第三編
第一章
第五節
第二款 相殺
第五百二条 二人互ニ同種ノ目的ヲ有スル債務ヲ負担スル場合ニ於テ其債務カ弁済期ニ在ルトキハ各債務者ハ其対当額ニ付キ相殺ニ因リテ其債務ヲ免ルルコトヲ得但債務ノ性質カ之ヲ許ササルトキ又ハ特別契約ヲ以テ之ヲ禁シタルトキハ此限ニ在ラス
前項ノ特別契約ハ之ヲ以テ善意ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス
第五百三条 相殺ハ当事者ノ一方ヨリ其相手方ニ対スル意思表示ニ依リテ之ヲ為ス但其意思表示ニハ条件又ハ期限ヲ附スルコトヲ得ス
前項ノ意思表示ハ各債務ニ適シタル始ニ遡リテ其効力ヲ生ス
第五百四条 相殺ハ双方ノ債務ノ履行地カ異ナルトキト雖モ之ヲ為スコトヲ得但相殺ヲ為ス当事者ハ其相手方ニ対シ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スルコトヲ要ス
第五百五条 時効ニ因リテ消滅シタル債権カ其消滅以前ニ相殺ニ適シタル場合ニ於テハ其債権者ハ相殺ヲ為スコトヲ得
第五百六条 債務カ不法行為ニ因リテ生シタルトキハ其債務者ハ相殺ニ因リテ之ヲ免ルルコトヲ得ス
第五百七条 債権カ差押ヲ禁シタルモノナルトキハ其債務者ハ相殺ニ因リテ債務ヲ免ルルコトヲ得ス
第五百八条 差押命令ヲ受ケタル第三債務者ハ其後ニ取得シタル債権ニ依リ相殺ヲ以テ差押債権者ニ対抗スルコトヲ得ス
第五百九条 相殺ニ適スル数箇ノ債務アル場合ニ於テ当事者ノ一方カ相殺ニ因リテ消滅スヘキ債務ヲ指定セスシテ相殺ノ意思表示ヲ為シタルトキハ第四百九十一条第二項及ヒ第四百九十二条ノ規定ヲ準用ス