決議案 (明治二十七年三月十四日配付)
参考原資料
穂積陳重博士関係文書 第六部甲
第一編 総則
第一章 人
第一節 私権ノ享有
第一条 私権ノ享有ハ出生ニ始マル
第二条 外国人ハ法令又ハ条約ニ禁止アル場合ノ外私権ヲ享有ス
第二節 能力
第三条 満二十年ヲ以テ成年トス
第四条 未成年者カ法律上ノ行為ヲ為スニハ其法律上ノ代理人ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス
前項ノ規定ニ反スル行為ハ之ヲ取消スコトヲ得
第五条 未成年者ノ為メニ必要ナル行為ニ付テハ法律上ノ代理人ノ同意ヲ得ルコトヲ要セス
未成年者カ単ニ権利ヲ得又ハ債務ヲ免カルヘキ行為ニ付キ亦同シ
第六条 法律上ノ代理人カ目的ヲ定メテ処分ヲ許シタル財産ハ其目的内ニ於テ未成年者随意ニ之ヲ処分スルコトヲ得目的ヲ定メスシテ処分ヲ許シタル財産ヲ処分スル亦同シ
第七条 一種又ハ数種ノ営業ヲ許サレタル未成年者ハ其営業ニ関シテハ成年者ト同一ノ能力ヲ有ス
前項ノ場合ニ於テ未成年者未タ其営業ニ堪ヘサル事跡アルトキハ其許可ヲ廃止シ又ハ之ヲ制限スルコトヲ得
第八条 心神喪失ノ常況ニ在ル者ハ時々本心ニ復スルコト有ルト否トヲ問ハス其治産ヲ禁スルコトヲ得
第九条 禁治産ハ本人、配偶者、四親等内ノ親族、戸主、後見人、保佐人又ハ検事ヨリ之ヲ請求スルコトヲ得
禁治産ノ宣言ハ其登記ノ時ヨリ何人ニ対シテモ効力ヲ有ス
第十条 禁治産者ハ之ヲ後見ニ付ス
第十一条 禁治産者ノ行為ハ之ヲ取消スコトヲ得
第十二条 禁治産ノ原因止ミタルトキハ第九条ニ列挙セル者ノ請求ニ因リ其禁ヲ解クヘシ
第十三条 心神耗弱者、聾者、唖者、盲者及ヒ浪費者ハ準禁治産者トシテ之ニ保佐人ヲ付スルコトヲ得
第十四条 準禁治産ノ請求及ヒ其宣言ニ付テハ第九条ヲ適用ス
第十五条 準禁治産者カ左ニ掲クル行為ヲ為スニハ保佐人ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス
一 元本ヲ領収シ又ハ之ヲ利用スルコト
二 借財ヲ為スコト
三 不動産又ハ重要ナル動産ニ関スル権利ノ得喪ヲ目的トスル行為ヲ為スコト
四 訴訟行為ヲ為スコト
五 和解又ハ仲裁契約ヲ為スコト
六 相続ヲ承認シ又ハ之ヲ放棄スルコト
七 遺贈若クハ贈与ヲ拒絶シ又ハ負担附ノ遺贈若クハ贈与ヲ受諾スルコト
八 新築、改築、増築又ハ大修繕ヲ為スコト
九 第 条ニ定メタル期間ヲ超ユル賃貸借ヲ為スコト
裁判所ハ場合ニ依リ準禁治産者カ前項ニ掲ケサル行為ヲ為スニモ亦保佐人ノ同意アルコトヲ要スル旨ヲ宣言スルコトヲ得
前二項ノ規定ニ反スル行為ハ之ヲ取消スコトヲ得
第十六条 準禁治産ノ原因止ミタルトキハ第十二条ノ規定ニ依ル
第十七条 妻カ左ニ掲クル行為ヲ為スニハ夫ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス
一 元本ヲ領収シ又ハ之ヲ利用スルコト
二 借財ヲ為スコト
三 不動産又ハ重要ナル動産ニ関スル権利ノ得喪ヲ目的トスル行為ヲ為スコト
四 訴訟行為ヲ為スコト
五 和解又ハ仲裁契約ヲ為スコト
六 贈与ヲ為スコト
七 贈与若クハ遺贈ヲ受諾シ又ハ之ヲ拒絶スルコト
八 相続ヲ承認シ又ハ之ヲ放棄スルコト
九 保証ヲ為スコト
十 身体ニ羈絆ヲ受クヘキ契約ヲ為スコト
前項ノ規定ニ反スル行為ハ之ヲ取消スコトヲ得
第十八条 商業其他ノ職業ヲ営ム許可ヲ得タル妻ハ其職業ニ関シテハ独立人ト同一ノ能力ヲ有ス
第十九条 夫ハ其与ヘタル許可ヲ廃止シ又ハ之ヲ制限スルコトヲ得
第二十条 左ノ場合ニ於テハ妻ハ夫ノ許可ヲ受クルコトヲ要セス
一 夫ノ生死分明ナラサルトキ
二 夫カ妻ヲ遺棄シタルトキ
三 夫カ禁治産者又ハ準禁治産者ナルトキ
四 夫カ瘋癲ノ為メ病院又ハ私宅ニ監置セラルルトキ
五 夫カ重罪ノ刑ニ処セラレ其刑期中ニ在ルトキ
第二十一条 夫カ未成年ナルトキハ己先ツ妻カ為サント欲スル行為ヲ為ス能力ヲ得タル後ニ非サレハ之ヲ許可スルコトヲ得ス
第二十二条 無能力者ノ相手方ハ其無能力者カ能力者ト為リタル後之ニ対シテ三十日以上ノ期間内ニ其取消シ得ヘキ行為ヲ追認スルヤ否ヤヲ確答スヘキ旨ヲ催告スルコトヲ得若シ其期間内ニ確答ヲ為ササルトキハ其行為ヲ追認シタルモノト看做ス
無能力者カ未タ能力者トナラサル時ニ於テ夫又ハ法律上ノ代理人ニ対シ右ノ催告ヲ為スモ其期間内ニ確答ヲ為ササルトキ亦同シ但法律上ノ代理人ニ対シテハ其権限内ノ行為ニ付テノミ此催告ヲ為スコトヲ得又特別ノ方式ヲ要スル行為ハニ付テハ若シ其期間内ニ其方式ヲ践マサルトキハ之ヲ取消シタルモノト看做ス
準禁治産者及ヒ妻ニ対シテハ第一項ノ期間内ニ保佐人ノ同意若クハ夫ノ許可ヲ得テ其行為ヲ追認スヘキ旨ヲ催告スルコトヲ得若シ其期間内ニ右ノ同意若クハ許可ヲ得サルトキハ之ヲ取消シタルモノト看做ス
第二十三条 無能力者カ能力ヲ有スル旨ヲ明言シタルノミニシテ之ヲ信セシムル為メ自ラ詐術ヲ用ヰタルニ非サレハ其無能力ニ因リテ其行為ヲ取消スコトヲ妨ケス
第三節 住所
第二十四条 各人ノ生活ノ本拠ヲ以テ其住所トス
第二十五条 住所ノ知レサル場合ニ於テハ居所ヲ以テ住所ニ代用ス
第二十六条 日本ニ住所ヲ有セサル者ハ其日本人タルト外国人タルトヲ問ハス日本ニ於ケル居所ヲ以テ住所ニ代用ス但法例ノ定ムル所ニ従ヒ其住所ノ法律ニ依ルヘキ場合ハ此限ニ在ラス
第二十七条 或行為ニ付キ仮住所ヲ選定シタルトキハ其行為ニ関シテハ之ヲ以テ住所ニ代用ス
第四節 失踪
第二十八条 従来ノ住所又ハ居所ヲ去リタル者其財産ノ管理人ヲ置カサリシトキハ裁判所ハ利害関係人又ハ検事ノ請求ニ因リ其財産ノ管理ニ付キ必要ナル処分ヲ命スルコトヲ得但日本人後日ニ至リ管理人ヲ置クトキハ其管理人、利害関係人又ハ検事ノ請求ニ因リ其命令ヲ解クヘシ
本人ノ不在中管理人ノ権限消滅シタルトキモ亦前項ノ規定ニ依ル
第二十九条 不在者カ管理人ヲ置キタル場合ニ於テ其不在者ノ生死分明ナラサルトキハ裁判所ハ利害関係人又ハ検事ノ請求ニ因リ管理人ヲ改任スルコトヲ得
第三十条 前二条ニ依リ裁判所ニ於テ選定シタル管理人ハ其管理スヘキ財産ノ目録ヲ調整スヘシ其費用ハ不在者ノ財産ヲ以テ之ヲ支弁ス
不在者ノ生死分明ナラサル場合ニ於テ利害関係人又ハ検事ノ請求アルトキハ裁判所ハ不在者カ置キタル管理人ニモ前項ノ手続ヲ命スルコトヲ得
右ノ外総テ裁判所カ不在者ノ財産ノ保存ニ必要ナリト認ムル処分ハ之ヲ管理人ニ命スルコトヲ得
第三十一条 裁判所ニ於テ選定シタル管理人ハ管理行為ノミヲ為ス権限ヲ有ス但他ノ行為ヲ必要トスルトキハ裁判所ノ許可ヲ得テ之ヲ為スコトヲ得
不在者カ其管理人ノ権限ヲ定メ置カサリシトキ亦同シ
不在者ノ生死分明ナラサル場合ニ於テ其管理人カ不在者ノ定メ置キタル権限外ノ行為ヲ必要トスルトキハ裁判所ノ許可ヲ得テ之ヲ為スコトヲ得
第三十二条 裁判所ハ管理人ヲシテ財産ノ管理及ヒ其返還ノ担保ヲ供セシムルコトヲ得
裁判所ハ管理人ト不在者トノ関係其他ノ事情ニ依リ不在者ノ財産ノ中ヨリ相当ト認ムル報酬ヲ管理人ニ与フルコトヲ得
第三十三条 不在者ノ生死十年間分明ナラサルトキハ利害関係人ハ失踪ノ宣言ヲ請求スルコトヲ得
戦地ニ臨ミタル者、沈没シタル船舶中ニ在リタル者其他死亡ノ原因タルヘキ危難ニ遭遇シタル者ニ付テハ戦争ノ止ミタル後、船舶ノ沈没シタル後又ハ其他ノ危難ノ去リタル後三年間生死分明ナラサルトキ前項ノ請求ヲ為スコトヲ得
第三十四条 失踪ノ宣言ヲ受ケタル者ハ前条ノ期間満了ノ時ニ死亡シタルモノト看做ス
第三十五条 失踪者ノ生存セルコト又ハ前条ニ定メタル時ト異リタル時ニ死亡シタルコトノ証明アルトキハ裁判所ハ本人又ハ利害関係人ノ請求ニ因リ失踪ノ宣言ヲ廃止ス但失踪ノ宣言アリタルヨリ其廃棄アルマテニ善意ヲ以テ為シタル行為ハ其効力ヲ変セス
失踪ノ宣言ニ因リ財産ヲ得タル者ハ其廃棄ニ因リ権利ヲ失フモ現ニ利益ヲ受クル限度ニ於テノミ其財産ヲ返還スル義務ヲ負フ
第二章 法人
第一節 法人ノ設立
第三十六条 法人ハ本法其他ノ法律ノ規定ニ依ルニ非サレハ成立スルコトヲ得ス
第三十七条 祭祀、宗教、慈善、学問、技芸其他公益ニ関スル社団若クハ財団ニシテ営利ヲ目的トセサルモノハ主務官庁ノ許可ヲ得テ之ヲ法人ト為スコトヲ得
第三十八条 営利ヲ目的トスル社団ハ商事会社ノ規定ニ従ヒ之ヲ法人ト為スコトヲ得
前項ノ社団法人ニハ総テ商事会社ニ関スル規定ヲ適用ス
第三十九条 外国法人ハ国、国ノ行政区劃及ヒ商事会社ヲ除ク外其成立ヲ認許セス但法律又ハ条約ニ依リテ認許セラレタルモノハ此限ニ在ラス
前項ノ規定ニ依リ認許セラレタル外国法人ハ日本ニ成立スル同種ノ者ト同一ノ権利ヲ有ス但法律又ハ条約中ニ特別ノ規定アルトキハ此限ニ在ラス
第四十条 社団法人ハ定款ヲ作リ之ニ左ノ事項ヲ記載スルコトヲ要ス
一 目的
二 名称
三 事務所
四 社員タル資格ノ得喪ニ関スル規定
五 資本ニ関スル規定
六 理事ノ任免及ヒ職務ニ関スル規定
七 総会ノ招集及ヒ決議ノ方法
八 存立時期ヲ定メタルトキハ其時期
九 解散ノ場合ニ於テ財産ノ帰属スヘキ者ヲ定ムルノ必要アルトキハ其指定
第四十一条 社団法人ノ定款ハ定款中ニ別段ノ定ナキトキハ総社員ノ四分ノ三以上ハ同意アルニ非サレハ之ヲ変更スルコトヲ得ス但総会ニ出席セサル社員ハ書面ヲ以テ同意ヲ表スルコトヲ得
定款ノ変更ハ主務官庁ノ認可ヲ受クルニ非サレハ其効ヲ生セス
第四十二条 財団法人ニ付テハ其設立ヲ目的トスル寄附行為ヲ以テ左ノ事項ヲ定ムルコトヲ要ス
一 寄附ノ目的
二 寄附スヘキ財産
三 理事任免ノ方法
寄附者若シ理事任免ノ方法ヲ定メスシテ死亡スルトキハ裁判所ハ利害関係人又ハ検事ノ請求ニ因リ其方法ヲ定ムルコトヲ得
第四十三条 生前処分ヲ以テ寄附行為ヲ為ストキハ贈与ニ関スル規定ヲ適用ス
遺言ヲ以テ寄附行為ヲ為ストキハ遺贈ニ関スル規定ヲ適用ス
第四十四条 生前処分ヲ以テ寄附行為ヲ為シタルトキハ寄附財産ハ法人設立ノ許可アリタル時ヨリ法人ノ財産ヲ組成ス
遺言ヲ以テ寄附行為ヲ為シタルトキハ寄附財産ハ遺言カ効力ヲ生シタル時ヨリ法人ニ帰属シタルモノト看做ス
第四十五条 法人ハ法令及ヒ定款若クハ寄附行為ニ因リテ定マリタル目的ノ範囲内ニ於テ権利ヲ有シ義務ヲ負フ
第四十六条 法人ハ理事其他ノ代理人カ職務ヲ行フニ際シテ他人ニ加ヘタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス
法人ノ目的ノ範囲内ニ在ラサル行為ニ因リテ他人ニ損害ヲ加ヘタルトキハ其事項ノ議決ヲ賛成シタル社員、理事及ヒ之ヲ履行シタル理事其他ノ代理人ニ於テ連帯無限ノ責任ヲ負フ
第四十七条 法人ハ其設立後十四日内ニ各事務所所在ノ地ニ於テ登記ヲ受クヘシ
法人ノ設立ノ其主タル事務所所在地ニ於テ登記ヲ受クルニ非サレハ他人ニ対シテ其効ナシ
法人設立ノ後新ニ事務所ヲ設ケタルトキハ七日内ニ登記ヲ受クヘシ
第四十八条 事務所ヲ移転スルトキハ七日内ニ旧所在地ニ於テ移転ノ登記ヲ受ケ同期間内ニ新所在地ニ於テハ新ニ設立スル法人ニ付キ要スル登記ヲ受クヘシ
同一ノ登記所ノ管轄区域内ニ於テ事務所ヲ移転スルトキハ移転ノミノ登記ヲ受クヘシ
第四十九条 登記スヘキ事項左ノ如シ
一 目的
二 名称及ヒ事務所
三 設立許可ノ年月日
四 存立時期ヲ定メタルトキハ其時期
五 理事ノ氏名、住所
六 資本ノ総額
七 資本払込ノ方法アルトキハ其方法
前項ニ掲ケタル事項中ニ変更ヲ生シタルトキハ七日内ニ其登記ヲ受クヘシ登記前ニ在リテハ他人ニ対シテ其変更ノ効ヲ生セス
第五十条 第四十七条第一項及ヒ第四十八条ノ規定ニ依リ登記スヘキ事項ニシテ官庁ノ許可ヲ要スルモノハ其許可書ノ到達シタル時ヨリ登記ノ期間ヲ起算ス
第五十一条 第四十七条第三項、第四十八条及ヒ第四十九条ノ規定ハ外国法人カ日本ニ事務所ヲ設クル場合ニモ亦之ヲ適用ス但外国ニ於テ生シタル事項ニ付テハ其通知ヲ受ケタル時ヨリ登記ノ期間ヲ起算ス
外国法人カ始メテ日本ニ事務所ヲ設クルトキハ其事務所所在ノ地ニ於テ登記ヲ受クルマテハ他人ニ対シテ法人タル効ナシ
第五十二条 法人ハ名称ヲ定メ事務所ヲ設クルコトヲ要ス
法人ノ住所ハ其主タル事務所所在ノ地ニ在ルモノトス
第五十三条 法人ハ設立ノ時及ヒ毎年初ノ三个月内ニ財産目録ヲ作リ常ニ之ヲ備ヘ置クコトヲ要ス但特ニ事業年度ヲ設クルモノハ其終ニ於テ之ヲ作ルヘシ
社団法人ハ社員名簿ヲ備ヘ置キ社員ノ変更アル毎ニ之ヲ訂正スルコトヲ要ス
第二節 法人ノ管理
第五十四条 法人ニハ理事ヲ置クコトヲ要ス
理事数人アル場合ニ於テ定款又ハ寄附行為ニ反対ノ定ナキトキハ其管理ニ関スル事項ハ理事ノ多数ヲ以テ之ヲ決ス
第五十五条 理事ハ総テ法人ノ事務ニ付キ法人ヲ代表ス但定款ノ規定又ハ寄附行為ノ趣旨ニ違反スルコトヲ得ス又社団法人ニ在リテハ総会ノ決議ニ従フコトヲ要ス
第五十六条 理事ノ代理権ニ加ヘタル制限ハ善意ヲ以テ取引ヲ為シタル第三者ニ対シテ其効ナシ
第五十七条 理事ハ定款、寄附行為又ハ総会ノ決議ニ依リ禁止セラレサルトキハ特定ノ行為ニ付キ他人ヲシテ代理セシムルコトヲ得
第五十八条 理事ノ缺ケタル場合ニ於テ遅滞ノ為メニ損害ヲ生スル恐アルトキハ裁判所ハ利害関係人又ハ検事ノ請求ニ因リ仮理事ヲ選任スヘシ
第五十九条 法人ト理事トノ間ニ利益相反スル事項ニ付テハ理事ハ代理権ヲ有セス此場合ニ於テハ前条ノ規定ニ依リテ特別代理人ヲ選任スヘシ
第六十条 法人ニハ定款、寄附行為又ハ総会ノ決議ヲ以テ一人又ハ数人ノ監事ヲ置クコトヲ得
第六十一条 監事ノ職務左ノ如シ
一 法人ノ財産ノ現況ヲ監査スルコト
二 理事ノ業務施行ノ実況ヲ監査スルコト
三 財産ノ現況又ハ業務ノ施行ニ付キ不整ノ事アルヲ検出スルトキハ之ヲ総会又ハ主務官庁ニ報告スルコト但此報告ヲ為ス為メ特ニ総会ヲ招集スルコトヲ得
第六十二条 社団法人ノ理事ハ少クトモ毎年一回社員ノ通常総会ヲ開クヘシ
第六十三条 社団法人ノ理事ハ必要アリト認ムルトキハ何時ニテモ臨時総会ヲ招集スルコトヲ得又総社員ノ五分一以上ニ当ル社員ヨリ会議ノ目的ヲ示シテ請求ヲ為ストキハ臨時総会ヲ招集スルコトヲ要ス但此定数ハ定款ヲ以テ之ヲ増減スルコトヲ得
第六十四条 総会ノ招集ハ少クトモ五日前ニ其会議ノ目的及ヒ事項ヲ示シ定款ニ定メタル方法ニ従ヒテ之ヲ為ス但定款ニ別段ノ定アルトキハ予メ通知セサル事項ニ付テモ決議ヲ為スコトヲ得
第六十五条 社団法人ノ事務ハ定款ヲ以テ理事又ハ其他ノ役員ニ委任シタルモノヲ除ク外総テ総会ノ決議ニ依リテ之ヲ行フ
第六十六条 各社員ノ議決権ハ平等ナルモノトス但定款ニ別段ノ定アルトキハ此限ニ在ラス
第六十七条 社団法人ト社員トノ間ニ於ケル法律行為ニ関スル議事ニ付テハ其社員ハ議決権ヲ有セス
第六十八条 主務官庁ハ法人ノ業務ヲ監督シ何時ニテモ職権ヲ以テ其業務及ヒ財産ノ実況ヲ検査スルコトヲ得
第三節 法人ノ解散
第六十九条 法人ハ左ノ事由ニ因リテ解散ス
一 定款又ハ寄附行為ニ於テ定メタル解散事由ノ発生
二 法人ノ目的タル事業ノ成功又ハ其成功ノ不能
三 破産
四 設立許可ノ取消
社団法人ハ右ニ掲クル場合ノ外左ノ事項ニ因リテ解散ス
一 総会ノ決議
二 社員ノ缺亡
第七十条 社団法人ハ定款ニ別段ノ定アル場合ヲ除ク外少クトモ総社員ノ四分三ノ承諾アルニ非サレハ解散ノ決議ヲ為スコトヲ得ス
第七十一条 法人カ其債務ヲ完済スルコト能ハサルニ至リタルトキハ裁判所ハ理事若クハ債権者ノ申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ破産ノ宣告ヲ為ス
第七十二条 法人カ其目的以外ノ事業ヲ為シ又ハ設立ノ許可ヲ得タル条件ニ違反シ其他公益ヲ害スヘキ行為ヲ為ストキハ主務官庁ハ其許可ヲ取消スコトヲ得
第七十三条 解散シタル法人ノ財産ハ定款又ハ寄附行為ヲ以テ帰属権利者ト定メタル人ニ帰属ス
定款又ハ寄附行為ニ於テ帰属権利者ヲ指定セス又ハ之ヲ指定スル方法ヲ定メサルトキハ理事ハ主務官庁ノ許可ヲ得テ其法人ノ目的ト類似セル目的ノ為メニ其財産ヲ処分スルコトヲ得但社団法人ニ在リテハ総会ノ決議ヲ経ルコトヲ要ス
前二項ニ依リ処分セラレサル財産ハ国庫ニ帰属ス
第七十四条 解散シタル法人ハ清算ノ目的内ニ於テハ其清算ノ結了ニ至ルマテ尚ホ存続スルモノト看做ス
第七十五条 法人解散スルトキハ破産ノ場合ヲ除ク外理事其清算人ト為ル但定款若クハ寄附行為ニ別段ノ定アルトキ又ハ総会ノ議決アルトキハ他人ヲ以テ清算人ト為スコトヲ得
第七十六条 前条ノ規定ニ依リテ清算人タル者ナキトキ又ハ清算人ノ缺ケタルカ為メ損害ヲ生スヘキ虞アルトキハ裁判所ハ利害関係人若クハ検事ノ請求ニ因リ又ハ職権ヲ以テ清算人ヲ選任スルコトヲ得
第七十七条 重要ナル事由アルトキハ裁判所ハ利害関係人若クハ検事ノ請求ニ因リ又ハ職権ヲ以テ清算人ヲ解任スルコトヲ得但其命令ニ対シ即時抗告ヲ為スコトヲ得
第七十八条 清算人ハ破産ノ場合ヲ除ク外解散後七日内ニ其氏名、住所及ヒ解散ノ原因、年月日ノ登記ヲ受ケ又何レノ場合ニ於テモ主務官庁ニ之ヲ届出ツルコトヲ要ス
清算中就職シタル清算人ハ就職後七日内ニ其氏名、住所ノ登記ヲ受ケ之ヲ主務官庁ニ届出ツルコトヲ要ス
第七十九条 清算人ノ職務左ノ如シ
一 現務ノ結了
二 債権及ヒ債務ノ処理
三 残余財産ノ引渡
清算人ハ前項ノ職務ヲ行フ為メニ必要ナル一切ノ行為ヲ為スコトヲ得
第八十条 清算人ハ其就職ノ日ヨリ六十日内ニ少クトモ三回ノ公告ヲ以テ債権者ニ対シ一定ノ期間内ニ其請求ノ申出ヲ為スヘキ旨ヲ催告スルコトヲ要ス但其期間ハ六十日ヲ下ルコトヲ得ス
前項ノ公告ニハ債権者期間内ニ申出ヲ為ササルトキハ其債権ハ清算ヨリ除斥セラルル旨ヲ附記スヘシ然レトモ清算人ハ知レタル債権者ヲ除斥スルコトヲ得ス
清算人ハ知レタル債権者ニハ各別ニ其申出ヲ催告スルコトヲ要ス
第八十一条 前条ノ期間後ニ申出テタル債権者ハ法人ノ債務ヲ済了シタル後未タ帰属権利者ニ引渡ササル財産ニ対シテノミ請求ヲ為スコトヲ得
第八十二条 清算中ニ法人ノ財産ヲ以テ其債務ヲ完済シ能ハサルコト分明ナルニ至リタルトキハ清算人ハ直チニ破産宣告ノ申立ヲ為シテ其旨ヲ公告スヘシ
清算人ハ破産管財人ニ其事務ヲ引渡シタルトキハ其任ヲ終リタルモノトス
本条ノ場合ニ於テ既ニ債権者ニ支払ヒ又ハ帰属権利者ニ引渡シタルモノアルトキハ破産管財人ハ之ヲ取戻スコトヲ得
第八十三条 解散及ヒ清算ノ費用ハ現在ノ財産中ヨリ最モ先ニ之ヲ支払フモノトス
第八十四条 裁判所ハ法人ノ解散及ヒ清算ヲ監視シ何時ニテモ職権ヲ以テ其実況ヲ検査スルコトヲ得
第八十五条 清算結了シタルトキハ清算人ハ之ヲ主務官庁ニ届出ツルコトヲ要ス
第四節 罰則
第八十六条 法人ノ理事、監事又ハ清算人ハ左ノ場合ニ於テハ五円以上弐百円以下ノ過料ニ処セラル
一 本章ニ定メタル登記ヲ受クルコトヲ怠リタルトキ
二 第五十三条ノ規定ニ反シ財産目録若クハ社員名簿ヲ備ヘス又ハ之ニ不正ノ記載ヲ為シタルトキ
三 第六十八条又ハ第八十四条ノ場合ニ於テ検査ヲ妨ケタルトキ
四 官庁又ハ総会ニ対シ不実ノ申立ヲ為シ又ハ事実ヲ隠蔽シタルトキ
五 第七十一条又ハ第八十二条ノ規定ニ反シ破産宣告ノ申立ヲ為スコトヲ怠リタルトキ
六 第八十条又ハ第八十二条ニ定メタル公告ヲ為スコトヲ怠リ又ハ不正ノ公告ヲ為シタルトキ
第八十七条 前条ニ掲ケタル過料ハ裁判所ノ命令ヲ以テ之ヲ科ス但其命令ニ対シ即時抗告ヲ為スコトヲ得