明治民法(明治29・31年)

甲第十六号議案 (明治二十七年十月九日配付)

参考原資料

第二編 第七章 留置権 第二百九十五条 他人ノ物ヲ占有シ且其物ニ関シテ生シタル債権ヲ有スル者ハ其債権ノ弁済ヲ受クルマテ其物ヲ留置スルコトヲ得但其債権カ弁済期ニ在ラサルトキハ此限ニ在ラス 前項ノ規定ハ占有カ不法行為ニ因リテ始マリタル場合ニ之ヲ適用セス 第二百九十六条 留置権者ハ債権ノ全部ノ弁済ヲ受クルマテハ留置物ノ全部ヲ留置スルコトヲ得 第二百九十七条 留置権ハ留置物ノ譲渡、差押、仮差押又ハ仮処分ノ為メニ其効力ヲ失ハス 第二百九十八条 留置権者ハ留置物ヨリ生スル果実ヲ収取シ他ノ債権者ニ先チテ之ヲ其債権ノ弁済ニ充当スルコトヲ得 前項ノ果実ハ先ツ之ヲ債権ノ利息ニ充当シ猶ホ余分アルトキハ之ヲ元本ニ充当スルコトヲ要ス 第二百九十九条 留置権者ハ善良ナル管理者ノ注意ヲ以テ留置物ヲ占有スルコトヲ要ス若シ其注意ヲ怠リタルトキハ債務者ハ留置権ノ消滅ヲ請求スルコトヲ得 留置権者ハ債務者ノ承諾ナクシテ留置物ノ使用若クハ賃貸ヲ為シ又ハ之ヲ担保ニ供スルコトヲ得ス但其物ノ保存ニ必要ナル使用ヲ為スハ此限ニ在ラス 第三百条 留置権者ハ留置物ノ保存費用ノ償還ヲ其所有者ニ請求スルコトヲ得 第三百一条 留置権ノ行使ハ債権ノ消滅時効ヲ停止セス 第三百二条 債務者ハ相当ノ担保物ヲ供シテ留置権ノ消滅ヲ請求スルコトヲ得 第三百三条 留置権者ハ留置権ノ行使ヲ債務者ニ通知シテ弁済ノ催告ヲ為シタル後相当ノ期間内ニ弁済又ハ担保ヲ受ケサルトキハ質権ニ関スル規定ニ従ヒ留置物ノ競売ヲ請求シ其代金ヲ以テ弁済ニ充ツルコトヲ得 第三百四条 留置権ハ占有ノ喪失ニ因リテ消滅ス但第二百九十九条第二項ノ規定ニ依リ賃貸又ハ質入ヲ為シタル場合ハ此限ニ在ラス