明治民法(明治29・31年)

甲第三十号議案 (明治二十八年四月十日配付)

参考原資料

第三編 第二章 第一節 第二款 契約ノ効力 第五百三十一条 双務契約当事者ノ一方ハ相手方カ其債務ノ履行ヲ提供スルマテハ自己ノ債務ノ履行ヲ拒ムコトヲ得但相手方ノ債務カ弁済期ニ在ラサルトキハ此限ニ在ラス 第五百三十二条 特定物ニ関スル物権ノ移転ヲ目的トスル双務契約ニ於テ其物カ債務者ノ責ニ帰スヘカラサル事由ニ因リテ滅失又ハ毀損シタルトキハ其滅失又ハ毀損ハ債権者ノ負担ニ帰ス 不特定物ニ関スル契約ニ付テハ其物カ第三百九十九条第二項ノ規定ニ依リテ指定セラレタルトキヨリ前項ノ規定ヲ適用ス 第五百三十三条 前条ニ掲ケタル場合ノ外当事者双方ノ責ニ帰スヘカラサル事由ニ因リテ債務ヲ履行スルコト能ハサルニ至リタルトキハ債務者ハ反対給付ニ付キ権利ヲ有セス 債権者ノ責ニ帰スヘキ事由ニ因リテ履行ヲ為スコト能ハサルニ至リタルトキハ債務者ハ反対給付ヲ受クル権利ヲ失ハス但自己ノ債務ヲ免カレタルニ因リテ利益ヲ得タルトキハ之ヲ債権者ニ償還スルコトヲ要ス 第五百三十四条 契約ニ依リテ当事者ノ一方カ第三者ニ対シテ或給付ヲ為スヘキコトヲ約シタルトキハ其第三者ハ債務者ニ対シテ直接ニ其給付ヲ請求スル権利ヲ有ス 前項ノ場合ニ於テ第三者ノ権利ハ其第三者カ債務者ニ対シテ契約ノ利益ヲ享受スル意思ヲ表示シタル時ニ発生ス 第五百三十五条 前条ノ規定ニ依リテ第三者ノ権利カ発生シタル後ハ当事者ハ之ヲ変更又ハ廃棄スルコトヲ得ス 第五百三十六条 前二条ニ掲ケタル契約ニ基因スル抗弁ハ債務者之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得 第五百三十七条 本款ノ規定ハ別段ノ定アル場合ニハ之ヲ適用セス