明治民法(明治29・31年)

甲第二十三号議案 (明治二十八年二月十三日配付)

参考原資料

第三編 第一章 第五節 債権ノ消滅 第一款 弁済 第四百八十一条 債務ノ弁済ハ法律行為ニ別段ノ定アル場合ノ外第三者之ヲ為スコトヲ得但利害ノ関係ヲ有セサル第三者ハ債権者及ヒ債務者カ不同意ヲ表シタルトキハ弁済ヲ為スコトヲ得ス 第四百八十二条 債務者ノ意思ニ反シテ弁済ヲ為シタル第三者ハ其債務者ノ為メ利益ノ現存スル限度ニ非サレハ之ニ対シテ求償権ヲ有セス 第四百八十三条 弁済者カ他人ノ物ヲ引渡シタルトキハ更ニ有効ナル弁済ヲ為スニ非サレハ其物ヲ取戻スコトヲ得ス 第四百八十四条 譲渡ノ能力ナキ所有者カ弁済トシテ物ノ引渡ヲ為シタルトキハ其所有者ノミ其弁済ヲ取消スコトヲ得但其所有者ハ更ニ有効ナル弁済ヲ為スニ非サレハ其引渡シタル物ヲ取戻スコトヲ得ス 第四百八十五条 前二条ノ場合ニ於テ債権者カ弁済トシテ受ケタル物ヲ善意ニテ消費シタルトキハ弁済者ハ其償還ヲ請求スルコトヲ得ス 第四百八十六条 債権ノ準占有者ニ為シタル弁済ハ弁済者ノ善意ナルトキニ限リ其効力ヲ有ス 第四百八十七条 前条ノ場合ノ外弁済受領ノ権限ヲ有セサル者ニ為シタル弁済ハ債権者カ之ニ因リテ利益ヲ受ケタル限度ニ非サレハ其効力ヲ有セス 第四百八十八条 弁済受領ノ能力ヲ有セサル債権者ニ為シタル弁済ハ其債権者ノミ之ヲ取消スコトヲ得但債権者カ之ニ因リテ利益ヲ受ケタル部分ニ付テハ此限ニ在ラス 第四百八十六条ノ場合ニ於テ債権ノ嫡占有者カ弁済受領ノ能力ヲ有セサルトキ亦同シ 第四百八十九条 支払ノ差止ヲ受ケタル第三債務者カ自己ノ債権者ニ弁済ヲ為シタルトキハ差押債権者ハ其受ケタル損害ノ限度ニ於テ更ニ弁済ヲ為スヘキコトヲ第三債務者ニ請求スルコトヲ得但債務者ニ対スル第三債務者ノ求償権ヲ妨ケス 第四百九十条 債務者カ債権者ノ承諾ヲ以テ其負担シタル給付ニ代ヘ他ノ給付ヲ為シタルトキハ弁済ノ効力ヲ有ス 第四百九十一条 弁済者ハ弁済受領者ヨリ受領証書ノ交付ヲ請求スルコトヲ得 受領証書ノ費用ハ弁済受領者之ヲ負担ス但別段ノ定アル場合ハ此限ニ在ラス 第四百九十二条 受取証書ノ持参人ハ弁済受領ノ権限アルモノト看做ス但弁済者カ反対ノ事情ヲ知リタルトキ又ハ過失ニ因リテ之ヲ知ラサリシトキハ此限ニ在ラス 第四百九十三条 債権ノ証書アル場合ニ於テハ弁済者ハ全部ノ弁済ニ対シテ其証書ノ返還ヲ請求スルコトヲ得 第四百九十四条 弁済者カ一部分ノミノ弁済ヲ為シ又ハ証書中ニ他ノ権利ノ記載アルトキハ弁済者ハ其証書面ニ弁済ノ記入ヲ請求スルコトヲ得 第四百九十五条 債務者カ債権証書ノ返還ヲ受ケタルトキハ弁済ヲ為シタルモノト推定ス 債務者カ債権証書ヲ占有スルトキハ其返還ヲ受ケタルモノト推定ス 第四百九十六条 債権者カ債権証書ノ全文又ハ其要部ヲ故意ニ抹殺又ハ毀滅シタルトキハ弁済ヲ受ケタルモノト推定ス 右ノ抹殺又ハ毀滅ハ其当時証書カ債権者ノ占有ニ在リシトキハ其故意ニ出テタルモノト推定ス