第三編
第二章
第八節 雇傭
第六百二十九条 雇傭ハ当事者ノ一方カ相手方ニ対シテ労務ニ服スルコトヲ約シ其相手方カ之ニ報酬ヲ与フルコトヲ約スルニ因リテ其効力ヲ生ス
第六百三十条 労務者ハ其約シタル労務ヲ終ハリタル後ニ非サレハ報酬ヲ請求スルコトヲ得ス
期間ニ依リテ定マリタル報酬ハ其期間ノ経過シタル後之ヲ請求スルコトヲ得
第六百三十一条 報酬カ期間ニ依リテ定マリタル場合ニ於テハ労務者ハ自己ノ責ニ帰スヘカラサル事由ニ因リ其期間ニ対シテ割合ニ僅少ナル時日間労務ニ服スルコト能ハサルモ之カ為メニ報酬ヲ受クル権利ヲ失ハス
第六百三十二条 使用者ハ労務者ノ承諾アルニ非サレハ其権利ヲ第三者ニ譲渡スコトヲ得ス
労務者ハ使用者ノ承諾アルニ非サレハ第三者ヲシテ自己ニ代ハリテ労務ニ服セシムルコトヲ得ス
労務者カ前項ノ規定ニ反シ第三者ヲシテ労務ニ服セシメタルトキハ使用者ハ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得
第六百三十三条 雇傭ノ期間カ五年ヲ超過シ又ハ当事者ノ一方若クハ第三者ノ終身間継続スヘキトキハ当事者ノ一方ハ五年ヲ経過シタル後何時ニテモ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得但三个月前ニ予告ヲ為スコトヲ要ス
第六百三十四条 当事者カ雇傭ノ期間ヲ定メサリシトキハ各当事者ハ何時ニテモ解約ノ申入ヲ為スコトヲ得此場合ニ於テハ雇傭ハ解約申入ノ後二週間ヲ経過シタルニ因リテ終了ス
報酬カ期間ニ依リテ定マリタル場合ニ於テハ解約ノ申入ハ次期以後ニ対シテ之ヲ為スコトヲ得但其申入ハ当期ノ前半ニ於テ之ヲ為スコトヲ要ス
第六百三十五条 当事者カ雇傭ノ期間ヲ定メタルトキト雖モ已ムコトヲ得サル事由アルトキハ各当事者ハ直チニ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得但其事由カ其者ノ過失ニ因リテ生シタルトキハ相手方ニ対シテ損害賠償ノ責ニ任ス
第六百三十六条 特別ノ信用ニ基ク学術上ノ労務ヲ以テ雇傭ノ目的ト為シタルトキハ各当事者ハ何時ニテモ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得但相手方ニ不利ナル特別ノ事情アル場合ニ於テ解除ヲ為シタルニ因リ損害ヲ生シタルトキハ相手方ハ其損害ノ賠償ヲ請求スルコトヲ得
第六百三十七条 雇傭ノ期間満了ノ後労務者カ引続キ其労務ニ服スル場合ニ於テ使用者カ之ヲ知リテ異議ヲ述ヘサルトキハ前雇傭ト同一ノ条件ヲ以テ更ニ雇傭ヲ為シタルモノト推定ス但各当事者ハ第六百三十四条ノ規定ニ依リ解約ノ申入ヲ為スコトヲ得
第六百三十八条 使用者カ破産ノ宣告ヲ受ケタルトキハ雇傭ニ期間ノ定アルトキト雖モ労務者又ハ破産管財人ハ第六百三十四条ノ規定ニ依リ解約ノ申入ヲ為スコトヲ得此場合ニ於テ各当事者ハ相手方ニ対シテ損害ノ賠償ヲ請求スルコトヲ得ス
第六百三十九条 第六百二十五条ノ規定ハ雇傭ニ之ヲ準用ス
第六百四十条 本節ノ規定ハ別段ノ定アル場合ニハ之ヲ適用セス但第六百二十九条、第六百三十三条、第六百三十五条及ヒ第六百三十八条ノ規定ハ此限ニ在ラス