第四編
第二章
第三節 戸主権ノ喪失
第七百五十六条 戸主ハ左ニ掲クル条件ノ具備スルニ非サレハ隠居ヲ為スコトヲ得ス
一 満六十年以上ナルコト
二 完全ノ能力ヲ有スル家督相続人アルコト
第七百五十七条 戸主カ疾病、本家相続其他已ムコトヲ得サル事由ニ因リテ爾後家政ヲ執ルコト能ハサルニ至リタルトキハ前条ノ規定ニ拘ハラス裁判所ノ許可ヲ得テ隠居ヲ為スコトヲ得
第七百五十八条 戸主カ婚姻ニ因リテ他家ニ入ラント欲スルトキハ前条ノ規定ニ従ヒ隠居ヲ為スコトヲ得
第七百五十九条 女戸主ニシテ夫アル者ハ其夫ノ承諾アルニ非サレハ隠居ヲ為スコトヲ得ス
第七百六十条 隠居ハ隠居者及ヒ其家督相続人ヨリ戸籍吏ニ届出ツルニ因リテ其効力ヲ生ス
第七百六十一条 隠居者ノ親族及ヒ検事ハ六箇月内ニ第七百五十六条乃至第七百五十八条ノ規定ニ違反シタル隠居ノ取消ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得
女戸主カ其夫ノ承諾ナクシテ隠居ヲ為シタルトキハ夫ハ前項ノ期間内ニ其取消ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得
第七百六十二条 隠居者又ハ家督相続人カ詐欺又ハ強迫ニ因リテ隠居ノ届出ヲ為シタルトキハ隠居者若クハ家督相続人、其親族又ハ検事ハ一年内ニ其取消ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得
前項ノ期間ハ隠居者及ヒ家督相続人ニ付テハ其詐欺ヲ発見シタル時又ハ強迫ヲ免レタル時ヨリ之ヲ起算ス
第七百六十三条 隠居ハ隠居者又ハ家督相続人ヨリ隠居者ノ債権者及ヒ債務者ニ其通知ヲ為スニ非サレハ之ヲ以テ其債権者及ヒ債務者ニ対抗スルコトヲ得ス
第七百六十四条 戸主カ債権者ヲ害スルコトヲ知リテ隠居ヲ為シタルトキハ其債権者ハ隠居ノ通知ヲ受ケタル時ヨリ一年内ニ其隠居ノ取消ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得
第四百二十六条ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第七百六十五条 隠居ノ取消以前ニ家督相続人ノ債権者ト為リタル者ハ其取消ニ因リテ戸主タル者ニ対シテ弁済ノ請求ヲ為スコトヲ得但債権者カ債権取得ノ当時其取消ノ原因ノ存スルコトヲ知リタルトキハ此限ニ在ラス
前項ノ規定ハ家督相続人ノ一身ニ専属スル債務ニハ之ヲ適用セス
第七百六十六条 隠居以前ニ隠居者ノ債権者ト為リタル者ハ其隠居者ニ対シテ弁済ノ請求ヲ為スコトヲ得但家督相続人ニ対スル請求ヲ妨ケス
第七百六十七条 隠居ハ隠居者ノ一身ニ専属スル権利義務ニ其効力ヲ及ホサス
第七百六十八条 新ニ家ヲ立テタル者ハ其家ヲ廃スルコトヲ得
家督相続ニ因リテ戸主ト為リタル者ハ其家ヲ廃スルコトヲ得ス但本家ノ相続又ハ再興其他ノ事由ニ因リ裁判所ノ許可ヲ得テ廃家ヲ為スハ此限ニ在ラス
第七百六十九条 戸主カ適法ニ廃家シテ他家ニ入リタルトキハ其家族モ亦其家ニ入ル
他家ニ入ラサルトキハ各一家ヲ創立ス
第七百七十条 戸主死亡シテ家督相続人ナキトキハ絶家シタルモノト其家族ハ各一家ヲ創立ス