民法（～2019年）

本條ハ第八百六十六條第六號ノ場合ニ於ケル離緣請求權ヲ行使スヘキ期間ヲ定メタルモノナリ此場合ニ於テハ養子ノ逃亡ヲ爲シタルヲ理由トシテ離緣ヲ請求スルモノナルカ故ニ苟モ養子ニシテ復歸センカ復離緣ヲ請求スル原因ナキカ如シ然リト雖モ三年以上逃亡ヲ爲スカ如キ養子ハ養親ニ於テ將來之ニ信任スルコト能ハサルヲ以テ假令復歸ノ後ト雖モ仍虞離緣ヲ請求スルコトヲ許セリ唯復歸ノ後長日月ヲ經ルモ敢テ離緣ヲ請求セスシテ後年突然離緣ノ請求ヲ爲スカ如キハ是レ大抵口ヲ養子カ逃亡ヲ爲シタルニ假リテ實際他ノ理由ニ因リ離緣ヲ爲サント欲スル者ナルカ故ニ法律ハ敢テ之ヲ許サス乃チ本條ニ於テ「養親カ養子ノ復歸シタルコトヲ知リタル時ヨリ一年ヲ經過シタル後」ハ復離緣ノ請求ヲ爲スコトヲ得サルモノトセリ尙ホ養親カ養子ノ復歸シタルコトヲ知リタル證據ナキトキト雖モ苟モ復歸ノ時ヨリ十年ヲ經過シタル後ハ復之ヲ請求スルコトヲ得サルモノトセリ蓋シ此等ノ場合ニ於テハ多クハ養親カ養子ノ復歸シタルコトヲ知レリト雖モ而モ養子ニ於テ其證據ヲ提出スルコト能ハサルモノナリ又假令眞ニ養親カ養子ノ復歸シタルコトヲ知ラストスルモ十年前ノ事實ニ付テハ其證據ヲ得ルコト難ク殊ニ養子ニ十年前ニ逃亡シタルノ過失アリトスルモ其者カ今日ニ至リ仍オ同樣ノ非行アルヘキ者ト看做シ難キヲ以テ苟モ復歸ノ時ヨリ十年ヲ經過スル以上ハ復離緣ノ訴ヲ提起スルコト能ハサルモノトシタルナリ