明治民法(明治29・31年)

甲第五十六号議案明治二十九年一月二十四日配付

参考原資料

民法第一議案 [国立国会図書館デジタルコレクション]
第四編 第四章 第二節 養子 第一款 縁組ノ要件 第八百三十七条 成年ニ達シタル者ハ他人ヲ収養シテ其子ト為スコトヲ得 第八百三十八条 何人ト雖モ自己ヨリ年長ナル者ヲ養子ト為スコトヲ得ス 第八百三十九条 何人ト雖モ其尊属又ハ直系卑属ヲ養子ト為スコトヲ得ス 第八百四十条 後見人ハ管理ノ計算ヲ終ハラサル間ハ被後見人ヲ養子ト為スコトヲ得ス但遺言ヲ以テ之ヲ養子ト為スハ此限ニ在ラス 第八百四十一条 配偶者アル者ハ其配偶者ト一致スルニ非サレハ縁組ヲ為スコトヲ得ス 前項ノ規定ハ夫婦ノ一方カ他ノ一方ノ子ヲ養子ト為ス場合ニハ之ヲ適用セス 第八百四十二条 前条第一項ノ場合ニ於テ夫婦ノ一方カ其意思ヲ表示スルコト能ハサルトキハ他ノ一方ハ双方ノ名義ヲ以テ縁組ヲ為スコトヲ得 第八百四十三条 養子ト為ルヘキ者カ第七百六十五条ノ年齢ニ達セサルトキハ他日養親ノ子ノ配偶者ト為スヘキ予約ヲ以テ之ヲ養子ト為スコトヲ得ス 養親ノ子カ第七百六十五条ノ年齢ニ達セサルトキハ他日養子ヲ其配偶者ト為スヘキ予約ヲ以テ縁組ヲ為スコトヲ得ス 第八百四十四条 縁組又ハ婚姻ニ因リテ他家ニ入リタル者ハ実家ニ復籍シタル後ニ非サレハ更ニ養子トシテ他家ニ入ルコトヲ得ス 第八百四十五条 養子ト為ルヘキ者カ十五年未満ナルトキハ其家ニ在ル父母之ニ代ハリテ縁組ノ承諾ヲ為スコトヲ得 父母ノ一方カ知レサルトキ、死亡シタルトキ又ハ其意思ヲ表示スルコト能ハサルトキハ他ノ一方ニ於テ前項ノ承諾ヲ為スコトヲ得 父母共ニ知レサルトキ、死亡シタルトキ又ハ其意思ヲ表示スル事能ハサルトキハ後見人ハ親族会ノ認許ヲ得テ承諾ヲ為ス事ヲ得 第八百四十六条 成年ノ子カ養子ヲ為シ又ハ満十五年以上ノ子カ養子ト為ルニハ其家ニ在ル父母ノ承諾ヲ得ル事ヲ要ス此場合ニ於テハ第七百七十二条第二項、第三項及ヒ第七百七十三条ノ規定ヲ準用ス 第八百四十七条 第七百七十四条ノ規定ハ縁組ニ之ヲ準用ス 第八百四十八条 養子ハ遺言ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得此場合ニ於テハ養子ト為ルヘキ者又ハ其法定代理人及ヒ成年ノ証人二人以上ヨリ縁組ノ届出ヲ為スコトヲ要ス 第八百四十九条 戸籍吏ハ縁組カ第七百四十一条、第七百四十七条、第七百六十二条第二項及ヒ前十二条ノ規定其他ノ法令ニ違反セサルコトヲ認メタル後ニ非サレハ其届出ヲ受理スルコトヲ得ス 第七百七十五条但書ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス 第八百五十条 第八百三十七条乃至第八百四十六条ノ規定ハ日本人カ外国ニ於テ縁組ヲ為ス場合ニモ亦之ヲ適用ス 第八百五十一条 外国ニ在ル日本人間ニ於テ縁組ヲ為サント欲スルトキハ其国ニ駐在スル日本ノ公使又ハ領事ニ其届出ヲ為スコトヲ得此場合ニ於テハ第八百四十七条乃至第八百四十九条ノ規定ヲ準用ス 第二款 縁組ノ無効及ヒ取消 第八百五十二条 縁組ハ左ノ場合ニ限リ無効トス 一 人違其他ノ事由ニ因リ当事者間ニ縁組ヲ為ス意思ナキトキ 二 当事者カ縁組ノ届出ヲ為ササルトキ但其届出カ第八百四十七条及ヒ第八百四十八条ニ掲ケタル条件ヲ欠クニ止マルトキハ縁組ハ之カ為メニ其効力ヲ妨ケラルルコトナシ 第八百五十三条 縁組ハ後十条ノ規定ニ依ルニ非サレハ之ヲ取消スコトヲ得ス 第八百五十四条 第八百三十七条ノ規定ニ違反シタル縁組ハ養親又ハ其法定代理人ヨリ其取消ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得但養親カ成年ニ達シタル後六个月ヲ経過シ又ハ追認ヲ為シタルトキハ此限ニ在ラス 第八百五十五条 第八百三十八条、第八百三十九条又ハ第八百四十三条ノ規定ニ違反シタル縁組ハ各当事者、其戸主、直系尊属及ヒ検事ヨリ其取消ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得但検事ハ当事者ノ一方カ死亡シタル後ハ之ヲ請求スルコトヲ得ス 第八百五十六条 第八百四十条ノ規定ニ違反シタル縁組ハ養子又ハ其法定代理人ヨリ其取消ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得但管理ノ計算カ終ハリタル後六个月ヲ経過シ又ハ追認ヲ為シタルトキハ此限ニ在ラス 第八百五十七条 第八百四十一条ノ規定ニ違反シタル縁組ハ承諾ヲ為ササリシ配偶者ヨリ其取消ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得但其配偶者カ縁組アリタルコトヲ知リタル時ヨリ六个月ヲ経過シタルトキハ追認ヲ為シタルモノト看做ス 第八百五十八条 第八百四十二条ノ規定ニ依リテ為シタル縁組ハ意思ヲ表示スルコト能ハサリシ配偶者ヨリ其取消ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得但其配偶者カ意思ヲ表示スルコトヲ得ルニ至リタル後六个月ヲ経過シ又ハ追認ヲ為シタルトキハ此限ニ在ラス 第八百五十九条 第八百四十四条ノ規定ニ違反シタル縁組ハ養子ノ実家ニ在ル直系尊属ヨリ其取消ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得但其直系尊属カ縁組アリタルコトヲ知リタル後六个月ヲ経過シ又ハ追認ヲ為シタルトキハ此限ニ在ラス 第八百六十条 第八百四十五条ノ規定ニ依リテ為シタル縁組ハ養子ヨリ其取消ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得但養子カ満十五年ニ達セサル間及ヒ其成年ニ達シタル後六个月ヲ経過シタルトキハ此限ニ在ラス 前項ノ取消権ハ養子カ満十五年ニ達シタル後追認ヲ為シタルトキハ消滅ス 第八百六十一条 第八百四十六条ノ規定ニ違反シタル縁組ハ承諾権ヲ有セシ者ヨリ其取消ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得承諾カ詐欺又ハ強迫ニ因リタルトキ亦同シ 第七百八十五条ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス 第八百六十二条 壻養子縁組ノ場合ニ於テハ各当事者ハ婚姻ノ無効又ハ取消ヲ理由トシテ縁組ノ取消ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得但婚姻ノ無効又ハ取消ノ請求ニ附帯シテ縁組ノ取消ヲ請求スルコトヲ妨ケス 前項ノ取消権ハ当事者カ婚姻ノ無効ナルコト又ハ其取消アリタルコトヲ知リタル後六个月ヲ経過シ又ハ其取消権ヲ抛棄シタルトキハ消滅ス 第八百六十三条 第七百八十六条及ヒ第七百八十七条ノ規定ハ縁組ニ之ヲ準用ス 第三款 縁組ノ効力 第八百六十四条 養子ハ縁組ノ日ヨリ養親ノ嫡出子タル身分ヲ取得ス 第八百六十五条 養子ハ縁組ニ因リテ養親ノ家ニ入ル 第四款 離縁 第八百六十六条 縁組ノ当事者ハ其協議ヲ以テ離縁ヲ為スコトヲ得 養子カ十五年未満ナルトキハ其離縁ハ養親ト養子ニ代ハリテ縁組ノ承諾ヲ為ス権利ヲ有スル者トノ協議ヲ以テ之ヲ為ス 第八百六十七条 満二十五年ニ達セサル者カ協議上ノ離縁ヲ為スニハ第八百四十六条ノ規定ニ依リ其縁組ニ付キ承諾権ヲ有スル者ノ承諾ヲ得ルコトヲ要ス 第八百六十八条 第七百七十四条ノ規定ハ協議上ノ離縁ニ之ヲ準用ス 戸籍吏ハ協議ノ真実ナルコト及ヒ前条ノ規定其他ノ法令ニ違反セサルコトヲ認メタル後ニ非サレハ離縁ノ届出ヲ受理スルコトヲ得ス 第八百六十九条 縁組ノ当事者ノ一方ハ他ノ一方又ハ其直系尊属ニ左ノ事由アルトキハ離縁ノ訴ヲ提起スルコトヲ得 一 当事者ノ一方カ他ノ一方又ハ其直系尊属ニ対シテ虐待ヲ為シ又ハ之ニ重大ナル侮辱ヲ加ヘタルコト 二 養親ノ直系尊属カ養子ニ対シテ虐待ヲ為シ又ハ之ニ重大ナル侮辱ヲ加ヘタルコト 三 養親カ養子ノ実方ノ直系尊属ニ対シテ虐待ヲ為シ又ハ之ニ重大ナル侮辱ヲ加ヘタルコト 四 当事者ノ一方カ他ノ一方ニ汚辱ヲ及ホスヘキ罪ニ因リテ刑ニ処セラレタルコト 五 当事者ノ一方カ悪意ヲ以テ他ノ一方ヲ遺棄シタルコト 六 養子ニ家名ヲ涜シ又ハ家産ヲ傾クヘキ重大ナル過失アリタルコト 第八百七十条 前条第一号、第二号及ヒ第四号乃至第六号ノ場合ニ於テ当事者ノ一方カ他ノ一方又ハ其直系尊属ノ行為ヲ宥恕シタルトキハ離縁ノ訴ヲ提起スルコトヲ得ス 第八百七十一条 第八百六十九条第四号ノ場合ニ於テ当事者ノ一方カ他ノ一方ノ行為ニ同意シタルトキハ離縁ノ訴ヲ提起スルコトヲ得ス 処刑ノ宣告ヲ受ケタル者ハ他ノ一方ノ処刑ヲ理由トシテ離婚ノ訴ヲ提起スルコトヲ得ス 第八百七十二条 養子カ満十五年ニ達セサル間ハ其縁組ニ付キ承諾権ヲ有セル者ヨリ離縁ノ訴ヲ提起スルコトヲ得 第八百七十三条 養親カ禁治産者ナルトキハ其法定代理人ハ親族会ノ認許ヲ得テ離縁ノ訴ヲ提起スルコトヲ得 養子カ禁治産者ナルトキハ実家ノ直系尊属又ハ戸主ヨリ離縁ノ訴ヲ提起スルコトヲ得但養子ニ配偶者アルトキハ此限ニ在ラス 第八百七十四条 離縁ノ訴ハ之ヲ提起スル権利ヲ有スル者カ離縁ノ原因タル事実ヲ知リタル時ヨリ一年ヲ経過シタル後ハ之ヲ提起スルコトヲ得ス其事実発生ノ時ヨリ十年ヲ経過シタル後亦同シ 第八百七十五条 壻養子縁組ノ場合ニ於テハ各当事者ハ離婚ヲ理由トシテ離縁ノ訴ヲ提起スルコトヲ得但離婚ノ請求ニ附帯シテ離縁ノ請求ヲ為スコトヲ妨ケス 前項ニ定メタル権利ハ当事者カ離婚アリタルコトヲ知リタル後六个月ヲ経過シ又ハ其権利ヲ抛棄シタルトキハ消滅ス 第八百七十六条 養子カ戸主ト為リタル後ハ之ニ対シテ離縁ノ訴ヲ提起スルコトヲ得ス但隠居ヲ為シタル後ハ此限ニ在ラス 第八百七十七条 当事者ノ一方ノ過失ニ因リテ離縁ノ判決アリタルトキハ其一方ハ他ノ一方カ自活スルコト能ハサル場合ニ於テ之ヲ扶養スル義務ヲ負フ 前項ニ定メタル義務ハ当事者ノ一方カ死亡シ又ハ扶養ヲ受クル権利ヲ有スル者カ更ニ縁組ヲ為シタルトキハ消滅ス 第八百七十八条 養子ハ離縁ニ因リ其実家ニ於テ有セシ身分ヲ回復ス但第三者カ既ニ得タル権利ヲ害スルコトヲ得ス 第八百七十九条 家女ト婚姻ヲ為シタル養子ノ離縁ノ場合ニ於テハ家女ハ其父母及ヒ夫ノ承諾ヲ得テ其夫ノ家ニ入ルコトヲ得但家女カ推定家督相続人ナルトキハ此限ニ在ラス 第八百八十条 夫婦カ養子ト為リ又ハ養子カ養親ノ他ノ養子ト婚姻ヲ為シタル場合ニ於テ妻カ離婚ニ因リテ養家ヲ去ルヘキトキハ夫ハ其選択ニ従ヒ離縁又ハ離婚ノ訴ヲ提起スルコトヲ要ス