法律取調委員会 民法草案議事筆記 第19回
参考原資料
- 法律取調委員会 民法草案第二編物權ノ部議事筆記 , 自 第十七回 至 第二十二回 [国立国会図書館デジタルコレクション]
備考
- 未校正のテキストデータです.
民法草案財產篇物權ノ部第十九回議事筆記
自第七百五十一條至第七百六十五條
明治二十一年一月三十一日午前九時開會
(委員長)
ヤリマシヨウ
第七百五十一條朗讀ス
第七百五十一條 同上ノ條例ハ行政廳ヨリ特許シタル引水ニハ其時期ノ如何ヲ問ハス之ヲ適用ス又各個人ヨリ許シタル引水ニハ其許ヲ得タル者ノ終身間又ハ定マリタル時期ノ間之ヲ適用ス但其定マリタル時期ガ水ノ通路ヲ求メタル當時ニ於テ尙ホ少ナクトモ五年間繼續スル事ヲ要ス〔伊民第六百四條〕
(栗塚報吿委員)
「當時ニ於テ」トアリマスガ「當時ニ於テ」ト云フ事ヲ「ヨリ」ト云フ事ニ一切改メルト云フ事デアリマシタガ併シナガラ「於テ」デ分ルト云フンデ此儘ニナツテ居リマス
(南部委員)
私ハ「ヨリ」ト云フガ宜シイト思ヒマス「於テ」ト云フト如何ニモ日本文デハソレ迄繼續スル事ヲ要スト云フ樣ニ讀メマスル樣デスカラ、ソレヨリハ「ヨリ」トシタ方ガ宜シイト思ヒマス
(栗塚報吿委員)
「ヨリ」ト云フト其時ニ少クトモ五年間ト云フ事ナルニ然ルニ其時カラ五年間デハナクシテ其時ニ尙ホ五年間繼續スル意味デ御座イマス
(松岡委員)
求メタ時カラ少クトモ五年デスカ
(栗塚報吿委員)
其時ニ尙ホ五年續カナケレバナラン、其五年ハ何時カラナレバ其時カラニハ相違ナイガ、認メタトキ尙ホ此先キト云フ意味ト思ヒマス
(尾崎委員)
五年經過シナケレバ求メラレナイカ
(南部委員)
求メテモ直グ行ツテ仕舞フ
(村田委員)
「ヨリ」ノ方ガ分リ易イ
(栗塚報吿委員)
皆「ヨリ」ニスルノデスカ
(松岡委員)
行政廳ヨリ公益ヲ計テ灌漑或ハ工業ノ爲メニ許ストナリマスカ
(村田委員)
總テ引水ハ中間ノ土地ヲ經過スルガ要用デシヨウ
(栗塚報吿委員)
左樣デス
(松岡委員)
公衆ノ爲メト云フ廣ク係ル方ノ事ヲ云フノデシヨウ
(栗塚報吿委員)
中間ノ土地ヘ引ク事モ出來ルト云フノデス
(松岡委員)
許スト云フハ
(南部委員)
行政廳カラ許スト云フハ行政廳カラ引水ノ事ヲ許スハ各個人カラ許スト云フノト區別シタ丈ケデ行政廳カラ許スノハ警察權カラ許スト極マツタ事ハアリマスマイ
(松岡委員)
ドウ云フ事ダロウ行政廳カラ許スノト、各個人ト云フハ泉源ノ人デスカ
(南部委員)
泉源デス
(松岡委員)
甲乙丙トアルト丙ニ許シタトキカ
(南部委員)
左樣デス
(村田委員)
水道ヲ引クニ免許ヲ得ルト貴君ノ地面ヲ通ラナケレバナランガ東京府カラ得タ免許ナレバ一生涯出來ルガ若シ隣リノ地面ナレバ貴君ノ許可ヲ受ケタノデハ一生ハ出來ナイト云フノデシヨウ
(松岡委員)
終身間出來ルノデス
(村田委員)
ソレハ其レ丈ケノ許シヲ受ケナケレバナラン
(南部委員)
行政廳ノ許ハ定マリタル時期デナクシテ出來ルノデス
(鶴田委員)
一代デモ二代デモ子孫マデ出來ルデシヨウ、又各個人ヨリ許ヲ受ケタ者ハ終身デ又ハ定マリタル時間、其定マリタル時間ハ水ノ通路ト云フハドウモ分リマセン
(松岡委員)
本文ノ通リデ宜シイ樣デス、定マリタル時期ト云フノハ一、二年デハイカヌト云フデス
(鶴田委員)
但水ノ通路ヲ求メタル當時ニ於テ定マリタル時期ハ少クトモトシテハ如何デス
(村田委員)
行政廳カラ云フト時期ハ構ハヌガソウスルト人ノ地面ヲ通ルニモ行政廳カラナレバ構ハヌト云フノハ如何ナモノデスカ
(松岡委員)
ソレダカラ行政廳ハ妄リニ許スモノデナイ、公益ニ關係シナケレバ行政廳ガ立入ル可キ筈ハナイ、之ヲ「ヨリ」トスレバ求メタル時ヨリトスルガ宜シイ
(鶴田委員)
許可ヲ得テカラ五年間承諾ガ續イテ居ルト云フ事デシヨウカ
(松岡委員)
左樣デシヨウ
(委員長)
翻譯ハドウデスカ
(栗塚報吿委員)
「於テ」丈ケハ餘計カモ知レマセン
(村田委員)
「通路ヲ求メタルヨリ」トハ出來マセンカ
(栗塚報吿委員)
「通路カ求メラレタルトキニ尙ホ五年續クトモ」トアリマスノデス
(村田委員)
ソウスルト當時ト云フハ要ラヌノデス
(南部委員)
一體ノ文章ヲ云フト「ヨリ」ト云ハナケレバ日本文デハ分リマセン
(栗塚報吿委員)
當時ニ於テ尙ホ其時ヨリ少クトモ五年間繼續スル事ヲ要ストシテハ如何
(南部委員)
「當時ニ於テ」ト云フハ必要デシヨウカ
(栗塚報吿委員)
五年間繼續スルト云フガ尙ホ少クトモハ、水ノ通路ヲ求メタル當時デス
(松岡委員)
繼續ト云フハ五ケ年間期限ノアル方ニナルト分リ宜イガ
(鶴田委員)
「期限ハ尙ホ五ケ年間ヲ要ス」トスルカ
(松岡委員)
ソレナレバ宜シイ
(栗塚報吿委員)
書キ樣ガ惡イノデシヨウガ「當時ヨリ」トナスツテモ格別ナ事ハアリマスマイカラ「ヨリ」トシテモ差支ハアリマスマイ
(村田委員)
「ヨリ」トスレバ分リ宜イガ之デモ分ラン事ハナイ
(尾崎委員)
「ヨリ」トシタラ少シハ分リ易イ
(鶴田委員)
「尙ホ少クトモ五ケ年間ノ時期ヲ要ス」トスルカ
(渡委員)
「當時ヨリ」トシタ方ガ分リ易イ
(栗塚報吿委員)
原文ハ、通路ヲ求メラレタルトキ尙ホ少クトモ五年續クナレバトアリマス
(渡委員)
分ル事ハ栗塚サンノ云フ通リ置キ換ヘタ方ガ分リ易イ
(栗塚報吿委員)
又ハ定マリタル時期ノ間之ヲ適用スルト云フト定マリタルニ縁ガ遠イカラ仕方ナシニコウヤツタノデシヨウ
(委員長)
我輩ノ考フルニ「ウールボツサージ、レクラメー」ト云フ字ガ間ヘ這入ルカラ分ラヌノデシヨウト思フ
(淸岡委員)
原案ガ宜サソウデス、之ヲ當時ヨリト云フト少シ又弊害ガ出テ來ル樣ナ心持ガスル當時ヨリト云フト其時カラト云フノダカラ通ル間ノ五ケ年トナルカラ、求メタル時カラ五年間トナツテ困ルノデス
(南部委員)
同ジ事デス
(栗塚報吿委員)
水ヲ求メタノハ去年ノ暮ナルトキハ後チ五年續クナレバ宜シイト云フノデス
(鶴田委員)
栗塚サンノ云フ通リ當時ヨリガ宜イ、同意致シマシヨウ
(尾崎委員)
簡單ニ云フト「定マリタル時期ヨリ尙ホ五年間繼續スル」ト云テ宜シイ
(栗塚報吿委員)
左樣デス將來ハ何時ヨリカナレバ水ヲ求メタトキ先々迄續クト云フノデス
(淸岡委員)
求メテ暫ク工事ヲセズニ抛擲シテ置イタ所ガ五年ダカラ所有地ヲ持テ居ル者ハ困ル故五年ノ繼續ト云フハ中間ノ繼續ヲ保護スルニアルノデ僅カニヤラレテハ困ルノデス
(松岡委員)
五年ヨリ多イモノデナケレバ許サヌノデシヨウ
(淸岡委員)
其位ノモノデナケレバ往カヌト云フノデス
(栗塚報吿委員)
元トハ少クトモ十年ト極メタノデス所ガ五年位保護シナケレバナラント云フノデ斯ノ如クシタノデス
(淸岡委員)
時期ガ定マツタガ五年間繼續シナケレバナラン、當時カラ五年間トナルト却テ弊ガ出來ルカラ矢張リ當時ニ於テトシタ方ガ宜シイ
(松岡委員)
意味ハ同ジ事デス
(南部委員)
淸岡サンノ說ニシテモ左程差支ハナイ求メタ時カラ五年間デス
(松岡委員)
當時ニ於テトシテモ構ハヌガ元トノ通リデ宜シイ樣デス
(淸岡委員)
ソウスルト少シ研究シナイト困リマス、求メタ當時ヨリトナツテ居ルト相談ヲシテ求メル相談シタトキカラ五年ニナルト相談ヲ承諾シテ、愚圖々々シテ居テ遂ニ工事ヲシテ水ガ通ルトナルト間ガ僅カ三年外ナイト云フ樣ナ事ガ生ジテ來ル
(松岡委員)
ソレハ構ハヌ只時期ガ五年ノ時期ヲ以テ居ルノデナケレバ求メラレナイ求メルニハ五年ノ間約束期限ノアルノデナラント云フノデス
(淸岡委員)
五年ハ何カラ出ルカナレバ前條ノ家内用ノ爲メ償金ヲ拂フ云々トアリマス償金ヲ拂テカラ五年繼續ガ出テ來タノデアリマス
(松岡委員)
ソレハ通過スルカラ償金ヲ拂フノデス
(淸岡委員)
約束シタケレドモ未ダ通過シナイカラ償金ヲ拂ハヌト云フ、ソウシテ見ルト五年間繼續シタ期限内ニモナラン通過セヌカラ、約束ハシタケレドモ未ダ五年ハ水ガ通ラヌニ由テ償金ヲ拂フ事ハナイ、而シテ見ルト水ノ通過ヲ始メテカラ償金ヲ拂フニナルノデ然ルトキハ二年デ濟ムモ三年カ知レヌガ五年繼續ト云フ期限ヲ立タ旨意ガ一向分リマセン償金ヲ五ケ年拂フナレバ中ノ者ハ迷惑スルカラ償金ノ上ヨリ五年間ガ出來タノデアリマス
(松岡委員)
ソウ云フ事デハアリマスマイ
(栗塚報吿委員)
同ジデス
(尾崎委員)
工事ガ暇ノ入ル抔ト云フ事ハ見テハ居リマセン
(松岡委員)
期限ハ五六年外ナイ又水ヲ通ズル必要ガアツテ地主カラ許ヲ受ケテ居ル者ガ二三年モ打ヤツテ置ク樣ナ愚ナ事ハアリマスマイ又工事ト云フテモ水田ナレバ樋ヲ伏セルニモ及バズ畑ナレバ作ノ間ハ水ヲ通ス丈ケデ、大土工ノモノデハアリマスマイ僅カ水ノ通ズル丈ケノ事ナレバ二三年係ル筈モナシ、詰リ求メ樣ト云フモノハ自分ノ契約時期ト共ニ水ヲ引ク權利ノ期限ガ五年ナレバ求メラルル矢張リ原文ノ通リデ宜シイト思フガ結局ハ同ジデアリマスガ求メル者ハ其時又五年ノ期限ヲ持テ居ルガ一ノ條件ニナルゾヨト云フ丈ケダカラ其時持テ居ル時期ハドレ程ト定メルノダカラ當時ニ於テトシテモ宜シイ
(委員長)
五年ヲ經過シテカラ五年デスカ
(栗塚報吿委員)
經過シタ事ハ見マセンノデ請求ヲ爲ストキハ又是ヨリ先キ五年間約束ガ出來ルト云フノデス
(委員長)
ソレハ時ガ分ラヌ、五年ノモノガ其期間ノ五年ガ滿チテ今五年丈ケ出來ルト見ヘルガ又約束シタ五年間ノ三年目ニ要求スルナレバ其レカラ五年ト云フ樣ニモ見ヘル
(南部委員)
前ニ經過シタノハ何デモ宜シイノデシヨウ
(南部委員)
尙トアリマスカラ分リマシヨウ
(委員長)
私ガ思フニハ此翻譯デハ原文ヲ見テハ分リマセン、我輩ノ解スルノハ其定マリタルトキガ少クトモ尙五ケ年繼續ヲ要スルナレバ求メラルル時カラ五年間ハ求メラルルト云フ意味ニ解シマス
(栗塚報吿委員)
左樣デハアリマスマイ、尙ホ五年間モ續クナレバ前條ノ條例ガ此所ニ當ルゾヨ、若シ少イモノナレバ中間ノ土地ヲ過テ水ノ通路ヲ貰フ事ハ出來ヌゾヨト云フノデス
(松岡委員)
「續ク」ト云フ字ガ餘程解シ惡イノデ五年トアレバ宜シイノデス
(栗塚報吿委員)
左樣デス之ヲ約言スレバ許ヲ得ル者ハ終身間トアルガ、終身間ハ短イカモ知レヌ
(松岡委員)
時期ト云フ字ガアリサヘスレバ定マル事ハ定マツテ居リマス
(栗塚報吿委員)
左樣デス
(委員長)
分リマスカ
(松岡委員)
上ノ條ガアリサヘスレバ此條ハ格別ハアリマセン
(渡委員)
此所ハ「當時ヨリ」トシテ分リソウデス
(淸岡委員)
當時ヨリトシテハ弊ガアル、年限ヲ起算スルノハ此場合ハ當時水ヲ通ズル時間ガ五年間デナケレバナラント云フノデシヨウ
(栗塚報吿委員)
左樣デス
(淸岡委員)
ソレダカラ其年カラ五年間ト云フ事モ出來ルノデス
(南部委員)
其所ハ違ヒマス
(松岡委員)
私ハ文字ニ構ハズ意味ノ解釋ヲスルト「但水ノ通路ヲ求メタルモノカ尙ホ少クトモ五年ノ時期ヲ有スル事ヲ要ス」ト云フ意味ト思ヒマス
(鶴田委員)
研究スレバ分ラヌ事ハナイ
(委員長)
私ノ翻譯デハ「水ノ通路ヲ求メタル時ニ於テハ若シ其時期カ尙ホ少クトモ五年ノ繼續ヲ要ス」ナレバ同樣ノ條例ヲ適用サルルトスル
(栗塚報吿委員)
ソレハ此通リデヤリマス
(松岡委員)
此儘デ宜イト思フ
(鶴田委員)
又定マリタルハ以下ノ但書ダカラ前ノヘ付キハシナイカト云フ嫌イハアルガ、斯ノ如クシテ置キマシヨウ
(委員長)
宜シクバ之ニ決シテ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
○第七百五十二條朗讀ス
第七百五十二條 右ニ均シク低地ノ所有者ハ水ノ浸シタル地ノ排水又ハ涸水ニ由來スル水ノ疎通ノ爲メ及ヒ家内用又ハ農工業用ノ餘水ノ排洩ノ爲メ公路又ハ下水樋又ハ公ノ水流ニ到ルマテ其通路ヲ供スベシ
若シ通路ヲ求メタル水ガ家内用又ハ農工業用ノ爲メ變質シタルトキハ其通路ハ地下ニアラサレハ之ヲ要求スル事ヲ得ス〔千八百五十四年六月十日ノ佛法律、伊民第六百九條第六百十條〕
(尾崎委員)
之ハ能ク分テ居リマス
(松岡委員)
變質ノ水デナケレバ則チ高イ所ノモノヲ引クノハ天然ダカラ必ラズ誓テナクツテモ宜イト云フノデスカ
(栗塚報吿委員)
左樣デス、此所ハ前ノ裏デ、前ノハ水ガ不足スルト云フノデ此所ハ水ノ餘リガアツテ他所ヘヤラナケレバナラント云フノデス
(松岡委員)
元來水浸シニ水排キヲ附ケタラ乾キソウト云フ話ダカラ言詰メタラ皆排水ダ、今一ツ云ヘバ惡水拔キデス
(栗塚報吿委員)
左樣デス、水ニ浸サレテ居ル土地ノ水ヲ排スル事ト又ハ乾カス事トアリマスノデ、排水又ハ「乾涸」ニナスツテモ宜シイト云フ事デス
(淸岡委員)
「涸水」ヨリモ「乾水」トスルガ宜カロウ
(鶴田委員)
「乾水」ガ宜カロウ
(尾崎委員)
之ハ意味ニ於テ間違ウ事ハナイ
(松岡委員)
水ガナクナツタトキハ渇水ト云フガソレデハナイノデス
(鶴田委員)
「乾涸水」トシテモ宜シイ
(栗塚報吿委員)
公路ニ到ルマデ、下水樋ニ到ルマデ、ト云ハナケバナラン
(村田委員)
公路ト公ノ道ト下水樋ト云フハ公ノ場合ハ如何ナルモノデスカ
(南部委員)
道ガ宜シイデハアリマセンカ
(栗塚報吿委員)
「涸」ノ字ハ渇水デハナイ涸ラスト云フ字ダソウデス
(淸岡委員)
「公路」ハ刪ルガ宜シイ
(栗塚報吿委員)
「公路又ハ下水樋卽チ」デハアリマセンカ
(渡委員)
「下水樋又ハ」ト云フハ「下水樋卽チ」デシヨウ
(松岡委員)
成程渡サンノ解釋ノ樣デス
(栗塚報吿委員)
併シナガラ文字ヲ改メテモ事柄ハ同ジデス、之ハ翻譯「又ハ」ヲ「卽チ」ト致シマシヨウ
(渡委員)
其方ガ分リ易イ
(委員長)
「卽チ」ノ方ガ分リ易イ
(栗塚報吿委員)
「下水樋卽チ公ノ水流」ト御直シヲ願ヒマス
(南部委員)
下水樋ノ註解ニナルノデスネ
(栗塚報吿委員)
左樣デス
(淸岡委員)
公路ヲ流スト云フ事ハ日本ニハアリマスマイ
(南部委員)
公路ト云テモ差支ハアリマスマイ、水ヲ流スガ主デナクシテ通路ヲ供セナケバナラヌト云フガ主デアリマス
(鶴田委員)
左樣デス
(栗塚報吿委員)
南部サンノ土地カラ水ガ出ル、ソレヲ私ガ受ケナケレバナランカ左樣デハナイ先キニ川路ガアル其所マデ通サセナケレバナラント云フノデス
(尾崎委員)
「乾水」ガ宜シイ
(栗塚報吿委員)
之モ報吿委員デ相談ノ上改メマシヨウ
(淸岡委員)
「公路」ハ刪除シヨウデハアリマセンカ
(南部委員)
之デ宜イデシヨウ
(村田委員)
「右ニ均シク」デ分リマシヨウカ
(栗塚報吿委員)
私ガ低地ノ所有者ナレバ南部サンノ所ニ水ニ浸シタ地ガアリマス、其所ハ排水乾水シナクツトモ宜シイ、南部サンノ所デ私ノ地面ヲ通シテ行クト云フノデス
(淸岡委員)
左樣スレバ一方ノ低地ハ排洩ヲ通ジナケレバナランガ、此方ハ右ニ均シキヲ頻リニ論ズルト通路ヲ通ジサセタ爲メニコウナルノダカラ
(南部委員)
右ノ理窟ニ均シイト云フノデス
(淸岡委員)
ソレナレバ低地ナレバ償金ナドノ事ヲ云フ事ハナイ
(南部委員)
天然ノ水デシヨウ
(淸岡委員)
通下セシメナケレバナラント云テハ困ツタ話デス
(南部委員)
ソレデ償金ヲ取リマス
(淸岡委員)
償金ヲ取テ水ヲ自分ノ屋敷内ヲ通ラセル位ハ勘辨モ出來ルガ、其レガ爲メニ年中水浸シデハ困ル
(南部委員)
ソウ云フ事ハアリマセン
(淸岡委員)
アルデシヨウ
(栗塚報吿委員)
此所ハソウ云フ事デハアリマセン南部サンノ所デ水ヲ出スカラ、水ヲ通シテ呉レト云テ私ノ庭ヲ汚スデハナイ、水サヘ通セバ宜シイノデス、ソレモ償金ヲ取リタル上デアリマス天然ノ水ナレバ償金ハ取レナイノデアリマス
(松岡委員)
右ニ均シクデ償金ヲ出スト云フノハ分リ惡イ
(村田委員)
一寸分リ惡イ
(淸岡委員)
右ニ均シク償金ヲ出ス事デスカ
(栗塚報吿委員)
人工ヲ以テ通路ヲ拵ヘルト云フ事デアリマス
(尾崎委員)
中間ノ土地ヲ過ギテト云フ事デス
(淸岡委員)
法律上中間ヲ經過シ高地デ水ヲ流セバ償金ヲ取ルトスレバ已ニ法律上義務トナツテ通スト忽チ水ガ來テ其水ガ行ク所モナイトスルト此方ヘ戻テ來ナケレバナラン其トキニ本條ヲ適用セラレテ爲メニ是丈ケノ事ヲシナケレバナラン
(委員長)
是非庭ヲ裂キテモ何デモ通シテヤレト云フノデハナイ
(栗塚報吿委員)
水ノ排キ場所ヲ貸シテヤレト云フノデス
(淸岡委員)
東カラ西ノ方ヘ突キ通シテ置イテ又水ヲヤル所デナイカラ貴樣ノ地所ヘ戻スト云フ事ニナル
(南部委員)
ソウ云フ事ハナイ一方ノ高キ所カラ水ヲ引イテ來ルノデアリマス
(淸岡委員)
東ノ高キ所カラ低キ所ヲ通シテ西ノ高キ所ヘ來テ又低地ノ方ヘヤラナケレバナラント云フ事ニナル
(南部委員)
損害ノ少イ場所ニ取ルベシト次ノ條ガアリマス
(栗塚報吿委員)
次ノ條ニアリマスガ、如何ナル場合ニ於テモ建物ハ勿論居宅ニ接着シタル又ハ庭ヲ過ギテハ出來ヌトアリマス
(淸岡委員)
ソレ丈ケノ保護ハシナケレバ矢鱈ニヤラレテハ溜ラヌ隨分困ルモノモアロウ
(淸岡委員)
公路ヲ通テト云フハ
(渡委員)
通テ出來ヌト云フノデシヨウ
(南部委員)
公路迄通路ヲ供セヨト云フ旨意デアリマス
(尾崎委員)
先ヘヤリマシヨウ
本條ハ左ノ如ク決ス
第一項「涸水」ヲ「乾水」ト「水樋又ハ」ヲ「水樋卽チ」ト改ム
○第七百五十三條朗讀ス
第七百五十三條 水ノ通路ハ成ルヘク受役地ニ損害少ナカルヘキ場所ニ之ヲ取ルヘシ
如何ナル場合ニ於テモ建物又ハ居宅ニ接着シタル内庭又ハ庭園ヲ過キテ水ノ通路ヲ要求スル事ヲ得ス〔同上、伊民第五百九十八條〕
(栗塚報吿委員)
之ハ修正ガアリマス、其修正ハ二項ノ「物」ノ下「又ハ」ノ二字ヲ刪リ「ハ勿論」ノ三字及ビ二行目ノ「モ」ノ一字ヲ挿入ス之ハ何ゼ修正シタカナレバ建物ニ接着シタル又ハ居宅ニ接着シタルト讀マレテハ困ルト云フノデアリマス
(松岡委員)
ソウスレバ建物ニ過ギレヌト云フダロウ
(栗塚報吿委員)
庭サヘ通レヌニ建物ハ勿論通レヌト解釋スレバ宜シイカ、ソレヲ示シテ書ク事ハ不都合ダカラ直ホスノデス
(箕作委員)
「又ハ」ハ宜ウ御座イマスカ「内庭若クハ」ニナラナケレバナリマスマイ
(南部委員)
ソレナレバ修正ヲ斥ケテモ宜シイ
(村田委員)
「建物ハ勿論」ト云テ置ケバ宜シイ
(松岡委員)
日本デ云フ内庭ト云フノデハナイカ、若シ日本ノ内庭ト云フノデアレバ云フニ及バヌ
(箕作委員)
「勿論」ト云フハ民法中ニアリマスカ
(栗塚報吿委員)
二箇所アリマス
(栗塚報吿委員)
何レノ場合ニテモ水路建築物ヲ經過シテト譯シテハ惡イダロウ「住家ト接着シタ庭ト又ハ庭園等ニモ」ト原文ニアリマス
(松岡委員)
ソレナレバ宜シイ
(箕作委員)
「建物ヲ過キ又ハ」トシテ先キヘヤリマシヨウ
(松岡委員)
「内庭又ハ」ノ四字ヲ刪テ宜シイ
(栗塚報吿委員)
刪除致シマシヨウ
本條第二項ハ左ノ如ク決ス
如何ナル場合ニ於テモ建物ヲ過キ又ハ居宅ニ接着シタル庭園ヲ過キテ水ノ通路ヲ要求スル事ヲ得
○第七百五十四條朗讀ス
第七百五十四條 總テノ場合ニ於テ水ノ通路ニ必要ナル工事ノ開設及ヒ保持ハ其工事ニ付キ利益ヲ得ル所有者ノ費用ニテ之ヲ行フベシ
(渡委員)
之ハ宜シイ
(鶴田委員)
宜シイ
(箕作委員)
宜シクバ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
○第七百五十五條朗讀ス
第七百五十五條 受役地ノ所有者ハ其土地ニ旣ニ存スル堀割ヲ流入又ハ流出ノ爲メ水ノ全部又ハ一分ノ通路ニ供セント要求スル事ヲ得但堀割ノ廣深カ其水ヲ通スルニ足リ且其水カ通過シタル後要役地ニ供シタル水ヲ害スルノ本性ナラザルトキニ限ル
又受役地ノ所有者ハ其土地ニ要役地ノ所有者ノ爲シタル工作物ヲ右ト同一ノ條件ニ從ヒ水ノ通路ノ爲メ用ヒント請求スル事ヲ得
右何レノ場合ニ於テモ他人ノ爲シタル工作物ヲ用ユル者ハ自己ノ利益ノ割合ニ應シテ其開設及ヒ保持ノ入費ヲ分擔ス〔同上、伊民第五百九十九條〕
(修正) 初項五行目ノ下「水カ」ノ二字及ヒ過ノ下「シタル後」ノ四字ヲ刪除シ「堀割ヲ從來」ノ五字及「スル水カ」ノ四字ヲ挿入ス
(南部委員)
之ハ修正ガアリマス
(松岡委員)
受役地ハ中間ノ地デシヨウ
(栗塚報吿委員)
左樣デス
(村田委員)
堀割ヲ不潔ニシテハ惡ルイト云フノデスネ
(栗塚報吿委員)
左樣
(村田委員)
水ヲ害スル本性ト云フハ分ラヌ矢張リ水質ヲ變ズル事ハナラヌト云フ方ガ宜シクハナイカ
(栗塚報吿委員)
ソレハ別ノ話デス
(南部委員)
水ハ是々ノ本性デナイトキニ限ルト云フノデス
(箕作委員)
之ハ分テ居ル
(鶴田委員)
原案デモ分テ居ル
(松岡委員)
修正ヲ可トシマス
(大尾崎委員)
「流出」ト云フハオカシイ「流入」デハアリマセンカ
(栗塚報吿委員)
水ヲ引ク方ノ人カラ言葉ヲ立テ松岡サンガ水ヲ呉レル人デ私ガ貰フノデス、ソレデ南部サンノ土地ヲ通ルト南部サンハ受役地ノ所有者デ、南部サンノ土地ハ既ニ堀割ガアルカラ此通リ通シテ呉レト云フ其トキ私ノ方カラハ「流入」デ松岡サンノ方カラ言葉ヲ立ツレバ流出デ御座イマス、流出流入ハ言葉ノ立方デアリマス
(松岡委員)
言ヒ詰メレバナクツテモ宜シイノデス
(村田委員)
同一ノ條件ト云フハ水ノ性質ヲ害サヌト云フノデシヨウネ
(松岡委員)
左樣
(箕作委員)
宜クバ先キヘヤリマシヨウ
本條ハ報吿委員ノ修正案ニ決ス
○第七百五十六條朗讀ス
第七百五十六條 若シ第七百四十三條第一項ニ從ヒ流水ヲ用ユルノ權利ヲ有スル所有者ニ堰ヲ設ケテ水ヲ高ムルノ要用アルトキハ償金ヲ拂フテ其堰ヲ對岸ニ支持スル事ヲ得
若シ堰ヲ設ケサル所有者カ右ト同一ノ流水ヲ用ユルノ權利ヲ有スルトキハ前條ニ記載シタル如ク其入費ヲ共分シテ自己ノ利益ニ前記ノ堰ヲ便用スル事ヲ得〔千八百四十七年七月十一日ノ佛法律〕
(村田委員)
之ハ民法ニハ必要ガナイカラ刪テモ宜シイ
(松岡委員)
民法ニ依ルガ本質デ、佛蘭西ノハ行政法ト云フハ間違ヒデス、之ハ適當ノ置場所ト思ヒマス
(鶴田委員)
川ノ左ノ者ガ堰ヲ高メントスルトキハ右ノ堰ヲ加ヘテ高メロト云フ事デシヨウ、何レ兩方ニ用フルト、水ガ少クナルカラ堰ヲ高メナケレバナラン、ソコデ高メテ水ヲ兩方ニ引イテモ宜シイト云フ事ハナイカ、有形ノ儘デ引ク事ガ出來ルガ水ガ足ラヌカラ隣リニ相談シテ引ク事ガ出來ル、二項ハ前項ノ水ヲ高メルト云フ事ハナイ、水ヲ高メ樣トシテ右ノ岸ガ邪魔ニナツテ高メラレナイ其場合ニハ堤ヲ築キ向フヘ溢レナイ樣ニスレバ宜シイト云フノダロウ
(南部委員)
左樣デハアリマセン堰ヲ設ケタニ向フノ堰ヘ棒ヲ打ツタリ石ヲ崩シタリスルト償金ヲ拂フト云フノデス、之ハ註ニモアリマスガ高メタ償金デハアリマセン
(大尾崎委員)
堰ガ出來レバ水ガ高クナルカラ先方ノ地ヲ殺グ事ガアル、先方ノ人ガソレデ自分ニ利ニナツタラ堰ノ入費ヲ負擔スルノデス
(南部委員)
左樣デス
(箕作委員)
多少人ニ迷惑ヲ蒙ラシムルカラ償ヲセヨト云フノデス、宜シクバ先ヘヤリマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
○第七百五十七條朗讀ス
第三款 經界
第七百五十七條 總テ相隣ノ所有者ハ地方ノ慣習ニ從ヒ石、樹又ハ杭ノ如キ相當ナル指示ノ標記ヲ以テ其連接シタル所有地ノ境界ヲ定メント互ニ強要スル事ヲ得〔第六百四十六條及伊民第四百四十一條〕
(栗塚報吿委員)
本條四行目ノ境界トアル「境」ノ字ハ刪除致シマシタ
(鶴田委員)
宜シイ
(尾崎委員)
宜シイ
(南部委員)
宜シイ
(栗塚報吿委員)
如キト云フ字ガアルカラ宜シイカト思フガ田ノ畔抔モ這入リマシヨウカ
(村田委員)
溝ハ這入マセンカ
(栗塚報吿委員)
私ハ這入ルト思ツテ居リマス
(箕作委員)
註ニモ八釜敷ク書キ度イ譯デハナイガ、界目ガ分レバ宜シイトアリマス
(南部委員)
之ハ廣ク見テ置ケバ宜シイ
(栗塚報吿委員)
若シ爭ヒガアツタラ裁判所ハ此三ツノ外云ハレナイト云フノデス
(松岡委員)
之ハ「ボアソナード」ノ註ハ見ナイ方ガ宜シイ
(箕作委員)
之ハ「ボアソナード」先生田ノ畔抔ハ知ラヌカラデシヨウ
(尾崎委員)
之ハ三ツニ限ラレテ溜ルモノデスカ
(箕作委員)
先キヘヤリマシヨウ
本條「境」ノ一字ヲ刪リ他ハ原案ニ決ス
○第七百五十八條朗讀ス
第七百五十八條 經界ノ訴權ハ建物ニ付テモ又石造、土造又ハ木造ノ圍障アル土地ニ付テモ存立セス
公路又ハ公ノ水流ニテ互ニ相離レタル土地ニ付テモ亦右ノ訴權存立セス
(修正) 初項又ノ下「石造、土造又ハ木造ノ」ノ九字ヲ刪リ「練塀塀矢來ノ如キ」ノ八字ヲ挿入ス
(南部委員)
之ハ修正ガアリマス
(箕作委員)
石造デモ未ダ足リナイガ煉瓦ハ自ラ這入ルト云フノデス
(村田委員)
原案ガ宜シクハアリマセンカ
(栗塚報吿委員)
之ハ註ニ「練塀」トアルノデ註カラ出タノデス
(南部委員)
「如キ」トシテ廣クシテ置キマシタ
(村田委員)
「木造ノ如キ圍障アルトキ」トシテハ如何
(渡委員)
宜カロウ
(栗塚報吿委員)
木造ト云フハ圍障塀矢來トナルカラ、如キ圍障デス、ソウ云フ圍障ガアツタ土地ニハト云フ積モリデアリマスカラ、又此所デハ土藏、圍障、石造、圍障、木造、圍障デ、始メテ練塀トカ塀トカ矢來トカ名ガ付クノデアリマスカラ修正シタノデ註ノ意味ヲ悉ク入レタノデス
(箕作委員)
註ニアル通リ界ニナツタモノハ手丈夫ナモノデアツテ一寸シタモノデハナイ、石垣ガアツタトスルト石垣ガアツテ界デナイト云ハレナイ、ソレハ石造ガ土造ニナルノデシヨウ、所ガ練塀矢來ノ如キデアレバ宜イ
(栗塚報吿委員)
朝鮮矢來ハ如何デスカ
(村田委員)
アレハ竹デス
(尾崎委員)
石造、土造デ宜シイデハナイカ
(松岡委員)
圍障ト云フ字ハ不可デス
(村田委員)
私ハ圍障トアルカラ宜シイト思フ
(栗塚報吿委員)
石造、圍障、木造、圍障、土造、圍障デアリマス
(村田委員)
木造ノ如キデハアリマセンカ
(栗塚報吿委員)
木造ノ圍障ノ如キト云ハナケレバナランデシヨウ
(箕作委員)
入レルナラバ煉瓦ヲ入レテ宜シイ
(尾崎委員)
元トノガ宜シイ
(村田委員)
原案デ宜シイ
(松岡委員)
六百三十六條ニ圍障トアツタヲ「牆壁」トシマシタ
(栗塚報吿委員)
原文ニ圍障ノ壁トアツタカラ牆壁トヤツタノデアリマス
(箕作委員)
圍イ物デス
(南部委員)
木造又ハ竹造ヲ入レテハ如何デスカ
(松岡委員)
例ヲ擧ゲタノダカラ「如キ」トアレバ宜シイ
(渡委員)
竹造ハ入レヌ方ガ宜シイ
(村田委員)
竹造ハ入レルガ宜シイ
(淸岡委員)
竹造ト使ツタコトハナイ、木造ノ如キデ宜シイ
(尾崎委員)
如キデナイト困ル
(南部委員)
七百五十七條ヲ御覽下サイ、境界ノ訴ハ界ガナイカラ標ヲ立テ下サイト云フ譯デアリマス、之ハ「塀矢來垣ノ如キ」トシテ宜シイデシヨウ
(淸岡委員)
ソレデ宜シイ
(尾崎委員)
「如キ」ナレバ宜シイ
(松岡委員)
「塀矢來垣ノ如キ」トシテ宜シイダロウ
(箕作委員)
其レニ決シテ是レデ食事ニ致シマシヨウ
本條ハ第一項左ノ如ク決ス
「經界ノ訴權ハ建物ニ付テモ又塀矢來又ハ垣ノ如キ圍障アル土地ニ付テモ存立セス」ト改ム
于時正午十二時休憩
午後一時二十分開會
(箕作委員)
ヤリマシヨウ
○第七百五十九條朗讀ス
第七百五十九條 經界ノ訴權ハ熟議上又ハ裁判上ニテ境界ノ定マラザル間ハ時効ニ係ル事ヲ得ス
然レトモ若シ相隣者ノ一人カ經界ヲ求メタル土地ノ全部又ハ一分ニ付キ得取時効又ハ唯一年ノ占有ヲ利唱スルトキハ原吿ハ豫メ回收訴權又ハ回復訴權ヲ行フベシ
(村田委員)
之モ「界」ト云フ字一字ニナツタノデス
(南部委員)
左樣デス
(尾崎委員)
豫メ回收訴權又ハ云々トハ如何ナル事デスカ
(南部委員)
豫メハ得取時効ヲ得ラレナイ前デアリマス
(村田委員)
土地ノ爭ヒヨリハ豫メ之ヲヤルト云フノデシヨウ
(松岡委員)
左樣デス
(栗塚報吿委員)
經界訴權ニハ時効ガナイモノト云フノデ定マツテ仕舞フハ時効ガ出ルト云フノデス
(鶴田委員)
時効ト云フハ經界ニ付テニ非ラズト云フナラコウ書イテハオカシイ
(松岡委員)
總テ權利ハ槪シテ期滿得免ニシテ行クモノダ、然レドモ時間ノ經過ガ消滅セシメザル權利ガアルソレハ本條ニ記シタノハ卽チ之デス
(鶴田委員)
ケレドモ經界論中ハ時効ガ唱ヘラレナイト云フデハナイカ時効ガ中止シテ居ル鹽梅デス
(松岡委員)
字ノ書キ方デ左樣ニモ見ヘル
(鶴田委員)
裁判ノ濟マヌ間ハ時効ハ止マツテ居ル樣ニ見ヘマス
(松岡委員)
所ガ何ノ時効ニシテモ裁判所ヘ出テ爭テ居ル間ハ中止シテ居ルハ無論ナ話デ、云フニハ及バヌノデス
(尾崎委員)
界ガ定マラヌノダカラ時効ヲ唱フル事ハナイ筈デス
(栗塚報吿委員)
前項ニハ時効ガナイ樣ニ書キ、次ハアル樣ニ書イタガ之ハ得取時効デス
(松岡委員)
註ノ意ヲ見ルト時効ノ生ゼヌノガ主ニシテアル樣デスガ、之ハ箇樣ナ理窟デ、上ノ五十七條カラ來ルト經界ヲ拵ヘル双方ニ權利ガアルゾヨ、併シナガラ訴權ノ起ル場合ハ箇樣ナ場合、ソレカラ全體ヲ云フト時効ノ生ゼヌト云フハ跡廻シニシテ置イテ此得取時効ヤ占有ヲ云フ時分ニハ先ヅ訴權ヲヤラナケレバナラン
(尾崎委員)
經界ノ定マラヌ以上ハ私ニ得取シテ居ル事抔ハ一向定マラヌ譯デス
(箕作委員)
向ウデ不當ヲ云フカラ、所有權ヲ先キニ極メナケレバナラン
(松岡委員)
經界訴權ハ時効ニ係ル事ヲ得ズト云フノデス
(箕作委員)
原吿ハ經界訴權ガナクナルト時効デハナイガ、訴權ヲ失フ樣ニアルカラ「然レトモ」トシテアルノデシヨウ
(松岡委員)
ケレドモ訴權ハ是非シナケレバナラント云フノダカラ時効ノ起リ樣ハナイノデス
(栗塚報吿委員)
事柄ハ御分リデシヨウ
(箕作委員)
宜シケレバ先キヘヤリマシヨウ
本條ハ「境」ノ一字ヲ刪リ他ハ原案ニ決ス
○第七百六十條朗讀ス
第七百六十條 以上ノ場合ノ外限界ノ不確定ナリ又ハ爭論セラレタルトキハ經界ハ所有權ノ證書ニ記載シタル坪數及ヒ限界ニ從テ之ヲ定ム又其證書ナキトキハ之ヲ補フ事ヲ得ヘキ他ノ證據又ハ證據書類ニ依テ之ヲ定ム
若シ所有權ニ付キ爭論アルトキハ管轄裁判所ハ其事ニ付キ豫メ決定ヲ爲スベシ
(栗塚報吿委員)
修正デ文字ノ消ル所ガアリマス
(村田委員)
「限界」ノ「界」ノ字一字ニナルノデアリマスネ
(栗塚報吿委員)
左樣デス
(箕作委員)
「之ヲ定ム」ハ「之ヲ爲ス」デアリマス
(栗塚報吿委員)
「界ニ從テ之ヲ爲ス」ト致シマシヨウ、經界ト云フハ界ヲ立ツル事ト御讀ナスツテモ宜シイ
(南部委員)
「界カ不確定ナルトキ」トシテハ如何デス
(村田委員)
「界カ」トシテ宜シイ
(尾崎委員)
證書ニハ界ノ事ハアリマセン
(松岡委員)
何所ソコカラ何所迄獲得シタカ證書ニ依ルトセント、働キガ見ヘマセン
(鶴田委員)
地券ノ樣ニモ見ヘル
(栗塚報吿委員)
地券モ這入ルノデス
(南部委員)
這入ルト何所ヘ續クノデスカ
(栗塚報吿委員)
「不確定ナルトキハ」トナルノデアリマス
(箕作委員)
「不確定ナルトキハ」デ宜シイデシヨウ
(南部委員)
之ハ「管轄」ト云フ字ヲ刪除スル修正ガアリマス
(栗塚報吿委員)
「決定」トアルハ「判決」ト願ヒマス
(尾崎委員)
「判決」デ宜シイ
(松岡委員)
「判決」トシテ宜シイダロウ
(鶴田委員)
判決ト命令ハ裁判ニナルノデスカ
(栗塚報吿委員)
左樣デス
(箕作委員)
「管轄」ハ刪ル方宜シイデシヨウ
(鶴田委員)
刪リマシヨウ
(村田委員)
「之ヲ爲ス」ハ分リマセン
(栗塚報吿委員)
分リソウナモノデス
(箕作委員)
表題ノ經界ガ分レバ之モ分リソウナモノデス
(栗塚報吿委員)
他日ノ事デモ宜シイガ經界ハ區裁判所或ハ舊ノ庄屋位デヤルト云フ事ニ構成法ノ中ヘ入レル樣ニ願テ置キマス
(松岡委員)
此所デ云フハ經界訴權デ爭フテ此方ヨリ一尺或ハ二尺ヤルノト云フハ、所有權ニ關係スル話デス
(栗塚報吿委員)
左樣デス
(松岡委員)
構成法ニ明文ハナイ、此所ノ所有權ノ爭論ノミトアルハ眞面目ニ經界訴權ノ起リタルトキト云フモ論ガ起ラヌトキハ區裁判所デヤルノデス
(箕作委員)
經界論ダト思テ居タノデシヨウ
(栗塚報吿委員)
全ク左樣デス
(箕作委員)
ソレハ報吿委員デ辯明シナカツタノデスカ
(栗塚報吿委員)
辯明スル者ハ一人モナカツタノデス
(南部委員)
私ノ考ヘニハ構成法ハ決定ニナリマシタガ併シ總テ委員ガ同意ニナツテ建言シテハ如何デシヨウカト思ヒマス、前刪除ニナツタ旨意ハ報吿委員ノ說モ所有權ニ關係シテ居ル論ガ盛ンデ、其節栗塚サンハ刪除說ヲ唱ヘラレ、私モ維持シマシタガ、維持スル事ハ充分研究モ屆カズニ置イテ宜シイト主張シタ、所デ今見ルト全ク所有權ニ關係ナイトスレバ元トノ原案ノ通リデモ宜シクアリマセン不動產經界訴權ハ此原案ノ旨意デハ經界ノ訴ヘノミト云フ樣ニシテ宜シイカラ此事ヲ建言シテハ如何
(尾崎委員)
松岡サンノ言フ通リ所有權外ニ經界ヲ定ムル論ガアルガ、界ガ分テ居レバ無論ノ事ダロウ
(栗塚報吿委員)
分リタル標ヲ付ケタイノデス
(尾崎委員)
ソレハ爭ヒデハナイ、界ハ分テ居ルノダカラ
(栗塚報吿委員)
目標ヲ建テ呉レト云フ訴ヘデス
(尾崎委員)
ソレハアリソウモナイ
(南部委員)
左樣ニハ往キマスマイ、今一應御考ヘ下サイ
(村田委員)
構成法ノ書方ガ惡カツタノデスガ後チニ報吿委員カラ消シテ呉レト云テ來テ刪ツタノデス
(松岡委員)
ソンナ論ノアル筈ハナイ
(栗塚報吿委員)
是カラ定ムルノデス
(淸岡委員)
定ムルニ及バヌ
(尾崎委員)
界ノ不確定ト云フハ何ヲ云フカ、何モナイデス
(南部委員)
ソレハ其場合ノ外不確定ノトキデス
(栗塚報吿委員)
東京ノ場末ニ地面ガアリマスト、此樹カラ此方ハ我ノ地面ト云フソウカト云フモ此方ト云フハ何所カラカ分カラヌ、地圖ニ照ラシテ標ヲ建テ樣ト云フノデス、ソレモ双方ノ費用デヤルノデス
(尾崎委員)
標ガ建ツナレバ宜シイガ是レカラ此方ハ私ノモノデ御座イマス、依テ斯樣ト云フ、又私ハ此所ガ界デ御座ルト云フノハ卽チ所有ノ爭ヒニナリマス
(栗塚報吿委員)
其時ハ界ガ不確定ナルトキデ、ソレハ證書ニ記載シタモノデ決シ樣ト云フ、否ヤ其地券ハ虛ダト云フソレデハ裁判所ヘ行カナケレバナランガ、ソレデ分ルナレバ裁判所ヘ行クニハ及バヌノデス、纒マラヌトキハ裁判所ヘ行クデシヨウ
(淸岡委員)
ソンナ事ハ裁判所ヘ行クニ及バヌ
(南部委員)
行カヌトキハデス
(淸岡委員)
ソレコソ下ラヌ裁判デス
(南部委員)
一槪ニ言テハ困リマス
(栗塚報吿委員)
「經界訴權」ト書イタハ報吿委員ノ不調法デ御座イマス
(松岡委員)
七十六條ヲ言ヒ出ス事ハ姑ク措キ、第七百五十七條ノトキニ此「強要スル事ヲ得」ト云フハ訴權ハ何所ヘ持テ行ク可キカヲ先キニ極メナケレバナラン
(南部委員)
左樣デス
(栗塚報吿委員)
ソレハ區裁判所ヘ行クト、起案者ガ極メタノデアリマス、ソレダカラ此所ハ管轄ト云フ字ヲ入レタノデス、併シソレハ刪リマシタハ所有權ノ爭ヒナレバ區裁判所ノ管轄ト云フハ始審裁判所デアリマス
(淸岡委員)
所有權デモ三、四十圓ノモノナレバ宜シイダロウ
(栗塚報吿委員)
日本ノ構成法デハ所有權ノ爭ヒナレバ區裁判所デヤツテハ出來マセヌ
(松岡委員)
先ヅ第一ニ七百五十七條ハ實際、要用ガアルカナイカ姑ク措キ、經界訴權ガアルモノト認定シタノデ、經界訴權ハ何所ヘ持テ行クカト云フ事ガナカツタノデアリマス
(栗塚報吿委員)
ソレハ七百六十五條ニアリマスカラ構成法ノ中カラ削テ仕舞ツタカラ從テ刪ラナケレバナラン
(松岡委員)
彼所デ刪ルトシテモ何所デ訴訟スルカ立法者ハ考ヘナケレバナラン、然ルニ構成法デハ始審裁判所ヘ行カナケレバナラン
(淸岡委員)
三、四十圓ノモノナレバ區裁判所デヤルノダロウ
(尾崎委員)
地券面ガ百圓未滿ナレバ區裁判所デヤラセル
(松岡委員)
ソレガオカシイノデス、之ハ私ノ思フニハ訴訟ノ多イ少イヲ目的ニシタルヨリモ、經界ヲ定メテ他日ノ豫防ニスルノハ誰ガ責任ヲ負フカト云フノデ、若シ訴訟ガアルトキハ誰ガ管轄スルト見ナケレバナラン、左樣スルト區裁判所ヘ行クノガ適當ト思ヒマス
(尾崎委員)
五十七條ハ總テ相隣者間中互ニ石又ハ杭ヲ建テ界ヲ表シヨウト云フニ所有者ガ其所ヘ界ヲ建テハ困ルト云テ爭フノデシヨウ
(栗塚報吿委員)
シテ呉レト云フノデ、所有權ノ爭ヒデハアリマセン
(箕作委員)
一方ハ杭ヲ建テ樣ト云フ、一方ハ否ヤト云フノデアリマス
(栗塚報吿委員)
一方ハ百坪ト云フ一方ハ九十坪ト云フ爭ヒハ所有權ノ爭ヒダカラ、裁判所ヘ行クカ或ハ占有ト云フカ知レヌガ、其所ノ論ガ詰ム迄ハ先ヅ界ヲ建テ呉レト云フ否ト云フ爭ヒデアリマス、ソレハ否ト云フ事ハ出來マセヌ
(尾崎委員)
ソレハアルカモ知レマセンガ、若シアレバ裁判所ヘ行クデシヨウ
(箕作委員)
裁判所構成法ニハ始審裁判所デヤルト極マツタカ矢張リ此事デス
(尾崎委員)
其折ニハ左樣ニハ思ハナカツタノデス、然ラバ區裁判所デヤラナケレバナランガ區裁判所デヤレルト云フ事ヲ構成法ニ書ケバ宜シイ
(南部委員)
經界ノ訴ト云ヘバ民法ガ出來ル以上ハ分ルノデアリマス
(松岡委員)
分ツタ所デ經界訴權ハ區裁判所ヘ行カナケレバナランガ、構成法ヲ議シタハ報吿委員モ夢中デアツタカラ更ニ建議シテ構成法ヘ入レルト云フノデス
(村田委員)
私ハ贊成
(尾崎委員)
所有權ニ關係セズデス
(南部委員)
左樣デス
(箕作委員)
構成法ニ經界ノ位置ト云フ事ガアル、位置ト云フ事ガ惡イ、位置ニ關スト云フト、界論ト云フモ無理ハナイ、果シテ左樣カ又ハ此所デ書イタ界論デ其所デハナイト云フカモ知レヌ
(南部委員)
所ガ構成法ニ入レルノハ以前ノヲ復スルノデナクシテ、新タニ入レル事ニシマシヨウ
(箕作委員)
ソウデス、民法ノ經界ハ何所ニ行クカ、區裁判所ニ行カナケレバナラント云フノデ分レバ宜シイ
(尾崎委員)
ソレハ南部サンカラ委員長ニ云フタラ宜カロウ
(箕作委員)
之ハ矢張リ管轄ト云フ字ハアル方ガ宜シイ
(尾崎委員)
アツタ方ガ宜シイ
(栗塚報吿委員)
箇樣ノ箇條ハ訴訟法デ云テ呉レヌト困リマス
(南部委員)
兎ニ角管轄ト云フ字ハ姑ク置キマシテハ如何
(尾崎委員)
宜カロウ
(松岡委員)
「限界カ得取時効、又ハ一ケ年ノ占有ニ因リ定マラサルトキハ所有者ノ證書ニ付テ限界ヲ定ムルヲ求ムルヲ要ス」ト註ニモアリマス、得取時効ヤ一ケ年ノ占有シタ爲メニ分ラヌトキハデスカネ
(南部委員)
註ニハソウ云テアリマス
(栗塚報吿委員)
得取時効デモナシ一年ノ占有デモナシ、貴君ハ私ニ界ヲ極メテ云フ、私ハ此所迄私ノダト云ヘバ前條ダガ、左樣ハ左樣デハナイ兎モ角モト云フノデス
(箕作委員)
以上ノ場合ト云フハ前條ヲ云フノダト思フ
(南部委員)
此以上ト云フハ廣ク前ヲ承ケタ方ガ宜クハアリマセンカ
(箕作委員)
五十八條ヤ五十九條ハ曖昧デハナイ明白デアリマス、明白ノ場合ヲ省イテ外トハ云ハレナイ、私ノ考ヘデハ五十九條ハ是レ々々ト云テ、界ノ不確定ナルトキ、其場合ノ外不確定ノトキト云ヲウト思フ
(松岡委員)
私ノ思フニハ前項ハ暖昧デナイト思フ、五十九條ハ得取時効、或ハ占有ニ因テ、此レ迄得取時効ト云フニ極マツテ居ルノデス
(箕作委員)
左樣デハナイ、曖昧ト云フハ爭ヒガアルト云フノデ、得取時効ヤ一年ノ占有ガアツテモ、爭ヒガアルノデシヨウ
(南部委員)
左樣デス
(栗塚報吿委員)
證人ヲ出シタリ何カスルガ區裁判所ヘ行カナケレバナラン
(箕作委員)
宜ケレバ先キヘ行キマシヨウ
本條ハ左ノ如ク決ス
以上ノ場合ノ外界ノ不確定ナルトキ又ハ爭論セラレタルトキハ經界ハ所有權ノ證書ニ記載シタル坪數及ヒ界ニ從テ之ヲ爲ス又其證書ナキトキハ之ヲ補フヲ得ヘキ他ノ證又ハ書類ニ依テ之ヲ爲ス若シ所有權ニ付キ爭論アルトキハ裁判所ハ其事ニ付キ豫メ判決ヲ爲スヘシ
○第七百六十一條朗讀ス
第七百六十一條 相隣者ノ一人ニ坪數ノ不足アリテ他ノ一人カ之ヲ占有セサル場合ニ於テハ爭論ナキ限界ニ至ルマテ隔隣者ヲ訴訟ニ參加スシメ一同立會ノ上ニテ共通ノ經界ヲ爲スヘシ
若シ土地ノ總體ニ付キ坪數ノ餘分又ハ不足アルトキハ利益又ハ損失ハ土地ノ廣狹ノ割合ニ應シテ其間ニ分ツ
(松岡委員)
私ハ本條ハ刪除說デアリマス
(村田委員)
地面ヲ隣リニ取ラレテ仕舞タ後ニ至テハ如何スルカ
(松岡委員)
後ニ至テハ占有ヲ獲得スル
(栗塚報吿委員)
勿論之ハ取還ヘストキハ回收訴權デ行キマス
(南部委員)
之ガ一ト度ビ行ハルルト、日本ノ地面ハ蹂躪シテ仕舞フ事ニナル
(松岡委員)
證據ニ依テ裁判官ハ判決スルノデ、得取又ハ時効ニ因テ出來ル法律ダカラ、裁判官ハ其場合ニ限テ裁判スルハ宜シイガ、一方ニ證人ガアレバ行フノダガ、之ハ宜シクナイ、自分ノ地面ハ不足ダ、隣リニ澤山アル其レハ無償デ取レルト云フハオカシイ話デス
(南部委員)
元來最初ノ原案デハ、相隣者ノ一方ノ地面ノ面積不足ガアツテ他ノ一方ガ有セヌト云フ場合ニハ何所迄モ隣リノ者ヲ訴訟ニ參加セシメテ坪數ヲ平均シテ此方ガ十坪足ラヌトキハ隣リニ五坪アレバ隣カラ取ル、又隣リニ五坪アレバ之ヲ取ルノデ、何所迄モ平均シテ行クト云フ旨意デアリマシタ、併シナガラ其旨意ハ是迄日本ノ地券ハ實際ノ坪數ニ少シモ違ハヌカナレバ、左樣デナイ、況ンヤ裁判所デ界ヲ定メ所有權ノ紛雜ヲ避ケル事少ナカラズ、成程面積少クシテ地券面ノ多イノハ地券ノ受ケ損ナイノデ、足ラヌカラト云テ地方ノ論地ヘ政府ガ立入テスル事ハ出來マセヌ、裁判例實際ニ徵シテ明白デアリマス、之ハ起案者ガ修正シタノデ、今度ノ通リニナレバ訴訟ニ參加セシメテ關係スル事ハナイ事ニナリマシタ、併シナガラ其替リニ差支ル事ガアリマシヨウ、ト云フノハ此ニ十坪不足シタ場合ガアツテ請求スルト隣リノ實地ヲ檢シテ見ルニ十坪餘ツテ居レバ宜シイガ、五坪外餘ツテ居ラヌト云フトキハ五坪ヲ此方ヘ取ルトナリマシヨウ、所ガ尙ホ五坪足ラヌト又隣リヘ這入ツテ行ク事ガ自然ニ生ジテ來ル、左樣デナケレバ十坪得樣ト思テ五坪ヨリ得ラレナイカラハ其弊害タルヤ如何ニシテモ免カレナイ、前ノ原案ト格別ノ違ヒモ御座イマセン、箇樣ナ事ハ總テ場合ニ依テハ此方ニ五坪足ラヌ事モ向ウニ這入ツテ居ル事モアリ、又場合ニ依テハ地券ノ受ケ損ナイモアルカラ其時ハ第七百六十條ニ大意ヲ示シタ以上ハ其他ハ裁判官ノ職掌ノ判定ニ任カセルガ穩當デアリマス、箇樣ナ事ハ精ク云フト、却テ弊害ノ生ズルモノダカラ、是非之ハ刪除ヲ願ヒ度イ
(松岡委員)
刪除ハ贊成ダ
(渡委員)
刪除スルト云フハ此方ニ十坪不足スル場合ニ隣地ニ五坪餘計ガアツテモ訴ヘテハナラヌト云フ事ニシヨウト云フノデスカ
(南部委員)
左樣デス
(栗塚報吿委員)
報吿委員中ノ論ヲ御聞キ下サイ、本條ヲ改メタハ今南部委員ノ言ハルル如ク格別差支ハナイ、前ノ論デハ一人ガ裏ノ地面ガ足リナイカラト云フガ其レガ爲メニ六人或ハ十人位モ地主ガ騒ガナケレバナラン言レハ不都合ダカラ隣リ丈ケニシヨウ併シナガラ隣リガ又隣リヘ行クカモ知レヌシ、今日改メタ便利ハ騒ガスマイト思ヘバ隣リ丈ケデ濟ムノデス先キノハ皆騒ガナケレバナラン、抑々何故ニ箇樣ナ事ニシタカナレバ此界ヲ定メテ來タトキニ、豈圖ラン測量シテ見タ所ガ御前ハ十坪多イ、私ハ十坪減ル、地券面ニ十坪御前ノ方ガ多イ、併シナガラ今家ヲ毀ハシテモ取レルハ當然ダガ、家ヲ毀ハスノハ惡イカラ金デヤレト云フ、其不足ハ何カラカト云フト、地券面ニハ百坪トアツテ、實際九十坪外ナイ、又一方ノ地券面ニハ百坪トアツテ實際百十坪アル場合ヲ云フノデ田地ガ追々延テ殖ヘタカモ知レヌ、且昔日ノ繩延ト云フガアルカラ之ヲ置イタ爲メニ悉ク改メル樣ニナルト云フノデアリマス
(渡委員)
私ハ之ハ刪ツテハナラヌト思ヒマス、南部サン、松岡サンハ之ヲ刪除スルト云フ設モアリマスガ、元々界ヲ定メルニ臨ンデ地券面ト實際トハ違テ居タ場合ニ限ルノデ、又栗塚サンノ云フ通リ百坪ト云フニ九十坪外ナイ、一方ハ百十坪アツタトカ云フトキ、ソレモ南部サンノ論デハ仕方ガナイ、其儘ニシテト云フノデ裁判官ニ任カセテト云フガ、之丈ケハナケレバナラント思フ
(村田委員)
之ハナケレバナラント思フ
(尾崎委員)
「相隣者ノ一人不足ノモノアルトキハ」トアルガ己レノ地面ガ地券ニ百坪トアリ、實際九十坪ト云フトキハ隣リニ百十坪アル場合ニ於テハ、爭ヒガナクトモ、貴君ノ地面ヲ向フデ取リタル證據ガアレバ無論回復スル譯デアリマス
(村田委員)
南部サンハ一方ニ百十坪一方ハ九十坪ホカナイト、其トキハ如何シマスカ
(南部委員)
私ハ十坪餘レバ還ヘシテ仕舞フ
(松岡委員)
還サヌデモ宜シイ、書出シテ我物ニスルノデス
(村田委員)
左樣スレバ九十坪ノ方ヘヤルガ宜シイ
(南部委員)
所有者ノ勝手ダカラ法律デ制限ヲ受クル事ハナイ
(松岡委員)
書出セバ宜シイノデス
(南部委員)
地券ハ一ノ地面ニ二ツアルノガアリマス
(栗塚報吿委員)
地券ノ間違タハ此條ガ惡ルイノデハナイ
(松岡委員)
栗塚サンノ樣ニスルト、名目ノアルモノニハ却テ惡イ、名目ヲ甘ンズルナレバ、法律ガ貴樣ノ曲尺ガ曲ツテ居ルト云フナレバ用捨スル、凡ソ此土地ハ決シテ曲尺ト云フ譯ニハ往カヌ、山ヲ田ニシタリ、又每年加ヘタモノモアル、ソウ云フノハ曲尺ハ當テラレナイ
(栗塚報吿委員)
此方ニ不足シタモノハ彼方ニアルト云フノデス
(南部委員)
箇樣ナ事ヲシタラ實ニ大變デス
(鶴田委員)
私ハ今日ノ自分ノ地面ノ界ヲ知ラズ、向ウニ這入ツテ居ルト云フナレバ其證據ガアレバ、復セシムル樣ニシテ宜シイト思ヒマス
(淸岡委員)
私ノ地面ガ足リマセヌ、其レデハ隣リノト云フ事ハ出來マセン
(箕作委員)
私ハ實際ノ事ハ知リマセンガ、私ハ雷同スルノデハナイガ、初メノハ不同意、今度ノモ不同意デス、餘計ナ世話ト思フ、一人ノ所有者ノナイモノガ向フニアルナラ取テ來ルト云フハ餘計ナ世話デス
(栗塚報吿委員)
界ヲ立ツルトキニ、箇樣ナ事ガアルカラト云フノデ御座リマス
(松岡委員)
事柄ガ惡ルイト云フノト、置場所ガ惡イト云フノトデ御座イマスガ、所有權ガ此方ハ不足デ彼所ニアルノヲ取テト云フノデ其ウヘ云フ事ハナイト云フノデス
(渡委員)
ソレハ反對ノ考ヘデ、貴君ノハ取タラ取リ得ニナリ、取ラレタラ取ラレ損ト云フノデシヨウ
(栗塚報吿委員)
僅カ作リ直ス折ニ侵入シタノデ、遂ニ一間モ取ラレタト云フノデス
(箕作委員)
ソレナレバ時効ガ來テ取ラルルモ同ジデアリマシヨウ
(南部委員)
ソンナ事ヲスル者ガアリマシヨウカ
(箕作委員)
餘計持テ居ルカラ法律デ、取ルト云フハ如何ニモ穩デナイ
(渡委員)
取レバ取リ得ト云フハドウモ其意ヲ得ヌ
(箕作委員)
是レハ多數ニ依テ刪除ニ決シマシヨウ
本條ハ刪除ニ決ス
○第七百六十二條朗讀ス
第七百六十二條 前條ニ憑リ行フヘキ減殺ハ若シ現物ニテ之ヲ行フ爲メ第七百五十八條ニ定メタル建物又ハ圍障アル土地ヲ裁斷スルノ必要ナルトキハ供スヘキ償金ヲ以テ其減殺ヲ爲ス
(渡委員)
之モ前同斷刪除デス
(尾崎委員)
刪除ヲ贊成
(箕作委員)
ソレデハ之モ刪除シテ先キヘヤリマシヨウ
本條ハ刪除ニ決ス
○第七百六十三條朗讀ス
第七百六十三條 若シ總テノ當事者ノ間ニ熟議ヲ以テ經界ヲ爲ストキハ其適宜ト考フル方式ニテ其證書ヲ製スヘシ此證書ハ土地ノ坪數及ヒ限界ニ付キ各當事者ノ利益トナルト損失トナルトヲ問ハス確定ノ名義ノ効アリ
當事者ノ議協ハサルトキハ裁判ヲ以テ坪數及ヒ限界ヲ定メ其裁判書ニ圖面ヲ添フヘシ此圖面ニハ各界標ノ間ノ距離及ヒ其地方ノ定マリタル標點ト各界標トノ距離ヲ記載シテ界標ヲ指示ス
(修正) 初項確定ノ下「名義」ノ二字ヲ刪リ「證書」ノ二字ヲ挿入ス
(栗塚報吿委員)
「名義」ト云フヨリハ「證書」ト云フ方ガ分リガ宜シイト云フカラ修正シマシタ
(箕作委員)
佛蘭西文ハ「名義」ト云フテアル「證書」ト云フ事デハアリマスマイト思フ
(栗塚報吿委員)
「名義」ト云フヨリ「證書」ト云フガ宜イト云フ說ガ多數デ御座イマシタ
(箕作委員)
「チートル」ハ「名義」ト譯ス樣ニナツタカラ、何所モ「名義」デアルガ、權利ノ出ル本ト云フ字ダカラ「證書」ト云タラ動カスベカラザルモノニナル
(村田委員)
元トハ權證トアツタガ原案ガ宜シイ
(箕作委員)
佛蘭西民法ハ動產ニ付テノ占有ハ「チートル」名義ト同ジデ、權利カラ出テ占有シテ居ル以上ハ外ノ名義ノ契約デ、取タ權力ノアルト云フノハ證書デハナイノデス
(南部委員)
證書デハナイ
(村田委員)
元本ト云フ事カ
(箕作委員)
確定ノ證書ト云フハ面白ハナイ、整然ト權利ノアル源ト云フデスカラ「チートル」ト云フ原字ノ意味ガ能ク分レバ宜シイガ、之ニ窮シテ證書トシテハ宜シクアリマセン
(鶴田委員)
「權證」トシテ宜シイカ知ラヌ
(栗塚報吿委員)
「證據」ト云フ意味ハナイノデアリマスカラ「原本」トシテ如何デス
(箕作委員)
譯字デスカラ跡デシテモ宜シイ
(栗塚報吿委員)
確定「チートル」ノ効アリト讀ンデ置ケバ宜シイ
(松岡委員)
「チートル」ノ資格ト云フ事ガアリマシヨウカ
(箕作委員)
アリマス
(栗塚報吿委員)
私ハ司法大臣ノ秘書官ノ「チートル」デアリマスト云フ事ガ出來マス
(箕作委員)
ソレデハ之ハ未定ニシテ先ヘヤリマシヨウ
本條確定ノ下「名義」ノ二字ハ再ビ調査スル事ノ他ハ原案ニ決ス
○第七百六十四條朗讀ス
第七百六十四條 石、樹又ハ杭ノ費用及ヒ其設置ハ之ヲ以テ限界トスル相隣者平分シテ負擔ス
測量ノ費用及ヒ證書又ハ訴訟ノ費用ハ總テノ當事者其土地ノ廣狹ノ割合ニ應シテ之ヲ擔任ス
然レトモ不當ナリト裁判セラレタル爭論ニ特ニ關スル訴訟ノ費用ハ敗訴者之ヲ負擔ス
(修正) 初項「ノ」ノ下費用ノ二字ヲ刪リ「代價」ノ二字及ビ置ノ下「ノ費用」ノ三字ヲ挿入ス
(栗塚報吿委員)
「派分シテ負擔ス」トナリマス
(村田委員)
修正ガ宜シイ
(松岡委員)
前ノ條ニ石又ハ樹杭ノ如キトアルガ、此所デハ他ノモノヲ云テモ宜シイカ、低地ヘ盛リ上ゲテ山抔ヲ造テ畢竟經界ヲ設置ク費用ト云フ位ニシテト云フノデハアリハセンカ
(村田委員)
其レモアル樣デス
(南部委員)
前ニ「杭ノ如キ」トアルカラ
(村田委員)
之デ宜シイカ
(鶴田委員)
特ニ關スルト云フハソレノミト云フノデスカ
(箕作委員)
左樣デス
(松岡委員)
宜シイ先キヘヤリマシヨウ
本條第一項ハ修正案ノ如ク決ス
○第七百六十五條朗讀ス
第七百六十五條 經界訴訟ノ裁判管轄及ヒ其他ノ方式ハ帝國裁判所構成法及ヒ民事訴訟法ヲ以テ之ヲ規定ス〔千八百三十八年五月二十五日ノ佛法律第六條第二項〕
(修正) 本條ハ刪除
(箕作委員)
之ハ刪ラヌ方ガ宜シイ
(松岡委員)
刪ラヌ方ガ宜シイ
(南部委員)
第七百二十二條ノ一項ヲ御覽ナスツテ下サイ
(栗塚報吿委員)
之ハ「ボアソナード」ガ刪タノデアリマスガ、實ハ村田委員ノ御注意デアリマシタ
(鶴田委員)
第七百三十二條ノ一項「有期」トアルハ我輩ハ「定期」ト直シマシタ
(栗塚報吿委員)
アレハ議論ノアツタ末、鶴田サンノ御氣付キデ有期ト云フハ期限ガ切レテハ、五年カ十年袋地ニスルカト云フガ、註ヲ見ルト、有期デハアリマセヌ
(箕作委員)
ソレデハ定期トシテ宜カロウ
(栗塚報吿委員)
六十四條ハ「負擔」トスルカ直譯デ宜シイノデス
(松岡委員)
負擔ガ宜シイ
(尾崎委員)
負擔ガ宜シイ
(工藤報吿委員)
第七百三十四條ノ末項、此場合ニ舊狀ニ復ス事ガアルカト聞クニ、御座イマセンソウデス
(南部委員)
第七百三十六條ノ共同ハ極リマシタカ
(栗塚報吿委員)
之ハ共同所有者トナツタガ、此間箕作サンニ相談シマシタガ、派分者ニハ相違ナイガ、共分者トシテハ如何デス
(箕作委員)
共同派分者デ宜シイダロウ
(南部委員)
「又ハ派分者」トハ云ヘマセンカ
(栗塚報吿委員)
同ジデ御座イマス
(箕作委員)
原書ニハ「共同派分者」トアリマス
(南部委員)
上ニ共同ト云フ字ガアルト照應ガ宜イカ知ラヌ
(栗塚報吿委員)
「共分者」デハ如何デスカ
(箕作委員)
「共同」ト云フ字ハ刪テモ「分派」ト云フ字ハ刪リ度クナイ
(南部委員)
「派分者」デハ如何デスカ
(松岡委員)
「派分者」デ宜シイ上ノ派分ヲ承ケルノダカラ、共同ノ二字ハ刪ルヲ贊成
(工藤報吿委員)
第七百四十一條ノ集合ト云フ事ハ「ボアソナード」ノ說明ガ御座イマシタ、之ハ泉源ノ土地ニ於テ行フ事ヲ得ルノハ諸方カラ湧出ス水ヲ集メテ引ク事モアルカラ、泉源ノ土地ニ於テ行フト云フ說デ御座イマス
(南部委員)
私モ左樣思ツタノデス
(工藤報吿委員)
ソレカラ第七百四十三條ノ各個人ニ屬セザル流水ト云フノハ、各個人ニモ屬セヌト云フノハ如何ナルモノカト云フト現ニ御座イマス、用水路惡水路トカ云フモノハ含ンデ居ラヌ、ト云フモノハ一村ニ屬スルモノデアルト云フノデス
(栗塚報吿委員)
ソレカラ此間御心配ニナツタ川ハ矢張リ海川デ御座イマス
(工藤報吿委員)
川床ハ沿岸者ニ屬スト公共物ト見ナケレバナラン、水ハ誰ニモ屬セヌト云フノデス
(南部委員)
ソウスルト七百四十六、七條ハ刪ルニハ及バヌト云フ事ニナル
(松岡委員)
公有ニモ屬セズ、如何ナル實物ガアルカ聞キタイ
(工藤報吿委員)
左樣ナル小川ハ日本ノ實際ヲ見レバ田ノ間ノ水位デシヨウ
(松岡委員)
田ノ間ノ水ナレバ用惡水路ニナロウ
(南部委員)
答ガ來テカラ後チ私モ考ヘテ見ルニ、一村ノ用惡水路ハ地券デ分ツテ居ルカラ、ソウ云フモノデナクシテ、他ニ隨分箇樣ナルモノガナイトハ云ハレナイ、田舎ニハアルカモ知レヌ、若シアツタトキハ適用サルルガ宜シイ、故ニ前ノ七百四十六條ヲ刪ツタノハ間違イデアルカラ再考ヲ願ヒ度イト云フノデス
(松岡委員)
ソレデハ他日再ビ議ストスルカ
(箕作委員)
各個人ト云フノハ町村モ這入リマスカ
(栗塚報吿委員)
這入リマス
(箕作委員)
這入ルト云フト五百一條ニ各個人トアルカラ各個人ト云フト一人ニハ見ラレナイ
(南部委員)
之ガ這入ラヌト云フトキハ一村ニ屬セバ公有ノ財產ニナルデシヨウ
(箕作委員)
公有ハ國ニ屬ス公有ニモナラズ各個人ニモ屬セヌケレバ權兵衞八兵衞ニモ屬セヌガ、村ヤ町村ニ屬スモノカト云フ嫌ヒガアル
(松岡委員)
ソレハ各個人ハ權兵衞太郎兵衞ト云フ事デアリマシタ
(箕作委員)
五百二十五條ニ「從フ」トアルカラ五百二十五條ハ大キナモノデ、大キナモノニ從ヘバ公有ノ部分ヲナサヌカラ町村限リノ私有物ノ外ノ樣ニ見ヘル
(松岡委員)
此川床ハ用惡水デモナク、小サイモノデ、魚ヲ捕テハナラヌト云フガ、何レ位ノモノカ聞イテ貰ヒタイ、之ハ併シ他日ノ論ニシヨウ
(工藤報吿委員)
用惡水ハ第七百四十九條ニ這入ルト云フノデス、地租條例ニモアリマスガ、卽チ此用惡水ハ日本デハ地租モ掛ケテ居ラヌト云フ事ヲ云テヤツタノデス
(南部委員)
此次ギニシテハ如何デスカ
(淸岡委員)
雨水ガ路ヘ落チルトキハ如何ナリマスカ、佛蘭西デハ慣習ニ依テ居ルカ如何カ聞イテ下サイ
(箕作委員)
五百二十五條ニ從ヒ國ノ部分デモナイ各個人トシテ町村モ這入ルノカ分ラヌカラ聞イテ下サイ
(栗塚報吿委員)
畏リマシタ
(箕作委員)
ソレデハ本日ハ是レデ措キマス
本條ハ原案ニ決ス
于時午後第四時閉會