第三編
第一章
第三節
第四款 保証債務
第四百四十八条 保証人ハ主タル債務者カ其債務ヲ履行セサル場合ニ於テ其履行ヲ為ス責ニ任ス
第四百四十九条 保証債務ハ主タル債務ニ関スル利息、違約金、損害賠償其他総テ其債務ニ従タルモノヲ包含ス但別段ノ定アルトキハ此限ニ在ラス
保証人ハ其保証債務ニ付テノミ違約金ヲ約諾シ又ハ損害賠償ノ額ヲ予定スルコトヲ得
第四百五十条 保証人ノ負担カ債務ノ目的又ハ体様ニ付キ主タル債務ヨリ重キトキハ之ヲ主タル債務ノ限度ニ減縮ス
第四百五十一条 無能力ニ因リテ取消スコトヲ得ヘキ債務ヲ保証シタル者カ保証契約ノ時ニ於テ其取消ノ原因ヲ知リタルトキハ主タル債務者ノ不履行又ハ其債務ノ取消ノ場合ニ付キ同一ノ目的ヲ有スル独立ノ債務ヲ負担シタルモノト推定ス但反対ノ証拠アルトキハ此限ニ在ラス
第四百五十二条 債務者カ保証人ヲ立ツヘキ義務ヲ負フ場合ニ於テハ其保証人ハ左ノ条件ヲ具備スル者タルコトヲ要ス
一 能力者タルコト
二 弁済ノ資力ヲ有スルコト
三 債務ノ履行地ヲ管轄スル控訴院ノ管轄内ニ住所ヲ有スルコト
保証人カ前項第二号又ハ第三号ノ条件ヲ缺クニ至リタルトキハ債務者ハ前項ノ条件ヲ具備スル者ヲ以テ之ニ代フルコトヲ要ス
前二項ノ規定ハ債権者カ保証人ヲ指定シタル場合ニハ之ヲ適用セス
第四百五十三条 債務者カ前条ノ条件ヲ具備スル保証人ヲ立ツルコト能ハサルトキハ相当ノ担保物ヲ供シテ之ニ代フルコトヲ得
第四百五十四条 債権者カ債務ノ履行ヲ保証人ニ請求シタルトキハ保証人ハ先ツ主タル債務者ニ催告ヲ為スヘキ旨ヲ請求スルコトヲ得
主タル債務者カ破産ノ宣告ヲ受ケ又ハ其行方カ知レサルトキハ保証人ハ前項ノ請求ヲ為スコトヲ得ス
第四百五十五条 債権者カ前条ノ規定ニ従ヒ主タル債務者ニ催告ヲ為シタル後ト雖モ若シ保証人カ主タル債務者ニ弁済ノ資力アリテ且其執行ノ容易ナルコトヲ証明スルトキハ債権者ハ先ツ主タル債務者ノ財産ニ付キ執行ヲ為スコトヲ要ス
第四百五十六条 保証人カ債権者ヨリ訴ヘラレタルトキハ主タル債務ノ基本ニ付キ答弁ヲ為ス前ニ前二条ノ請求ヲ為スコトヲ要ス
保証人カ主タル債務者ト連帯シテ債務ヲ負担シタルトキハ前二条ノ権利ヲ有セス
第四百五十七条 前三条ノ規定ニ従ヒ保証人ノ請求アリタルニ拘ハラス債権者カ催告又ハ執行ヲ為スコトヲ怠リ其後主タル債務者ヨリ全部ノ弁済ヲ得サルトキハ保証人ハ債権者カ直チニ催告又ハ執行ヲ為セハ弁済ヲ得ヘカリシ限度ニ於テ其義務ヲ免カル
第四百五十八条 数人ノ保証人アル場合ニ於テハ其保証人カ共同シテ債務ヲ負担セサルトキト雖モ第四百二十八条ノ規定ヲ適用ス
第四百五十九条 副保証人ハ正保証人カ債務ノ全部ノ履行ヲ為ササル場合ニ於テ其履行ヲ為ス責ニ任ス此場合ニ於テハ第四百五十四条乃至第四百五十七条ノ規定ヲ準用ス
第四百六十条 債権者ト主タル債務者トノ間ニアリタル確定判決及ヒ主タル債務者ニ対スル履行ノ請求其他時効ノ中断ハ保証人ニ対シテモ其効力ヲ生ス
第四百六十一条 主タル債務者ハ債権者ト保証人トノ間ニアリタル確定判決ヲ援用スルコトヲ得但其判決ノ牽連シタル部分ニ付キ其自己ニ利アルモノト不利ナルモノトヲ分ツコトヲ得ス
主タル債務者カ保証人ト連帯シテ債務ヲ負担スル場合ニ於テハ第四百三十五条乃至第四百四十一条ノ規定ヲ適用ス
第四百六十二条 保証人カ主タル債務者ノ委任ヲ受ケテ保証ヲ為シタル場合ニ於テ過失ナクシテ債権者ニ弁済スヘキ裁判言渡ヲ受ケ又ハ主タル債務者ニ代ハリテ弁済ヲ為シ其他自己ノ出捐ヲ以テ債務ヲ消滅セシムヘキ行為ヲ為シタルトキハ其保証人ハ主タル債務者ニ対シテ求償権ヲ有ス
前項ノ求償ハ出捐ノ限度ニ於ケル債務ノ元本及ヒ利息、費用、免責ノ日以後ニ於ケル其法定利息其他損害ノ賠償ヲ包含ス
第四百六十三条 保証人カ主タル債務者ノ委任ヲ受ケテ保証ヲ為シタルトキハ其保証人ハ左ノ場合ニ於テ主タル債務者ヨリ予メ賠償ヲ受クルコトヲ得
一 主タル債務者カ破産ノ宣告ヲ受ケ且債権者カ其財団ノ配当ニ加入セサルトキ
二 債務カ弁済期ニ在ルトキ但保証契約ノ後債権者カ主タル債務者ニ許与シタル期限ハ之ヲ以テ保証人ニ対抗スルコトヲ得ス
三 債務ノ弁済期カ不確定ニシテ且其最長期ヲモ確定スルコト能ハサル場合ニ於テ保証契約ノ後十年ヲ経過シタルトキ
第四百六十四条 前二条ノ規定ニ依リ主タル債務者カ保証人ニ対シテ賠償ヲ為ス場合ニ於テ債権者カ全部ノ弁済ヲ受ケサル間ハ主タル債務者ハ保証人ヨリ担保ヲ供セシメ又ハ之ニ対シテ自己ニ免責ヲ得セシムヘキ旨ヲ請求スルコトヲ得
右ノ場合ニ於テ主タル債務者ハ供託ヲ為シ、担保ヲ供シ又ハ保証人ニ免責ヲ得セシメテ其賠償ノ義務ヲ免カルルコトヲ得
第四百六十五条 主タル債務者ノ委任ヲ受ケスシテ保証ヲ為シタル者カ債務ヲ弁済シ其他自己ノ出捐ヲ以テ主タル債務者ニ其債務ヲ免カレタルトキハ主タル債務者ハ其当時自己カ利益ヲ受ケタル限度ニ於テ賠償ヲ為スコトヲ要ス
主タル債務者ノ意ニ反シテ保証ヲ為シタル者ハ主タル債務者ノ為メ求償ノ日ニ現存スル利益ノ限度ニ於テノミ求償権ヲ有ス但此場合ニ於テハ第四百四十五条第三項ノ規定ヲ準用ス
第四百六十六条 第四百四十五条ノ規定ハ保証人ニ之ヲ準用ス
保証人カ主タル債務者ノ委任ヲ受ケテ保証ヲ為シタル場合ニ於テ主タル債務者カ弁済其他ノ方法ニ依リ免責ヲ得タルコトヲ保証人ニ通知スルコトヲ怠リタルトキハ保証人ハ其善意ニテ為シタル弁済其他免責ノ為メニスル出捐ニ付キ求償権ヲ有ス
第四百六十七条 連帯又ハ不可分債務者ノ一人ノ為メニ保証ヲ為シタル者ハ他ノ債務者ニ対シテ其負担部分ノミニ付キ求償権ヲ有ス
第四百六十八条 数人ノ保証人アル場合ニ於テ其間ニ連帯アルカ主タル債務カ不可分ナルカ又ハ各保証人カ全額ヲ弁済スヘキ特約アル為メ一人ノ保証人カ全額其他自己ノ負担部分ヲ超ユル額ヲ弁済シタルトキハ第四百四十三条乃至第四百四十六条ノ規定ヲ準用ス
前項ノ場合ニ非スシテ一人ノ保証人カ全額其他自己ノ負担部分ヲ超ユル額ヲ弁済シタルトキハ第四百六十五条ノ規定ヲ準用ス
第四百六十九条 第四百六十一条ノ規定ハ保証人間ニ之ヲ準用ス
第四百七十条 正副保証人ハ相互ニ求償権ヲ有セス但別段ノ定アルトキハ此限ニ在ラス