第三編
第二章
第七節 賃貸借
第一款 総則
第六百四条 賃貸借ハ当事者ノ一方カ或物ヲ相手方ニ使用セシムルコトヲ約シ其相手方カ借賃ヲ支払フコトヲ約スルニ因リテ其効力ヲ生ス
第六百五条 管理行為ヲ為ス能力又ハ権限ヲ有スル者カ賃貸借ヲ為ス場合ニ於テハ其賃貸借ハ左ノ期間ヲ超ユルコトヲ得ス
一 山林ニ付テハ十年
二 其他ノ土地ニ付テハ五年
三 建物ニ付テハ三年
四 動産ニ付テハ六个月
第六百六条 前条ノ期間ハ之ヲ更新スルコトヲ得但其期間満了前土地ニ付テハ一年建物ニ付テハ三个月動産ニ付テハ一个月内ニ其更新ヲ為スコトヲ要ス
第六百七条 賃貸借ノ存続期間ハ十年ヲ超ユルコトヲ得ス若シ之ヨリ長キ期間ヲ以テ賃貸借ヲ為シタルトキハ其期間ハ之ヲ十年ニ短縮ス
前項ノ期間ハ之ヲ更新スルコトヲ得但更新ノ時ヨリ十年ヲ超ユルコトヲ得ス
第二款 賃貸借ノ効力
第六百八条 不動産ノ賃貸借ハ之ヲ登記シタルトキハ其不動産ニ付キ物権ヲ取得シタル者ニ対シテモ其効力ヲ生ス但敷金又ハ借賃ノ前払ヲ以テ之ニ対抗スルコトヲ得ス
第六百九条 賃貸人ハ賃貸物ノ使用ニ必要ナル修繕ヲ為ス義務ヲ負フ
賃貸人カ賃貸物ノ保存ニ必要ナル行為ヲ為サント欲スルトキハ賃借人ハ之ヲ拒ムコトヲ得ス
第六百十条 賃貸人カ賃借人ノ意ニ反シテ保存行為ヲ為サント欲スル場合ニ於テ之カ為メ賃借人カ賃借ヲ為シタル目的ヲ達スルコト能ハサルトキハ賃借人ハ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得
第六百十一条 賃借人カ賃借物ニ付キ賃貸人ノ負担ニ属スル必要費ヲ出タシタルトキハ賃貸人ニ対シテ直チニ其償還ヲ請求スルコトヲ得
賃借人カ有益費ヲ出タシタルトキハ賃貸借終了ノ時ニ於テ第百九十七条第二項ノ規定ニ従ヒ其償還ヲ請求スルコトヲ得但裁判所ハ賃貸人ノ請求ニ因リ相当ノ期限ヲ許与スルコトヲ得
第六百十二条 収益ヲ目的トスル土地ノ賃借人カ不可抗力ニ因リ借賃ヨリ少ナキ収益ヲ得タルトキハ其収益ノ額ニ至ルマテ借賃ノ減少ヲ請求スルコトヲ得但宅地ノ賃貸借ハ此限ニ在ラス
第六百十三条 前条ノ場合ニ於テ賃借人カ不可抗力ニ因リテ引続キ二年以上借賃ヨリ少ナキ収益ヲ得タルトキハ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得
第六百十四条 賃借物ノ一部カ賃借人ノ過失ニ因ラスシテ滅失シタルトキハ賃借人ハ其滅失シタル部分ノ割合ニ応シテ借賃ノ減少ヲ請求スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ残存セル部分ノミニテハ賃借人カ賃借ヲ為シタル目的ヲ達スルコト能ハサルトキハ賃借人ハ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得
第六百十五条 賃借人ハ賃貸人ノ承諾アルニ非サレハ其権利ヲ譲渡シ又ハ賃借物ヲ転貸スルコトヲ得ス但席貸ヲ為スハ此限ニ在ラス
賃借人カ前項ノ規定ニ反シ第三者ヲシテ物ノ使用ヲ為サシメタルトキハ賃貸人ハ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得
第六百十六条 賃借人カ適法ニ賃借物ヲ転貸シタルトキハ転借人ハ賃貸人ニ対シテ直接ニ義務ヲ負フ此場合ニ於テハ借賃ノ前払ヲ以テ賃貸人ニ対抗スルコトヲ得ス
前項ノ規定ハ賃貸人カ賃借人ニ対シテ其権利ヲ行使スルコトヲ妨ケス
第六百十七条 借賃ハ動産、建物及ヒ宅地ニ付テハ毎月末ニ其他ノ土地ニ付テハ毎年末ニ之ヲ払フコトヲ要ス但収穫季節アルモノニ付テハ其季節後遅滞ナク之ヲ払フコトヲ要ス
第六百十八条 建物ノ賃借人ハ二期ノ借賃ヲ担保スルニ足ルヘキ動産ヲ其建物ニ備附クルコトヲ要ス但二期ノ借賃ヲ前払シ又ハ之ニ相当スル担保ヲ供シタルトキハ此限ニ在ラス
第六百十九条 賃借物カ修繕ヲ要シ又ハ賃借物ニ付キ権利ヲ主張スル者アルトキハ賃借人ハ遅滞ナク之ヲ賃貸人ニ通知スルコトヲ要ス
第六百二十条 第五百九十六条第一項、第五百九十九条第一項及ヒ第六百条ノ規定ハ賃貸借ニ之ヲ準用ス
第六百二十一条 前十二条ノ規定ハ別段ノ定アル場合ニハ之ヲ適用セス
第三款 賃貸借ノ終了
第六百二十二条 当事者カ賃貸借ノ期間ヲ定メサリシトキハ各当事者ハ何時ニテモ解約ノ申入ヲ為スコトヲ得此場合ニ於テハ賃貸借ハ解約申入ノ後左ノ期間ヲ経過シタルニ因リテ終了ス
一 土地ニ付テハ一年
二 建物ニ付テハ一个月
三 貸席及ヒ動産ニ付テハ一日
収穫季節アル土地ノ賃貸借ニ付テハ其季節前ニ解約ノ申入ヲ為ス事ヲ得ス
第六百二十三条 当事者カ賃貸借ノ期間ヲ定メタルモ其一方又ハ各自カ其期間内ニ解約ヲ為ス権利ヲ留保シタルトキハ前条ノ規定ニ依ル
第六百二十四条 賃貸借ノ期間満了ノ後賃借人カ賃借物ノ使用ヲ継続スル場合ニ於テ賃貸人カ之ヲ知リテ異議ヲ述ヘサルトキハ前賃貸借ト同一ノ条件ヲ以テ更ニ賃貸借ヲ為シタルモノト推定ス但各当事者ハ第六百二十二条ノ規定ニ依リ解約ノ申入ヲ為スコトヲ得
前賃貸借ニ付キ当事者カ担保ヲ供シタルトキハ其担保ハ期間ノ満了ニ因リテ消滅ス
第六百二十五条 賃貸借ヲ解除シタル場合ニ於テハ其解除ハ単ニ当事者双方ノ将来ノ権利義務ヲ消滅セシム但当事者ノ一方ニ過失アルトキハ之ニ対スル損害賠償ノ請求ヲ妨ケス
第六百二十六条 前四条ノ規定ハ別段ノ定アル場合ニハ之ヲ適用セス
第六百二十七条 賃借人カ破産ノ宣告ヲ受ケタルトキハ賃貸借ニ期間ノ定アルトキト雖モ賃借人又ハ破産管財人ハ第六百二十二条ノ規定ニ依リ解約ノ申入ヲ為スコトヲ得此場合ニ於テ各当事者ハ相手方ニ対シテ損害ノ賠償ヲ請求スルコトヲ得ス
第六百二十八条 契約ニ反スル使用ニ因リテ生シタル損害賠償ノ請求及ヒ第六百十一条ノ規定ニ依ル費用償還ノ請求ハ賃貸人カ返還ヲ受ケタル時ヨリ一年内ニ之ヲ為スコトヲ要ス