明治民法(明治29・31年)

甲第六十二号議案 (明治二十九年五月二十日配付)

参考原資料

第五編 第一章 第三節 家督相続ノ順位 第九百七十八条 被相続人ノ家族タル直系卑属ハ左ノ規定ニ従ヒ法定家督相続人ト為ル 一 親等ノ異ナリタル者ノ間ニ在リテハ其近キ者ヲ先ニス 二 親等ノ同シキ者ノ間ニ在リテハ男ヲ先ニス 三 親等ノ同シキ男又ハ女ノ間ニ在リテハ嫡出子ヲ先ニス 四 親等ノ同シキ嫡出子、庶子及ヒ私生子ノ間ニアリテハ嫡出子及ヒ庶子ハ女ト雖モ之ヲ私生子ヨリ先ニス 五 前四号ニ掲ケタル事項ニ付キ相同シキ者ノ間ニ在リテハ年長者ヲ先ニス 第八百三十八条ノ規定ニ依リ又ハ養子縁組ニ因リテ嫡出子タル身分ヲ取得シタル者ハ家督相続ニ付テハ其嫡出子タル身分ヲ取得シタル時ニ生マレタルモノト看做ス 第九百七十九条 第七百三十五条及ヒ第七百三十六条ノ規定ニ依リテ家族ト為リタル直系卑属ハ他ノ直系卑属ナキ場合ニ限リ前条ニ定メタル順序ニ従ヒテ法定家督相続人ト為ル 第九百八十条 法定ノ推定家督相続人ハ其姉妹ノ為メニスル婿養子縁組ニ因リテ其相続権ヲ害セラルルコトナシ 第九百八十一条 第九百七十八条及ヒ第九百七十九条ノ規定ニ依リテ家督相続人タルヘキ者カ家督相続ノ開始前ニ死亡シ又ハ相続権ヲ失ヒタル場合ニ於テ其者ニ直系卑属アルトキハ其直系卑属ハ第九百七十八条及ヒ第九百七十九条ニ定メタル順序ニ従ヒ其者ト同順位ニ於テ法定家督相続人ト為ル 第九百八十二条 法定ノ推定家督相続人ニ付キ左ノ事由アルトキハ被相続人ハ其推定家督相続人ノ廃除ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得 一 被相続人ニ対シテ虐待ヲ為シ又ハ之ニ重大ナル侮辱ヲ加ヘタルコト 二 不具又ハ疾病ニ因リテ家政ヲ執ルニ堪ヘサルヘキコト 三 家名ニ汚辱ヲ及ホスヘキ罪ニ因リテ刑ニ処セラレタルコト 四 浪費者トシテ準禁治産ノ宣告ヲ受ケ改悛ノ望ナキコト 此他正当ノ事由アルトキハ被相続人ハ成年ニ達シタル推定家督相続人ノ同意アル場合ニ限リ其廃除ヲ請求スルコトヲ得 第九百八十三条 被相続人カ遺言ヲ以テ推定家督相続人ヲ廃除スル意思ヲ表示シタルトキハ遺言執行者ハ其遺言カ効力ヲ生シタルトキハ遺言執行者ハ其遺言カ効力ヲ生シタル後遅滞ナク裁判所ニ廃除ノ請求ヲ為スコトヲ要ス 第九百八十四条 推定家督相続人廃除ノ原因止ミタルトキハ被相続人ハ廃除ノ取消ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得 第九百八十二条第一号ノ場合ニ於テハ何時ニテモ廃除ノ取消ヲ請求スルコトヲ得 前条ノ規定ハ廃除ノ取消ニ之ヲ準用ス 第九百八十五条 被相続人カ推定家督相続人ノ廃除ヲ請求シタル後其裁判確定前ニ死亡シタルトキハ裁判所ハ親族、利害関係人又ハ検事ノ請求ニ因リ其遺産ノ管理ニ付キ必要ナル処分ヲ命スルコトヲ得廃除ノ遺言アリタルトキ亦同シ 前項ノ場合ニ於テハ第二十七条乃至第二十九条ノ規定ヲ準用ス 第九百八十六条 法定ノ推定家督相続人ナキトキハ被相続人ハ家督相続人ヲ指定スルコトヲ得 家督相続人ノ指定ハ之ヲ取消スコトヲ得 第九百八十七条 家督相続人ノ指定及ヒ其取消ハ戸籍吏ニ之ヲ届出ツルニ因リテ其効力ヲ生ス 第九百八十八条 家督相続人ノ指定ハ遺言ヲ以テモ亦之ヲ為スコトヲ得此場合ニ於テハ遺言執行者ハ其遺言カ効力ヲ生シタル後遅滞ナク之ヲ戸籍吏ニ届出ツルコトヲ要ス 第九百八十九条 法定又ハ指定ノ家督相続人ナキ場合ニ於テ其家ニ被相続人ノ父アルトキハ父、父アラサルトキ又ハ父カ其意思ヲ表示スルコト能ハサルトキハ母、父母共ニアラサルトキ又ハ其意思ヲ表示スルコト能ハサルトキハ親族会ハ左ノ順序ニ従ヒ家族中ヨリ家督相続人ヲ選定ス 第一 兄弟 第二 姉妹 第三 配偶者 第四 兄弟姉妹ノ直系卑属 第九百九十条 家督相続人ヲ選定スル権利ヲ有スル者ハ正当ノ事由アル場合ニ限リ裁判所ノ許可ヲ得テ前条ニ掲ケタル順序ヲ変更シ又ハ選定ヲ為ササルコトヲ得 第九百九十一条 第九百八十九条ノ規定ニ依リテ家督相続人タル者ナキトキハ其家ニ在ル直系尊属親中親等ノ最モ近キ者家督相続人ト為ル此場合ニ於テハ第九百七十八条第一項第二号ノ規定ヲ準用ス 第九百九十二条 前条ノ規定ニ依リテ家督相続人タル者ナキトキハ親族会ハ被相続人ノ親族又ハ分家ノ戸主若クハ家族中ヨリ家督相続人ヲ選定ス 被相続人ノ親族又ハ分家ノ戸主若クハ家族中ニ家督相続人タルヘキ者ナキトキハ親族会ハ他人ノ中ヨリ之ヲ選定ス 親族会ハ正当ノ事由アル場合ニ限リ前二項ノ規定ニ拘ハラス裁判所ノ許可ヲ得テ他人ヲ選定スルコトヲ得