明治民法(明治29・31年)

甲第五十八号議案 (明治二十九年四月二十日配付)

参考原資料

第四編 第六章 後見 第一節 後見ノ開始 第九百五条 後見ハ左ノ場合ニ於テ開始ス 一 未成年者ニ対シ親権ヲ行フ者ナキトキ又ハ母カ財産ノ管理ヲ辞シタルトキ 二 成年者カ禁治産ノ宣告ヲ受ケタルトキ 第二節 後見ノ機関 第一款 後見人 第九百六条 未成年者ニ対シテ最後ニ親権ヲ行フ者ハ遺言ヲ以テ後見人ヲ指定スルコトヲ得但財産ノ管理ヲ辞シタル母ハ此限ニ在ラス 親権ヲ行フ父ノ生前ニ於テ母カ財産ノ管理ヲ辞シタルトキハ父ハ前条ノ規定ニ依リ後見人ノ指定ヲ為スコトヲ得 第九百七条 前条ノ規定ニ依リテ後見人タル者アラサルトキハ戸主ハ未成年ナル家族ノ後見人ト為ル 第九百八条 成年者カ禁治産ノ宣告ヲ受ケタルトキハ配偶者其後見人ト為ル 禁治産者ニ配偶者ナキトキハ親権ヲ行フ父又ハ母其後見人ト為ル 前二項ノ規定ニ依リテ禁治産者タル家族ノ後見人タル者アラサルトキハ戸主其後見人ト為ル 第九百九条 前三条ニ依リテ後見人タル者アラサルトキハ後見人ハ親族会之ヲ選定ス 第九百十条 母カ財産ノ管理ヲ辞シ、後見人カ其職務ヲ辞シ、親権ヲ行ヒタル父若クハ母カ他家ニ入リ又ハ戸主カ隠居ヲ為シタルニ因リ後見人ヲ選定スル必要ヲ生シタルトキハ其父、母又ハ後見人ハ遅滞ナク裁判所ニ親族会ノ招集ヲ請求スルコトヲ要ス 第九百十一条 父母又ハ親族会ハ数人ノ後見人ヲ指定シ又ハ選定スルコトヲ得此場合ニ於テハ後見ノ事務ハ其過半数ヲ以テ之ヲ決ス但父、母又ハ親族会カ各後見人ヲシテ後見ノ事務ヲ分掌セシメ又ハ之ヲ其各自ノ専断ニ任セタルトキハ此限ニ在ラス 第九百十二条 後見人ハ左ノ事由アルニ非サレハ其任務ヲ辞スルコトヲ得ス 一 軍人又ハ軍属トシ現役ニ服スルコト 二 被後見人ノ住所ノ市又ハ郡以外ニ於テ公務ニ従事スルコト 三 自己ヨリ先ニ後見人タルヘキ者ニ付キ本条又ハ次条ニ掲ケタル事由ノ存セシ場合ニ於テ其事由カ消滅シタルコト 四 禁治産者ニ付テハ十年以上後見ヲ為シタルコト但配偶者、直系血族及ヒ戸主ハ此限ニ在ラス 五 親族会ニ於テ正当ト認メタル事由 第九百十三条 左ニ掲ケタル者ハ後見人タルコトヲ得ス 一 未成年者 二 禁治産者及ヒ準禁治産者 三 剥奪公権者及ヒ停止公権者 四 裁判所ニ於テ免黜セラレタル法定代理人又ハ保佐人 五 復権ヲ得サル破産者 六 被後見人ニ対シ訴訟ヲ為シタル者及ヒ其配偶者並ニ直系血族 七 行方ノ知レサル者 八 親族会ニ於テ後見ノ任務ニ堪ヘサル事跡、不正ノ行為又ハ著シキ不行跡アリト認メタル者 第九百十四条 第九百八条乃至第九百十条、第九百十二条及ヒ前条ノ規定ハ保佐人ニ之ヲ準用ス