所ノ場合、停止條件ノ合意ノ日ニ云フト云フコトモアルカラ、之ハ金ヲ拂テ居ルノダカラ、汝ノ請求爲スコトヲ得ズデ、第四百三十九條抔ノ必要ガアリマスダカラ大體未必條件ノ本體ヲ云フノデ、未必條件ノ本體カラ云フト、金ヲ拂テ居ルノ、ナイノト云フテモ、詰リ約束ガアツテ、効ヲ生ズルノデス
(松岡委員)
私ハ尾崎サンノ樣ニ見マス
(淸岡委員)
私モ左樣デス
(栗塚報吿委員)
家賃ヲ拂フノデスカ
(松岡委員)
ソウデス
(南部委員)
單一ノ所有權ノ移轉デ考レバ、分ルデシヨウ、引渡ノ來ヌ前ニ家賃ヲ拂フ抔ハアリマスマイ
(松岡委員)
法律ニ何ト書イテアルカナレバ、遡ラナケレバナランデシヨウ、第四百二十九條ニ何トアリマスカ、既往ニ遡テ効アリトアリマス、又三十二條ニハ成就スルトキハ云々トアリマス、其條件ノ成就セザル時間ニ於テ收取シ、又ハ滿期ト爲リタル云々トアリマス、其註ヲ見ルト、引渡ヲシナケレバ、卽チ遲滯ニ置クナレバ、利息モ家賃モ起ラヌト云フナレバダガ、左樣デハナイ
(南部委員)
ソウ云フノデハナイ、尾崎サンノ言フニ、住デ居ル家賃ト云フカラ、ソレハ往カヌト云フノデアリマス
(松岡委員)
第四百三十二條ニ依テ考フルニ成就セザル時間ニ於テ收取シ、又滿期ト爲リタル果實ハ人ニ貸シタモノニ限ルノデス
(栗塚報吿委員)
我ガ住ミマシタモノヲ、果實ト云ヘマシヨウカ、占有者ガ占有シタラ果實ヲ取タトハ云ヘヌ、併シ畑カ何カ作テ收獲ガアレバ、立派ナ果實デアリマス
(南部委員)
果實ヲ得ル所ノ利益ト見ルノデスカ
(松岡委員)
左樣デス
(南部委員)
果實ト收益トハ違ヒマス
(松岡委員)
家ヲ貸シテ家賃ヲ取ルハ果實デシヨウ
(栗塚報吿委員)
貴君ノ例ニスルト反對デ、家賃ヲ出シテ人ノ家ヲ借リタトキ、其家賃ハ取ル人ニ取テハ果實デス、併シナガラ自分ノ家ヲ自分デ住ンデ果實トハ言ヘヌデシヨウ
(松岡委員)
人ノ家ニ住ンデ居ル樣ナコトニナルデシヨウ、此家ハ引渡サナケレバナラントキハ契約ノ時ニ遡テ、他人ノ家ニ住ンデ居ル、ソレハ只住ンデ居ルカト云フノデ、問題ガ起タノデアリマス
(南部委員)
引渡ノ義務履行セヌ前ダカラ
(松岡委員)
成就セヌ前ニ所有權ヲ與フルノデ、向ウヘ利益ハ歸スルノデ、ソレガ當リ前デシヨウ
(栗塚報吿委員)
松岡サンノ說ハ嚴シク云フトコウナル、貴君ノ家ヲ撰擇前ニ人ニ貸シタトスルト、或ル管理ノ所爲ヲ行タハ無効ト云ハナケレバナラヌ、既往ニ遡ルナレバ人ノ物デ、人ノ物ヲ人ニ貸スコトハ出來マセヌト云フコトニナリマシヨウ、撰擇セラレタハ假令バ貸シタラ復タ貸スコトハ出來ヌノダカラ無効ト云ハナケレバナラン
(松岡委員)
其コトヲ云フノデハアリマセヌ
(栗塚報吿委員)
ケレドモ論ハ左樣ナルノデアリマス、我ガ家ニ住ソデ居タノモ、家賃ヲ拂ラハナケレバナラン、何ゼナラバ人ノ物ダカラト云フノデシヨウ、其家ヲ自分ガ住マハズ賃貸スルコトモ出來ナカツタノデシヨウ
(松岡委員)
其所デ貴君ハ二軒ノ家ガアリマシヨウ、一軒貸タラ家賃ヲ受取テ居ル、是非集メテ渡サナケレバナラン、自分ハ只住ウト云フ道理ガドウシテアリマスカ
(栗塚報吿委員)
我ガ身ガ我ガ家ニ住ンデ居ルニ、果實ト云フコトハアリマセヌ
(松岡委員)
我家ト云フコトハ云ヘヌデシヨウ
(栗塚報吿委員)
左樣ナレバ人ニ賃貸モ出來ヌデシタロウ
(松岡委員)
管理シタ人ハ利ハ取ラヌノデス
(栗塚報吿委員)
人ノ物ナレバ素ヨリ貸セナイノデアリマシヨウ、自分ノ物ダカラ自分ノ處分權丈ケ持テ居タノデアリマス
(松岡委員)
ソレナレバ家賃ハ出サヌト云フナレバ宜シイ
(南部委員)
貴君方ノ論ハ代金ハ延ベ拂ト云フノデアレバ、利益ハ拂ハナケレバナラント云フノデシヨウ
(松岡委員)
ソウデハアリマセン、他人ニ貸テモ引渡ノナイ中ダカラ家賃ヲ取テハ往カヌデシヨウ
(栗塚報吿委員)
ソレハ果實ト云テハ往カヌト云フノデアリマス(松岡委員)果實ト云ハレヌナレバ不權衡ト云ハナケレバナラン、自分ガ住ンデ人ニ貸ス家デモ、同ジク果實ト看做スデシヨウ
(尾崎委員)
ソレモ果實デス
(南部委員)
滿期トナリタル果實トイフハドウイウモノデスカ(松岡委員)住ンダ丈ケデス、人ニ貸テモ同ジデス
(村田委員)
スルト、道具ヲ買テモ、今日買ツテ三日目ニ持テ來ルト、三日目ニハ使用賃ヲ取テモ宜シイ譯デ、同ジ道理デス
(松岡委員)
二軒ノ家ヲ借リ、一軒ヲ人ニ貸シ、引渡ハ濟ヌガ誰レガ賃ヲ取ルカ
(栗塚報吿委員)
使用貸借デアツタラドウカ、貴君ガ賃ヲ取ラナカツタ、然ルニ貴君ガ私ニ擇一シタノデ、家ヲ使用貸借シタガ果實ハ拂ハナカツタ、併シナガラ住ンデ居タハ餘所ノ人ガ住ンダラドウナリマスカ
(松岡委員)
未必條件デ管理ノ樣ニ爲ルベキトキ、管理ノ役ニ立者ガ人ニヤツタノハ役ニ立ツカ否ヤ
(栗塚報吿委員)
初メカラ貴君ニヤツタラ人ニ貸ソウトモ、勝手デアリマシヨウ
(松岡委員)
賃ヲ取ラズニ前カラデシヨウ
(栗塚報吿委員)
前カラデス
(松岡委員)
人ニ無賃デ何所迄モ貸ノデスカ
(栗塚報吿委員)
人ニ使用貸借デ貸タモノハ、家賃ヲ取ラナケレバナラント云フコトハ想像シ能ハヌデシヨウ
(松岡委員)
私ハ左樣ニ思フ
(栗塚報吿委員)
頭ヲ冷ヤシテ御出ニナルト分リマス
(村田委員)
松岡サンノ論ハ住ハナカツタラ損害賠償ヲ拂ハナケレバナラン
(松岡委員)
ソウ云フコトハアリマセヌ
(村田委員)
收入ヲ取ルト云フハ果實ノ出テ來ヨウハアリマセヌ(松岡委員)人ノ家ニ住フハ住ンデモ住マヌデモ同ジト云フコトハナイ
(村田委員)
ケレドモ家賃幾ラト極マラヌノデ、引渡ガ濟マヌノデスカラ
(尾崎委員)
セヌ中ニ燒ケタラドウシマスカ
(村田委員)
仕方ガアリマセヌ
(栗塚報吿委員)
所有者ノ損デアリマス
(尾崎委員)
ソンナ下ラヌ事ヲ云フ
(南部委員)
遲滯ニ付スルト云フコトハ尾崎サンノ云フ通リニスルト、益ハナイ樣ニナル
(尾崎委員)
遲滯ハ法律ヲ設ケテアルカラ、用ヒナケレバナランデシヨウ
(南部委員)
ソウイフ事ハナイカラ、遲滯スルコトガ拵ヘテアリマス
(尾崎委員)
ドウモ不權衡ダ、未ダ引渡ヲセヌ中燒ケタラ、所有者ノ損失ニナルト云フ說ハ不權衡ニナリマス
(栗塚報吿委員)
貴君ノ說ニスルト、未必條件ノ到着スル間ハ所有者ノ所爲ガ出來マセヌト云フマデ、論ジナケレバナラン
(鶴田委員)
源ハ未必條件デ、既往ニ遡リテ効アリト云フハ源ニ歸ルト云フノデス
(南部委員)
併シソレハ已ニ定マツテ居ルノデアリマス
(松岡委員)
實ハ「遡テ効アリ」ハ除イテ貰ヒタイ
(栗塚報吿委員)
ソレハ餘程研究シナケレバナラン
(松岡委員)
箇樣ナ法ハ外國ニナイト云フノダカラ
(栗塚報吿委員)
擇一義務ハ停止條件デアルカ否ヤト云フ問題デス(鶴田委員)左樣デス
(栗塚報吿委員)
裁判例又ハ學者ノ說モ種々アリマス
(淸岡委員)
ソンナコトハ言フニ及バヌ
(栗塚報吿委員)
併シ此論ニ對シテハ詰リ貴君ニ此書物ノ何方カ讓ルト云フトキ、私ガ擇ンデ之ヲ差上マスト言タトキハ之ハ初メカラ貴君ニ屬スベキモノト看做スベキヤ否ヤ論ノ出タトキハデス
(淸岡委員)
看做スベキヤ否ヤハ過愆ニ因テ傷ンダトキハ斯樣ニ天災ニ因テ傷ンダトキハ斯樣トアリマスカラ、其上ニ又之ハ停止未必條件ノ法律ト同一ノ通リニ論ジナケレバナラント云フノハ、抑モ學者ノ論デ、何モソンナコトヲ持テ來ナイデモ宜シイ、矢張リ擇一ノコトハ擇一ノ場合デ極マツテ居ルカラ、何モ四百二十九條ノ停止條件ト同一抔ト云フコトハ要ラヌノデス
(南部委員)
畢竟擇一抔ト云フコトハ日本ニ是迄ハ無イガ、是ヨリ此法律ガ制定ニナレバ書イテアル丈ハ必要デ、若シ効ヲ有セシメズト書クナレバ格別、悉ク要ラヌト云フハ往キマセヌ
(淸岡委員)
要リマセヌ
(栗塚報吿委員)
此論ガ出タトキハ如何致シマスカ
(淸岡委員)
勝手ニ論ズルガ宜シイ、箇樣ナモノデアルト、學者社會デ勝手ニ論ズルガ宜シイ、此所ハ擇一ノ捌キ方ニ付テハ差支ナイ、法律ガアルカラソレ丈ケデ宜イトシテ置クガ宜シイ、四百二十九條ノ通リニ停止條件ト同一ノ云々ト何モ學者ノ說ヲ箝込マヌデモ宜シイ
(南部委員)
嵌込ム必要ガアリマス、假令バ四百四十九條ニ於テ「若シ二箇ノ物ノ一カ滅失シタトキハ」云々トアリ、又第四百四十九條ニ義務ハ殘ル所ノ物ニ存スト云フコトモアリ、殘ル所ノ物ニ存スル丈ケハ分ルガ、果シテ効ヲ有シテ、四百二十九條ニ云フ如ク收入果實其他悉ク付ケテ渡スト、効ヲ有スルヤ否ヤハ直グニ起テ來ルノデソレハ必要ナラヌト認メテ居ルカラト言フナレバ格別、之ガナクツテ差支ナイト云フコトハ云ヘヌダロウト思ヒマス
(委員長)
之ガナイト停止條件付ノ義務ヲ負セルコトハ出來マセヌ、擇一義務履行丈ケデ、停止條件ノ條ヲ適用スルコトハ出來マセヌ
(淸岡委員)
出來ヌ方ガ宜シイ
(委員長)
ケレドモ大阪カラ物ヲ途ツテ來ルト云フトキ、大阪カラ二箇ノ物ヲ擇ンデ送ツテ來ル、ソレガ船ノ中デ毀ハレタ場合ニハ効力ハ如何カ、其物ガ毀ハレタカラ引渡ヲスルトキ、成立トナツテハ餘程困リマシヨウ
(淸岡委員)
ソレハ已ニ損失シタトキハコウトアリマス
(南部委員)
殘ル物ニ付テハ御座リマセヌカラ分リマセヌ
(委員長)
最初ニ遡テ認メルヨリ外ハアリマセン
(鶴田委員)
何所迄ト云フノデ債務者ニ屬スガ、屬ス所ヲ極メタノデ、之ハ初メ契約ハ極マツテ居ルカラ、看做ス方ナレバ債權者ノ損ダカラ、ソウスルト自然ト前ノニ遡ル道理デ、例ヘバ牛ナリ馬ナリ二個居ルトキ、牛カ馬カヲヤロウト云フ、半ヲヤツテ子ヲ生メバ子ヲ付ケナケレバナラントナルノデシヨウ、何ゼソウ云フ道理ニナルカ、子丈ケ難シテモ牛馬ヲヤレバ宜サソウダガ、初メニ同意シタトキ、所有權ヲ移シテ居ルト云フノデ、移シテ居ル證據ガナクナツタラ買フタ者ガ損ニナルト云フ所カラ推スカラ否ヤデモ仕方ガナイ
(淸岡委員)
左樣デス理窟ヲ論ズレバ仕方ガナイ
(尾崎委員)
單一ト云フモノハ未必條件ニ能ク似タモノデ此所ニ至テ未必條件ガ包含シテ居ルト見セタノデス
(鶴田委員)
何レカ一ツ移テ居ルト云フテ見セタノデス、理窟ヲ推スト仕方ガナイ、實際ニ於テハソウ云フ風ニハ行ハレナイ
(委員長)
日本ニハ未必條件スラ土臺ナイノデ、況ンヤ擇一ニ於テヲヤデス
(尾崎委員)
擇一ノコトハ日本ニハ絕ヘテナイ、私ハ說ヲ退キマス(委員長)宜ケレバ先キヘヤリマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第四百五十六條朗讀ス
第四百五十六條 債務者カ主トシテ一箇又ハ數箇ノ定マリタル物ヲ負擔スルモ他ノ一箇又ハ數箇ノ物ヲ與ヘテ義務ヲ免ルヽノ權能ヲ有スルトキハ其義務ハ任意ト稱セラル〔第八百九十一條第千六百八十一條〕
主タル物ハ任意ニテ負擔セラレタル物ノ辨濟ノ解除ノ條件ヲ以テ負擔セラレタリト看做サル
若シ主トシテ負擔セラレタル物カ意外ノ事又ハ不可抗力ニ因リ滅失シタルトキハ債務者ノ義務ヲ免カル
若シ主トシテ負擔セラレタル物カ債務者ノ過愆ニテ滅失シタルトキハ債務者ハ損害賠償ト共ニ其價額ヲ負擔ス然レトモ債務者ハ任意ニテ負擔セラレタル物ヲ與ヘテ義務ヲ免カルヽノ權能ヲ保存ス
若シ二箇ノ物ノ一カ債權者ノ過愆ニテ滅失シタルトキハ債務者ハ其義務免除ヲ援唱シ又ハ滅失シタル物ノタメ己レニ賠償セシメテ殘ル所ノ物ヲ與フルコトヲ得
若シ二箇ノ物カ債權者ノ過愆ニテ滅失シタルトキハ債務者ハ義務ヲ免カレ且自己ノ撰擇ヲ以テ一又ハ他ノ物ノ價額ヲ己レニ償還セシムルコトヲ得
若シ二箇ノ物カ一ハ意外ノ事ニ因リ他ハ債權者ノ過愆ニ因リ同時ニ滅失シ其過愆カ孰レノ物ノ上ニ存スルヤヲ知ルコトヲ得サルトキハ債務者ハ義務ヲ免カレ且債權者ニ對シ自己ノ撰擇ヲ以テ二箇ノ價額ノ一ヲ取戾スコトヲ得
(修正)第二項左ノ如ク修正ス
主タル物ノ負擔ハ任意ニテ負擔セラレタル物ノ辨濟ニ因リ解除スヘシトノ條件ヲ付セラレタリト看做サル
(栗塚報吿委員)
本條二項ハ修正致シ第七項ハ(自己ノ撰擇ヲ以テ二箇)ノ數字ヲ刪リ「對シ任意ニテ負擔セラレタルモノノ價額ヲ取戻スコトヲ得」ト翻譯デ直リマス
(委員長)
主タルモノト云フハ如何
(栗塚報吿委員)
任意ノ義務ト、單一ノ義務ト、餘程似寄テ居リマスガ、私ガ遺囑書ヲ以テ私ノ悴ニ飯田町ノ家ヲ南部サンニヤルガ宜シイト云フ遺囑書ヲ書キ、若シ其家ヲヤル代リニ金ヲヤツテモ差支ナイト、箇樣ナコトヲ申シテ死ダノデ、ソレハ主トシタ物ハ家デアリマス、家ヲヤレ若シ家ガヤレヌトナレバ金ヲヤレト、其所デ家カ金ト云フノデハナイ、其所ハ擇一トハ逹フ所以デアリマス、金ヲヤツテモ家ヲヤツテモト云フハ擇一デアリマス、左樣デナク、家ハヤレナイ、ヤレヌナレバ金ヲヤレト云フノデアリマス、併シナガラ家ガヤレヌトキハ金ヲヤレト云フ遺囑證書ニシタ場合ハ、遺囑ヲ受ケタ者ノ義務ニナルノデアリマス
(委員長)
主トシテハ格別必要ハアリマスマイ
(栗塚報吿委員)
之ガナイト、擇一ニナリマス、金デモ家デモト云フノデアリマセヌ、家ヲヤレ併シヤレタトキハ金ヲヤツテモ宜シイト云フノデ、其トキニ家ハヤレテモ、金ヲヤルト云フコトハ出來マセヌ、擇一ナレバ家デモ金デモ宜シイノデアリマス
(尾崎委員)
任意ハ氣儘ト云フノデ、何方デモ宜シイ樣ニナルガ家ヲヤラヌデ金ヲヤツテ辨濟ガ濟ンデ仕舞ツテ、辨濟ニ因テ主タルモノハ解除シタト看做サルルノデスカ
(栗塚報吿委員)
左樣デス、物ノ消滅ノ場合ハ大變違ウ主タル物ガ消滅スレバ金ハヤラヌデモ濟ム、家ヲヤレト云ヒ、其家ガ燒ケレバ金ヲヤルニハ及バヌノデアリマス、擇一ノ方ハ家カ、金カ、何レカヤラナケレバナラン
(尾崎委員)
任意ト云ハレマスガ何レヲヤツテモ宜イ樣ニ聞ヘマス(鶴田委員)先ヅ左樣ナリマス
(南部委員)
何レカト云フ中ニ、主タルモノガアルノデアリマス(尾崎委員)氣儘ニヤルコトハ出來マセヌデシヨウ
(南部委員)
氣儘デアリマス
(尾崎委員)
金ヲヤラヌ場合ニハ、家ハ是非ヤラナケレバナランナ(栗塚報吿委員)次ノ條ヲ讀ムト、主タル物ノ負擔ハ家ヲヤラナケレバナラン義務デ、ソレハ箇樣ナ條件ガ付テ居ルモノト看做スゾヨ、任意負擔セラレタ金デス、金ヲ辨濟スレバ主タル物ハ解除スル條件付ガ終ルト云フノデハナイ、家ヲヤラナケレバナラント云フガ、金ヲヤレバ、家ハヤルニハ及バヌトナルノデス
(尾崎委員)
辨濟ニ因ルノダカラ、先方ガ受取タラ始メテ主タルモノノ負擔ハ解除ト云フ法文デシヨウ、所デ初メカラ任意デ、家デモ、金デモ、何レデモ宜シイデハナイノデシヨウ、何レデモ宜シイナレバ擇一ト異ナラヌ
(栗塚報吿委員)
必ラズヤラナケレバナラン
(松岡委員)
珍ナモノデアリマス
(尾崎委員)
實ニ珍ナモノデス
(松岡委員)
尾崎サンノ云フ通リ主タルモノガアツテモ此方ノ物ヲヤツテモ權ハヌデシヨウ、元トノ方デ見ルト、擇一ト違ハナイ樣デス
(村田委員)
少シ違ヒマス
(栗塚報吿委員)
少シ性質ガ違ヒマス、擇一ノ方ハ此書物ナリ、着物ナリ、二個ノ物ガ目的物デ其一箇ヲ擇ブ權ガアルノデス、然ルニ任意ノ方ハ目的物ハ一箇デ御座ヒマス、此レカ彼レカト一箇シカナイ、ソレハ著シイ違ヒデアリマス
(尾崎委員)
著シキ違ヒトハ見ヘナイ
(栗塚報吿委員)
擇一ハ二箇ノ目的物、任意ノ方ハ義務者ノ勝手デアリマス
(松岡委員)
主タルハ權利者ノ方ニモアルノデス
(栗塚報吿委員)
主トシテ負擔シテ居ルノハコウト、權利者ノ方カラハ言葉ハ立チマセヌ
(南部委員)
擇一ノ方ト違フハ、擇一ハ一方ノ品ガ、元來法律ニ背イタ品物デアル場合デモ一方ハ無効デモ、今一箇アルカラ無効ニハナラン是レハ主タル物ガ無効ノトキハ消ヘテ仕舞フカラ、其所ガ違ヒマス
(尾崎委員)
成程其所ガアリマス
(栗塚報吿委員)
又箇樣ナ差ガアリマス、擇一ノ方ハ假令バ動產ヲヤロウカ、不動產ヲヤロウカト云フ、馬ヲヤロウカ、家ヲヤロウカト云フ場合、其義務ハ動產ノ義務カ、不動產ノ義務カ分ラヌ、撰擇ガアツテ、始メテ義務ノ性質ガ極マル、然ルニ此方ノハ義務ハ初メカラ優マツテ居ル、何ゼナレバ主タル物ハ動產ナレバ動產義務、主タル者ガ不動產ナレバ不動產、義務ト云フ、其所ガ違ヒマス
(尾崎委員)
任意ノ方ハ意中ニ定マツテ居ルノデスネ
(栗塚報吿委員)
貴君ニ家ヲ是非賣リマシヨウ、家ガ賣レヌトキハ金ヲヤル、只上ゲルト致シマシヨウ貴君ハ是非家ガ欲シイト云フ、私ハ主トシテ家ハ賣レマセヌ、若シ賣レザルトキハ金ヲヒゲルト云ツテ居ル、其トキハ貴君ニ家ヲ賣ラズ、金ヲ差上ゲレバ、私ノ義務ハ免カレルノデアリマス、ソレカラ若シ家ガ燒ケレバ外ニ何モ上ゲルニハ及バヌノデス、擇一ノ方ハ幾ツタ物ヲヒゲナケレバナラン
(尾崎委員)
其所ガ違ヒマスネ
(淸岡委員)
上ノ「負擔」ノ字ハ「義務ト」云フ字ニシタラ如何デス
(栗塚報吿委員)
主タル物ノ負擔スルハ義務ト云ハナケレバナラヌノデス
(南部委員)
物ノ義務ハオカシイ
(栗塚報吿委員)
主タル物ヲ辨濟スルノ義務ハト云フノデ、主タル物ヲ辨濟スル義務ハ解除ノ條件モ付テ居ルモノト看做スゾヨ、如何ナル條件カナレバ、任意ノ負擔ヲ辨濟スレバ、解除ト云フ條件付ト看做スゾヨデアリマス
(淸岡委員)
負擔シテ居ル義務デシヨウ、義務ノ解除ト云フ方ニシタイ
(栗塚報吿委員)
ソレデモ宜シイ
(委員長)
分ルニハ分ル、任意ニテ負擔セラレタルデハ「ボアソナード」ガ變ヘタノカ、翻譯デ改メタノデスカ
(栗塚報吿委員)
「ボアソナード」ガ改メタノデアリマス、之ハ擇一義務デナイカラト云フノデ改メマシタ
(南部委員)
「義務ハ任意ト稱ス」トシテハ如何
(栗塚報吿委員)
第二項ハ任意ニテ負擔シタルモノノ辨濟トシテ第三項「稱セラレ」「セラレタル」ハ皆「シタル」ト改メマス
(委員長)
ソレデハ左樣シテ先キヘヤリマシヨウ
本條ハ左ノ如ク決ス
第一項「稱セラル」ヲ「稱ス」ト改ム
第二項「主タル物ハ任意ニテ負擔シタル物ノ辨濟ニ因リ解除スヘシトノ條件ヲ付シタリト看做サル」ト改ム
第四項ハ「セラレ」ハ「シタル」ト改ム
末項「自己ノ撰擇ヲ以テ二箇」トアルヲ刪リ「任意ニテ負擔シタルモノノ價額ヲ」ト改メ其他原案ニ決ス
第四百五十七條朗讀ス
第三款 債權者及ヒ債務者ニ關シテ單一ナリ又ハ複合ナル義務
第四百五十七條 唯一人ノ債權者及ヒ唯一人ノ債務者ノミナルトキハ義務ハ單一ナリ又或ハ初メヨリ或ハ數人ノ相續人ヲ遺シタル當事者ノ一人ノ死亡ニ因リ數人ノ債權又ハ數人ノ債務者アルトキハ義務ハ複合ナリ
複合ノ義務ハ連合又ハ連帶ナリ又其義務ハ次款ニ定メタル如ク不可分タルコトヲ得
(栗塚報吿委員)
本條ノ表題ハ「債權者及ヒ債務者ニ關シテ單一又ハ複合ナル義務」ト直リマスソレカラ唯一人ノ云々「又或ハ初メヨリ數人ノ債權者又ハ數人ノ債務者アルトキハ或ル數人ノ相續人ヲ遺シタル當事者ノ一人ノ死亡ニ因リ義ハ複合ナリ」ト直リマス(村田委員)「ノミ」ト云フ字ガアルカラ「唯」ト云フ字ハ除イテモ宜シイデシヨウ
(渡委員)
初メヨリト云フハ讀ミ惡イ
(松岡委員)
當事者二人死ンダラドウデスカ
(南部委員)
二人ナレバ初メカラ複合デス
(松岡委員)
二人デモ、債權者債務者ト兩方デス
(南部委員)
ソレハ單一デス
(松岡委員)
數人ノ相續人ヲ持テ居ル人ガ一人死ンダラデシヨウ、然ルニ兩方死ンダラドウデスカ
(南部委員)
尙ホ複合デス
(鶴田委員)
「單一ナリ」ト切テ初メヨリヲ刪テ仕舞テ、數人ノ債權者數人ノ債務者間ハ或ルハ當事者ノ一人死亡シテ數人ノ相續人アルトキハトシテ宜シイデシヨウ
(栗塚報吿委員)
其意味デハナイ、數人ノ債權者數人ノ債務者アルトキハ義務ハ複合ト云ヒタイノデアリマス
(鶴田委員)
初メヨリト云ハヌデモ宜シイ、數人ノ債權者數人ノ債務者ナレバ複合ノ義務、ソレカラ一人當事者ノ一方ガ死ンデ何レカ數人ノ相續人アルノ場合デシヨウ
(栗塚報吿委員)
或ハ一人死亡ニ因リト云フ丈ケハ詰リ要ラヌノデ、一人償權者ト一人債務者トハ單一ダゾヨ數人ナレバ複合ト云フノデス、偖テ數人ノ債權者ノ出ルノハ如何ナル場合カナレバ、初メカラ云々ト云フハ餘計ナコトデアリマス
(鶴田委員)
餘計ナコトデスガ、數人ノ債權者數人ノ債務者ト云ヒ、又當事者ノ一人ガ死ンデ相續人數人アリトサヘ云ヘバ宜シイデシヨウ
(南部委員)
分ラヌト云フナレバ、初メヨリノ下ヘ繰リ返シタラ宜シイデシヨウ
(尾崎委員)
分ラヌコトハアリマセン
(渡委員)
初メヨリ、直グ數人ト云フハ六ツケ數イ
(松岡委員)
二人ノ相續ヲ一人引受ケル場合ハナイトハ云ヘヌ、又義務者一人ニ縮メルコトモナイトハ云ヘヌ、スルト複合ノモノガ單一ニナルト云フコトニ陷リマス
(淸岡委員)
初メヨリヲ直シマシヨウ
(南部委員)
元トハ初メヨリ數人ノ債權者若クハ云々トアリマス(村田委員)元トノ方ガ宜シイ
(渡委員)
彼ノ方ガ宜シイ
(栗塚報吿委員)
「相續人アルトキハ」ハ改メナイ方ガ宜シイ、旨意ハ相續人一人シテ義務者多クアルトキ、債權者多クアルトキト云フノデス
(南部委員)
「初ヨリ數人ノ債務者」トシテ直グニ「債權者アルトキハ」トシテ宜シイデシヨウ
(村田委員)
ソレハ宜シイデシヨウ
(鶴田委員)
舊案ノ通リニシマスカ
(栗塚報吿委員)
數人ノ義務者權利者アルトキト云フノデスカラ、舊案ノ通リニシタクナイ
(渡委員)
間ハ入レルコトニシタイ
(栗塚報吿委員)
此儘デハ分リマセンカ
(渡委員)
分ラヌ
(委員長)
「又或ハ」ハ要ラヌ
(鶴田委員)
「又或ハ」ハ要ラヌデシヨウ
(村田委員)
「或ハ」ハ除イテ宜シイ
(渡委員)
「又」「或ハ」ハ重複デス
(栗塚報吿委員)
「又或ハ」ハ是迄モ使ツタノデ、一ツデ宜イト云フコトハアリマセン
(南部委員)
全體ニ及ボシテ一ツニシタイ
(松岡委員)
全體一ツニシタイ
(淸岡委員)
此所ハナケレバ往カヌデシヨウ、支那文デモ頭カラ「或ハ」ト云フガアル
(栗塚報吿委員)
「又或ハ」ハ翻譯デ直ス樣ニ申シマシヨウ
(松岡委員)
「不可分タルコトヲ得」ハ「不可分タリ」トシテ宜シイ
(栗塚報吿委員)
不可分デアルコトヲ得ルト云フ原文デ御座イマス(松岡委員)ソウハ讀メヌノデス
(渡委員)
不可分タリト云テモ、意味ハ害セヌデシヨウ
(栗塚報吿委員)
併シ今日迄「得」トヤツテ來マシタカラ、意味ハ「不可分タルコトアリ」ト云フノデス
(松岡委員)
ソレナレバ宜シイ
(栗塚報吿委員)
何時モ可分ダガ、不可分タルコトモアルト云フノデス
(松岡委員)
「得」ト云フハ誰ガ得デスカ
(栗塚報吿委員)
義務ガ得ルデアリマス
(淸岡委員)
此所デハ上カラ承ケテ、複合ノ義務ハ連帶ナリ、又連合ナリ、又ハ次條ニ申シタ如ク、不可分ナリト、何レヘモ這入ルト云フ丈ケノ話デシヨウ、故ニ、「得ルコトヲ得」トシテモ宜シイ
(松岡委員)
「タルコトアリ」デ宜シイ
(栗塚報吿委員)
之ハ「タルコトアリ」ト直スコトガ出來レバ直シマスカラ翻譯局ヘ申シマシヨウ
(松岡委員)
ソレガ宜シイ
(委員長)
ソレガ宜カロウ、先キヘヤリマシヨウ
本條ハ左ノ如ク決ス
表題ノ「ナリ」ノ二字ヲ刪リ第一項「義務ハ單一ナリ又或ハ初メヨリ數人ノ債權者又ハ數人ノ債務者アルトキハ或ハ數人ノ相續人ヲ遺シタル當事者ノ一人ノ死亡ニ因リ義務ハ複合ナリ」トスル報吿委員ノ修正ニ決ス
第二項末文「不可分タルコトヲ得」トアルハ「不可分タリ」ト改メ「得」ハ翻譯局ヘ問合ノコトニ決ス
第四百五十八條朗讀ス
第四百五十八條 連合ノ義務ニ於テハ次款ニ定メタル如ク債權者ノ各自ハ債權ニ於ケル自己ノ部分ノ爲メニアラサレハ履行ヲ求ムルコトヲ得ズ又債務者ノ各自ハ債務ニ於ケル自己ノ部分ノ爲メニアラサレハ訴追セラルヽコトヲ得ズ
連帶ノ義務ニ於テハ各債權者又ハ各債務者ハ自己ノ名ヲ以テ自己ノ部分ノ爲メニスルト他人ノ名ヲ以テ他人ノ部分ノ爲メニスルトヲ問ハス全部ニ付キ履行ヲ求メ又ハ訴追セラルヽコトヲ得但第四編第一部第二章ニ記載シタル如ク各自カ其現實ノ部分ヲ踰ヘテ受ケ又ハ拂ヒタルモノヽ爲メ擔保訴權ニ因レル互相ノ求償權ヲ妨ケス
(松岡委員)
之レハ能ク分ル
(栗塚報吿委員)
之レハ連合ヲ說キ明シテ來タノデス
(松岡委員)
連合ト云ハナケレバナランカネ、分割トカ何ゾソウ云フ風ニ事柄ガ分レテ來ルト云フコトデスカネ
(栗塚報吿委員)
等シク共ニ金ヲ借リテ居ルガ連帶デハナイゾヨ、一諸ニ付テ行クト云フノデ、共行ト云フノデアリマス
(松岡委員)
直譯デアリマシヨウ、攻撃スル點デハナイガ、元來ヲ云フト此者ハ五人三人頭マヲ並ベテモ銘々受ケ分ガ違ウト云フノデシヨウ
(栗塚報吿委員)
頭マヲ並ベテ居ルノダト云フ字ヲ書クノデ、結果ハ連帶デナイト云フ理窟デ說クノデ、最初頭マヲ並ベテ居ルノデアル、共ニ結ビ付ケテ居ルト云フノデアリマス
(松岡委員)
連合義務ト云ハナケレバナランノデシヨウカ
(栗塚報吿委員)
左樣デス
(松岡委員)
義務ノ連合ガナクナルノデシヨウ
(南部委員)
訴訟法ニモ共同訴訟ト云フコトガアル、アレト同ジデ、必ラズ共同シテ居ラヌデモ、矢張リ共同ノ中ヘ這入テ居ルノデス
(松岡委員)
連合ト云フガ意味ニ適ハヌト、攻撃仕ルノデハナイガ、意味ガ無茶トナリハセンカ
(栗塚報吿委員)
文字ハ意味ヲ現ハス爲メノ字デハナイ、翻譯ハ此所ノ意味ヲ取テ拵ヘタ字デナイカラコウナツタノデアリマス「連」ノ字ハ如何デスカ、共ニ合スルト云フ字ハアリマス
(松岡委員)
口ノ上デ言フト、連帶義務不可分義務ト云フ、其所デ連合義務ト云フト分割ニナルト云フ方ニハ意味ガドウシテモ思想ニ浮バヌノデス
(栗塚報吿委員)
共ニヤツテ居テト見テ始メテソレガ云ヘルノデ、連合ト云フカラ、債權者ハ自己ノ部分デナケレバ訴追セラレナイト見ヘルノデアリマス
(松岡委員)
複合ノ義務ハ各分又ハトシタイ
(栗塚報吿委員)
共ニ契約シタ後ヲ申度イノデス
(松岡委員)
裏ノ解釋デスカラ、私ハ辛ヒガ宜ヒト云フ、貴君ハ甘イガ宜イトハ云ヘヌノデス
(栗塚報吿委員)
一諸ニ金ヲ借リナガラ、各自ガ別々ニ負擔スルゾヨト云フノデ、初メカラ一諸ニト云フ意味ガナケレバナラン、分割ト云フト、初メカラ一ツ證文デナイト云フ樣ニ見ヘマス
(松岡委員)
私ハ各分ト云テ欲シイ
(栗塚報吿委員)
ソレデハ、詮ガアリマセヌ、一ツ證文ニ顔ヲ出シタト云フヲ見セルノガ必要デアリマス
(松岡委員)
ソレハ必要ハナイ、只複合ニナツテ居レバ一ツダガ、義務ハ各分ト云フノデ、各分ノ義務ト云ヘバ宜シイノデス
(淸岡委員)
連帶シテ義務ヲ分擔シテ居ルカラ、「連分義務」トシテハ如何
(鶴田委員)
連ナツテ割レルノデアルカラ「連割義務」トシテハ如何
(委員長)
譯字ノ論ナラ翻譯局ヘ任セ樣デハナイカ
(渡委員)
一項ノ終リハ「訴追セラルルコトナシ」トハ云ハレマセンカ「得ス」ト云フノハ前ノ履行ヲ求ムルコトヲ得ズト云フハ宜シイガ後ノ「訴追セラルルヲ得ス」ト云フハオカシイ
(淸岡委員)
「訴追スルコトヲ得ス」デス
(栗塚報吿委員)
「債權者ハ訴追スルコトヲ得ス」ト云フノデアリマス
(渡委員)
「得ス」ト云フハドウモ折合ガ惡ヒ樣ニ思ヒマス
(栗塚報吿委員)
澄文面デ結ビ付ケナケレバナラント云フ意味ニ相違ナイ
(栗塚報吿委員)
今日迄隨分「訴追セラルルコトヲ得ス」ト云フタ例ハ澤山アリマス
(村田委員)
此儘デ宜カリソウナモノデス
(栗塚報吿委員)
此ノ「得ス」ト云フモ前條ノ「不可分タルコトヲ得」ト云フノガ「不可分タリ」ト直レバ無論「ナシ」ト云フニナリマス
(尾崎委員)
「ナシ」ト云フ方ガ宜シイ
(渡委員)
コウスルニアラザレバト云フノダカラ「ナシ」ト云テモ宜シイデシヨウ
(松岡委員)
「ナシ」ガ宜シイ
(栗塚報吿委員)
少シ「ナシ」ト「得ス」トハ違ヒマシヨウ、之モ一ツ翻譯局ヘ相談致シマシヨウ
(淸岡委員)
「セラルル」ハ止メテ「訴追スルコトヲ得ス」トシテ宜カロウ
(渡委員)
ソウ云テハ往カヌノデス
(淸岡委員)
訴追ハ債權者ガスルノデ、債務者ハ出來マセヌト云フノデス
(栗塚報吿委員)
「得ス」トアルヲ「ナシ」ト出來ルヤ否ヤ聞イテ見マシヨウ
(松岡委員)
ソレガ宜シイ
(委員長)
左樣シテ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ左ノ如ク決ス
末項末文「訴追セラルルコトヲ得ス」トアルハ「訴追セラルルコトナシ」トシテ差支ナキヤ翻譯局ヘ質スコトトシ他ハ原案ニ決ス
第四百五十九條朗讀ス
第四款 本性又ハ其履行ニ關シテ可分ナリ又ハ不可分ナル義務
第四百五十九條 第四百五十七條ニ定メタル單一ノ義務ハ債權者ト債務者トノ間ニ在テハ不可分タル如クニ履行セラルヽ事ヲ要ス但第四百二十六條ヲ以テ一分ノ辨濟ヲ許スコトニ付キ裁判所ニ與ヘタル權能ヲ妨ケス〔第千二百二十條〕
(栗塚報吿委員)
表題ノ「ナリ」ハ刪リマシヨウカ
(松岡委員)
勿論デス、之ハ「如クニ」ト云フ字ニ力ヲ入レタ字デスネ
(栗塚報吿委員)
不可分トシテト云フ意味デアリマス「セラルル」ヲ「スル」ト直シマス「不可分タル如クニ之ヲ履行スルコトヲ要ス」ト致シマス
(南部委員)
「之ヲ」ガアレバ「ニ」ハ要ラヌデシヨウ
(鶴田委員)
「不可分タル如ク」ハオカシイ
(委員長)
債權者ト債務者ノ間デ不可分ト云フコトヲ云フノデスカ(栗塚報吿委員)左樣デス、何ゼナレバ一人ト一人デアリマスカラ、不可分ノ樣ニヤレト云フデアリマス
(委員長)
義務ハ權利者ニ關係ハアリマセンデシヨウ
(栗塚報吿委員)
權利者ト義務者ノ間デスカラ
(委員長)
權利者丈ケハ刪レソウナモノダ、義務丈ケ不可分ト云フノデ權利者ト、義務者ト、義務ヲ不可分デ持ツト云フコトハアリマスマイ
(南部委員)
義務者ノ義務ハ不可分デ、其間デ權利者ト云テモ、義務者ト云テモ、間ガ不可分デアリマス
(栗塚報吿委員)
債權ノ不可分デアリマス
(委員長)
債權カラ云フト、債權ガ不可分デシヨウカ
(南部委員)
貴君ハ權利者私ハ義務者デ、此間ガ不可分デアリマス、此義務ハ中間ニ居ルモノト見ナケレバナラン
(委員長)
ソレハ何ウモ合點ガ行カヌ、何ゼ義務丈ケガ中間ニ居ルカ、義務ガ中間ナレバ權利モ中間ニ居リソウナモノデス、權利義務ト云フハ一ツモノデ見ルト、何ゼ一方ノミヲ云フカ裏カラモ表カラモ云ヘソウナモノデス
(栗塚報吿委員)
ソレ故ニ人權卽チ債權ハ義務ト對等スルト云タノデアリマス
(南部委員)
義務ト云フモノハ一ノモノダト見テ居ルカラ義務ノ方カラ論ヲ立テルト、債權者カラ說ヲ付ケルコトモ出來ル、何レカラモ出來ル、矢張リ權利ノ目的ノトキハ義務者カラモ行ケマス
(委員長)
定義ガアレバ宜シイガ、今日迄ハ其所迄ハ見ナイノデ、權利者ニモ義務ガアルニ相違ナイ
(栗塚報吿委員)
雙務契約ハ雙方ニ權利義務ガアルノデス
(委員長)
雙務ハ別デスガ、義務不可分ト云フト、權利者ニ義務アリト云ハナケレバナラン
(松岡委員)
委員長ノ說ハ上手ナ代言人ノ辯論ト同ジデス
(栗塚報吿委員)
單一ノ義務ハ唯一人ノ債權者、唯一人ノ債務者ノ間ニアル義務ハデアリマス
(委員長)
併シナガラ箇樣ナコトヲ初メ書出スハ宜クハアリマスマイト思フ
(南部委員)
債務者ニ對シテハ債權者カラ履行シナケレバナランカ、債權者カラ債務者ニ對シテ、ソンナコトヲスルニ及バヌトナルカラ、間ト云フ字ハ何レカラモト云フノデアリマス
(委員長)
コウ書ケバ行ケル「債權者ト債務者ノ間ニ在ル單一ノ義務ハ」トヤリマス、左樣スルト、今ノ憂ハナカロウト思ヒマス、義務ハ必ズ債務者ニアルノデ、決シテ債權者ニアルノデハアリマセヌ
(栗塚報吿委員)
ソレデハ外ニ單一ノ義務ガアレバ宜シイガ、債權者債務者ノ間ハ單一ノ義務ガアルノデアリマスカラ
(委員長)
アリサヘシナケレバ幾ラ書イテモ妨ゲナイ
(栗塚報吿委員)
「單一義務ハ不可分タル如ク之ヲ履行ス」ト申セバ宜シイノデ、實ハ債權者債務者ノ間ニ在テハト云フハ餘計デアリマス
(委員長)
原文デハ同ジ間ニ在リト書イテモ、履行スルト云フ字ノ間ヘ入レタカラ違フガ、此所デハ義務ハ間ニ在リト云フカラ
(栗塚報吿委員)
間ニ於テトアリマス
(委員長)
單一ノ義務ハ債權者ト債務者ノ間ニ於テハデス
(栗塚報吿委員)
恰モ不可分ト同ジ樣ニ履行サレネバナラヌト云フノデ、單一義務ハ不可分タル如クニ債權者ト債務者ノ間ニ履行スルコトヲ要スト云フト宜シイノデス
(委員長)
ソレナレバ我輩ハ疑ヒナイ
(栗塚報吿委員)
皆サンハ如何デス
(委員長)
分リ切テハ居ルガ、文字ノ上ガオカシイ
(淸岡委員)
穿テ云フト委員長ノ云フ樣ナ說ガアルノデスガ、分テ居ルカラ宜シイ
(鶴田委員)
權能ト云フハ裁判所ノ權デシヨウ
(栗塚報吿委員)
左レバ彼云フ權能ヲ與ヘタノデアリマス
(淸岡委員)
權能ト云フノハ、違イハセンカ
(栗塚報吿委員)
アレデ御座ヒマス
(淸岡委員)
寧ロ權ト云ヘバ先ヅ宜シイデシヨウ
(松岡委員)
權ト云フハ強過ギルト云フノデシヨウ、之ハ職權ト云フノデス
(栗塚報吿委員)
權力ト云フモ同ジデアリマス
(委員長)
「單一ノ義務ハ不可分タル如ク債權者債務者ノ間ニ於テ履行スルコトヲ要ス」ト云フノト又、單一義務ハ債權者ト債務者トノ間ニ於テ、不可分ノ如ク履行セラルルコトアリト云フノト何レガ宜シイカ
(鶴田委員)
何レデモ宜シイ
(松岡委員)
此儘デ差支ナイ
(淸岡委員)
之デ差支アリマセヌ、是レ迄ノ例ニ依テハ權能ト云フコトハ幾分カ義務ヲ帶テ居ル、暇令バ之ヲ以テト云フハ之ヲトナツタガ、裁判所ト云フモノハ一身ニ付テ利益ハナイ、債務者ニ對シテ、債權者ニ對シテデス
(松岡委員)
「能」ノ字ニ力ヲ入レルカラデシヨウ
(栗塚報吿委員)
權利ト云フト能ク分ルノデ、其意味ガ大キニアリマス
(鶴田委員)
職權トハ云ヘマセンカ
(松岡委員)
職權デモ宜シイ
(南部委員)
「權能」ノ方ガ「權利」ト云フヨリモ宜シイ
(尾崎委員)
權ノ働キデスカラ「權能」デ宜シイ
(委員長)
先キヘヤリマシヨウ
本條ハ左ノ如ク決ス
表題中「可分ナリ」トアル「ナリ」ノ二字ヲ刪リ第一頂末文「如ク之ヲ履行スルコトヲ要ス」ト改ム
第四百六十條朗讀ス
第四百六十條 連合義務ニ於テ債權者ノ各自カ履行ヲ求ムルコトヲ得又ハ債務者ノ各自カ訴追セラルコトヲ得ル現實ノ部分ハ合意ニ從ヒ又ハ事實ノ狀況ニ從ヒ定メラル
若シ此部分カ此ノ如ク定メラルヽコトヲ得サルトキハ其部分ハ平分ナリ卽チ分頭ニテ計算セラル但債權ノ利益又ハ債務ノ負擔ニ於テ各自ヲ其現實ノ部分ニ復スル爲メ互相ノ求償權ヲ妨ケス
(渡委員)
前條ガ「ナシ」トナレバ此條モ從テ「訴追セラルルコトアリ」トシナケレバナラン
(栗塚報吿委員)
前ニ從テ直シマス
(松岡委員)
第一項末文「定メラル」ハ「之ヲ定ム」トシテ宜シイデシヨウ
(栗塚報吿委員)
左樣デス
(委員長)
其部分ハ平分ナリト云テ卽チ分頭ト云フハ
(栗塚報吿委員)
平分ト云フハ何カナレバ卽チ分頭ト計算スルノデアリマス、頭マ割リデ計算スルゾヨト云フノデアリマス、私ト松岡サント、南部サントデ、貴君カラ三百圓借リテ居レバ、現實ハ栗塚ガ二百圓、南部サンガ三十圓ホカ借リナイ、松岡サンハ七十圓ト見レバ宜シイ、分ラヌトキハ三人デ百圓ヅツ、ソレヲ離シテ居レバ栗塚ガ二百圓、南部サンガ七十圓、松岡サンガ三十圓出サナケレバナラント云フノデアリマス
(委員長)
オカシイト思フ、頭マ割ニシタラバ宜カリソウナモノデス
(栗塚報吿委員)
債主ニ對シテ丈ケノ話デ、但以下ハ内輪ノ話デアリマス債務者同士ノ内デハ債務者ノ負擔ノ方デ、債權者ノ方デハ、貴君ト、尾崎ト二人デ、私等三人ニ三百圓貸シタラ、如何ナル分チガアロウトモ、百圓ヅツ御取リニナルノデアリマス
(委員長)
ソウ云フコトニハ相違ナイ
(南部委員)
債權者ト債務者ノ間ニ起ツタ訴訟デヤルノダカラ、證據ハ充分デナクトモ、裁判シナケレバナランコトモアルカラ債務者間ニ於テ、ソレ丈ケノコトガ出來ル樣ニシナイト往カヌカラ、其所ヲ慮ツタ丈ケデアリマス
(委員長)
念ノ入リ過ギタ話ト思ヒマス
(松岡委員)
多分ハ貧亡ナ者ガ澤山使テ居ルノデス、ソレハ分ツテ居ルガ分ラヌトキハ分頭デ取ルト云フノデス
(委員長)
債主カラ云フト、左樣デシヨウガ、實情ガ分ルノハ宜シイノデ、分レバ此ハ何程ト云ヒ半分ニヤツテ、分ラヌトキハ頭マ割ト云フノガ宜サソウナモノデアリマシヨウ
(南部委員)
ソレハ違フ、債權者ト債務者ノ間ニ起ル訴訟デ、百圓ヅツ三人ト極マツテモ、之ヲ以テ己レハ百圓ヨリ上ハ出ス義務ハナイト云フコトハ言ヘヌノデアリマス
(鶴田委員)
之ハ宜シイ
(委員長)
宜ケレバ先キヘヤリマシヨウ
本條ハ左ノ如ク決ス
第一項末文「定メラレ」ハ「之ヲ定ム」ト改メ二項「定メラル」ハ「定ムルコトヲ得」トシ「計算セラレ」ハ「計算ス」ト改メ他ハ原案ニ決ス
第四百六十一條朗讀ス
第四百六十一條 債權者又ハ債務者ノ死亡ノ場合ニ於テ單一又ハ連合ノ義務ハ各相續人カ死者ヲ名代スル部分ニ付キ働方又ハ受方ニテ其各ノ間ニ分タル〔第千二百二十條〕
連帶義務モ右ニ等シク當事者ノ相續人ノ間ニ可分タリ〔第千二百十九條〕
(鶴田委員)
「働方受方ニテ各ノ間ニ之ヲ分ツ」トシマスカ
(栗塚報吿委員)
左樣デス
(鶴田委員)
連帶義務ガ可分ニナル場合ハ、例令バ此丈ケノ人數ガ連帶シテ物ヲ買ヒ、私ガ死ンデ私ノ子供ガ三人居テ、子供ノ方デハ可分ニナリ、債主ノ方デハ今度連帶義務ノ方カラハ訴ヘラレナイ譯デアリマスカ
(南部委員)
左樣デス
(鶴田委員)
併シ土臺連帶義務ノ縺レカラ三人一諸ニ訴ヘルコトハ出來ルダロウ
(南部委員)
可分ニナツテ仕舞ヒマス
(鶴田委員)
元トノ土臺ノ連帶ハ崩レマスカ
(南部委員)
左樣デス
(尾崎委員)
上ニ相續人數人アツテハ連合トナリ、又連帶トナリトアリマス、此レハ可分ナリトアルガ如何ナリマスカ
(南部委員)
前ノ連合、連帶ハ複合ト云フノデシヨウ、其複合ト云フコトヲ說タノデアリマス、人數ガアレバ複合デス、初メカラ二人ノ分モアル、親ガ死ンデ相續人二人デ複合ニナルコトモアルト云フノデアリマス
(鶴田委員)
義務ガアリマスガ、貴君ト二人デ、連帶デ金ヲ借リテ居タノデ、私ガ死ヌト子供ハ可分ニナツテ仕舞フ、スルト此度連帶ハ貴君一人ニナツテ仕舞フ
(栗塚報吿委員)
貴君ノ親屬ガ貴君ノ一人分ハ代表シテ居ルノデアリマス
(鶴田委員)
二人デ二百圓借リタトスル、所デ私ガ死ンダガ、子供ハ三十何圓ヅツカ引受ケタノデ、スルト連帶ハナイカラ、貴君ハ百圓ノホカ行カヌノデスカ
(栗塚報吿委員)
否エ、行クノデアリマス、貴君ノ相續人ニモ連帶デハ行カレヌガ、貴君ノ分丈ケハ行ケルノダ、子供ガ二人ナレバ、百圓ヅツ行ケルノデアリマス
(南部委員)
ソレハ行ケルノデアリマス、不可分デ行クコトハ出來マセヌ
(栗塚報吿委員)
其者一人ニ對シテ二百圓ハ行カヌガ、一人ニ百圓ヅツハ行ケルノデアリマス
(鶴田委員)
左樣スルト、元トノ連帶ヲ措テ、子供ヘ可分ニテヤルノデスカ
(栗塚報吿委員)
左樣
(尾崎委員)
尋常ノ連帶ヨリハ輕クナツタノデスネ
(栗塚報吿委員)
左樣デス
(委員長)
尋常連帶デスラ、一方ノ者ガ拂ハヌトキハ一方ノ者ガ拂テ宜シイノデシヨウ
(南部委員)
義務ガ輕クナリマス
(委員長)
親父ノ借リタ丈ケナレバ宜シイガ、貴君ノ方ノマデ、負ハナケレバナランカラ
(南部委員)
親父ノ借リタ金ハ五圓デハナイ、實ハ百圓デアリマス(委員長)尋常云ヘバ貴君ガ百圓、私ガ百圓デシヨウ
(南部委員)
左樣デハナイ
(委員長)
現實ハ何カナレバ、二百圓ヲ二人デ分ケタモノト見ルガ宜シイ
(松岡委員)
南部委員ハ貧乏ダカラ、二百圓カリテ、百五十圓使タノデ、今ニナルト四文モナイ、鶴田サンノ相續人ハ金持ダカラ、息子二人ニ係テヨコセト云フ、其代リ鶴田サンノ方ガナクナレバ、南部サン一人ニ係テ取リマス
(南部委員)
鶴田サンノ負フタ額ハ二百圓デアリマス
(栗塚報吿委員)
相續ノトキハ二百圓デ、子供ハ百圓ヅツト云フノデアリマス
(松岡委員)
相續法ハ未ダ定マリマセヌガ、五人ノ子ガアレバ五人ニ相續ヲサセルトナレバ、皆ナ連帶ニナレバ難義デス
(栗塚報吿委員)
ソレハ大變デス
(委員長)
死亡ノ場合ニテ、單一連合ト云フノハ
(栗塚報吿委員)
連帶義務デナイ方デス
(委員長)
單一義務デモ、親父ガ死ヌト子ガ三人アル、然ルニ百圓ナレバ三人平等ニ割テ三十三圓幾ラヅツトスルノカ
(栗塚報吿委員)
名代ヲスル方ハ幾ラカ知レヌガ、卒等ニ割レバ三十三圓幾ラヅツト云フ理窟ニナリマス
(尾崎委員)
普通ノ連帶トハ違ヒマス
(栗塚報吿委員)
同ジデアリマス複合ノ場合ハ連合ト連帶トアルノデ、今日云フ連帶義務ハ卽チソレデアリマス
(淸岡委員)
「分カタル」ハ下ニ「可分タリ」トアルカラ、素人ガ見ルト違ウ樣ニ見ヘル
(松岡委員)
全體皆分ツトシタイ
(南部委員)
「之ヲ分ツ」ヨリハ「可分タリ」ガ宜シイ
(委員長)
先キヘヤリマシヨウ
本條ハ左ノ如ク決ス
第一項末文「分タル」トアルヲ「之ヲ分ツ」ト修正シ他ハ原案ニ決ス
第四百六十二條朗讀ス
第四百六十二條 複合ノ義務ハ左ノ場合ニ於テ債權者又ハ債務者ノ間ニ不可分タリ
第一 負擔シタル目的ノ本性ニ從ヒ一分ノ履行カ形體上及ヒ權利上不能ナルトキ〔第千二百十七條〕
第二 義務ハ其本性ニ因リ可分ナルモ或ハ當事者ノ明示ナル意思或ハ其企圖シタル目的又ハ事實ノ其他ノ情況ヨリ生スル意思ニ從ヒ一分ニ付キ之ヲ履行スルコトヲ得スト爲シタルトキ〔第千二百十八條〕
(栗塚報吿委員)
第一ノ場合ハ馬ノ如キハ形體上不可分ノ物デアリマス、不能ナリト云フノハ分チ能ハザルト云フノデアリマス
(松岡委員)
地役ハ權利上ノ不能デスネ、如何ナル譯デ明示ナル意思トヤツタカ
(栗塚報吿委員)
明カナル意思デス
(松岡委員)
明示ト云フタラ、意思ヲ云タコトデシヨウカ
(栗塚報吿委員)
意思デナイ、法律カモ知レヌ、法律ガ明示又ハ默示ト云テ居ルカラ「明示」ト云フハ明カニ言タノダカラ必ラズ明示ト云タラ、意思カト云フ譯ニハ往カヌ、ソレハ重モニ意思デアリマシヨウ
(松岡委員)
大明瞭ト云フ譯デハナイ、明示ナル意思ト構成法ニ使テ居リマス
(栗塚報吿委員)
原文ニハ當事者ノ明示ナリト云フテアリマス(松岡委員)「或ハ」トカ「又ハ」トカ
(栗塚報吿委員)
或ハ當事者明示ナリ或ハ何ヨリ生ズル意思ト云フノデス
(松岡委員)
下ヘ置ケルナレバ、上ノ「意思」ハ刪テモ宜シイ(栗塚報吿委員)分ラヌト云フノデ、當事者明示ナリ、或ハ何ニヨリ生ズルト云フ意思ト對スルノデ
(淸岡委員)
「其他ハ」イラヌデシヨウ
(栗塚報吿委員)
企圖シタ目的ヨリ生ズル意思、又ハ事實其他ノ情況ヨリ生ズル意思、ソレカラ當事者ノ明示ナル意示ト三ツノ意思ニ從ヒマス
(淸岡委員)
事實ノ情況デハナイカ、「其他」ハオカシイ
(栗塚報吿委員)
目的ヨリ他ヲ云フノデ企圖シタ目的ノ如キモ情況ヨリ外ハナイ
(淸岡委員)
事實ノ情況ト云フノハドウ云フモノデスカ
(鶴田委員)
「又ハ其他ノ事實ノ情況」ト云フト分リマス
(委員長)
左樣スレバ分リマス
(渡委員)
左樣致シマシヨウ
(栗塚報吿委員)
「其他ノ事實ノ情況」トシテ宜シイ
(尾崎委員)
ソレガ宜シイ
(鶴田委員)
左樣シマシヨウ
(委員長)
宜ケレバ左樣シテ今日ハ是迄デ置キマス
本條ハ左ノ如ク決ス
末項「事實」ノ下「其他ノ」ヲ刪リ「又ハ其他事實ノ情況アリ」ト修正シ他ハ原案ニ決ス
于時午後第四時三十分閉會