明治民法(明治29・31年)

甲第七十号議案 (明治二十九年十月十二日配付)

参考原資料

第五編 第六章 第二節 遺言ノ方式 第一款 普通方式 第千六十八条 遺言ハ自筆証書、公正証書又ハ秘密証書ニ依ルニ非サレハ之ヲ為スコトヲ得ス但特別方式ニ依ルコトヲ許ス場合ハ此限ニ在ラス 第千六十九条 自筆証書ニ依リテ遺言ヲ為スニハ遺言者其全文、日附及ヒ氏名ヲ自書シ之ニ捺印スルコトヲ要ス 自筆証書中ノ塗抹、書入其他ノ変更ハ遺言者其場所ヲ指示シ之ヲ変更シタル旨ヲ附記シテ特ニ之ニ署名シ且其変更ノ場所ニ捺印スルコトヲ要ス 第千七十条 公正証書ニ依リテ遺言ヲ為スニハ左ノ方式ニ従フコトヲ要ス 一 証人二人以上ノ立会アルコト 二 遺言者カ遺言ノ旨取ヲ公証人ニ口授スルコト 三 公証人カ遺言者ノ口述ヲ筆記シ之ヲ遺言者及ヒ証人ニ読聞カスコト 四 遺言者及ヒ証人カ筆記ノ正確ナルコトヲ承認シタル後各署名捺印スルコト 但遺言者カ署名スルコト能ハサル場合ニ於テハ公証人其事由ヲ附記シテ署名ニ代フルコトヲ得 五 公証人カ其証書ハ前四号ニ掲ケタル方式ニ従ヒテ作リタルモノナル旨ヲ附記シテ署名捺印シタルコト 第千七十一条 秘密証書ニ依リテ遺言ヲ為スニハ左ノ方式ニ従フコトヲ要ス 一 遺言者カ自ラ其証書ニ署名捺印スルコト 二 遺言者カ其証書ヲ封シテ之ニ封印スルコト 三 遺言者カ公証人一人及ヒ証人二人以上ノ前ニ封書ヲ提出シテ自己ノ遺言書ナル旨並ニ其筆者ノ氏名、住所ヲ申述スルコト 四 公証人カ其証書提出ノ日附及ヒ遺言者ノ申立ヲ封紙ニ記シタル後遺言者及ヒ証人ト共ニ署名捺印スルコト 第千六十九条第二項ノ規定ハ秘密証書ニ依ル遺言ニ之ヲ準用ス 第千七十二条 秘密証書ニ依ル遺言ハ前条ニ定メタル方式ニ缺クルモノアルモ其遺言書カ第千六十九条ノ方式ヲ具備スルトキハ自筆証書ニ依ル遺言トシテ其効力ヲ有ス 第千七十三条 文字ヲ読ムコト能ハサル者ハ秘密証書ニ依リテ遺言ヲ為スコトヲ得ス 第千七十四条 言語ヲ発スルコト能ハサル者カ秘密証書ニ依リテ遺言ヲ為ス場合ニ於テハ遺言者ハ公証人及ヒ証人ノ面前ニ於テ其証書ハ自己ノ遺言書ナル旨並ニ其筆者ノ氏名、住所ヲ封紙ニ自書シテ第千七十一条第一項第三号ノ申述ニ代フルコトヲ要ス 公証人ハ遺言者カ前項ニ定メタル方式ヲ践ミタル旨ヲ封紙ニ記シテ申述ノ記載ニ代フルコトヲ要ス 第千七十五条 禁治産者カ本心ニ復シタル時ニ於テ遺言ヲ為スニハ医師二人以上ノ立会アルコトヲ要ス 遺言ニ立会ヒタル医師ハ遺言者カ遺言ヲ為ス時ニ於テ心神喪失ノ状況ニ在ラサリシ旨ヲ記シ署名捺印スルコトヲ要ス但秘密証書ニ依リテ遺言ヲ為ス場合ニ於テハ其封紙ニ右ノ記載及ヒ署名捺印ヲ為スコトヲ要ス 第千七十六条 左ニ掲ケタル者ハ遺言ノ証人又ハ立会人タルコトヲ得ス 一 未成年者 二 禁治産者及ヒ準禁治産者 三 剥奪公権者及ヒ停止公権者 四 遺言者ノ配偶者 五 推定相続人、受遺書及ヒ其配偶者並ニ直系血族 六 公証人ト家ヲ同ウスル者及ヒ公証人ノ直系血族並ニ雇人 第千七十七条 遺言ハ二人以上同一ノ証書ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得ス