旧民法・法例(明治23年)

法律取調委員会 民法草案議事筆記 第6回

参考原資料

備考

  • 未校正のテキストデータです.
民法草案第二編第六回議事筆記
自第六百二條至第六百二十條及ヒ第五百八條第五百十條修正案
(三好委員)
用收權ノコトニ付キ反對ヲ持出シタケレバ出セト折角御許シヲ得テ居リマスガ未ダ支度ガ出來マセヌカラ明日反對說ヲ持出シマス
(今村報吿委員)
今日午前デ十九箇條ハ濟シマスカラ
(三好委員)
ケレドモ練ラヌモノヲ持出シテ笑ハレテハ困リマスカラ
(栗塚報吿委員)
今日十九ケ條讀ムノガアリマスガ五百八條ト五百十條ニ修正ガアリマス
(南部委員)
若シ間ガアツタラ訴訟法ノ殘リヲヤリマセウ
(委員長)
用收權ハ人事編ノ方ニ反對モアルダロウカラ其意見ヲ聞イテシタイ
(今村報吿委員)
人事編ハ用收權ノ所ニ關係ハアリマセン
(委員長)
此間彼等ノ說ヲ一寸聞イテ見ルト幾ンド反對說デ何デモ用收權ヲ置カナケルレバナラヌト云フカラ削ルト云フ說ト比較シテ見タラ能ク分ルダロウト思フ
(今村報吿委員)
民法ニ置クト一種ノ制度ヲ日本ニ立テヤウト云フノデスカラ
(委員長)
内務省抔ヘ話シヲシタラ分ラヌカラ書イタモノヲ見セテ呉レト云フカラ見セテ置コウト思フ、凡ソ斯ウ云フモノヂヤト云タラ少シハ分ロウ
第六百二條朗讀ス
 第四節 用收權ノ消滅
第六百二條 用收權ハ第五百四十四條ニ從ヒ所有權ヲ終ハラシムル原由ト同一ノ原由ニ因テ消滅ス
 用收權ハ尙ホ左ノ原由ニ因テ消滅ス
 第一 用收者ノ死去
 第二 用收權ヲ設定シタル期限ノ經過
 第三 用收者ノ明示シタル其權利ノ抛棄
 第四 三十年間經續セシ不使用
 第五 用收者ノ收益ノ濫用ニ依ル用收權ノ廢棄〔第六百十七條〕
(栗塚報吿委員)
「廢棄」トアルハ「廢罷」ノ誤リデ御座イマス
(西委員)
「經過」ハ「滿了」デスカ
(栗塚報吿委員)
之ハ「經過」デ御座イマス何ゼ「滿了」デナイカト云フト期滿ガ過ギタル期限デ御座イマスカラ
(淸岡委員)
五百四十四條ノ第五ノ所ニ「能力アル」云々トアリマスガ此ノ「抛棄」ト第六百二條ノ第三ノ「抛棄」トハ何ウ云フ違ヒニナリマスカネ
(栗塚報吿委員)
此處デ第三ノ「抛棄」ト云フハ見棄テ仕舞フノデ權利ガ有ルニモ拘ハラズ私ハ要ラヌト云フノガ用收權ノ方デ彼方ノハ所有權ノ物ヲ棄テタ形チニナリマス
(淸岡委員)
五百四十四條ノハ所有權ニシテ此方ノハ用收權ヲ抛棄シテ仕舞タラ素ヨリ何モナイノデ而シテ見レバ格別違ヒハナイ樣ニ思フ
(今村報吿委員)
違ヒモアリマセンカ、斯ウ云フコトハ始終出テ來マスカラ
(栗塚報吿委員)
此ノ中一ツ入用ナノハ三十年間經續セシ不使用丈ケガ入用ナノデ跡ハ云フニ及バヌノデス
(今村報吿委員)
民法ハ總テ斯ウデ、餘程重複シテ居リマスカラ入用ノモノ許リニ拔クト半分許リニナリマス
(鶴田委員)
一體要ラヌナレバ、丸テ削ルノダカラ第四ノ入用ノ丈ケニシテモ宜イ
(栗塚報吿委員)
ソレニ「死去」云々モ入用デス
(鶴田委員)
ケレドモ管理者ノ一生涯ト云フコトモアリマスカラ
(栗塚報吿委員)
佛蘭西ノ法ヲ說ク人モ用收權ノ消滅ノ原因ハ殖ヤシテ置ク方ガ宜イト云フノデ、收益ノ濫用ナドモ裁判上デ隨分酷ニ解釋シテ居ル樣デ御座イマス
(村田委員)
濫用デ罷メナイト重大ナル毀損デ隨分酷ヒコトヲサレルダロウ
(今村報吿委員)
重大ナル毀損ハ濫用ノ中ヘ這入テ來マセウ
(委員長)
宜ケレバ先キヘ行キマセウ
第六百三條朗讀ス
第六百三條 數人ノ爲メ同時ニ且不分ニテ用收權ヲ設定シタルトキハ死去シタル用收者ノ部分ハ生存者ニ利ス其用收權ハ最後ニ死スル者ノ死去ニアラサレハ消滅セス
(南部委員)
之ハ用收權許リノコトデス
(委員長)
斯ノ如キコトヲ用收權トセズシテ恩惠ノ贈與ノ所デ多人數ヤルト云フ樣ナコトハナイカ
(南部委員)
死去ニ因テ消滅シマセヌ
(委員長)
スルコトガアリハシナイカ
(栗塚報吿委員)
何ゼナレバ用收權丈ケハ畢生間ダカラ相續人ニイカヌハ原則ダカラデス
(委員長)
贈與ノ仕方デ三人ナレバ三人ニ生涯ヤルト云タラドウカ
(栗塚報吿委員)
ソレハ未必條件付キデ出來マス
(今村報吿委員)
永遠ニハヤレヌガ生涯丈ケヤル、契約デ定メテ契約通リ行フカラ宜シイ
(委員長)
ソレガ法律ニ定メテナイトイカヌ
(栗塚報吿委員)
ソレハ契約ノ自由デ秩序ヲ紊サヌ契約ナレバ宜シイ
(今村報吿委員)
例ヘバ三人貰ヒマス所ガ生涯丈ケホカヤラヌト云テアツテ其内一人死ンダラ御前ニ戻ツテ行クト云フコトガ云テナケレバ其者ノ相續人ヘ行クノデス
(委員長)
イイヤ、相續人ニヤルノデハナイ、三人ニ生涯ヤルト云フ約束デ、ソレデ三人ノ内一人缺ケタトキハドウスルカ、約束ハナカツタノデ、其トキハドウスルカ、殘リノ二人デ取ルカ、ヤリ主ヘ戻テ來ルカ、ソレガ分ラヌ、夫レハドウスルカ
(栗塚報吿委員)
ソレハ共有ノ原則ヲ當嵌メテ行キマス、卽チ不分デ以テ其物ヲ使ウト云フトキハ恰モ此處ノ樣ニナロウト思ヒマス
(南部委員)
一人缺ケレバ跡ノ分ハ贈與シタ者ト今ノ遺ツタ二人トデ共有スルコトニナリマス
(委員長)
ソレガヤレル丈ケノ明文ガナイ樣ニ思フ
(南部委員)
ソレハ所有權ノ共有ノ五百三十九條ニアリマス、恰度三年ナレバ三年ノ間ヤツテ置クト云フト、三年ガ過ギレバ戻テ來ルト同樣デ死ンダラ貰ツタ者ノ權ハナクナルカラ、死ンデ後チハ卽チ元トノ本人ヘ返ツテ來マス
(委員長)
歸テ來ルト云フコトガ明カニ分テ居レバ宜シイガ、不分ノ部分ヲ三人デ使ヒ、此ノ物カラ利益ガ月ニ百圓出ルトシテ之ヲ三人デ使フ、然ウスルト此中カラ出テ來ルモノハ百圓ダカラ三十三圓三十三錢三厘宛取レルトシテ、一人死ンダトキ三人ナレバ不分ダケレドモ、一人分丈ケハ分ケナケレバナラヌ
(南部委員)
ソレハ三人ノ内一人死ンダラ一人分ハ初メニ歸ヘルト約束スレバ宜シイ
(委員長)
約束スレバ宜シイガ無カツタラ五百三十九條ガ今少シ明カナレバ原則ニ依テ元トニ戻ルノハ云ハズトモ分ルガ、其ウデナイト始末ガ付カヌ
(栗塚報吿委員)
ソレハ迚モ贈與デモ何デモ當リマセン、用收權ニ係タ條デスカラ、此ノ原則ハ生存中ノ贈與ニハ當リマセン
(今村報吿委員)
今御話シノハ、用收權ハ度ビ度ビ申ス通リ一種ノ所有者ノ樣ニナツテ居ルカラ、三人シテ用收者トナツテ居レバ合體シタ所有者デ、一人缺ケタラ此ノ分ハ何處カヘ行クト、卽チ虛有者ヘ返ヘルノデ、然ウスルト虛有權ト用收權ト合體スレバ、完全ナル所有者ニナツテ仕舞フ、スルト此ノモノニ付テハ完全ナル所有權ト云ヒ、二人ノモノニ付テハ缺ケタル所有權ト云ハナケレバナラヌ理屈ニナリマスケレドモ用收權ト云フモノハ貰タモノノ一生ヲ指シ、年ヲ切テヤレバ約束通リ元トヘ戻ルト解釋シテ宜シイ、ソレニ又ヤルト云テ居ルカ否ヤハ何レ裁判所ヘ出レバヤラヌ方ニ解釋スルガ當然デアリマセウ
(委員長)
元ト不分ノ部分デヤルノダカラ、不分ノ部分デ一人死ングラ三人デ分ツベキモノヲ不分デヤツタガ、一分缺ケタカラ二分ハ貴樣ニヤル、一分ハ此方ヘヨコセ、ト不分デヤツタ筋カラ云フト殘リ二人ハ貰ウトハ云ヘヌト思フガ
(南部委員)
「ボアソナード」ノ註ニ「先ツ最モ當然ナル所ノ論決ハ死去シタル用收者ノ部分ハ所有者ニ復歸ス可シト謂フニ在リ然レトモ佛國ノ判決例ヲ見ルニ羅馬法ヨリ援引シタル異別ノ論決ヲ一般ニ許容セリ是レ本條ニテ爰ニ與ヘタル論決ナリ」ト皆ナ死ヌ迄用收權ヲ貰ウ法ヲ存シテ置クトナツテ居ルカラ、斯ウシタト云テ居ル、當然ヲ申セバ一人分ハ所有者ニ返ヘルガ條理デアリマセウ
(村田委員)
使用權モアリマセウネ
(南部委員)
使用權ハ全ク同ジコトデ、六百十六條ニアリマス
(村田委員)
イヤ、此ノコトハ云テナイ
(今村報吿委員)
使用權ハ委ハシクハ云テナイガ、其他ノコトニ當テ篏メナケレバナラヌ
(村田委員)
使用權ハ用收權ト同ジデスガ
(栗塚報吿委員)
同ジデスカラ、何處モ皆ナ用收權ノ條ハ當テ嵌リマス
(村田委員)
六百十六條ハ然ウハ見ヘナイ
(松岡委員)
六百十六條第三項ニ皆ナアリマス
(栗塚報吿委員)
今ノ委員長ノ御懸念ハ私ノ考ヘデハ生存中ノ贈與ノ場合デ、斯ウ云フ風ナ場合ガ出タトキハ、ドウカト云フガ、若シ必要ナレバ生存中贈與ノ部ヘ入レナケレバナラヌ、之ヲ以テ當テ嵌メル譯ニハ參リマスマイト思ヒマス
(委員長)
之ヲ以テ當テ嵌マルトハ思ハヌガ、法律ノ原則ニヤツタモノハ元トヘ戻ルトアルサニ、不分ノ部分デアロウトモ、其内不用ニナツタ分ガアレバ、其不分ト云ヘドモ返ツテ來ルト見ヘレバ不分ト云テアルカラ法律ノ上デ認メナイト云テハ民法上ノ缺點ニナルト思フカラ云フノデス
(淸岡委員)
今ノ說明ニ依ルト例ヘバ三人ニ家ヲ與ヘテ、貴樣等ニ一生家屋ヲヤルトシテ、内一人死ンダトキ、其家ヲ半分取戻ス譯ニハイカヌ、跡ニ二人殘テ居ルカラ
(栗塚報吿委員)
二人ニナレバ廣ロ過ギルダロウカラ、私ノ息子ヲ入レルト云フコトハ所有者カラ云ハレマス
(淸岡委員)
然ウ云フ主意デハナカロウ、例ヘバ馬ヲ一頭三人ニ與ヘ、内一人死ンダトキ、一人分ハ賃貸ニスルカラ代價ヲ拂ヘト云フコトハ出來マセンカ
(今村報吿委員)
ソレハ契約ニ、連帶ト不分トアリ、義務ヲ辨濟スルニモ、物ニ依テ不分ノ場合ニハ連帶ニナルノデ、三人シテ分ツベカラザル義務ヲ負テ居レバ、三人シテ馬ヲ一頭借リテ居ルト同ジデ、私ノ分丈ケ返ヘスト云フコトハ出來マセン
(淸岡委員)
ソレハ誰レガ解釋シテモ分テ居ルガ法律ニ明瞭デナケレバ差支ヘル
(今村報吿委員)
此ノ條ハ此處ヘ置テモ用收權ト云フ特別ノモノデ一般ニ當テ嵌メルコトハ出來マセン
(委員長)
此ノ條ガアレバ用收權デヤルモノモ、此條ガ無ケレバ用收權ヲ用ヒラレナイカラ、生存中ノ贈與デヤル、スルト今ノ樣ナコトガ到來スル、然ウスルト不用ノ部分ハ元トノ主ヘ返ヘルト云フコトガ贈與ノ部分ニ載テ居ルトカ、他ノ原則ニ依テ出來ルト云フコトノ註丈ケヲ知テ居タラ宜シカロウ、ソレガナシデ、裁判官ガドウカスルトカ、契約デスルトカ云フコトニナレバ議論丈ケハ濟ムガ、民法上注意ヲシタカ、ドウカト云フト、注意ヲセズニ居タト云フコトニナルカラ
(今村報吿委員)
契約不分ト云フコトガアリマシテ、例ヘバ私ガ三人ノ人ニ向テ馬一頭ヲ貸ス約束ヲスル、所ガ三人ノ内一人死ンデ二人ニナツタトキ馬ノ借主ハ二人シカアリマセンガケレドモ、一人分返ヘスト云フコトハ物ニ依テ出來マセンコトガアル、贈與ノ場合デモ一人死ンダラ原則ハ遣リ主ヘ返ヘルトシテ置キマシテモ其物品ニ依リマシテ止ヲ得ズ、其儘ニシテ置カナケレバナラヌコトモアリマセウ、ソレハ契約ノ原則ニ贈與ノコトガアリマス
(南部委員)
馬一頭ヲ三人ニ與ヘ、内一人死ンダラ死ンダ者ノ部分ハ馬ノ持主ヘ返ヘルダロウ、然ウスルト持主ハ元ト貸シテ居ルカラ使ハセル義務ガアツタノデ、所ガソレガナクナツタカラ、此度ビハ使フ權利ニナルノデ、權利義務ノ交換デ三人シテ使フノガ當然デセウ
(今村報吿委員)
口デ云フ丈ケデ、實際然ウハイカヌダロウガ、若シ馬ガ死ンデモシタラ償ウ約ナレバ、死ンダトキハ其代金ヲ矢張リ三人シテ償ハナケレバナラヌ
(南部委員)
ソレハ然ウダロウ
(今村報吿委員)
元ト三人ダガ一人死ンダカラ二人分ホカト云フ譯ニハイカヌ
(淸岡委員)
三人ニ係ルトカ、二人ニ係ルトカ、約定デ議論ガアルカラ然ウダロウガ、此法律ニ云フノハ約定デハナイ贈與デ、卽チ用收權ヲ與ヘベキ所ノモノヲバ云フノデスガ、之ガアルトキハ卽チ贈與ニモ行カレルガ、無クナツタトキハ困ル
(今村報吿委員)
之ガアレバ贈與ニモ當テ嵌マルト云フコトハ出來マセヌ、用收權ハ狹イ規則ダカラ此ノ規則ヲ他ヘ持テ行クコトハ出來マセヌ
(淸岡委員)
用收權ノアツタトキハ、之ヲ適用スルデセウ
(今村報吿委員)
勿論用收權ガアレバ適用シマス
(淸岡委員)
三人デ贈與ヲ受ケタ者ガ一人死ンダトキハ皆ナ死ヌ迄消滅セヌト云フコトガ此條デ出來ルデセウ
(今村報吿委員)
ソレハ贈與ノ所ヘ行テ書カヌト分リマセン、此用收權ト云フモノガ當リ前ノモノナレバ無論何處ヘモ持テ行カレルガ、之ハ一種特別ノモノダカラ普通ノモノトハ云ヘヌ
(村田委員)
不分デ贈與スルコトハナイ樣ニ思フガ
(栗塚報吿委員)
普通ノ原則カラ云フト御前等三人ニ一生涯遣ルト云テ一人死ンダラ所有者ヘ返ヘリソウデス、馬一頭ヲ三人デ借リ一人死ンダラ所有者モ加ハツテ乘ツテモ宜サソウデス
(村田委員)
ソレハ些トオカシイ樣ダナ
(南部委員)
贈與ノ所ヲ起案シテ居ル者ニ氣付ケヲ致シテ置キマス
(委員長)
今ノ馬ノ話ニシテモ、一人分所有者ガ乘ルト、馬ノ死ンダトキハ三人ノ内二人分ホカ出サヌヤウニナロウ
(村田委員)
然ウ云フコトハアリソウモナイ
(栗塚報吿委員)
用收者トシテハ出來マセン、用收者デナカツタトキデス
(委員長)
先キヘ行キマセウ
第六百四條朗讀ス
第六百四條 無形人ノ爲メニ設定シタル用收權ハ三十年ノ期限ニ依テ消滅ス但三十年ヨリ少キ期限ヲ以テ設定シタルトキハ其期限ニ從フ〔第六百十九條〕
(栗塚報吿委員)
注意迄ニ申シマスガ、佛蘭西書ヲ讀ムト、成ル丈ケヤラセヌガ宜イト云フ所カラ、普通人間ナレバ死去ト云フコトガアルモ、無形人ニハ死去ガナク何萬年トナルカラ餘儀ナク期限ヲ限ツテ之コソ用收權ノ爲メノミニ設ケタノデアリマス
(鶴田委員)
無形人ハ消滅シナイカラデスカ
(栗塚報吿委員)
然ウデス、無形人ナル國トカ、政府トカ云フモノハ死ヌルコトハアリマセン
(委員長)
宜ウ御座イマセウネ、先ヘヤリマセウ
第六百五條朗讀ス
第六百五條 用收者ハ其權利ノ抛棄ヲ以テ其抛棄以前ニ執行セサリシ義務ヲ免レス又其抛棄ハ用收者ヨリ物ニ付キ權利ヲ得取シタル第三者ニ害スルコトヲ得ス〔第六百二十二條〕
(栗塚報吿委員)
之ハ用收者ハ權利ヲ抛棄シテモ他人ヲ害セヌト云フコトヲ示シタ丈ケデス
(鶴田委員)
又カラ下ノ用收者ヨリ第三者ヲ害スルコトヲ得ズト云フノハ
(南部委員)
「物ニ付權利ヲ得收シタル」ト云フト例ヘバ用收權ヲ抵當ニ取テ居ルモノデス
(栗塚報吿委員)
抛棄シタカラトテモ害シマセン
(今村報吿委員)
用收權ヲ抵當ニシテ其中抛棄シテモ、用收權ハ生キテ居ルト云フノデス
(鶴田委員)
用收者ヨリ害スルコトハ出來マセヌノミナラズ、戻ツテ來ルカラ此者カラモ害スルコトハ出來マセンカ
(栗塚報吿委員)
用收者カラ權利ヲ貰ツタ人ハ用收者ガ權利ヲ抛棄シテ權利ヲ害スルコトハ出來ヌゾヨト云フノデス
(鶴田委員)
私ノ云フノハ用收者ヨリ權利ヲ得テ居ルカラ虛有者ニ戻テモ、虛有者モ害セナイト行キソウナモノダト云フノデス
(栗塚報吿委員)
虛有者ヲ害スルコトハ出來マセヌ、併シ第三者モ害スルコトハ出來マセヌ、用收者權利ヲ抛棄スルハ勝手ダガ、虛有者及ビ第三者ヲ害シテハイカヌゾヨト云フノデス
(鶴田委員)
抛棄ハ自由ダガ、抛棄スレバ虛有者ヘ戻ルノデセウ、ソコデ前ニ第三者ガ借リデモシテ居ル場合ニ、己レニ戻タカラ貸サナイト云フコトハ虛有者ニハ云フコトハ出來マスマイ
(栗塚報吿委員)
虛有者ハ云ハレマス
(鶴田委員)
云ハレマスカ
(栗塚報吿委員)
云バレルカラ困ルノデ、ソレハ云ハセヌト云フノデス
(鶴田委員)
抛棄ノ効力ハ第三者ヲ害スルコトハ出來マセヌ、抛棄ハ出來ルガ第三者ヲ害スルコトハ出來マセヌデセウ
(今村報吿委員)
然ウ讀ンデ宜シイ
(鶴田委員)
用收者ハ害スルコトハ出來ヌガ虛有ハ出來ルカ
(南部委員)
然ウテナイ、用收者ガ害スルコトガ出來ヌケレバ虛有者ハ無論デアリマス
(栗塚報吿委員)
貴君ガ用收者デ以テ、宅ヲ私ガ借リテ居ルニ、貴君ガ抛棄シテモ貴君ノ所有者ナル松岡サンガ來テモ抑モ私ヲ害スルコトノアル以上ハ抛棄ハ出來マセヌ
(鶴田委員)
然ウスルト用收者ヨリノ抛棄ハ第三者ヲ害スルコトハ出來ヌ
(今村報吿委員)
左樣デス
(西委員)
之ハ當リ前ナ話シデセウ
(栗塚報吿委員)
虛有者ニ對シテ有効ナル抛棄デアツテ、第三者ニ對シテハイカヌゾヨト云フノデス、訴訟ノ原因ヲ避ケヤウト思テモ、細カクシテ行クト貴君カラ私ガ宅ヲ借リテ質ニ入レルコトガ出來ルノテ、訴訟ハ續々出テ來マス
(委員長)
先キヘヤリマセウ
第六百六條朗讀ス
第六百六條 不使用ハ未成人ニモ及ヒ其他ノ人ニシテ之ニ對シ時効ノ經過スルコトヲ得サルモノニモ之ヲ以テ對抗スルコトヲ得ス
 免責時効ニ關スル其他ノ規則ハ不使用ニ之ヲ適用ス
(松岡委員)
此ノ「及ヒ」ハ何時モノ及ビトハ違ヒマスカ
(栗塚報吿委員)
例ノ「及ヒ」デス
(南部委員)
之ハ賃借デモ削除致シマシタ、賃借ニ不使用ト云フコトハナシ、又時効ハ使用シナイ
(今村報吿委員)
賃借ハ何レ借賃ヲ拂ハナケレバナラヌ、拂フ度ニ不使用デナカツタコトガ極マツテ來マス
(松岡委員)
使用權ニ時効ヲ生ズルコトハアルケレドモ、併シ此ハ賃借ナレバ三十年ガ期限デモ使ハナクナツテモ構ハヌ、矢張リ錢ヲ拂フカラナ
(委員長)
「之ニ對シテ」ハ何々ニ對シテデスカ
(栗塚報吿委員)
其人ニ對シテデス
(南部委員)
不使用ニ對シテデ御座イマス
(村田委員)
婚姻シタ女トカ、精神病トカ云フモノニハ對抗スルコトハ出來ヌノデセウ
(今村報吿委員)
左樣デス
(栗塚報吿委員)
「其他ノ人ニシテ」未成人及ビ其他ノ人デ人ニ對シテ御座イマス
(松岡委員)
之レハ無論イラヌ
(栗塚報吿委員)
始メノ之ニ對シテハ之ヲ以テ對抗スルコトヲ得ズモウ一ツノ之ニ對シテハ人デ御座イマス、不使用ハ對抗スルコトヲ得ズ、誰レニ對シテ出來ヌカナレバ、斯ウ云フ人ニ對シテト云フノデス
(鶴田委員)
略シテ云ヘバ、未成人其他時効ノ經過スルコトヲ得ザル對シテデセウ
(栗塚報吿委員)
上ノ「不使用」ハ止メテ「未成人ニモ其他ノ人ニシテ時効ノ經過ヲ得サルモノニモ不使用ヲ以テ對抗スルコトヲ得ス」ト云ヘバ宜シイノデス
(委員長)
置ク樣ナコトニナルト入用カモ知レヌ、兎ニ角置ク、置カヌニ拘ハラズ此處ヲ通ツタモノハ文字丈ケハ良クシテ置ク樣ニシタイ
(栗塚報吿委員)
宜シウ御座イマス、之ヲガ二ツアリマスカラ、直シマス
(委員長)
先ヘ行キマセウ
第六百七條朗讀ス
第六百七條 用收者其物ニ重大ノ毀損ヲ爲ストキ又ハ其保持ヲ缺キ若クハ收益ヲ濫用シテ其物ノ保存ヲ危フスルトキハ裁判所ハ用收權消滅ノ他ノ原由中其一ノ到來スルマテ用收者ノ入費ヲ以テ其物ヲ監守ニ付スルコトヲ得又ハ虛有者ヨリ每年用收者ニ拂フヘキ金額又ハ果實若クハ入額ノ部分ヲ定メ虛有者ノ爲メ用收權ノ消滅ヲ宣言スルコトヲ得
 裁判所ハ右ト同時ニ其年ノ果實及ヒ產物ノ派分ヲ規定ス
 將來用收者ニ拂フヘキ金錢又ハ果實ハ前年用收權ノ繼續シタル時間ニ應シ用收者日每ニ之ヲ得取ス〔第六百十八條〕
(栗塚報吿委員)
六百五十七條ノ第五項卽チ賃借ノ所ニ類似ノコトヲ申シテアリマス
(鶴田委員)
「產物ノ派分ヲ規定ス」ト云フハ何ウデスカ
(今村報吿委員)
果實及ビ產物ノ派分ヲ規定スルノデス
(栗塚報吿委員)
用收者ガ澤山アツタトキハ派分ガアリマセウ
(松岡委員)
上ニハ入額ノ部分ヲ定メトアリマス
(今村報吿委員)
用收權ガ消滅スレバ、用收者ノ取ルノト、所有者ノ取ルト、分ケナケレバナラヌ、幾日マデハ己レガ取ル部分幾日迄ハ誰ガ取リ分ト云フコトデス
(尾崎委員)
「用收權消滅ノ他ノ原因」ト云フノハ何デスカ
(南部委員)
死ヌトカ、濫用トカ、毀損トカデス
(尾崎委員)
何レ保存スル箇條デモ置クデセウ
(南部委員)
左樣デス、斯ウ云フコトモアルト云タノデス
(委員長)
宜シケレバ先キヘ行キマセウ
第六百八條朗讀ス
第六百八條 用收權ノ廢棄ハ其廢棄前ニ用收者ノ加ヘタル損害ニ付キ賠償ヲ求ムルコトヲ妨ケス〔第六百十八條第二項〕
(栗塚報吿委員)
「廢棄」トアルハ矢張リ「廢罷」ト直シマス
(委員長)
之ハ無論デセウネ、先キヘヤリマセウ
第六百九條朗讀ス
第六百九條 用收權ノ絕止ノ時尙ホ土地ニ附着シタル果實及ヒ產物ハ第六百七條ニ揭ケタル場合ヲ除クノ外虛有者ニ屬ス栽培又ハ利用ノ入費ハ之ヲ償還スルコトヲ要セス但土地賃借人又ハ分收小作人ノ旣ニ得タル權利ニ妨ケナシ〔第五百八十五條第二項〕
(栗塚報吿委員)
第六百六十四五條ヲ御覽下サイ
(南部委員)
用收權ノ場合ニ於テ果實ハ虛有者ニ屬ス、賃借ノ場合ニ於テハ賃借人ニ屬ス、其差ヒデス
(尾崎委員)
仕方ハナイ
(松岡委員)
ソレ故ニ大修繕ヲセヌノダ
(栗塚報吿委員)
賠償ヲ求ムルコトガ出來ルト云フ意味デス
(鶴田委員)
果實モ何モ取ルコトガ出來ヌト云フノデセウ
(栗塚報吿委員)
用收權ヲ廢罷シテモ廢罷前ニ取タモノハ妨ゲナイト云フノデス
(鶴田委員)
賃借人、分收小作人ノ得タル權利ヲ害スルコトハ出來ヌト云フノデセウ
(栗塚報吿委員)
同ジコトデセウ
(尾崎委員)
分收小作ト云フノハ
(栗塚報吿委員)
利得ハ幾ラトモ高ヲ極メズ、今年若シ一反デ五俵取レレバ二俵トカ、三俵遣ルト云フ、出來高デ小作スルガ、分收小作デアリマス
(今村報吿委員)
土佐ノ國抔ニハ分收小作ト云フコトハナイ
(尾崎委員)
之ハ珍ラシイ、檢見取リヂヤナ
(栗塚報吿委員)
左樣デス
(尾崎委員)
日本ニハ滅多ニナイガ、之ハ物成リノ定マラヌ所ニアルノデセウ
(栗塚報吿委員)
然ウデス
(委員長)
宜シケレバ先キヘヤリマセウ
第六百十條朗讀ス
第六百十條 事變又ハ朽廢ニ因リ用收權ニ屬スル建物ノ全部壞頽シタルトキハ用收者ハ土地ニ付テモ又物料ニ付テモ收益スルコトヲ得ス但建物カ用收權ニ屬スル土地ノ從タルトキハ此限ニ在ラス〔第六百二十四條〕
(栗塚報吿委員)
之ハ全部ノ「壞頽」ハ「毀滅」デアリマス
(南部委員)
此ノ條ハ六百五十七條ニアリマス
(栗塚報吿委員)
六百五十八條デハ御座イマセンカ
(南部委員)
第六百五十一條ト六百五十八條デ御座イマス
(鶴田委員)
此處デ全部ガ毀滅スレバ收益スルヲ得ズデスカ
(栗塚報吿委員)
收益ガ罷マルノデス
(鶴田委員)
ケレドモ土地ガ廢罷ニ付家モ共ニ用收權ハナクナツタニナリマスカ
(今村報吿委員)
英國デモ然ウダガ、土地ノ上ニ家ガ建テアルニ土地ノ廢頽ト一ト塊リニシテ見ル樣デ、土地ハ土地、家ハ家ト、別別ニ勘定スル場合モアリマセウガ、此處等ハ一ツニ見タノデセウ
(鶴田委員)
但カラ以下ヲ見ルト建物ガ主ニナツテ居ル
(今村報吿委員)
別段ニヤツタトキハ然ウカモ知レマセンガ、此處ラハ一ト塊マリニ見テアリマス構成法ノ始メノ區裁判所ノ權限ニ不動產ノ價額ハ幾ラト云フ所ニ建物ト土地ト分ケタ議論ガアツタガ「カークード」ハ然ウ云フコトハナイト云テ建物ト土地トハ一體ノモノト云フ
(鶴田委員)
私ノ疑ヒバ收益スルヲ得ズト云フノデス
(今村報吿委員)
其處ハ家モ這入リソウデス、家ヲ毀ハシタラ其家ノ材木ガ殘テ居ルナレバ、權利ハ幾ラカ附着イテ居ル樣ニ思フ
(鶴田委員)
又建テル權利ガ有ルカトモ讀メル
(今村報吿委員)
其疑ヒガアルカラ此條ガアルノデス
(村田委員)
モウ建テルコトハ出來マセヌデスネ
(今村報吿委員)
左樣デス
(栗塚報吿委員)
「收益スルコトヲ得ス」ト云フハ翻譯ガ惡イノデ「收益スルコトナシ」デ宜シイノデス
(鶴田委員)
收益ヲ絕止シタノデスカ
(今村報吿委員)
絕止シタノデス
(村田委員)
建物ハ例ヘバ自分ノ物ダト云フト賣テモ宜シイノデセウ
(今村報吿委員)
自分ノ建タ家ナレバ用收權ノ外ダカラ宜シイ
(村田委員)
「但從タル場合」ト云フノハ
(栗塚報吿委員)
大キナ田地ヲ借リテ農作小屋ヲ建テ田地ガ主ノトキハ用收權ハ消滅セヌノデ御座イマス
(委員長)
「收益スルヲ得ス」ト云フト鶴田サンノ說ノ如ク殘タ物ガアレバ我レノ權丈ケハ有ルト云ヒ、虛有者モ動カスコトハナラヌト云フ樣ナモノニナルダロウ
(栗塚報吿委員)
六百二條ニ明カニ云テアリマスカラ
(南部委員)
物ニ主從ノ區別ガアリ、主ガ消滅スレバ從ハ從テ消滅スル
(西委員)
收益セズト變リマスカ
(栗塚報吿委員)
何レ「收益スルコトナシ」トカ「セス」トカ箕作サント相談ノ上ニ致シマス
(委員長)
全體但書ハオカシイネ
(栗塚報吿委員)
恰度今ノ農作小屋ノ如キ例デス
(委員長)
宜シケレバ先ヘヤリマセウ
第六百十一條朗讀ス
第六百十一條 若シ燒失シタル建物カ所有者又ハ用收者ノ保險ニ付シタルモノナルトキハ用收者ハ第五百九十四條及ヒ第五百九十五條ニ記載シタル區別ニ從ヒ其償金ニ付キ收益ス
(南部委員)
二百九十四條ヲ削レバ之モ削リマス
(鶴田委員)
虛有者ガ保險料ヲ取テハ家ヲ建テヤラナケレバナラヌデセウ
(栗塚報吿委員)
建テヤルニ及ビマセヌ、五百九十四條ニアリマス
(尾崎委員)
其處ガ用收權ノ甚ダ宜シクナイノデス
(松岡委員)
論ハナイ
(村田委員)
用收者ガ保險料ヲ出シテソレヲ貰ウノデセウ
(栗塚報吿委員)
利子ヲ貰ウノデス
(委員長)
先キヘヤリマセウ
第六百十二條朗讀ス
第六百十二條 若シ用收權ニ屬スル物ヲ公益ノ爲メ徵買シタルトキハ用收者ハ其償金ニ付キ收益ス〔千八百四十一年五月三日ノ佛法律第三十九條〕
(栗塚報吿委員)
六百五十七條ノ第二ト六百五十八條ヲ御參考ヲ願ヒマス
(鶴田委員)
買上ゲラレタトキハ潰レタヨリモ酷ヒカナ
(栗塚報吿委員)
イイヤ、收益丈ケデ元金ハアルノデス
(松岡委員)
五百九十四條ニハ「殘額ニ付テ收益ス」トアリマス
(栗塚報吿委員)
收益ハ利子ヲ取ルト御心得ヲ願ヒマス
(渡委員)
栗塚サン、此處ニ「用收權ニ屬スル物」トアルハ原文ニ依テ見ルニ斯ク譯シタハドウ云フ譯デスカ
(栗塚報吿委員)
註ヲ以テ見ルト「シヨーズ」トアリマス
(今村報吿委員)
矢張リ土地ト書ク方ガ宜シイ、之ハ原文ガ惡イニ又翻譯ガ手傳ツタカラ又惡イ、此レ等ハ報吿委員デ修正シテ宜シイ
(渡委員)
ソレガ宜シイ、直譯ニ適ハヌカラ
(今村報吿委員)
詰リ徵買セラルル物ハ皆ナ這入ラナケレバナラヌ
(栗塚報吿委員)
土地ト書イテ置テ、跡デ直シマセウ
(委員長)
宜シケレバ先キヘヤリマセウ
第六百十三條朗讀ス
第六百十三條 前二條ニ揭ケタル場合ニ於テ用收者ハ其收益スル金額ニ對シ保證人ヲ立ツヘシ但右ノ場合ヲ豫見シテ特ニ保證人ヲ立ルノ義務ヲ免除セラレタルトキハ此限ニ在ラス〔同上〕
(松岡委員)
用收者ガ元金ヲ自分デ使テ收益スルコトガ出來ルノダカラ、家ヤ土地ハ隱スコトハ出來ヌノガ金ダカラ保證ヲ立テ置カナケレバナラヌト云フノデスナ
(栗塚報吿委員)
然ウデス
(松岡委員)
虛有者ハ一番確カナ奴ニヤラセルノダナ
(今村報吿委員)
元トモ何モ無クシテ仕舞フ樣ナ者デハ、善良ナル管理者デハナイ
(松岡委員)
用收者物ヲ使用シテ收益ガ元トダカラ其方ヘ渡シテ置クガ當然ノコトデ、反對ノ契約ナレバ勝手次第
(今村報吿委員)
豫テ保證人ヲ立テ置クニハ必ラズシモ公債證書ヲ買ハンデ事業ヲ起スカモ知レヌ
(松岡委員)
金ヲ貸ストキデモ我レガ死ヌ迄ト云テ、シナケレバ貸セナイ、六ケ敷イコトヂヤナ、斯ウ云フモノヲ一々擧ゲルト愈々用收權ヲ排斥スル理由ガ強イ、併シ報吿委員ニ於テハ標シヲ付ケテ置イテ下サイ
(今村報吿委員)
畏リマシタ
(委員長)
用收者許リ保證人ヲ立テルト、五百九十四條ノ一項ヲ見ルニ火災ノ場合ニハ虛有者ハ利子ヲ用收者ニヤルノデセウ
(今村報吿委員)
五百九十四條一項ハ「所有者建物ノ火災ニ付保險ニ付シタルトキハ用收者ハ每年保險料ノ利息ヲ拂フノ要求ニ應スヘシ但」云々トアリマス
(委員長)
夫レデモ用收者ハ保證人ヲ出サナケレバナラヌカ
(松岡委員)
五百九十四條ハ權利ヲ云フ丈ケデ運轉サセルハ所有者ガスルノデセウ
(委員長)
ケレドモ受取ルト云フコトガアル
(松岡委員)
受取ルコトハ所有者ガ受ケルノデス
(今村報吿委員)
九十四條ハ元金丈ケ虛有者ノ手ニアル樣ニ見ヘマス、然ウスルト此處ニ保證人ヲ立テルコトハナイコトニナル
(南部委員)
六百十三條ハ收益スル金額ニ付テ保證人ヲ立テルノデアリマス、元金ニ對シテ保證ヲ立テルノデハアリマセン
(今村報吿委員)
然ウデナイ
(松岡委員)
全ク九十四條ノ註解ヲシタ樣ニ思フ
(南部委員)
スルト、九十四條ト牴觸スルコトニナル
(松岡委員)
牴觸デハナイ、文ガ惡イノデス
(委員長)
用收權ヲ持テ居ルカラ受取テヤルトシテモ前ノ五百九十四條ハ全ハ用收者ガ受取ル樣ニ立派ニ見ヘテ居ル
(松岡委員)
ソレハ文ガ錯雜シテ居ルカラデス
(今村報吿委員)
之ハ翻譯ガ惡イ、九十四條ハ誤リデモアリマセヌガ受取リタルト云フ文字ヲ入レタハ甚ダ惡イ、直譯デハ「火災ノ場合ニ於テ拂ハレタル賠償金ノ收益ヲ用收者ニ讓ルヘシ」トアリマス
(南部委員)
ソレナレバ宜シイ
(今村報吿委員)
元金ハ誰レノ手ニ在ルト云フコトハ云テナイ
(栗塚報吿委員)
「受取リタル」ヲ「拂ハレタル」ト御直シヲ願ヒマス、誰レニ拂ハレタルカナレバ、所有者ニ拂ハレタルニ相違ナイ
(今村報吿委員)
民法ガ認メテ、虛有者、用收者二人ノ中トアルニ一方ニ渡スコトハ出來マセン
(尾崎委員)
ソレハ然ウハイカヌデセウ、用收權設立ニ付登記ニモ載セルノデスカ
(今村報吿委員)
勿論デス
(栗塚報吿委員)
ソレダカラ、本妻ト妾ガ始終附着イテ居ル
(今村報吿委員)
ソレナレバ兩人立會デ渡サナケレバナラヌ
(委員長)
「拂ハレタル」ニ直スカ
(栗塚報吿委員)
直ス方ガ宜シウ御座イマス
(今村報吿委員)
受ケ身ニ書クコトヲ避ケタノデスカラソレデデス
(委員長)
六百十二條ハ何方ガ買上ゲラレタカ知ンガ、兎ニ角用收者ガ支配スルモノト云フノデスカ
(今村報吿委員)
横文字ヲ見テ、ソレカラ之ヲ見ルカラ分テ居ルノデス
(委員長)
先キヘヤリマセウ
第六百十四條朗讀ス
第六百十四條 湖又ハ池ノ用收權ハ其永久乾涸スルニ至リシトキハ消滅ス
 之ニ反シテ耕地ノ用收權ハ水ノ永久其土地ヲ浸沒スルニ至リシトキハ止ム
 然レトモ土地ノ不使用三十年ヲ經過セサル前ニ湖若クハ池ノ水自然ニ再來シ又ハ耕地ノ浸沒自然ニ止ミテ舊狀ニ復シタルトキハ本條ニ依リ用收權消滅ノ判決アリシトキト雖モ其用收權ハ再生ス
(栗塚報吿委員)
一項ハ六百五十八條、二項ハ六百五十七條ニ御座イマス二項ノ耕地ハ土地ト改メタカラ其御積リデ願ヒマス
(南部委員)
一方ハ水ノ爲メニ消滅シタノ、一方ハ水ガ無イ爲メデ消滅シタノデス
(栗塚報吿委員)
三項ノ又ハノ下タノ「耕地ノ」ノ三字ヲ刪リマス
(鶴田委員)
永久ハ何時迄行クノカ些ツトモ分ラヌ
(今村報吿委員)
ソコ等ハ裁判官ノ眼玉デスネ
(委員長)
「又ハ浸沒自然ニ止ミテ」トスルカ
(栗塚報吿委員)
左樣デス
(委員長)
宜シケレバ先キヘヤリマセウ
第六百十五條朗讀ス
第六百十五條 畜群ノ用收權ハ全群ノ喪失スルニアラサレハ消滅セス
 右ノ場合ニ於テ卒然ノ事變ニ因テ滅盡シタルトキハ用收者ハ皮ヲ虛有者ニ還付スヘシ〔第六百十五條及ヒ第六百十六條〕
(尾崎委員)
皮剥ギノ賃ハドウスルカ
(今村報吿委員)
身ハ收益ニナルノデス
(南部委員)
皮ヲ無理ニ剥イデ返ヘサナケレバナラヌト云フハ、隨分ドウモ六ケ敷イ樣デス
(栗塚報吿委員)
此處ハ毛ノ無イ皮デ御座イマス
(松岡委員)
身ハ此方ヘ取テ、皮丈ケデスナ
(今村報吿委員)
然ウデス
(委員長)
畜ノ字ハ鳥類モ籠ルノデスカ
(今村報吿委員)
籠ル積リデ御座イマス
(委員長)
禽獸デモ宜シイカ
(今村報吿委員)
左樣デス
(栗塚報吿委員)
蠶マデ這入ルノデス
(鶴田委員)
一時ニ死ヌトキハ無効デスカ
(栗塚報吿委員)
無効デ御座イマス、皮ハ還ヘサヌデモ宜シイノデス
(淸岡委員)
卒然事變デハ、全群消滅シタトキデスカ
(栗塚報吿委員)
イイエ
(松岡委員)
「右ノ場合」トアルカラ全群デセウ
(尾崎委員)
全群ヲ剥グト云テハ大變ダガ、其剥グ賃ハドウスルカ之デハ剥ギ賃ニ付テ爭ヒガ生レマス
(渡委員)
鳥ハ這入ラヌデセウ
(栗塚報吿委員)
立法者ノ意ハ鳥ハ這入ラヌデセウ
(今村報吿委員)
矢張リ鷄、兎等ハ此ノ條ニ依ラナケレバナラン
(松岡委員)
卒然全群死亡シタラ皮モ身モ取レル
(今村報吿委員)
畜群ノ虎列拉抔デセウ
(松岡委員)
六ケ敷イナ今日十頭死ンダ、翌日ハ十五死ンダ又三十死ンデ弱ハルト云テ居ル中、身モ皮モ取テ仕舞フデセウ
(南部委員)
ソレハ裁判官ノ脳力ニ任セマス
(栗塚報吿委員)
段々ニ死ンダ場合ハ註ニモアリマス、畜群ガ疾病又ハ其他ノ原因ニテ漸次ニ死シタル場合ニ於テハ用收者ハ皮ヲ得ルトアリマス、然レドモ殘ラズガ死ネバ還ヘサナケレバナラヌ
(南部委員)
註ニハ「急遽ニ」トアリマスゼ「其皮ハ破損セサル場合ト、又炭素ニ觸レ死ンタトキハ用收者建築物ヲ返還スル如ク其皮ヲ返還スルヲ要ス」トアリマス
(委員長)
宜シケレバ是レデ食事ニ致シマセウ
(委員長)
ヤリマセウ
第六百十六條朗讀ス
 附錄 使用權及ヒ住居權ニ特別ナル規則
第六百十六條 使用權ハ使用者ノ需用ノ程度及ヒ其家族ノ需用ニ限ル用收權ナリ〔第六百三十條〕
 住居權ハ建物ノ使用權ナリ〔第六百三十二條及ヒ第六百三十三條〕
 使用權及ヒ住居權ハ用收權ト同一ノ方法ニ因テ成立チ及ヒ同一ノ原由ニ因テ消滅ス〔第六百二十五條〕
(栗塚報吿委員)
「附錄」ハ如何デスカ、法律中ニ附錄ト云フノハオカシイ樣デス講義本ニハアリマスカ
(松岡委員)
「節」トシタラ宜サソウナモノデ
(今村報吿委員)
「附錄」ハオカシウ御座イマス
(淸岡委員)
附錄ハ廢シテ宜カロウ
(松岡委員)
「節」トカ「目」トカニシナケレバナラヌ
(今村報吿委員)
「節」トスルコトハ出來ル、然ウスレバ今ノ「節」ヲ「款」トカニ換ヘナケレバナラヌ然ウスレバ出來ル
(委員長)
「附錄」ハオカシイネ
(今村報吿委員)
附錄ト云フ譯ハナイコトデス
(栗塚報吿委員)
法文ニナイコトデス
(村田委員)
併シ之ハ論ハ云フガ何トモ仕樣ハナイ
(栗塚報吿委員)
私ハ「章」ダロウト思フ
(今村報吿委員)
章デハイカヌ
(栗塚報吿委員)
五百四十六條ノ「用收權、使用權、住居權」トアルノヲ除イテ「用收權」トシテ之ヲ「使用權、住居權」トシタラ宜ウ御座イマシヨウ
(今村報吿委員)
彼處ヲ拔カナケレバナラヌ
(鶴田委員)
「款」ニシタラ宜シカロウ
(今村報吿委員)
用收權ノ中書分ケテ「節」デ出來テ居ルカラ、此處ヲ「節」トシテハ用收權ノ節ノ小譯ケト見ヘルカラ
(南部委員)
「一款用收權」「二款使用權及住居權」トシタラ宜シカロウ
(今村報吿委員)
翻譯局ヘソレヲ聞キマシタガ「篇」ノ次ギハ「卷」其次ハ「部」其次ハ「章」其次ハ「節」其次ハ「款」トシヨウト思ヒマス
(栗塚報吿委員)
寧ロ「附則」トシテハドウテス
(松岡委員)
矢張リ「款」トカ「節」トカデ定メタ方ガ宜シイヨウダネ
(栗塚報吿委員)
賃借權ノ方ヘ行テ、之ト同ジ理屈デ「ボアソナード」ガ賃借權、住居權、地上權トヤツテ地上權ヲ「附錄」トシテ居リマス
(今村報吿委員)
五百四十六條「第一節用收權」トシテ次ノ一節ヲ「款」ノ字ニ換ヘタラ宜カロウ
(栗塚報吿委員)
五百四十六條ニ「前置條例」ト云フヲ加ヘテ來マシタ
(今村報吿委員)
「ボアソナード」モ窮シテヤツタト見ヘマスガ、用收權ヲ獨立サセテ、今度住居權ト使用權ヲ集メテ、又一節ニシタカ、第二節使用權、第三節何ト云ヘバ出來ル
(栗塚報吿委員)
「節」ガ皆ナ「款」ノ字ニ直スコトガ出來レバデス
(今村報吿委員)
使用權ヲ「款」ニスレバ出來ルガ、用收權ハ一節ニ獨立サセテ置キマスルハ仕方ナイ樣デス
(栗塚報吿委員)
此處デハ「節」トモ何トモ云ハズ「使用權及ヒ住居權ニ特別ナル規則」トヤツテ「附錄」ヲ除イテ仕舞ウ譯ニハイカヌカ
(村田委員)
無クツテハナラヌト云フコトハ、ナサソウナモノダ
(今村報吿委員)
「附錄」ヲ除イテハ附錄ガアルヤウニナル
(村田委員)
名ガ付カヌデ宜サソウナモノダ
(今村報吿委員)
何カ名ガ付カズニハ出來マセン、民法ハ皆ナ何トカ名ガ付テ居ル
(栗塚報吿委員)
然ウデモ無イ「前置條例」ト前ニモアルガ、何モ名ヲ付ケヌデモ宜シイ
(松岡委員)
分ケ方丈ケダカラ、報吿委員ニ任カセテハ何ウデスカ
(鶴田委員)
報吿委員ニ任セテ置キマセウ
(栗塚報吿委員)
之ハ因ミニ云フノデ「附ケタリ」ト同ジデ、附錄デハドウモオカシイ樣デス、權利ヲ規定セヌ箇條ハナイ筈ノ民法デ御座イマスカラ、之ハ跡デ報吿委員デ直スコトニ致シマス
(委員長)
「程度ニ限ル用收權」ト云フノハ何ウ云フコトカ
(今村報吿委員)
使用者ガ自分ノ入用丈ケデスルカラ、需用ノ外使用ハ出來マセスノデス、金ヲ儲ケル迄渉ツチヤアイカヌノデス
(松岡委員)
「程度」ト云フハ「限ル」ト云フモ同ジデセウ
(栗塚報吿委員)
「使用者、需用ノ程度ニ限ル、及ヒ家族ノ需用ニ限ル使用權」ト云フノデス
(委員長)
「程度ヲ限ル」ト云テ宜シイノデセウ
(栗塚報吿委員)
原文ハ「程度ノ限リ」トアリマス
(鶴田委員)
「程度ガ限リ」ト云フ字ニ讀メル
(尾崎委員)
同ジ樣ナモノデス
(松岡委員)
「程度」ト云フ字ハ、佛蘭西ノ「制限」ト云フ字デセウナ
(委員長)
「程度」ト云ヘバ何方ヘモ「程度」ト云ハナケレバナラヌ
(栗塚報吿委員)
原文ハ此ノ通リデ御座イマス、使用權ガ狹バメラレタルノデ、何ヲ狹バメラレタカト云フト、使用者ノ需要ヲ狹バメラレテ居ルノデ、ソレデ家族ノ需要ニ狹バメラレテ居ルノデス
(今村報吿委員)
「使用者及ヒ家族ノ需用ニ限ル」ト云ヘバ分ル
(栗塚報吿委員)
「程度」ト云フノハ例ヘバ需要ノ升ガアレバ外丈ケニ狹バメラレルト云フノデス
(松岡委員)
尺度ト云フものさしト見レバ、家族ノ需要モ尺度トカサナケレバナラヌ
(栗塚報吿委員)
家族ハ附ケタリデ、使用者ヲ主ニシテアルノデス
(尾崎委員)
「使用者ノ需用ノ程度」ト云ヘバ、家族ガ七人アル、其七人ノ需要ニ限ル程度、ソレカラ七人ノ子ガ出來ルト云フコトガアル、其子ガ出來タラ子ニ使ハセヌト云フコトハ出來マセヌカラ、又出來タ家族ノ使用ニ充テナケレバナラヌ旨意デハナイカト思ヒマス
(村田委員)
元トノハ「限度」トアル家族ノ需要ノ限度ダカラ同ジト思フガ違ヒマスカ
(栗塚報吿委員)
「需用ノ程度ニ限ル用收權ナリ」及ビ「家族ノ需用ニ限ル、用收權ナリ」デス
(今村報吿委員)
「家族ノ需用ノ程度ニ限ル」ト書イタノト同ジコトデス、次ノ條ニモ之々ノ者ハ家族ヲ形チ造ルトアリマス
(尾崎委員)
七人ノ内ニ結婚シナカツタ者ガアロウ、其者ガ女房ヲ娶ツタトキハドウスルカ
(今村報吿委員)
使用者ハ需要者ノ一人ト、其家族共ニ需要ノ程度ニ限ルデス、詰リ程度ガ後チニナイカラオカシイノデス
(松岡委員)
然ウデス「程度」ハ下ヘ以テ往ツテ承ケサセテ宜シ、又一ツ入レテモ宜シイ
(今村報吿委員)
上ハ程度カラ、下ハ使用カラ限テ居ル其處ニ意味ハナイノデス
(松岡委員)
然ウデセウ
(栗塚報吿委員)
無ケレバ斯ウ書ク譯ハアリソウモナイヤウデス
(淸岡委員)
無ケレバ「使用者ノ需用、及ヒ其家族ノ需用ニ限リ」デ宜シイ
(松岡委員)
彼方ノ言葉デ云フト、ドレ丈ケノ秤ノ中ヘ限ラレルト云フコトダカラ、矢張リ程度トナルノデセウ
(今村報吿委員)
兩方ニ掛ル樣ニナレバ宜シイノデス
(松岡委員)
下ヘ廻ハセバ宜シイ
(今村報吿委員)
下ヘ廻ハシタラ穩カデ御座イマセウ
(松岡委員)
併シ此レハ「佛蘭西ニ於テモ稀ナル如ク日本ニ於テモ亦鮮少ナルヤ疑ヒナカルヘシ」ト註ニモアリマス
(委員長)
用收權ヨリハ此方ガアルカモ知レヌ
(栗塚報吿委員)
アツテモ人權デ、物權デハアリ樣ガ御座イマセン
(今村報吿委員)
佛蘭西デハ自分ノ使用及ビ眷族ノ使用ニ要用トスル丈ケナラデハ要求スルコトハ出來マセン
(松岡委員)
日本語デ云フト「程度丈ケニ限ル」ト云フノカ
(栗塚報吿委員)
然ウデス
(今村報吿委員)
「程度」ト云フ字ガアレバ、例ヘバ私ガ月々百圓ノ生活ヲシテ行ケバ、百圓丈ケノ相應スル需用ハアツテモ宜シイガ、ソレヨリ餘計ハイカヌノデス
(松岡委員)
スレバ下ヘ廻ハシテ兩方承ケル方ガ宜シイ
(委員長)
「程度」ト云フ字ヲ削テ仕舞タラ見宜イダロウ
(松岡委員)
刪テモ差支ハナイ
(栗塚報吿委員)
之ハ「レストレー」ト云フ字デ「限ル」何々ト云フノデスガ「限ル用收權」トモ申セマセヌ
(村田委員)
制限アル用收權デスカ
(栗塚報吿委員)
左樣デス
(委員長)
仕舞ヒニ「程度」ト入レテ宜シイ
(今村報吿委員)
「使用者、及ヒ其家族ノ需用ノ程度ニ限ル」トシテ宜シイ
(委員長)
ソレデ宜シイ、先キヘヤリマセウ
第六百十七條朗讀ス
第六百十七條 使用權及ヒ住居權ノ程度ヲ定ムル爲メ使用者ノ家族ヲ組成スル者ト看做スモノハ使用者ト同居スル其正當ノ配偶者其正當養私ノ卑屬親又ハ尊屬親及ヒ此等ノ者ノ隨身ノ僕婢ナリ〔第六百三十條及ヒ第六百三十二條〕
(栗塚報吿委員)
之ハ「ボアソナード」カラ申シテ參タノデ、大變ニ變リマシタカラ御覽ナスツテ下サイ
(尾崎委員)
「私」ト云フハ妾カネ、私生ノ子カ知ラヌ
(村田委員)
「私ノ」ハ私生ノコトデ、妾ノ子ハ皆ナ私ノデ御座イマス
(尾崎委員)
「私ノ」トアルハ私生デスカ
(南部委員)
私生デアリマス
(栗塚報吿委員)
起案者ノ改メテ參ツタノハ「尊屬親及ヒ使用者又ハ此等ノ親屬ニ附着シタル僕婢ナリ」トアリマス
(今村報吿委員)
親屬ニ附着シタノデハナイ、親屬ノ身ニ附着シタノデアリマス、例ヘバ私ガ水屋ヲ開キ、水屋ノ番頭ハ這入ラヌ、私ノ使ウ小間使ヒ、卽チ身ニ附タモノデナケレバナラヌ
(松岡委員)
日本ノ妾ハ月給ヲヤルカラ宜シイカ
(今村報吿委員)
或ハ人力車夫デモ宜イ、店ヲ開キ番頭ヤ小僧ハイカヌ之ハ「使用者又ハ此等ノ親屬ノ隨身ノ僕婢ナリ」トシテハドウデスカ
(村田委員)
正當ト云フカラ、兄弟姉妹ハ這入ラヌデセウネ
(南部委員)
這入リマス
(今村報吿委員)
一家ヲ形チ造ツタ所ヲ云フノダカラ兄弟ハ這入ラヌ
(委員長)
兄弟叔母叔父ガ這入ラヌト困ルダロウガ一緒ニ這入ル書キ分ハナイカネ
(今村報吿委員)
歐羅巴流儀デハ、ソンナ者ハ這入ラヌ積リデス
(委員長)
ケレドモ日本デハ然ウデナイ
(今村報吿委員)
日本デハ弟ハ兄ノ脛ヲ咬ルノハ普通ノ話シデ、私抔モ一人アリマスガ、歐羅巴ハ例外デ、親デモ別ニシテ仕舞テ居ル位ナモノダカラ
(委員長)
歐羅巴ハ然ウダロウガ、日本人丈ハ入レ樣ヂヤナイカ
(今村報吿委員)
日本デハ入レルガ良イカ惡イカバ、一問題デアリマス
(委員長)
隨身ノ僕婢迄這入テ居ルカラ、日本流儀デハ兄弟抔ハ仕方ガナイモノト思フ
(栗塚報吿委員)
養料ノ定メデ、養料ノ義務ヲ人事編ニ入レテ、親屬ノ縁因ハ恰度佛國例ヲ見タ樣ナモノガ養料ヲ給スルノ義務ノ所デ分ロウト思ヒマス
(委員長)
此處ニ立派ニ書イテアルト、使用權住居權ノ中ニハ兄弟甥姪ノ如キハ關係ナイモノニナロウ
(今村報吿委員)
兄弟ヤ叔父ヤ叔母ヲ入レルヤ否ハ皆サンノ御議定ラ願ヒマス、私ハ入レナイ方ガ宜カロウト思ヒマス
(南部委員)
之ガ成立マスレバ、ソレマデニ調ベテ提出致シマセウ
(渡委員)
ソレガ宜イデセウ
(今村報吿委員)
一家ヲ形チ造テ居ル中ハ夫婦ニ子ニ親許リデ、僕婢ハ犬ヤ何カヲ飼フ積リデ這入テ居ル、ソレヲ入レル爲メニ叔父ヤ叔母ヲ入レルノハ困リマス
(委員長)
例ヘバ貴君ノ兄弟ガアル、親父ガアレバ兎モ角モ、無イモノトシタナレバ、貴君ノ弟トカ妹ガアツテ其人ガ歐羅巴ノ樣ニ獨立シテ行ケバ宜シイガ、日本デハ誰レモ弟ハ兄サンニ隨テ居ル其人ガ這入ラヌト困ル
(今村報吿委員)
若シ使用權ヲ與ヘル人ノ考ヘニシテモ、高々自分ノ親トカ、夫婦ト見當ガ付クケレドモ、ソレヘ叔父ヤ叔母ガ付着イテ居ルトキハ使用權ヲ與ヘル人ノ考ヘガ違ツテ來ル
(栗塚報吿委員)
一寸申上マスガ、佛蘭西デハ兄弟ノ間ニ養料ヲ給スル義務ハナイノデ、日本人ノ眼カラ見レバ如何ニモ酷薄デ、唯ダ尊屬親、卑屬親、夫婦許リデ、其餘ハ死ンデモ權ハヌト云フ不都合ノ民法デ御座イマスカラ、我々ノ風俗ニハ適ヒマセヌ、我々ノ風俗ニ適フ樣ニスルニハ、矢張リアレヲ御極メニナツテカラデ宜ウ御座イマセウカラ之ハ御預ケガ宜ウ御座イマセウ
(松岡委員)
預ケルナレバ宜シイ
(村田委員)
刑法、治罪法ニ親屬例ガアル彼ノ位ノモノハ之ヘ這入ルダロウ
(今村報吿委員)
畢竟日本人ハ獨立シタ者ガ少イ、三千七百萬人アツテモ本統ニ獨立シタモノハ最モ少イ古來ノ慣習デ、出テ行ケト云フコトハ出來ナイガ、法律ガソレヲ保護シテヤル方ガ惡クナルデアリマセウ
(委員長)
ケレドモ慣習ヲ法律ハ破ルコトハ出來マセヌ
(淸岡委員)
然ウ云フ厄介者ニナラヌ樣、初メカラ教育シテヤレバ宜シイ
(松岡委員)
ソレヲ云ヒ詰メレバ子孫ニ教育シテ生活ノ目的無イ奴ハ婚禮ヲ止メロト云ハナケレバナラヌ
(今村報吿委員)
勿論デス
(栗塚報吿委員)
ソレハ理窟丈ケデス
(渡委員)
南部サンノ說ノ樣ニ之ガ愈々用ヒラレレバ夫レマデニ報吿委員デ、相應ノ見込ヲ附ケテ提出スルヤウニシテ、姑ク預リガ宜ウ御座イマセウ
(委員長)
ソレガ宜ウ御座イマセウ
第六百十八條朗讀ス
第六百十八條 設定證書又ハ設定以後ノ合意ヲ以テ土地ノ使用權行用ノ方法ヲ定メス又ハ住居權ヲ行フヘキ建物ヲ定メサルトキハ當事者立會ノ上裁判所ハ其意見ヲ聽キテ之ヲ定ム〔第六百二十八條及ヒ第六百二十九條參照〕
(南部委員)
使用權、住居權ハ賃借權ニハ不適當デ御座イマスカラ皆削除致シマス
(松岡委員)
宜ウ御座イマスネ
(委員長)
先キヘヤリマセウ
第六百十九條朗讀ス
第六百十九條 使用權及ヒ住居權ハ之ヲ讓渡シ又ハ之ヲ賃貸スルコトヲ得ス〔第六百三十一條及ヒ第六百三十四條〕
(松岡委員)
之抔モ要ラヌラシイナ
(村田委員)
之ヲ置タ以上ハ入用デセウ
(西委員)
使用借モ出來マセヌカ
(南部委員)
出來マセヌ
(西委員)
若シ用收權ガ成立バ脫ケヤセヌカ
(南部委員)
本文カラ見レバ出來ル樣ニナル
(西委員)
併シ出來ナイノデセウ
(栗塚報吿委員)
讓渡シテ出來ナイ樣ニナリマス、家屬ト私ガ一緒ニ住居權ヲ持テ居ル、私ガ一人死ンダトキ家族ハ一人モ死ナナイトキ、消滅ハシナイカ知ラヌ
(南部委員)
消滅スル
(今村報吿委員)
無論消滅シマス
(鶴田委員)
主ガ死ンデ見レバ從ハ仕方ガ無イ、消滅ダ
(委員長)
宜シケレバ先ヘヤリマセウ
第六百二十條朗讀ス
第六百二十條 使用權又ハ住居權ヲ有スル者ハ用收者ト同シク移動物ノ目錄及ヒ死動物ノ形狀書ヲ作リ竝ニ保證人ヲ立ツヘシ〔第六百二十六條〕
 又用收者ト同一ノ注意ヲ爲シ及ヒ自己ノ過愆ニ付キ之ト同一ノ責ニ任スヘシ〔第六百二十七條〕
 又用收者ト同シク其收益ノ割合ニ應シ修繕、每年ノ負擔及ヒ訴訟入費ヲ分擔ス〔第六百三十五條〕
(栗塚報吿委員)
「分擔」ト云フ字ハ原文デ何ウアロウカト思フニ、矢張リ「コントリビユー」卽チ「分擔」デ誰レガ分擔スルノカナレバ、用收者ノ如ク分擔スルノデ之ハ筆ノ誤リデハ御座イマセン
(今村報吿委員)
用收者ノ如ク、修繕費モ負擔シ、訴訟入費モ分擔シ、丸ツキリ拂フカ、些ツトモ拂ハヌカ、二ツニ一ツデ御座イマス
(松岡委員)
利息ヲ拂タリ何カスルカ
(村田委員)
私ハ此處ハ然ウデナイト思フ「同シク」ト云フ字ハアルガ併シナガラ使用權ノ外分擔スルト云フノデハアリマセンガ用收者ナレバ全ク擔任スルトカ、使用者ナレバ分擔デ宜シイ
(栗塚報吿委員)
收益ニ應ジテ分携スルラシイ
(村田委員)
用收者ナレバすつぱり擔任スルケレドモ、使用者ノ方ハ分擔デ宜シイ、其處ガ用收者ト違テ居ル所デハナイカ
(栗塚報吿委員)
用收者ト同ジクサヘナレバ宜シイノデス
(村田委員)
「同シク」ト云フ字ニ眼ヲ着ケルカラ惡イノダロウ
(栗塚報吿委員)
原字ニハ「コントリビウ」トアルカラ「分擔」ト譯サナケレバナラヌ
(今村報吿委員)
收益ノ割合ニ應ジテ負擔スルコトハナイ、用收權ヲ負擔スルモノハ皆負擔シナケレバナラヌ、ソレハ虛有權ニ關係シタナレバ、一文モ出サヌ、二ツ一ツニナツテ居リマス
(南部委員)
村田サンノ御說ハ尤モデス、用收者ガ同ジ樣ニ負擔スル、併シ用收者ハ全部使用シテ居リ、家族ハ用收者ト同ジク割合ニ應ジテ負擔スル、使用ガ一分ニ止マルカラ、殘リハ虛有者ガ分擔シテ使用スル丈ケ使用者ガ負擔スルノデス
(村田委員)
然ウデセウ
(今村報吿委員)
然ウ讀ンダラ其規則ハ別ニ設ケナケレバナラヌ
(南部委員)
イイエ、「程度ニ限リ」ダ、用收者ト同ジトハイカヌガ、程度ガアルカラ割合デヤル、例ヘバ百圓ナレバ百圓ハ所有者ガ負擔シナケレバナラヌモノヲ、使用權ナラ百圓ノ内五十園ハ虛有者ノ負擔、五十園ハ使用者ノ負擔ト云フコトヲ極メタト思フ
(栗塚報吿委員)
ソレマデ綿密ノ考ヘガ、分擔ト云フ字ニアレバ此ノ起案者ハ、一條ヤ二條ヲ增スノハ何トモ思ハヌ人ダカラ增スニ違ヒナイ
(尾崎委員)
佛蘭西ノ六百三十五條ハ南部サンノ解釋ノ通リダ
(村田委員)
然ウシナイト理屈ガ合ハヌ
(淸岡委員)
併シ餘程六ケ敷イ話ダネ
(今村報吿委員)
佛蘭西ノ民法ノ樣ニ委ハシク書イテアレバ分ル
(松岡委員)
アレデモ、文字カラ云フト無理ダナ
(鶴田委員)
使用シタ丈ケヲ分擔スルナレバこんなコトハ書カヌデモ宜シイ
(栗塚報吿委員)
所有者ノ如クニ擔任スル、併シ擔任ノ工合ハ用牧者ト違テ收益ノ部分ニ應ズルト云フコトデス
(松岡委員)
制裁スベキ法律ト云テハ之ハ置ケス
(今村報吿委員)
存スル日ニハ幾ラカ分ル樣ニ書カナケレバナラヌ
(村田委員)
私ハ佛蘭西民法ヲ見ナイデ分ツタ
(尾崎委員)
ソレハ、エライ
(栗塚報吿委員)
分擔ノ字義ハ御分リニナリマシタカ、實ニ一字千金ト思ヒマス
(今村報吿委員)
當議場デ論ヲ立テ日本ノ法律ニ之ヲ存スルト云フト、裁判官トナル人ハ此ノ七十五條ノ爲メニ一生涯ニ時日ヲ幾ラ費スカ、又統計シテ見ルト、日本人ハ之ガ爲メ餘程ノ時日ヲ費ス樣ニナリマセウ
(委員長)
之レデ宜シイカネ
(栗塚報吿委員)
之レデ用收權ハ終リマシタカラ前ニ修正ニ御下ゲニナツタ五百八條五百十條ノ修正案ヲ御議シヲ願ヒマス
(委員長)
ソレデハ五百八條ヲヤリマセウ
第五百八條修正案朗讀ス
第五百八條修正案 本性ニ因ル不動產ハ左ノ如シ
第一 田畠宅地道路築山及ヒ其他土地ノ部分
第二 原案ノ通リ
第三 溜井、湖、溝渠、堀割、泉源其他種々ノ水流
第四 堤塘、波止場、水刎及ヒ其他ノ工作物
第五 土地ニ附着シタル浴場水車場竝ニ使用ノ何タルヲ問ハス定着シタル水力若クハ蒸氣ノ機械
第六 森林及ヒ竹木其他種々ノ植物但第五百十三條ニ記載シタル培養草木ハ此限ニ在ラス
第七 原案ノ通リ
第八 原案ノ通リ
第九 原案ノ通リ
第十 土地又ハ建物ニ附着シタル筒管ニシテ水ノ流入若クハ流出ノ爲メ又ハ瓦斯若クハ溫氣ノ引入ノ爲メニスルモノ
第十一 原案ノ通リ
第十二 前ニ記載シタル建物ノ外部ノ戶扉其他總テ本性ニ因リ轉移スヘキモノト雖モ建物ニ必要ナル一切ノ附屬物
(渡委員)
「築山」ハ宅地中ニ在ル「築山」デスカ
(栗塚報吿委員)
然ウデハアリマセン
(渡委員)
築山ハ不動產ニナリマスネ
(南部委員)
宅地ハ平面ニナツテ居テモ築山ハ一般宅地デスネ
(渡委員)
ソレデ宅地中ニ築山ガアレバ不動產ニナリマスカ
(今村報吿委員)
其積リデス、何ゼ築山ヲ書イタカナレバ元ト「土」トアル、成程取テ除ケレバ普通ノ土ダガ、人工デ盛リ上ゲタ築山ハ動產カモ知レヌケレドモ、之モ不動產ト云フ爲メニ設ケタノデ、宅地ト云フニ拘ハラズ盛リ上ゲタ土モ不動產ト云フ意味デ御座イマス
(尾崎委員)
土地ガ不動產デセウ
(今村報吿委員)
宅地ニ着イテ居リマス貴君ノ御屋敷ヲ私ガ買ヒ所ガ座敷ノ前ニ築山ガアリマス、スルト此ノ土ハ私ガ來タトキ持テ來タノダカラ、持テ行クト云フト、どつこい然ウハイカヌト云フノデス
(栗塚報吿委員)
人工ヲ以テ高クシタモノダカラ堤塘デモ宜ウ御座イマス
(村田委員)
「其他土地ノ部分」ト云タラ宜サソウナモノダ
(南部委員)
築山ハ附ケタガ上ノ土ハ入レナカツタト云フコトガアリマスカラ
(渡委員)
其心配ナレバ堤塘ハ築山デナイ、「築山」ヲ除ケテ「土地ノ部分」トスレバ宜シイ
(栗塚報吿委員)
「築山」ヲ除ケテ「堆地」トカ云フモノヲ置ク方ガ宜イト云フノデアリマシタガ
(村田委員)
「堆地」ノ方ガ宜シイ
(栗塚報吿委員)
「堆地」デ分リマスカ
(村田委員)
分リマス、然ウシナイト私ノ地所ノ平坦ノ所ヘ土ヲ置クハ「築山」トハ云ヘヌ
(栗塚報吿委員)
ソレハ堆地トモ築山トモ云ヘヌガ、ソレモ這入リマス
(松岡委員)
「築山」ガアツテ「本山」ハナイカ
(栗塚報吿委員)
「本山」ハ素ヨリデス
(鶴田委員)
私ハ原案ヨリハ今ノ修正ガ宜シイト思フ
(南部委員)
「山林」ト云フト林ノヤウニナツテ不都合デス、又「山嶽」ト云フト大キナモノニナツテ仕舞フカラ止シマシタ
(西委員)
「置キ土」トシタラ宜シカロウ「築山」ト云フト築山ニ限ルカラ
(栗塚報吿委員)
「置キ土」ト云フト、動產デ不動產ニナリマセヌ
(今村報吿委員)
「築山」ト云テ、例ニ見セルノガ一番宜シイ、日本ニ取テハ堆地ト云テ分レバ宜シイガ、分ラヌデセウ
(渡委員)
堆地ハ分ルカナレバ分リマスト明言ハシ難イガ、民法ノ流義デ「堆地」ト書イテ、堆地ハ何ンデアルカト問ヲ起セバ高ク土地ヲ盛リマシタモノト云ハセタ方ガ利益ガアリハシナイカ
(南部委員)
然ウスレバ、道路ヨリハ平路ガ宜イヂヤナイカト云フヤウニナリマス
(尾崎委員)
「築山」デ宜サソウナモノダ
(委員長)
宜シイネ
(栗塚報吿委員)
第二ハ原案、第三ハ「溜井」トナリマシタ
(淸岡委員)
原案ノ「貯水場」ガ宜シイ、長短ハナイヤツダガ隨分之ハ八釜敷クナルカラ
(栗塚報吿委員)
ソレガ卽チ日本語デ「溜井」トナリハシナイカ
(淸岡委員)
熱海抔ノ池ハ「井戶」トハ申シマセヌ
(松岡委員)
池ナレバ池ダ
(尾崎委員)
「溜井」ハ田舎ニ在リマス
(南部委員)
「貯水」ハ飮料水ニ限タコトハナイ、用水ノ爲メニモアリマス
(今村報吿委員)
東京近所ニハ「水溜」ト云フガアリマス
(栗塚報吿委員)
初メ「水溜」ト書イタ所ガ、水溜メト讀ンデナラヌカラ漸々「溜井」トナツタノデス
(村田委員)
「貯水」ガ宜シイ
(淸岡委員)
御所抔ニハ「貯水場」ト云フガアリマス
(今村報吿委員)
「溜井」ト云タラ池ガ這入ラヌト云テハ困ル、矢張リ池モ這入ルノデス
(松岡委員)
之ハドウデ御座イマセウ、詰リ例ヲ擧ゲタダカラ、分リ易ヒモノ丈ケ擧ゲタラ宜シイデセウ
(栗塚報吿委員)
我々ハ原意ヲ崩サヌ樣ニシテ、矢張リ溝渠、堀割抔ハくだくだシイガ、成ル丈ケ置キタイ、「貯水場」抔ノ分ラヌノヲ「溜井」トデモシタラ分ロウト思タノデス
(淸岡委員)
例デモ、十アルモノハ、必要ナモノヲ五ツカ六ツモ擧ゲナケレバナラン
(栗塚報吿委員)
「溜井」ト書イテ置タラ何ト思ハレマスカ
(淸岡委員)
「溜リ」ト思フ
(松岡委員)
田舎デハ「溜」ト云フ
(今村報吿委員)
何處デモ「溜」ト云フ
(委員長)
宜ウ御座イマセウ、第四ヲヤリマセウ
(西委員)
「水刎」ハドウカ
(栗塚報吿委員)
地方凡例錄ヲ見ルト、蛇駕籠デ御座イマス
(松岡委員)
蛇駕籠ニハ限ラヌデセウ
(栗塚報吿委員)
限ラヌガ彼レ等デ水量ヲ削爲メノモノデス
(松岡委員)
「水刎」ハ日本言葉デハ廣イ言葉デス
(渡委員)
此ノ「刎」ト云フ字ハ首刎ノ「刎」ト云フ字デアルガドウ云フモノカ
(栗塚報吿委員)
併シ此ノ字ハ地方凡例錄ノ中ニ書イテアリマスノデス
(委員長)
宜シケレバ第五ヲヤリマセウ
(栗塚報吿委員)
日本ニ「風車」ハナイカラ「風力輾磨機」ハ削除シマシタ
(西委員)
「風車」ハ上野ニモ、今戶ニモアリマスガ
(栗塚報吿委員)
今戶ノ細川ノ邸内ニ在リマス
(西委員)
アンナモノガアリマスカラ、矢張リアツタ方ガ宜シイダロウ
(渡委員)
矢張リ入レタ方ガ宜シイ「水車場風力」ガナイト忽チニ差支ヲ生ジマス
(村田委員)
置ク方ガ宜シイ
(栗塚報吿委員)
ソレヂヤア「風車場」ヲ入レマス、之デ原文ヲ損ネズ唯ダ輾磨機ヲ風車場トシタ丈ケデ皆這入ツテ居リマス
(委員長)
宜シケレバ第六ヲヤリマセウ、土地ニ附着シタモノハナイノデスネ
(栗塚報吿委員)
「種々ノ植物」ト申セバ日本デハ分リマス
(西委員)
「土地ニ附着シタル」ハアツタ方ガ宜シイ
(委員長)
「森林、竹木其他土地ニ接着シタル植物」トシタラ宜シカロウ
(栗塚報吿委員)
第七、第八第九ハ原案デ置キマシテ第十ハ「土地又ハ建物ニ附着シタル筒管ニシテ水ノ流入若クハ流出ノ爲メ又ハ瓦斯若クハ溫氣ノ引入ノ爲メニスルモノ」ト致シマシタ
(委員長)
之ハ宜シカロウ
(栗塚報吿委員)
第十一ハ原案、第十二ヲ加ヘマシタ
(委員長)
宜シイネ
(栗塚報吿委員)
ソレカラ五百十條デ御座イマス
(委員長)
五百十條第一ヲヤリマセウ
第五百十條修正案朗讀ス
第五百十條修正案
第一 土地ノ耕作又ハ利用ノ爲メ供ヘタル獸類
第二 鋤鍬及ヒ其他一切ノ農具
第三 耕作ノ爲メ其土地ニ供ヘタル種子及ヒ肥料
第四 樹木ヲ支持スル爲メニ供ヘタル棚架杭柱
第五 農產物ヲ變體セシメ又ハ其價値ヲ有セシムル爲メニ供ヘタル器具及ヒ用具例ヘハ搾器、釜、蒸溜器、桶及ヒ樽ノ如シ
第六 原案ノ通リ
第七 庫船又ハ土地ノ常用ニ供ヘタル舟梁若クハ小舟但其水流ノ公有ニ係リ又ハ他ノ所有者ニ屬スルトキモ亦同シ
第八 園庭ニ裝置シタル石燈籠及ヒ其他ノ石類
第九 建物ニ附着セシメタルモノニシテ毀損スルニアラサレハ取離スコトヲ得サル〓額鐘彫剋物及ヒ其他種々ノ裝飾門物
第十 疊建具及ヒ其他之ニ類スル居宅ノ補足物
第十一 修復中ノ建物ヨリ取離シ再ヒ之ニ用ユヘキ材料
(渡委員)
宜シイ
(栗塚報吿委員)
原文ノ意味ヲ改メタカナレバ決シテ改メマセヌ唯ダ講釋ヲ除イタ丈ケデス
(委員長)
第二ヲヤリマセウ
(栗塚報吿委員)
第二ハ前ニ這入テ仕舞ヒマスカラ除イテ仕舞ヒマシタ「第二鋤鍬及ヒ一切ノ農具」トナリマス、此コトニ付テハ報吿委員中ニモ斯ウ云フモノヲ、日本デ以テ、用方ニ因ル不動產ト看做ス必要ガアルカ否ヤ結句之ヲ動產ト見ルガ宜シイデハナイカト、抑モ動產ヲ不動產ト云フノハ餘程理由ガナケレバナラヌ動產ト云フ物ヲ不動產ト云フノハ農業ヲ奬勵スルト云フ原案ノ意デアルガ、日本ノ風俗デ左樣テアロウカ、農業ノ爲メニモセヨ、獸類ノ如キモノヲ不動產トスルノハ日本人ノ感覺ニ於テ如何デアロウカト云フ論ガ御座イマシタ
(淸岡委員)
之ハ前ニモ論ガアリマシタ、日本デハ田畠ヲ賣ニ鋤鍬マデ賣タト云フコトハ出來ナイ、併シ小金ノ開墾、那須野ノ開墾抔ハ或ハアルカ知レヌガ普通ノ場合デハ決シテ無イ、之ヲ入レテ置クト幾分カ事ヲ生ジ樣ト思ヒマス
(箕作委員)
成程之ヲ入レテハ訴訟法ノ財差押ノ時分論ガアルラシイ
(今村報吿委員)
參考ニマデ申シマスガ、「ボアソナード」ノ頭ノ裡ニハ斯ウ云フコトヲ考ヘタロウト思ヒマス、佛蘭西流義ノ耕作ノ仕方ヲ以テ書イタモノデ、日本流義ノコトヲ知テ居タカドウダカ、彼方デハ或ハ一町、或ハ二町ト云フ團結ガアツテ、其隅ニ百姓小屋ヲ置テ、牛モ馬モ居リ、或ハ豚モ羊モ居ル、ソレニ百姓ガ居テ、馬ハ五頭ナリ十頭ナリヲ以テ耕シテ居ル、ソレデ此ノ地面クツ着イタモノデアルカラ、ソレヲ不動產ト見ルノデ、此案デモ五百十條ノ本文ニ「前條ニ從ヒ用方ニ因ル不動產ハ左ノ如シ」トアル、前條ハ九條デ九條ニ「建物ニ供ヘタル」トアリマス、今ノ樣ナ所ヲ「ボアソナード」ガ頭ノ中ニ持テ居テ書イタモノト思ヒマス、所ガ日本デハ小金、那須野ノ開墾ニハ百姓等四五十人居リ馬モ二三十ハ居リマス又北海道ニモアリマセウガ、内地デハ一反作リ、或ハ大キク作ル百姓デモ、切レ々々ニ作ルカラ、ソレハ小屋マデ造テ馬ヲ置クコトハナイ、農具ハ重モニ庭ノ隅ニ鍬ガ掛ケテアリ鎌ガアル、鋤モアル、銘々自己ノ家ニ供ヘテアル、何ノ地面ノ品ト云フコトハナイ、其ウ云フ場合ニモ之ヲ當テ嵌メルト、妙ナコトガ起テ來ヤアセヌカト云フ、ソレカラ元來農作ノ仕方ガ少シ許リ歐羅巴ト以テ居リマスガ、大部分ハ歐羅巴トハ違ウダカラ一、二、三其他先キニアリマセウガ、斯ウ云フモノヲ悉ク法律ガ不動產トスルノハ、日本ニ取テ益アツテ害ガナイト云フ場合デナケレバナラヌ果シテ宜シイカ惡イカ參考マデ申マス
(南部委員)
私ノ考ヘマス所デハ、土地ノ耕作利用ノ爲メ供ヘタ土地ニ屬シタモノデナケレバイカヌ、ソコデ三反、四反、田地ヲ持テ居ルモノノ田地ヲ悉ク賣テ仕舞フ場合ニ於テ、十町ナレバ十町ガ爲メニ供ヘテ居ル、獸類ナレバソレハ田地ガナクナツテ仕舞ヘバ獸類モ入ラヌノダカラ、一緒ニ不動產トシテ宜シイガ、實ハ私ノ考ヘルニ「爲メニ供ヘタル」ト云フ字ヲ重ク見テ、第三ノ農具ノ所ヘ行テハ必ラズ土地ノ耕作ノ爲メ供ヘタ農具ト云フコトヲ明カニシマシタラ習慣ニモ牴觸スルコトナク、又開墾地ノ場合ニ於テモ一緒ニ不動產ニナルカラ、幾ンド都合宜イコトニナリハシナイカト思ヒマス
(箕作委員)
ソレハ斯ウ云フ不都合ガアロウ、土地建物ニ供ヘタルモノハ用方ニ因ル不動產ト云テ、鋤鍬ノ樣ナモノハ何トマ云ハズトモ、卽チ五百九條ニ依テ土地ニ供ヘタモノト看做シ十把一トカラゲニ看做シ、總テ鋤鍬獸類ハ看做ストナル
(南部委員)
看做スハ、何ゼ看做スカ、必ラズ、土地耕作利用ノ爲メデナケレバナラヌ
(箕作委員)
然ウハ解セナイ、何ゼナレバ鋤鍬獸類ハ五百九條デ土地ニ供ヘタモノト法律ガ看做スト、書イテアリマス、其ウ云フ風ニ「ボアソナード」ガ書イタモノト見ヘル
(南部委員)
併シ只今譯ニナツテ居ル將ニ法律トナラントスル文デハ私ノ解シタ樣ニモ見ヤアシマセヌカ
(箕作委員)
然ウデナイ、凡ソ鋤鍬土地耕作ニ供ヘタ獸類ハ何ニ拘ハラズ十把一トカラゲニ土地ニ供ヘタ用方ニ因ル不動產ト云フ
(南部委員)
土地ニ供ヘナケレバナラヌ
(箕作委員)
耕作ノ爲メニハ違ヒナイ、併シ百姓ノ牛馬ハ土地耕作ノ利用ニ適ヒナイ、ソレモ不動產ト看做スニ不都合ダ
(南部委員)
田地ヲ三町持テ居ル百姓ガアル、其土地ニ一町ニハ牛馬ガ供ヘテアル、區別シテアレバ宜イガ、區別シテナイトキハ三町ノ田地ヲ持テ居テ一町ノ田地ヲ賣テモ適用ガ出來マセヌ
(箕作委員)
殘ラズ賣タトキハ附着イテ行クトスレバ、契約シテ土地ヲ賣テ什篇舞タトキ、鋤鍬モ一緒ニ賣タト思フダロウガ、契約ガナケレバ別ノモノダロウト頭ノ上ニ考ヘテ居ルダロウカト云フト、習慣ノ上デハ一緒ニ附テ行クモノデナイト考ヘテ居ルダロウ
(南部委員)
此處ニナルト法律ヲ布ク以上ハ之丈ケノコトハ充分ニ知ラナケレバナラヌ、此處許リデハアリマセン、又知タトスレバ契約ヲシマス
(箕作委員)
ソレハ何方ガ本統ダト云フノデス、小金ノ樣ナ土地ニ附着シタモノヲ例外ニスルカト云フ問題デ御座イマス
(村田委員)
今日ノ慣習デハ、附テ行カヌノガ慣習ダロウ
(南部委員)
種々アルデセウ
(村田委員)
五百十條ニ「反對ノ證據アルトキハ此限ニアラス」トアルカラ無論習慣ガ證據ニナルダロウ
(栗塚報吿委員)
私ハ變ナ話ダガ茶畠ヲ買ヒマシタガ其時分茶焙小屋ガアツテ、中ノ焙爐モ皆附ケテ賣マシタ、何ゼ賣ルカナレバ賣タ人モソレヲ以テ紙屑屋ヘ賣テモ金ニナラヌノデ、附ケテ賣タ例カアリマス
(箕作委員)
別段ニ賣タノデスカ
(栗塚報吿委員)
默ツテ賣リマシタ焙爐ヤ何カ殘ラズ附ケテ賣リマシタガ、併シ錢ニスレバ五圓ニモナラヌ位デアリマシタ、向ウデモ他ヘ賣タ所ガ仕方ガナイ
(松岡委員)
ソレハ湯屋行キダカラデセウ
(栗塚報吿委員)
ソレカラ手桶ト車ガアツタ、ソレモ付テ賣リマシタ
(今村報吿委員)
ソレハ僅々タル例ダガ、一體問題ハ此ウ云フコトハ至極宜カロウト感ジタカラ參考ニ申スガ、此通リ法律ガ極マレバ日本デ百姓ガ、三反ナリ五反ナリ持テ居テ、牛ヤ馬ガ居ル、所ガ其田地ヲ賣タトキ、豈計ラン主タルモノヲ賣タ爲メニ從タルモノガ附テ行クトキハ民法ヲ心得タ奴ハ我レノダカラ、ヨコセト云テ取ラレテ仕舞フ惡ク云ヘバ民法ガ竊ンデ仕舞フノデス
(淸岡委員)
之ハ先ヅ此方ノ慣習ニ從テ宜シイ
(栗塚報吿委員)
全ク農業ヲ奬勵スルノ意旨デアリマス、若シ動產トシテアレバ鋤鍬ヲ差押ヘラレ、田地ヲ差押ヘラレタト同ジ結果ニナルカラ、農業ヲ保護スルノデ農具ヲ不動產トシタノデアリマス
(箕作委員)
財產差押ノコトハ用方ニ因リ不動產ニシナケレバナラヌ理由モアリマセウガ、併シ佛蘭西ノ如ク動產差押ハ出來マセンデセウ、起草ニナツタ訴訟法草案ニモ區別ハナシ、又今「モツセー」モ獨逸流ニヤルニ違ヒナイ、不動產ハおつくうナリ、動產ハちよこちよこヤル流義ノ訴訟法ハ行ハレヌト思ヒマス
(南部委員)
然ウハ行キマスマイ、今起案ニモ動產差押ト不動產差押トハ手數ガ大變違ヒマス
(箕作委員)
ソレハ違ウデセウ、併シナガラ動產ナレバ然ウ輕ク不動產ナレバおつくうデ、其おつくうノ爲メニ佛蘭西流義程ノ違ヒハアリマスマイ
(南部委員)
併シ分離サセヌ方ニ理屈ヲ附ケタ方ガ便利デモアリ公益上ニモナロウト思ヒマス、分離スレバ稅ノ徵收抔ニ於テ動產ノ方カラ賦課サレテ、鋤鍬牛馬ガ無クナツテ仕舞ヒ、田地許リ存シテアツテハ困ル、又田地許リ無クナツテ鋤鍬牛馬許リ殘テモ困ツタモノデ、ソレヨリ寧ロ不動產トシテ一緒ニ行クカラ斯ウ云フ事柄ガ施行ニナルカラ、充分百姓ニ知ラセル方法モ行政ノ細則デ出來樣ト思ヒマス、今年發布ニナツテ直グ施行スルノデアリマセヌカラ、ソレハ隨分知ラセルコトハ出來ヤウト思ヒマス
(箕作委員)
ソレハ出來マセウガ、容易ニ知レルモノデナイ、今日ノ習慣ハ甚ダ惡イト云テ立法者ガ改革スルノ必要ガアロウカ、決シテ然ウデナク、今日ノ儘ニシテ反對ノ證據アルトキハ土地ニ附着イテ行ク樣ニスル方ガ宜カロウト思ヒマス
(今村報吿委員)
モウ一應注意マデニ申マスガ、「ボアソナード」ガ農業ヲ奬勵スルト云フコトハ此法ガ宜シイト云フコトヲ申シマシタガ其外日本デハ功能ガナイト云フノハ九條ニアリマス、不動產ノ所有主ガ自分ノ地面ヘ供ヘタノデナイト不動產ニナラヌ、所ガ日本ノ百姓ト云フモノハ自分ノ地面ヲ自分デ作テ居ル奴ハ楚ニ少ヒ、多クハ小作人デス、自分ノ地面ヲ自分デ作ル奴ハ鍬一挺押ヘラレテモ困ラヌカラ、寧ロ助ケルナレバ自分デ地面モ持タナイ奴ヲ鍬一挺デモ押ヘラレナイ樣ニシナケレバナラヌ
(南部委員)
ソレハ一槪ノ論デ、小作人許リト見ル譯ニハイカヌ
(村田委員)
私ハ原案ガ宜シイ、一體動產ナルコトハ知レ切テ居ルガ、動產デモ用方ニ因ル不動產ダカラ、斯ノ場合ニハ卽チ唯ダノ動產デハナイ、用方ニ因ル不動產デアルトスレバ宜シイ、若シ知ラズニ約束シタトキハ慣習デハイカヌゾ、ト云フ條項ヲ示セバ宜シイ
(今村報吿委員)
ソレハ慣習ガ之ニ反スレバ此限ニ在ラズトシナケレバナラン
(松岡委員)
私ハ箕作サンノ說ガ適當ト思ヒマス、一寸行ツテ見レバ地面ヲ賣トキハ、牛モ馬モ附テヤルガ宜シイ習慣ガ無クモ教ヘルガ宜イト云フト、小作ヲスル人間ニハ何時デモ附ケテヤルガ宜イトナル、凡ソ日本ノ小作人デ牛馬ヲ地面ニ附ケテヤルモノハ曾テナイ、若シ正面カラ必要ナ物ハ附クベキ正則ダト云フト、天下中ノ習慣ニ反スルコトヲ行ハセル結果ニナル、ソレカラ又差押ト云フコトガアリマスガ、併シアレハ何デ御座イマセウ、鋤鍬抔ノ差押ヲスルト云テモソレ許リ押ヘレバ、其人ノ自分デ其人ノ必要ノ物ハ除クト云フ法ガ立ツダロウト思フ、前條ノ所デ五百九條ニ「永遠又ハ不定ノ時間ナリ」トアツテ供ヘ付ケタモノハ不動產ト云ヘバ、此ノ所ハ云ハヌデ宜シイ、日本ノ鋤鍬牛馬ハ地面ヘノミ專ラニ用ユルモノハ甚ダ少イ、先刻今村サンノ云フ通リ歐羅巴ノ獨逸佛蘭西ノ樣ニ、十町モ二十町モアツテ、四頭馬車デ耕シテ居ルノヲ見テ居ル法律ヲ知テ居ル人ガ、日本ノ習慣ヲ知ラヌデ拵ヘタラ、自然撞着スルダロウ、此處ハ何ントモ云ハナケレバ、小サイ百姓ガ牛馬ヲ一頭ヅツ持テ居テモ、農作許リニ用ユル□ カ三反□ ヲ賣レバ半馬ヲ持テ居テモ無駄ダカラ附ケテヤルト云フノハ大違ヒデアリマス小百姓ガ牛馬ヲ耕作ニ用ユルハ勿論ダケレドモ農間駄賃稼ギ抔ニ牛馬ヲ用ヒ、又其間ニハ所ニ因リ、山ヘ柴刈リニ連レテ行クナド種々薩多ノ用方ガアツテ、獨リ耕作ニノミハ使ハナイ、大キナ百姓ナレバ地面ノミニ用フルケレドモ、何ノ地面ニ供ヘテアルト云フモノハナイ、近頃開墾ノモノニハ多少アロウケレドモ、ソレヲ見テ極メヌデモ宜シイ、賣買ヲスルトキ、牛馬ガアレバ相對デ契約ト云フモノガ出來テ來ル、依テ此等ハ習慣ヲ大切ナモノト云ハナケレバナラヌ、之ヲスレバ農業ヲ奬勵スルノ道ト云フハ、實際分ラヌ話デ、其意味モ分ラヌ、到底此處ハ箕作サンノ御說ハ至極適當デアルト思ヒマスカラ贊成致シマス
(栗塚報吿委員)
尙ホ皆サンニ佛蘭西ノ書物ヲ五行許リ意譯シテ申シマスガ、何ゼ佛蘭西法デ農具トカ搾器トカ釜トカヲ斯ウ云フモノニシタカト云フト、全ク債者負債者ノ權利モ保存スル樣ニナル、農業ノ奬勵ハ「ボアソナード」ノ註譯ニモ御座イマス、佛蘭西ノ法律ニ從ヘバ動產ノ差押ハ短カクシテ、不動產ノ差押ハおツくうデ御座イマスカラ、誰レデモおツくうデナイ動產ノ差押ヲ行フガ當然デ、不動產ノ差押ハ入費ガ掛ルノデ、皆ナ動產ノ差押ヲ希望致シマス、ソコデ半馬ノ如キモノ又ハ都テノ道具ヲ差押ルニモ不動產ニナツテ居ルト動產ニナツテ居ルトデハ、動產ノ方ガ都合ガ宜イト、二ツノ不都合ガ生ズル、第一ハ牛馬道具ガ無イト田地ハ何ニモナラヌ、耕スコトノ出來ナイ恐レガアリ、又一ツニ農具ヤラ何カガ附イテ居ラヌト、土地ノ價モナシ、又馬ヤ農具ヤラハ土地カラ離シテハ價値ガナイ、雙方合體シテ居ルト、双方價値ガアルモ、引離シテハ之ヲ差押テモ價値ガナイ、價値ガ無ケレバ差押タ人ノ損ニナル、又押ヘラレタ者モ損ダカラ始終離レズシテ置ケバ雙方ガ宜シイ、之ハ「ボアソナード」ガ云テハアリマセンガ一ト理屈アロウト思ヒマス
(淸岡委員)
ソレハ彼方デハ必要デセウ
(栗塚報吿委員)
其理屈ハアロウト思ヒマス
(渡委員)
ソレハ其レニ相違ナイガ、然レドモ日本ノ慣習ニ無イヲ賣者ハ農具マデ附テ賣ルガ便利ナリト云フコトハ慣習ニ無イト斷言シテ宜シイ、ソレハ何ゼカナレバ今村君ノ言バレル通り元ト歐羅巴ノ土地ノ賣買ト日本ノ賣買トハ違ヒ、又耕スノモ日本ノトハ違ヒガアロウ、歐羅巴ノハ田地ヘ農具モ牛馬モ供ヘテアルガ、日本ノハ彼地ノ畠ヘモ是地ノ畠ヘモ持出シテ耕スカラ、ドウシテモ不動產トシテハナラヌ、動產デ置クガ宜シイ、附ケテ賣ルガ便利トスルナレバ、賣ルトキ附テテ賣ガ宜シイ、ソレカラ又動產ニシテ置クト蟹ノ手ヲ剥ガス樣ナ困難ニ陷ルト云フ、其點ニ至ルト農ヲ奬勵スル爲メニ土地ニ附ケテ賣ラナケレバナラヌト云フガ不動產ニセズ、動產ニシテ差押ヘラレテモ夫レニ因テ土地ガ不毛ノ地ニ陷ツテ仕舞フト云フコトハ決シテナイ、其モノガ租稅ノ爲メニ差押ラルルコトハ、獨リソレ許リデハナイ、況ンヤ日本ニ從來シテ居ル慣習ヲ僅々タルコトデ破ツテ仕舞フコトハ出來ナイ、ドウシテモ動產ニ極メテ居ル
(南部委員)
種々御說モアリマシタガ、用方ニ因ル不動產ヲ置カナケレバ格別、已ニ置イタ以上ハ用方ニ因ル不動產ヲ擴張シナケレバナラヌ、用方ニ因ル不動產ハ差押ノ區別、其他種々ノ關係ヲ有シテ居ルモノデ、已ニ用方ニ因ル不動產ヲ置ク以上ハ大槪各國ノ法律ニモアルシ、殊ニ佛蘭西法律ニ類似シタ箇條ヲ具ヘタ方ガ追追内外ノ交際モ親睦ニナレバ必要ナコトガアロウト思ヒマス、若シ之ガ削除ニナレバ多分此邊ニ削除ノ箇條ハ幾ラモ出來マス、スルト用方ニ因ル不動產ノ種類ハ僅カニナル、然ウスルト用方ニ因ル不動產ヲ置テ區域ヲ廣クシテ、便益ヲ與ヘル旨意ガ無クナツテ仕舞フコトニナル、ダカラ私ハ慣習ヲ破ロウトモ、之ハ知ラセル道モアル、段々農業モ開ケテ來ルカラ、其トキニ方テ差支ノナイ樣ニ今日カラ御定メニナツタ方ガ宜シカロウト思ヒマス
(渡委員)
其點ニ至テハ一言演ベナケレバナラヌ、外ノコトハ追々開明ニナリ、内地雜居トカ云フコトニナレバ、餘程社會ノ景況ハ變テ來ルダロウト思フ、從テ歐羅巴ノ方法ヲ日本ヘドウシテモ植ヘ付ケテ置カナケレバナラヌ要用ガアロウ、然ルニ土地ニ付テハ農具牛馬ヲ附ケテ置カナケレバナラヌカト云フト、今村君ノ例ノ如ク歐羅巴デハ一反ヤ一畝ヤソコラノモノハ誠ニ稀レデ、絕ヘテ無イト云フ位デ、十町トカ、二十町トカ云フ土地ノ賣買デアルカラ、地面内ニ牛馬小屋アリ、百姓モ住居シテ居ル、皆一所ニ在ルト云フ位ノモノデ、此コトハ縱令内地雑居トナツテモ日本ノ耕作人、其他百姓ノ慣習ガ直チニ變ジテ、是カラ耕作人ハ一町以上十町ノ地面ヲ持テ農業ヲ爲ルコトニ變ズルト云フコトハ決シテ望ムベカラザルコトデアロウ、此慣習ハ内地雜居ニナツテモ變ラヌト思フ、成程今後ノ所ハ變ジテ、田地ヲ持テ居ルモノ十町以上ニナレバ格別、今日ノ有樣デハ迚モ五十年ヤ百年デハ望ムベカラザルコトデアロウ、ソレハ外國人ガ土地ヲ買テ十町以上ニ及ブハ別段デアルガ、之ハ百中ノ一、或ハ千中ノ一デ、多數ハ從來ノ慣習ハ一反カ二反ニ過ギナイ、此慣習ハ變ラヌト思フ、ソレニ持テ來テ土地ヲ賣タトキハ農具モ馬モ附イテ行クモノトスルハ、間違タモノト思フ、此ノ慣習ハ破レナイ、此佛蘭西法律ハ日本ニ容レラレナイ
(村田委員)
然ウスルト、用方ニ因ル不動產ハ皆削ラナケレバナラヌ
(淸岡委員)
之ハ畢竟便利ノ爲メニ賣ル者モ買ウ者モ、便利ト思ヘバ離レテ置イテモ自然ト付着イテ仕舞フ
(渡委員)
法律ガ看做スノハ宜クナイ
(箕作委員)
之ヲ削テモ、用方ニ因ル不動產ハ日本ニ無イト云フコトハアリマスマイ、又之ヲ削テモ日本ノ民法ノ缺點ト云バレル氣遣ハナイ、ソレヲ云フナレバ用收權ノ如キハ害有リト云テ熱心ナル論者ガ多ヒガ、之ハ佛蘭西ニモアレバ、英國ニモ、獨逸ニモアルナレバ、日本ノ民法ノ形容ニ存シテ置キタイト云フ議論ガアレバノコト強テ益ガ無クツテモ、慣習ニ背イタコトナレバ反對ノ證據ヲ顛倒ニシテ存シテ置コウト云フ位デス
(南部委員)
用收權ノ所トハ違フ、用收權ヲ置ケバ大變害ガアルノデ、置キ度イケレドモ無據削除ト云フコトニナツタノデ、所ガ此場合ハ違フ唯ダ習慣ガ無イ丈ケデ、之ヲ百姓ガ心得サヘスレバ害ハナイ、實際行ウベカラザルモノデナイ、然ウシテ見レバ削ルベキモノデナイ
(箕作委員)
害ハ用收權程デハアリマスマイガ、慣習ニ背クノハ大變害ニナリマス
(栗塚報吿委員)
只今可否決ヲ採ルコトナレバ今一言演ベタイ、先キ逹テカラ渡サンノ御說モアツテ、歐羅巴ハ大キナ地面デ、日本ハ小サナ地面デ、ドウ斯ウト仰セラレルガ、之ハ耕地ノ大小論デハナイノデ御座イマス、恰モ大岡捌キニ金貸シガ大工道具ヲ押ヘタコトヲ、大岡ガ扱ツテ、ソレハ金ヲ返サヌハ不調法ダ、併シ大工ガ道具ヲ押ヘラレタ間ハ大工ガ出來ヌカラ差押ヘタ丈ケノ償ヒハセレ、ソレデ、跡金ガ足ラヌトキハ取レ、ト云タノデ、金貸ガ大工ノ道具ヲ押ヘタノデ叱ラレタト云フコトガ書イテアリマシタガ、恰モ之ニ類シタコトデ、農具ヲ差押ヘルコトハサセマイ、不動產トシテ置イタラ不動產ヲ差押ヘルハ宜シイガ、農具ヲ差押ヘルコトハナラヌト云フノデ、土地ノ多イ少イヨリモ、動產トシテ置イタラ輒ク人ガ來テ、恰モ大工道具ヲ押ヘラレテ其日カラ困ル樣ナコトハシタクナイト云フ精神ガアルノデ、決シテ土地ノ大キイ小サイノ論テナイカラ、參考マデニ申シマス
(松岡委員)
今大岡越前守ノ例ガ出マシタガ、之ハ併シ權利執行デ、權利者ガ差押得ルト、得ナイモノノ分チヲスレバ宜シイノデ動產不動產ノ性質ニ因テ分ケレバナラヌコトハナイ
(栗塚報吿委員)
若シヤ佛蘭西ノ如キ民法ガアレバデスガ決シテ其條ガ御座イマセヌ、民法ノ不完全ヲ訴訟法ガ補タノデ御座イマス
(松岡委員)
決シテ然ウデアリマセヌ、動產不動產ノ區別カラ起ルト云ヒ樣ハナイ、先刻カラ申ス報吿委員ノ注意ハ差押ヘル時分丸デ蟹ノ手ヲモイダ樣ニナルト云フガ、ソレハ差押ヘル時分ハ動產不動產ニ限ラヌ、其他ノモノニモ現在日本ノ身代限リノ中ニモ種種ナモノガアル、決シテ動產不動產ノ區別ハナイカラ拵ヘナケレバナラヌト云フコトハナイ、差押ノ區分ハ差押ノ法律デ保護シテ行ケバ宜シイ、之ヲ斯ウシナケレバナラヌト云フト、サア賣ロウト云フトキ、牛モ馬モ行クゾト云フ樣ニナル、之ハ先刻來申ス通リ、前條ノ所ニ果シテ供ヘ付ケタモノハ、用方ニ因ル不動產ニナツテ居ルカラ、供ヘ付ケタ條項ノナイモノハ、矢張リ動產ハ動產デ、不動產トハ格別ニナツテ居ルノデ、反對ノ券證ガアレバ土地ニ付テ行クト裏ヲ申シテ置ケバ、習慣ニモ適スルシ、又小金ノ原北海道ノ如キニモ兩方滿足ノ結果ヲ得ルト思ヒマス
(委員長)
論ハ盡キマシタ
(栗塚報吿委員)
五百九條ハ御止メニナラヌノデ御座イマスカ
(渡委員)
ソレハ外ノ問題デ御座イマスカラ、十條ガ極ツテカラヤツテ貰ハヌトイカヌ
(栗塚報吿委員)
十條ハ九條デ極メタ原則ノ例ヲ擧ゲタノデ、然ルニ九條ニ原則ヲ遺シテ、動產所有者ハ其土地利用便益ノ爲メ永遠又ハ不定ノ時間土地ニ供ヘタ動產ハ本性ノ如何ニ拘ハラズ本性ニ因ル不動產トアレバ十條ヲ削テモ、裁判所デハドウシマセウ、此レハ用方ニ因ル不動產ト云フ御旨意ニ戻ルカラ五百九條ノ原則ヲ御改メニナルガ宜シイト思ヒマス、ソレヲ置イテ十條ヲ不用ト仰セラレルノハ違ウト思ヒマス
(松岡委員)
至極宜シイ注意ダカラ、決答ヲ申スガ、抑モ五百九條ヲ置イテ見レバ、十條ハ則チ無クツテモ宜シイ、又十條ヲ削ルナレバ九條モ併セテ削ルガ宜シイト云フ注意ハ尤モデ、五百九條ハ建物ノ使用ニ供ヘタ動產ナレバ用方ニ因ル不動產ト、ソレハ裁判官ノ判斷ニ因ルノデ、卽チ土地ノ習慣ヲ見ナケレバナラヌ、其時分日本デ果シテ土地ナラバ土地、建物ナレバ建物ニ附着イタ牛馬ハ行クモノカ否ヤハ裁判官ガ吟味シナケレバナラヌト云フ樣ナ正シイ處分ガ出ルニ違ヒナイ、若シ九條ガアレバ先刻カラ申ス耕地ヲ三反持タ百姓ガ一頭ノ牛ヲ持テ居ルト、三反ヲ賣ル爲メニ牛モ持テ行カレル、ソレデハ溜ラヌ、僅カ三反持テ居リ、牛ハ僅カニ耕スモ、山ヘ柴刈ニ行キ、又ハ駄賃ヲ取ルニ過ギナイ習慣デアルニモ拘ハラズ、九條ガアルカラ一緒ニ削ツテ仕舞フト云フコトハ九條ガアルカラ裁判官ガ注意シテ、此ノ土地ニハ牛ガ付テ居ルカ居ラナイカト云フコトヲ研究スレバ、偶々那須ノ原ノ如キハアルカ知レヌガ、日本國中九分九厘マデハ、永遠ニ付ケタモノニナラヌコトハ分カロウカラ、九條ヲ存シテ置イテ、十條ノ中一、二、三ヲ削ルノハ却テ九條ヲ正シク實際ニ適當シテ習慣ヲ行ハルル誠ニ肝要ト思ヒマス
(渡委員)
松岡サンノ辯明デアルガ、モウ一遍申シマス、五百九條ハ百姓ガ自分ノ家ニ農具ヲ置イテ居ルノハ無論、九條ニハ這入ラヌ、九條ハ先刻今村サンノ一寸演ベラレタ樣ナ、地面ノ内ヘ百姓ガ鍬モ馬モ供ヘテアルノデ、ソレニ反對スル十條デス
(南部委員)
ソレハ間違テ居ル
(栗塚報吿委員)
然ウデハ御座イマセン同ジコトデス
(村田委員)
私ハ用方ニ因ルト云フ所ハ削ラナケレバナラヌト思フ
(鶴田委員)
九條ヲ削レバ皆ナ削ラナケレバナラヌ
(箕作委員)
松岡君ノ解釋ハ宜シイノデ、ドンナ結構ナ極ク良イ裁判官デモ、法律ノ爲メニハ涙ヲ呑ンデシナケレバナラヌ立法官ハ無理ヲセズト云フコトガ分レバ裁判宮ハ公平ナル精神ヲ持出スコトガ出來ル
(松岡委員)
九條デ書キテ居リマス
(栗塚報吿委員)
是レマデ我々ハ愚痴ヲ溢スニ過ギマセン
(委員長)
今日迄ノ慣習デハ隨分土地ニ付ケテ物ヲ賣ルコトモアルデハアロウ、併シ此法律ガ缺ケヲ付ケ込ンデ惡イ奴ガ附ケ込ム樣ナコトヲスルカモ知レヌ、差押ヘテヤロウト思フト田地ヲ押ヘラレタ結果デ耕作ガ出來マセンモノモアルカ知レヌカラ何方カラモ行ケルヤウニスルガ宜シイ
(村田委員)
例ダカラ此處ヘ擧ゲナクツテモ行ケル
(南部委員)
「反對ノ證據アル」云々ガ面白ヒノデ何方ガ利益カト云フト不動產ニシタ方ガ害ハナイ
(栗塚報吿委員)
愚痴ニ過キナイ
(鶴田委員)
其方ニ極マルト、モウ一遍報吿委員ノ方デ拔キ差シヲシテ貰ハナケレバナラヌ
(南部委員)
此處デ御決シニナツテ宜シウ御座イマセウ
(委員長)
此處デ極メサヘスレバ宜シイ
(箕作委員)
之ガ極マレバ一、二ヲ削ラナケレバナラヌ
(委員長)
ソレデハ一、二ヲ削ル方ハ起立シテ下サイ起立五人
(委員長)
多數ニ依テ一、二ハ削除シテ第三ヲヤリマセウ
(栗塚報吿委員)
「獄」ハ削リマシタ
(今村報吿委員)
之モ削ルカナ
(栗塚報吿委員)
田舎ニ在ル不潔ナ肥溜ハ動產ニナリマセウカ
(淸岡委員)
糞溜ハ不動產デハナイ
(栗塚報吿委員)
併シ干糟ハ肥料ナレバ無論不動產ニナリマス
(淸岡委員)
ダガ、桶ノ如キハ慣習上カラ掘出スコトハナイ
(栗塚報吿委員)
桶デナイ、中ノ糞デ御座イマス
(委員長)
アレハ中々價ニナルカラネ
(渡委員)
之ヲ削レバ其トキノ話合ヒニスルダロウ
(鶴田委員)
削除シテ宜シイ
(委員長)
削除シマセウ第四ハ
(尾崎委員)
之ハ置キタイモノデス
(渡委員)
之ハ不動產ニシナケレバナラヌ
(箕作委員)
之ハ修正ノ通リデ宜シイ
(委員長)
第五ヲヤリマセウ
(栗塚報吿委員)
種々佛蘭西ノ判決例ヲ見ルニ桶ハ不動產デアル樽ハ動產デアルト云フ判決例ガアリマシタ、何ゼ桶ハ不動產デ、樽ハ動產カナレバ、桶ハ酒ヲ造ルノ必要ガアル、樽ハ酒ヲ運送スル必要デ、運搬スル方ダカラ之ハ動產デアルト、桶ハ日本デハ酒屋或ハ醤油ヲ造ル桶ノ如キ大キナ桶ヲ云フノデアリマス
(松岡委員)
何ニ附屬シタモノカ
(栗塚報吿委員)
日本デハ酒カ醤油位ノ積リデ、搾器ハ葡萄酒ヲ造ルノデス
(今村報吿委員)
之ハ建物ニ供ヘタモノデセウ
(松岡委員)
造ルハ土地ニ關係ハ持チマセヌネ
(栗塚報吿委員)
勿論デス
(西委員)
「土地」ト云フ字ハ削タノデスカ
(南部委員)
「土地」ト云フ字ハナクツテモ分ルト云フノデ削タノデス
(今村報吿委員)
前ニ「土地」ト書イタノハ「ボアソナード」ガ意ガアツテ書イタト思ヒマス、註ニモ、日本ニモ「ビール」ヤ葡萄酒ヲ造ルカラ、此等ハ搾器其他此處ニアル道具ハ之ヲ不動產ニスルニハ、其土地カラ生ジタ產物ヲ變體セシメナケレバイケナイ然ウスレバ、ソレガ不動產ニナル、肥後米ヲ買テ酒ニシタトハ違フノデス
(松岡委員)
葡萄園ニ機械ヲ供ヘレバ用方ニ因ル不動產ヂヤ
(栗塚報吿委員)
詰リ酒藏トシテアルナレバ釜モ何モ皆這入ルト云フノデ土地ニ關係ハ持チマセン
(松岡委員)
早ク云ヘバ葡萄園ニ葡萄ノ製造所ヲ作タトキデアリマセウ
(栗塚報吿委員)
酒藏ヲ賣ルニハ、釜ヤ搾器ハ附イテ行クト云フノデアリ、貴君ノ持テ居ル茶園ノ茶場ト云フ樣ナモノデス、第五ハ「土地ノ農產物」ト願イマス
(尾崎委員)
之ハ宜イ樣ダ
(淸岡委員)
刪ラヌ方ガ宜サソウニ思フガ、前々カラ推シテ來ルト不釣合ニナル
(松岡委員)
之ヲ置クハ面白イグロウ、一ツ位助ケテ置カヌト本條ハナイ樣ニナルカラ、實際ニ害ノナイコトデ、日本ニハ葡萄畠ハナシ、又田ノ中デ酒ヲ造ルコトハナイカラ
(淸岡委員)
果シテ其通リナレバ「其土地ニ供ヘタル」トシテ貰ヒタイ
(栗塚報吿委員)
「用ニ供シタル」デ御座イマス
(淸岡委員)
四ツ谷デ葡萄ヲ作テ置イテ、駿河臺デ葡萄酒ヲ造ルノハ此處ヘハ這入ルマイ、第一モ土地ニ供ヘタルモノ、之モ土地ニ供ヘタモノダカラ齊シク供ヘタル器具ヲ何ゼ削ラヌカ
(委員長)
日本ニモアルコトハアルノデス
(西委員)
第一ハ土地ニ附テ居ル種類ト見ルトキハ、ソレデ行クト云フ譯ニナルノデ、夫レデスカラ第一丈ケハ置イテモ差支ナイデセウ
(松岡委員)
共ニ削タ方ガ宜シイ
(今村報吿委員)
削タ方ガ宜シイデセウ
(淸岡委員)
之ハ削テ宜イ
(松岡委員)
削ロウ削ロウ
(委員長)
削ルニ決シテ第六ヲヤリマセウ
(村田委員)
之モ削ラネバ、同ジコトニナロウ
(淸岡委員)
之ハ產物デハアリマスマイ
(栗塚報吿委員)
用具ハ動產デアルガ、供ヘレバ不動產ニナル
(淸岡委員)
ケレドモ土地カラ出ルモノデナイ
(箕作委員)
之モ同ジク削テ宜シイ
(委員長)
削テ第七ヲヤリマセウ
(栗塚報吿委員)
「水ニ浮ヘル浴場」デハ汽車ノ樣デスカラ「庫船」ト直シマシタ
(村田委員)
「庫船」許リ殘テハ困ルネ
(栗塚報吿委員)
然カモ佛蘭西ノ法律ニ無イニ、伊太利ノ民法中カラ拔イタノダカラ
(南部委員)
但シカラ下ヲ修正シテ出シマシタガ、五百九條ノ二項ガ削レマシタカラ之モ削ラヌト分リマセン
(今村報吿委員)
庫船ハオカシイ樣ダネ
(栗塚報吿委員)
此レ丈ケ置クノモオカシイカラ寧ロ削テ仕舞フガ宜イデセウ
(委員長)
第八ヲヤリマセウ
(西委員)
石ノ水鉢ヲでろでろシテ居ル石ト一緒
(委員長)
ケレドモ同種類ダロウ
(尾崎委員)
矢張リ之モ削ロウ
(松岡委員)
削テ宜シイ
(委員長)
削ルガ宜ケレバ削リマス
(寺島報吿委員)
習慣ニ依テ削ルトナルト民法中習慣ニ違タモノハ皆ナ削ラナケレバナラヌ
(南部委員)
之モ御削リニナラナケレバナリマスマイ、石燈籠ヲ削レバ共ニ削テ宜シイ
(栗塚報吿委員)
報吿委員デモ之丈ケハ置カナケレバナラヌト思フ
(寺島報吿委員)
何處ノ習慣デモ庭ノ木石ト云フコトヲ考ヘナケレバナラヌ
(淸岡委員)
家ヲ賣ルニシテモ、庭ノ植木ヲ引キ拔ケバ安クナル石燈籠モ取除ケテ置ケバ毀ハシテ仕舞フカラ、雙方ノ損ニナル
(委員長)
ソレヲ云フト、水車場ニ機械ガアレバコソ、水車場ノ値段ガアルト云フノト同ジニナロウ
(南部委員)
然ウデス、削レバ殘ラズ削ラナケレバナラヌ
(箕作委員)
八、九ハ生カシテ置イテハドウデス
(南部委員)
工作物ノ權衡ガ立チマセウカ
(箕作委員)
農業ノ種類抔トハ違ヒマス
(寺島報吿委員)
併シ此分ハ慣習ニ背イテモ御殘シニナルト云フハオカシイ
(鶴田委員)
之ハ東京許リノ慣習ダ
(西委員)
「疊建具有形ノ儘」ト云ハナケレバ這入ラヌ
(栗塚報吿委員)
是カラハ然ウ云テ置カヌデモ、法律ガ不動產ト看做シ、疊建具モ不動產ノ方ガ穩當デアロウト思ヒマス假令バ私ガ目白臺ニ御座イマス、彼ノ水車場ヲ買マシタトキニ彼レハ車ハ這入ラヌト云ヒ、私ガ訴ヘヲ起シタガ、器具モ買積リデ金ヲ拂タトキハ其意旨ニ因テ、一方ハ僞リト云フコトハ知レマセウ、水車場ヲ買ヒ器具モ這入ル意思デ金ヲ拂タトキハ、何處ノ裁判官モ私ノ解釋通リシテ呉レルト思テ、世ノ中ヲ渡ル積リデアリマス
(南部委員)
然ウデス
(栗塚報吿委員)
ソレヲ栗塚ハ水車場小屋丈ケヲ買タノダ、器具ハ買タノデナイト云タラ、天地ハ顛覆ルト思ヒマス
(淸岡委員)
ソレハ五百九條ニモアリマス
(委員長)
土地ノ爲メニ供ヘタモノナレバ、日本ニハアリマスマイ、開墾地ヲ除クノ外、土地ニ牛馬ヲ供ヘタモノハナイカラ、土地ニ供ヘタ馬ヤ牛ナレバ附着クモノダカラ、ソレハ宜シイガ「土地耕作又ハ」ト云フト何處ニ在ルカ分ラヌ
(南部委員)
モウ一應報吿委員デ、初メカラ修正シテ出シテハ何ウデスカ
(尾崎委員)
ソレナレバ宜シイ
(委員長)
併シ千葉縣抔ハ已ニ農商務省ノ開墾地ヲ買テ牛モ馬モ附着イテ行キ農學士ガ居タガ、其學士迄付着イテ行タガ、然ウ云フノガアルカラネ
(箕作委員)
日本ニハ滅多ニ無イ、之ハ南部サンノ云フ如ク修正シテ宜シイカモ知レヌ
(南部委員)
然ウシテハ何ウデス
(尾崎委員)
宜シイ
(栗塚報吿委員)
貴君方ハ日本ノ慣習ハ卽チ東京ノ慣習デ、家ヲ賣ルトキ「有形ノ儘」ト書イテ置カナケレバト云フ御考ヘデセウガ、之ハ貸長屋ノ如キ場合デ、大キイ家ノ賣買ハ大槪御承知デセウ
(南部委員)
供ヘタルト云フハ理由ガ分ラヌト云フカラ、分ルヤウニシタイ
(今村報吿委員)
ソレハ分ルノデス
(寺島報吿委員)
土地ヲ賣ルト、牛馬或ハ山ガアレバ皆ナ這入テハイカヌト云フノデスカ
(委員長)
削ラナケレバナラヌトスルト、折角起草者ガ注意シテヤツタモノヲ皆ナ無クサナケレバナラヌカラネ
(今村報吿委員)
モウ一遍修正セヨト云フハ、何ンノ點ガ分ラヌカラ修正シロト云フノカ其點ヲ仰シヤツテ下サラヌト、修正ノ仕樣ガ御座イマセン
(栗塚報吿委員)
修正モ致シタイガ、例令バ土地ノ耕作利用ノ爲メ供ヘタ獸類ヲ、耕作一方用ニシロトカ、又ハ開墾ノ爲メノ獸類トカ、シロト云フナレバ、殘ラズ生カシテ宜イカト思フガ、又初メノ鋤鍬モ削ルト云フナレバ皆ナ其他モ合ハセタイ、元來東京ノ慣習デ家許リ賣テハ疊建具ハ勿論這入ラヌ、然ルニ床ノ間ノ敷居モ鴨居モ、併セテ行クト云フ慣習ダカラ、其通リニセヨトナレバ元來第八條ノ中ニ「所用又ハ用方ノ如何ル」トハ出來ナイ「取毀ツヘキモノナルトヲ問ハス土地ニ附着シ又ハ支置シタル建物」トハ申セヌ樣ニナリマス、成丈ケ正則ハ疊建具ハ無論、疊一ツヲ以テ賣買ノ出來ヌコトハナイガ、疊屋ノ見世ニ在ルトキ、或ハ障子襖ガ建具屋ノ見世ニアルトキハ、之ヲ以テ動產トシ住フ家ニ這入レバ、不動產ト看做スカ、誠ニ法律カラ申シテモ、何レカラ申シテ宜シイ、之ヲ動產力不動產ト云ヘバ用方ガ不動產ニ供シタモノダカラ不動產ニスルト云フ法律ガ宜シイ、之レコソ何處ノ法律デモ然ウデ、然ルニ床ノ間ノ柱モ動產ニ屬スカラト云フハ甚ダシイコトデハナイカト思ヒマス
(松岡委員)
段々說ヲ承ハレバ、成程毀損セヌ樣園庭ト云フノト建物ハ之ヲ生カシテ毀損セズシテ置ケバ再ビ修正モ要セズ宜シイカト思ヒマス
(南部委員)
能ク權衡ヲ取ラヌト之ヲ削テモ全編ヲヤツテ見ナケレバ分リマセヌ
(松岡委員)
ソレハ苦シウナイガ、土地ニ離レ毀損スルニアラザレバダ
(委員長)
私ノ考ヘルニ、今更ラ說ヲ出スモオカシイガ、起草者ノ旨意ハ餘程農業工業ヲ奬勵スル方ニ意ヲ用ヒテ居ル樣ニモアルシ、又之ヲ持テ除ケレバ價ガ減少スルト云フ所ニ注意シテアルト思フ、併シナガラ此翻譯文デ見ルト、何レ丈ケノ害ヲ及ボスカ知レヌ恐レガアルカラ、之ヲ削ルト決ツタガ、モウ少シ翻譯文ヲ其儘寫シ出ス直譯スルコトヲ止メテ、本統ノ日本ニ適當ナル例ヲ擧ゲテ見タラドウカ例ヘバ、第一ノ如キモ耕作ヤ或ハ土地ノ利用ノ爲メニ其土地ニ供ヘテ居ル獸類ト云タラ、之ヲ離シテ賣レト云ヘバ土地ノ價モ餘程下ルシ、又牛馬ヲ賣ル賣ラヌデ、買人モ自分ガ新タニ買ハナケレバナラヌ、前有形トハ違フカラ其區別ハ土地ニ附テ居ル所ノ獸類ト云タナレバ區別ガ付コウシ、又肥料ノ如キモ土地ニ付テ居ル耕作ノ爲メ供ヘテ土地ニ在ル肥料ヲ外ヘ持テ賣ルモノデナイカラ、又其他農產物モ、變體云々ト、之モ搾器トカ、釜トカ、桶トカ云フモノモ、畢竟葡萄酒ヲ造ル爲メダロウト想像ハスルガ、之ハ葡萄酒ニハ限ラヌ、日本デハ茶ノ製造所モアロウシ、蠶ヲ養フ所モアロウシ、其他種々ナモノガアルサニ、斯ンナモノヲ書クニモ、今少シ他ノモノモ包含シテ居ル樣ニ書キ、然ウシテ其土地カラ出テ、其土地デ製作スルモノトナツタラ何ウカト思フガ、併シ前ニ決シタモノヲドウスルコトモ出來ヌカラ、モウ一應適切ニナル樣ニ、報吿委員デ議シテ貰テハドウカト思ヒマス
(今村報吿委員)
土地ニ据付ケテト云フコトハ九條ニ書イテアリマス、十條ハ九條次第デアリマスカラ「土地ニ据付テ用方ニ因ル不動產ハ左ノ如シ」トシテ十條ヲ無クシテ不動產ハドウトシタラ差支ナイ
(栗塚報吿委員)
五百九條ニ「土地ノ本性何タルヲ問ハス用方ニ因ル不動產其種類左ノ如シ」ト書イテモ宜シイ、皆サンノ感觸モ然ウダロウト思ヒマス
(今村報吿委員)
九條ニ「土地ニ置キ」タルトアル
(委員長)
離シテ賣テハ、賣人モ買人モ困ルダロウ
(鶴田委員)
ソレハ契約デ、ドウデモナロウ
(委員長)
動產丈ケ押ヘルト云フ樣ナコトヲサセマイト云フ利益ノ爲メ置イタノデ、北海道ノ如キ所ハ是非牛馬ハ附カナケレバナラヌ、ソレガ不動產ヲ押ヘルト同ジニナル
(箕作委員)
私ノ考ヘデハ、第一第二ハ土地ニ付テアル、斯ウ云フモノハ賣ルコトガアル、所ガ日本ニハ餘リナイ、餘リナイモノヲ例トシテ擧グルノハ惡イガ、疊建具、石燈籠ハ慣習ニ幾ラモアル價習ニ背クカ知ラヌガ、兎モ角モ仰山アル土地ニ附着セズシテ石燈籠疊建具ハ澤山アル、澤山アルモノノ例ヲ見セタノデセウ
(栗塚報吿委員)
左樣デス
(南部委員)
併シ土地ニ許リ置クト判然シタナレバ置イテモ差支ナイ
(箕作委員)
併シ稀レノモノデ、石燈籠、疊建具ハ澤山アル
(村田委員)
併シ殘ルモノガ澤山出來ヤウト思フ
(寺島報吿委員)
箕作サンノ仰シヤル樣ニスレバ害ハ少イ方デスナ
(箕作委員)
餘リ珍ラシイモノガ擧ツテ居ルカラ
(寺島報吿委員)
然ウスルト之ヲ置クト迷ヒヲ生ズルカラ迷ヒヲ生ゼヌ樣ニ判然ト書ク方ガ宜イト云フノデ御座イマスカ
(箕作委員)
然ウデス、末ニ書イテ、並ノ鋤鍬デナイトシタラ宜カリソウナモノデス
(今村報吿委員)
其御考ヘデハ鋤鍬ヲ土地ニ付ケテ置クハ稀レダカラ、稀レデナイ例ヲ出シテ、然ウシテ稀レナモノハソレヘ引付ラレルト云フコトニシタラ、一番宜シイ
(村田委員)
ソレハ宜シイ
(南部委員)
ソレガ宜シイ
(寺島報吿委員)
起案者モ是カラ追々農業ガ、盛大ニナレバ、必ラズ斯ウ云フコトモ規定シナケレバナラヌト註ニモ見ヘマス、現在ノ必要ト云フヨリハ、將來ヲ重モニ云タ樣ニナツテ取ル樣デ御座イマス
(松岡委員)
併シ法律ハ將來ト云テハ際限ガナイ
(箕作委員)
私ノ考ヘデハ判然擧ゲテ日本ニ始終有リ勝チノモノ卽チ十ノ園庭水鉢十一ノ建物ニ附着シタルモノ云々抔ヲ擧ゲテ、獸類抔ハ削テ、今日有リ勝チノモノノ例ヲ擧ゲタラ宜カロウト思ヒマス
(南部委員)
然ウナルト、是レヨリ這入ルベキモノガ有レバ格別無イトキハ土地ニ置イタモノナレバ置イテ差支ナイヤウデス
(箕作委員)
唯ダノ農具獸類デナイト判然云ヘルナレバ置イテモ宜シイ
(今村報吿委員)
例ヘバ茶園ニ供ヘ付タ茶ノ製造物ト云タナレバ日本人ノ頭ニ分ルデセウ
(委員長)
皆サン、然ウシテハドウカ、適例ヲ擧ゲルコトニシテハ
(南部委員)
併シ御座イマセントキハ
(委員長)
報吿委員デ、是レナラバ皆サンニ分ロウト思フ丈ケヤレバ宜シイ
(委員長)
ソレヂヤア報吿委員ノ方デ直シテ貰ヒマセウ、是デ今日ハ置キマセウ