明治民法(明治29・31年)

整理案 (明治三十年九月二十八日配付)

参考原資料

第七百四十四条(旧第七百四十二条) 法定ノ推定家督相続人ハ他家ニ入リ又ハ一家ヲ創立スルコトヲ得ス但本家相続ノ必要アルトキハ此限ニ在ラス 前項ノ規定ハ第七百五十条第二項ノ適用ヲ妨ケス 第七百九十九条 夫ハ婚姻ヨリ生スル一切ノ費用ヲ負担ス但妻カ戸主タルトキハ妻之ヲ負担ス 前項ノ規定ハ第七百九十一条及ヒ第八章ノ規定ノ適用ヲ妨ケス 第八百十四条 夫婦ノ一方ハ左ノ場合ニ限リ離婚ノ訴ヲ提起スルコトヲ得 一 配偶者カ重婚ヲ為シタルトキ 二 妻カ奸通ヲ為シタルトキ 三 夫カ奸淫罪ニ因リテ刑ニ処セラレタルトキ 四 配偶者カ重禁錮一年以上ノ刑ニ処セラレタルトキ 五 配偶者ヨリ同居ニ堪ヘサル虐待又ハ重大ナル侮辱ヲ受ケタルトキ 六 配偶者ヨリ悪意ヲ以テ遺棄セラレタルトキ 七 配偶者ノ直系尊属ヨリ虐待又ハ重大ナル侮辱ヲ受ケタルトキ 八 配偶者カ自己ノ直系尊属ニ対シテ虐待ヲ為シ又ハ之ニ重大ナル侮辱ヲ加ヘタルトキ 九 配偶者カ三年以上心神ヲ喪失シ本心ニ復スル望ナキトキ 十 配偶者ノ生死カ三年以上分明ナラサルトキ 十一 婿養子縁組ノ場合又ハ養子カ家女ト婚姻ヲ為シタル場合ニ於テ離縁アリタルトキ 第八百六十三条(旧第八百六十九条) 縁組ノ当事者ハ其協議ヲ以テ離縁ヲ為スコトヲ得 養子カ十五年未満ナルトキハ其離縁ハ養親ト養子ニ代ハリテ縁組ノ承諾ヲ為ス権利ヲ有スル者トノ協議ヲ以テ之ヲ為ス 養親カ死亡シタル後養子カ離縁ヲ為サント欲スルトキハ戸主ノ承諾ヲ得テ之ヲ為スコトヲ得 第八百六十六条(旧第八百七十二条) 縁組ノ当事者ノ一方ハ左ノ場合ニ限リ離縁ノ訴ヲ提起スルコトヲ得 一 他ノ一方ヨリ虐待又ハ重大ナル侮辱ヲ受ケタルトキ 二 他ノ一方ヨリ悪意ヲ以テ遺棄セラレタルトキ 三 養親ノ直系尊属ヨリ虐待又ハ重大ナル侮辱ヲ受ケタルトキ 四 他ノ一方カ重禁錮一年以上ノ刑ニ処セラレタルトキ 五 養子ニ家名ヲ涜シ又ハ家産ヲ傾クヘキ重大ナル過失アリタルトキ 六 養子カ逃亡シテ三年以上復帰セサルトキ 七 養子ノ生死カ三年以上分明ナラサルトキ 八 他ノ一方カ自己ノ直系尊属ニ対シテ虐待ヲ為シ又ハ之ニ重大ナル侮辱ヲ加ヘタルトキ 九 婿養子縁組ノ場合又ハ養子カ家女ト婚姻ヲ為シタル場合ニ於テ離婚アリタルトキ 第九百六十三条 家督相続ハ左ノ事由ニ因リテ開始ス 一 戸主ノ死亡、隠居又ハ国籍喪失 二 女戸主ノ入夫婚姻、其取消又ハ入夫ノ離婚 第九百六十四条 家督相続ハ被相続人ノ住所ニ於テ開始ス 旧第九百七十一条 削除 第九百六十七条(旧第九百七十三条) 左ニ掲ケタル者ハ家督相続人タルコトヲ得ス 一 故意ニ被相続人又ハ家督相続ニ付キ先順位ニ在ル者ヲ死ニ致シ又ハ死ニ致サントシタル為メ刑ニ処セラレタル者 二 被相続人ノ殺害セラレタルコトヲ知リテ之ヲ告発又ハ告訴セサリシ者但其者ニ是非ノ弁別ナキトキ又ハ殺害者カ自己ノ配偶者若クハ直系血族ナリシトキハ此限ニ在ラス 三 詐欺又ハ強迫ニ因リ被相続人カ相続ニ関スル遺言ヲ為シ、之ヲ取消シ亦ハ之ヲ変更スルコト 四 詐欺又ハ強迫ニ因リ被相続人ヲシテ相続ニ関スル遺言ヲ為サシメ、之ヲ取消サシメ又ハ之ヲ変更セシメタル者 五 相続ニ関スル被相続人ノ遺言書ヲ偽造、変造、毀滅又ハ蔵匿シタル者 第九百六十八条(旧第九百七十四条) 被相続人ノ家族タル直系卑属ハ左ノ規定ニ従ヒ法定家督相続人ト為ル 一 親等ノ異ナリタル者ノ間ニ在リテハ其近キ者ヲ先ニス 二 親等ノ同シキ者ノ間ニ在リテハ男ヲ先ニス 三 親等ノ同シキ男又ハ女ノ間ニ在リテハ嫡出子ヲ先ニス 四 親等ノ同シキ嫡出子、庶子及ヒ私生子ノ間ニ在リテハ嫡出子及ヒ庶子ハ女ト雖モ之ヲ私生子ヨリ先ニス 五 前四号ニ掲ケタル事項ニ付キ相同シキ者ノ間ニ在リテハ年長者ヲ先ニス 第八百三十七条ノ規定ニ依リ又ハ養子縁組ニ因リテ嫡出子タル身分ヲ取得シタル者ハ家督相続ニ付テハ其嫡出子タル身分ヲ取得シタル時ニ生マレタルモノト看做ス 第九百六十九条 前条ノ規定ハ第七百三十六条ノ適用ヲ妨ケス 第九百七十四条(旧第九百七十九条) 被相続人カ遺言ヲ以テ推定家督相続人ヲ廃除スル意思ヲ表示シタルトキハ遺言執行者ハ其遺言カ効力ヲ生シタル後遅滞ナク裁判所ニ廃除ノ請求ヲ為スコトヲ要ス此場合ニ於テ廃除ハ被相続人ノ死亡ノ時ニ遡リテ其効力ヲ生ス 第九百七十五条(旧第九百八十条) 推定家督相続人廃除ノ原因止ミタルトキハ被相続人又ハ推定家督相続人ハ廃除ノ取消ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得但相続開始ノ後ハ此限ニ在ラス 第九百七十三条第一項第一号ノ場合ニ於テハ被相続人ハ何時ニテモ廃除ノ取消ヲ請求スルコトヲ得 前条ノ規定ハ廃除ノ取消ニ之ヲ準用ス 第九百七十六条(旧第九百八十一条) 推定家督相続人廃除ノ請求又ハ其取消ノ請求アリタル後其裁判確定前ニ相続カ開始シタルトキハ裁判所ハ親族、利害関係人又ハ検事ノ請求ニ因リ戸主権ノ行使及ヒ遺産ノ管理ニ付キ必要ナル処分ヲ命スルコトヲ得廃除ノ遺言アリタルトキモ亦同シ 裁判所カ管理人ヲ選任シタル場合ニ於テハ第二十七条乃至第二十九条ノ規定ヲ準用ス 第九百七十七条(旧第九百八十二条) 法定ノ推定家督相続人ナキトキハ被相続人ハ家督相続人ヲ指定スルコトヲ得此指定ハ法定ノ推定家督相続人アルニ至リタルトキハ其効力ヲ失フ 家督相続人ノ指定ハ之ヲ取消スコトヲ得 前二項ノ規定ハ死亡又ハ隠居ニ因ル家督相続ノ場合ニノミ之ヲ適用ス 第九百七十九条(旧第九百八十四条) 被相続人カ遺言ヲ以テ家督相続人ノ指定又ハ其取消ヲ為ス意思ヲ表示シタルトキハ遺言執行者ハ其遺言カ効力ヲ生シタル後遅滞ナク之ヲ戸籍吏ニ届出ツルコトヲ要ス此場合ニ於テ指定又ハ其取消ハ被相続人ノ死亡ノ時ニ遡リテ其効力ヲ生ス 第九百八十条(旧第九百八十五条) 法定又ハ指定ノ家督相続人ナキ場合ニ於テ其家ニ被相続人ノ父アルトキハ父、父アラサルトキ又ハ父カ其意思ヲ表示スルコト能ハサルトキハ母、父母共ニアラサルトキ又ハ其意思ヲ表示スルコト能ハサルトキハ親族会ハ左ノ順序ニ従ヒ家族中ヨリ家督相続人ヲ選定ス 第一 配偶者但家女ナルトキ 第二 兄弟 第三 姉妹 第四 第一号ニ該当セサル配偶者 第五 兄弟姉妹ノ直系卑属 第九百八十二条(旧第九百八十七条) 第九百八十条ノ規定ニ依リテ家督相続人タル者ナキトキハ家ニアル直系尊属中親等ノ最モ近キ者家督相続人トナル但親等ノ同シキ者ノ間ニ在リテハ男ヲ先ニス 第九百八十八条(旧第九百九十三条) 国籍喪失者ノ家督相続人ハ戸主権及ヒ家督相続ノ特権ニ属スル権利ノミヲ承継ス但遺留分及ヒ前戸主カ特ニ指定シタル相続財産ヲ承継スルコトヲ妨ケス 国籍喪失者カ日本人ニ非サレハ享有スルコトヲ得サル権利ヲ有スル場合ニ於テ一年内ニ之ヲ日本人ニ譲渡ササルトキハ其権利ハ家督相続人ニ帰属ス <!-- 第七百四十四条(旧第七百四十二条)ヲ左ノ如ク改ム  法定ノ推定家督相続人ハ他家ニ入リ又ハ一家ヲ創立スルコトヲ得ス但本家相続ノ必要アルトキハ此限ニ在ラス  前項ノ規定ハ第七百五十条第二項ノ適用ヲ妨ケス 第七百九十九条第二項ヲ左ノ如ク改ム  前項ノ規定ハ第七百九十一条及ヒ第八章ノ規定ノ適用ヲ妨ケス 第八百十四条(旧第六号)ヲ左ノ如ク改ム  配偶者カ自己ノ直系尊属ニ対シテ虐待ヲ為シ又ハ之ニ重大ナル侮辱ヲ加ヘタルトキ 第八百六十三条(旧第八百六十九条)第三項但書ハ之ヲ削除ス 第八百六十六条第八号(旧第八百七十二条第二号)ヲ左ノ如ク改ム  他ノ一方カ自己ノ直系尊属ニ対シテ虐待ヲ為シ又ハ之ニ重大ナル侮辱ヲ加ヘタルトキ 旧第九百六十九条ヲ左ノ二条ニ改ム 第九百六十三条 家督相続ハ左ノ事由ニ因リテ開始ス  一 戸主ノ死亡、隠居又ハ国籍喪失  二 女戸主ノ入夫婚姻、其取消又ハ入夫ノ離婚 第九百六十四条 家督相続ハ被相続人ノ住所ニ於テ開始ス 旧第九百七十一条ハ之ヲ削除ス 第九百六十七条(旧第九百七十三条)ヲ左ノ如ク改ム  左ニ掲ケタル者ハ家督相続人タルコトヲ得ス  一 故意ニ被相続人又ハ家督相続ニ付キ先順位ニ在ル者ヲ死ニ致シ又ハ死ニ致サントシタル為メ刑ニ処セラレタル者  二 被相続人ノ殺害セラレタルコトヲ知リテ之ヲ告発又ハ告訴セサリシ者但其者ニ是非ノ弁別ナキトキ又ハ殺害者カ自己ノ配偶者若クハ直系血族ナリシトキハ此限ニ在ラス  三 詐欺又ハ強迫ニ因リ被相続人カ相続ニ関スル遺言ヲ為シ、之ヲ取消シ亦ハ之ヲ変更スルコト  四 詐欺又ハ強迫ニ因リ被相続人ヲシテ相続ニ関スル遺言ヲ為サシメ、之ヲ取消サシメ又ハ之ヲ変更セシメタル者  五 相続ニ関スル被相続人ノ遺言書ヲ偽造、変造、毀滅又ハ蔵匿シタル者 第九百六十八条(旧第九百七十四条)第一項第四号ヲ左ノ如ク改ム  親等ノ同シキ嫡出子、庶子及ヒ私生子ノ間ニ在リテハ嫡出子及ヒ庶子ハ女ト雖モ之ヲ私生子ヨリ先ニス 同条ノ次ニ左ノ一条ヲ加フ  第九百六十九条 前条ノ規定ハ第七百三十六条ノ適用ヲ妨ケス 第九百七十四条(旧第九百七十九条)ヲ左ノ如ク改ム  被相続人カ遺言ヲ以テ推定家督相続人ヲ廃除スル意思ヲ表示シタルトキハ遺言執行者ハ其遺言カ効力ヲ生シタル後遅滞ナク裁判所ニ廃除ノ請求ヲ為スコトヲ要ス此場合ニ於テ廃除ハ被相続人ノ死亡ノ時ニ遡リテ其効力ヲ生ス 第九百七十五条(旧第九百八十条)ヲ左ノ如ク改ム  推定家督相続人廃除ノ原因止ミタルトキハ被相続人又ハ推定家督相続人ハ廃除ノ取消ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得但相続開始ノ後ハ此限ニ在ラス  第九百七十三条第一項第一号ノ場合ニ於テハ被相続人ハ何時ニテモ廃除ノ取消ヲ請求スルコトヲ得 前条ノ規定ハ廃除ノ取消ニ之ヲ準用ス 第九百七十六条(旧第九百八十一条)ヲ左ノ如ク改ム  推定家督相続人廃除ノ請求又ハ其取消ノ請求アリタル後其裁判確定前ニ相続カ開始シタルトキハ裁判所ハ親族、利害関係人又ハ検事ノ請求ニ因リ戸主権ノ行使及ヒ遺産ノ管理ニ付キ必要ナル処分ヲ命スルコトヲ得廃除ノ遺言アリタルトキモ亦同シ  裁判所カ管理人ヲ選任シタル場合ニ於テハ第二十七条乃至第二十九条ノ規定ヲ準用ス 第九百七十七条(旧第九百八十二条)ヲ左ノ如ク改ム  法定ノ推定家督相続人ナキトキハ被相続人ハ家督相続人ヲ指定スルコトヲ得此指定ハ法定ノ推定家督相続人アルニ至リタルトキハ其効力ヲ失フ  家督相続人ノ指定ハ之ヲ取消スコトヲ得  前二項ノ規定ハ死亡又ハ隠居ニ因ル家督相続ノ場合ニノミ之ヲ適用ス 第九百七十九条(旧第九百八十四条)ヲ左ノ如ク改ム  被相続人カ遺言ヲ以テ家督相続人ノ指定又ハ其取消ヲ為ス意思ヲ表示シタルトキハ遺言執行者ハ其遺言カ効力ヲ生シタル後遅滞ナク之ヲ戸籍吏ニ届出ツルコトヲ要ス此場合ニ於テ指定又ハ其取消ハ被相続人ノ死亡ノ時ニ遡リテ其効力ヲ生ス 第九百八十条(旧第九百八十五条)ヲ左ノ如ク改ム  法定又ハ指定ノ家督相続人ナキ場合ニ於テ其家ニ被相続人ノ父アルトキハ父、父アラサルトキ又ハ父カ其意思ヲ表示スルコト能ハサルトキハ母、父母共ニアラサルトキ又ハ其意思ヲ表示スルコト能ハサルトキハ親族会ハ左ノ順序ニ従ヒ家族中ヨリ家督相続人ヲ選定ス  第一 配偶者但家女ナルトキ  第二 兄弟  第三 姉妹  第四 第一号ニ該当セサル配偶者  第五 兄弟姉妹ノ直系卑属 第九百八十二条(旧第九百八十七条)ヲ左ノ如ク改ム  第九百八十条ノ規定ニ依リテ家督相続人タル者ナキトキハ家ニアル直系尊属中親等ノ最モ近キ者家督相続人トナル但親等ノ同シキ者ノ間ニ在リテハ男ヲ先ニス 第九百八十八条(旧第九百九十三条)第二項トシテ左ノ一項ヲ加フ  国籍喪失者カ日本人ニ非サレハ享有スルコトヲ得サル権利ヲ有スル場合ニ於テ一年内ニ之ヲ日本人ニ譲渡ササルトキハ其権利ハ家督相続人ニ帰属ス -->