第三編
第五章 不法行為
第七百十九条 故意又ハ過失ニ因リテ他人ノ権利ヲ侵害シタル者ハ之ニ生シタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス
第七百二十条 未成年者カ他人ニ損害ヲ加ヘタル場合ニ於テ其行為ノ責任ヲ弁識スルニ足ルヘキ知能ヲ具ヘサリシトキハ其行為ニ付キ賠償ノ責ニ任セス
第七百二十一条 心神喪失ノ間ニ他人ニ損害ヲ加ヘタル者ハ賠償ノ責ニ任セス但過失ニ由リテ一時心神喪失ノ状況ニ陥リタルトキハ此限ニ在ラス
第七百二十二条 前二条ノ規定ニ依リ無能力者ニ責任ナキ場合ニ於テ之ヲ監督スヘキ法定ノ義務アル者ハ其無能力者カ第三者ニ加ヘタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス但監督義務者カ其義務ヲ怠ラサリシコトヲ証明シタルトキハ此限ニ在ラス
監督義務者ニ代ハリテ無能者ヲ監督スル者モ亦前項ノ責ニ任ス
第七百二十三条 或事業ノ為メニ他人ヲ使用スル者ハ被用者カ其事業ノ執行ニ付キ第三者ニ加ヘタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス但使用者カ被用者ノ選任及ヒ其事業ノ監督ニ付キ相当ノ注意ヲ加ヘタルトキ又ハ相当ノ注意ヲ加フルモ損害カ生スヘカリシトキハ此限ニ在ラス
使用者ニ代ハリテ事業ヲ監督スル者モ亦前項ノ責ニ任ス
前二項ノ規定ハ使用者又ハ監督者ヨリ被用者ニ対スル求償権ノ行使ヲ妨ケス
第七百二十四条 注文者ハ請負人カ其仕事ニ付キ第三者ニ加ヘタル損害ヲ賠償スル責ニ任セス但注文又ハ指図ニ付キ注文者ニ過失アリタルトキハ此限ニ在ラス
第七百二十五条 土地ノ工作物ノ設置又ハ保存ニ瑕疵アルニ因リテ他人ニ損害ヲ生シタルトキハ其工作物ノ占有者ハ被害者ニ対シテ損害賠償ノ責ニ任ス
前項ノ規定ハ竹木ノ栽植又ハ支持ニ瑕疵アル場合ニ之ヲ準用ス
前二項ノ場合ニ於テ他ニ損害ノ原因ニ付キ其責ニ任スヘキ者アルトキハ占有者ハ之ニ対シテ求償権ヲ行使スルコトヲ得
第七百二十六条 動物ノ占有者ハ其動物カ他人ニ加ヘタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス但動物ノ性質ニ従ヒ相当ノ注意ヲ以テ其保管ヲ為シタルトキハ此限ニ在ラス
占有者ニ代ハリテ動物ヲ保管スル者モ亦前項ノ責ニ任ス
第七百二十七条 数人カ共同ノ不法行為ニ因リテ他人ニ損害ヲ加ヘタルトキハ各自連帯ニテ其賠償ノ責ニ任ス共同行為中ノ孰レカ其損害ヲ加ヘタルカヲ知ルコト能ハサルトキ亦同シ
教唆者及ヒ幇助者ハ之ヲ共同行為者ト看做ス
第七百二十八条 他人ノ不法行為ニ対シ自己又ハ第三者ノ権利ヲ防衛スル為メ已ムコトヲ得スシテ加害行為ヲ為シタル者ハ損害賠償ノ責ニ任セス但被害者ヨリ不法行為ヲ為シタル者ニ対スル損害賠償ノ請求ヲ妨ケス
前項ノ規定ハ他人ノ物ヨリ生シタル急迫ノ危難ヲ避クル為メ其物ヲ毀損シタル場合ニ之ヲ準用ス
第七百二十九条 胎児ハ損害賠償ノ請求権ニ付テハ既ニ生マレタルモノト看做ス
第七百三十条 第四百十六条ノ規定ハ不法行為ニ因ル損害ノ賠償ニ之ヲ準用ス
被害者ニ過失アリタルトキハ裁判所ハ損害賠償ノ額ヲ定ムルニ付キ之ヲ斟酌スルコトヲ得
第七百三十一条 生命、身体、自由又ハ名誉ヲ害シタル場合ト財産権ヲ害シタル場合トヲ問ハス裁判所ハ財産以外ノ損害ニ対シテモ其賠償ヲ為サシムルコトヲ得
他人ノ名誉ヲ毀損シタル者ニ対シテハ裁判所ハ被害者ノ請求ニ因リ損害賠償ニ代ヘ又ハ損害賠償ト共ニ名誉ヲ回復スルニ適当ナル処分ヲ命スルコトヲ得
第七百三十二条 不法行為ニ因ル損害賠償ノ請求権ハ被害者又ハ其法定代理人カ損害及ヒ加害者ヲ知リタル時ヨリ三年間之ヲ行ハサルニ因リテ消滅ス但第百六十八条ノ適用ヲ妨ケス