明治民法(明治29・31年)

(総)甲第四号議案 (明治二十七年三月六日配布)

参考原資料

第一編 第三章 物 第八十八条 物トハ有体物ヲ謂フ 第八十九条 土地、建物及ヒ其定著物ハ之ヲ不動産トス 此他ノ物ハ総テ之ヲ動産トス 第九十条 一物ノ所有者カ其物ノ常用ニ供スル為メ自己ノ所有ニ属スル他ノ一物ヲ以テ之ニ附属セシメタルトキハ其附属セシメタル物ヲ以テ従物トス 従物ハ主物ノ処分ニ随フ但反対ノ意思アルトキハ此限ニ在ラス 第九十一条 物ノ用方ニ従ヒ採取スル産出物ヲ果実トス 物ノ使用ノ対価トシテ受クヘキ金銭其他ノ有価物ヲ法定果実トス 第九十二条 果実ハ其元物ヨリ分離シタル時ニ於テ之ヲ採取スル権利ヲ有スル者ニ属ス 法定果実ハ之ヲ採取スル権利ノ存続期間中日割ヲ以テ之ヲ取得ス 第四章 法律行為 第一節 意思表示 第九十三条 意思表示ハ表意者カ其真意ニ非サルコトヲ知リテ之ヲ為シタル為メ其効力ヲ妨ケラルルコトナシ但相手方カ表意者ノ真意ヲ知リタルトキハ其意思表示ハ無効トス 第九十四条 相手方ト通シテ為シタル虚偽ノ意思表示ハ無効トス 前項ノ無効ハ之ヲ善意ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス 第九十五条 意思表示ハ法律行為ノ要素ニ錯誤アリタルトキハ無効トス但表意者ニ重大ノ過失アリタルトキハ其表意者ハ其無効ヲ主張スルコトヲ得ス 第九十六条 詐欺又ハ強迫ニ因ル意思表示ハ之ヲ取消スコトヲ得 或人ニ対スル意思表示ニ付キ第三者カ詐欺ヲ行ヒタル場合ニ於テハ相手方カ其事実ヲ知リタルトキニ限リ其意思表示ヲ取消スコトヲ得 詐欺ニ因ル意思表示ノ取消ハ之ヲ善意ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス 第九十七条 公ノ秩序又ハ善良ノ風俗ニ反スル行為ヲ目的トスル意思表示ハ無効トス 第九十八条 離隔地ニ在ル人ニ対スル意思表示ハ其通知カ相手方ニ到達シタル時ヨリ其効力ヲ生ス 表意者カ通知ヲ発シタル後ニ死亡シ又ハ能力ヲ失フモ意思表示ハ其効力ヲ妨ケラルルコトナシ 第九十九条 意思表示ノ相手方カ之ヲ受ケタル時ニ未成年者又ハ禁治産者ナルトキハ其意思表示ハ之ニ対シテ其効ナシ但其法律上ノ代理人カ之ヲ知リタルトキハ其時ヨリ効力ヲ生ス