216条
甲地ニ於テ貯水、排水又ハ引水ノ為メニ設ケタル工作物ノ破潰又ハ阻塞ニ因リテ乙地ニ損害ヲ及ホシ又ハ及ホス虞アルトキハ乙地ノ所有者ハ甲地ノ所有者ヲシテ修繕若クハ疏通ヲ為サシメ又必要アルトキハ予防工事ヲ為サシムルコトヲ得
第二百十六條 甲地ニ於テ賖水、排水又ハ引水ノ爲メニ設ケタル工作物ノ破潰又ハ阻塞ニ因リテ乙地ニ損害ヲ及ホシ又ハ及ホス虞アルトキハ乙地ノ所有者ハ甲地ノ所有者ヲシテ修繕若クハ疏通ヲ爲サシメ又必要アルトキハ豫防工事ヲ爲サシムルコトヲ得（財二二五、一項）
前條ニ於テハ障礙物カ事變ニ因リテ生シタル場合ニ付テ規定シ本條ニ於テハ其障礙物カ素ト特ニ設ケタル工作物ニ係ル場合ニ付テ規定セリ蓋シ土地ノ所有者ハ其土地ノ上ニ如何ナル工作物ヲモ設クルコトヲ得ルト雖モ之ニ由リテ隣地ノ所有者ヲ害スルコトヲ得サルハ固ヨリナリ然ルニ其工作物ノ破壞若クハ阻塞ニ因リテ或ハ隣地ニ莫大ノ水量ヲ流下セシメ或ハ隣地ヨリ自然ニ流レ來ル水ヲ渟滯セシメ又ハ未タ是等ノ損害ヲ生セストスルモ將ニ之ヲ生セントスル虞アルトキハ隣地ノ所有者ハ甘シテ此損害ヲ受クルノ義務ナシ必ス其工作物ノ修繕若クハ疏通ヲ爲サシムルコトヲ得スンハアルヘカラス例ヘハ甲地ニ池ヲ穿チ、隄防ヲ築キ、水道ヲ設ケタル等ノ場合ニ於テ是等ノ工作物若シ破壞又ハ阻塞スルトキハ莫大ノ水量一時ニ乙地ニ流溢スルノ虞アルカ又ハ其甲地カ低地ナル場合ニ於テ水流ヲ阻塞シタル爲メ其餘水乙地マテヲモ浸スカ如キコト稀ナリトセス是等ノ場合ニ於テハ乙地ノ所有者ハ甲地ノ所有者ヲシテ其工作物ノ修繕若クハ疏通ヲ爲サシムルコトヲ得ルナリ
以上ハ已ニ工作物カ破壞シ又ハ阻塞シタル場合ヲ豫想セリト雖モ其工作物未タ破壞若クハ阻塞セサルモ大雨等ノ場合ニ於テハ必ス破壞、阻塞スルノ虞アルトキハ乙地ノ所有者ハ特ニ甲地ノ所有者ヲシテ豫メ工事ヲ施シ以テ禍ヲ未發ニ防カシムルコトヲ得スンハアルヘカラス例ヘハ甲地ニ大ナル池ヲ穿チタル場合ニ於テ之ニ水ヲ滿タストキハ降雨アル毎ニ其水奔溢シテ乙地ヲ浸スコト明カナル場合ニ於テハ乙地ノ所有者ハ或ハ隄防ヲ築キ或ハ池水ヲシテ他ニ奔溢スルノ前適當ノ方向ニ流下スルコトヲ得ヘキ水路ヲ設ケシムルコトヲ得ヘシ又例ヘハ甲地カ沿海又ハ沿河ノ地ニシテ動モスレハ海水又ハ河水ノ流レ來ルノ虞アルヲ以テ特ニ隄防ヲ設ケタル場合ニ於テ其隄防ノ工事極メテ疎造ニシテ激浪又ハ大雨ノ際ニハ其隄防ノ破壞スヘキコト殆ト明カナル場合ニ於テハ其工事ヲ改良セシメ以テ崩潰ノ虞ナカラシムルコトヲ得ヘシ又例ヘハ甲地ニ於テ下水道ヲ穿チタルニ甲地ノ所有者カ別ニ覆葢ヲ設ケサルカ爲メ土砂、塵埃其中ニ集積シテ爲メニ下水ノ阻塞ヲ招クヘキコト略〻明カナル場合ニ於テハ乙地ノ所有者ハ甲地ノ所有者ヲシテ其覆葢ヲ設ケシメ以テ右樣ノ弊害ナカラシムルコトヲ得ヘシ
第二百十六條 甲地ニ於テ賖水、排水又ハ引水ノ爲メニ設ケタル工作物ノ破潰又ハ阻塞ニ因リテ乙地ニ損害ヲ及ホシ又ハ及ホス虞アルトキハ乙地ノ所有者ハ甲地ノ所有者ヲシテ修繕若クハ疏通ヲ爲サシメ又必要アルトキハ豫防工事ヲ爲サシムルコトヲ得（財二二五、一項）
前條ニ於テハ障礙物カ事變ニ因リテ生シタル場合ニ付テ規定シ本條ニ於テハ其障礙物カ素ト特ニ設ケタル工作物ニ係ル場合ニ付テ規定セリ葢シ土地ノ所有者ハ其土地ノ上ニ如何ナル工作物ヲモ設クルコトヲ得ルト雖モ之ニ由リテ隣地ノ所有者ヲ害スルコトヲ得サルハ固ヨリナリ然ルニ其工作物ノ破潰若クハ阻塞ニ因リテ或ハ隣地ニ莫大ノ水量ヲ流下セシメ或ハ隣地ヨリ自然ニ流レ來ル水ヲ停滯セシメ又ハ未タ是等ノ損害ヲ生セストスルモ將ニ之ヲ生セントスル虞アルトキハ隣地ノ所有者ハ甘シテ此損害ヲ受クルノ義務ナシ必ス其工作物ノ修繕若クハ疏通ヲ爲サシムルコトヲ得スンハアルヘカラス例ヘハ甲地ニ池ヲ穿チ、隄防ヲ築キ、水道ヲ設ケタル場合等ニ於テ是等ノ工作物若シ破潰又ハ阻塞スルトキハ莫大ノ水量一時ニ乙地ニ流溢スルノ虞アルカ又ハ其甲地カ低地ナル場合ニ於テ水流ヲ阻塞シタル爲メ其餘水乙地マテヲモ浸スカ如キコト稀ナリトセス是等ノ場合ニ於テハ乙地ノ所有者ハ甲地ノ所有者ヲシテ其工作物ノ修繕若クハ疏通ヲ爲サシムルコトヲ得ルナリ
以上ハ已ニ工作物カ破潰シ又ハ阻塞シタル場合ヲ豫想セリト雖モ其工作物未タ破潰若クハ阻塞セサルモ大雨等ノ場合ニ於テ必ス破潰、阻塞スヘキ虞アルトキハ乙地ノ所有者ハ特ニ甲地ノ所有者ヲシテ豫メ工事ヲ施シ以テ禍ヲ未發ニ防カシムルコトヲ得スンハアルヘカラス例ヘハ甲地ニ大ナル池ヲ穿チタル場合ニ於テ水カ奔溢スル前他ニ流下スル爲メ樋又ハ管ヲ通セシニ其樋又ハ管ノ口徑甚タ小ナルカ其他構造ノ不完全ナル爲メ其中ニ塵埃充滿シテ水ノ流下ヲ妨クヘキトキハ降雨アル每ニ其水奔溢シテ乙地ヲ浸スノ虞アルカ故ニ乙地ノ所有者ハ甲地ノ所有者ヲシテ其樋又ハ管ヲ取替シムルコトヲ得ヘシ又例ヘハ甲地カ沿河ノ地ニシテ動モスレハ河水ノ流レ來ルノ虞アルヲ以テ特ニ隄防ヲ設ケタル場合ニ於テ其隄防ノ工事極メテ疎造ニシテ大雨ノ際ニハ其隄防ノ破潰スヘキコト殆ト明カナルトキハ乙地ハ其隄防ノ爲メニ特ニ損害ヲ被ムルコトアルヘキカ故ニ其工事ヲ改良セシメ以テ崩潰ノ虞ナカラシムルコトヲ得ヘシ又例ヘハ甲地ノ所有者カ下水道又ハ耕地ノ爲メニスル引水ノ溝渠ヲ穿チタルニ別ニ覆葢ヲ設ケサルカ爲メ又ハ其幅若クハ深サノ小ナルカ爲メ土砂、塵埃其中ニ堆積シテ爲メニ水ノ阻塞ヲ招クヘキコト略〻明カナル場合ニ於テハ乙地ノ所有者ハ甲地ノ所有者ヲシテ其覆葢ヲ設ケ又ハ其幅若クハ深サヲ大ニセシメ以テ右樣ノ弊害ナカラシムルコトヲ得ヘシ（工作物ノ破潰又ハ阻塞ニ因ラス其設備ノ不完全ナルカ爲メ隣地ニ損害ヲ及ホスコトアリ故ニ隣地ノ所有者ニ與フルニ此ノ如キ工作物ノ改造其他ノ豫防工事ヲ要求スルノ權ヲ以テスル必要アルヘシト雖モ本條ニハ其規定ヲ缺ケルヲ以テ單ニ占有保全ノ訴ヲ提起スルコトヲ得ヘキノミ）
本條ノ權利ハ第百九十八條及ヒ第百九十九條ノ規定ニ依リ占有ノ訴ヲ以テ之ヲ行フコトヲ得ヘシ唯所有者ハ占有ヲ爲ササルモ普通ノ訴ヲ以テ此權利ヲ行フコトヲ得ヘキノミ