明治民法(明治29・31年)

甲第七十二号議案明治二十九年十一月九日配付

参考原資料

民法第一議案 [国立国会図書館デジタルコレクション]
第五編 第六章 第三節 遺言ノ効力 第千八十九条 遺言ハ遺言者ノ死亡ノ時ヨリ其効力ヲ生ス 遺言ニ停止条件ヲ附シタル場合ニ於テ其条件カ遺言者ノ死亡後ニ成就シタルトキハ遺言ハ条件成就ノ時ヨリ其効力ヲ生ス 第千九十条 受遺者ハ遺言者ノ死亡後何時ニテモ遺贈ノ抛棄ヲ為スコトヲ得 第千九十一条 遺贈義務者其他ノ利害関係人ハ相当ノ期間ヲ定メ其期間内ニ遺贈ノ受諾又ハ抛棄ヲ為スヘキ旨ヲ受遺者ニ催告スルコトヲ得若シ受遺者カ其期間内ニ遺贈義務者ニ対シテ其意思ヲ表示セサルトキハ遺贈ハ之ヲ受諾シタルモノト看做ス 第千九十二条 受遺者ハ遺産相続人ト同一ノ権利義務ヲ有ス 第千九十三条 受遺者ハ遺贈カ弁済期ニ至ラサル間遺贈義務者ニ対シテ相当ノ担保ヲ請求スルコトヲ得 第千九十四条 遺贈ハ遺言者ノ死亡前ニ受遺者カ死亡シタルトキハ其効力ヲ生セス 停止条件附遺贈ニ付テハ受遺者カ其条件ノ成就前ニ死亡シタルトキ亦同シ但遺言者カ其遺言ニ反対ノ意思ヲ表示シタルトキハ此限ニ在ラス 第千九十五条 遺贈カ前条ノ規定ニ依リテ其効力ヲ生セサルトキ又ハ抛棄ニ因リテ其効力ナキニ至リタルトキハ受遺者カ受クヘカリシ部分ハ相続人ニ属ス但遺言者カ其遺言ニ反対ノ意思ヲ表示シタルトキハ此限ニ在ラス 第千九十六条 受遺者カ遺贈ノ受諾又ハ抛棄ヲ為ス前ニ死亡シタルトキハ其相続人ハ自己ノ相続権ノ範囲内ニ於テ受諾又ハ抛棄ヲ為スコトヲ得但遺言者カ其遺言ニ反対ノ意思ヲ表示シタルトキハ此限ニ在ラス 第千九十七条 遺贈ノ受諾及ヒ抛棄ハ之ヲ取消スコトヲ得ス 第千二十四条第二項ノ規定ハ遺贈ノ受諾及ヒ抛棄ニ之ヲ準用ス 第千九十八条 遺贈ノ受諾及ヒ抛棄ハ遺言者ノ死亡ノ時ニ遡リテ其効力ヲ生ス 第千九十九条 遺贈ハ其目的タル権利カ遺言者ノ死亡ノ時ニ於テ相続財産ニ属セサルトキハ其効力ヲ生セス但其権利カ相続財産ニ属セサルコトアルニ拘ハラス之ヲ以テ遺贈ノ目的ト為シタルモノト認ムヘキトキハ此限ニ在ラス 第千百条 相続財産ニ属セサル権利ヲ目的トスル遺贈カ前条但書ノ規定ニ依リテ有効ナルトキハ遺贈義務者ハ其権利ヲ取得シテ之ヲ受贈者ニ移転スル義務ヲ負フ若シ之ヲ取得スルコト能ハサルカ又ハ之ヲ取得スルニ付キ過分ノ費用ヲ要スルトキハ其価額ヲ弁償スルコトヲ要ス但遺言者カ其遺言ニ於テ之ニ異ナリタル意思ヲ表示シタルトキハ其意思ニ従フ 第千百一条 種類ノミニ依リテ定マリタル物ヲ以テ遺贈ノ目的ト為シタル場合ニ於テ受遺者カ追奪ヲ受ケタルトキハ遺贈義務者ハ之ニ対シテ売主ト同シク担保ノ責ニ任ス 前項ノ場合ニ於テ物ニ瑕疵アリタルトキハ遺贈義務者ハ瑕疵ナキ物ヲ以テ之ニ代フルコトヲ要ス但故意ニ瑕疵ヲ隠秘シタルトキハ受遺者ハ其権利ヲ行使スルニ代ヘ又ハ之ト共ニ損害賠償ノ請求ヲ為スコトヲ得 第千百二条 遺言者カ遺贈ノ目的物ノ滅失若クハ変造又ハ其占有ノ喪失ニ因リテ第三者ニ対シ償金ヲ請求スル権利ヲ有スルトキハ其権利ヲ以テ遺贈ノ目的ト為シタルモノト推定ス 遺贈ノ目的物カ他ノ物ト附合又ハ混和シタル場合ニ於テ遺言者カ第二百四十四条又ハ第二百四十五条ノ規定ニ依リ合成物又ハ混和物ノ共有権ヲ取得シタルトキハ其共有権ヲ以テ遺贈ノ目的ト為シタルモノト推定ス 第千百三条 遺贈ノ目的タル物又ハ権利カ遺言者ノ死亡ノ時ニ於テ第三者ノ権利ノ目的タルトキハ受遺者ハ遺贈義務者ニ対シテ其権利ヲ消滅セシムルコトヲ請求スルコトヲ得ス但遺言者カ其遺言ニ反対ノ意思ヲ表示シタルトキハ此限ニ在ラス 第千百四条 債権ヲ以テ遺贈ノ目的ト為シタル場合ニ於テ遺言者カ爾後弁済ヲ受ケ且其受取リタル物カ尚ホ相続財産中ニ存スルトキハ其物ヲ以テ遺贈ノ目的ト為シタルモノト推定ス 金銭ヲ目的トスル債権ニ付テハ相続財産中ニ其債権額ニ相当スル金銭ナキトキト雖モ其金額ヲ以テ遺贈ノ目的ト為シタルモノト推定ス 第千百五条 相続人ニ対スル権利ヲ以テ遺贈ノ目的ト為シタル場合ニ於テハ其権利ハ受遺者ノ利益ノ為メニハ混同ニ因リテ消滅セサリシモノト看做ス 第千百六条 遺贈ノ目的タル不動産ニ付テハ受遺者ハ遺言者ノ死亡後其遺贈アリタルコトヲ知リタル時ヨリ二週間内ニ登記ヲ為シタルトキハ遺言者ノ死亡ノ時ニ遡リ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得 第千百七条 受遺者ハ遺贈ノ履行ヲ請求スルコトヲ得ル時ヨリ果実ヲ取得ス但遺言者カ其遺言ニ別段ノ意思ヲ表示シタルトキハ此限ニ在ラス 第千百八条 遺贈義務者カ遺言者ノ死亡後遺贈ノ目的物ニ付キ費用ヲ出タシタルトキハ受遺者ハ第百九十六条ノ規定ニ従ヒ其償還ヲ為スコトヲ要ス 果実ヲ収取スル為メニ出タシタル通常ノ必要費ハ果実ノ価額ヲ超エサル限度ニ於テ其償還ヲ請求スルコトヲ得 第千百九条 負担附遺贈ヲ受ケタル者ハ遺贈ノ目的ノ価額ノ限度ニ於テノミ其負担シタル義務ヲ履行スル責ニ任ス 受遺者カ遺贈ノ抛棄ヲ為シタルトキハ負担ノ利益ヲ受クヘキ者自ラ受遺者ト為ルコトヲ得 第千百十条 負担附遺贈ノ目的ノ価額カ相続ノ限定承認又ハ遺留分回復ノ訴ニ因リテ減少シタルトキハ受遺者ハ其減少ノ割合ニ応シテ負担ノ減少ヲ主張スルコトヲ得但遺言者カ其遺言ニ反対ノ意思ヲ表示シタルトキハ此限ニ在ラス