第二編
第六章 地役権
第二百七十九条 土地ノ所有者ハ他ノ土地ノ便益ノ為メニ地役権ヲ設定シテ其所有地ノ使用ヲ制限スルコトヲ得但第三章第一節中ノ公ノ秩序ニ関スル規定ニ違反セサルコトヲ要ス
共有ノ性質ヲ有セサル入会権ハ土地ノ便益ノ為メニセサルモノト雖モ各地方ノ慣習ニ従フ外本章ノ規定ニ依ル
第二百八十条 地役権ハ要役地ノ所有権ノ従トシテ之ト共ニ移転シ又ハ要役地ノ上ニ存スル他ノ権利ノ目的タルモノトス但設定行為ニ反対ノ定アルトキハ此限ニ在ラス
地役権ハ要役地ヨリ分離シテ之ヲ譲渡シ又ハ他ノ権利ノ目的ト為スコトヲ得ス
第二百八十一条 土地ノ共有者ノ一人ハ其持分ニ付キ其土地ノ為メニ又ハ其土地ノ上ニ存スル地役権ヲ消滅セシムルコトヲ得ス
土地ノ分割又ハ其一部ノ譲渡ノ場合ニ於テハ地役権ハ其各部ノ為メニ又ハ其各部ノ上ニ存ス但地役権カ其性質ニ因リ土地ノ一部ノミニ関スルトキハ此限ニ在ラス
第二百八十二条 取得時効ハ継続且表現ノ地役権ニノミ之ヲ適用ス
第二百八十三条 共有者ノ一人カ時効ニ因リテ地役権ヲ取得シタルトキハ他ノ共有者モ亦之ヲ取得ス
共有者ニ対スル時効中断ハ地役権ヲ行使スル各共有者ニ対シテ之ヲ為スニ非サレハ其効ナシ
地役権ヲ行使スル共有者数人アル場合ニ於テ其一人ニ対シテ時効停止アルモ時効ハ各共有者ノ為メニ進行ス
第二百八十四条 設定行為ヲ以テ地役権ノ広狭又ハ其行使ノ方法ヲ明示セサル場合ニ於テ当事者ノ協議整ハサルトキハ裁判所ハ各当事者ノ請求ニ因リ之ヲ定ム
第二百八十五条 用水地役権ノ承役地ニ於テ水カ要役地ト承役地トノ需用ノ為メニ不足ナルトキハ其各地ノ需用ニ応シ先ツ之ヲ家用ニ供シ其残余ヲ他ノ用ニ供スルモノトス但設定行為ニ反対ノ定アルトキハ此限ニ在ラス
同一ノ承役地ニ付キ数個ノ用水地役権ヲ設定シタルトキハ後ノ地役権者ハ前ノ地役権者ノ水ノ使用ヲ妨クルコトヲ得ス
第二百八十六条 設定行為又ハ特別契約ニ因リ承役地ノ所有者カ其費用ヲ以テ地役権ノ行使ノ為メニ工作物ヲ設ケ又ハ其修繕ヲ為ス義務ヲ負担スルトキハ其義務ハ承役地ノ特定承継人モ亦之ヲ負担ス
第二百八十七条 承役地ノ所有者ハ何時ニテモ地役権ニ必要ナル土地ノ部分ノ所有権ヲ地役権者ニ委棄シテ前条ノ負担ヲ免カルルコトヲ得
第二百八十八条 承役地ノ所有者ハ地役権ノ行使ノ為メニ其土地ノ上ニ設ケタル工作物ヲ使用スルコトヲ得但地役権ノ行使ヲ妨ケサルコトヲ要ス
前項ノ場合ニ於テハ承役地ノ所有者ハ其利益ヲ受クル割合ニ応シテ工作物ノ設置及ヒ保存ノ費用ヲ分担スルコトヲ要ス
第二百八十九条 要役地及ヒ承役地カ同一人ノ所有ニ帰スルトキハ地役権ハ消滅ス
第二百九十条 第百六十三条ノ規定ニ依リ承役地ノ所有権ヲ取得シタル者カ其占有ノ始過失ナクシテ地役権アルコトヲ知ラサリシトキハ地役権ハ消滅ス
第二百九十一条 前条ノ消滅時効ハ地役権者カ其権利ヲ行使スルニ因リテ中断ス
継続且表現ノ地役権ニ付テハ占有者ニ其権利アルコトヲ通知スルニ非サレハ時効中断ノ効ヲ生セス
第二百九十二条 第百六十八条ニ規定セル消滅時効ノ期間ハ不継続地役権ニ付テハ最後ノ行使ノ時ヨリ之ヲ起算シ継続地役権ニ付テハ其行使ヲ妨クヘキ事実ノ生シタル時ヨリ之ヲ起算ス
第二百九十三条 要役地カ数人ノ共有ニ属スル場合ニ於テ其一人ノ為メニ時効ノ中断又ハ停止アルトキハ其中断又ハ停止ハ他ノ共有者ニ対シテモ其効力ヲ生ス
第二百九十四条 地役権者カ其権利ノ一部ヲ行使セサルトキハ其部分ノミ時効ニ因リテ消滅ス