明治民法(明治29・31年)

甲第七号議案 (明治二十七年四月六日配付)

参考原資料

第一編 第四章 第三節 無効及ヒ取消 第百二十一条 無効ノ行為ハ追認ニ因リテ其効ヲ生セス但当事者カ其無効ナルコトヲ知リテ追認ヲ為シタルトキハ新ナル行為ヲ為シタルモノト看做ス 第百二十二条 取消シ得ヘキ行為ハ無能力者若クハ瑕疵アル意思表示ヲ為シタル者、其代理人又ハ承継人ニ限リ之ヲ取消スコトヲ得、妻カ為シタル行為ハ夫モ亦之ヲ取消スコトヲ得 第百二十三条 取消シタル行為ハ初ヨリ無効ナリシモノト看做ス但無能力者ハ其行為ニ因リテ得タル利益仍ホ存スルトキニ限リ之ヲ償還スル義務ヲ負フ 第百二十四条 取消シ得ヘキ行為ハ第百二十二条ニ掲クル者ニ於テ之ヲ追認スルトキハ初ヨリ有効ナリシモノト看做ス但第三者ノ権利ヲ害スルコトヲ得ス 第百二十五条 追認ハ取消ノ原因タル情況ノ止ミタル後之ヲ為スニ非サレハ其効ナシ 禁治産者カ能力ヲ回復シタル後其行為ヲ了知シタルトキハ其了知シタル時ヨリ追認ヲ為スコトヲ得 第百二十六条 前条ニ定メタル時ヨリ後取消シ得ヘキ行為ニ付キ左ノ事実アルトキハ追認ヲ為シタルモノト看做ス但異議ヲ留メタル時ハ此限ニ在ラス 一 全部又ハ一部ノ任意ノ履行 二 更改 三 担保ノ供与 四 履行ノ請求 五 取消シ得ヘキ行為ニ由リテ取得シタル権利ノ全部又ハ一部ノ譲渡 六 強制執行 第百二十七条 取消権ハ追認ヲ為スコトヲ得ル日ヨリ五年ヲ経過スルトキハ時効ニ罹ル但此時効ハ相続人ニ対シテハ相続ノ日ヨリ其進行ヲ始メ又ハ之ヲ継続ス 取消シ得ヘキ行為ヲ為シタル日ヨリ普通ノ時効ニ必要ナル期間ヲ経過スルトキハ取消権ハ前項ノ規定ニ拘ハラス消滅ス