明治民法(明治29・31年)

民法整理案 (明治三十一年四月十一日配付)

参考原資料

第七百三十四条 父カ子ノ出生前ニ離縁又ハ離婚ニ因リテ其家ヲ去リタルトキハ前条第一項ノ規定ハ懐胎ノ始ニ遡リテ之ヲ適用ス 前項ノ規定ハ父母カ共ニ其家ヲ去リタル場合ニハ之ヲ適用セス但母カ子ノ出生前ニ離婚ニ因リテ復籍ヲ為シタルトキハ此限ニ在ラス 第七百三十五条 庶子及ヒ私生子ハ父又ハ母ノ同意アルニ非サレハ其家ニ入ルコトヲ得ス若シ父又ハ母カ家族ナルトキハ其戸主ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス 成年ノ庶子又ハ私生子ハ其承諾アル場合ニ限リ父又ハ母ノ家ニ入ル 庶子カ父ノ家ニ入ルコトヲ得サル場合ニ於テ母及ヒ其戸主ノ同意アルトキハ母ノ家ニ入ル 私生子カ母ノ家ニ入ルコトヲ得サルトキハ一家ヲ創立ス 第七百三十七条 他家ニ在ル戸主ノ親族ハ其承諾ヲ得テ其家族ト為ルコトヲ得但其親族カ他家ノ家族タルトキハ其家ノ戸主ノ承諾ヲ得ルコトヲ要ス 前項ニ掲ケタル者カ未成年者ナルトキハ親権ヲ行フ父若クハ母又ハ後見人ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス 第七百五十六条 無能力者カ隠居ヲ為スニハ其法定代理人ノ同意ヲ得ルコトヲ要セス 第八百十七条 第八百十三条第九号ノ事由ニ因ル離婚ノ訴ハ配偶者ノ生死カ分明ト為リタル後ハ之ヲ提起スルコトヲ得ス 第八百二十六条 夫カ未成年者ナルトキハ前条ノ期間ハ其成年ニ達シタル時ヨリ之ヲ起算ス但夫カ成年ニ達シタル後ニ子ノ出生ヲ知リタルトキハ此限ニ在ラス 夫カ禁治産者ナルトキハ前条ノ期間ハ禁治産ノ取消アリタル後夫カ子ノ出生ヲ知リタル時ヨリ之ヲ起算ス 第八百三十二条 第七百六十八条第一項ノ規定ニ違反シテ再婚ヲ為シタル女カ分娩シタル場合ニ於テ第八百二十一条ノ規定ニ依リ其前夫又ハ後夫ヲ以テ子ノ父トスヘキカヲ定ムルコト能ハサルトキハ裁判所ハ事実ヲ審査シテ之ヲ定ム 前項ノ規定ハ父カ胎内ニ在ル子ヲ認知シタル場合ニハ之ヲ適用セス 第八百四十八条 養子ヲ為サント欲スル者ハ遺言ヲ以テ其意思ヲ表示スルコトヲ得此場合ニ於テハ遺言執行者ハ養子ト為ルヘキ者又ハ第八百四十三条ノ規定ニ依リ之ニ代ハリテ承諾ヲ為シタル者及ヒ成年ノ証人二人以上ヨリ遺言カ効力ヲ生シタル後遅滞ナク縁組ノ届出ヲ為スコトヲ要ス 前項ノ届出ハ養親ノ死亡ノ時ニ遡リテ其効力ヲ生ス 第八百六十四条 第七百七十三条及ヒ第七百七十四条ノ規定ハ協議上ノ離縁ニ之ヲ準用ス 第八百六十五条 戸籍吏ハ離縁カ第七百七十五条第二項、第八百六十二条及ヒ第八百六十三条ノ規定其他ノ法令ニ違反セサルコトヲ認メタル後ニ非サレハ其届出ヲ受理スルコトヲ得ス 戸籍吏カ前項ノ規定ニ違反シテ届出ヲ受理シタルトキト雖モ離縁ハ之カ為メニ其効力ヲ妨ケラルルコトナシ 第九百五条 母カ財産ノ管理ヲ辞シ、後見人カ其任務ヲ辞シ、親権ヲ行ヒタル父若クハ母カ家ヲ去リ又ハ戸主カ隠居ヲ為シタルニ因リ後見人ヲ選任スル必要ヲ生シタルトキハ其父、母又ハ後見人ハ遅滞ナク親族会ヲ招集シ又ハ其招集ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ要ス 第九百四十三条 前条第一項ノ規定ハ保佐人ト準禁治産者トノ間ニ之ヲ準用ス 第九百六十四条 家督相続ハ左ノ事由ニ因リテ開始ス 一 戸主ノ死亡、隠居又ハ国籍喪失 二 戸主カ婚姻ノ取消ニ因リテ其家ヲ去リタルコト 三 女戸主ノ入夫婚姻、其取消又ハ入夫ノ離婚 第九百七十七条 推定家督相続人廃除ノ原因止ミタルトキハ被相続人又ハ推定家督相続人ハ廃除ノ取消ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得 第九百七十五条第一項第一号ノ場合ニ於テハ被相続人ハ何時ニテモ廃除ノ取消ヲ請求スルコトヲ得 前二項ノ規定ハ相続開始ノ後ハ之ヲ適用セス 前項ノ規定ハ廃除ノ取消ニ之ヲ準用ス 第千七条 共同相続人中被相続人ヨリ遺贈ヲ受ケ又ハ婚姻、養子縁組、分家、廃絶家再興ノ為メ若クハ生計ノ資本トシテ贈与ヲ受ケタル者アルトキハ被相続人カ相続開始ノ時ニ於テ有セシ財産ノ価額ニ其贈与ノ価額ヲ加ヘタルモノヲ相続財産ト看做シ前三条ノ規定ニ依リテ算定シタル相続分ノ中ヨリ其遺贈又ハ贈与ノ価額ヲ控除シ其残額ヲ以テ其者ノ相続分トス 遺贈又ハ贈与ノ価額カ相続分ノ価額ニ等シク又ハ之ニ超ユルトキハ受遺者又ハ受贈者ハ其相続分ヲ受クルコトヲ得ス 被相続人カ前二項ノ規定ニ異ナリタル意思ヲ表示シタルトキハ其意思表示ハ遺留分ニ関スル規定ニ反セサル範囲内ニ於テ其効力ヲ有ス 第千十四条 各共同相続人ハ其相続分ニ応シ他ノ共同相続人カ分割ニ因リテ受ケタル債権ニ付キ分割ノ当時ニ於ケル債務者ノ資力ヲ担保ス 弁済期ニ在ラサル債権及ヒ停止条件附債権ニ付テハ各共同相続人ハ弁済ヲ為スヘキ時ニ於ケル債務者ノ資力ヲ担保ス 第千五十条 相続人カ限定承認ヲ為スコトヲ得ル間又ハ現実ニ相続財産ヲ占有セサル間ハ其債権者ハ財産分離ノ請求ヲ為スコトヲ得 第三百四条、第千二十七条、第千二十九条乃至第千三十六条、第千四十三条乃至第千四十五条及ヒ第千四十八条ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス但第千二十九条ニ定メタル公告及ヒ催告ハ財産分離ノ請求ヲ為シタル債権者之ヲ為スコトヲ要ス 第千百一条 遺言者カ遺贈ノ目的物ノ滅失若クハ変造又ハ其占有ノ喪失ニ因リテ第三者ニ対シ償金ヲ請求スル権利ヲ有スルトキハ其権利ヲ以テ遺贈ノ目的ト為シタルモノト推定ス 遺贈ノ目的物カ他ノ物ト附合又ハ混和シタル場合ニ於テ遺言者カ第二百四十三条乃至第二百四十五条ノ規定ニ依リ合成物又ハ混和物ノ単独所有者又ハ共有者ト為リタルトキハ其全部ノ所有権又ハ共有権ヲ以テ遺贈ノ目的ト為シタルモノト推定ス <!-- 整理委員提出 第七百三十四条ヲ左ノ如ク改ム  父カ子ノ出生前ニ離縁又ハ離婚ニ因リテ其家ヲ去リタルトキハ前条第一項ノ規定ハ懐胎ノ始ニ遡リテ之ヲ適用ス  前項ノ規定ハ父母カ共ニ其家ヲ去リタル場合ニハ之ヲ適用セス但母カ子ノ出生前ニ離婚ニ因リテ復籍ヲ為シタルトキハ此限ニ在ラス 第七百三十五条ヲ左ノ如ク改ム  庶子及ヒ私生子ハ父又ハ母ノ同意アルニ非サレハ其家ニ入ルコトヲ得ス若シ父又ハ母カ家族ナルトキハ其戸主ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス  成年ノ庶子又ハ私生子ハ其承諾アル場合ニ限リ父又ハ母ノ家ニ入ル  庶子カ父ノ家ニ入ルコトヲ得サル場合ニ於テ母及ヒ其戸主ノ同意アルトキハ母ノ家ニ入ル  私生子カ母ノ家ニ入ルコトヲ得サルトキハ一家ヲ創立ス 第七百三十七条第二項トシテ左ノ一項ヲ加フ  前項ニ掲ケタル者カ未成年者ナルトキハ親権ヲ行フ父若クハ母又ハ後見人ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス 第七百五十五条ノ次ニ左ノ一条ヲ加フ  第七百五十六条 無能力者カ隠居ヲ為スニハ其法定代理人ノ同意ヲ得ルコトヲ要セス 第八百十六条(旧第八百十五条)ノ次ニ左ノ一条ヲ加フ 第八百十七条 第八百十三条第九号ノ事由ニ因ル離婚ノ訴ハ配偶者ノ生死カ分明ト為リタル後ハ之ヲ提起スルコトヲ得ス 第八百二十六条(旧第八百二十四条)第二項ヲ左ノ如ク改ム  夫カ禁治産者ナルトキハ前条ノ期間ハ禁治産ノ取消アリタル後夫カ子ノ出生ヲ知リタル時ヨリ之ヲ起算ス 第八百三十二条(旧第八百三十条)第二項トシテ左ノ一項ヲ加フ  前項ノ規定ハ父カ胎内ニ在ル子ヲ認知シタル場合ニハ之ヲ適用セス 第八百四十八条(旧第八百四十六条)第一項ヲ左ノ如ク改ム  養子ヲ為サント欲スル者ハ遺言ヲ以テ其意思ヲ表示スルコトヲ得此場合ニ於テハ遺言執行者ハ養子ト為ルヘキ者又ハ第八百四十三条ノ規定ニ依リ之ニ代ハリテ承諾ヲ為シタル者及ヒ成年ノ証人二人以上ヨリ遺言カ効力ヲ生シタル後遅滞ナク縁組ノ届出ヲ為スコトヲ要ス 第八百六十四条(旧第八百六十二条)第二項及ヒ第三項ヲ別条トシテ左ノ如ク改ム 第八百六十五条 戸籍吏ハ離縁カ第七百七十五条第二項、第八百六十二条及ヒ第八百六十三条ノ規定其他ノ法令ニ違反セサルコトヲ認メタル後ニ非サレハ其届出ヲ受理スルコトヲ得ス  戸籍吏カ前項ノ規定ニ違反シテ届出ヲ受理シタルトキト雖モ離縁ハ之カ為メニ其効力ヲ妨ケラルルコトナシ 第九百五条(旧第九百二条)ヲ左ノ如ク改ム  母カ財産ノ管理ヲ辞シ、後見人カ其任務ヲ辞シ、親権ヲ行ヒタル父若クハ母カ家ヲ去リ又ハ戸主カ隠居ヲ為シタルニ因リ後見人ヲ選任スル必要ヲ生シタルトキハ其父、母又ハ後見人ハ遅滞ナク親族会ヲ招集シ又ハ其招集ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ要ス 第九百四十二条(旧第九百三十二条)ノ次ニ左ノ一条ヲ加フ 第九百四十三条 前条第一項ノ規定ハ保佐人ト準禁治産者トノ間ニ之ヲ準用ス 第九百六十四条(旧第九百六十条)ヲ左ノ如ク改ム  家督相続ハ左ノ事由ニ因リテ開始ス  一 戸主ノ死亡、隠居又ハ国籍喪失  二 戸主カ婚姻ノ取消ニ因リテ其家ヲ去リタルコト  三 女戸主ノ入夫婚姻、其取消又ハ入夫ノ離婚 第九百七十七条(旧第九百七十三条)ヲ左ノ如ク改ム  推定家督相続人廃除ノ原因止ミタルトキハ被相続人又ハ推定家督相続人ハ廃除ノ取消ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得  第九百七十五条第一項第一号ノ場合ニ於テハ被相続人ハ何時ニテモ廃除ノ取消ヲ請求スルコトヲ得  前二項ノ規定ハ相続開始ノ後ハ之ヲ適用セス  前項ノ規定ハ廃除ノ取消ニ之ヲ準用ス 第千七条(旧第千三条)ヲ左ノ如ク改ム  共同相続人中被相続人ヨリ遺贈ヲ受ケ又ハ婚姻、養子縁組、分家、廃絶家再興ノ為メ若クハ生計ノ資本トシテ贈与ヲ受ケタル者アルトキハ被相続人カ相続開始ノ時ニ於テ有セシ財産ノ価額ニ其贈与ノ価額ヲ加ヘタルモノヲ相続財産ト看做シ前三条ノ規定ニ依リテ算定シタル相続分ノ中ヨリ其遺贈又ハ贈与ノ価額ヲ控除シ其残額ヲ以テ其者ノ相続分トス  遺贈又ハ贈与ノ価額カ相続分ノ価額ニ等シク又ハ之ニ超ユルトキハ受遺者又ハ受贈者ハ其相続分ヲ受クルコトヲ得ス  被相続人カ前二項ノ規定ニ異ナリタル意思ヲ表示シタルトキハ其意思表示ハ遺留分ニ関スル規定ニ反セサル範囲内ニ於テ其効力ヲ有ス 第千十四条(旧第千十条)第二項ヲ左ノ如ク改ム  弁済期ニ在ラサル債権及ヒ停止条件附債権ニ付テハ各共同相続人ハ弁済ヲ為スヘキ時ニ於ケル債務者ノ資力ヲ担保ス 第千五十条(旧第千四十六条)第二項ヲ左ノ如ク改ム  第三百四条、第千二十七条、第千二十九条乃至第千三十六条、第千四十三条乃至第千四十五条及ヒ第千四十八条ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス但第千二十九条ニ定メタル公告及ヒ催告ハ財産分離ノ請求ヲ為シタル債権者之ヲ為スコトヲ要ス 第千百一条(旧第千九十七条)第二項ヲ左ノ如ク改ム  遺贈ノ目的物カ他ノ物ト附合又ハ混和シタル場合ニ於テ遺言者カ第二百四十三条乃至第二百四十五条ノ規定ニ依リ合成物又ハ混和物ノ単独所有者又ハ共有者ト為リタルトキハ其全部ノ所有権又ハ共有権ヲ以テ遺贈ノ目的ト為シタルモノト推定ス -->