明治民法(明治29・31年)

甲第三十三号議案 (明治二十八年四月二十七日配付)

参考原資料

第三編 第二章 第三節 売買 第一款 総則 第五百五十五条 売買ハ当事者ノ一方カ或権利ヲ相手方ニ移転スルコトヲ約シ其相手方カ代金ヲ支払フコトヲ約スルニ因リテ其効力ヲ生ス 第五百五十六条 売買ノ一方ノ予約ハ相手方カ売買ヲ完結スル意思ヲ表示シタル時ヨリ売買ノ効力ヲ生ス 前項ノ意思表示ニ付キ期間ヲ定メサリシトキハ予約者ハ相当ノ期間ヲ定メ其期間内ニ売買ヲ完結スルヤ否ヤヲ確答スヘキ旨ヲ相手方ニ催告スルコトヲ得若シ相手方カ其期間内ニ確答ヲ為ササルトキハ予約ハ其効力ヲ失フ 第五百五十七条 買主カ売主ニ手附ヲ交付シタルトキハ当事者ノ一方カ契約ノ履行ニ著手スルマテハ買主ハ其手附ヲ放棄シ売主ハ其倍額ヲ償還シテ契約ヲ解除スルコトヲ得 第五百四十三条第三項 ノ規定ハ前項ノ場合ニハ之ヲ適用セス 第五百五十八条 売買契約ノ取結ニ関スル費用ハ当事者双方平分シテ之ヲ負担ス 第五百五十九条 前二条ノ規定ハ契約又ハ慣習ニ別段ノ定アル場合ニハ之ヲ適用セス 第五百六十条 本節ノ規定ハ売買以外ノ有償契約ニ之ヲ準用ス但其契約ノ性質カ之ヲ許ササルトキハ此限ニ在ラス 第二款 売買ノ効力 第五百六十一条 他人ノ権利ヲ以テ売買ノ目的ト為シタルトキハ売主ハ其権利ヲ取得シテ之ヲ買主ニ移転スル義務ヲ負フ 第五百六十二条 買主カ契約ノ当時其買受ケタル権利ノ売主ニ属セサルコトヲ知リタル場合ニ於テ第五百三十九条ノ規定ニ従ヒ契約ヲ解除シタルトキハ其買主ハ売主ニ対シテ損害賠償ノ請求ヲ為スコトヲ得ス 第五百六十三条 売主カ契約ノ当時其売却シタル権利ノ自己ニ属セサルコトヲ知ラサリシ場合ニ於テ其権利ヲ取得シテ之ヲ買主ニ移転スルコト能ハサルトキハ其売主ハ直チニ損害ヲ賠償シテ其義務ヲ免カルルコトヲ得 前条ノ場合ニ於テハ売主ハ買主ニ対シ単ニ其売却シタル権利ヲ移転スルコト能ハサル旨ヲ通知シテ其義務ヲ免カルルコトヲ得 第五百六十四条 売買ノ目的タル権利ノ一部カ他人ニ属スルニ因リ売主カ之ヲ買主ニ移転スルコト能ハサル場合ニ於テ買主カ之ヲ知ラサリシトキハ其足ラサル部分ノ割合ニ応シテ代金ノ減少ヲ請求スルコトヲ得 前項ノ場合ニ於テ残存セル部分ノミナレハ買主之ヲ買受ケサルヘキトキハ買主ハ契約ヲ解除スルコトヲ得 代金ノ減少又ハ契約ノ解除ハ損害賠償ノ請求ヲ妨ケス 前三項ノ権利ハ買主カ事実ヲ知リタル時ヨリ一年内ニ之ヲ行使スルコトヲ要ス 第五百六十五条 前条ノ規定ハ物ノ数量ヲ指示シテ売買ヲ為シタル場合及ヒ物ノ一部カ契約ノ当時既ニ滅失シタル場合ニ之ヲ準用ス 第五百六十六条 売買ノ目的物カ地上権、永借権、地役権、留置権又ハ質権ノ目的タル場合ニ於テ買主カ之ヲ知ラサリシトキハ之カ為メニ契約ヲ為シタル目的ヲ達スルコト能ハサル場合ニ限リ買主ハ契約ヲ解除スルコトヲ得其他ノ場合ニ於テハ損害ノ賠償ノミヲ請求スルコトヲ得 前項ノ規定ハ売買ノ目的タル不動産ノ為メニ存セリト称セシ地役権カ存セサリシトキ及ヒ其不動産ニ付キ登記シタル賃貸借アリタル場合ニ之ヲ準用ス 前二項ノ場合ニ於テ契約ノ解除又ハ損害賠償ノ請求ハ買主カ事実ヲ知リタル時ヨリ一年内ニ之ヲ為スコトヲ要ス 第五百六十七条 売買ノ目的タル不動産ノ上ニ存シタル先取特権又ハ抵当権ノ行使ニ因リ買主カ其所有権ヲ失ヒタルトキハ其買主ハ契約ヲ解除スルコトヲ得 同一ノ場合ニ於テ買主カ出捐ヲ為シテ其所有権ヲ保存シタルトキハ売主ニ対シテ其出捐ノ償還ヲ請求スルコトヲ得 右孰レノ場合ニ於テモ買主カ損害ヲ受ケタルトキハ其賠償ヲ請求スルコトヲ得