明治民法(明治29・31年)

(主)甲第六号議案 (明治二十七年三月二十三日配付)

参考原資料

第一編 第四章 第二節 代理 第百条 代理人カ其権限内ニ於テ本人ノ為メニスルコトヲ示シテ為シタル意思表示ハ直接ニ本人ニ対シテ其効力ヲ生ス 前項ノ規定ハ第三者カ代理人ニ対シタル意思表示ニ之ヲ準用ス 第百一条 代理人カ本人ノ為メニスルコトヲ示サスシテ為シタル意思表示ハ自己ノ為メニ之ヲ為シタルモノト看做ス 第百二条 代理人ハ能力者タルコトヲ要セス但代理人カ無能力者ナルトキハ其代理人ハ本人ニ対シテ無能力者ニ特別ナル責任ノミヲ負フ 第百三条 意思表示ノ効力カ意思ノ欠缺、詐欺、強迫又ハ或事情ヲ知リタルコト若クハ之ヲ知ラサル過失アリタルコトニ因リテ影響ヲ受クヘキ場合ニ於テ其事実ノ有無ハ代理人ニ付キ之ヲ定ム 特定ノ法律行為ヲ為スコトヲ委任セラレタル場合ニ於テ代理人カ本人ノ指名ニ従ヒ其行為ヲ為シタルトキハ本人ハ其自ラ知リタル事情ニ付キ代理人ノ不知ヲ主張スルコトヲ得ス其過失ニ因リテ知ラサリシ事情ニ付キ亦同シ 第百四条 代理ハ身上及ヒ財産上一切ノ行為ニ付キ之ヲ委任スルコトヲ得ス 第百五条 代理権ノ範囲ニ付キ別段ノ定ナキトキハ代理人ハ管理行為ノミヲ為ス権限ヲ有ス 財産ノ保存、改良又ハ利用ノ為メニスル行為ニシテ権利ヲ喪失セシムルニ至ラサルモノハ之ヲ管理行為トス但果実又ハ損敗シ易キ物ヲ有償ニ処分スルハ此限ニ在ラス 第百六条 代理人ハ左ノ場合ニ非サレハ復代人ヲ選任スルコトヲ得ス 一 法令ハ裁判所ノ命令ヲ以テ之ヲ許シタルトキ 二 本人ノ許諾ヲ得タルトキ 三 急迫ノ必要アルトキ 第百七条 前条ノ場合ニ於テ復代人ヲ選任シタルトキハ代理人ハ其復代人ノ代理行為ニ付キ本人ニ対シテ自ラ代理スルト同一ノ責ニ任ス 本人ノ指名ニ従ヒテ復代人ヲ選任シタルトキハ代理人ハ復代人ノ不適任又ハ不誠実ナルコトヲ知リテ之ヲ本人ニ通知スルコトヲ怠リ又ハ之ヲ解任スルコトヲ怠リタルニ非サレハ其責ニ任セス 第百八条 代理人カ第百六条ノ規定ニ反シ又ハ本人ノ指名ニ依ラスシテ復代人ヲ選任シタル場合ニ於テ本人カ復代人ニ対シテ直接ニ其権利ヲ行使シ又ハ義務ヲ履行シタルトキハ其選任ヲ追認シタルモノト看做ス 第百九条 復代人ハ其権限内ノ行為ニ付キ本人ヲ代表ス 第百十条 代理人ハ別段ノ定ナキトキハ本人ニ代ハリテ自己ト法律行為ヲ為スコトヲ得ス但其自己ノ名義ヲ以テスルト第三者ノ代理人タル名義ヲ以テスルトヲ問ハス 法律行為カ単ニ債務ノ履行ニ係ルトキハ前項ノ規定ヲ適用セス 第百十一条 或人カ第三者ニ対シテ他人ニ或事ヲ委任シタル旨ヲ表示シタルトキハ委任契約ナキ場合ト雖モ其他人カ委任ノ範囲内ニ於テ為シタル行為ニ付キ履行ノ責ニ任ス 第百十二条 代理人カ其権限外ノ行為ヲ為シタル場合ニ於テ第三者カ其権限アリト信スル正当ノ理由ヲ有スルトキモ亦前条ノ規定ヲ適用ス 第百十三条 代理権ハ左ノ事由ニ因リテ消滅ス 一 本人ノ死亡 二 代理人ノ死亡、禁治産又ハ破産 委任ニ因ル代理権ハ前項ニ掲ケタル事由ノ外第(ママ)条ニ掲クル事由ニ因リテ消滅ス 第百十四条 代理権ノ消滅ハ之ヲ以テ善意ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス但第三者カ過失ニ因リテ其事実ヲ知ラサリシトキハ此限ニ在ラス 第百十五条 代理権ヲ有セサル者カ他人ノ代理人トシテ為シタル契約ハ本人ノ追認ナキ限ハ之ニ対シテ其効力ヲ生セス 追認及ヒ其拒絶ハ相手方ニ対シテ之ヲ為スコトヲ要ス但相手方カ其事実ヲ知リタルトキハ此限ニ在ラス 第百十六条 前条ノ場合ニ於テ相手方ハ相当ノ期間ヲ定メ其期間内ニ追認ヲ為スヤ否ヤヲ確答スヘキ旨ヲ本人ニ催告スルコトヲ得若シ本人カ其期間内ニ追認ヲ為ササルトキハ之ヲ拒絶シタルモノト看做ス 第百十七条 代理権ヲ有セサル者ノ為シタル契約ハ本人ノ追認ナキ間ハ相手方ニ於テ之ヲ取消スコトヲ得但其契約ヲ為シタル当時ニ相手方カ代理権ナキコトヲ知リタルトキハ此限ニ在ラス 第百十八条 追認ハ反対ノ意思ナキトキハ契約ノ時ニ遡リテ其効力ヲ生ス但第三者ノ権利ヲ害スルコトヲ得ス 第百十九条 他人ノ代理人トシテ契約ヲ為シタル者カ其代理権ヲ証明スルコト能ハス且本人ノ追認ヲ得サリシトキハ相手方ニ対シテ其選択ニ従ヒ履行又ハ損害賠償ノ責ニ任ス 相手方カ代理権ナキコトヲ知リタルトキ若クハ過失ニ因リテ之ヲ知ラサリシトキ又ハ代理人カ其能力ヲ有セサリシトキハ前項ノ責任ヲ生セス 第百二十条 単独行為ニ付テハ其行為ノ当時ニ相手方カ代理人ト称スル者ノ代理権ヲ争ハス又ハ其者カ代理権ヲ有セスシテ之ヲ為スコトニ同意シタルトキニ限リ契約ニ関スル前数条ノ規定ヲ適用ス 代理権ヲ有セサル者ニ対シ其同意ヲ得テ単独行為ヲ為シタルトキ亦同シ