明治民法(明治29・31年)

甲第五十号議案明治二十八年十一月十三日配付

参考原資料

民法第一議案 [国立国会図書館デジタルコレクション]
第四編 第三章 婚姻 第一節 婚姻ノ成立 第一款 婚姻ノ要件 第七百七十一条 男ハ満十七年女ハ満十五年ニ至ラサレハ婚姻ヲ為スコトヲ得ス 第七百七十二条 配偶者アル者ハ重ネテ婚姻ヲ為スコトヲ得ス 第七百七十三条 女ハ前婚ノ解消又ハ取消ノ後六个月内ニ再婚ヲ為スコトヲ得ス 女カ前婚ノ解消又ハ取消ノ前ニ懐胎セシ場合ニ於テハ其分娩ノ日ヨリ前項ノ規定ヲ適用セス 第七百七十四条 婚姻中姦通ヲ為シタル妻ハ其婚姻解消ノ姦夫ト婚姻ヲ為スコトヲ得ス 第七百七十五条 直系ノ血族間ニ於テハ婚姻ヲ為スコトヲ得ス 傍系ノ三親等内亦同シ但養子ト養親トノ間ハ此限ニ在ラス 第七百七十六条 直系ノ姻族間ニ於テハ婚姻ヲ為スコトヲ得ス第七百三十九条ノ規定ニ依リ姻族関係カ止ミタル後亦同シ 第七百七十七条 養子、其配偶者、其直系卑属及ヒ其直系卑属ノ配偶者ト養親及ヒ其直系尊属トノ間ニ於テハ第七百四十条ノ規定ニ依リ親族関係カ止ミタル後ト雖モ婚姻ヲ為スコトヲ得ス 第七百七十八条 夫成年者カ婚姻ヲ為スニハ其父母ノ承諾ヲ得ルコトヲ要ス但養子ハ其養父母ノ承諾ノミヲ以テ足ル 父母ノ一方カ知レサルトキ、死亡シタルトキ又ハ其意思ヲ表示スルコト能ハサルトキハ他ノ一方ノ承諾ノミヲ以テ足ル 父母共ニ知レサルトキ、死亡シタルトキ又ハ其意思ヲ表示スルコト能ハサルトキハ後見人ノ承諾ヲ得ルコトヲ要ス 第七百七十九条 前条ノ規定ハ継父母ニハ之ヲ適用セス 第七百八十条 婚姻ハ夫ノ住所ノ戸籍吏ニ之ヲ届出ツルニ因リテ其効力ヲ生ス但壻養子縁組及ヒ入夫婚姻ノ場合ニ於テハ妻ノ住所ノ戸籍吏ニ其届出ヲ為スコトヲ要ス 前項ノ届出ハ当事者双方及ヒ成年ノ証人二人以上ヨリ口頭ニテ又ハ自ラ署名シタル書面ヲ以テ之ヲ為スコトヲ要ス 第七百八十一条 戸籍吏ハ婚姻カ第七百四十四条、第七百五十三条、第七百五十八条及ヒ前九条ノ規定其他ノ法令ニ違反セサルコトヲ確認シタル後ニ非サレハ其届出ヲ受理スルコトヲ得ス但婚姻カ第七百四十四条又ハ第七百五十三条ノ規定ニ違反スル場合ニ於テ戸籍吏カ注意ヲ為シタルニ拘ハラス当事者カ其届出ヲ為サント欲スルトキハ此限ニ在ラス 第七百八十二条 第七百七十一条乃至第七百七十九条ノ規定ハ日本人カ外国ニ於テ婚姻ヲ為ス場合ニモ亦之ヲ適用ス 第七百八十三条 外国ニ在ル日本人間ニ於テ婚姻ヲ為サント欲スルトキハ其国ニ駐在スル日本ノ公使又ハ領事ニ其届出ヲ為スコトヲ得此場合ニ於テハ第七百八十条及ヒ第七百八十一条ノ規定ヲ準用ス 第七百八十四条 第七百七十二条乃至第七百七十七条ノ規定ハ外国人カ日本ニ於テ婚姻ヲ為ス場合ニモ亦之ヲ適用ス 戸籍吏ハ婚姻ヲ為サント欲スル外国人ヲシテ其婚姻カ本国ノ法令ニ違反セサルコトヲ証明セシムル為メ其本国ノ相当ナル官庁ノ証明書ヲ差出タサシムルコトヲ要ス 第二款 婚姻ノ無効及ヒ取消 第七百八十五条 婚姻ハ左ノ場合ニ限リ無効トス 一 人違其他ノ事由ニ因リテ当事者間ニ婚姻ヲ為ス意思ナキトキ 二 当事者カ婚姻ノ届出ヲ為ササルトキ但其届出カ第七百八十条ニ掲ケタル条件ヲ欠クニ止マルトキハ婚姻ハ之カ為メニ其効力ヲ妨ケラルルコトナシ 第七百八十六条 婚姻ハ第七百八十七条乃至第七百九十二条ノ規定ニ依ルニ非サレハ之ヲ取消スコトヲ得ス 第七百八十七条 第七百七十一条乃至第七百七十七条ノ規定ニ違反シタル婚姻ハ各当事者、其戸主、其親族及ヒ検事ヨリ其取消ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得 第七百七十二条乃至第七百七十四条ノ規定ニ違反シタル婚姻ニ付テハ当事者ノ配偶者又ハ前配偶者ノ親族モ亦其取消ヲ請求スルコトヲ得 第七百八十八条 第七百七十一条ノ規定ニ違反シタル婚姻ハ不適齢者カ適齢ニ達シタルトキハ其取消ヲ請求スルコトヲ得ス 不適齢者ハ適齢ニ達シタル後尚ホ三个月間其婚姻ノ取消ヲ請求スルコトヲ得但追認ヲ為シタルトキハ此限ニ在ラス 第七百八十九条 第七百七十三条ノ規定ニ違反シタル婚姻ハ前婚解消ノ日ヨリ六个月ヲ経過シ又ハ女カ再婚後懐胎シタルトキハ其取消ヲ請求スルコトヲ得ス 第七百九十条 第七百七十八条ノ規定ニ違反シタル婚姻ハ承諾権ヲ有セシ者ヨリ其取消ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得承諾カ詐欺又ハ強迫ニ因リタルトキ亦同シ 第七百九十一条 前条ノ取消権ハ左ノ場合ニ於テ消滅ス 一 承諾権ヲ有セシ者カ婚姻アリタルコトヲ知リタル後又ハ詐欺ヲ発見シ若クハ強迫ヲ免レタル後六个月ヲ経過シタルトキ 二 承諾権ヲ有セシ者カ追認ヲ為シタルトキ 三 当事者カ成年ニ達シタルトキ 第七百九十二条 詐欺又ハ強迫ニ因リテ婚姻ヲ為シタル者ハ其婚姻ノ取消ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得 前項ノ取消権ハ当事者カ詐欺ヲ発見シ若クハ強迫ヲ免レタル後三个月ヲ経過シ又ハ追認ヲ為スニ因リテ消滅ス 第七百九十三条 婚姻ノ取消ハ其効力ヲ既往ニ及ホサス 婚姻ノ当時其取消ノ原因ノ存スルコトヲ知ラサリシ当事者カ婚姻ニ因リテ財産ヲ得タルトキハ現ニ利益ヲ受クルニ限度ニ於テ其返還ヲ為スコトヲ要ス 婚姻ノ当時其取消ノ原因ノ存スルコトヲ知リタル当事者ハ婚姻ニ因リテ得タル利益ノ全部ヲ返還スルコトヲ要ス尚ホ相手方カ善意ナリシトキハ之ニ対シテ損害賠償ノ責ニ任ス 第三款 罰則 第七百九十四条 戸籍吏カ第七百八十一条ノ職務ヲ怠リタルトキハ二円以上二十円以下ノ過料ニ処セラル 戸籍吏カ婚姻ノ法令ニ違反セルコトヲ知リテ其届出ヲ受理シタルトキハ五円以上五十円以下ノ過料ニ処セラル夫婦ノ一方カ他ノ一方ニ婚姻取消ノ原因ヲ隠秘シタルトキ亦同シ