法律取調委員会 民法草案議事筆記 第11回
参考原資料
- 法律取調委員会 民法草案第二編物權ノ部議事筆記 , 自 第十一回 至 第十六回 [国立国会図書館デジタルコレクション]
備考
- 未校正のテキストデータです.
民法草案第二篇第十一回議事筆記
自第六百四十五條至第六百五十九條
明治二十一年一月九日午前第九時開會
(委員長)
ヤリマセウ賃貸借
第六百四十五條朗讀ス
第三節 賃借人ノ義務
第六百四十五條 賃貸人其權利ヲ保存スル爲メ動產ノ目錄及ヒ賃貸シタル場所ノ形狀書ヲ作ラント欲スルトキハ賃借人ハ收益ヲ始ムル時又ハ其他何時ニテモ己レト立會ヒ賃貸人ノ之ヲ作ルコトヲ許諾スヘシ但賃借人ハ右書類ノ費用ヲ分擔セス
賃借人モ亦賃貸人ヲ召喚シタル後自費ニテ右ノ目錄又ハ形狀書ヲ作ルコトヲ得
動產又ハ不動產ノ形狀書ヲ作ラサリシトキハ賃借人ハ修繕完好ノ形狀ニテ之ヲ受取リタリト推測セラル但反對ノ證據アルトキハ此限ニ在ラス
動產ノ目錄ナキトキハ其實體及ヒ形狀ノ證明ハ賃貸人ノ責ニ歸シ通常ノ方法ニ從ヒ之ヲ爲ス〔第千七百三十一條〕
(南部委員)
之ハ修正ガ三ケ所アリマス
(栗塚報吿委員)
三項ニ五百七十五條ノ一項ヲ持テ來リマシタ
(南部委員)
第二項ヲ内「召喚シタル後」トアルヲ「立會ノ上」ト修正シテ「形狀書ヲ作ラシムルコトヲ得」トアルヲ「作ルコトヲ得」トシマシタ
(淸岡委員)
之ハ修正ト原案ト「作ラシムル」ト云フノト「作ルコト」ト云フハ丸ルデ反對ニナルガ
(栗塚報吿委員)
原文ハ「作ラシムル」トアリマスガ、賃貸人ニ作ラシムルノデハナイ、公證人ニ作ラシムルノデアリマス、然ルニ日本文デ「作ラシムル」トアルト、賃借人ニ賃借人カラ作レト云フ樣ニ見ヘルカラ、何所デモ公證人ヲシテト云フ意味デアリマスカラ、ソレヲ承ケル爲メニ、日本ニハ然ウ云フコトハアリマセン、誥旬「作ラシムル」ト云フト「賃貸人ニ作ラシムルコトヲ得」トナルカラ改メマシタ、矢張リ公證人ヲシテ作ラシムルノデス、原案ノ意味デハ
(淸岡委員)
原案ノ意味トハ違ヒマセンカ
(栗塚報吿委員)
違ヒマセン
(南部委員)
一項ハ賃貸人カラ作ラシムルデ、二項ハ賃借人カラデス
(淸岡委員)
宜サソウデスルナ
(委員長)
宜イ樣デスナ
(栗塚報吿委員)
第三項ハ新タニナリマスノデス
(委員長)
前ノ一項ノ所ハ宜シイカ
(村田委員)
宜シイ
(委員長)
宜ケレバ二項、三項ハドウカ
(栗塚報吿委員)
五百七十五條ニ基キマシタ修正デ御座イマス
(委員長)
丸ルデ別ニ入レルノデスネ
(栗塚報吿委員)
左樣デス
(南部委員)
第三項ニ入レルノデス
(淸岡委員)
用收者ノ義務デスネ
(栗塚報吿委員)
左樣デ
(村田委員)
一體此條ハ賃借人ガ是非シナケレバナラント云フノデハナイ、用收者ハ何ウアツテモ作ラナケレバナラン然ウデナイ賃貸人ノ方ノ損ダカラ尤モ後トノ方ニ賃借人モ爲スコトモアリマス、併シナガラ用收者トハ大變違フ
(栗塚報吿委員)
御尤モデス
(南部委員)
一方ニ作ルトシテモ作ルコトノ出來ルト法律ガ許シタ以上ハ、一方ハ無效トシタ場合ハ仕方ガナイ
(西委員)
此レ丈ケデ盡ス譯デスネ
(村田委員)
元ト設ケテナカツタハ、何ウ云フモノカ
(南部委員)
ソレハ元トハ、重モニ用收者ノ方ニ適用スルコトニナツテ居ルカラデス
(村田委員)
之ハ用收者トハ反對ニナリマスカネ
(南部委員)
反對ト云フデモナイガ少シハ違フ
(村田委員)
此場合ハ、賃借人ガ用收者ヨリハ割合ガ惡イ、自分デ皆ナ修覆シナケレバナラヌ、大變ダ
(南部委員)
其代リ末項ガアリマス
(栗塚報吿委員)
詰リ之ハ雙方ノモノガ出來ヌトキハ、目錄、不動產形狀書ハ公吏デ作ルハ當タリ前デ、雙方出テ來テ居ルナレバ自分デ拵ヘテ宜イガ、之ハ公吏ガ作ラナケレバナラヌガ必要デアリマスカラ、此方ノ場合デモ亦公證人ヲシテ作ラシムルノデス
(南部委員)
註ノ百九十五ノ二項ヲ見ルト分ル
(淸岡委員)
何ウ云フモノデスネ、場所ノ形狀書ト云フノト、不動產ノコトハナイ樣デ
(栗塚報吿委員)
我儘デ起案者ノ筆ノ先キデハ其邊ニ頓着ナシニ場所ノ形狀書ト云ヒ、不動產ノ形狀書ト云ヒ、同ジデアリマス、併シ日本文デハ疑ヒヲ起ス動產ノ形狀書ガ有ルカ無イカナレバ、動產ハ目錄書デアルト見ナケレバナラヌ、併シ目錄書トナイヂヤナイカト、一向頓着ナシニ書イテアリマスノデス
(淸岡委員)
上ト合セテハ何ウカ
(南部委員)
本人ガ出ナクツテ證明セヌトキハデス
(村田委員)
出ナイデモ、出タ者ト立會フ上行フモノト看做サルル、出ナクツテモ、ヤツテ仕舞フト云フノデセウ
(南部委員)
賃借人ガ證明シタトキト出タトキデス
(松岡委員)
借人ハ立會フモノデナイ、用收權トハ違ヒ、立會ハヌト思ヘバ出來ルノデ
(南部委員)
立會ヲ求メラルルコトナカルベシ、立會ヲ求メラルルコトノナイト、召喚スル丈ケノコトハ本文デ分ツテ、召喚シタトキ出テ來タトキ、自カラ證明スルコトニナツテ出テ來ナイトキ公ノ役人ガ之ヲ爲スト云フコトニナリマス、其旨意ト見マシタ
(村田委員)
何ウモ然ウラシイナ
(栗塚報吿委員)
私ハ修正シタ方ガ宜イト思フ、公證人ト云フモノハ出來ルト極ソテ居ルカラ
(松岡委員)
其面前ト云フハ、誰レノ面前カ、貸人ガ作ル場合ダガ
(南部委員)
賃借人ノ面前デアリマス
(松岡委員)
借人ハ一般貸人ノスル所ニ付テ、法式上立會ヲ求メラルルモノデハナイゾ
(栗塚報吿委員)
旨意ヲ申シマスルト、賃借人デモ賃貸人デモ立會テ、双方立會タトキハ、自分デ作テモ宜シイ、併シナガラ若シ双方立會ハナカツタカ、又ハ一方不能力者デアツタトキハ公證人ヲシテ作ラセルゾヨト云フ旨意デ、原案ノ旨意トハ背クノデ、起案者ハ總テ公證人ガ作ルト云フノデス
(南部委員)
然ウデハナイ
(栗塚報吿委員)
然ウデ御座イマス
(南部委員)
本文ト修正ハ變リマセン
(栗塚報吿委員)
公吏ニ作ラシムルト云フハ、一方ノ者ガ出席セヌカ、又ハ有效ニ代理セラレヌトキハ、公證人ニサセルト云フ旨意デ御座イマス
(淸岡委員)
宜シイ
(鶴田委員)
修正デ宜シイ
(元尾崎委員)
修正デ宜シイ
(委員長)
修正デ宜シイ
(栗塚報吿委員)
只今淸岡サンノ御注意デ御座イマシタガ、此處ニ「動產又ハ不動產形狀書」ト云フノト賃借シタ場所ノ形狀書ト同ジデ唯ダ原字ガ異ツテ居ル丈ケデ起案者ノ筆先ヲ繰タ丈ケデ、旨意ハ變リマセンカラ、動產又ハ不動產ト云フハ「動產目錄又ハ不動產ノ形狀書」トシテモ宜シイ
(淸岡委員)
私ハ前ヲ修正シテ、下ノ不動產ト云フ所ヲ除イテ仕舞ツテ宜イデシヨウト思フ、目錄及ビ形狀書トシテモ宜イデシヨウ
(南部委員)
御尤モデス
(村田委員)
削ラントイケヌ、用收者ノ方カラ出テ來タカラ不動產ト出テ來タガ、之ハ除ラナケレバナラヌ
(委員長)
「目錄及ヒ形狀書ハ公吏ヲシテ作ラシムル」トシテ宜イデシヨウ
(松岡委員)
前ノ「作ラシムル」ノ字ヲ「作ルコト」ト改メタ所以ハ作ルハ必ラズ公證人ガ爲ルノデスカ
(栗塚報吿委員)
立會ヘバ何ゾ公證人ヲ頼ムニ及バヌト云フ積リデアリマス
(松岡委員)
相手方ガ立會ハヌトキ又ハ出席ノナイトキハ、公證人ニサセルト云フノデスカ
(栗塚報吿委員)
左樣デス
(松岡委員)
私ハ第三項ハ無要ト思フ、用收權ハ何カラ成立ツカ先ヅ重モニ法律上カラ成立ツコトガ多イ、賃借ハ何カラカ、契約カラ成立ツモノデ、用收權ノ所ハ目錄ダノ、形狀書ヲ作ルハ義務トナツテ極メ付ケテアル、此處ハ總テ相對契約ガ元トナルカラシテ、八釜敷ク云ハズ、銘々ヤロウト思ヘバ、貸人借人ニ分ケテ、借人ノスル所モ「何々スルコトヲ得」トアリマス、本體ヲ云フト其樣ナ不完全ナ物ハ、默テ受取ルモノデナイ、何レ貸借スルニハ何ウシテ斯ウスルト、總テ契約上カラ成立ツモノダカラ、此處ハ八釜敷ク云ハンデ、宜イダロウ、若シ一方ガ出ナイトキハ、公證人目錄ヲ作ラセルト云フト、用收權ノ一分ヲ突然契約上デ成立ツ方ヘ搜シ込ンダ樣デアルト思フ
(栗塚報吿委員)
卽チ之ヲ其儘置ケナカツタノハ恰度御說ノ如ク報吿委員デモアツタノデ「有效ニ代理セラレタトキハ私署ヲ以テ之ヲ作ルコトヲ得」ト云フニ及バヌ、之ハ元來契約カラ成立ツハ勿論、能力者ヲ有效ニ代理セラレタコトハ前ニ云テ居ル、併シナガラ唯ダ反對ノ場合ニ於テ公吏之ヲセズノ一言ニ至テハ云テナイダカラ當事者ノ一方出席シテ、能力者タルトキ云々ト云フコトハ云フニ及バヌ、ソレヲ防ギマシタノデ、反對ノ場合ヲ於テト云フ之ヲ爲ス丈ケヲ活シテ來テ、一方出席セズ、有效ニ代理セラレザルトキハ、ト反對ノ場合ヲ指ス丈ケヲ揭ゲタノデアリマスカラ、恰度貴方ノ御考ヘ通リ、云フニハ及バヌノミナラズ、前後ニ云テ居ルカラ反對ニ於テノミ解シタカラ、其御氣付ヲ斟酌シテ修正シタ積リデアリマス
(松岡委員)
成程其處ハ分リマシタガ、ソレガ卽チ契約カラ成立ツモノデ初メカラ見分シテ目錄ヲ書ケ、嫌忌ナレバ契約ハ成立ヌ又契約ノ成ツタ後チハ法律デ極メナケレバナラヌト云フハオカシイ、何モ箇モ契約デ成立ツナレバ、一般普通契約物マデ特ニ書クハ體裁ヲ失フト思フ
(栗塚報吿委員)
四十五條一項、二項ノアル以上ハ、原文ニハ賃借人ハ自費デ設クルガ、公證書ハ公吏ヲシテ作ラシムル意味マデ書イテアツタ以上ニハ、私ハ至極修正ガ宜イト思ヒマス
(村田委員)
私ハ初メハ何ウカト思ツタガ能ク考ヘルニ契約者ノコトハ宜イガ、濟ンダ後チニナルカラ賃貸人ガ作ツテ置カヌト後チニ返セト云テモ、此ノ品デスト云テ、外ノ品ヲ持テスルモ迷惑スルカラデアロウ
(栗塚報吿委員)
實際双方立會デヤラヌコトモナシ何レモ公證人ニ任セルモノダロウト思フ大槪家事向ノウルサイ人ハ公證人ニ委ネルト思フ
(委員長)
修正デ宜イヂヤナイカ
(西委員)
修正デ宜シイ
(淸岡委員)
訝シナ心持ハスルガ、修正ガ宜シイソレカラ五百七十五條ニハ公吏ト云フ字ガアリマスネ之ハ公證人ヲ云タノデスカ
(栗塚報吿委員)
公ノ役人ト云フコトデス
(淸岡委員)
公證人ト書キマスルカ
(栗塚報吿委員)
差支ハアリマセン、起案者ノ旨意ハ元々公證人許リデアリマス、併シ裁判所ノ書記ニヤラセルト云フ旨意ダカラ公證人トシナカツタノデス
(委員長)
矢張リ之デ宜イデセウ
(淸岡委員)
役人ハ皆ナ公吏ヂヤガネ
(栗塚報吿委員)
佛蘭西語デハ「官吏」ト云フノデ人民ト直接ノ仕事ハ出來マセンガ、裁判所ノ書記ハ官吏デハナイ、公吏デアリマス
(淸岡委員)
「公吏」ト云フト、官吏ト云フ字ヂヤナ
(栗塚報吿委員)
半官吏デス
(鶴田委員)
動產モ形狀書ヲ作ル樣ニ見ヘル
(松岡委員)
動產ハ除イテハドウカ
(栗塚報吿委員)
此ノ箪笥ノ抽斗ガ開イテ居タトカ扉一枚缺ケテ居ルトカハ目錄書ニ書クニハ相違ナイガ、書イタトキハ何ト付ケルカ、形狀書デナイ方デヤツテ仕舞詰リ動產不動產ノ形狀書ト云フハ、形狀書ヲ作ル動產ノ目錄ニハ違ヒナイ、若シナイトキハ、實體云々ト終リニアリマスモ若シ動產目錄ヲ付ケナカツタトキハ矢張リ書イテアツタトキト同ジデス
(鶴田委員)
「目錄ナキトキハ」ト云フノダカラナキトキデセウ
(南部委員)
ナイカラ證明シナケレバナラヌ
(尾崎委員)
目錄ハ矢張リ動產ノ形朕書ダネ
(栗塚報吿委員)
左樣デス
(松岡委員)
目錄ノ列學ガアツテ、抽斗ノ損ジテ居タ所ハ分ラヌト云フト
(栗塚報吿委員)
目錄ガアルト分ルノデス
(南部委員)
賃借人ガ之デ推測ヲ受ケル時分、作ラナカツタカラデ
(松岡委員)
次ハ貸人ガ目錄ヲ作ラナケレバナラヌカ
(南部委員)
然ウナル
(松岡委員)
訝シイ
(南部委員)
不動產形狀書丈ケ若シナカツタトキハ、矢張リ賃借人ガ受取タト看做スコトガ出來ルノデス
(松岡委員)
形狀書ハ目錄ヨリハ明瞭ト思フガ
(栗塚報吿委員)
品ニ依テハ唯ダ抽斗ド云テハ金側カ銀側カ分ラヌ、然ウスレバ銀側カ金側カハ形狀書デ云テ置ク見込デアリマス
(松岡委員)
動產ハ籠ツテ居ルノデスカ
(栗塚報吿委員)
動產ハ特別デアルカラ殊更ニ書イタノデ、修繕完好ノト云フハ、賃貸人ハ修繕ノ有樣デ、受取タト推測セラルルゾヨ若シ之ガナケレバト云フノデアル然ルニ動產目錄ノナキトキハ金デアツタカ、銀デアツタカ、實體品物ノ形狀ハ之々ノ有樣デアツタト云フコトヲ賃貸人ガシナケレバナラヌゾヨ、實體ト形狀ハ修繕ヲシテ貰ツタモノヂヤト云フハ前ノデ此ノ方ハ然ウヂヤナイノデス
(南部委員)
完好ニナツテ居テモ、實體品物ノ違フモノガアルカラ、綿密ニシナケレバナラヌノデス
(委員長)
然ウ云フ旨意カネ
(南部委員)
註ノ仕舞ヲ見ルト分リマス
(西委員)
宜イ樣デス
(村田委員)
仕舞ノ項ハ實體形狀ト云フト數モ這入ツテ居ル、十個ノモノヲ七個デ返ヘサンデモ仕方ガナイカラ數ノコトモアルガ
(栗塚報吿委員)
中ニ這入ツテ居ルモノト云フ意味ニモナリマス(コンシスタンス)ト云フ字デ實體ハ物數ヨリ廣イ字ダカラ物數丈ケニ限ラヌノデ誠ニ困リマス
(委員長)
宜クバ先ヘ行キマセウ
第六百四十六條朗讀ス
第六百四十六條 金錢ヲ以テ借賃ト爲シタルトキハ賃借人ハ合意ノ時期ニ之ヲ拂ヒ其合意ナキトキハ每月ノ終ニ之ヲ拂フヘシ〔第千七百二十八條第二項〕
右ト同一ノ名義ニテ拂フヘキ果實ノ部分ニ付テハ其部分ハ收獲ノ後ニアラサレハ之ヲ要求スルコトヲ得ス然レトモ收獲ノ後ニ於テハ其全部ヲ要求スルコトヲ得
(栗塚報吿委員)
一項ハ修正ヲ加ヘテ、其修正文ハ茲ニ出テ居リマスガ「但地方ノ慣習之ニ異ナルトキハ此限ニアラス」ト云フノデアリマス
(松岡委員)
至極此修正ハ贊成デ御座イマス、上方ヘ行クト、拂ハ二ケ月ダカラ、之ニナレバ二期拂ノ方デセウ、又何ウ云フコトデ二項目ヲ分ケタカ、然レドモ以下ハ何ウ云フ譯デスカ
(栗塚報吿委員)
其トキハ殘ラズ呉レト云フコトガ云ヘルノデセウ
(村田委員)
其代リ收獲前ニハ行カヌ、部分ト云フコトハ何ウデスカ
(栗塚報吿委員)
果實ヲ以テ貸賃ト爲シタトキハ收獲ノ後チニアラザレバ請求ハ出來ヌ併シ收獲ノ後チナレバ賃金ヲ皆ナ呉レト云フコトガ出來ルゾヨト云フノデス
(南部委員)
「部分」ノ字ハ半分金半分果實ノトキハ部分字ガ必要デス
(尾崎委員)
一石ヲ三斗ヅツト三度ニ拂ハウト云フノダロウ
(鶴田委員)
曩キノ全部ハ部分ノ全部ダ
(西委員)
然ウ書カナケレバナラヌ
(栗塚報吿委員)
「全部」ト云フ字ハ全キヲト云フ字ダカラ「全キヲ」ト直シテモ宜シイ
(松岡委員)
部分ハ部分ケヲスルコトヂヤナ、分收ダ
(南部委員)
分收トハ違フ
(栗塚報吿委員)
錢デ極メテハ、三月目トカニ拂フコトハ出來ルガ、收獲デ拂フト云フコトハ收獲ノ後チデナケレバナラヌ、拂フトキハ一時ニ拂フコトガ出來ルト云フノデス
(松岡委員)
ソレハ分ツテ居ル
(鶴田委員)
譯ハナイノダ
(委員長)
宜カリソウナモノデス、先ヘ行キマセウ
第六百四十七條朗讀ス
第六百四十七條 賃借人カ右給付ノ執行ヲ爲サス又ハ賃借ノ其他ノ特別ナル條目及ヒ條件ヲ執行セサルトキハ賃貸人ハ訴訟ニ因リ賃借人ニ對シテ直接ニ其執行ヲ強要シ又ハ損害アルトキハ其賠償ヲ得テ賃貸ヲ銷除スルコトヲ得〔第千七百四十條及ヒ第千七百六十條〕
(栗塚報吿委員)
「賃貸借ヲ」トナリマス
(村田委員)
前ノモ「貸」ノ字ガ這入ルノデセウ
(栗塚報吿委員)
左樣デス
(尾崎委員)
永借ノ樣ナモノデモ銷除ガ出來ルカ
(南部委員)
制限ガ違ヒマス、永賃貸借ノ方ハ三年間引續キ拂ハヌトキハ解除ガ出來マス
(松岡委員)
「給付」ト云フハ
(栗塚報吿委員)
賃ヲ拂ハヌトキハト云フノデス
(委員長)
「其他」ト云フハ何ヲ云フカ
(栗塚報吿委員)
種々條件ガ付テ居リマセウガ一番大切ノハ給付ノ執行デ御座イマス、大事ノ品物ヲ作ツテ呉レヌトカ、濫用シテハ行ケヌトカデス
(松岡委員)
ソレカラ他人ニ作ラセルコトハ出來ヌトカ云フコトモ出來マセウ
(委員長)
給付ノ執行ノ他ノ特別ノ條件カ
(栗塚報吿委員)
然ウデハ御座イマセン、給付ヲ執行スルト云フコトハ賃貸借ノ一條件ヲ執行スルノデ其外ノ條件モ御座イマス
(委員長)
賃ヲ拂ハヌト云フコトノ外ニ、又ハノ下タヘ這入ルダネ
(栗塚報吿委員)
左樣デス
(鶴田委員)
「訴訟ニ因リ直接ニ」ト云フコトハ分ラス
(栗塚報吿委員)
訴訟ニ因リ直チニ賃借人トスルコトガ出來ルト云フノデス
(村田委員)
「直接ニ」ト云フノト「直チニ」トハ違ヒマスゼ、之ハ「直チニ」トシタイ
(鶴田委員)
訴訟ニ因ラズ直接ニ約束通リ引上ゲルコトガ出來ル樣ニ見ヘル
(尾崎委員)
御互ヒ同士デハイケナイ、訴訟ヲシナケケバイケナイ
(松岡委員)
「直チニ」ハ入レテ欲シイナ
(栗塚報吿委員)
訴訟ニ因リハ裁判所ヘ出テデ御座イマス
(尾崎委員)
然ウヂヤロウ
(村田委員)
直接ニト云フノト、又ハガ大變利イテ居ルノデ
(鶴田委員)
訴訟ニ因リト云フト、訴訟ヲ出シテ置テ、片方デハ直グニ引上ゲルト云フコトガ出來マスカ
(南部委員)
假差押ナラ行ケマスガ、此處デハ行ケマセン
(松岡委員)
條件ヲ執行サセルカ、又ハ契約ヲ廢メテ損害金ヲ取ルカト云フノダロウ、同ジコトナラ「直チニ」ノ方ガ宜カロウ
(村田委員)
ナクツテナラヌ必要ハナイ
(委員長)
宜ケレバ先ヘ行キマセウ
第六百四十八條朗讀ス
第六百四十八條 賃貸シタル場所カ土地ノ產物ヲ貯藏スル爲メニ調適セラレタルトキハ賃借人其產物ヲ賣ルマテハ賃貸人ノ擔保ノ爲メ之ヲ其場所ニ貯藏スヘシ但賃借人其年ノ借賃ヲ前拂ニスルコトヲ好ムトキハ此限ニ在ラス〔第千七百六十七條〕
(栗塚報吿委員)
修正ハ「調適」ノ二字ヲ「供セラレタル」トシマシタ
(西委員)
宜シイ
(松岡委員)
宜シイ
(委員長)
宜ケレバ先ヘ行キマセウ
第六百四十九條朗讀ス
第六百四十九條 賃借人ハ直接ニ賃借物ニ賦課セラルヽコトアルヘキ通常又ハ非常ノ租稅ハ如何ナルモノト雖モ賃借人之ヲ擔任セス歲計法ニ依リ賃借人ニ賦課スルコトアルヘキ租稅ハ其借賃中ヨリ扣除シ又ハ賃貸人ヨリ賃借人ニ之ヲ償還スヘシ但反對ノ合意アルトキハ此限ニ在ラス
然レトモ賃借人ノ構造シタル建物ニ賦課シ又ハ賃借地ニ於テ賃借人ノ營ム商業及ヒ工業ニ賦課スル租稅及ヒ負擔ハ賃借人之ヲ擔任ス
(松岡委員)
上ニ「賃借人ハ」ト云テ又「賃借人之ヲ擔任セス」ト云フハ二重ニナルナ
(栗塚報吿委員)
全ク之ハ誤リデ御座イマスカラ、後トノ賃借人ハト云フハ御消シ下サイ、之ハ箕作サンモ不同意ヲ云ハルル筈ハアリマセン
(村田委員)
前ヲ消シテ、後トノヲ置ク方ガ宜シイ
(栗塚報吿委員)
ソレデハ箕作サンニ相談シテ直シマスカラ
(松岡委員)
唯ダ二ツアツテハオカシイ丈ダ
(淸岡委員)
「歳計法」ハオカシイナ
(栗塚報吿委員)
構成法ニ「歳計法」ト云フガアリマセウ
(淸岡委員)
アレハ「歳計豫算法」デ御座イマス
(栗塚報吿委員)
會計年法ニ依ルト云フノデ、卽チ一年ノ勘定スル法ダカラ「歳計法」トシマシタ
(松岡委員)
「歳計法」ハオカシイ
(鶴田委員)
徵稅法ダナ
(奧山報吿委員)
徵稅法デハ稅ヲ取リ立ル樣ニナルカラ
(委員長)
之ハ大藏省ノ方ニモ何カアロウカラ、一定スル樣ニ、報吿委員デ聞テ見テスルガ宜イ
(鶴田委員)
本人カラ取立ズニ、借リタ者カラ取立ルコトハ今デモアル知ラヌ
(栗塚報吿委員)
近頃ハ戶數割ヲ家主ガ拂ヒマスガ、前ニハ借人ガ拂ヒマシタ
(松岡委員)
直接ノモノデ借人カラ取ルノハ、今デハナイダロウ
(委員長)
船ハ何ウカ
(南部委員)
船主カラ拂ヒマス、鑑札ヲ船主ニ與ヘマスカラ
(委員長)
「借賃」ト云フカ「貸賃」ト云フカ
(栗塚報吿委員)
借人カラ云ヘバ「借賃」デ御座イマス
(村田委員)
貸タ方カラ言葉ヲ立レバ「貸賃」ダ
(松岡委員)
此條ハ異議ハ御座イマセン
(委員長)
先ヘマイリマセウ
第六百五十條朗讀ス
第六百五十條 賃借人又ハ其讓受人ハ明示ト默示トヲ問ハス合意ヲ以テ定メタル用方ニ從フニアラサレハ賃借物ヲ使用スルコトヲ得ス又此事ニ關シ合意ナキトキハ契約ノ時ノ用方又ハ物ノ本性ニ因リ毀損セスシテ爲スコトヲ得ル用方ニ從フニアラサレハ之ヲ使用スルコト得ス〔第千七百二十八條第一項〕
(村田委員)
借リタ奴カラ借ルト復タ借人ダナ
(鶴田委員)
復タ借リ人デセウ
(西委員)
復タ借ト計リハイカヌ
(鶴田委員)
賃借權ノ相續人ダナ復タ借人ハ別ダネ
(栗塚報吿委員)
併シ先ヘ行クト、復タ借人ト同ジ樣ニ書イテアリマス、轉借人モ讓受人モ一個ニシテ貸テアリマス
(西委員)
之ハ六ケ敷イ條デハアリマセン
(松岡委員)
宜シイ
(委員長)
宜ケレバ先ヘ行キマセウ
第六百五十一條朗讀ス
第六百五十一條 賃借人ハ賃借物ノ看守及ヒ保存ニ付キ用收者ト同一ノ義務ヲ擔任ス
若シ第三者カ賃借物ニ付キ占奪又ハ其他ノ企作ヲ爲ストキハ賃借人ハ用收者ニ關シ第五百九十九條ニ記載セル如ク且之ト同一ノ責罰ニテ其旨ヲ賃貸人ニ吿知スヘシ〔第千七百二十六條及ヒ第千七百二十七條〕
(栗塚報吿委員)
修正ハ第二項ノ「若シ」ヲ制テ第五百九十九條ノ用收權ノ條ヲ修正シテ加ヘマシタノデス
(南部委員)
ソレト前項ヲ修正致シマシタ
(松岡委員)
前ニ「權利アリ」ト云フガアルカラ此處ハ「注意スルノ義務アリ」トシテ宜カロウ
(栗塚報吿委員)
「ヘシ」ヲ「義務アリ」ト云フ丈ケデ宜シイ
(委員長)
宜ケレバ然ウ致シマセウ
(南部委員)
修正案ノ「可キ」ハ「ヘキ」デアリマス
(委員長)
「時效又ハ占有權ニ付キ其責ニ任ス」ト云フト、第三者ガ得タ奴ハ仕方ガナイネ
(栗塚報吿委員)
左樣デス
(委員長)
宜ケレバ先ヘヤリマセウ
第六百五十二條朗讀ス
第六百五十二條 一箇ノ建物又ハ同一ノ構内ニ在リテ同一ノ所有者ニ屬スル數箇ノ建物ニ數人ノ賃借人アルトキハ其賃借人ハ所有者ニ對シ連帶シテ火災ノ責ニ任ス但總テノ賃借人又ハ其中ノ或者ニ過愆ナキノ證據アルトキハ此限ニ在ラス〔第千七百三十三條第千七百三十四條及ヒ千八百八十三年一月五日ノ佛法律反對〕
(南部委員)
此ノ條ハ餘程論モアツテ報吿委員中二派ニ分レテ居リマス、併シ原案ハ其儘存シテ置キ提出シマシタガ、私抔ハ第一ニ何ウモ連ノコトニ至テハ甚ダ不都合ト思ヒマス、理由ハ反對論者カラ提出シテアリマスカラ篤ト御熟考ヲ願ヒマス
(村田委員)
私ハ原案ノ連帶義務ノ方ガ宜シイ
(南部委員)
私ノ考ヘデハ、法律上カラ連帶義務ヲ負ハセルト云フハ止ヲ得ザル場合デナケレバナラヌト思フ、箇樣ナ場合ニ法律上カラ借家人ニ連帶義務ヲ負ハセルハ不公平極マル、所謂壓制デ不都合ト思ヒマス
(村田委員)
過愆ガナイト云フコトヲ示セバ宜シイ
(南部委員)
連帶ハ一方ガ少ナケレバ一方ノ身代ノ宜イ者ガ負擔シナケレバナラヌ、之ヲ分任トシテ其借リテ居ル場所ノ償額ニ應ジテ分任スレバ公平ニナル、然ウデナイ連帶シテ其責ニ任ズルト何ンナ大キナコトガ出來ルカ知レヌ
(村田委員)
然ウスレバ貸主ハ不安心デ、貧乏人ニ貸シテハ丸ルデ損ダ、ソレハ宜クナカロウ、詰リ過愆サヘナケレバ宜シイ、過愆ガナケレバ遁ガルル道ガアルノダカラ
(南部委員)
併シ過愆ノナイト云フ證據ヲ擧グルニ、中々擧ルベキモノデナイ、出火抔ガ度々裁判所ヘ出ルガ分ラヌコトガ多イ、要スルニ此所ハ私ノ方デシマシヨウトカ、話合ニシマセウトカ云フノデ、過愆ノナイト云フ證明ハ六ケ敷イノデス
(村田委員)
過愆ノナイモノハ關係ナイトスレバ宜シイ分任トスレバ貸主ガ迷惑デアリマス損害ノアルトキハ連帶ト云フハ賠償法ノ原則デ伊太利モ然ウダ
(奧山報吿委員)
然ウダト推測デハ出來マセン
(村田委員)
千圓ノ家ヲ借セバ千圓丈ケノ償ハ是非シナケレバナラヌ性質ダ
(南部委員)
ケレドモ皆ナニ貸タ譯デハナイ、別々デス、之ガ合體シテ貸タノナレバ連帶シテ宜イガ、別々ニ貸タノデアルカラ
(村田委員)
ケレドモ其家ヲ借リテ居ルカラ
(南部委員)
隣リデ火ヲ焚ケバ、此レハト思フ日ハ、制限シナケレバナラヌガ、ソレハナイ
(村田委員)
隣リデ火ヲ焚ケバ、注意スルガ宜シイ
(南部委員)
ソレハ道徳上ノ義務デ法律上制サナケレバナラヌトナケレバ分ラヌ
(村田委員)
連帶義務ガアレバ注意スル
(南部委員)
注意ニナラヌ、却テ共ニ拂フカラト云フ心ヲ生ジテ來ル
(村田委員)
併シ連帶ト思ヘバ銘々氣ヲ付ケルダロウ
(工藤報吿委員)
連帶トスルト千圓ヲ十人トシテ、一人ノ外無イト云フト、一人デ千圓ヲ拂ハナケレバナラヌ、分擔トスレバ然ウデナク、償額ニ應ジテ拂フカラ公平ト思フ、又刑法デハ出火ノ責ニ任ゼズトシテアル、決シテ連合シテハ居リマセヌ、契約ハ各別ニ出來テ居ルノダカラ、連帶義務ノ意味ト推測ハ下サレマセン
(村田委員)
併シナガラ十人ノ不注意ト看做シタカラ何ウカ
(南部委員)
今日ノ現在デ然ウ云フモノハナイ、抑モ亦何ノ理由カラ連帶トナルカ
(村田委員)
例ヘバ犯罪ト見タラ宜カロウ
(南部委員)
犯罪デハアリマセン
(村田委員)
過チガアルト見レバ宜シイ
(松岡委員)
之ハ私ハ諸君ニ意見ヲ願フガ、今報吿委員ノ云ハルル刑法ノ附則ヲ持ヘル時分八釜敷イ論デ、日本ノ火事ハ一種特別ノモノト云フノデ、實際ハ賠償ノ責ニ任ゼヌトナツテ居ル近頃附則デ實際賠償ヲモサセナイ法ヲ持ヘタ、ソレヲ今日一時ニ借家人ニ責ヲ負ハセルト云フノダカラ、之ヲ設クルガ良イカ、惡イカハ一論デ、借テ火事ヲ出シタ奴ハ、賠償ノ責ガアルノミナラズ、家主ハ長家ノ者ヲ連帶サセルカ、サセヌカハ第二ノ論ニ分ケテ願ヒタイ
(南部委員)
私ハ報吿委員ノ論ヲ維持致シマス
(村田委員)
形法ハ元トヤル積リデアツタガ、慣習ニ制セラレテヤツタノダカラ
(栗塚報吿委員)
松岡サンノ御說デアルガ、報吿委員中責ヲ負ハセルコトノ議論ガ多少アツタガ一致シテ責ヲ負ハナケレバナラヌトスレバ借家人ガ溜ラヌ、東京ハ火事ノ多イ所デ、責ヲ負ハセナイ樣ナコトデハ貸家人ハ出來マセンマデ云テ責ヲ負ハセルトナツタノデ然ウシテ連帶ガ宜イカ、惡イカデ論ガ割レテ私ハ連帶ヲ主張スル一人デ御座イマス
(工藤報吿委員)
報吿委員デハ半數々々ニ岐レマシタ
(委員長)
賠償サセルニ異論ハナカロウカ
(鶴田委員)
私ハ性質ヲ承リタイト思フガ、之ハ全ク出火ノ原因ガ知レナイトキダロウネ
(栗塚報吿委員)
左樣デ、不調法ガアレバ不調法ヲシタ者一人ニ係ケルノデアリマス
(鶴田委員)
取調テモ分ラヌトキハ
(栗塚報吿委員)
知レヌトキノコトデ御座イマス
(鶴田委員)
然ウシテ見レバ誰カ負ハナケレバナラヌ場合デ、負擔ハ連帶カ分擔カデ御座イマスガ、之ハ同一ノ借地人ガ一個ノ内ニアルトカ、一個ノ構ヘ内ニアルコトヲ云フノデ、一軒ノ内ニ居ルト云フトキノ原則ガナクツテ、之計リデハ何ウデセウ
(南部委員)
ソレハ次ノ條ニ御座イマス
(栗塚報吿委員)
一人責ヲ負フカラ、連帶ノ場合ハ云ハヌデモ宜シイ、元々過愆ガナイコトヲ證明スレバ宜イノデス
(鶴田委員)
日本今日ノ法律デハ賠償ノ限ニ非ラズト云フ原則ガアル
(南部委員)
一般損害賠償ノ通リデ行キマス積リデ御座イマス
(村田委員)
連帶ノ爲メニ設ケタ條デ、私ノ見ル所ハ違テ居ルカ知レスガ、誰レモ知ラズニ火事ヲ出シタ場合トハ見ナイノデ、此場合ハ十人借リテ居ル内、十人ガ過チガアルノデス、ダカラ連帶シテト云フノダ、ト云フモノハ過愆ノナイモノナレバ他カラ飛ンデ來タ火ダトカ、突然燃ヘ出シタトカ云フノハ責ハナイ
(松岡委員)
長家デナイ一軒借リ切デ火事ヲ出シタトキ、刑法ノ附則ガ行ハルルカラ責ハナイカ
(栗塚報吿委員)
之ガ出レバ、刑法附則ハ改正スルモノデ、彼レガ活テ居ル内ハ、之ハ云フコトハ出來マセヌ
(工藤報吿委員)
彼レヲ改メル改メヌニ拘ハラズ、日本ノ家ノ構造ハ一時ニ百軒モ二百軒モ燒ケルニ、必ラズ之ニ責ヲ負ハセルハ困難デアリマセウガ、負ハセルカ負ハセナイカ、大體緻密ニ御詮議ニナリタイト思フ
(栗塚報吿委員)
私ハ何デモ他人ノ家ヲ借リテ居テ、過チノナイ證明ノ出マセヌ以上ハ、責任ヲ負フ原則ハ崩レマセント思フ
(西委員)
一時ニ燒キ拂タ場合ハ別デセウ
(栗塚報吿委員)
左樣デ、本來ヲ云フト、東京中燒ケレバ皆償ハナケレバナラヌガ、ケレドモ然ウハ出來マセン、借家人ト家主ノ關係ヲ定ムルノミト云テ居ル
(西委員)
連帶ハ困リマスネ
(松岡委員)
家主ヘハ償ハナケレバナラヌガ立派ナ家ガ燒ケタトカ云テ償ヘト云フハ困ルネ
(西委員)
所有主ト借家人ノ關係ダカラ、借リテ居ル人ハ所有主ヘ對シテ責任ガアルノデス
(村田委員)
火元ノ分ラヌモノハアリマスマイト思フ
(南部委員)
實際分ラヌモノガ多イ
(工藤報吿委員)
今日分ラヌノガ多イ、子僧ノヤツタノモ、主人ガ負フ位ニ大槪ニスルカ、分ラヌノガ多イ
(村田委員)
隣リカラ出マシタト云ヘバ
(工藤報吿委員)
ソレデハ濟ミマセヌ裁判官ガ認定スレバ何ダガ然ウハ行キマセン、分ラヌノガ多イ
(栗塚報吿委員)
殘ラズニ不調法ガアルト見ル其トキ連帶ニ負ハセルカ、如何ニト云フ疑問ニナツタノデス
(工藤報吿委員)
原案ノ維持者ハ皆ナノ不調法ト云フノデ、反對者ハ皆ノ不調法トハ見ナイ、隣リデ注意ガ出來ルガ、餘計ナ御世話ト云ヘバ仕方ハナイガ、法律上銘々契約ガアルカラ、責ハ費ハスルコトハ出來マセン、之ヲ法律上連帶カ否ヤ今定メルニ至テハ實際上如何ト云フノデ論ガ岐レタノデス「ボアソナード」ノ註ニハ互ニ注意スハ云々トアリマス
(村田委員)
互ニ注意シテ宜イダロウト思フ
(工藤報吿委員)
ソレハ見ル所ニ因ルノデ
(淸岡委員)
家ヲ借テ居ル價額ニ依ルノデセウ
(村田委員)
一個ノ構ヘ内ニ住デ居レバ仕方ガナイト思フ
(栗塚報吿委員)
私ハ異ツタ論デ御座イマスケレドモ、一所内ニハ五人組ト云フモノガ立テ居タモノデ、一町内ノコトハ五軒ノ家デ取締リヲシタモノデ、又借家人ト家主ノ關係ノ如キモ店子ト云フ程デ、家主ト密着ノ關係ヲ有シ、店子ハ家主ニ對シテ一ノ責ノアル方ガ、多少出火抔ガ少ナクナリマセウ、又責ヲ負ハセテ居ルコトナレバ、恰度五人組中デ注意シタ樣ナ譯デ一人ノ損デハナイ皆ンナノ損ニナルゾヨト云フト、店子モ氣ヲ付ケルト云フ精神ガ現ハルルト云フノデ、且又爲メニ怖ロシイカト云フニ、過愆ノナイコトガ云ヘヌ場合ニノミデ御座イマスカラ、至テ場合ハ尠ヒコトデ多クノ場合ハ過愆ノアルノデ、私ハ過愆ハアリマセン、何ゼナレバ火ヲ焚キマセントカ、又ハ火元ガ向ウノ隅カラ出マシタト云フ樣ナルコトナレバ責ハ免カルルノデ、ソレモ何モ云ヘヌトキハ嚴敷イニハ相違ナイガ、今日ノ東京ノ如キ火事ノ多イ所デ、此位ニ斷ツテ置ケバ出火ノ原因ハ減ジ樣ガ、現在伊太利ニ然ウナクテモ、佛蘭西中ニ然ウアリマスカラト云フノデ、維持說ヲ主張シタノデ、之ハ若シ火事ガアツタ場合ニ皆ナ連帶ガナレバ、然ウデナイ、自身ガ過愆ノナイ證據ガアレバ宜イ、其トキハ一ツ長家カラ出タニモセヨ端ノ長家カラ出タコトヲ云ヘバ、過愆デナカツタト云ヘルニ相違ナイシ、連帶ハ嚴敷イガ、實際自カラ連帶デナイト云フ方ガ多クツテ、嚴シクナツテ居ルト、火ノ扱ヒ方モ大切ニナリ、又各多少過チノナイト云フコトノ云ヘヌトキハ、同一ニ過チヲ被リ、所謂五人組ノ如キデ、互ヒニ氣ヲ付ケベキヲ、氣ヲ付ケナイ、互ヒノ不調法ガアツタナレバ、又其責ハ連帶シテ帶ルト云フ法律ヲ極メルハ至當ト思フノデ、私ハ報吿委員中デ此說ヲ主張シマシタトキ然ウ云フ說ヲ演ベマシタ
(松岡委員)
連帶サセルヤ否ヤノ論ハ先刻ヨリ承ハルガ、此數人借家ノコトハ書イテアツテ、佛蘭西伊太利ノ民法ニハ賃借人ハ何々ノ責ニ任ズト、其借人ハ數人アル場合ハト、何ウシテ、六百五十二條ニ重モタルモノヲ出サヌカ
(栗塚報吿委員)
重モナルモノハ、云フマデハナイト云フ論デアリマス
(松岡委員)
借人ノ義務ヲ云フノダカラ、借人ガ過失ヲスレバ何ウト云フコトハ出サナケレバナラヌ
(栗塚報吿委員)
書カヌヂヤ惡イトカ、良イトカ云フ說ハ跡デ責ヲ負ハセルカ否ヤヲ先キニ決シタイ
(鶴田委員)
ソレモ宜シイ
(松岡委員)
大原則ガ良シアルニシテモ、順序ヲ申セバ、何ウシテモ連帶ノコトヲ云ヘバ、先ヅ一人ガ借リタト云フコトヲ云ハナケレバ、片方モ不備ニナル、又借人ノ義務ヲ揭ゲルハ適當ト思フソレヲ二番目ニシテ、若シ一體ノ所ニシテ置クナレバト、假リ定ムレバ決シテ借家入ハ一人ノ貸主ヘ計リ償フニアラズシテ、江戶中燒ケバ類燒人ニ對シテ悉ク償フコトハ免ガレナイト思フ、單リ家主ヘ許リト云フコトハナイ
(南部委員)
愈々誰レガ火ヲ出シタト云フコトノ分タ上ニハ無論ダガ、分ラヌト云フ時分ハ借家計リノコトニナル
(栗塚報吿委員)
民法註釋ニモ「都府ノ一區全部カ其一人住民ノ明瞭ナル不注意ニ因り燒失スルトキハ、是レ日本ニ於テ屡々アル所ナリトス其不注意ナル住民ハ純然タル法理上ニテハ總テ家屋燒失ノ責ニ任スヘキモノナリト雖モ實際ニ於テハ左ノ二個ノ理由ニ依リ斯クノ如キ權利ハ毫モ主張スヘカラス第一ノ理由ハ最屡々不注意者ガ火災ニ因り己レ自カラ零落シタルニ在リ第二ハ其者ノ不注意ニ因ルノ犠牲トナリタル許多ノ人ニ其所有金ヲ分配スルモ各自ニ取リテハ少小ナルカ故ニ途ニハ訟求モ利益ヲ有セサルニ至ルニ在ルナリ」トアリマス
(鶴田委員)
先ヅ連帶ニスルカ否ヤヲ極メマセウ
(松岡委員)
連帶ヨリ借家人ハ責ニ任ズルモノダト云フノカ現行法ノ通リ賠償セヌモノカト云フノカ
(鶴田委員)
左樣
(松岡委員)
ソレハ是非極メナケレバナラヌ
(鶴田委員)
私ハ連帶デナイコトニ極メタイ
(南部委員)
先ヅ責ヲ負ハセルカ否ヤヲ先キニシタイ
(委員長)
借家人ハ責ヲ負フガ宜イカ、負ハヌガ宜イカヲ極メテ負ンシテハ分ラヌトキハ連帶シテ拂フカ否ヤトシ樣、又ハ過愆ノ著シク分クモノハ要償ノ責ニ任ズルヤ否ヤ、過愆ガアツタトキハ償フヤ否ヤヲ先キニ極メマセウ、過失ニ因タナレバ償フガ宜イカ惡イカ、ソレハ何方モ償フガ宜イト思フウカ何ウカ
(松岡委員)
理窟ハソレガ宜シイカ
(委員長)
左スレバソレハ宜イトシテ、今一ツ前ニ過愆ノアツタトキハ償フトシテモ、過愆ノアツタトキハ、連帶シテ償フカ又ハ分擔スルカデス
(栗塚報吿委員)
鳥渡註ヲ讀ミマスガ「然レトモ賃借人ニ對スル巌酷ナル例外ノ如ク看做シ得ル者ハ賃借人數名アル時ノ各自ノ連帶ナリトス是レ本條ノ主タル目的ナリトス義務者間ノ連帶ノ效力及ヒ性質ハ茲ニ之ヲ敷衍スヘキモノニアラス是レ義務事項ニ關スル條例及ヒ第四編ノ章ノ目的ナリトス本條ヲ解得スル爲メニハ連帶ノ主タル效力ハ各義務者ヲシテ只各其債務ノ分擔部分ヲ拂ハシムルニ非ラス其各義務者中ノ一人ヲシテ債務ノ全部ヲ拂ハシムルニ在ルコトニ注意スルヲ以テ充分ナリトス卽チ之ヲ再說スレハ各義務者ハ互ニ保證ヲ爲スモノト謂フヘシ本條ノ豫定スル如ク一個ノ建物又ハ一構内ニ數名ノ賃借人アル時ハ賃借物ノ何レノ部分ヨリ火災ノ始マリタルヤヲ知リ難キカ故ニ最モ屡々過愆ノ推測ハ總テノ賃借人ニ對シテ同一ナリトス故ニ所有者ノ總テノ賃借人及ヒ各賃借人ニ損害全部ノ賠償ヲ要求スルヲ得ヘシ但シ賃借人ノ一人若クハ數人ハ火災ノ原由自己ニ關係ナキ直接ノ證據又ハ顯然タル自己ノ習慣ヨリ來レル注意ノ推測ヲ以テ辨明ヲ爲ストキハ格別ナリ此嚴則ハ專横ナルモノニ非ラスシテ物ノ自然ニ基ク至當ノモノナルカ故ニ之ヲ以テ不正トナスヲ損ス然レトモ若シ一切ノ賃借人若クハ二三ノ賃借人カ過愆アラサリシコトヲ證明スル時ハ右ノ嚴則ノ止息セサルヘカラサルハ明カナリ而シテ法律ハ此コトヲ明言セリ若シ火災ノ天災ヨリ生スルカ又ハ近隣ノ家屋ヨリ延燒シ來リタルモノナル時ハ總テノ賃借人ハ同時ニ其賃借場所ニ關スル責ト連帶ノ責トヲ免ルヘシ火災ノ原由如何ヲ知ラサルモ其賃借人中一人ノ家ニ始マリタル證據アル時ハ其者獨リ過愆アリシノ推測ヲ受ケ他ノ賃借入ハ全ク過愆ノ責ヲ免ルヘシ、又火災カ始マリシバ何レノ處ナルヤ如何ナル原由ニ起リシヤヲ知ル能ハサルモ火勢ノ進路ニ依レハ某々ノ賃借人ノ家ヨリ火災ノ始マラサリシトノ證據アル時モ亦同シ若シ一構内ニ存スル數個ノ建物ニ開スルトキハ其建物同一ノ所有者ニ屬スルニ非ラサレハ總賃借人中ニ連帶ノ存セサルモノナルコトヲ本條ニ於テ注意スヘシ若シ總賃借人ハ同一ノ賃借人ヲ有セサル時ハ賃借人中ニハ毫モ相互ノ關係ナク各所有者ハ自己ノ賃借人ニ非ラサレハ連帶ニテ訴フルコトヲ得ス固ヨリ賃借人ニ連帶ノ責アルニハ種々ノ賃借人共ニ契約ヲ爲スヲ必要トセス又互ニ或ル利益ヲ共通スルコトヲモ必要トセス然レトモ其賃借總テ同一賃借人ノ建物ヲ貸借スルコトヲ要スルコトナリ蓋シ所有者カ自己ノ建物ニ就キ其賃借人ニモ非ラスシテ其所有者ニ向フテハ毫モ注意及ヒ配慮ノ義ヲ負ハサル人ニ對シテ過愆ノ推測ヲ主張スルハ許スヘカラサルコトナリ然レトモ總テ火災ニテ建物ヲ燒失シタル所有者ハ常ニ多少接近シタル所ニ住スル人ノ過愆ノ直接ナル證據ヲ爲スノ權利ヲ有スルモノトス都府ノ一區全部カ其一人住民ノ明瞭ナル不注意ニ因リ燒失スル時ハ其不注意ナル住民ハ純然タル法理上ニテハ總テ家屋燒失ノ責ニ任スヘキモノナリト雖モ實際ニ於テハ左ノ二箇ノ理由ニ依リ斯クノ如キ權利ハ毫モ主張スヘカラス第一ノ理由ハ最屡々不注意者カ火災ニ因リ己レ自カラ零落シタルニ在リ第二ハ其者ノ不注意ニ因ルノ犠性トナリタル許多ノ人ニ其所有金ヲ分配スルモ各自ニ取リテハ少小ナルカ故ニ途ニハ訟求モ利益ヲ有セサルニ至ルニ在リト「ボアソナード」モ連帶ハ滅多ニアリマセント云テ注意シテアリマス
(尾崎委員)
私ハ過愆ノアル者ハ仕方ガナイガ過愆ノナイ者ハ連帶ニハ及バヌト思フ
(村田委員)
私ハ過愆ガアレバ皆ナ過愆ト思フ
(鶴田委員)
私ハ連帶ハ廢ス積リデス
(淸岡委員)
借家人モ瓦ヲ燒クトカ何トカ然ウ云フモノヘハ貸セヌトハ不都合ト云フコトモアリマスガ、貸人ガ勝手デ我レノモノデナイカラ苦情ハ云ヘナイ、隣リニ麺包屋ガ或ハ鍛冶屋ガ來テモ火ヲ過ルハ借家人ダカラ危險ヂヤケレドモ貸人ノ權利デ貸スノダカラ燒ケテモ苦情ハ云ヘナイ
(栗塚報吿委員)
ソレハ六百三十三條ノ賠償ヲ辨濟シタ跡ノ論ニナリマス
(淸岡委員)
ソレハ辨償ヲ求ムル外ノコトデスカ
(栗塚報吿委員)
平生火ヲ扱フ、鍛冶屋ダカラト云フノデ
(淸岡委員)
其前ニ連帶義務ヲ負ハナケレバナラヌ覺悟ヲシナケレバナラヌガ其所ハ何ウカ
(栗塚報吿委員)
ソレハ御座イマセン
(村田委員)
火ヲ餘計ニ焚ク者ハ注意シナケレバナラヌ
(栗塚報吿委員)
行政法ノ中ニ湯屋ハ何ウ、鍛冶屋ハ何ウ、又衞生ヲ害スル危險ナルモノハ人口緻密ナル所デハ出來マセヌトカ云フコトハ、行政規則デ定メマスカラ、其規定ニ背カヌモノデス
(淸岡委員)
宿屋ハ人モ澤山居リ「ランプ」抔モ澤山使ウカラネソレ故連帶サセルコトニシテ置クト、幾分カ苦情ヲ云ハセル權ヲ與ヘナケレバナラヌガ、勝手ニ家ヲ貸シテ、勝手ナ商賣ヲシテ居テ、湯屋トカ、鍛冶屋トカ云フモノハ幾分カ制限モアリマセウカ隨分火ヲ過ツ商賣ハ澤山アリマスカラネ
(栗塚報吿委員)
ソレハ苦情ヲ云ハヌ權ヲ與ヘテハアリマセン、ソレハ連帶ト云フカ、云ウニモセヨ、此レ丈ケノ人ガ此處ノ家ヲ燒ケバ家主ニ對シテ責ヲ負ハナケレバナラヌトコトハ極ツテ居ル
(南部委員)
ソレハ極ツテ居ル
(村田委員)
唯ダ借主ハ大變ナ違イガ出來ル
(栗塚報吿委員)
併シ分擔ニスルト家主ガ損ヲシナケレバナランソレ丈ケガ違フ
(南部委員)
日本ノ家ノ構造ハ麁末ダカラ、只今ノ所デハ先ヅ分擔トシテ宜シイ
(松岡委員)
分ラヌ說ト思フ、今日本ノ構造ハ有樣ガ違フカラ、借家人ニ責ヲ任ゼヌト云フナレバ宜イガ、過失ガアル者ト、ナイ者ト知レテ居ルニ連帶ハ惡ルイ、誰レモ明瞭ニ出來マセヌ場合ダカラ、御前ガ過失ダト云フ我デモナイト皆云ヘバ五人ナレバ五人ノ上ニ出タニハ相違ナイト云フノデ、一人ノ負フベキト定マラヌ内ハ連帶サセルヨリ仕方ガナイ
(南部委員)
然ウハ行カヌ、ソレハソレハ推測デ極メタ話デ推測デナイ、法律上カラ無理ニ定メタハ危險ナ話デ、つい脇カラ出タカ分ラヌ懸念ノアル以上ハ總テノ人ニ連帶ノ責ヲ負ハセズトモ自分ノ借リ受ケタ實ノ價額ニ應ジテ負擔セシムルコトハ恰度適當ナ話シデ、其論デ行クト借家人ト貸人トノ間ハ責ニ任ゼスシテモ總テ一人ガ賠償シナケレバナラヌカ否ヤ、ソレハ責ニ任ゼンデモ宜シイ、何ゼナレバ連帶トナルト自分ガ借リナイモノデモ、責ヲ負ハナケレバナラヌコトニナルト、餘り酷ニ過グルト思フ
(栗塚報吿委員)
過愆ノ推測ハ連帶デアルカラ、ソレヲ償フノモ連帶デ宜イト云フ、起案者ノ旨意デ御座イマス
(村田委員)
共同シテ借リテ居ル樣ナモノダカラ連帶ガ宜イ
(松岡委員)
私ハ土臺皆ナ嫌忌ナノデアリマスガ責ヲ負ハセルトシタ以上ハ連帶ニシナケレバナラヌ
(工藤報吿委員)
私モ連帶ノ理由ハナイト思ヒマス
(淸岡委員)
自分ノ負擔丈ケ、擔當スルハ仕方ガナイ
(鶴田委員)
分擔トシテ置テ宜シイ
(淸岡委員)
連帶ハ宜クナイト思フ、之デハ貸ス奴モ困ロウガ、借人ハ殆ンドナクナルダロウ
(西委員)
私モ連帶ハ宜クナカロウト思ヒマス
(委員長)
家主ノ爲メニハ宜イガ、五人ノ内四人貧乏ダト一人デ皆ナ出サナケレバナラヌモ困ルネ
(淸岡委員)
貸長屋ヲ建テモ借人ハナイ
(委員長)
連帶ハ削除シテ是レデ食事ニ致シマセウ
于時午後零時十五分休息
午後第一時二十分開會
(委員長)
ヤリマセウ
(鶴田委員)
元ト連帶デ建物ハ一個デアツテ連帶スルカラ宜カツタガ、之ヲ削テ仕舞ヘバ一人々々デ責任ヲ負フカラ、同一ノ建物ニ數人居ルト云フコトハ必要デナイ、畢竟是迄ノ所ハ刑法ノ附則ニアル通リ、賠償ノ責ニ任ズルニ及バズトアルカラ、借家人ガ賃貸人ニ對スルコトガカラノコトデアルカラ、第二項ニ一個ノ建物ニ數人居タトキハ、相應ニ分擔スルト云フコトニシテハ宜クハアルマイカト思フデス
(栗塚報吿委員)
無論賃借人ハ責ニ任ズルヲ、起案者ガ書カナイノハ云フ迄ハナイト云フノダガ、今日日本ノ恣デ御座イマスレバ申ス方ガ宜イカモ知レマセン
(村田委員)
其コトハ段々先キニ見ヘテ居ル
(栗塚報吿委員)
「但失火ハ此限ニアラス」ト云フコトハ附則デ御座イマスカラ、之ヲ消ス爲メニハアル方ガ宜イト云フ議論ナレバ宜シイ
(委員長)
連帶ト云フ字ヲ削ツタ以上ハ文章ヲ補ウハ、何ウデモナリマセウ
(松岡委員)
分擔ト極メテ、一ツ長家ニ大勢居レバ各部分ニ應ジテ責ニ任ズトシテハ如何デス
(栗塚報吿委員)
日本刑法ガナケレバ申サズデモ宜イカ
(鶴田委員)
刑法附則ガナクツテ無論一人々々デ賠償スルト云フコトガ見ヘテ居レバ宜イガ、ソレガナイカラ
(委員長)
之ハ報吿委員デヤツテ見テハ何ウカ
(栗塚報吿委員)
連帶ヲ御削リニナツタ以上ハ然ウ致シマセウ
(委員長)
ソレヂヤ然ウシテ先キヘヤリマセウ
第六百五十三條朗讀ス
第六百五十三條 賠償ヲ辨濟セシ者ノ求償ハ裁判所ニ於テ各借用場所ノ廣狹ト賃借人ノ營業及ヒ常習ヨリ生スヘキ危害ノ輕重トヲ斟酌シテ總テノ賃借人ノ間ニ之ヲ分ツヘシ〔伊民第千五百九十條〕
(松岡委員)
之ハ自然消ヘルノデスネ
(村田委員)
然ウデナイ
(鶴田委員)
負擔ノ仕樣ハ斯ウ云フ風ニトシナケレバナラヌ
(栗塚報吿委員)
賠償ヲ辨濟セシムルノ求償ト云フコトハ出ナクナリマス
(委員長)
賠償ノ求償トハ六ケ敷イコトダネ
(松岡委員)
裁判官ノ泣キモノダ
(尾崎委員)
困リモノダネ
(委員長)
借家賃ノ割カラシナケレバナラヌデセウ
(淸岡委員)
連帶ガアルカラ六十三條ノ講釋モ出ルガ、連帶ヲナクシテ仕舞フト此條ハ修正スレバ何ウナルカ知レヌ、除程修正ガ變タモノニナラヌデハ之ヲ以テ上ノ賠償トカ、辨濟トカヲ削ル位デハ困難デス
(工藤報吿委員)
併シ自カラ價額ノ比例ト同樣ノ意味ニ嵌メテ來ルト思ヒマス
(淸岡委員)
伊太利ノ樣ナル格デヤルトスレバ宜イケレドモ、此樣ニ仕樣ハアリマスマイ
(栗塚報吿委員)
連帶ガ御決議ニナリマシタ以上ハ五十二條、五十三條ハ報吿委員デ修正シテ文ヲ付ケテ明日出シテハ如何デスカ
(松岡委員)
上ノ五十二條ハ連帶シテ責ヲ任ズトアル、其連帶ヲ除イタ丈ケデ精神ハ各自借家シテ居ル本人ニ對シテ責メニ任ズル意味ヲ極メナケレバナラヌ
(工藤報吿委員)
分任ト云フコトハ何ウ云フコトカナレバ賃借人ノ營業云々、之ヨリ定ムルノデアリマス
(松岡委員)
分擔シテ居ル以上ハ占有シテ居ル價額ノ比例デ宜イガ連帶ト云フカラ斟酌シテ負擔スルガ、已ニ資擔シナイ以上ハ斟酌ハ要ヌコトニナル
(栗塚報吿委員)
六百五十二條ガ明カニナレバ五十三條ハ分ラヌノデアリマスカラ、一ツ案ヲ作ツテ提出致シマセウ
(委員長)
其方ガ宜シイ先ヘヤリマセウ
第六百五十四條朗讀ス
第六百五十四條 若シ所有者ガ同一ノ構内ニ在ル燒失セシ建物ノ一分ニ住居セシトキハ火災己レノ方ヨリ起ラサリシコトヲ證スルニアラサレハ賃借人ニ對シ償金ヲ求ムルコトヲ得ス又此場合ニ於テモ賃借人ノ連帶責任ハ其借用セル場所ノ價格ヲ以テ限トス〔伊民同上〕
(工藤報吿委員)
之モ御預ケヲ願ヒマス
(委員長)
之モ又カラ下ヲ除レバ宜イノダ
(栗塚報吿委員)
御預ケヲ願ヒマス
(委員長)
ソンナラ預ケテ、先ヘヤリマセウ
第六百五十五條朗讀ス
第六百五十五條 若シ賃借ノ終ニ賃借人賃借物ヲ返還セサルトキハ賃借人ハ之カ爲メ賃貸人ノ擇ニ隨ヒ對人訴權又ハ物上訴權ニテ訴追セラルヽコトアルヘシ
(鶴田委員)
之ハ分テ居ル
(西委員)
宜イ樣デス
(松岡委員)
物上訴權ト云フ如キカ
(栗塚報吿委員)
品物デ呉レト云フノデス
(村田委員)
物上訴權ト云フト、先取特權ガアルノデ
(淸岡委員)
此書方デハ何方ニモ撰ビヲシテ行ケルネ
(栗塚報吿委員)
何方ヘデモ行キマセウ
(淸岡委員)
出來ヌコトハアリハシマイガ
(栗塚報吿委員)
物ガアレバ何方ヘデモ行ケル、物ガ無クナツテ居レバ、物上權ニハ行キマセン
(村田委員)
物ガ損ジテ、價値ガナクナツタラ、金デ取ルガ宜イ
(委員長)
宜ケレバ先ヘヤリマセウ
第六百五十六條朗讀ス
第六百五十六條 賃貸人ハ賃借ノ終ニ第六百四十一條ニ因リ賃借人ノ收去スルコトヲ得ヘキ建築物及ヒ植物ヲ鑑定人ノ評價ニ從ヒ現價ヲ以テ己レニ讓渡スコトヲ要求スルコトヲ得
第五百七十三條ハ右ノ先買權ニ適用ス
(栗塚報吿委員)
修正ガ御座イマス
(村田委員)
修正ノ方ガ宜シイ
(栗塚報吿委員)
五百七十條ノ用收權ノ所ヲ御覽下サイ、一項ヲ除キ跡ヲ入レマシタ
(鶴田委員)
修正ヲ容レテ宜イ
(西委員)
修正ガ宜イ
(栗塚報吿委員)
修正ヲ容レタ所デ一項ヨリ御議論ヲ願ヒマス
(工藤報吿委員)
此處ハ反對說モアリ、報吿委員デ一致シナイカラ、反對說ノアル儘ニ提出シタノデ、讓リ渡ヲ要求スルコトヲ得トアリマスカラシテ、一旦私ガ之ヲ買マセウト云タラ、縱令賃貸人ガ持去ロウト思テモ、持去ルコトガ出來ナイ結果ニナルカラ法律上出來ナイ、建築植付ノアル以上ハ取去ルコトヲ得ル、賃借人ハ得ザルガ當然デアリマス、此處ニ例ヲ擧ゲタ如キ、又樹木ニモ多少アリマセウ、之ハ自由ニ與ヘタ方ガ宜カロウト云フ反對說モアリマシタ、其意味ニ修正スレバ「植物ヲ他ニ讓リ渡サントスルトキハ鑑定人ノ評價ニ從ヒ云々要求シ得ル」ト云タラ宜イト云フ說モアリマシタ
(淸岡委員)
共說ニシテモ、六百四十一條ノ但書ハオカシクナツテ仕舞フ
(工藤報吿委員)
讓渡サントスルトキハ、權能ガアルト云フ丈ケデアリマス
(尾崎委員)
自分ガ持テ行ク丈ケハ許スノカ
(工藤報吿委員)
左樣デス
(淸岡委員)
權能ハナシ、持テ行クト云フトキニナルト
(工藤報吿委員)
持テ行クコトハ行カヌノデス
(淸岡委員)
先買スル權ガナイカラ、持テ行クトシテ置テ、ソレカラ他人ヘ賣ルト、仕樣ガアリマスマイ
(工藤報吿委員)
然ウ云ウ詐言ヲ以テシテハ、法律上仕方ガナイ
(淸岡委員)
詐欺デハナイ、此ノ植木ハ今度轉宅先ヘ植ヘルト云ヘバ家主ニ先買サルルカ知レヌ、實ル體ニシテ持テ行ク
(工藤報吿委員)
然ウ云詐術ガアレバ押ヘラルル
(淸岡委員)
詐欺デハナイ
(工藤報吿委員)
ソレハ詐欺ト云テ宜シイ
(栗塚報吿委員)
私ハ何方ニナツテモ構ハヌ、若シ之ガ賃借人ノ了簡デ價ヲ極メテ、我ハ地主デアルカラ、買ウ權ガアルカラト云フト、大變デ御座イマスシ、鑑定人ガ價ヲ極メルノダカラ
(淸岡委員)
ソレハ論ジマセンガ、修正スレバ六百四十一條ノ但書ハ削ラナケレバナラヌ
(栗塚報吿委員)
私ハ原案ノ儘ニシテト思テ居ルガ、併シ反對モアルカラ一應御目ニ入レテ置クモ宜カロウト思フ
(村田委員)
私ハ入レル方ガ宜イガ、自分デ骨ヲ折テ賣リタクハナイ
(淸岡委員)
餘計ナ話ヂヤナイカ
(村田委員)
此處ハ貴君ガ他人ニ貰ツテ代々持テ居ル茶屋ガアル親カラ貰ツタモノダカラ、決シテ賣リ度クナイト思フ、併シソレガ此場合デハ、取ラレテ仕舞フノダカラ貴君ガ退クトキハ、植ヘ付ケタモノダカラ、私ガ買フ持テ行クコトハナラヌト云フノダカラ酷イ話デ
(南部委員)
然ウ云フ場合ハ尠ナカロウ
(村田委員)
隨分アリマセウ
(南部委員)
茶屋トカ、愛玩ノ樹木ト云フモノデナケレバ、此處ハ出テ來マセン
(栗塚報吿委員)
一體他人ノ地面ヲ借リテ、何時立退ケト云バレルカ知レヌニ依テソレヘ以テ茶屋ヲ設ケル筈ハナイ
(村田委員)
大閣樣カラ貰タ乎火鉢ヲ据ヘ付ケタ、ソレブ置テ行ケト云フハ酷イ話ダ
(南部委員)
此處許リニ着眼セズ、全體賃借人ハ自由ニ建築シテ宜イガ、今カラ見ルト餘程變ツタ話デ、今ノ通常借地借家人カラ見レバ、賃借人ニ權ヲ與ヘタノデアリマス、其代ハリ一方ノ賃貸人ニモ、權ヲ與ヘナケレバ權衡ヲ得ナイ
(村田委員)
植木抔ヲ銘々植ヘテ行クトキハ、銘々持テ行ツテ仕舞フ
(南部委員)
ソレハ次ノ樹木デ買タイト云タラ賣ルガ宜シイ
(村田委員)
賣タクナイモノガアリマス乎水鉢、石燈籠抔ト云フ物ガアリマス
(南部委員)
然ウ云フ物ナレバ契約スレバ差支ナイ
(栗塚報吿委員)
契約スレバ宜シイ
(村田委員)
契約スレバ宜イノハ無論デ
(栗塚報吿委員)
小サイトキカラ手入レヲシタ、松ノ樹デ、大事ニ培養シタガ、賃借期限ガ來テ立退クトキハ持テ行キタイナレバ豫メ書イテ置ケバ宜イ
(村田委員)
初メ契約ノナキトキノ話デ
(栗塚報吿委員)
「ボアソナード」ガ云テ居ル通リ經濟主義カラ出テ居ルモノデアルカラ、物ヲ壞ハシテ持テ行ケト云フコトハナイ、元來家ヲ建テそつくり其儘植ヘ付ケタ樹ヲ持テ行クハ二重ニナルカラ、ソレヨリモ持テ行カセヌ方ガ國家ノ經濟上デ宜イト云フテ居リマス
(村田委員)
然ウスルト、六百四十一條ニ云タノハ虛言ヲ云タ樣ナモノデ
(栗塚報吿委員)
ケレドモ後來經濟上デ、二重ノ手間デ、一旦建タモノヲ壞ハスヨリハ、其儘使フガ宜イ、併シ持テ行ケト云ハレタラ、隨分苦シイダロウ
(村田委員)
賣ル位ナラ賃貸人ガ買フカラ傷マナイガ、賣リ度クナイソレヲ賣ラナケレバナラヌト云フハ困ル
(松岡委員)
家主カラ持テ行ケト云フト壞ハサナケレバナラヌ
(栗塚報吿委員)
ダカラ、ソレヲ云ハセナイト云フノダ
(村田委員)
賃貸人ガ金ガ無ケレバ否ヤ應ナシニ持テ行カナケレバナラン
(淸岡委員)
契約シテ居レバ此限ニ在ラズト云フ明文ガナケレバ違約サレル
(南部委員)
契約ガアレバ宜イノデス
(栗塚報吿委員)
賃借ハ總テ契約デ出來ルトアルノデ
(村田委員)
讓リ渡サントスル場合計リスルガ宜シイ
(栗塚報吿委員)
讓り渡サントスルトキハ始終當リ前ニスルハ原則ガアル、萬一行ク樣ナコトノ場合デス
(村田委員)
餘リ賃貸人ニ權力ヲ與ヘ過ギル
(南部委員)
原案デ宜シイ
(村田委員)
併シ持テ行クノガ本當ダロウ、四十一條ヲ見ルト、併シナガラ賃貸人取ルトキハ格別不都合ガ無ケレバ持テ行クノガ當リ前デ
(栗塚報吿委員)
賣ルニハ相違ナイ、樹ヲ引扱クハ惡イゾヨト云フノデ
(村田委員)
詰リ移付シテ宜イト云フ意思ノ顯ハレタトキハ、ソレハ賃貸人ガ押ヘルガ宜イ、代々持テ居ルモノヲ何ウシテモ賣ラセルハ無理ト思フ
(南部委員)
本人ハ家ヲ借リテ、期限ガ來テ賃借ハ終了シテ見レバ退クノダカラ是非移スト法律上看做サルル
(村田委員)
四十一條ノ如キハ作ツタ物ハ元トノ通リニシテ行ケト云フガ旨意デアロウ、左スレバ詰リ持テ行クノガ旨意ダ
(南部委員)
持テ行クノガ旨意デモ、一方ニ賃貸人ガ買フ權利ガアルノデス
(村田委員)
買フノデ、押ヘ付ケルハ酷イト云フノデ
(栗塚報吿委員)
鑑定人ガ評價シテヤルノデ、何フシテモ賣ルノガ否ヤナレバ土臺借リタ所ヘ建テナイト宜イ、手洗鉢ハ當リ前ノ人ガ買ヘバ十圓ダガ、先祖カラ傳ハツタ物ダカラ五十圓デモ賣リ度クナイト云フモノヲ鑑定人ガ評價シテ、十五圓ト評價スルガ、又ハ三十圓モ致ス松一本ヲ今縁日デ買ヘバ、二圓カ三圓グロウト評價スレバ、之ハ父ノ代カラ植ヘタノデ、大變價値ガアルト云ヘバ、評價人ハ幾ラカ斟酌シナケレバナラヌ、斟酌シタトキハ地主ハ何ク思フカ、馬鹿ラシイ、當リ前ノ松ノ樹ナラバ買ハヌニ相違ナイ
(村田委員)
ソレハ云ハヌノデ、天子樣カラ拜領シタ石燈籠ヲ賃借人ガ建ルヲ許シテ居ル、貴君ノ云フ樣デハ石燈籠ハ建ラレナイ
(南部委員)
天子樣カラ頂戴シテ持テ居ルハ他ノ者ガ持テ居テモ效能ハナイデセウ
(松岡委員)
是非押ヘテ買ハセル丈ケノ權能ヲ與ヘナケレバ何ウ云フ所ニ害ガアリマスカ
(栗塚報吿委員)
賃借人ノ云ヘル場合ハ當リ前デ、植物及ビ建物ヲ造ツタ代價ニ依ラズ承諾スルトキハデ否ヤト云フコトハ云ヘル筈デナイ、桃山御殿ノ石燈籠ナレバ餘計尊イカラ宜カロウ
(松岡委員)
物ヲ持テ居ル人ハ自ラ處分スル權利ガアルハ原則デ然シテ見レバ壞ハシテ賣テモ宜シイデセウ、經濟々々ト云テ、人ノ處分權ヲ制スルコトハ出來マセン、幾ラ經濟デモ、所有者ガ處分スルヲ押ヘルハ無理ト思フ
(栗塚報吿委員)
然ウデナイ、何ゼナレバ鑑定人ガ價ヲ極メテモ否ダ、賣度クナケレバ持テ行ケト云フノデハ、論ハ立タヌ
(松岡委員)
ソレハ持テヤラセテ、宜イヂヤナイカ
(栗塚報吿委員)
元々他人ノ地所ヘ物ヲ建タ以上ニハ、ソレヲ壞ハシテ行クニモ及バヌ、地主ガ買度イト云ヘバヤル方ガ宜シイ
(松岡委員)
經濟ノ點ナレバ否應ナシニ評價ヲ以テ買ハセナケレバナラヌト云フハ聞ヘルガ、地主ガ否ヤト云フトキハ持テ行カナケレバナラヌ然ウスレバ經濟ノ上ニ反對スルガ、地主許リ旨イコトヲスル話ニナルカラ時ノ評價デ地主ヘ買ハシテ仕舞ヘバ宜イカ知レヌガ、經濟ノ上カラ云フト無理ナ話デ依テ此處ハ持テ行クト云フ時分ニハ持テ行カセヌト云フ權ハ無理デ、行カセヌナレバ是非買ハソウト云フコトモ、置カナケレバ偏頗ニナル、矢張リ修正說ガ宜イト思フ
(委員長)
「植物ヲ以テ他ニ讓リ渡サントスルトキハ」トスル修正ガ宜イカ、何方ガ宜イカ
(鶴田委員)
修正ガ宜イ
(委員長)
修正ガ宜イダロウ、是非評價デ賣ナケレバナラヌト云フハ無理ダ、讓リ度クナケレバ價ヲ高ク云ヘバ買ハシナイ
(松岡委員)
ソレデモ評價デ御座イマスカラ
(栗塚報吿委員)
賣ル人ト、買フ人トデ、評價人ヲ出スカラ
(淸岡委員)
讓渡ヲ入レルト、一寸考ヘルト都合ガ好イガ、實際考ヘルト讓リ渡サント云ヘバソレ切ナ話デ否ヤト思ヘバ持テ居ルト云ヘバ宜イノデ
(村田委員)
持テ行クト行フコトハ出來マセン、押ヘラルル
(南部委員)
否ト云ヘバ宜イ
(淸岡委員)
私モ修正ガ宜イト思フガ、退イテ再考スレバ讓渡サヌト云フト仕方ガナイ
(委員長)
讓渡サヌト云ヘバ持テ行カナケレバナラヌサニ、持テ行クト賣ルトノ比較ヲシテ賣タ方ガ宜イト思ヘバ賣ルダロウシ是非此品物ハ幾ラニモ換ヘラレナイト思ヘバ、何レ丈ケ運賃ガ掛テモ、持テ行クダロウ
(松岡委員)
一旦地面ヘ据ヘ付ケタラ、是非買ハセルト云フナレバ、地主ハ否ヤデモ評價シテ買ハセルト云フナレバ宜イガ、然ウハイカヌノデ、買度クナイ時分ニハ、持テ行カナケレバナラヌ、ソレハ無理ナ話デ、地所ヲ借リテ、家ヲ建ルノハ幾ラモアリマス
(栗塚報吿委員)
ソレハ地上權デ、賃借トハ違フ
(委員長)
現行ハ是非持テ行クト云フニ、評價人ヲ出シテ是非賣レト云フコトハナイデセウ
(松岡委員)
現行ハ持テ行クデス
(委員長)
持テ行クガ、相談ヅクデ買テ呉レタ方ガ悦ブノデセウ
(栗塚報吿委員)
起案者ハ然ウデ建物植物ノ破壞ヲ避クベキ經濟上ノ原則デ然レハ一ツ壞ハシテ又建テルト云フコトモアリ、啻ニ價値ヲ失フノミナラズ代價ヲ失フ、ソレヨリハ相當ノ代價デ賣タ方ガ宜イトアリマス
(松岡委員)
ソレハ理由ト反對スル、壞ハシテ損ガ行クナレバ是非買ハセナケレバナラヌ
(栗塚報吿委員)
ソレハ地主ガ否ヤナレバ相談モナシ、建タ物ヲ是非買ヘト云フハ無理ナ話デ
(松岡委員)
ソレナラバ又持テ行ケト云フハ無理ナ話デス
(栗塚報吿委員)
私ハ原案デ置テモ宜イト思ヒマスガ
(松岡委員)
理由ニ反シテ居ル
(淸岡委員)
伊太利民法ハ何ウナツテ居ルカ
(栗塚報吿委員)
伊太利ニモ佛蘭西法文ニモナイ、之ハ「ボアソナード」ノ頭カラ出マシタノデス
(松岡委員)
惜シイコトニハ跛ダネ
(栗塚報吿委員)
跛デハアルガ、賃借人ガ是非持テ行カナケレバナラヌ例ガアリマセウカ
(西委員)
實際ハ契約ニテ行クニ違ヒナイカラ、同ジ結果ニナルデセウ
(尾崎委員)
私ハ慣習ニハ違フガ、原案ニ同意致シマセウ
(松岡委員)
私ハ佛蘭西ニモ無ケレバ削テ仕舞ヒタイ
(栗塚報吿委員)
併シ私ガ代言人ナレバ立派ニ地主ヘ買ハセルコトニシテ御覽ニ入レル積リデ御座イマス
(委員長)
取テ除ケル程ノコトモナイネ
(南部委員)
讓渡サントスルトキハト、賣ル人ヲ法律デ極メタ樣デオカシイ
(松岡委員)
全體先買ト云フガ、賣ルマイト云フヲ、是非買フト云フノダカラ、強買デアリマス
(南部委員)
此レハ先買ダ
(工藤報吿委員)
先刻大略演ベタガ、斯ウ云フ權衡カラ取タノデ四十一條デハ「免許ナクシテ賃借地ヘ適宜ニ建築植付ヲ爲スコトヲ得」ト自由ニ爲スコトヲ法律ガ許シタモノデアリマス然シテ見レバ建ルコトヲ自由ニシテ居ルガ、取リ去ルコトモ自由ニシナケレバト云フガ、大體賃借人ハ制限シテアルカラ、偏頗ナ議論モアルガ、最初契約シテ、退イテ行ク場合ハ論ハナイ、專ラ契約ノナイ場合ヲ慮ツテ法律ヲ立ルノダカラ建ルコトモ出來ルナレバ、取去ルコトモ亦豫定シテ當然ナリ又六百五十六條原案ノ通リニスルト、縱令取去ロウト思フモノデアツテモ賃貸人ガ私ガ買ヒマセウト云タトキハ、祖父以來ノ物デアツテモ、持テ行クコトハ出來マセン、然ウ云フモノハ借地ヘ建ルコトハナイト云フガ、ケレドモ二十年賃貸スルコトモ出來ルカラ、是レマデノ樣ニ一年、一年デ賃借スル場合トハ違フカラ地所ヲ借リテ家ヲ建テバ、五年ナリ十年ナリ長ク居ル考ヘデヤル者モアリマセウカラ、一個ノ樹木デモ隨分惜ムノ情ハアリマセウ、元ト契約カラ成立デハ構ハヌ差支モアリマスマイガ、法律上極メル以上ハ彼レニ許セバ此レニモ許スガ、平等デアリマス、又此方ヲ制限スルハ自由ノ束縛ダロウ、他ニ賣拂フナレバ先買ノ權ヲ與ヘナクモ宜イガ、然ラザレバ先買ノ權ヲ與ヘナイデ勝手ニシテ宜カロウト云フノデ、報吿委員デハ餘リ外ニ說ハナカツタノデス
(栗塚報吿委員)
總テ大切ナモノハ、初メ建ルトキ契約スルガ當然ト云フノデ
(淸岡委員)
讓リ渡サントスルトキハト云フハ、何フカ
(南部委員)
品物ヲ他ヘ贈與スルト云フコトガアルガ、私ガ贈與シヨウト思テモどつこい我ガ買フト云フト、是非置カナケレバナラヌ、阿フモ讓渡サントスルトキハト云フト、贈與ト云フ場合ニハ變ナモノガ出來ル
(淸岡委員)
之ハ削除デ宜イト思フ、之ハ餘計ナ心配デアリマス
(村田委員)
割ルコトハ出來マセン
(工藤報吿委員)
削ルナレバ修正說ヲ退キマス
(委員長)
讓論ハ盡タデセウ、畢竟修正說ニ依ルカ、原案ヲ取ルカト云フノデス
(栗塚報吿委員)
修正ト申シテモ、報吿委員中デハ二人丈ケデス
(委員長)
原案通リト云フ御方ハ諸君デスカ起立者二名
(委員長)
多數デスカラ、修正ニ決シマス
(南部委員)
原案ノ通リトスルニ起チマシタガ總テ削ルト云フハ何トモアリマセンカ
(委員長)
ソレハ淸岡サンノ說デ
(村田委員)
松岡サンモ削ル論デス
(委員長)
松岡サンハ削ルノカ、原案カ
(松岡委員)
削ルカ、修正デ御座イマス
(委員長)
末項ハ何ウカ、削除スルカ
(栗塚報吿委員)
御置キヲ願ヒマス
(南部委員)
「以テ」ヲ廢メテ「他ニ讓リ渡サントスルトキハ」トシテ宜イ
(委員長)
末項ニ三項ヲ入レルコトハ何ウカ
(鶴田委員)
宜シイ
(栗塚報吿委員)
「植物」トアリマスガ「植付物」デアリマス、何卒此レハ「付」ト云フ字ヲ御入レヲ願ヒマス
(委員長)
宜ケレバ先ヘヤリマセウ
第六百五十七條朗讀ス
第四節 賃借權ノ絕止
第六百五十七條 賃借權ハ左ノ諸件ニ因テ當然終ハル
第一 賃借物ノ全部ノ喪失但自己ノ過愆ニ因リ其喪失ヲ來セン者ハ其償ヲ爲スヘシ〔第千七百二十二條及ヒ第千七百四十一條〕
第二 公用ノ爲メ物ノ全部ノ所有權徵收
第三 賃貸人ノ追奪又ハ賃貸物ニ對スル賃貸人ノ權利ノ取消但右ノ追奪及ヒ取消ハ賃貸契約前ノ原由ニ因リ裁判所ニ於テ其追奪及ヒ取消ヲ宣吿セシトキニ限ル
第四 明示若クハ默示ニテ定メタル期限ノ滿了終又ハ要約セラレタル解除ノ未必條件ノ成就〔第千七百三十七條第千七百七十四條及ヒ第千七百七十五條〕
第五 最初ヨリ期限ヲ定メサルトキハ賃借了終申入書送達ノ後法律上ノ期間ノ經過〔第千七百三十九條〕
尙ホ賃借ハ條件ノ不履行ノ爲メ又ハ法律ニ定メタル其他ノ原由ノ爲メニ當事者中一方ノ請求ニ因リ裁判所ニテ宣吿シタル解除又ハ銷除ニ因テ終ル〔第千七百二十九條第千七百四十一條第千七百六十條第千七百六十四條及ヒ第千七百六十六條〕
(栗塚報吿委員)
翻譯局ノ方デ「賃貸ニ對スル」ト御加ヘヲ願ヒマスソレカラ第四ノ「滿了ノ終又ハ」トアル「終」ノ字ハ愆字デ御座イマス
(松岡委員)
權利取消ハ銷除トハ違フカ
(栗塚報吿委員)
違ヒマス
(村田委員)
第三項ハ賃貸人ニ對スル追奪ト云フハ賃貸物ノ追奪ト云フ、賃貸物許リノデハアリマセンカ
(栗塚報吿委員)
然ウデハ御座イマセン
(委員長)
賃貸借物ヂヤネ
(栗塚報吿委員)
賃借物デ宜イノデス
(委員長)
物ノ半分ノトキハ何ウカ
(南部委員)
半分ノトキハ、六百五十八條ノ二項ニ御座イマス
(鶴田委員)
「絕止」ト云フハ前ニモアツタ樣デスネ
(栗塚報吿委員)
アリマシタ
(委員長)
「了終」ト「滿了」トハ違フカ
(栗塚報吿委員)
違イマス
(淸岡委員)
第五ノ法律上云々ト云フ場合ハ何レデスカ
(南部委員)
六百十一條、六十二條、六十三條迄ヲ云フノデス
(松岡委員)
賃貸物ニ對スル賃貸人ノ權利ニ追奪又ハ取消シト云フコトヂヤナイカ
(栗塚報吿委員)
賃貸人ノ追奪ト、註ニモアリマス
(松岡委員)
註ニ依ルト、人ト物ノ關係ノ權利ト追奪ト取消ノ二ツアル、ソレヲ他人ニ對スル追奪ト云フ詰リ物ニ對スル權利ヲ追奪サルルト取消サルルトアル
(栗塚報吿委員)
直譯スルト、矢張リ斯ウ書イタモ同ジデス
(松岡委員)
賃貸人權利ノ取消ノトシテ上ノ又ハ迄削タラ宜カロウト思フ
(栗塚報吿委員)
追奪ダノ、所有權抔ト入レタハ深イ意味ハ御座リマセン
(松岡委員)
文ガ如何ニモ變ダカラ
(委員長)
宜ケレバ先ヘ行キマセウ
第六百五十八條朗讀ス
第六百五十八條 抗拒スルコトヲ得サル原由又ハ意外ノ原由ニ因リ賃借物一分ノ喪失ノ場合ニ於テハ賃借人ハ第六百三十八條ニ記載シタル條件ニ從ヒ賃借ノ解除ヲ請求シ又ハ借賃ヲ減シテ其賃借ノ存續ヲ請求スルコトヲ得〔第千七百二十二條〕
公用ノ爲メ其一分ノ所有權徵收ノ場合ニ於テハ賃借人ハ常ニ借賃ノ減少ヲ請求スルコトヲ得
(西委員)
何方モ賃貸借デセウ
(栗塚報吿委員)
左樣デス
(松岡委員)
公用ノ爲メト云フト、解除ヲ請求スルコトガ出來ルノデスカ
(栗塚報吿委員)
出來マスマイ
(松岡委員)
困ル話ダネ
(村田委員)
一部分タモノヲ
(松岡委員)
一部分トハ何レ程カ、大事ナ所ヲ一分デモ買上ゲラルルハ困ルナ
(尾崎委員)
困ルネ
(鶴田委員)
一分ハ前ノ抗拒スベカラザル方ハ解除モ出來レバ、存續モ出來ル公用ノ方デハ減少丈ケデ、詰リ存續シテ居ル人ト看做シタノデ
(村田委員)
スルト六百三十八條ト同ジニナル
(南部委員)
重クシテ物權ニナツテ居ル
(松岡委員)
彼所デ云フト、利徳ノ上ダ
(栗塚報吿委員)
註ハ一方ノ所有權徵收ノ場合ニ、何ウ云フコトガ出來ルカ二ツノ特別ニ出來ル第一賃借ノ減少ヲ請求スルコトガ出來ル、又第二ニ賃借人ガ借テ居ル物ハ、所有權徵收ノ爲メ害ヲ被ツテ償ヲ取ルコトガ出來ル、前項ノ場合ニハ條件ハ得ルコトハ出來マセン、併シナガラ解除スルコトハ三分一以上ナレバ解除ガ出來ル勿論公用ノ爲メ出來ル、六百三十八條ノ原則ト同ジデアリマス
(松岡委員)
オカシイナ、小作抔ハ鐵道ノ爲メ地面ガ何ウカト云フナレバ、六百三十八條デ宜イカ知レヌガ、此處ハ違フ樣ダ
(村田委員)
其代ハリ家ヲ半分取ラレレバ、良クシテ貰テ、家賃ヲ減ジテ貰ヒ、償ヒガ取レル
(委員長)
一分ヂヤ行ケナイノデセウ
(松岡委員)
一分ト云フハ十分ノ一分デナイデセウ
(栗塚報吿委員)
一分デス
(委員長)
若シ一分ガ三分ノ一分デアツタラ、三十八條デナケレバ行カヌノダロウ
(鶴田委員)
其理由ガ分ラヌト云フノデ、何ゼナレバ六百三十八條ハ卽チ妨害ガ、戰爭、洪水、暴風、火災デモ官廳ノ處分ハ土地買上ゲ規則ト同ジニ看做シテ居ル、三分ノ一分ヲ見テ居ル、此處ニ至テ同ジニ見ナイト云フハ、何ウ云フモノカ
(委員長)
同ジダガ
(鶴田委員)
天變デアレバ減ジテ宜イ
(委員長)
六百三十八條ノ條件次第ダカラ、矢張リ三分一マデハ損害ガ及バヌニハ行キマセン
(栗塚報吿委員)
左樣デス
(尾崎委員)
一分ト云フガ三分ノ一ニ當ラヌデハ、イカヌト云フノダ
(委員長)
「常」ト云フ字ハ「每」ト云フ字ガ宜クハナイカ
(栗塚報吿委員)
ケレドモ前ニモ使ヒマシタカラ
(淸岡委員)
上ノ所デハ利益デナイ、損失ダカラ、三分ノ一ト云フコトハ適用スルニ及バヌト云フノデハアリマセンカ
(鶴田委員)
此條ハ不承知ダネ
(淸岡委員)
明瞭ニ「三分ノ一」ト書イタ方ガ宜サソウナモノダネ
(栗塚報吿委員)
賃借物ヲ幾分カ失フタトキ、斯ウ云フコトガ出來ルト、併シソレハ始終カナレバ、六百三十八條ニ從ハナケレバナラヌト云フダカラ宜サソウナモノデス
(松岡委員)
矢張リ三分一損失ノ上デトシタ方ガ宜カロウ
(淸岡委員)
ソレヂヤ「六百三十八條ニ從ヒ」トシタカラ宜カロウ
(栗塚報吿委員)
ソレナレバ申スニ及バヌ
(南部委員)
ソレ丈ケノコトヲ包含サセルガ、法律文デ御座イマス
(委員長)
宜カロウヂヤナイカ、先ヘヤリマセウ
第六百五十九條朗讀ス
第六百五十九條 時期ノ定メアル賃借ノ終ニ於テ賃借人仍ホ收益シ賃貸人之ヲ知リテ故障ヲ爲サヽルトキハ新賃借暗ニ成立ス但前賃借ト同一ノ負擔及ヒ條件ニ從フ〔第千七百三十八條及ヒ第千七百五十九條〕
然レトモ最初ノ賃借ヲ擔保シタル保證人ハ義務ヲ免カレ又之ト同一ノ名義ニテ供シタル抵當ハ消滅ス〔第千七百四十條〕
新賃借ハ以下數條ニ記載シタル如ク賃借了終申入ニ因テ止ム 〔第千七百三十六條及ヒ第千七百三十九條〕
(委員長)
「然レトモ最初ノ賃貸借ヲ」ダロウネ
(栗塚報吿委員)
左樣デス
(鶴田委員)
此レハ仕樣ハナイ
(尾崎委員)
宜イ樣ヂヤネ
(村田委員)
仕舞ヒノモ賃貸借デセウ
(栗塚報吿委員)
左樣デス、ソレカラ「賃貸借了終」ト云フノハ字引デハ「賃借リノ終リニ」ト云テアルカラ了終トシマシタ
(委員長)
宜ケレバ是レデ置キマス
于時午後第三時三十分閉會