明治民法(明治29・31年)

(総)甲第三号議案 (明治二十七年一月二十日配布)

参考原資料

第一編 第二章 法人 第一節 法人ノ設立 第三十六条 法人ハ本法其他ノ法律ノ規定ニ依ルニ非サレハ成立スルコトヲ得ス 第三十七条 祭祀、宗教、慈善、学問、技芸其他公益ニ関スル社団若クハ財団ニシテ営利ヲ目的トセサルモノハ主務官庁ノ許可ヲ得テ之ヲ法人ト為スコトヲ得 第三十八条 営利ヲ目的トスル社団ハ商事会社ノ規定ニ従ヒ之ヲ法人ト為スコトヲ得 前項ノ社団法人ニハ総テ商事会社ニ関スル規定ヲ適用ス 第三十九条 外国法人ハ国、国ノ行政区画及ヒ商事会社ヲ除ク外其成立ヲ認許セス但法律又ハ条約ニ依リテ認許セラレタルモノハ此限ニ在ラス 前項ノ規定ニ依リ認許セラレタル外国法人ハ日本ニ成立スル同種ノ者ト同一ノ権利ヲ有ス但法律又ハ条約中ニ特別ノ規定アルトキハ此限ニ在ラス 第四十条 社団法人ハ定款ヲ作リ之ニ左ノ事項ヲ記載スルコトヲ要ス 一 目的 二 名称 三 事務所 四 社員タル資格ノ得喪ニ関スル規定 五 資本ニ関スル規定 六 理事ノ任免及ヒ職務ニ関スル規定 七 総会ノ招集及ヒ決議ノ方法 八 存立時期ヲ定メタルトキハ其時期 九 解散ノ場合ニ於テ財産ノ帰属スヘキ者ヲ定ムルノ必要アルトキハ其指定 第四十一条 社団法人ノ定款ハ定款中ニ別段ノ定ナキトキハ総社員ノ四分三以上ノ同意アルニ非サレハ之ヲ変更スルコトヲ得ス但総会ニ出席セサル社員ハ書面ヲ以テ同意ヲ表スルコトヲ得 定款ノ変更ハ主務官庁ノ認可ヲ受クルニ非サレハ其効ヲ生セス 第四十二条 財団法人ニ付テハ其設立ヲ目的トスル寄附行為ヲ以テ左ノ事項ヲ定ムルコトヲ要ス 一 寄附ノ目的 二 寄附スヘキ財産 三 理事任免ノ方法 寄附者若シ理事任免ノ方法ヲ定メスシテ死亡スルトキハ裁判所ハ利害関係人又ハ検事ノ請求ニ因リ其方法ヲ定ムルコトヲ得 第四十三条 生前処分ヲ以テ寄附行為ヲ為ストキハ贈与ニ関スル規定ヲ適用ス 遺言ヲ以テ寄附行為ヲ為ストキハ遺贈ニ関スル規定ヲ適用ス 第四十四条 生前処分ヲ以テ寄附行為ヲ為シタルトキハ寄附財産ハ法人設立ノ許可アリタルトキヨリ法人ノ財産ヲ組成ス 遺言ヲ以テ寄附行為ヲ為シタルトキハ寄附財産ハ遺言カ効力ヲ生シタルトキヨリ法人ニ帰属シタルモノト看做ス 第四十五条 法人ハ法令及ヒ定款若クハ寄附行為ニ因リテ定マリタル目的ノ範囲内ニ於テ権利ヲ有シ義務ヲ負フ 第四十六条 法人ハ理事其他ノ代理人カ職務ヲ行フニ際シテ他人ニ加ヘタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス 法人ノ目的ノ範囲内ニ在ラサル行為ニ因リテ他人ニ損害ヲ加ヘタルトキハ其事項ノ議決ヲ賛成シタル社員、理事及ヒ之ヲ履行シタル理事其他ノ代理人ニ於テ連帯無限ノ責任ヲ負フ 第四十七条 法人ハ其設立後三十日内ニ各事務所所在ノ地ニ於テ登記ヲ受クヘシ 法人ノ設立ハ前項ノ登記ヲ受クルニ非サレハ他人ニ対シテ其効ナシ 法人設立ノ後新ニ事務所ヲ設ケタルトキハ七日内ニ登記ヲ受クヘシ 第四十八条 事務所ヲ移転スルトキハ七日内ニ旧所在地ニ於テ移転ノ登記ヲ受ケ新所在地ニ於テハ新ニ設立スル法人ニ付キ要スル登記ヲ受クヘシ 同一ノ登記所ノ管轄区域内ニ於テ事務所ヲ移転スルトキハ移転ノミノ登記ヲ受クヘキ 第四十九条 登記スヘキ事項左ノ如シ 一 目的 二 名称及ヒ事務所 三 設立許可ノ年月日 四 存立時期ヲ定メタルトキハ其時期 五 理事ノ氏名、住所 六 資本ノ総額 七 資本払込ノ方法アルトキハ其方法 前項ニ掲ケタル事項中ニ変更ヲ生シタルトキハ三十日内ニ其登記ヲ受クヘシ登記前ニ在リテハ他人ニ対シテ其変更ノ効ヲ生セス 第五十条 前三条ノ規定ハ外国法人カ日本ニ事務所ヲ設クル場合ニモ亦之ヲ適用ス但外国ニ於テ生シタル事項ニ付テハ其通知ヲ受ケタル時ヨリ当記ノ期間ヲ起算ス 第五十一条 法人ハ名称ヲ定メ事務所ヲ設クルコトヲ要ス 法人ノ住所ハ其主タル事務所所在ノ地ニ在ルモノトス 第五十二条 法人ハ設立ノ時及ヒ毎年初ノ三ケ月内ニ財産目録ヲ作リ常ニ之ヲ備ヘ置クコトヲ要ス但特ニ事業年度ヲ設クルモノハ其終ニ於テ之ヲ作ルヘシ 社団法人ハ社員名簿ヲ備ヘ置キ社員ノ変更アル毎ニ之ヲ訂正スルコトヲ要ス 第二節 法人ノ管理 第五十三条 法人ニハ理事ヲ置クコトヲ要ス 理事数人アル場合ニ於テ定款ニ反対ノ規定ナキトキハ其管理ニ関スル事項ハ理事ノ多数ヲ以テ之ヲ決ス 第五十四条 理事ハ総テ法人ノ事務ニ付キ法人ヲ代表ス但定款ノ規定又ハ寄附行為ノ趣旨ニ違反スルコトヲ得ス又社団法人ニ在リテハ総会ノ決議ニ従フコトヲ要ス 第五十五条 理事ノ代理権ニ加ヘタル制限ハ善意ヲ以テ之ト取引ヲ為シタル第三者ニ対シテ其効ナシ 第五十六条 理事ハ定款、寄附行為又ハ総会ノ決議ニ依リ禁止セラレサルトキハ特定ノ行為ニ付キ他人ヲシテ代理セシムルコトヲ得 第五十七条 理事ノ缺ケタル場合ニ於テ遅滞ノ為メニ損害ヲ生スル恐アルトキハ裁判所ハ利害関係人又ハ検事ノ請求ニ因リ仮理事ヲ選任スヘシ 第五十八条 法人ト理事トノ間ニ利益相反スル事項ニ付テハ理事ハ代理権ヲ有セス此場合ニ於テハ前条ノ規定ニ依リテ特別代理人ヲ選任スヘシ 第五十九条 法人ニハ定款、寄附行為又ハ総会ノ決議ヲ以テ一人又ハ数人ノ監事ヲ置クコトヲ得 第六十条 監事ノ職務左ノ如シ 一 法人ノ財産ノ現況ヲ監査スルコト 二 理事ノ業務施行ノ実況ヲ監査スルコト 三 財産ノ現況又ハ業務ノ施行ニ付キ不整ノ事アルヲ検出スルトキハ之ヲ総会又ハ主務官庁ニ報告スルコト但此報告ヲ為ス為メ特ニ総会ヲ招集スルコトヲ得 第六十一条 社団法人ノ理事ハ少クトモ毎年一回社員ノ通常総会ヲ開クヘシ 第六十二条 社団法人ノ理事ハ必要アリト認ムルトキハ何時ニテモ臨時総会ヲ招集スルコトヲ得又総社員ノ五分一以上ニ当ル社員ヨリ会議ノ目的ヲ示シテ臨時総会ノ招集ヲ請求スルトキハ之ヲ招集スルコトヲ要ス但此定数ハ定款ヲ以テ之ヲ増減スルコトヲ得 第六十三条 総会ノ招集ハ少クトモ五日前ニ其会議ノ目的及ヒ事項ヲ示シ定款ニ定メタル方法ニ従ヒテ之ヲ為ス但定款ニ別段ノ定アルトキハ予メ通知セサル事項ニ付テモ決議ヲ為スコトヲ得 第六十四条 社団法人ノ事務ハ定款ヲ以テ理事又ハ其他ノ役員ニ委任シタルモノヲ除ク外総テ総会ノ決議ニ依ツテ之ヲ行フ 第六十五条 社員ノ議決権ハ定款ニ別段ノ定ナキトキハ各社員平等ナルモノトス 第六十六条 社団法人ト社員トノ間ニ於ケル法律行為ニ関スル議事ニ付テハ其社員ハ議決権ヲ有セス 第六十七条 主務官庁ハ法人ノ業務ヲ監督シ何時ニテモ職権ヲ以テ其業務及ヒ財産ノ実況ヲ検査スルコトヲ得 第三節 法人ノ解散 第六十八条 法人ハ左ノ事由ニ因リテ解散ス 一 定款又ハ寄附行為ニ於テ定メタル解散事由ノ発生 二 法人ノ目的タル事業ノ成功又ハ其成功ノ不能 三 破産 四 設立ノ許可ノ取消 社団法人ハ右ニ掲クル場合ノ外左ノ事由ニ因リテ解散ス 一 総会ノ決議 二 社員ノ缺亡 第六十九条 社団法人ハ定款ニ別段ノ定アル場合ヲ除ク外少クトモ総社員ノ四分三ノ承諾アルニ非サレハ解散ノ決議ヲ為スコトヲ得ス 第七十条 法人カ其債務ヲ完済スルコト能ハサルニ至リタルトキハ裁判所ハ理事若クハ債権者ノ申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ破産ノ宣告ヲ為ス 第七十一条 法人カ其目的以外ノ事業ヲ為シ又ハ設立ノ許可ヲ得タル条件ニ違反シ其他公益ヲ害スヘキ行為ヲ為ストキハ主務官庁ハ其許可ヲ取消スコトヲ得 第七十二条 解散シタル法人ノ財産ハ定款又ハ寄附行為ヲ以テ帰属権利者ト定メタル人ニ帰属ス 定款又ハ寄附行為ニ於テ帰属権利者ヲ指定セス又ハ之ヲ指定スル方法ヲ定メサルトキハ理事ハ主務官庁ノ許可ヲ得テ其法人ノ目的ハ類似セル目的ノ為メニ其財産ヲ処分スルコトヲ得但社団法人ニ在リテハ総会ノ決議ヲ経ルコトヲ要ス 前二項ニ依リ処分セラレサル財産ハ国庫ニ帰属ス 第七十三条 解散シタル法人ハ清算ノ目的内ニ於テハ其清算ノ結了ニ至ルマテ尚ホ存続スルモノト看做ス 第七十四条 法人解散スルトキハ破産ノ場合ヲ除ク外理事其清算人トナル但定款若クハ寄附行為ニ別段ノ定アルトキ又ハ総会ノ議決アルトキハ他人ヲ以テ清算人ト為スコトヲ得 第七十五条 前条ノ規定ニ依リテ清算人タル者ナキトキ又ハ清算人ノ缺ケタルカ為メ損害ヲ生スヘキ虞アルトキハ裁判所ハ利害関係人若クハ検事ノ請求ニ因リ又ハ職権ヲ以テ清算人ヲ選任スルコトヲ得 重要ナル事由アルトキハ裁判所ハ利害関係人若クハ検事ノ請求ニ因リ又ハ職権ヲ以テ清算人ヲ解任スルコトヲ得但其命令ニ対シ即時抗告ヲ為スコトヲ得 第七十六条 清算人ハ破産ノ場合ヲ除ク外解散後七日内ニ其氏名、住所及ヒ解散ノ原因、年月日ノ登記ヲ受ケ又何レノ場合ニ於テモ主務官庁ニ之ヲ届出ツルコトヲ要ス 第七十七条 清算人ノ職務左ノ如シ 一 法人ノ現務ノ結了 二 法人ノ債権ノ取立及ヒ其債務ノ弁済 三 残余財産ノ引渡 清算人ハ前項ノ職務ヲ行フ為メニ必要ナル一切ノ行為ヲ為スコトヲ得 第七十八条 清算人ハ其就職ノ日ヨリ六十日内ニ少クトモ三回ノ公告ヲ以テ債権者ニ対シ一定ノ期間内ニ其請求ノ申出ヲ為スヘキ旨ヲ催告スルコトヲ要ス但其期間ハ六十日ヲ下ルコトヲ得ス 前項ノ公告ニハ債権者期間内ニ申出ヲ為ササルトキハ其債権ハ清算ヨリ除斥セラルル旨ヲ附記スヘシ然レトモ清算人ハ知レタル債権者ヲ除斥スルコトヲ得ス 清算人ハ知レタル債権者ニ各別ニ其申出ヲ催告スルコトヲ要ス 第七十九条 前条ノ期間後ニ申出テタル債権者ハ法人ノ債務ヲ済了シタル後未タ帰属権利者ニ引渡ササル財産ニ対シテノミ請求ヲ為スコトヲ得 第八十条 清算中ニ法人ノ財産ヲ以テ其債務ヲ完済シ能ハサルコト分明ナルニ至リタルトキハ清算人ハ直チニ破産宣告ノ申立ヲ為シテ其旨ヲ公告スヘシ 清算人ノ破産管財人ニ其事務ヲ引渡シタルトキハ其任ヲ終リタルモノトス 本条ノ場合ニ於テ既ニ債権者ニ支払ヒ又ハ帰属権利者ニ引渡シタルモノアルトキハ破産管財人ハ之ヲ取戻スコトヲ得 第八十一条 解散及ヒ清算ノ費用ハ現在ノ財産中ヨリ最モ先ニ之ヲ支払フモノトス 第八十二条 裁判所ハ法人ノ解散及ヒ清算ヲ監視シ何時ニテモ職権ヲ以テ実況ヲ検査スルコトヲ得 第四節 罰則 第八十三条 法人ノ理事、監事又ハ清算人ハ左ノ場合ニ於テハ五円以上弐百円以下ノ過料ニ処セラル 一 本章ニ定メタル登記ヲ受クルコトヲ怠リタルトキ 二 第五十二条ノ規定ニ反シ財産目録若クハ社員名簿ヲ備ヘス又ハ之ニ不正ノ記載ヲ為シタルトキ 三 第六十七条又ハ第八十二条ノ場合ニ於テ検査ヲ妨ケタルトキ 四 官庁又ハ総会ニ対シ不実ノ申立ヲ為シ又ハ事実ヲ隠蔽シタルトキ 五 第七十条又ハ第八十条ノ規定ニ反シ破産宣告ノ申立ヲ為スコトヲ怠リタルトキ 六 第七十八条又ハ第八十条ニ定メタル公告ヲ為スコトヲ怠リ又ハ不正ノ公告ヲ為シタルトキ 第八十四条 前条ニ掲ケタル過料ハ裁判所ノ命令ヲ以テ之ヲ科ス但其命令ニ対シ即時抗告ヲ為スコトヲ得