明治民法(明治29・31年)

決議案明治二十九年十二月二十三日配付

参考原資料

穂積陳重博士関係文書 第六部甲

第五編 相続 第一章 家督相続 第一節 総則 第九百六十九条 家督相続ハ左ノ事由ニ因リテ開始ス 一 戸主ノ死亡、隠居又ハ国籍喪失 二 女戸主ノ入夫婚姻 被相続人ノ住所ヲ以テ相続開始地トス 第九百七十条 家督相続回復ノ請求権ハ家督相続人又ハ其法定代理人カ相続権侵害ノ事実ヲ知リタル時ヨリ五年間之ヲ行ハサルトキハ時効ニ因リテ消滅ス相続開始ノ時ヨリ二十年ヲ経過シタルトキ亦同シ 第九百七十一条 本章ノ規定ハ法令ニ別段ノ定アル場合ニ限リ華族ノ家督相続ニハ之ヲ適用セス 第二節 家督相続人ノ資格 第九百七十二条 家督相続ニ付テハ胎児ハ既ニ生マレタルモノト看做ス 前項ノ規定ハ胎児カ死体ニテ生マレタルトキハ之ヲ適用セス 第九百七十三条 左ニ掲ケタル者ハ家督相続人タルコトヲ得ス 一 他家ノ法定ノ推定家督相続人タル者但本家相続ノ必要アルトキハ此限ニ在ラス 二 故意ニ被相続人又ハ家督相続ニ付キ先順位ニ在ル者ヲ死ニ致シ又ハ死ニ致サントシタル為メ刑ニ処セラレタル者 三 被相続人ノ殺害セラレタルコトヲ知リテ之ヲ告発又ハ告訴セサリシ者但殺害者カ自己ノ配遇者、直系血族其他三親等内ノ血族ナリシトキハ此限ニ在ラス 四 詐欺又ハ強迫ニ因リ被相続人カ相続ニ関スル遺言ヲ為シ、之ヲ取消シ又ハ之ヲ変更スルコトヲ妨ケタル者 五 詐欺又ハ強迫ニ因リ被相続人ヲシテ相続ニ関スル遺言ヲ為サシメ、之ヲ取消サシメ又ハ之ヲ変更セシメタル者 六 相続ニ関スル被相続人ノ遺言書ヲ偽造、変造、毀滅又ハ蔵匿シタル者 第三節 家督相続人ノ順位 第九百七十四条 被相続人ノ家族タル直系卑属ハ左ノ規定ニ従ヒ法定家督相続人ト為ル 一 親等ノ異ナリタル者ノ間ニ在リテハ其近キ者ヲ先ニス 二 親等ノ同シキ者ノ間ニ在リテハ男ヲ先ニス 三 親等ノ同シキ男又ハ女ノ間ニ在リテハ嫡出子ヲ先ニス 四 親等ノ同シキ嫡出子及ヒ私生子ノ間ニ在リテハ嫡出子ハ女ト雖モ之ヲ私生子ヨリ先ニス 五 前四号ニ掲ケタル事項ニ付キ相同シキ者ノ間ニ在リテハ年長者ヲ先ニス 第八百三十七条ノ規定ニ依リ又ハ養子縁組ニ因リテ嫡出子タル身分ヲ取得シタル者ハ家督相続ニ付テハ其嫡出子タル身分ヲ取得シタル時ニ生マレタルモノト看做ス 第九百七十五条 第七百三十五条及ヒ第七百三十六条ノ規定ニ依リテ家族ト為リタル直系卑属ハ嫡出子又ハ庶子タル他ノ直系卑属ナキ場合ニ限リ前条ニ定メタル順序ニ従ヒテ法定家督相続人ト為ル 第九百七十六条 法定ノ推定家督相続人ハ其姉妹ノ為メニスル聟養子縁組ニ因リテ其相続権ヲ害セラルルコトナシ 第九百七十七条 第九百七十四条及ヒ第九百七十五条ノ規定ニ依リテ家督相続人タルヘキ者カ家督相続ノ開始前ニ死亡シ又ハ其相続権ヲ失ヒタル場合ニ於テ其者ニ直系卑属アルトキハ其直系卑属ハ第九百七十四条及ヒ第九百七十五条ニ定メタル順序ニ従ヒ其者ト同順位ニ於テ法定家督相続人ト為ル 第九百七十八条 法定ノ推定家督相続人ニ付キ左ノ事由アルトキハ被相続人ハ其推定家督相続人ノ廃除ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得 一 被相続人ニ対シテ虐待ヲ為シ又ハ之ニ重大ナル侮辱ヲ加ヘタルコト 二 疾病其他身体又ハ精神ノ状況ニ因リテ家政ヲ執ルニ堪ヘサルヘキコト 三 家名ニ汚辱ヲ及ホスヘキ罪ニ因リテ刑ニ処セラレタルコト 四 浪費者トシテ準禁治産ノ宣告ヲ受ケ改悛ノ望ナキコト 此他正当ノ事由アルトキハ被相続人ハ親族会ノ認許ヲ得テ其廃除ヲ請求スルコトヲ得 第九百七十九条 被相続人カ遺言ヲ以テ推定家督相続人ヲ廃除スル意思ヲ表示シタルトキハ遺言執行者ハ其遺言カ効力ヲ生シタル後遅滞ナク裁判所ニ廃除ノ請求ヲ為スコトヲ要ス 第九百八十条 推定家督相続人廃除ノ原因止ミタルトキハ被相続人ハ廃除ノ取消ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得 第九百七十八条第一号ノ場合ニ於テハ被相続人ハ何時ニテモ廃除ノ取消ヲ請求スルコトヲ得 前条ノ規定ハ廃除ノ取消ニ之ヲ準用ス 第九百八十一条 被相続人カ推定家督相続人ノ廃除ヲ請求シタル後其裁判確定前ニ死亡シタルトキハ裁判所ハ親族、利害関係人又ハ検事ノ請求ニ因リ戸主権ノ行使及ヒ遺産ノ管理ニ付キ必要ナル処分ヲ命スルコトヲ得廃除ノ遺言アリタルトキ亦同シ 前項ノ場合ニ於テハ第二十七条乃至第二十九条ノ規定ヲ準用ス 第九百八十二条 法定ノ推定家督相続人ナキトキハ被相続人ハ家督相続人ヲ指定スルコトヲ得 家督相続人ノ指定ハ之ヲ取消スコトヲ得 第九百八十三条 家督相続人ノ指定及ヒ其取消ハ戸籍吏ニ之ヲ届出ツルニ因リテ其効力ヲ生ス 第九百八十四条 家督相続人ノ指定及ヒ其取消ハ遺言ヲ以テモ亦之ヲ為スコトヲ得此場合ニ於テハ遺言執行者ハ其遺言カ効力ヲ生シタル後遅滞ナク之ヲ戸籍吏ニ届出ツルコトヲ要ス 第九百八十五条 法定又ハ指定ノ家督相続人ナキ場合ニ於テ其家ニ被相続人ノ父アルトキハ父、父アラサルトキ又ハ父カ其意思ヲ表示スルコト能ハサルトキハ母、父母共ニアラサルトキ又ハ其意思ヲ表示スルコト能ハサルトキハ親族会ハ左ノ順序ニ従ヒ家族中ヨリ家督相続人ヲ選定ス 第一 配偶者但被相続カ入夫又ハ壻養子ナルトキニ限ル 第二 兄弟 第三 姉妹 第四 兄弟姉妹ノ直系卑属 第九百八十六条 家督相続人ヲ選定スル権利ヲ有スル者ハ正当ノ事由アル場合ニ限リ裁判所ノ許可ヲ得テ前条ニ掲ケタル順序ヲ変更シ又ハ選定ヲ為ササルコトヲ得 第九百八十七条 第九百八十五条ノ規定ニ依リテ家督相続人タル者ナキトキハ家督相続ハ左ノ順序ニ従フ 第一 配偶者但第九百八十五条第一号ニ該当セサル者 第二 家ニ在ル直系尊属中親等ノ最モ近キ者但親等ノ同シキ者ノ間ニ在リテハ男ヲ先ニス 第九百八十八条 前条ノ規定ニ依リテ家督相続人タル者ナキトキハ親族会ハ被相続人ノ親族、分家ノ戸主又ハ本家若クハ分家ノ家族中ヨリ家督相続人ヲ選定ス 前項ニ掲ケタル者ノ中ニ家督相続人タルヘキ者ナキトキハ親族会ハ他人ノ中ヨリ之ヲ選定ス 親族会ハ正当ノ事由アル場合ニ限リ前二項ノ規定ニ拘ハラス裁判所ノ許可ヲ得テ他人ヲ選定スルコトヲ得 第四節 家督相続ノ効力 第九百八十九条 家督相続人ハ相続開始ノ時ヨリ前戸主ノ有セシ権利義務ヲ承継ス 第九百九十条 系譜、祭具及ヒ墳墓ノ所有権ヲ承継スルハ家督相続ノ特権ニ属ス 第九百九十一条 隠居者及ヒ入夫婚姻ヲ為ス女戸主ハ公正証書其他確定日附アル証書ニ依リ其財産ヲ留保スルコトヲ得但家督相続人ノ遺留分ニ関スル規定ニ違反スルコトヲ得ス 第九百九十二条 隠居又ハ女戸主ノ入夫婚姻ニ因ル家督相続ノ場合ニ於テハ前戸主ノ債権者ハ其前戸主ニ対シテ弁済ノ請求ヲ為スコトヲ得但家督相続人ニ対スル請求ヲ妨ケス 第九百九十三条 国籍喪失者ノ家督相続人ハ戸主権及ヒ家督相続ノ特権ニ属スル権利ノミヲ承継ス但遺留分及ヒ前戸主カ特ニ指定シタル相続財産ヲ承継スルコトヲ妨ケス 第九百九十四条 国籍喪失ニ因ル家督相続ノ場合ニ於テハ前戸主ノ債権者ハ家督相続人カ受ケタル財産ノ限度ニ於テノミ之ニ対シテ弁済ノ請求ヲ為スコトヲ得 第九百九十五条 家督相続ハ前戸主ノ一身ニ専属セル権利義務ニ其効力ヲ及ホサス 第二章 遺産相続 第一節 総則 第九百九十六条 遺産相続ハ家族ノ死亡ニ因リテ開始ス 第九百九十七条 第九百六十九条第二項及ヒ第九百七十条ノ規定ハ遺産相続ニ之ヲ準用ス 第二節 遺産相続人 第九百九十八条 被相続人ノ直系卑属ハ左ノ規定ニ従ヒ遺産相続人ト為ル 一 親等ノ異ナリタル者ノ間ニ在リテハ其近キ者ヲ先ニス 二 親等ノ同シキ者ハ同順位ニ於テ遺産相続人ト為ル 第九百九十九条 前条ノ規定ニ依リテ相続人タルヘキ者ノ一人又ハ数人カ相続ノ開始前ニ死亡シ又ハ其相続権ヲ失ヒタル場合ニ於テ其者ニ直系卑属アルトキハ其直系卑属ハ前条ノ規定ニ従ヒ其者ト同順位ニ於テ遺産相続人ト為ル 第千条 前二条ノ規定ニ依リテ相続人タルヘキ者ナキ場合ニ於テ遺産相続ヲ為スヘキ者ノ順位左ノ如シ 第一 配偶者 第二 直系尊属 第三 戸主 前項第二号ノ場合ニ於テハ第九百九十八条ノ規定ヲ準用ス 第千一条 左ニ掲ケタル者ハ遺産相続人タルコトヲ得ス 一 故意ニ被相続人又ハ遺産相続ニ付キ先順位若クハ同順位ニ在ル者ヲ死ニ致シ又ハ死ニ致サントシタル為メ刑ニ処セラレタル者 二 第九百七十三条第三号乃至第六号ニ掲ケタル者 第千二条 遺留分ヲ有スル推定遺産相続人カ被相続人ニ対シテ虐待ヲ為シ又ハ之ニ重大ナル侮辱ヲ加ヘタルトキハ被相続人ハ其推定遺産相続人ノ廃除ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得 第九百七十九条ノ規定ハ推定遺産相続人ノ廃除ニ之ヲ準用ス 第千三条 被相続人カ推定遺産相続人ノ廃除ヲ請求シタル後其裁判確定前ニ死亡シタルトキハ裁判所ハ親族、利害関係人又ハ検事ノ請求ニ因リ遺産ノ管理ニ付キ必要ナル処分ヲ命スルコトヲ得廃除ノ遺言アリタルトキ亦同シ 裁判所カ管理人ヲ選任シタル場合ニ於テハ第二十七条乃至第二十九条ノ規定ヲ準用ス 第千四条 被相続人ハ何時ニテモ推定遺産相続人ノ廃除ノ取消ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得 第千五条 被相続人カ遺言ヲ以テ推定遺産相続人ノ廃除ヲ取消ス意思ヲ表示シタルトキハ遺言執行者ハ其遺言カ効力ヲ生シタル後遅滞ナク廃除ノ取消ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ要ス 第千六条 第九百七十二条ノ規定ハ遺産相続人ニ之ヲ準用ス 第三節 遺産相続ノ効力 第一款 総則 第千七条 遺産相続人ハ相続開始ノ時ヨリ被相続人ノ財産ニ属セシ一切ノ権利義務ヲ承継ス但被相続人ノ一身ニ専属セシモノハ此限ニ在ラス 第千八条 遺産相続人数人アルトキハ相続財産ハ其共有ニ属ス 第千九条 各共同相続人ハ其相続分ニ応シテ被相続人ノ権利義務ヲ承継ス 第二款 相続分 第千十条 同順位ノ相続人数人アルトキハ其各自ノ相続分ハ相均シキモノトス但直系卑属数人アルトキハ庶子及ヒ私生子ノ相続分ハ嫡出子ノ相続分ノ二分ノ一トス 第千十一条 第九百九十九条ノ規定ニ依リテ相続人タル直系卑属ノ相続分ハ其直系尊属カ受クヘカリシモノニ同シ但直系卑属数人アルトキハ其相続分ハ前条ノ規定ニ従ヒ各自ノ直系尊属カ受クヘカリシ部分ニ付キ之ヲ定ム 第千十二条 被相続人ハ前二条ノ規定ニ拘ハラス遺言ヲ以テ共同相続人ノ相続分ヲ定メ又ハ之ヲ定ムルコトヲ第三者ニ委託スルコトヲ得但被相続人又ハ第三者ハ遺留分ニ関スル規定ニ違反スルコトヲ得ス 被相続人カ共同相続人中ノ一人若クハ数人ノ相続分ノミヲ定メ又ハ之ヲ定メシメタルトキハ他ノ共同相続人ノ相続分ハ前二条ノ規定ニ依リテ之ヲ定ム 第千十三条 共同相続人中被相続人ヨリ遺贈ヲ受ケ又ハ婚姻、養子縁組、分家、廃絶家再興ノ為メ若クハ生計ノ資本トシテ贈与ヲ受ケタル者アルトキハ其相続分ハ前三条ニ定メタル相続分ヨリ其遺贈又ハ贈与ノ価額ヲ控除シテ之ヲ定ム但被相続人カ反対ノ意思ヲ表示シタルトキハ此限ニ在ラス 遺贈又ハ贈与ノ価額カ相続分ノ価額ヲ超ユルトキハ受遺者又ハ受贈者ハ其相続分ヲ受クルコトヲ得ス 第千十四条 共同相続人ノ一人カ分割前ニ其相続分ヲ第三者ニ譲渡シタルトキハ他ノ共同相続人ハ其価額及ヒ費用ヲ償還シテ其相続分ヲ譲受クルコトヲ得 前項ニ定メタル権利ハ一个月内ニ之ヲ行使スルコトヲ要ス 第三款 遺産ノ分割 第千十五条 被相続人ハ遺言ヲ以テ分割ノ方法ヲ定メ又ハ之ヲ定ムルコトヲ第三者ニ委託スルコトヲ得 第千十六条 被相続人ハ遺言ヲ以テ相続開始ノ時ヨリ五年ヲ超エサル期間内分割ヲ禁スルコトヲ得 第千十七条 遺産ノ分割ハ相続開始ノ時ニ遡リテ其効力ヲ生ス 第千十八条 各共同相続人ハ相続開始前ヨリ存スル事由ニ付キ他ノ共同相続人ニ対シ売主ト同シク其相続分ニ応シテ担保ノ責ニ任ス 第千十九条 各共同相続人ハ其相続分ニ応シ他ノ共同相続人カ分割ニ因リテ受ケタル債権ニ付キ分割ノ当時ニ於ケル債務者ノ資力ヲ担保ス 弁済期ニ至ラサル債権ニ付テハ各共同相続人ハ弁済ノ期日ニ於ケル債務者ノ資力ヲ担保ス 第千二十条 担保ノ責ニ任スル共同相続人中償還ヲ為ス資力ナキ者アルトキハ其償還スルコト能ハサル部分ハ求償者及ヒ他ノ資力アル者各其相続分ニ応シテ之ヲ分担ス但求償者ニ過失アルトキハ他ノ共同相続人ニ対シテ分担ヲ請求スルコトヲ得ス 第千二十一条 前三条ノ規定ハ被相続人カ遺言ヲ以テ別段ノ意思ヲ表示シタルトキハ之ヲ適用セス 第三章 相続ノ承認及ヒ抛棄 第一節 総則 第千二十二条 相続人ハ相続権ノ発生ヲ知リタル時ヨリ三个月内ニ単純若クハ限定ノ承認又ハ抛棄ヲ為スコトヲ要ス但此期間ハ利害関係人又ハ検事ノ請求ニ因リ裁判所ニ於テ之ヲ伸長スルコトヲ得 相続人ハ承認又ハ抛棄ヲ為ス前ニ於テ相続財産ノ調査ヲ為スコトヲ得 第千二十三条 相続人カ無能力者ナルトキハ前条第一項ノ期間ハ其法定代理人カ相続権ノ発生ヲ知リタル時ヨリ之ヲ起算ス 第千二十四条 法定家督相続人ハ抛棄ヲ為スコトヲ得ス 第千二十五条 相続人ハ承認又ハ抛棄ヲ為スマテハ其固有財産ニ於ケルト同一ノ注意ヲ以テ相続財産ヲ管理スルコトヲ要ス 裁判所ハ利害関係人又ハ検事ノ請求ニ因リ何時ニテモ相続財産ノ保存ニ必要ナル処分ヲ命スルコトヲ得 第千二十六条 相続財産ニ関スル費用ハ其財産中ヨリ之ヲ支弁ス但相続人ノ過失ニ因ルモノハ此限ニ在ラス 前項ニ掲ケタル費用ハ遺留分権利者カ贈与ノ減殺ニ因リテ得タル財産ヲ以テ之ヲ支弁スルコトヲ要セス 第千二十七条 相続人カ承認又ハ抛棄ヲ為ス前ニ死亡シタルトキハ其者ノ相続人ハ自己ノ相続権ノ発生ヲ知リタル時ヨリ三个月内ニ前相続ノ承認又ハ抛棄ヲ為スコトヲ得 第千二十八条 承認及ヒ抛棄ハ第千二十二条第一項ノ期間内ト雖モ之ヲ取消スコトヲ得ス 前項ノ規定ハ第一編及ヒ前編ノ規定ニ依リテ承認又ハ抛棄ノ取消ヲ為スコトヲ妨ケス但其取消権ハ追認ヲ為スコトヲ得ル時ヨリ六个月間之ヲ行ハサルトキハ時効ニ因リテ消滅ス承認又ハ抛棄ノ時ヨリ十年ヲ経過シタルトキ亦同シ 第二節 承認 第一款 単純承認 第千二十九条 相続人カ単純ニ承認ヲ為シタルトキハ被相続人ノ一切ノ権利義務ニ付キ其確定相続人ト為ル 第千三十条 左ニ掲ケタル場合ニ於テハ相続人ハ単純承認ヲ為シタルモノト看做ス 一 相続人カ相続財産ノ全部又ハ一部ヲ処分シタルトキ但保存行為及ヒ第六百二条ニ定メタル期間ヲ超エサル賃貸ヲ為スハ此限ニ在ラス 二 相続人カ第千二十二条第一項ノ期間内ニ限定承認又ハ抛棄ヲ為ササリシトキ 三 相続人カ限定承認又ハ抛棄ヲ為シタル後ト雖モ相続財産ノ全部又ハ一部ヲ私取若クハ隠匿シ又ハ悪意ヲ以テ之ヲ財産目録中ニ記載セサリシトキ但相続カ抛棄ヲ為シタルニ因リテ相続権ヲ得タル者カ承認ヲ為シタル後ハ此限ニ在ラス 第二款 限定承認 第千三十一条 相続人ハ相続開始ノ時ニ於テ被相続人カ有セシ財産ノ限度ニ於テノミ被相続人ノ債務及ヒ遺贈ヲ弁済スヘキ責任ヲ以テ承認ヲ為スコトヲ得 第千三十二条 相続人カ限定承認ヲ為サント欲スルトキハ第千二十二条第一項ノ期間内ニ財産目録ヲ調製シテ之ヲ相続開始地ノ裁判所ニ提出シ限定承認ヲ為ス旨ヲ申述スルコトヲ要ス 第千三十三条 相続人カ限定承認ヲ為シタルトキハ其被相続人ニ対シテ有セシ権利義務ハ消滅セサリシモノト看做ス 第千三十四条 限定承認者ハ其固有財産ニ於ケルト同一ノ注意ヲ以テ相続財産ノ管理ヲ継続スルコトヲ要ス 第六百四十五条、第六百四十六条及ヒ第六百五十条第一項、第二項ノ規定ハ限定承認者ト相続債権者及ヒ受遺者トノ間ニ之ヲ準用ス 第千三十五条 限定承認者ハ限定承認ヲ為シタル後五日内ニ一切ノ相続債権者及ヒ受遺者ニ対シ限定承認ヲ為シタルコト及ヒ一定ノ期間内ニ其請求ノ申出ヲ為スヘキ旨ヲ相続開始地ニ於テ公告スルコトヲ要ス但其期間ハ二个月ヲ下ルコトヲ得ス 第七十九条第二項及ヒ第三項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス 第千三十六条 限定承認者ハ前条第一項ノ期間満了前ニハ相続債権者及ヒ受遺者ニ対シテ弁済ヲ拒ムコトヲ得 第千三十七条 第千三十五条第一項ノ期間満了ノ後ハ限定承認者ハ相続財産ヲ以テ其期間内ニ申出テタル債権者其他知レタル債権者ニ各其債権額ノ割合ニ応シテ弁済ヲ為スコトヲ要ス但優先権ヲ有スル債権者ノ権利ヲ害スルコトヲ得ス 第千三十八条 限定承認者ハ弁済期ノ未タ至ラサル債権ト雖モ前条ノ規定ニ依リテ之ヲ弁済スルコトヲ要ス 条件附債権ハ裁判所ニ於テ選任シタル鑑定人ノ評価ニ従ヒ之ヲ弁済スルコトヲ要ス 第千三十九条 限定承認者ハ前二条ノ規定ニ依リテ各債権者ニ弁済ヲ為シタル後ニ非サレハ受遺者ニ弁済ヲ為スコトヲ得ス 第千四十条 前三条ノ規定ニ従ヒ弁済ヲ為スニ付キ相続財産ノ売却ヲ必要トスルトキハ限定承認者ハ之ヲ競売ニ付スルコトヲ要ス但裁判所ニ於テ選任シタル鑑定人ノ評価ニ従ヒ相続財産ノ全部又ハ一部ノ価額ヲ弁済シテ其競売ヲ止ムルコトヲ得 第千四十一条 相続債権者及ヒ受遺者ハ自己ノ費用ヲ以テ相続財産ノ競売又ハ鑑定ニ参加スルコトヲ得此場合ニ於テハ第二百六十条第二項ノ規定ヲ準用ス 第千四十二条 限定承認者カ第千三十七条ニ定メタル公告若クハ催告ヲ為スコトヲ怠リ又ハ同条ノ規定ニ依リテ定メタル期間内ニ或債権者若クハ受遺者ニ弁済ヲ為シタルニ因リ他ノ債権者若クハ受遺者ニ弁済ヲ為スコト能ハサルニ至リタルトキハ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス第千三十七条乃至第千三十九条ノ規定ニ反シテ弁済ヲ為シタルトキ亦同シ 前項ノ規定ハ情ヲ知リテ不当ニ弁済ヲ受ケタル債権者又ハ受遺者ニ対スル他ノ債権者又ハ受遺者ノ求償権ヲ妨ケス 第七百二十四条ノ規定ハ前二項ノ場合ニモ亦之ヲ適用ス 第千四十三条 第千三十五条第一項ノ期間内ニ申出テサリシ債権者及ヒ受遺者ハ残余財産ニ付テノミ其権利ヲ行フコトヲ得但相続財産ニ付キ特別担保ヲ有スル者ハ此限ニ在ラス 第三節 抛棄 第千四十四条 相続ノ抛棄ヲ為サント欲スル者ハ相続開始地ノ裁判所ニ其旨ヲ申述スルコトヲ要ス 第千四十五条 相続ノ抛棄ハ相続開始ノ時ニ遡リテ其効力ヲ生ス (仮定)家族ノ遺産相続人数人アル場合ニ於テ其一人カ抛棄ヲ為シタルトキハ其抛棄シタル相続部分ハ他ノ相続人ノ相続部分ニ応シテ之ニ帰属ス 第千四十六条 相続ノ抛棄ヲ為シタル者ハ其抛棄ニ因リテ相続人ト為ル者カ相続財産ノ管理ヲ始ムルコトヲ得ルマテ自己ノ財産ニ於ケルト同一ノ注意ヲ以テ其財産ノ管理ヲ継続スルコトヲ要ス 第六百四十五条、第六百四十六条及ヒ第六百五十条第一項、第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス 第四章 財産ノ分離 第千四十七条 相続債権者又ハ受遺者ハ相続開始ノ時ヨリ三个月内ニ相続人ノ財産中ヨリ相続財産ヲ分離センコトヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得其期間満了ノ後ト雖モ相続人カ現実ニ相続財産ヲ占有セサル間亦同シ 裁判所カ前項ノ請求ニ因リテ財産ノ分離ヲ命シタルトキハ其請求ヲ為シタル者ハ五日内ニ他ノ相続債権者及ヒ受遺者ニ対シ財産分離ノ命令アリタルコト及ヒ一定ノ期間内ニ配当加入ノ申出ヲ為スヘキ旨ヲ公告スルコトヲ要ス但其期間ハ二个月ヲ下ルコトヲ得ス 第千四十八条 財産分離ノ請求ヲ為シタル者及ヒ前条第二項ノ規定ニ依リテ配当加入ノ申出ヲ為シタル者ハ相続財産ニ付キ相続人ノ債権者ニ先チテ弁済ヲ受クル権利ヲ有ス 第千四十九条 財産分離ノ請求アリタルトキハ裁判所ハ相続財産ノ管理ニ付キ必要ナル処分ヲ命スルコトヲ得 裁判所カ管理人ヲ選任シタル場合ニ於テハ第二十七条乃至第二十九条ノ規定ヲ準用ス 第千五十条 相続人ハ単純承認ヲ為シタル後ト雖モ財産分離ノ請求アリタルトキハ爾後其固有財産ニ於ケルト同一ノ注意ヲ以テ相続財産ノ管理ヲ為スコトヲ要ス但裁判所ニ於テ管理人ヲ選任シタルトキハ此限ニ在ラス 第六百四十五条乃至第六百四十七条及ヒ第六百五十条第一項、第二項ノ規定ハ相続財産ノ管理ヲ為ス相続人ト財産分離ノ請求ヲ為シタル者及ヒ配当加入ノ申出ヲ為シタル者トノ間ニ之ヲ準用ス 第千五十一条 財産ノ分離ハ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得但不動産ニ付テハ登記ヲ為スコトヲ要ス 第千五十二条 第三百四条ノ規定ハ財産ノ分離ニ之ヲ準用ス 第千五十三条 相続人ハ第千四十七条第一項及ヒ第二項ノ期間満了前ニハ相続債権者及ヒ受遺者ニ対シテ弁済ヲ拒ムコトヲ得 右ノ期間満了ノ後ハ相続人ハ相続財産ヲ以テ財産分離ノ請求又ハ配当加入ノ申出ヲ為シタル各債権者及ヒ受遺者ニ弁済ヲ為スコトヲ要ス此場合ニ於テハ第千三十七条乃至第千四十一条ノ規定ヲ準用ス 第千五十四条 財産分離ノ請求ヲ為シタル者及ヒ配当加入ノ申出ヲ為シタル者ハ相続財産ヲ以テ全部ノ弁済ヲ受クルコト能ハサリシ場合ニ限リ相続人ニ対シテ其権利ヲ行フコトヲ得但相続人ノ債権者ハ之ニ先チテ弁済ヲ受クルコトヲ得 第千五十五条 相続人ハ其固有財産ヲ以テ相続債権者又ハ受遺者ニ弁済ヲ為シ又ハ之ニ相当ノ担保ヲ供シテ財産分離ノ請求ヲ防止シ又ハ其効力ヲ消滅セシムルコトヲ得 第千五十六条 相続人カ限定承認ヲ為スコトヲ得ル間又ハ現実ニ相続財産ヲ占有セサル間ハ其債権者ハ財産分離ノ請求ヲ為スコトヲ得 第千三十五条乃至第千四十二条及ヒ第千五十四条ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス但第千三十五条ニ定メタル公告ハ財産分離ノ請求ヲ為シタル債権者之ヲ為スコトヲ要ス 第五章 相続人ノ曠欠 第千五十七条 相続人アルコト分明ナラサルトキハ相続財産ハ之ヲ法人トス 第千五十八条 前条ノ場合ニ於テ裁判所ハ利害関係ノ又ハ検事ノ請求ニ因リ相続財産ノ管理人ヲ選任スルコトヲ要ス 裁判所ハ遅滞ナク管理人ノ選任ヲ公告スルコトヲ要ス 第千五十九条 第二十七条乃至第二十九条ノ規定ハ相続財産ノ管理人ニ之ヲ準用ス 第千六十条 管理人ハ相続債権者又ハ受遺者ノ請求アルトキハ之ニ相続財産ノ状況ヲ報告スルコトヲ要ス 第千六十一条 第千五十八条第二項ニ定メタル公告アリタル後二个月内ニ相続人カ現出セサルトキハ管理人ハ遅滞ナク相続開始地ニ於テ一切ノ相続債権者及ヒ受遺者ニ対シ一定ノ期間内ニ其請求ノ申出ヲ為スヘキ旨ヲ公告スルコトヲ要ス但其期間ハ二个月ヲ下ルコトヲ得ス 第七十九条第二項、第三項及ヒ第千三十八条乃至第千四十三条ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス但第千四十条但書ノ規定ハ此限ニ在ラス 第千六十二条 相続人アルコト確実ナルニ至リタルトキハ法人ハ存立セサリシモノト看做ス但管理人カ其権限内ニ於テ為シタル行為ノ効力ヲ妨ケス 第千六十三条 管理人ノ代理権ハ相続人カ現出シテ相続ノ承認ヲ為シタル時ニ消滅ス 前項ノ場合ニ於テ管理人ハ遅滞ナク相続人ニ対シテ管理ノ計算ヲ為スコトヲ要ス 第千六十四条 第千六十一条第一項ノ規定ニ依リテ定メタル期間満了ノ後仍ホ相続人アルコト分明ナラサルトキハ裁判所ハ管理人又ハ検事ノ請求ニ因リ相続権ヲ有スル者ハ一定ノ期間内ニ之ヲ主張スヘキ旨ヲ公告スルコトヲ要ス但其期間ハ一年ヲ下ルコトヲ得ス 第千六十五条 前条ノ期間内ニ相続権ヲ主張スル者ナキトキハ相続財産ハ国庫ニ帰属ス此場合ニ於テハ第千六十三条ノ規定ヲ準用ス 相続債権者及ヒ受遺者ハ国庫ニ対シテ其権利ヲ行フコトヲ得ス 第六章 遺言 第一節 総則 第千六十六条 遺言ハ本法ニ定メタル方式ニ従ヒテノミ之ヲ為スコトヲ得 第千六十七条 満十五年ニ達シタル者ハ遺言ヲ為スコトヲ得 第千六十八条 第四条、第九条、第十二条及ヒ第十四条ノ規定ハ遺言ニハ之ヲ適用セス 第千六十九条 遺言者ハ遺言ヲ為ス時ニ於テ其能力ヲ有スルコトヲ要ス 第千七十条 遺言者ハ包括又ハ特定ノ名義ヲ以テ其財産ノ全部又ハ一部ヲ処分スルコトヲ得但遺留分ニ関スル規定ニ違反スルコトヲ得ス 第千七十一条 第九百七十二条及ヒ第九百七十三条第二号乃至第六号ノ規定ハ受遺者ニ之ヲ準用ス 第千七十二条 被後見人カ後見人又ハ其配偶者若クハ直系卑属ノ利益ト為ルヘキ遺言ヲ為シタルトキハ其遺言ハ無効トス但後見ノ計算ノ終ハリタル後ハ此限ニ在ラス 前項ノ規定ハ直系血族、配偶者又ハ兄弟姉妹カ後見人タル場合ニハ之ヲ適用セス 第二節 遺言ノ方式 第一款 普通方式 第千七十三条 遺言ハ自筆証書、公正証書又ハ秘密証書ニ依ルニ非サレハ之ヲ為スコトヲ得ス但特別方式ニ依ルコトヲ許ス場合ハ此限ニ在ラス 第千七十四条 自筆証書ニ依リテ遺言ヲ為スニハ遺言者其全文、日附及ヒ氏名ヲ自書シ之ニ捺印スルコトヲ要ス 自筆証書中ノ塗抹、書入其他ノ変更ハ遺言者其場所ヲ指示シ之ヲ変更シタル旨ヲ附記シテ特ニ之ニ署名シ且其変更ノ場所ニ捺印スルコトヲ要ス 第千七十五条 公正証書ニ依リテ遺言ヲ為スニハ左ノ方式ニ従フコトヲ要ス 一 証人二人以上ノ立会アルコト 二 遺言者カ遺言ノ旨趣ヲ公証人ニ口授スルコト 三 公証人カ遺言者ノ口述ヲ筆記シ之ヲ遺言者及ヒ証人ニ読聞カスコト 四 遺言者及ヒ証人カ筆記ノ正確ナルコトヲ承認シタル後各署名捺印スルコト但遺言者カ署名スルコト能ハサル場合ニ於テハ公証人其事由ヲ附記シテ署名ニ代フルコトヲ得 五 公証人カ其証書ハ前四号ニ掲ケタル方式ニ従ヒテ作リタルモノナル旨ヲ附記シテ署名捺印スルコト 第千七十六条 秘密証書ニ依リテ遺言ヲ為スニハ左ノ方式ニ従フコトヲ要ス 一 遺言者カ自ラ其証書ニ署名捺印スルコト 二 遺言者カ其証書ヲ封シテ之ニ封印スルコト 三 遺言者カ公証人一人及ヒ証人二人以上ノ前ニ封書ヲ提出シテ自己ノ遺言書ナル旨並ニ其筆者ノ氏名、住所ヲ申述スルコト 四 公証人カ其証書提出ノ日附及ヒ遺言者ノ申述ヲ封紙ニ記シタル後遺言者及ヒ証人ト共ニ署名捺印スルコト 第千七十四条第二項ノ規定ハ秘密証書ニ依ル遺言ニ之ヲ準用ス 第千七十七条 秘密証書ニ依ル遺言ハ前条ニ定メタル方式ニ欠クルモノアルモ其遺言書カ第千七十四条ノ方式ヲ具備スルトキハ自筆証書ニ依ル遺言トシテ其効力ヲ有ス 第千七十八条 言語ヲ発スルコト能ハサル者カ秘密証書ニ依リテ遺言ヲ為ス場合ニ於テハ遺言者ハ公証人及ヒ証人ノ前ニ於テ其証書ハ自己ノ遺言書ナル旨並ニ其筆者ノ氏名、住所ヲ封紙ニ自書シテ第千七十六条第一項第三号ノ申述ニ代フルコトヲ要ス 公証人ハ遺言者カ前項ニ定メタル方式ヲ践ミタル旨ヲ封紙ニ記シテ申述ノ記載ニ代フルコトヲ要ス 第千七十九条 禁治産者カ本心ニ復シタル時ニ於テ遺言ヲ為スニハ医師二人以上ノ立会アルコトヲ要ス 遺言ニ立会ヒタル医師ハ遺言者カ遺言ヲ為ス時ニ於テ心神喪失ノ状況ニ在ラサリシ旨ヲ記シ署名捺印スルコトヲ要ス但秘密証書ニ依リテ遺言ヲ為ス場合ニ於テハ其封紙ニ右ノ記載及ヒ署名捺印ヲ為スコトヲ要ス 第千八十条 左ニ掲ケタル者ハ遺言ノ証人又ハ立会人タルコトヲ得ス 一 未成年者 二 禁治産者及ヒ準禁治産者 三 剥奪公権者及ヒ停止公権者 四 遺言者ノ配偶者 五 推定相続人、受遺者及ヒ其配偶者並ニ直系血族 六 公証人ト家ヲ同クスル者及ヒ公証人ノ直系血族並ニ筆生、雇人 第千八十一条 遺言ハ二人以上同一ノ証書ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得ス 第二款 特別方式 第千八十二条 疾病其他ノ事由ニ因リ死亡ノ危急ニ迫リタル者カ遺言ヲ為サント欲スルトキハ証人三人以上ノ立会ヲ以テ其一人ニ遺言ノ旨趣ヲ口授シテ之ヲ為スコトヲ得此場合ニ於テハ其口授ヲ受ケタル者之ヲ筆記シテ遺言者及ヒ他ノ証人ニ読聞カセ各証人ハ筆記ノ正確ナルコトヲ承認シタル後署名捺印スルコトヲ要ス 前項ノ規定ニ依リテ為シタル遺言ハ遺言ノ日ヨリ二十日内ニ証人ノ一人又ハ利害関係人ヨリ其確認ヲ裁判所ニ請求スルニ非サレハ其効ナシ 裁判所ハ確認ノ請求アル遺言カ遺言者ノ真実ノ意思ニ出テタル心証ヲ得ルニ非サレハ之ヲ確認スルコトヲ得ス 第千八十三条 伝染病ノ為メ行政処分ヲ以テ交通ヲ遮断シタル場所ニ在ル者ハ警察官一人及ヒ証人一人以上ノ立会ヲ以テ遺言書ヲ作ルコトヲ得 第千八十四条 従軍中ノ軍人及ヒ軍属ハ将校又ハ相当官一人及ヒ証人二人以上ノ立会ヲ以テ遺言書ヲ作ルコトヲ得若シ将校及ヒ相当官在ラサルトキハ準士官又ハ下士一人ヲ以テ之ニ代フルコトヲ得 従軍中ノ軍人又ハ軍属カ疾病又ハ傷痍ノ為メ病院ニ在ルトキハ其院ノ医師ヲ以テ前項ニ掲ケタル将校又ハ相当官ニ代フルコトヲ得 第千八十五条 従軍中疾病、傷痍其他ノ事由ニ因リ死亡ノ危急ニ迫リタル軍人及ヒ軍属ハ証人二人以上ノ立会ヲ以テ口頭ニテ遺言ヲ為スコトヲ得 前項ノ規定ニ従ヒテ為シタル遺言ハ証人其旨趣ヲ筆記シテ之ニ署名捺印シ且遅滞ナク之ヲ理事又ハ主理ニ提出シテ其確認ヲ請求スルニ非サレハ其効ナシ 第千八十二条第三項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス 第千八十六条 艦船中ニ在ル者ハ軍艦及ヒ海軍所属船舶ニ於テハ将校又ハ相当官一人及ヒ証人二人以上其他ノ船舶ニ於テハ船長又ハ事務員一人及ヒ証人二人以上ノ立会ヲ以テ遺言書ヲ作ルコトヲ得 前項ノ場合ニ於テ将校又ハ相当官在ラサルトキハ準士官又ハ下士一人ヲ以テ之ニ代フルコトヲ得 第千八十七条 第千八十五条ノ規定ハ艦船遭難ノ場合ニ之ヲ準用ス 第千八十八条 第千八十三条、第千八十四条及ヒ第千八十六条ノ場合ニ於テハ遺言者、筆者、立会人及ヒ証人ハ各遺言書ニ署名捺印スルコトヲ要ス 署名又ハ捺印スルコト能ハサル者アルトキハ立会人又ハ証人ハ其事由ヲ附記スルコトヲ要ス 第千八十九条 第千七十六条第二項及ヒ第千七十九条乃至第千八十一条ノ規定ハ前七条ノ規定ニ依リテ為ス遺言ニ之ヲ準用ス 第千九十条 第千八十二条乃至第千八十八条ノ規定ニ依リテ為シタル遺言ハ遺言者カ普通方式ニ依リテ遺言ヲ為スコトヲ得ルニ至リタル時ヨリ六个月間生存スルトキハ其効ナシ 第千九十一条 外国ニ在ル日本人ハ第千七十六条ニ定メタル方式ニ従ヒ又ハ其国ノ法律ニ依リテ定マリタル方式ニ従ヒテ遺言ヲ為スコトヲ得 日本ノ領事ノ駐在スル地ニ在ル日本人ハ公正証書又ハ秘密証書ニ依リテ遺言ヲ為スコトヲ得此場合ニ於テハ公証人ノ職務ハ領事之ヲ行フ 第千九十二条 日本ニ在ル外国人ハ本節ノ規定ニ従ヒ又ハ其本国法ノ規定ニ従ヒテ遺言ヲ為スコトヲ得 第三節 遺言ノ効力 第千九十三条 遺言ハ遺言者ノ死亡ノ時ヨリ其効力ヲ生ス 遺言ニ停止条件ヲ附シタル場合ニ於テ其条件カ遺言者ノ死亡後ニ成就シタルトキハ遺言ハ条件成就ノ時ヨリ其効力ヲ生ス 第千九十四条 受遺者ハ遺言者ノ死亡後何時ニテモ遺贈ノ抛棄ヲ為スコトヲ得 第千九十五条 遺贈義務者其他ノ利害関係人ハ相当ノ期間ヲ定メ其期間内ニ遺贈ノ承認又ハ抛棄ヲ為スヘキ旨ヲ受遺者ニ催告スルコトヲ得若シ受遺者カ其期間内ニ遺贈義務者ニ対シテ其意思ヲ表示セサルトキハ遺贈ハ之ヲ承認シタルモノト看做ス 第千九十六条 包括受遺者ハ遺産相続人ト同一ノ権利義務ヲ有ス 第千九十七条 受遺者ハ遺贈カ弁済期ニ至ラサル間遺贈義務者ニ対シテ相当ノ担保ヲ請求スルコトヲ得 第千九十八条 遺贈ハ遺言者ノ死亡前ニ受遺者カ死亡シタルトキハ其効力ヲ生セス 停止条件附遺贈ニ付テハ受遺者カ其条件ノ成就前ニ死亡シタルトキ亦同シ但遺言者カ其遺言ニ反対ノ意思ヲ表示シタルトキハ此限ニ在ラス 第千九十九条 遺贈カ前条ノ規定ニ依リテ其効力ヲ生セサルトキ又ハ抛棄ニ因リテ其効力ナキニ至リタルトキハ受遺者カ受クヘカリシ部分ハ相続人ニ属ス但遺言者カ其遺言ニ反対ノ意思ヲ表示シタルトキハ此限ニ在ラス 第千百条 受遺者カ遺贈ノ承認又ハ抛棄ヲ為ス前ニ死亡シタルトキハ其相続人ハ自己ノ相続権ノ範囲内ニ於テ承認又ハ抛棄ヲ為スコトヲ得但遺言者カ其遺言ニ別段ノ意思ヲ表示シタルトキハ此限ニ在ラス 第千百一条 遺贈ノ承認及ヒ抛棄ハ之ヲ取消スコトヲ得ス 第千二十八条第二項ノ規定ハ遺贈ノ承認及ヒ抛棄ニ之ヲ準用ス 第千百二条 遺贈ノ抛棄ハ遺言者ノ死亡ノ時ニ遡リテ其効力ヲ生ス 第千百三条 遺贈ハ其目的タル権利カ遺言者ノ死亡ノ時ニ於テ相続財産ニ属セサルトキハ其効力ヲ生セス但其権利カ相続財産ニ属セサルコトアルニ拘ハラス之ヲ以テ遺贈ノ目的ト為シタルモノト認ムヘキトキハ此限ニ在ラス 第千百四条 相続財産ニ属セサル権利ヲ目的トスル遺贈カ前条但書ノ規定ニ依リテ有効ナルトキハ遺贈義務者ハ其権利ヲ取得シテ之ヲ受贈者ニ移転スル義務ヲ負フ若シ之ヲ取得スルコト能ハサルカ又ハ之ヲ取得スルニ付キ過分ノ費用ヲ要スルトキハ其価額ヲ弁償スルコトヲ要ス但遺言者カ其遺言ニ別段ノ意思ヲ表示シタルトキハ其意思ニ従フ 第千百五条 種類ノミニ依リテ定マリタル物ヲ以テ遺贈ノ目的ト為シタル場合ニ於テ受遺者カ追奪ヲ受ケタルトキハ遺贈義務者ハ之ニ対シテ売主ト同シク担保ノ責ニ任ス 前項ノ場合ニ於テ物ニ瑕疵アリタルトキハ遺贈義務者ハ瑕疵ナキ物ヲ以テ之ニ代フルコトヲ要ス但故意ニ瑕疵ヲ隠秘シタルトキハ受遺者ハ其権利ヲ行使スルニ代ヘ又ハ之ト共ニ損害賠償ノ請求ヲ為スコトヲ得 第千百六条 遺言者カ遺贈ノ目的物ノ滅失若クハ変造又ハ其占有ノ喪失ニ因リテ第三者ニ対シ償金ヲ請求スル権利ヲ有スルトキハ其権利ヲ以テ遺贈ノ目的ト為シタルモノト推定ス 遺贈ノ目的物カ他ノ物ト附合又ハ混和シタル場合ニ於テ遺言者カ第二百四十四条又ハ第二百四十五条ノ規定ニ依リ合成物又ハ混和物ノ共有権ヲ取得シタルトキハ其共有権ヲ以テ遺贈ノ目的ト為シタルモノト推定ス 第千百七条 遺贈ノ目的タル物又ハ権利カ遺言者ノ死亡ノ時ニ於テ第三者ノ権利ノ目的タルトキハ受遺者ハ遺贈義務者ニ対シテ其権利ヲ消滅セシムルコトヲ請求スルコトヲ得ス但遺言者カ其遺言ニ反対ノ意思ヲ表示シタルトキハ此限ニ在ラス 第千百八条 債権ヲ以テ遺贈ノ目的ト為シタル場合ニ於テ遺言者カ爾後弁済ヲ受ケ且其受取リタル物カ尚ホ相続財産中ニ存スルトキハ其物ヲ以テ遺贈ノ目的ト為シタルモノト推定ス 金銭ヲ目的トスル債権ニ付テハ相続財産中ニ其債権額ニ相当スル金銭ナキトキト雖モ其金額ヲ以テ遺贈ノ目的ト為シタルモノト推定ス 第千百九条 受遺者ハ遺贈ノ履行ヲ請求スルコトヲ得ル時ヨリ果実ヲ取得ス但遺言者カ其遺言ニ別段ノ意思ヲ表示シタルトキハ此限ニ在ラス 第千百十条 遺贈義務者カ遺言者ノ死亡後遺贈ノ目的物ニ付キ費用ヲ出タシタルトキハ受遺者ハ第百九十六条ノ規定ニ従ヒ其償還ヲ為スコトヲ要ス 果実ヲ収取スル為メニ出タシタル通常ノ必要費ハ果実ノ価格ヲ超エサル限度ニ於テ其償還ヲ請求スルコトヲ得 第千百十一条 負担附遺贈ヲ受ケタル者ハ遺贈ノ目的ノ価額ノ限度ニ於テノミ其負担シタル義務ヲ履行スル責ニ任ス 受遺者カ遺贈ノ抛棄ヲ為シタルトキハ負担ノ利益ヲ受クヘキ者自ラ受遺者ト為ルコトヲ得 第千百十二条 負担附遺贈ノ目的ノ価額カ相続ノ限定承認又ハ遺留分回復ノ訴ニ因リテ減少シタルトキハ受遺者ハ其減少ノ割合ニ応シテ負担ノ減少ヲ主張スルコトヲ得但遺言者カ其遺言ニ反対ノ意思ヲ表示シタルトキハ此限ニ在ラス 第四節 遺言ノ執行 第千百十三条 遺言書ノ保管者ハ相続ノ開始ヲ知リタル後遅滞ナク之ヲ相続開始地ノ裁判所ニ提出シテ其検認ヲ請求スルコトヲ要ス遺言書ノ保管者ナキ場合ニ於テ相続人カ遺言書ヲ発見シタル後亦同シ 前項ノ規定ハ公正証書ニハ之ヲ適用セス 封印アル遺言書ハ裁判所ニ於テ相続人ノ立会ヲ以テスルニ非サレハ之ヲ開封スルコトヲ得ス 第千百十四条 前条ノ規定ニ反シテ遺言書ヲ提出スルコトヲ怠リ、其検認ヲ経スシテ遺言ヲ執行シ又ハ裁判所外ニ於テ其開封ヲ為シタル者ハ二百円以下ノ過料ニ処セラル 第千百十五条 遺言者ハ遺言ヲ以テ一人又ハ数人ノ遺言執行者ヲ指定シ又ハ其指定ヲ第三者ニ委託スルコトヲ得 遺言執行者指定ノ委託ヲ受ケタル者ハ遅滞ナク其指定ヲ為シテ之ヲ相続人ニ通知スルコトヲ要ス 第千百十六条 遺言執行者カ就職ヲ承諾シタルトキハ直チニ其任務ヲ行フコトヲ要ス 第千百十七条 相続人其他ノ利害関係人ハ相当ノ期間ヲ定メ其期間内ニ就職ヲ承諾スルヤ否ヤヲ確答スヘキ旨ヲ遺言執行者ニ催告スルコトヲ得若シ遺言執行者カ其期間内ニ相続人ニ対シテ確答ヲ為ササルトキハ就職ヲ承諾シタルモノト看做ス 第千百十八条 無能力者及ヒ破産ノ宣告ヲ受ケタル者ハ遺言執行者ト為ルコトヲ得ス 第千百十九条 遺言執行者ナキトキ又ハ之ナキニ至リタルトキハ裁判所ハ利害関係人ノ請求ニ因リ遺言執行者ヲ選定スルコトヲ得 前項ノ規定ニ依リテ選定セラレタル遺言執行者ハ正当ノ理由アルニ非サレハ就職ヲ拒ムコトヲ得ス 第千百二十条 遺言執行者ハ就職後遅滞ナク相続財産ノ目録ヲ調製シテ之ヲ相続人ニ交付スルコトヲ要ス 遺言執行者ハ相続人ノ請求アルトキハ其立会ヲ以テ財産目録ヲ調製シ又ハ公証人ヲシテ之ヲ調製セシムルコトヲ要ス 第千百二十一条 遺言執行者ハ相続財産ノ管理其他遺言ノ執行ニ必要ナル一切ノ行為ヲ為ス権利義務ヲ有ス 第六百四十四条乃至第六百四十七条及ヒ第六百五十条ノ規定ハ遺言執行者ト相続人トノ間ニ之ヲ準用ス 第千百二十二条 前二条ノ規定ハ遺言カ特定財産ニ関スル場合ニ於テハ其財産ニ付テノミ之ヲ適用ス 第千百二十三条 遺言執行者ハ之ヲ相続人ノ代理人ト看做ス 第千百二十四条 遺言執行者ハ已ムコトヲ得サル事由アルニ非サレハ第三者ヲシテ其任務ヲ行ハシムルコトヲ得ス但遺言者カ其遺言ニ反対ノ意思ヲ表示シタルトキハ此限ニ在ラス 遺言執行者カ前項ノ規定ニ依リ第三者ヲシテ其任務ヲ行ハシムル場合ニ於テハ相続人ニ対シテ第百五条ニ定メタル責任ヲ負フ 第千百二十五条 遺言執行者数人アルトキハ其任務ノ執行ハ過半数ヲ以テ之ヲ決ス但遺言者カ其遺言ニ別段ノ意思ヲ表示シタルトキハ此限ニ在ラス 各遺言執行者ハ前項ノ規定ニ拘ハラス保存行為ヲ為スコトヲ得 第千百二十六条 遺言執行者ハ遺言ニ報酬ヲ定メタルトキニ限リ之ヲ受クルコトヲ得 裁判所ニ於テ遺言執行者ヲ選定シタルトキハ裁判所ハ事情ニ依リ其報酬ヲ定ムルコトヲ得 遺言執行者カ報酬ヲ受クヘキ場合ニ於テハ第六百四十八条第二項及ヒ第三項ノ規定ヲ準用ス 第千百二十七条 遺言執行者アル場合ニ於テハ相続人ハ相続財産ヲ処分シ其他遺言ノ執行ヲ妨クヘキ行為ヲ為スコトヲ得ス 第千百二十八条 遺言執行者カ其任務ヲ怠リタルトキ其他正当ノ事由アルトキハ利害関係人ハ其解任ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得 遺言執行者ハ正当ノ事由アルトキハ其任務ヲ辞スルコトヲ得 第千百二十九条 遺言執行者ノ任務ハ其死亡、能力喪失又ハ破産ニ因リテ終了ス 第千百三十条 第六百五十四条及ヒ第六百五十五条ノ規定ハ遺言執行者ノ任務カ終了シタル場合ニ之ヲ準用ス 第千百三十一条 遺言ノ執行ニ関スル費用ハ相続財産ノ負担トス但之ニ因リテ遺留分ヲ減少スルコトヲ得ス 第五節 遺言ノ取消 第千百三十二条 遺言者ハ遺言ノ方式ニ従ヒ何時ニテモ其遺言ノ全部又ハ一部ヲ取消スコトヲ得 第千百三十三条 前ノ遺言ト後ノ遺言ト牴触スルトキハ其牴触スル部分ニ付テハ後ノ遺言ヲ以テ前ノ遺言ヲ取消シタルモノト看做ス 前項ノ規定ハ遺言ト遺言後ノ生前処分其他ノ法律行為ト牴触スル場合ニ之ヲ準用ス 第千百三十四条 遺言者カ故意ニ遺言書ヲ毀滅シ又ハ之ニ変更ヲ加ヘタルトキハ其毀滅シ又ハ変更シタル部分ニ付テハ遺言ヲ取消シタルモノト看做ス遺言者カ故意ニ遺贈ノ目的物ヲ毀滅シタルトキ亦同シ 第千百三十五条 前三条ノ規定ニ依リテ取消サレタル遺言ハ其取消ノ行為カ取消サレ又ハ効力ヲ生セサルニ至リタルトキト雖モ其効力ヲ回復セス 第千百三十六条 遺言者ハ其遺言ノ取消権ヲ抛棄スルコトヲ得ス 第千百三十七条 受遺者カ其負担ノ履行ヲ為ササルトキハ相続人ハ相当ノ期間ヲ定メテ其履行ヲ催告シ若シ其期間内ニ履行ナキトキハ遺言ノ取消ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得 第七章 遺留分 第千百三十八条 法定家督相続人ハ遺留分トシテ被相続人ノ財産ノ半額ヲ受クル権利ヲ有ス 此他ノ家督相続人ハ遺留分トシテ被相続人ノ財産ノ三分ノ一ヲ受ク 第千百三十九条 遺産相続人タル直系卑属ハ遺留分トシテ被相続人ノ財産ノ半額ヲ受ク 遺産相続人タル配偶者又ハ直系尊属ハ遺留分トシテ被相続人ノ財産ノ三分ノ一ヲ受ク 第千百四十条 前条ノ規定ニ依リテ遺留分ヲ受クヘキ相続人数人アルトキハ其遺留分ハ各自平等ニテ其共有ニ属ス 第九百九十九条及第千十一条ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス 第千百四十一条 遺留分ハ相続開始ノ時ニ於テ被相続人カ有セシ財産ノ価額ニ其生前ニ贈与シタル財産ノ価額ヲ加ヘ其中ヨリ債務ノ全額ヲ控除シテ之ヲ算定ス 条件附又ハ存続期間ノ不確定ナル権利ハ裁判所ニ於テ選定シタル鑑定人ノ評価ニ従ヒ其価額ヲ定ム 第九百九十条ニ掲ケタル権利ハ遺留分ノ算定ニ関シテハ其価額ヲ算入セス 第千百四十二条 贈与ハ相続開始前一年間ニ為シタルモノニ限リ前条ノ規定ニ依リテ其目的タル財産ノ価額ヲ算入ス其期間前ニ為シタルモノト雖モ当事者双方カ遺留分権利者ニ損害ヲ加フルコトヲ知リテ之ヲ為シタルトキ亦同シ 第千百四十三条 前条ニ掲ケタル贈与ノ目的タル財産ハ受贈者ノ行為ニ因リテ其価格ノ増減アリタルトキト雖モ相続開始ノ当時仍ホ原状ニテ存スルモノト看做シ其価額ヲ定ム 第千百四十四条 第千十三条ノ規定ハ遺留分ノ算定ニ之ヲ準用ス 第千百四十五条 遺留分権利者及ヒ其承継人ハ遺留分ヲ保全スルニ必要ナル限度ニ於テ遺贈及ヒ第千百四十二条ニ掲ケタル贈与ノ減殺ヲ請求スルコトヲ得 第千百四十六条 条件附又ハ存続期間ノ不確定ナル権利ヲ以テ贈与又ハ遺贈ノ目的ト為シタル場合ニ於テ其贈与又ハ遺贈ノ一部ヲ減殺スヘキトキハ遺留分権利者ハ第千百四十一条第二項ノ規定ニ依リテ定メタル価格ニ従ヒ遺留分ヲ害セサル限度ニ於テ直チニ其価額ヲ受贈者又ハ受遺者ニ給付スルコトヲ要ス 第千百四十七条 贈与ハ遺贈ヲ減殺シタル後ニ非サレハ之ヲ減殺スルコトヲ得ス 第千百四十八条 遺贈ハ其目的ノ価額ノ割合ニ応シテ平等ニ之ヲ減殺ス但遺言者カ其遺言ニ別段ノ意思ヲ表示シタルトキハ此限ニ在ラス 第千百四十九条 贈与ノ減殺ハ後ノ贈与ヨリ始メ順次ニ前ノ贈与ニ及フ 第千百五十条 受贈者ハ其返還スヘキ財産ノ外尚ホ減殺ノ請求アリタル日以後ノ果実ヲ返還スルコトヲ要ス 第千百五十一条 減殺ヲ受クヘキ受贈者ノ無資力ニ因リテ生スル損失ハ遺留分権利者ノ負担ニ帰ス 第千百五十二条 不相当ナル対価ヲ以テ為シタル有償行為ハ当事者双方カ遺留分権利者ニ損害ヲ加フルコトヲ知リテ為シタルモノニ限リ之ヲ贈与ト看做シ其対価ヲ償還シテ其減殺ヲ請求スルコトヲ得 第千百五十三条 減殺ヲ受クヘキ受贈者カ贈与ノ目的ヲ他人ニ譲渡シタルトキハ遺留分権利者ニ其価額ヲ弁償スルコトヲ要ス但譲受人カ譲渡ノ当時其事情ヲ知リタルトキハ遺留分権利者ハ之ニ対シテ減殺ヲ請求スルコトヲ得 前項ノ規定ハ受贈者カ贈与ノ目的ノ上ニ権利ヲ設定シタル場合ニ之ヲ準用ス 第千百五十四条 受贈者及ヒ受遺者ハ減殺ヲ受クヘキ限度ニ於テ贈与又ハ遺贈ノ目的ノ評価額ヲ遺留分権利者ニ弁償シテ返還ノ義務ヲ免ルルコトヲ得 前項ノ規定ハ前条第一項但書ノ場合ニ之ヲ準用ス 第千百五十五条 減殺ノ請求権ハ遺留分権利者カ相続ノ開始及ヒ減殺スヘキ贈与又ハ遺贈アリタルコトヲ知リタル時ヨリ一年間之ヲ行ハサルトキハ時効ニ因リテ消滅ス相続開始ノ時ヨリ十年ヲ経過シタルトキ亦同シ