第五編
第七章 遺留分
第千百三十八条 法定家督相続人ハ遺留分トシテ被相続人ノ財産ノ半額ヲ受クル権利ヲ有ス
此他ノ家督相続人ハ遺留分トシテ被相続人ノ財産ノ三分ノ一ニ付キ遺留分ヲ受ク
第千百三十九条 遺産相続人タル直系卑属ハ遺留分トシテ被相続人ノ財産ノ半額ヲ受ク
遺産相続人タル配偶者又ハ直系尊属ハ遺留分トシテ被相続人ノ財産ノ三分ノ一ヲ受ク
第千百四十条 前条ノ規定ニ依リテ遺留分ヲ受クヘキ相続人数人アルトキハ其遺留分ハ各自平等ニテ其共有ニ属ス
第千百四十一条 遺留分ハ相続開始ノ時ニ於テ被相続人カ有セシ財産ノ価額ニ其生前ニ贈与シタル財産ノ価額ヲ加ヘ其中ヨリ債務ノ全額ヲ控除シテ之ヲ算定ス
条件附又ハ存続期間ノ不確定ナル権利ハ裁判所ニ於テ選定シタル鑑定人ノ評価ニ従ヒ其価額ヲ定ム
第九百九十条ニ掲ケタル権利ハ遺留分ノ算定ニ関シテハ其価額ヲ算定セス
第千百四十二条 贈与ハ相続開始前一年間ニ為シタルモノニ限リ前条ノ規定ニ依リテ其目的タル財産ノ価額ヲ算入ス其期間前ニ為シタルモノト雖モ当事者双方カ遺留分権利者ニ損害ヲ加フルコトヲ知リテ之ヲ為シタルトキ亦同シ
第千百四十三条 前条ニ掲ケタル贈与ノ目的タル財産ハ受贈者ノ行為ニ因リテ其価額ノ増減アリタルトキト雖モ相続開始ノ当時仍ホ原状ニテ存スルモノト看做シ其価額ヲ定ム
第千百四十四条 第千九条ノ規定ハ遺留分ノ算定ニ之ヲ準用ス
第千百四十五条 遺留分権利者及ヒ其承継人ハ遺留分ヲ保全スルニ必要ナル限度ニ於テ遺贈及ヒ第千百四十二条ニ掲ケタル贈与ノ減殺ヲ請求スルコトヲ得
第千百四十六条 条件附又ハ存続期間ノ不確定ナル権利ヲ以テ贈与又ハ遺贈ノ目的ト為シタル場合ニ於テ其贈与又ハ遺贈ノ一部ヲ減殺スヘキトキハ遺留分権利者ハ第千百四十一条第二項ノ規定ニ依リテ定メタル価格ニ従ヒ遺留分ヲ害セサル限度ニ於テ直チニ其価額ヲ受贈者又ハ受遺者ニ給付スルコトヲ要ス
第千百四十七条 贈与ハ遺贈ヲ減殺シタル後ニ非サレハ之ヲ減殺スルコトヲ得ス
第千百四十八条 遺贈ハ其目的ノ価額ノ割合ニ応シテ平等ニ之ヲ減殺ス但遺言者カ其遺言ニ別段ノ意思ヲ表示シタルトキハ此限ニ在ラス
第千百四十九条 贈与ノ減殺ハ後ノ贈与ヨリ始メ順次ニ前ノ贈与ニ及フ
第千百五十条 受贈者ハ其返還スヘキ財産ノ外尚ホ減殺ノ請求アリタル日以後ノ果実ヲ返還スルコトヲ要ス
第千百五十一条 減殺ヲ受クヘキ受贈者ノ無資力ニ因リテ生スル損失ハ遺留分権利者ノ負担ニ帰ス
第千百五十二条 不相当ナル対価ヲ以テ為シタル有償行為ハ当事者双方カ遺留分権利者ニ損害ヲ加フルコトヲ知リテ為シタルモノニ限リ之ヲ贈与ト看做シ其対価ヲ償還シテ其減殺ヲ請求スルコトヲ得
第千百五十三条 減殺ヲ受クヘキ受贈者カ贈与ノ目的ヲ他人ニ譲渡シタルトキハ遺留分権利者ニ其価額ヲ弁償スルコトヲ要ス但譲受人カ譲渡ノ当時其事情ヲ知リタルトキハ遺留分権利者ハ之ニ対シテ減殺ヲ請求スルコトヲ得
前項ノ規定ハ受贈者カ贈与ノ目的ノ上ニ権利ヲ設定シタル場合ニ之ヲ準用ス
第千百五十四条 受贈者及ヒ受遺者ハ減殺ヲ受クヘキ限度ニ於テ贈与又ハ遺贈ノ目的ノ評価額ヲ遺留分権利者ニ弁償シテ返還ノ義務ヲ免ルルコトヲ得
前項ノ規定ハ前条第一項但書ノ場合ニ之ヲ準用ス
第千百五十五条 減殺ノ請求権ハ遺留分権利者カ相続ノ開始及ヒ減殺スヘキ贈与又ハ遺贈アリタルコトヲ知リタル時ヨリ一年間之ヲ行ハサルトキハ時効ニ因リテ消滅ス相続開始ノ時ヨリ十年ヲ経過シタルトキ亦同シ