明治民法(明治29・31年)

甲第三十九号議案 (明治二十八年七月二日配付)

参考原資料

第三編 第二章 第九節 請負 第六百三十九条 請負ハ当事者ノ一方カ或仕事ヲ完成スルコトヲ約シ相手方カ其仕事ノ結果ニ対シテ報酬ヲ与フルコトヲ約スルニ因リテ其効力ヲ生ス 第六百四十条 報酬ハ工作物ノ引渡ト同時ニ之ヲ与フルコトヲ要ス但請負カ工作物ノ引渡ヲ目的トセサルトキハ第六百二十九条第一項ノ規定ヲ準用ス 第六百四十一条 工作物ニ瑕疵アルトキハ注文者ハ請負人ニ対シ相当ノ期限ヲ定メテ其瑕疵ノ修補ヲ請求スルコトヲ得但瑕疵カ重要ナラサル場合ニ於テ其修補カ過分ノ費用ヲ要スルトキハ此限ニ在ラス 注文者ハ瑕疵ノ修補ニ代ヘ又ハ其修補ト共ニ損害ノ賠償ヲ請求スルコトヲ得此場合ニ於テハ第五百三十一条ノ規定ヲ準用ス 第六百四十二条 工作物ニ瑕疵アリテ之カ為メニ契約ノ目的ヲ達スルコト能ハサルトキハ注文者ハ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得但土地ノ工作物ニ付テハ此限ニ在ラス 第六百四十三条 前二条ノ規定ハ工作物ノ瑕疵カ注文者ヨリ供シタル材料ノ性質又ハ注文者ノ与ヘタル指図ニ因リテ生シタルトキハ之ヲ適用セス但請負人カ其材料又ハ指図ノ不適当ナルコトヲ知リテ之ヲ告ケサリシトキハ此限ニ在ラス 第六百四十四条 前三条ニ定メタル瑕疵修補又ハ損害賠償ノ請求及ヒ契約ノ解除ハ工作物引渡ノ時ヨリ一年内ニ之ヲ為スコトヲ要ス 第六百四十五条 土地ノ工作物ノ請負人ハ其工作物又ハ地盤ノ瑕疵ニ付テハ引渡ノ後五年間其担保ノ責ニ任ス但此期間ハ石造、土造又ハ煉瓦造ノ工作物ニ付テハ之ヲ十年トス 工作物カ前項ノ瑕疵ニ因リテ滅失又ハ毀損シタルトキハ注文者ハ其滅失又ハ毀損ノ時ヨリ一年内ニ第六百四十一条ノ権利ヲ行使スルコトヲ要ス 第六百四十六条 請負人ハ第六百四十一条及ヒ第六百四十二条ニ定メタル担保ノ責任ヲ負ハサル旨ヲ特約シタルトキト雖モ其知リテ告ケサリシ事実ニ付キ其責ヲ免ルルコトヲ得ス 第六百四十七条 請負人カ仕事ヲ完成セサル間ハ注文者ハ何時ニテモ損害ヲ賠償シテ契約ヲ解除スルコトヲ得 第六百四十八条 注文者カ破産ノ宣告ヲ受ケタルトキハ請負人又ハ破産管財人ハ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得此場合ニ於テハ請負人ハ其既ニ為シタル仕事ノ報酬及ヒ其報酬中ニ包含セサル費用ニ付キ財団ノ配当ニ加入スルコトヲ得 前項ノ場合ニ於テ各当事者ハ相手方ニ対シテ解約ヨリ生シタル損害ノ賠償ヲ請求スルコトヲ得ス 第六百四十九条 本節ノ規定ハ契約又ハ慣習ニ別段ノ定アル場合ニハ之ヲ適用セス但第六百三十九条、第六百四十六条及ヒ第六百四十八条ノ規定ハ此限ニ在ラス 第六百四十四条及ヒ第六百四十五条ノ期間ハ普通ノ時効期間内ニ限リ契約ニ依リテ之ヲ延長スルコトヲ得