第三編
第二章
第十節 委任
第六百四十九条 委任ハ当事者ノ一方カ法律行為ヲ為スコトヲ相手方ニ委任シ其相手方カ之ヲ承諾スルニ因リテ其効力ヲ生ス
第六百五十条 受任者ハ委任ノ本旨ニ従ヒ忠実ニ其委任セラレタル事項ヲ処理スル義務ヲ負フ
第六百五十一条 受任者ハ委任事項ヲ処理スルニ付キ委任者ノ指図ニ違反スルコトヲ得ス但委任者カ之ヲ許諾スヘキ事情アルモ受任者ニ於テ其許諾ヲ求ムルコト能ハサル場合ハ此限ニ在ラス
第六百五十二条 受任者ハ委任終了ノ後遅滞ナク其計算ノ報告ヲ為スコトヲ要ス其終了前ト雖モ委任者カ之ヲ請求シタルトキ亦同シ
第六百五十三条 受任者ハ委任事項ヲ処理スルニ当リテ受取リタル金銭其他ノ物ヲ委任者ニ交付スルコトヲ要ス其収取シタル果実ニ付キ亦同シ
受任者カ委任者ノ為メニ自己ノ名ヲ以テ取得シタル債権ハ之ヲ委任者ニ移転スルコトヲ要ス
第六百五十四条 受任者カ委任者ニ交付スヘキ金額又ハ其利益ノ為メニ用ユヘキ金額ヲ自己ノ利益ノ為メニ消費シタルトキハ其消費シタル日以後ノ利息ヲ払フコトヲ要ス尚損害アリタルトキハ其賠償ノ責ニ任ス
第六百五十五条 受任者ハ特約アルニ非サレハ委任者ニ対シテ報酬ヲ請求スルコトヲ得ス
受任者カ報酬ヲ受クヘキ場合ニ於テハ第六百二十九条ノ規定ヲ準用ス
委任カ受任者ノ責ニ帰スヘカラサル事由ニ因リ其履行ノ半途ニ於テ終了シタルトキハ受任者ハ其既ニ為シタル履行ノ割合ニ応シテ報酬ヲ請求スルコトヲ得
第六百五十六条 委任事項ヲ処理スルニ付キ費用ヲ要スルトキハ委任者ハ受任者ノ請求ニ因リ之ニ其前払ヲ為スコトヲ要ス
第六百五十七条 受任者カ委任事項ヲ処理スルニ必要ト認ムヘキ費用ヲ出タシタルトキハ委任者ハ之ニ其費用及ヒ支出ノ日以後ニ於ケル其利息ヲ償還スルコトヲ要ス
受任者カ必要ト認ムヘキ債務ヲ負担シタルトキハ委任者ハ之ニ代ハリテ其弁済ヲ為スコトヲ要ス但其債務カ弁済期ニ在ラサルトキハ委任者ハ受任者ニ相当ノ担保ヲ供スルコトヲ要ス
受任者カ委任事項ヲ処理スルニ当リ自己ニ過失ナクシテ損害ヲ受ケタルトキハ委任者ニ対シテ其賠償ヲ請求スルコトヲ得
第六百五十八条 委任ハ各当事者ニ於テ何時ニテモ之ヲ解除スルコトヲ得
当事者ノ一方カ相手方ノ為メニ不利ナル時期ニ於テ委任ヲ解除シタルトキハ其損害ヲ賠償スルコトヲ要ス但已ムコトヲ得サル事由アリタルトキハ此限ニ在ラス
第六百五十九条 第六百二十五条ノ規定ハ委任ニ之ヲ準用ス
第六百六十条 委任ハ委任者又ハ受任者ノ死亡ニ因リテ終了ス
受任者カ治産ノ禁ヲ受ケタルトキ亦同シ
第六百六十一条 委任ハ委任者又ハ受任者カ破産ノ宣告ヲ受ケタルニ因リテ終了ス
第六百六十二条 委任終了ノ場合ニ於テ急迫ノ必要アルトキハ受任者、其相続人又ハ其法定代理人ハ委任者、其相続人又ハ其法定代理人カ他ノ方法ニ依リテ委任事項ヲ処理スルコトヲ得ルニ至ルマテ引続キ其事務ヲ処理スルコトヲ要ス
第六百六十三条 委任終了ノ事由ハ其委任者ニ出テタルト受任者ニ出テタルトヲ問ハス之ヲ相手方ニ通知シ又ハ相手方カ之ヲ知リタルトキニ非サレハ之ヲ以テ其相手方ニ対抗スルコトヲ得ス
第六百六十四条 本節ノ規定ハ契約又ハ慣習ニ別段ノ定アル場合ニハ之ヲ適用セス但第六百四十九条及ヒ第六百六十一条ノ規定ハ此限ニ在ラス