決議案 (明治二十七年五月二十五日配付)
参考原資料
穂積陳重博士関係文書 第七部I(整理案第二号)の地の文書
第三章 物
第八十八条 本法ニ於テ物トハ有体物ヲ謂フ
第八十九条 土地建物及ヒ其定著物ハ之ヲ不動産トス
此他ノ物ハ総テ之ヲ動産トス
無記名債権ハ之ヲ動産ト看做ス
第九十条 物ノ所有者カ其物ノ常用ニ供スル為メ自己ノ所有ニ属スル他ノ物ヲ以テ之ニ附属セシメタルトキハ其附属セシメタル物ヲ以テ従物トス
従物ハ主物ノ処分ニ随フ
第九十一条 物ノ用方ニ従ヒ採取スル産出物ヲ果実トス
物ノ使用ノ対価トシテ受クヘキ金銭其他ノ有価物ヲ法定果実トス
第九十二条 果実ハ其元物ヨリ分離シタル時ニ於テ之ヲ採取スル権利ヲ有スル者ニ属ス
法定果実ハ之ヲ採取スル権利ノ存続期間中日割ヲ以テ取得ス
第四章 法律行為
第一節 意思表示
第九十三条 意思表示ハ表意者カ其真意ニ非サルコトヲ知リテ之ヲ為シタル為メ其効力ヲ妨ケラルルコトナシ但相手方カ表意者ノ真意ヲ知リタルトキハ其意思表示ハ無効トス
第九十四条 相手方ト通シテ為シタル虚偽ノ意思表示ハ無効トス
前項ノ無効ハ善意ノ第三者ニ対シテ之ヲ主張スルコトヲ得ス
第九十五条 意思表示ハ法律行為ノ要素ニ錯誤アリタルトキハ無効トス但表意者ニ重大ノ過失アリタルトキハ表意者自ラ其無効ヲ主張スルコトヲ得ス
第九十六条 詐欺又ハ強迫ニ因ル意思表示ハ之ヲ取消スコトヲ得
或人ニ対スル意思表示ニ付キ第三者カ詐欺ヲ行ヒタル場合ニ於テハ相手方カ其事実ヲ知リタルトキニ限リ其意思表示ヲ取消スコトヲ得
詐欺ニ因ル意思表示ノ取消ハ之ヲ以テ善意ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス
第九十七条 公ノ秩序又ハ善良ノ風俗ニ反スル行為ヲ目的トスル意思表示ハ無効トス
第九十八条 離隔地ニ在ル人ニ対スル意思表示ハ其通知カ相手方ニ到達シタル時ヨリ其効力ヲ生ス
表意者カ通知ヲ発シタル後ニ死亡シ又ハ能力ヲ失フモ意思表示ハ其効力ヲ妨ケラルルコトナシ
第九十九条 意思表示ノ相手方カ之ヲ受ケタル時ニ未成年者又ハ禁治産者ナルトキハ其意思表示ハ之ニ対シテ其効ナシ但其法律上ノ代理人カ之ヲ知リタルトキハ其時ヨリ効力ヲ生ス
第二節 代理
第百条 代理人カ其権限内ニ於テ本人ノ為メニスルコトヲ示シテ為シタル意思表示ハ直接ニ本人ニ対シテ其効力ヲ生ス
前項ノ規定ハ第三者カ代理人ニ対シテ為シタル意思表示ニ之ヲ準用ス
第百一条 代理人カ本人ノ為メニスルコトヲ示サスシテ為シタル意思表示ハ自己ノ為メニ之ヲ為シタルモノト看做ス
第百二条 代理人ハ能力者タルコトヲ要セス
第百三条 意思表示ノ効力カ意思ノ欠缺、詐欺、強迫又ハ或事情ヲ知リタルコト若クハ之ヲ知ラサル過失アリタルコトニ因リテ影響ヲ受クヘキ場合ニ於テ其事実ノ有無ハ代理人ニ付キ之ヲ定ム
特定ノ法律行為ヲ為スコトヲ委任セラレタル場合ニ於テ代理人カ本人ノ指命ニ従ヒ其行為ヲ為シタルトキハ本人ハ其自ラ知リタル事情ニ付キ代理人ノ不知ヲ主張スルコトヲ得ス其過失ニ因リテ知ラサリシ事情ニ付キ亦同シ
第百四条 代理権ノ範囲ニ付キ別段ノ定ナキトキハ代理人ハ管理行為ノミヲ為ス権限ヲ有ス
第百五条 代理人ハ左ノ場合ニ非サレハ復代人ヲ選任スルコトヲ得ス
一 法令又ハ裁判所ノ命令ヲ以テ之ヲ許シタルトキ
二 本人ノ許諾ヲ得タルトキ
三 急迫ノ必要アルトキ
第百六条 前条ノ場合ニ於テ復代人ヲ選任シタルトキハ代理人ハ其復代人ノ代理行為ニ付キ本人ニ対シテ自ラ代理スルト同一ノ責ニ任ス
本人ノ指名ニ従ヒテ復代人ヲ選任シタルトキハ代理人ハ復代人ノ不適任又ハ不誠実ナルコトヲ知リテ之ヲ本人ニ通知スルコトヲ怠リ又ハ解任スルコトヲ怠リタルニ非サレハ其責ニ任ス
第百七条 代理人カ第百五条ノ規定ニ反シ又ハ本人ノ指名ニ依ラスシテ復代人ヲ選任シタル場合ニ於テ本人カ復代人ニ対シテ直接ニ其権利ヲ行使シ又ハ義務ヲ履行シタルトキハ其選任ヲ追認シタルモノト看做ス
第百八条 復代人ハ其権限内ノ行為ニ付キ本人ヲ代表ス
第百九条 代理人ハ別段ノ定メナキトキハ本人ニ代リテ自己ト法律行為ヲ為スコトヲ得ス但其自己ノ名義ヲ以テスルト第三者ノ代理人タル名義ヲ以テスルコトヲ問ハス法律行為カ単ニ債務ノ履行ニ係ルトキハ前項ノ規定ヲ適用セス
第百十条 第三者ニ対シテ他人ニ或事ヲ委任シタル旨ヲ表示シタル者ハ其委任ノ範囲内ニ於テ他人ト第三者トノ間ニ為シタル行為ニ付キ其責ニ任ス
第百十一条 代理人カ其権限外ノ行為ヲ為シタル場合ニ於テ第三者カ其権限アリト信スル正当ノ理由ヲ有スルトキモ亦前条ノ規定ヲ適用ス
第百十二条 代理権ハ左ノ事由ニ因リテ消滅ス
一 本人ノ死亡
二 代理人ノ死亡、禁治産又ハ破産
委任ニ因ル代理権ハ前項ニ掲ケタル事由ノ外第 条ニ掲クル事由ニ因リテ消滅ス
第百十三条 代理権ノ消滅ハ之ヲ以テ善意ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス但第三者カ過失ニ因リテ其事実ヲ知ラサリシトキハ此限ニ在ラス
第百十四条 代理権ヲ有セサル者カ他人ノ代理人トシテ為シタル契約ハ其追認ナキ限ハ本人ニ対シテ其効力ヲ生セス
追認及ヒ其拒絶ハ相手方ニ対シテ之ヲ為スコトヲ要ス但相手方カ其事実ヲ知リタルトキハ此限ニ在ラス
第百十五条 前条ノ場合ニ於テ相手方ハ相当ノ期間ヲ定メ其期間内ニ追認ヲ為スヤ否ヤヲ確答スヘキ旨ヲ本人ニ催告スルコトヲ得若シ本人カ其期間内ニ追認ヲ為ササルトキハ之ヲ拒絶シタルモノト看做ス
第百十六条 代理権ヲ有セサル者ノ為シタル契約ハ本人ノ追認ナキ間ハ相手方ニ於テ之ヲ取消スコトヲ得但其契約ヲ為シタル当時ニ相手方カ代理権ナキコトヲ知リタルトキハ此限ニ在ラス
第百十七条 追認ハ反対ノ意思ナキトキハ契約ノ時ニ遡リテ其効力ヲ生ス但第三者ノ権利ヲ害スルコトヲ得ス
第百十八条 他人ノ代理人トシテ契約ヲ為シタル者カ其代理権ヲ証明スルコト能ハス且本人ノ追認ヲ得サリシトキハ相手方ノ選択ニ従ヒ之ニ対シテ履行又ハ損害賠償ノ責ニ任ス
相手方カ代理権ナキコトヲ知リタルトキ若クハ過失ニ因リテ之ヲ知ラサリシトキ又ハ代理人トシテ契約ヲ為シタル者カ其能力ヲ有セサリシトキハ前項ノ責任ヲ生セス
第百十九条 単独行為ニ付テハ其行為ノ当時ニ相手方カ代理人ト称スル者ノ代理権ヲ有セスシテ之ヲ為スコトニ同意シ又ハ其代理権ヲ争ハサルトキニ限リ契約ニ関スル前数条ノ規定ヲ適用ス代理権ヲ有セサル者ニ対シ其同意ヲ得テ単独行為ヲ為シタルトキ亦同シ
第三節 無効及ヒ取消
第百二十条 無効ノ行為ハ追認ニ因リテ其効力ヲ生セス但当事者カ其無効ナルコトヲ知リテ追認ヲ為シタルトキハ新ナル行為ヲ為シタルモノト看做ス
第百二十一条 取消シ得ヘキ行為ハ無能力者若クハ瑕疵アル意思表示ヲ為シタル者、其代理人又ハ承継人ニ限リ之ヲ取消スコトヲ得妻カ為シタル行為ハ夫モ亦之ヲ取消スコトヲ得
第百二十二条 取消シタル行為ハ初ヨリ無効ナリシモノト看做ス但無能力者ハ其行為ニ因リテ得タル利益仍ホ存スルトキニ限リ之ヲ償還スル義務ヲ負フ
第百二十三条 取消シ得ヘキ行為ハ第百二十一条ニ掲クル者ニ於テ之ヲ追認スルトキハ初ヨリ有効ナリシモノト看做ス但第三者ノ権利ヲ害スルコトヲ得ス
第百二十四条 追認ハ取消ノ原因タル情況ノ止ミタル後之ヲ為スニ非サレハ其効ナシ但夫又ハ法定代理人ノ為シタル追認ハ此限ニ在ラス
禁治産者カ能力ヲ回復シタル後其行為ヲ了知シタルトキハ其了知シタル時ヨリ追認ヲ為スコトヲ得
第百二十五条 前条ニ定メタル時ヨリ後取消シ得ヘキ行為ニ付キ左ノ事実アルトキハ追認ヲ為シタルモノト看做ス但異議ヲ留メタルトキハ此限ニ在ラス
一 全部又ハ一部ノ任意ノ履行
二 更改
三 担保ノ供与
四 履行ノ請求
五 取消シ得ヘキ行為ニ因リテ取消シタル権利ノ全部又ハ一部ノ譲渡
六 強制執行
第百二十六条 取消権ハ追認ヲ為スコトヲ得ル日ヨリ五年ヲ経過スルトキハ時効ニ罹ル但此時効ハ相続人ニ対シテハ相続ノ日ヨリ其進行ヲ始メ又ハ之ヲ継続ス
取消シ得ヘキ行為ヲ為シタル日ヨリ普通ノ時効ニ必要ナル期間ヲ経過スルトキハ取消権ハ前項ノ規定ニ拘ハラス消滅ス
第四節 条件及ヒ期限
第百二十七条 停止条件附法律行為ハ条件成就ノ時ヨリ其効力ヲ生ス
解除条件附法律行為ハ条件成就ノ時ヨリ其効力ヲ失フ
当事者カ条件成就ノ効果ヲ其成就以前ニ遡ラシムル意思ヲ有シタルトキハ其意思ニ従フ
第百二十八条 条件附法律行為ノ当事者ハ条件未定ノ間ニ於テ条件ノ成就ニ因リ其行為ヨリ生スヘキ相手方ノ利益ヲ害スルコトヲ得ス
第百二十九条 条件未定ノ間ニ於ケル当事者ノ権利義務ハ一般ノ規定ニ従ヒ之ヲ処分、相続、保存又ハ担保スルコトヲ得
第百三十条 条件ノ成就ニ因リ不利益ヲ受クヘキ当事者カ故意ニ其条件ノ成就ヲ妨ケタルトキハ其条件ハ成就シタルモノト看做ス
第百三十一条 条件カ法律行為ヲ為ス時既ニ成就セル場合ニ於テ其条件カ停止条件ナルトキハ其法律行為ハ無条件トシ解除条件ナルトキハ無効トス
条件ノ不成就カ法律行為ヲ為ス時既ニ確定セル場合ニ於テ其条件カ停止条件ナルトキハ其法律行為ハ無効トシ解除条件ナルトキハ無条件トス
第二項ノ場合ニ於テ当事者カ条件ノ成就又ハ不成就ヲ知ラサル間ハ第百二十八条及ヒ第百二十九条ノ規定ヲ適用ス
第百三十二条 不法ノ条件ヲ附シタル法律行為ハ無効トス不法ノ行為ヲ為ササルヲ以テ条件トスルモノ亦同シ
第百三十三条 不能ノ停止条件ヲ附シタル法律行為ハ無効トス
不能ノ解除条件ヲ附シタル法律行為ハ無条件トス
第百三十四条 停止条件附法律行為ハ其条件カ単ニ債務者ノ意思ノミニ係ルトキハ無効トス
第百三十五条 停止条件附法律行為ノ目的物カ条件未定ノ間ニ於テ滅失シタルトキハ其滅失ハ債務者ノ負担ニ帰ス
物カ債務者ノ過失ニ因ラスシテ毀損シタルトキハ其毀損ハ債権者ノ負担ニ帰ス
物カ債務者ノ過失ニ因リテ毀損シタルトキハ債権者ハ条件成就ノ場合ニ於テ其選択ヲ以テ損害賠償ト共ニ法律行為ノ履行又ハ解除ヲ請求スルコトヲ得
第百三十六条 法律行為ニ始期ヲ附シタルトキハ其法律行為ノ履行ハ期限ノ到来スルマテ之ヲ請求スルコトヲ得ス
法律行為ニ終期ヲ附シタルトキハ其法律行為ノ効力ハ期限ノ到来シタル時ニ於テ消滅ス
第百三十七条 期限ハ反対ノ証拠ナキトキハ債務者ノ利益ノ為メニ定メタルモノト看做ス
期限ノ利益ハ之ヲ放棄スルコトヲ得但之カ為メニ相手方ノ利益ヲ害スルコトヲ得ス
第百三十八条 左ノ場合ニ於テハ債務者ハ期限ノ利益ヲ主張スルコトヲ得ス
一 債務者カ破産ノ宣告ヲ受ケタルトキ
二 債務者カ担保ヲ毀滅シ又ハ之ヲ減少シタルトキ
三 債務者カ其約シタル担保ヲ供セサルトキ
第五章 期間
第百三十九条 期間ノ計算法ハ法令、裁判上ノ命令又ハ法律行為ニ特別ノ定アル場合ヲ除ク外本章ノ規定ニ従フ
第百四十条 期間ヲ定ムルニ時ヲ以テシタルトキハ即時ヨリ之ヲ起算ス
第百四十一条 期間ヲ定ムルニ日、週、月又ハ年ヲ以テシタルトキハ期間ノ初日ハ之ヲ算入セス但其期間午前零時ヨリ始マルトキハ此限ニ在ラス
第百四十二条 前条ノ場合ニ於テハ期間末日ノ終了ヲ以テ期間ノ満了トス
法定又ハ慣習ノ取引時間アルトキハ末日ノ取引時間ノ終了ヲ以テ期間ノ満了トス
第百四十三条 期間ノ末日カ大祭日、日曜日其他ノ休日ニ当タルトキハ其日ニ取引ヲ為ササル慣習アル場合ニ限リ其翌日ヲ以テ期間満了スルモノトス
第百四十四条 期間ヲ定ムルニ週、月又ハ年ヲ以テシタルトキハ暦ニ従ヒテ之ヲ算ス
週、月又ハ年ノ始ヨリ期間ヲ起算セサルトキハ最後ノ週、月又ハ年ニ於テ其起算日ニ応当スル日ノ前日ヲ以テ期間満了スルモノトス但月又ハ年ヲ以テ期間ヲ定メタル場合ニ於テ最後ノ月ニ応当日ナキトキハ其月ノ末日ヲ以テ満期日トス
第六章 時効
第一節 総則
第百四十五条 時効ノ効力ハ其起算日ニ遡ル
第百四十六条 時効ハ当事者之ヲ援用スルニ非サレハ裁判所之ニ依リテ裁判ヲ為スコトヲ得ス
第百四十七条 時効ノ利益ハ予メ之ヲ放棄スルコトヲ得ス
第百四十八条 時効ハ左ノ事由ニ因リテ中断ス
一 請求
二 差押、仮差押又ハ仮処分
三 承認
第百四十九条 前条ノ時効中断ハ当事者及ヒ其承継人ノ間ニ於テノミ其効力ヲ有ス
第百五十条 裁判上ノ請求ハ却下又ハ取下ノ場合ニ於テハ時効中断ノ効ヲ生セス
第百五十一条 支払命令ハ権利拘束ノ効力ヲ失フトキハ時効中断ノ効ヲ生セス
第百五十二条 和解ノ為メニスル呼出ハ相手方カ出頭セス又ハ和解ノ調ハサルトキハ一个月内ニ訴ヲ提起スルニ非サレハ時効中断ノ効ヲ生セス任意出頭ノ場合ニ於テ和解ノ調ハサルトキ亦同シ
第百五十三条 破産手続参加ハ債権者之ヲ取消シ又ハ却下セラレタルトキハ時効中断ノ効ヲ生セス
第百五十四条 催告ハ六个月内ニ裁判上ノ請求、和解ノ為メニスル呼出若クハ任意出頭、破産手続参加、差押、仮差押又ハ仮処分ヲ為スニ非サレハ時効中断ノ効ヲ生セス
第百五十五条 差押、仮差押及ヒ仮処分ハ権利者ノ請求ニ因リ又ハ法律ノ規定ニ従ハサルニ因リ取消サレタルトキハ時効中断ノ効ヲ生セス
第百五十六条 差押、仮差押及ヒ仮処分ハ時効ノ利益ヲ受クル者ニ対シテ之ヲ為ササルトキハ之ヲ其者ニ通知シタル後ニ非サレハ時効中断ノ効ヲ生セス
第百五十七条 時効中断ノ為メ相手方ノ権利ノ承認ヲ為スニハ之ニ関シテ管理ノ能力又ハ権限アルコトヲ要ス
第百五十八条 中断シタル時効ハ其中断ノ事由ノ終了シタル時ヨリ更ニ其進行ヲ始ム
裁判上ノ請求ニ因リテ中断シタル時効ハ裁判ノ確定シタル時ヨリ更ニ其進行ヲ始ム
第百五十九条 未成年者又ハ禁治産者カ法定代理人ヲ有セサルトキハ其者カ能力者ト為リ又ハ法定代理人カ就職スル時ヨリ六个月内ハ之ニ対シテ時効完成ス
第百六十条 無能力者カ其財産ヲ管理スル父若クハ母又ハ後見人ニ対シテ有スル権利ニ付テハ其者カ能力者ト為リ又ハ後任ノ法定代理人カ就職スル時ヨリ六个月内ハ時効完成セス
妻カ夫ニ対シテ有スル権利ニ付テハ婚姻解消ノ時ヨリ六个月内亦同シ
第百六十一条 相続財産ニ関シテハ相続人ノ確定シ、管理人ノ選任セラレ又ハ破産ノ宣告アリタル時ヨリ六个月内ハ時効完成セス
第百六十二条 時効ノ期間満了ノ時ニ当リ天災其他避ク可カラサル事変ノ為メ時効ヲ中断スルコト能ハサルトキハ其妨碍ノ止ミタル時ヨリ二週間内ハ時効完成セス
第二節 取得時効
第百六十三条 二十年間所有ノ意思ヲ以テ他人ノ物ヲ平穏且公然ニ占有スル者ハ其所有権ヲ取得ス
十年間所有ノ意思ヲ以テ他人ノ不動産ヲ平穏且公然ニ占有スル者カ其占有ノ始善意ニシテ且過失ナカリシトキハ其不動産ノ所有権ヲ取得ス
第百六十四条 所有権以外ノ財産権ヲ自己ノ為メニスル意思ヲ以テ平穏且公然ニ行使スル者ハ前条ノ区別ニ依リ二十年又ハ十年ノ後其権利ヲ取得ス
第百六十五条 占有者カ任意ニ其占有ヲ中止シタルトキハ第百六十三条ノ時効ハ中断ス
占有者カ他人ノ為メニ其占有ヲ奪ハレタルトキ亦同シ但一年内ニ之ヲ取返シ又ハ同期間内ニ其取返ヲ訴ヘ終ニ之ヲ取返シタルトキハ此限ニ在ラス
第百六十六条 前条ノ規定ハ第百六十四条ノ場合ニ之ヲ準用ス
第三節 消滅時効
第百六十七条 消滅時効ハ権利ヲ行使スルコトヲ得ル時ヨリ進行ス
前項ノ規定ハ始期附権利又ハ停止条件附権利ノ目的物ヲ占有スル第三者ノ為メニ其占有ノ時ヨリ取得時効ノ進行スルコトヲ妨ケス但権利者ハ其時効ヲ中断スル為メ何時ニテモ第三者ノ承諾ヲ求ムルコトヲ得
第百六十八条 所有権以外ノ財産権ハ二十年間之ヲ行ハサルニ因リテ消滅ス
第百六十九条 前条ノ期間ハ年金権ニ付テハ其権利発生ノ時ヨリ起算ス但債権者ハ時効中断ノ証ヲ得ル為メ何時ニテモ債務者ノ承認書ヲ求ムルコトヲ得
第百七十条 年又ハ之ヨリ短キ期間ヲ以テ定メタル金額其他ノ物ノ供与ヲ目的トスル債権ハ五年間之ヲ行ハサルニ因リテ消滅ス
第百七十一条 左ニ掲クル債権ハ三年間之ヲ行ハサルニ因リテ消滅ス
一 医師、産婆及ヒ薬剤師ノ治術、勤労及ヒ調剤ニ関スル債権
二 技師、棟梁及ヒ請負人ノ工事ニ関スル債権但此時効ハ其負担シタル工事終了ノ時ヨリ起算ス
第百七十二条 弁護士ハ裁判ノ時ヨリ公証人及ヒ執達吏ハ其職務執行ノ時ヨリ三年ヲ経過スルトキハ其職務ニ関シテ受取リタル書類ニ付キ其責ヲ免カル
第百七十三条 弁護士、公証人及ヒ執達吏ノ職務ニ関スル債権ハ二年ヲ以テ時効ニ罹ル
前項ノ時効ハ其債権ノ原因タル事件終了ノ時ヨリ起算ス但其事件終了前既ニ五年ヲ経過シタル行為ニ付テハ請求ヲ為スコトヲ得ス
第百七十四条 左ニ掲クル債権ハ二年間之ヲ行ハサルニ因リテ消滅ス
一 生産者、卸売商人及ヒ小売商人カ売却シタル産物及ヒ商品ノ代価但其買主ノ商業ニ関スルモノハ此限ニ在ラス
二 居職人及ヒ製造人ノ仕事ニ関スル債権但其注文者ノ商業ニ関スルモノハ此限ニ在ラス
三 生徒及ヒ習業者ノ教育、衣食及ヒ止宿ノ代料ニ関スル校主、塾主、教師及ヒ師匠ノ債権
第百七十五条 左ニ掲クル債権ハ一年間之ヲ行ハサルニ因リテ消滅ス
一 月又ハ之ヨリ短キ時期ヲ以テ定メタル雇人ノ給料
二 労力者ノ賃金及ヒ其供給シタル物ノ代価
三 運送賃
四 旅店、料理店、貸席及ヒ娯遊場ノ宿泊料、飲食料、席料、木戸銭、消費物ノ代価、立替金其他之ニ類スル債権
五 動産ノ損料