旧民法・法例(明治23年)

民法財産取得編 法律取調委員会上申案

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民法 財産取得編(続) 第十三章 相続 総則 第二百八十六条 相続ハ死亡又ハ譲産ニ因リテ発開ス 第二百八十七条 相続ノ発開ハ相続人ニ被相続人ノ財産ヲ包括ニテ当然移転セシム 第二百八十八条 相続発開ノ時ニ生存セサル者ハ相続人タルコトヲ得ス 又相続人カ相続ヲ保有スルニハ相当者タルコトヲ要ス 第二百八十九条 相続ヲ保有スルニ不相当トシテ其相続ヨリ除斥セラル丶者ハ左ノ如シ 第一 被相続人ヲ殺シ又ハ殺サントシタル為メ刑ニ処セラレタル者但過失ニ因ルモノハ此限ニ在ラス 第二 被相続人ヲ重罪ノ刑ニ該ル犯罪人ナリト誣告シテ其誣告ノ為メ刑ニ処セラレタル者 第三 被相続人ノ殺サレタルコトヲ知リテ告訴セス又ハ告発セサリシ成年者但成年者カ殺シタル人ハ自己ノ尊属親ナルコトヲ知リタルトキハ此限ニ在ラス 第二百九十条 不相当ト言渡サレタル者ハ初ヨリ相続セサル如ク相続発開ノ時ヨリ占有シタル元本及ヒ収取シ又ハ収取スルコトヲ怠リタル果実ヲ返還ス可シ 第二百九十一条 相続除斥ノ訴権ハ被相続人ノ明示ノ宥免ニ因リテ消滅ス 第二百九十二条 相続ニ二種アリ家督相続及ヒ遺産相続是ナリ 第一節 家督相続 第二百九十三条 家督相続トハ戸主ノ死亡又ハ譲産ニ因リテ発開スル相続ヲ謂フ 譲産トハ被相続人カ生存中其意思ニ因リ法律ノ規定シタル条件ニ従ヒテ推定家督相続人ノ為メニ家督相続ヲ発開セシムル行為ヲ謂フ 第一款 家督相続ノ通則 第二百九十四条 家督相続ヲ為スハ一家一人ニ限ル 何人ト雖モ二家以上ノ家督相続ヲ為スコトヲ得ス 第二百九十五条 婚姻又ハ養子縁組ニ因リ他家ニ入リテ其家ニ在ル者ハ実家其他ノ家ノ家督相続ヲ為スコトヲ得ス 第二百九十六条 一人ニシテ数家ノ家督相続人ニ指定セラレ又ハ選定セラレタル者ハ其中ノ一ヲ選択スルコトヲ得 一家ノ家督相続ノ受諾ハ明示ナルト黙示ナルトヲ問ハス其選択ヲ成立セシメ他家ノ家督相続ノ指定又ハ選定ヲ消滅セシム 第二百九十七条 一家ノ推定家督相続人ハ他家ノ家督相続人ニ指定セラレ又ハ選定セラレタルモ其指定又ハ選定ノ家督相続ヲ為スコトヲ得ス 第二百九十八条 系譜、世襲財産、祭具、墓地、商号及ヒ商標ハ家督相続ノ特権ヲ組成ス 第二百九十九条 家督相続人ハ姓氏、系統、貴号及ヒ一切ノ財産ヲ相続シテ戸主ト為ル 第二款 家督相続人ノ順位 第三百条 家督相続人ハ或ハ法律ニ於テ之ヲ規定シ或ハ被相続人ノ意思ヲ以テ之ヲ指定シ或ハ親族会ノ決議ヲ以テ之ヲ選定ス 第三百一条 法律ニ於テ家督相続人ト為ル可キ者ノ順位ヲ定ムル左ノ如シ 第一 被相続人ノ家族タル卑属親中親等ノ最モ近キ者 第二 同親等ノ卑属親中男子ト女子トアルトキハ男子 第三 男子数人アルトキハ其先ニ生マレタル者但正出子ト私出子トアルトキハ正出子 第四 女子ノミ数人アルトキハ其先ニ生マレタル者但正出子ト私出子トアルトキハ正出子 然レトモ右ノ規定ニ従ヒテ家督相続人タル可キ者カ被相続人ニ先タチテ死亡シ又ハ第三百三条ニ掲ケタル原因ニ由リテ廃除セラレタル場合ニ於テ其者ニ卑属親アルトキハ其卑属親ハ法定ノ順位ニ依リテ家督相続人ト為ル 第三百二条 被相続人ハ正当ノ原因アルニ非サレハ法定ノ推定家督相続人ヲ廃除スルコトヲ得ス 第三百三条 法定ノ推定家督相続人ヲ廃除スルコトヲ得ヘキ正当ノ原因ハ左ノ如シ 第一 失踪ノ宣言 第二 民事上禁治産及ヒ准禁治産 第三 聾、唖、盲其他家政ヲ執ルニ堪ヘサル不治ノ疾病 第四 祖父母、父母ニ対スル罪ノ処刑 第五 重罪ニ因レル処刑 第六 窃盗又ハ詐欺取財ノ罪ニ因レル重禁錮一年以上ノ処刑 第三百四条 推定家督相続人ノ廃除ハ遺言書ヲ以テ之ヲ為シ又ハ身分取扱官吏ニ申述シテ之ヲ為スコトヲ得 申述ニ基ク家督相続人ノ廃除ハ其原因止ミタル後被相続人之ヲ取消スコトヲ得 廃除ノ取消ハ身分取扱官吏ニ申述シテ之ヲ為ス 第三百五条 法定ノ家督相続人アルトキハ被相続人ハ家督相続人ヲ指定スルコトヲ得ス但此規定ニ違ヒタル指定ト雖モ被相続人ノ死亡ノ日ニ法定ノ家督相続人アラサルトキハ有効トス 第三百六条 家督相続人ノ指定ハ遺言書ヲ以テ之ヲ為ス可シ 第三百七条 法定又ハ指定ノ家督相続人アラサル場合ニ於テ其家ニ死亡者ノ父アルトキハ父、父アラサルトキハ母ハ左ノ順序ニ従ヒ家族中ヨリ家督相続人ヲ選定ス 第一 兄弟 第二 姉妹 第三 兄弟姉妹ノ卑属親中親等ノ最モ近キ男子若シ男子アラス又ハ放棄シタルトキハ女子 右何レノ場合ニ於テモ正出子ト私出子トアルトキハ選定ノ順序ハ第三百一条ノ規定ニ従フ 第三百八条 前条ノ場合ニ於テ父母アラサルトキハ家督相続人選定ノ権利ハ親族会ニ属ス但親族会ハ前条ニ定メタル選定ノ順序ヲ変更スルコトヲ得ス 第三百九条 第三百七条ノ規定ニ従ヒ選定ス可キ家督相続人アラサルトキ又ハ皆放棄シタルトキハ其家ニ在ル尊属親中親等ノ最モ近キ者任意ニ家督相続ヲ為スコトヲ得 第三百十条 選定又ハ任意ノ家督相続人アラサルトキハ配偶者家督相続ヲ為スコトヲ得 第三百十一条 親族会ハ前数条ニ記載シタル相続人アラサルトキ又ハ皆放棄シタルトキニアラサレハ他人ヲ選定スルコトヲ得ス但此場合ニ於テハ被相続人ヨリ成ル可ク年少者ニシテ且被相続人ト最モ親密ナル交際ヲ有セシ者ヲ選定ス可シ 第三款 譲産ニ因ル家督相続ノ特別規則 第三百十二条 譲産者カ譲産ノ時ニ於テ其財産ノ幾分ヲ卑属親ノ一人又ハ数人ニ分与シタルトキハ其分与ハ遺贈ノ適法ノ限度ニマテ効力ヲ有ス 第三百十三条 譲産ヲ為スニハ左ノ条件ノ具備スルコトヲ要ス 第一 譲産者ノ年齢満六十年以上ナルコト 第二 譲産ノ任意ニ出テタルコト 第三 成年ニシテ且実際家政ヲ執ルノ能力アル家督相続人カ単純ノ受諾ヲ為シタルコト 第四 配偶者ノ承諾シタルコト 第五 譲産ノ公示ヲ為シタルコト 第六 第三者ノ故障アラサルコト若シ故障アリタルトキハ其故障排斥ノ裁判ノ確定シタルコト 第七 裁判所ノ認可アリタルコト 第三百十四条 譲産者カ重病其他ノ原因ノ為メニ実際家政ヲ執ル能ハサルトキ又ハ分家ノ戸主カ本家ヲ承継スルノ必要アルトキハ本人ノ申立ニ因リテ年齢ノ条件ヲ宥恕スルコトヲ得 未成年及ヒ喪心ハ宥恕ノ原因ヲ成サス 第三百十五条 譲産ノ認可ハ譲産者ノ住所ノ区裁判所ニ之ヲ申請ス可シ 此申請書ニハ第三百十三条第一号乃至第四号ノ条件ニ適合シタル旨ヲ記載シ又年齢ノ宥恕ヲ申請スルトキハ其原因ヲモ記載ス可シ 第三百十六条 譲産認可ノ申請ヲ受ケタル裁判所ハ十五日内ニ事実ヲ審査シ第三百十三条第一号乃至第四号ノ条件ノ欠缺シタルニ非サレハ其申請ヲ却下スルコトヲ得ス此条件ノ具備シタリト認ムルトキハ譲産者ノ費用ヲ以テ公示ヲ為サシム可シ 第三百十七条 公示書ニハ左ノ諸件ヲ記載シ認可ヲ為ス可キ区裁判所及ヒ住所並ニ居所ノ市役所又ハ町村役場ノ門前ニ三十日間之ヲ掲示ス可シ 第一 譲産者ノ氏名、職業、住所及ヒ居所 第二 譲産者ノ年齢又年齢ノ宥恕ヲ申請シタルトキハ其原因 第三 家督相続人ノ親等、氏名、年齢、職業及ヒ住所 第三百十八条 譲産者ノ配偶者、親族及ヒ検事ハ左ノ原因ノ一ニ基キ譲産公示ノ初日ヨリ六十日内ニ故障ヲ申立ツルコトヲ得 第一 第三百十三条第一号乃至第三号ノ条件ニ違ヒタル事実 第二 譲産家督相続ヲ為ス者カ推定家督相続人ニ非サル事実 又譲産カ譲産者ノ任意ニ出テサリシ場合ニ於テハ譲産者モ亦故障ヲ申立ツルコトヲ得 第三百十九条 譲産カ第三百十三条第四号ノ条件ニ違ヒタル事実アルトキハ譲産者ノ配偶者ニ限リ故障ヲ申立ツルコトヲ得 又譲産者カ債権者ヲ詐害スルノ意思ヲ以テ譲産ヲ為サントスルトキハ債権者ハ故障ヲ申立ツルコトヲ得 前条ノ期間ハ本条ニモ亦之ヲ適用ス 第三百二十条 裁判所ハ公示ノ初日ヨリ六十日ヲ過クルニ非サレハ譲産ノ認可ヲ与フルコトヲ得ス 又此期間内ニ故障アリタルトキハ其故障排斥ノ裁判ノ確定後ニ非サレハ譲産ノ認可ヲ与フルコトヲ得ス 第三百二十一条 譲産ノ認可アリタルトキハ当事者ハ其旨ヲ身分取扱官吏ニ届出ツ可シ 第三百二十二条 譲産家督相続ハ認可前ノ利害関係人ニ対シテハ認可ノ日ヨリ死亡ニ因ル相続ト同一ノ効力ヲ生ス但譲産者ノ終身ヲ限度トスル権利及ヒ義務ヲ消滅セシメス 又認可後ノ利害関係人ニ対シテハ前条ノ手続ヲ為シタル後ニ非サレハ譲産家督相続ノ効力ヲ生セス 第三百二十三条 第三百二十一条ノ手続ヲ為スコトヲ遅滞シタル為メ第三者ニ損害ヲ被フラシメタルトキハ家督相続人ハ譲産者ト連帯シテ其責ニ任ス 第二節 遺産相続 第三百二十四条 遺産相続トハ家族ノ死亡ニ因リテ発開スル相続ヲ謂フ 家族ノ遺産ハ被相続人ト家ヲ同ウスル子之ヲ相続ス 子数人アルトキハ遺産ヲ平分ス 相続権ヲ有ス可キ者カ先ニ死亡シ又ハ他家ニ入リ其子カ被相続人ト家ヲ同ウスルトキハ其子ハ死亡者又ハ他家ニ入リタル者ニ代リテ遺産ヲ相続ス 第三百二十五条 被相続人ト家ヲ同ウスル卑属親アラス又ハ卑属親カ悉ク遺産相続ヲ放棄シタルトキハ被相続人ノ父之ヲ相続シ父アラス又ハ父カ放棄シタルトキハ母之ヲ相続シ母アラス又ハ母カ放棄シタルトキハ戸主之ヲ相続ス但父母ハ被相続人ト家ヲ同ウスルコトヲ要ス 第三百二十六条 夫家ニ在リテ死亡セシ婦ニ家ヲ同ウスル卑属親アラス又ハ卑属親カ放棄シタルトキハ其遺産ハ夫之ヲ相続シ夫アラス又ハ夫カ放棄シタルトキハ戸主之ヲ相続ス 第三百二十七条 相互ニ相続ス可キ数人カ死亡シテ其死亡ノ先後ヲ知ル可カラサルトキハ遺産相続ハ各自ノ相続人ノ為メニ発開ス 第三節 国ノ権利 第三百二十八条 相続人アラサル財産ハ当然国ニ属ス 国ハ常ニ限定受諾ノ利益ヲ以テ相続ス 第三百二十九条 国カ相続財産ヲ領収スル手続ハ特別法ヲ以テ之ヲ定ム 第三百三十条 国ニ属ス可キ相続財産ハ其領収ヲ為スニ至ルマテ相続人曠欠ノ財産ヲ管理スル如ク之ヲ管理ス 第四節 相続ノ受諾及ヒ放棄 第三百三十一条 相続人ハ相続ニ付キ単純若クハ限定ノ受諾ヲ為シ又ハ放棄ヲ為スコトヲ得但法定家督相続人ハ放棄ヲ為スコトヲ得ス又譲産家督相続人ハ限定ノ受諾ヲ為スコトヲ得ス 第三百三十二条 譲産家督相続ヲ除クノ外相続人ハ相続財産ヲ調査スル為メ相続発開ノ日ヨリ三个月ノ期間ヲ有ス但裁判所ハ情況ニ因リ更ニ三个月内ノ延期ヲ許スコトヲ得 受諾又ハ放棄ヲ決定スル為メ一个月ノ期間ヲ有ス此期間ハ調査期間満限ノ日又ハ其前ニ実際ノ調査ヲ終ヘタル日ヨリ之ヲ算ス 第三百三十三条 相続人ハ調査又ハ決定ノ期間内相続財産ニ関スル一切ノ訴訟手続ヲ停止セシムルコトヲ得 第三百三十四条 相続財産ニ関スル訴訟ニ要セシ費用ハ法律上ノ期間内ニ係ルモノト裁判所ノ許シタル延期内ニ係ルモノトヲ問ハス総テ相続財産ノ負担トス但相続人ノ所為又ハ過失ニ因リテ要セシ費用ハ此限ニ在ラス 第三百三十五条 相続財産中ニ損敗シ易ク又ハ保存スルニ著シキ費用ヲ要スル物品アルトキハ調査又ハ決定ノ期間内ト雖モ区裁判所ノ認可ヲ得テ其物品ヲ競売ニ付スルコトヲ得但日用ノ飲食品ハ裁判所ノ認可ヲ経スシテ之ヲ処分スルコトヲ得 第一款 単純ノ受諾 第三百三十六条 相続人カ被相続人ノ財産ノ働方及ヒ受方ニ関シ確定ニ其代表者ト為ルノ意思ヲ顕ハストキハ単純ノ受諾トス 第三百三十七条 単純ノ受諾ニハ明示ノモノ有リ黙示ノモノ有リ 相続人カ自己ノ責任ヲ限ラス相続スルノ意思ヲ公正証書又ハ私署証書ニテ表シタルトキハ明示ノ受諾トス 又相続人ノ所為ニ因リテ右ノ意思アリタルコトヲ推定スルニ足ルトキハ黙示ノ受諾トス 第三百三十八条 財産ノ管理行為殊ニ第三百三十五条ニ掲ケタル行為ニ付テハ黙示ノ受諾アリトセス但相続人カ自己ノ名ヲ以テ為シタルトキハ此限ニ在ラス 第三百三十九条 左ノ如キ場合ニ於テハ黙示ノ受諾アリトス 第一 相続ヲ組成スル財産ノ一箇又ハ数箇ニ付キ他人若クハ共同相続人ノ為メニ所有権ヲ譲渡シ又ハ其他ノ物権ヲ設定シタルトキ但財産編第百十九条以下ノ制限ニ従ヒタル賃借権ノ設定ハ此限ニ在ラス 第二 遺産相続ニ付テハ限定受諾又ハ放棄ヲ為サスシテ相続発開ノ日ヨリ満十个年ヲ過キタルトキ 家督相続ニ付テハ相続人カ第三百三十二条ノ期間内ニ限定受諾又ハ放棄ヲ為サ丶ルトキ 右ノ外尚ホ第三百四十五条第二号及ヒ第三号ノ場合ハ単純ノ受諾ヲ成ス 第三百四十条 受諾ハ明示ノモノト黙示ノモノトヲ問ハス左ノ原因ノ一アルニ非サレハ之ヲ銷除スルコトヲ得ス 第一 自己、配偶者又ハ直系ノ血族若クハ姻族ノ身体又ハ財産ニ強暴ヲ加ヘラレタルニ因リテ受諾シタルトキ 第二 受諾ヲ為サシムルニ金銭上ノ利益ヲ有スル者ノ行ヒタル詐欺ニ因リテ受諾シタルトキ 第三 無能力者カ方式ニ違ヒテ受諾シタルトキ 第四 受諾ノ時成立セルコトヲ知ラサル債務ノ為メ破産又ハ無資力ト為ルニ至ル可キトキ 此銷除訴権ハ財産編第五百四十四条以下ニ定メタル銷除訴権ノ期間及ヒ条件ニ従フ 第二款 限定ノ受諾 第三百四十一条 相続人カ相続財産ト特有財産トヲ混同セス相続ノ働方ノ限度マテニ非サレハ受方ノ弁償ノ責ニ任セサルトキハ限定ノ受諾トス 第三百四十二条 相続人ニシテ限定ノ受諾ヲ為スノ意思ヲ有スル者ハ第三百三十二条ノ期間内ニ正確ニ調査シタル財産ノ目録ヲ相続発開地ノ区裁判所ニ差出タシ其申述ヲ為シテ限定受諾ノ公告ヲ求ム可シ 裁判所ハ此申述ヲ受ケタル日ヨリ三日内ニ別段ニ備ヘタル帳簿ニ之ヲ摘録シ且相続財産ヨリ支出スル費用ヲ以テ限定ノ受諾ヲ公告ス可シ 第三百四十三条 公告書ニハ左ノ諸件ヲ記載シ限定受諾ノ申述ヲ受ケタル裁判所及ヒ相続発開地ノ市役所又ハ町村役場ノ門前ニ三十日間之ヲ掲示ス可シ 第一 被相続人ノ氏名、職業、住所及ヒ居所 第二 被相続人ノ死亡シタル年月日 第三 相続人ノ氏名、職業、住所及ヒ居所 第四 相続人ノ限定受諾 第三百四十四条 前条ノ公告ヲ為サ丶ル相続人ハ受諾ノ限定ナルコトヲ知ラサル債権者及ヒ受遺者ニ対シテ限定受諾ヲ利唱スルコトヲ得ス 第三百四十五条 左ノ場合ニ於テハ相続人ハ限定受諾ヲ為スノ権能ヲ失フ 第一 明示又ハ黙示ニテ単純ノ受諾ヲ為シタルトキ 第二 相続財産ヲ隠匿シ又ハ悪意ヲ以テ財産調査目録中ニ相続財産ノ幾分ヲ記載セサリシトキ 第三 遺産相続人カ第三百三十二条ノ期間ヲ過キタル後其分限ヲ決定ス可キ請求ヲ受ケテ其意思ヲ明言セサル為メ単純ノ受諾者タル確定裁判ヲ受ケタルトキ但此確定裁判ハ第三者ニ対シテ効力ヲ有ス 第三百四十六条 限定受諾者ハ其特有財産ニ於ケルト同一ノ注意ヲ以テ相続財産ヲ管理シ債権者及ヒ受遺者ニ其計算ヲ為ス可シ但此計算ハ債務及ヒ遺贈ノ弁済ノ為メ相続財産ヲ払尽シタル後一个月内ニ之ヲ完了スルコトヲ要ス 此計算ヲ遅延シタル為メ債権者及ヒ受遺者ニ及ホシタル損害ハ特有財産ヲ以テ之ヲ賠償ス可シ 第三百四十七条 動産ト不動産トヲ問ハス総テ相続財産ノ売却ヲ要スルトキハ区裁判所ノ許可ヲ得テ之ヲ競売ニ付ス可シ 第三百四十八条 限定受諾者ハ適法ニ売却シタル財産ノ各箇ニ付テ得タル代価ヲ混同セス其各箇ニ付テ優先権ヲ有スル債権者ニ順次ニ弁済ス可シ 第三百四十九条 金銭其他ノ動産ハ相続人之ヲ保有ス 右保有ニ関シ債権者其他ノ利害関係人ヨリ担保ヲ要求スルトキハ其金銭及ヒ其物ノ評価額ニ付キ相当ノ資力アル保証人ヲ立テ又ハ特有財産ヲ以テ十分ノ物上担保ヲ供ス可シ 若シ担保ヲ供スル能ハサルトキハ動産ハ之ヲ競売シ其代価ヲ金銭ト共ニ供託所ニ供託ス可シ 第三百五十条 不動産ハ担保ヲ要セスシテ相続人之ヲ保有スルコトヲ得 然レトモ其果実ニ付テハ之ヲ収取スルニ従ヒテ前条ノ手続ヲ為ス可シ 第三百五十一条 相続ノ負担スル債務又ハ遺贈ノ弁済ヲ差押ヘ又ハ其弁済ニ付キ異議ヲ述フル債権者又ハ受遺者アルトキハ限定受諾者ハ裁判ヲ以テ定メタル順次及ヒ方法ニ従フニ非サレハ其弁済ヲ為スコトヲ得ス 第三百五十二条 前条ノ差押又ハ異議アラサルトキハ債権者又ハ受遺者ノ要求ニ従ヒテ弁済ヲ為ス 弁済ノ為メニ相続財産ヲ払尽シタル後ト雖モ第三百四十六条ニ規定シタル計算ヲ完了セサル前ニ要求ヲ為ス債権者又ハ受遺者ハ左ノ区別ニ従ヒ既既ニ弁済ヲ得タル債権者及ヒ受遺者ニ対シテ求償権ヲ行フコトヲ得 第一 債権者ハ先ツ受遺者ニ対シ次ニ債権者ニ対スルコト 第二 受遺者ハ単ニ受遺者ニ対スルコト 第三百五十三条 相続人カ計算ノ完了ヲ遅延シタル場合ニ於テハ債権者中未タ弁済ヲ得サル者ヨリ既ニ弁済ヲ得タル受遺者及ヒ債権者ニ求償スルコトヲ得ヘキ額ヲ直チニ相続人ノ特有財産ニ付テ求償スルコトヲ得 第三百五十四条 相続財産ヲ払尽シ計算ヲ完了シタル後ニ要求ヲ為ス債権者ハ単ニ弁済ヲ得タル受遺者ニ対スルニ非サレハ求償権ヲ行フコトヲ得ス 第三百五十五条 前三条ノ求償権ハ三个年間之ヲ行フコトヲ得但此期間ハ計算ノ完了前ニ係ルトキハ初メ相続人ニ要求シタル日又完了後ニ係ルトキハ其完了ノ日ヨリ之ヲ算ス 第三款 放棄 第三百五十六条 相続ノ放棄ハ之ヲ推定セス 相続ヲ放棄セントスル相続人ハ相続発開地ノ区裁判所ニ其旨ヲ申述シ裁判所ハ別段ニ備ヘタル帳簿ニ之ヲ記載ス可シ 第三百五十七条 放棄シタル相続ハ他ニ受諾シタル相続人アラサル間ハ放棄者更ニ之ヲ受諾スルコトヲ得然レトモ此受諾ハ第三百三十九条第二号ノ期間内ニ非サレハ之ヲ為スコトヲ得ス但相続財産ニ付キ第三者ノ有効ニ得タル権利ヲ害スルコト無シ 第三百五十八条 放棄シタル相続ヲ他ニ受諾シタル相続人アリト雖モ左ノ場合ニ於テハ其放棄ヲ銷除スルコトヲ得 第一 放棄者カ自己、配偶者若クハ直系ノ血族及ヒ姻族ノ身体又ハ財産ニ強暴ヲ加ヘラレタルニ因リテ放棄シタルトキ 第二 放棄セシムルニ金銭上ノ利益ヲ有スル者ノ行ヒタル詐欺ニ因リテ放棄シタルトキ 第三 無能力者カ方式ニ違ヒテ放棄シタルトキ 此銷除訴権ハ財産編第五百四十四条以下ニ規定シタル期間及ヒ条件ニ従フ 第三百五十九条 何レノ場合ニ於テモ債権者ヲ詐害スル意思ニ出テタル放棄ハ財産編第三百四十一条以下ニ定メタル区別及ヒ期間ニ従ヒ債権者自己ノ利益ノ為メ之ヲ廃罷スルコトヲ得 第三百六十条 未タ発開セサル相続ハ之ヲ放棄スルコトヲ得ス 適法ニ受諾シ又ハ受諾者ト推定セラレタル者ハ放棄ヲ為スコトヲ得ス 第三百六十一条 相続ニ包含スル物ヲ私取シ又ハ隠匿シタル相続人ハ其相続ヲ放棄スルノ権能ヲ失ヒ且其私取シ又ハ隠匿シタル物ノ分割ニ加ハルコトヲ得ス 第三百六十二条 放棄ヲ為シタル相続人ハ曽テ相続セサリシ者ト看做ス 第四款 相続人ノ曠欠セル相続財産ノ処分 第三百六十三条 相続ノ発開シテ相続人ノ現出セス相続人ノ有無分明ナラス又ハ分明ナル相続人皆放棄シタルトキハ其相続ハ相続人ノ曠欠セルモノト看做ス 第三百六十四条 相続発開地ノ区裁判所ハ利害関係人又ハ検事ノ請求ニ因リテ相続財産ノ管理人ヲ命ス可シ 第三百六十五条 管理人ハ利害関係人ヲ召喚シテ相続財産ヲ調査シ公証人ヲシテ其目録ヲ作リ財産ノ形状ヲ検証セシム可シ 管理人ハ此手続ヲ終ヘタル後相続ニ属スル権利ヲ行使シ之ヲ訟求シ又其相続ニ対スル訟求ニ答弁ス可シ 金銭ハ相続財産中ニ存スルモノト其売却ヨリ得タルモノトヲ問ハス供託所ニ之ヲ供託ス可シ 相続ノ負担スル債務ハ区裁判所ノ許可ヲ得ルニ非サレハ之ヲ弁済スルコトヲ得ス 第三百六十六条 限定受諾者ノ義務及ヒ責任ニ関シ第三百四十六条以下ニ定メタル規則ハ管理人ニ之ヲ適用ス但管理人ハ其管理ノ為メ担保ヲ供スルノ義務ヲ負ハス 第三百六十七条 管理人ハ計算ヲ完了シテ尚ホ相続財産ノ存スルニ於テハ区裁判所ノ許可ヲ得テ之ヲ競売ニ付シ得タル金額ヲ供託所ニ供託ス可シ 管理人ハ其領収証ヲ区裁判所ニ差出タシ区裁判所ハ之ヲ簿冊ニ登録シタル上保存ス可シ 第三百六十八条 相続人現出スルトキハ其相続人ハ区裁判所ヨリ供託所ノ領収証及ヒ相続人タル身分ノ証明書ヲ得テ之ヲ供託所ニ提出シ供託金額ヲ領収ス可シ 第三百六十九条 相続人アラサルコト確実ニ至リタルトキハ相続人現出セスシテ被相続人ノ死亡ヨリ五十个年ヲ経タルトキハ国ハ特別法ニ従ヒ供託金額ヲ領収ス可シ 第五節 相続財産ノ分割 第三百七十条 被相続人カ包括権原ノ遺贈ヲ為シタルニ因リ譲産者カ第三百十二条ノ規定ニ従ヒテ其卑属親ニ財産ヲ分与シタルニ因リ又ハ遺産相続人数人アルニ因リ相続財産ノ分割ヲ要スルトキハ下ノ規定ニ従フ 第一款 分割ノ訴権及ヒ方式 第三百七十一条 共同分割者ノ各自ハ相続財産ノ分割ヲ請求スルコトヲ得但財産編第三十九条ノ規定ニ従ヒテ分割セサルコトヲ約シタルトキハ此限ニ在ラス 第三百七十二条 分割ハ常ニ明示ニテ之ヲ為スコトヲ要ス 共同分割者ノ各自カ相続財産ヲ区別シテ収益スル事実ハ分割ヲ推定セス 第三百七十三条 分割ノ訴権ハ永存ノモノトス然レトモ占有ニ基キテ取得時効ヲ利用スル者ニ対抗スルコトヲ得ス 第三百七十四条 婦ハ夫又ハ裁判所ノ許可ヲ得テ相続財産ノ分割ヲ請求スルコトヲ得 未成年者、禁治産者、瘋癲者及ヒ失踪者ノ分割訴権ニ付テハ人事編ノ規定ニ従フ 第三百七十五条 相続財産ノ分割ハ共同分割者ノ合意ヲ以テ自由ニ之ヲ為スコトヲ得 然レトモ左ノ場合ニ於テハ裁判ヲ以テスルニ非サレハ其分割ヲ為スコトヲ得ス 第一 共同分割者中ニ未成年者、禁治産者又ハ瘋癲者アリテ其後見人又ハ仮管理人アラサルトキ 第二 共同分割者中ニ不在者アリテ有効ニ分割ヲ承諾スルノ権限ヲ有スル合意上ノ代理人アラサルトキ 第三 共同分割者中ニ合意上ノ分割ヲ承諾セサル者アルトキ 第三百七十六条 裁判上ノ分割ヲ要スルトキハ相続発開地ノ区裁判所ハ相続人、債権者又ハ検事ノ請求ニ因リ封印ヲ為シ及ヒ目録ヲ作ラシム可シ 第三百七十七条 裁判上ノ分割ヲ要セサルトキト雖モ債権者ハ区裁判所ノ許可ヲ得テ封印及ヒ目録調製ヲ請求スルコトヲ得但執行力アル証書ヲ有スルトキハ此許可ヲ要セス 封印ノ除去ニ付テハ総テノ債権者異議ヲ述フルコトヲ得 第三百七十八条 共同分割者ノ各自ハ相続財産ノ現物ニテ其部分ノ引渡ヲ請求スルコトヲ得但債権者其払渡ヲ差押ヘタルトキ又ハ共同分割者ノ多数ヲ以テ相続ノ負担スル債務及ヒ費用ヲ予メ弁済スル為メ売却ヲ必要ト決シタルトキハ此限ニ在ラス 第三百七十九条 売却スル物及ヒ其売却ノ方法ハ共同分割者総体ノ一致ヲ以テ之ヲ定ム可シ但債権者ノ異議アルトキ共同分割者中ニ無能力者又ハ不在者アルトキ又ハ総体ノ一致セサルトキハ裁判所ハ売却物ヲ定メ且之ヲ競売ニ付ス 第三百八十条 不動産ハ現物ニテ分割スルニ便ナラサルトキ又ハ動産売却ノ代価ヲ以テ相続ノ債務及ヒ費用ヲ完済スルニ足ラサルトキニ非サレハ裁判上其競売ヲ命スルコトヲ得ス 第三百八十一条 共同分割者ニ分割スル部分ヲ現物ニテ組成シタル場合ニ於テ適法ノ分量ニ過不足ヲ生スルトキハ過分ヲ受クル者ヨリ不足分ヲ受クル者ニ金銭其他ノ物ヲ以テ補足額ヲ弁済ス可シ 第三百八十二条 共同分割者ノ合意ヲ以テ分割ヲ為スコトヲ得ヘキ場合ニ於テハ其各部分ハ共同分割者総体ノ協議ヲ以テ之ヲ組成ス可シ 若シ議協ハサルトキ又ハ裁判上ノ分割ヲ要スルトキハ裁判所ノ任命シタル鑑定人ヲシテ分割部分ヲ組成セシム可シ 第三百八十三条 鑑定人ノ組成シタル部分ハ裁判所ノ職権ヲ以テ之ヲ変更スルコトヲ得 又共同分割者ハ鑑定人ノ組成シタルモノト裁判所ノ変更シタルモノトヲ問ハス其通知ヲ受ケタル日ヨリ五日内ニ分割部分ニ付キ異議ヲ申立ツルコトヲ得 異議ノ決定ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得 第三百八十四条 分割部分ノ適法ニ確定シタルトキハ抽籤ヲ以テ各共同分割者ノ受クル部分ヲ定ム 第三百八十五条 前数条ノ規定ニ適合シタル分割ハ確定ノモノトス 未成年者、禁治産者、瘋癲者又ハ不在者ノ為メ定メタル規則ニ違ヘル分割ハ其者ノ利益ニ於テノミ仮定ノモノトス 第三百八十六条 分割ノ際利益ノ相反スル無能力者又ハ不在者ノ数人アルトキハ其各自ノ為メ臨時保佐人又ハ管理人ヲ指定ス可シ 第三百八十七条 分割ノ結了シタルトキハ各共同分割者ハ其領収シタル物ノ証書ヲ保有ス 共同分割者ノ総体又ハ数人ニ分割シタル一箇ノ物ノ証書ハ其最大ノ部分ヲ領収シタル者之ヲ保有ス最大ノ部分ヲ領収シタル者ナキトキハ共同分割者ノ協議ヲ以テ其保有者ヲ定ム若シ議協ハサルトキハ裁判所之ヲ指定ス 何レノ場合ニ於テモ証書ノ保有者ハ他ノ共同分割者ノ求メニ応シテ之ヲ便用セシム可シ 第二款 債務ノ弁済 第三百八十八条 共同分割者ハ各自ニ受クル部分ノ割合ヲ以テ相互間ニ相続ノ債務ヲ分担ス 第三百八十九条 共同分割者ノ一人カ不可分義務ノ為メ又ハ先取特権若クハ抵当権ニ服シタル財産ノ所持者タルカ為メ自己ノ負担スル部分外ノ債務ヲ弁済シタルトキハ他ノ共同分割者ノ各自ニ対シテ其超過額ヲ求償スルコトヲ得 第三百九十条 前条ノ場合ニ於テ共同分割者中ニ無資力者アルトキハ其無資力者ノ負担スル部分ハ他ノ共同分割者応分ニ之ヲ担当ス 第三百九十一条 相続財産中ノ不動産ヲ以テ担保シタル相続ノ債務ニシテ直チニ弁済スルコトヲ得ヘキモノ有ルトキハ各共同分割者ハ他ノ共同分割者ニ対シ分割前ニ其債務ヲ弁済シテ担保ヲ解カント要求スルコトヲ得 第三百九十二条 担保ヲ解カスシテ不動産ヲ包含スル相続財産ヲ分割スルトキハ其不動産ヲ評価セシメ債務額ヲ扣除シテ配当部分ヲ定ム可シ但不動産ヲ包含スル配当部分ヲ受クル共同分割者ハ其債務ノ弁済ニ付キ他ノ共同分割者ニ対シテ担保ノ責ニ任ス 第三款 分割ノ効力及ヒ担保 第三百九十三条 共同分割者ハ相続財産ノ分割ニ因リ又ハ其不分物競売ノ競落ニ因リテ得タル物ニ付テハ相続発開ノ時ヨリ其所有権ヲ相続シタルモノト看做シ他ノ共同分割者ニ帰シタル物ニ付テハ曽テ何等ノ権利ヲモ有セサリシモノト看做ス 第三百九十四条 共同分割者ハ分割前ノ原因ニ基ク分割物ノ妨碍及ヒ追奪ニ付キ互ニ担保ノ責ニ任ス但別段ノ合意ヲ以テ担保ヲ免除シタルトキハ此限ニ在ラス 第三百九十五条 妨碍又ハ追奪ノ為メニ生シタル損害ハ共同分割者ノ間ニ被担保者ヲ算入シテ各自応分ニ之ヲ担当ス 共同分割者中ニ無資力者アルトキハ其負担額ハ他ノ共同分割者之ヲ分担ス 第三百九十六条 債権ニ付テハ分割ノ当時ニ於ケル債務者ノ資力ノ限度マテニ非サレハ共同分割者担保ノ責ニ任セス 第三百九十七条 担保ノ義務ハ普通時効ニ因リテ消滅ス 分割物ノ妨碍及ヒ追奪ノ担保ニ係ル時効ノ期間ハ其妨碍又ハ追奪ヲ受ケタル時ヨリ之ヲ算ス 又債務者ノ資力ノ担保ニ係ル時効ノ期間ハ分割ノ時ヨリ之ヲ算ス 第四款 分割ノ銷除及ヒ補足 第三百九十八条 分割ハ財産編第三百四条以下ニ定メタル区別ニ従ヒ不成立又ハ無効タルモノ丶外尚ホ共同分割者ノ一人カ其領収シタル部分ニ付キ四分一以上ノ欠損ヲ被フリタルトキハ其欠損ノ為メ之ヲ銷除スルコトヲ得 第三百九十九条 詐欺ハ分割銷除ノ原因ヲ成サス但承諾ヲ阻却シ若クハ承諾ノ瑕疵ト為ル錯誤又ハ四分一以上ノ欠損ヲ致シタルトキハ此限ニ在ラス 詐欺カ分割銷除ノ原因ヲ成サ丶ル場合ト雖モ被欺者ハ詐欺者ニ対シ自己ノ領収ス可キ部分ニ達スルマテノ補足額ヲ請求スルコトヲ得 第四百条 欠損ノ査定ハ分割ノ時ニ於ケル物ノ価格ニ従ヒテ之ヲ為ス可シ 第四百一条 錯誤、強暴、欠損及ヒ詐欺ニ基キテ分割ヲ銷除シ又ハ補足額ヲ請求スルノ訴権ハ財産編第五百四十四条以下ニ定メタル時効及ヒ同編第五百五十四条以下ニ掲ケタル認諾ニ因リテ消滅ス 第四百二条 錯誤又ハ強暴ニ基ク分割銷除ノ訴権ヲ有スル者カ分割ニ因リテ領収シタル財産ニ付キ其錯誤ノ覚知後又ハ強暴ノ止息後所有者ニ非サレハ為スコトヲ得サル所為ヲ任意ニ為シタルトキハ其分割ヲ認諾シタルモノト看做ス 欠損ヲ被フリタル事実ヲ知リテ右ノ所為ヲ為シタルトキモ亦同シ 第六節 財産分別ノ訴権 第四百三条 相続財産ノ債権者及ヒ受遺者ハ相続財産ト相続人ノ財産トノ分別ヲ請求スルコトヲ得 相続人ノ債権者モ亦相続人ノ財産ト相続財産トノ分別ヲ請求スルコトヲ得 第四百四条 債権者ハ定量物ニシテ事実上混同シ其分量額ヲ証スルコトヲ得サルモノニ付テハ財産分別ヲ請求スルコトヲ得ス 其他ノ動産ニ付テハ相続発開ノ時ヨリ一个年ヲ過キタルトキ亦同シ 第四百五条 不動産ニ付テハ相続発開ノ時ヨリ三个年ノ間財産分別ヲ請求スルコトヲ得 如何ナル場合ニ於テモ相続財産ト相続人ノ財産トノ混同ヲ承諾シタル債権者及ヒ受遺者ハ財産分別ヲ請求スルコトヲ得ス 第四百六条 債権者又ハ受遺者カ混同ノ承諾ヲ明示セスト雖モ異議ナク又ハ異議ヲ留メスシテ相続人ヨリ債務又ハ遺贈ノ全部若クハ一分ノ弁済ヲ得タルトキハ其混同ヲ承諾シタルモノト看做ス 第四百七条 財産分別ヲ請求シタル者カ相続財産ノ債権者又ハ受遺者ナルトキハ其請求者ハ相続財産ニ付キ相続人ノ債権者ニ対スル先取特権ヲ有ス 又財産分別ヲ請求シタル者カ相続人ノ債権者ナルトキハ相続人ノ財産ニ付テモ亦同シ 然レトモ財産分別ハ相続財産ノ債権者間及ヒ受遺者間又ハ相続人ノ債権者間ノ相互ノ関係ヲ変更セス 第四百八条 財産分別ニ基ク動産ノ先取特権ハ善意ヲ以テ其動産ヲ占有スル第三者ニ対抗スルコトヲ得ス 第四百九条 相続財産ノ債権者又ハ受遺者カ財産分別ニ基ク不動産ノ先取特権ヲ相続発開ノ時ヨリ六个月内ニ登記シタルトキハ其期間内ニ相続人ノ権利ニ基キテ為シタル第三者ノ登記アリト雖モ之ヲ以テ右ノ債権者又ハ受遺者ニ対抗スルコトヲ得ス 此期間後ニ登記シタル財産分別ノ先取特権ハ単純ナル法律上ノ抵当ニ変性ス 第四百十条 右ノ先取特権ハ相続人ノ所為ニ因リ又ハ其権利ニ基キ且其費用ヲ以テ不動産ニ加ヘタル増加及ヒ改良ニ及ハス 第四百十一条 相続人ノ債権者カ財産分別ニ基ク先取特権ヲ相続発開ノ時ヨリ六个月内ニ登記シタルトキハ其先取特権ハ相続財産ノ債権者又ハ受遺者ニ対シテ相続発開ノ時ニ遡ル効力ヲ有ス 此期間後ニ登記シタル先取特権ハ相続財産ノ債権者又ハ受遺者ニ対シテ単純ナル法律上ノ抵当ニ変性ス 然レトモ本条ノ先取特権ハ相続人ノ権利ニ基ク第三者ニ対抗スルコトヲ得ス 第十四章 贈与及ヒ遺贈 総則 第四百十二条 贈与トハ当事者ノ一方カ無償ニテ他ノ一方ニ自己ノ財産ノ全部若クハ一分又ハ自己ノ動産若クハ不動産ノ全部若クハ一分又ハ特定ノ動産若クハ不動産ヲ移転スル要式ノ合意ヲ謂フ 又一方カ他ノ一方ニ属スル物ノ上ニ有スル物権ノ放棄又ハ他ノ一方ニ対シテ有スル人権ノ免除モ亦贈与ヲ組成スルコト有リ 第四百十三条 贈与ハ単純、有期又ハ条件附ナルコト有リ然レトモ其条件ハ停止ナルト解除ナルトヲ問ハス贈与者ノ純然タル随意ノモノナルトキハ其贈与ハ無効トス 贈与ハ法律ノ認メタル原因アルニ非サレハ之ヲ廃罷スルコトヲ得ス 第四百十四条 贈与者ハ贈与物ノ妨碍及ヒ追奪ヲ担保セス但其贈与以後ニ係ル贈与者ノ所為ヨリ生シタル妨碍及ヒ追奪ハ此限ニ在ラス 第四百十五条 遺贈トハ当事者ノ一方カ他ノ一方ニ無償ニテ自己ノ財産ノ全部若クハ一分又ハ自己ノ動産若クハ不動産ノ全部若クハ一分又ハ特定ノ動産若クハ不動産ヲ遺言ニ因リテ死亡ノ時ニ移転スルノ行為ヲ謂フ 遺贈ハ遺言者随意ニ之ヲ厩罷スルコトヲ得 第四百十六条 受贈者又ハ受遺者ニ贈与物又ハ遺贈物ノ所有権ヲ其死亡ニ至ルマテ保存ス可ク且贈与ノ時又ハ遺言者ノ死亡ノ時ニ無償ニテ収受スル普通能力ヲ有セサリシ人ニ移転ス可キ条件ヲ負ハシメタル贈与又ハ遺贈ハ総テ無効トス 第四百十七条 遺言書中ニ存スル不能又ハ不法ノ条件ハ之ヲ記セサルモノト看做ス 贈与書中ニ存スル不能又ハ不法ノ条件ハ合意ニ関スル普通ノ規則ニ従ヒ其贈与ヲ無効ト為ス 第一節 贈与又ハ遺贈ニ因リテ処分シ又ハ収受スル能力 第四百十八条 法律上特ニ無能力者ト定メタル者ヲ除クノ外何人ニ限ラス贈与及ヒ遺贈ニ因リテ処分シ又ハ収受スル能力ヲ有ス 第四百十九条 左ニ掲ケタル者ハ贈与ニ因リテ処分スル能力ヲ有セス 第一 贈与ヲ為ス時ニ於テ喪心シタル者 第二 民事上又ハ刑事上ノ禁治産者 第三 瘋癲ノ為メ病院又ハ監置ニ在ル者 第四 未成年者但夫婦財産契約ノ為メ法律ノ特ニ許ス場合ハ例外トス 婦ノ能力ニ付テハ人事編第八十四条以下ノ規定ニ従フ 第四百二十条 准禁治産者ハ財産譲渡ノ為メ法律ノ要スル方式ニ従フニ非サレハ贈与ヲ為スコトヲ得ス 第四百二十一条 左ニ掲ケタル者ハ遺贈ニ因リテ処分スル能力ヲ有セス 第一 第四百十九条第一号乃至第三号ニ記載シタル者 遺贈者ハ死亡ノ時ニ於テ心神ノ明確ナルコトヲ要セス遺贈ヲ為ス時ニ於テ其明確ナリシヲ以テ足ル 第二 十五年未満ノ者 満十五年ニ達シタル未成年者ハ成年者ノ遺贈ニ因リテ処分スルコトヲ得ル財産ノ半額以内ニ於テ遺贈ヲ為スコトヲ得 第四百二十二条 准禁治産者ハ遺贈ヲ為スノ能力ニ付キ満十五年ニ達シタル未成年者ト同視セラル 第四百二十三条 贈与ノ時又ハ遺贈者ノ死亡ノ時ニ生存セサル者ハ贈与又ハ遺贈ニ因リテ収受スル能力ヲ有セス 第四百二十四条 病院、学校其他ノ公設所ハ管轄庁ノ許可ヲ得ルニ非サレハ贈与又ハ遺贈ニ因リテ収受スル能力ヲ有セス 第四百二十五条 収受スル能力ヲ有セサル者ノ利益ニ於ケル贈与又ハ遺贈ハ前来ノ義務執行又ハ有償契約ニ擬スルト他人ノ名ヲ借ルトヲ問ハス無効トス 第二節 処分スルコトヲ得ル財産ノ部分及ヒ其部分ヨリ超過スル部分ノ減殺 第一款 処分スルコトヲ得ル財産ノ部分 第四百二十六条 処分スルコトヲ得ル財産ト貯存ス可キ財産トノ部分ヲ定ムルニハ家督相続ノ特権ヲ組成スルモノヲ扣除ス但収益ヲ生ス可キ世襲財産ハ貯存ス可キ財産中ニ算入ス 第四百二十七条 法定家督相続人アルトキハ被相続人ハ相続発開ノ時ノ現存財産ニシテ債務額ヲ扣除シタル剰額ト贈与ニ因リテ処分シタル財産トヲ合算シタル額ノ半額マテニ非サレハ贈与又ハ遺贈ニ因リテ処分スルコトヲ得ス 法定家督相続人アラサルトキト雖モ被相続人ハ三分ノ二マテニ非サレハ贈与又ハ遺贈ニ因リテ処分スルコトヲ得ス 何レノ場合ニ於テモ処分スルコトヲ得ル部分ヲ超過シタル処分ハ制限ノ部分ニマテ之ヲ減殺ス 第四百二十八条 遺産相続ニ付テハ其相続ヲ為ス子アルトキハ被相続人ハ左ノ分量ニ於ケルニ非サレハ贈与又ハ遺贈ニ因リテ財産ヲ処分スルコトヲ得ス 子一人アレハ財産全部ノ半額ヲ超過スルコトヲ得ス二人アレハ三分ノ一又三人以上アレハ四分ノ一ヲ超過スルコトヲ得ス 第四百二十九条 贈与又ハ遺贈ニ因リテ終身年金権又ハ用益権ノ如キ其存立時間ノ不確実ナル権利ヲ設定シタルトキハ相続発開ノ時ニ於ケル此権利ノ評価額ヲ査定シテ処分スルコトヲ得ル部分ヲ定ム 其権利ノ評価額カ処分スルコトヲ得ル部分ヲ超過スルトキハ受貯相続人ハ或ハ被相続人ノ処分ヲ履行シ或ハ処分スルコトヲ得ル部分ノ完全ナル所有権ヲ与ヘテ其権利ヲ受戻スコトヲ得 第四百三十条 配偶者、卑属親又ハ尊属親ニ為シタル財産ノ譲渡ハ有償行為ニ擬スルモ無償ノ処分ト看做シ其価額ハ処分スルコトヲ得ル部分ニ充当ス但反対ノ証拠アルトキハ此限ニ在ラス 反対ノ証拠ハ単純ナル領収証ヲ除クノ外普通法ニ従ヒテ之ヲ挙クルコトヲ得 第二款 処分スルコトヲ得ル財産ノ部分ヲ超過スル部分ノ減殺 第四百三十一条 処分スルコトヲ得ル部分ヲ超過スル贈与又ハ遺贈ハ相続発開ノ時ニ基キ之ヲ其部分ニマテ減殺ス 第四百三十二条 贈与ノ超過部分ノ減殺ハ受貯相続人又ハ其相続人其他一般ノ承継人ニ非サレハ之ヲ請求スルコトヲ得ス 被相続人ノ債権者ハ受貯相続人ノ単純ニ相続ヲ受諾シタル場合ニ限リ財産編第三百三十九条ノ規定ニ従ヒテ其減殺ヲ請求スルコトヲ得 第四百三十三条 減殺ス可キ分量ハ相続発開ノ時ニ現存スル総テノ財産ノ評価額ヨリ被相続人ノ債務額ヲ扣除シテ尚ホ剰余アルトキハ其剰余額ト贈与シタル財産ノ評価額トノ合計額ニ付キ又剰余アラサルトキハ贈与シタル財産ノ評価額ノミニ付キ受貯相続人ノ資格ニ応シテ之ヲ算定ス 第四百三十四条 相続発開ノ時ニ現存スル財産ハ其時ニ於ケル形状及ヒ価格ニ従ヒテ其価額ヲ査定ス可シ 贈与シタル財産ハ受贈者ノ所為ヲ以テ之ニ加ヘタル改良又ハ之ニ致シタル毀損ニ拘ハラス贈与ノ時ノ形状ニテ尚ホ存スルモノトシ相続発開ノ時ニ於ケル価格ニ従ヒテ其価額ヲ査定ス然レトモ意外ノ事又ハ不可抗力ニ因リ財産ニ致シタル形状ノ変更ハ其評価額ノ査定中ニ算入ス可シ 第四百三十五条 貯存ス可キ財産ノ分量ヲ組成スルニハ先ツ遺贈ニ因リテ処分シタル財産ヲ減殺シ之ヲ減殺シ尽シタル後ニ非サレハ贈与ヲ減殺スルコトヲ得ス 第四百三十六条 贈与シタル財産ノ分量カ処分スルコトヲ得ル部分ヲ超過シ又ハ之ニ均シキトキハ遺贈ニ因ル処分ハ無効ニ帰ス 又遺贈ニ因ル処分ノ幾分ヲ減殺シテ貯存ス可キ財産ノ分量ヲ組成スルコトヲ得ルトキハ包括ノ遺贈ト特定ノ遺贈トヲ問ハス其価額ノ割合ヲ以テ総テノ遺贈ヲ減殺ス可シ但遺贈者ニ反対ノ意思アリタルコトノ明瞭ナルトキハ此限ニ在ラス 第四百三十七条 贈与ノ減殺ハ後ノ贈与ヨリ之ヲ始メ順次ニ先ノ贈与ニ及ホス可シ 第四百三十八条 前条ノ順次ニ於テ減殺ニ服スル受贈者ノ無資力ヨリ生スル損失ハ受貯相続人ノ負担ニ帰ス 第四百三十九条 受贈者ハ減殺ニ服スル元本ヲ返還スルノ外尚ホ減殺ノ請求ヲ受ケタル日ヨリ起算シテ其元本ノ利息及ヒ果実ヲ返還ス可シ 第四百四十条 贈与シタル不動産ヲ減殺ニ因リテ取回スルトキハ受贈者ノ之ニ設定シタル総テノ負担ハ無効ニ帰ス 第四百四十一条 何レノ場合ニ於テモ受贈者ハ減殺ニ服スル財産ノ評価額ヲ金銭ニテ提出シ現物ノ返還ヲ免カル丶コトヲ得 第四百四十二条 減殺ニ服スル不動産カ第三者ニ移転シタルトキハ受贈者ノ財産ヲ以テ其不動産ノ評価額又ハ其現状ノ実価額ヲ賠償スルニ足ラサルトキニ非サレハ第三者ニ対シテ減殺訴権ヲ行フコトヲ得ス 第三者ハ其評価額又ハ其現状ノ実価額ニ達スルマテノ金銭ヲ提出シテ現物ノ返還ヲ免カル丶コトヲ得 第四百四十三条 第三者ニ対スル減殺訴権ハ受贈者ヨリ所有権ヲ移転シタル行為ノ登記日附ノ順次ニ従ヒテ後ノ行為ヨリ之ヲ行ヒ順次ニ先ノ行為ニ及ホス可シ但其行為ノ無償ナルト有償ナルトヲ区別セス 第三節 贈与 第一款 贈与ノ方式 第四百四十四条 贈与ハ普通ノ合意ノ成立ニ必要ナル条件ヲ具備スル外尚ホ公証人ノ作リタル公正証書ヲ以テスルニ非サレハ成立セス 然レトモ債務ノ免除、所有権ノ外ナル物権ノ放棄、慣習ノ贈物及ヒ単一ノ手渡ニ成ル贈与ニ付テハ此方式ヲ要セス 第四百四十五条 前条ノ方式ニ依ラスシテ有償行為ニ擬シタル贈与ハ当然無効トス 贈与タルノ事実ハ総テノ証拠方法ニ依リテ之ヲ証スルコトヲ得 第四百四十六条 贈与ノ受諾ハ言込ト同時ニ之ヲ為スコトヲ要セス言込ノ後ニ之ヲ為スコトヲ得但贈与者ノ言込ヲ保持シ及ヒ無償ニテ処分スル能力ヲ有スル間ニ限ル 第四百四十七条 受贈者カ受諾ヲ為シタルトキハ贈与者ノ之ヲ知ルト否トヲ問ハス其言込ヲ変更スルコトヲ得ス 第四百四十八条 財産ヲ処分スル能力ヲ有スル受贈者ハ自ラ受諾ヲ為シ又ハ部理代理人ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得 第四百四十九条 未成年者、禁治産者、婦其他総テ財産ヲ処分スル完全ノ能力ヲ有セサル者ノ利益ニ於ケル贈与ノ受諾ハ其各自ノ為メニ定メタル方式ニ従ヒテ之ヲ為スコトヲ要ス 第四百五十条 病院、学校其他ノ公設所ノ利益ニ於ケル贈与ノ受諾ハ其贈与ヲ収受スルニ必要ナル許可ヲ得タル後院長其他管理人之ヲ為ス可シ 第四百五十一条 合意ニ因ルト法律ニ因ルトヲ問ハス受贈者ヲ代表シテ受諾ヲ為ス可キ者ハ其受諾ヲ為スコトヲ怠リテ受贈者ニ損害ヲ及ホスコト有ルトキハ其責ニ任ス 第四百五十二条 後見人、保佐人、公設所ノ管理人其他他人ノ財産ヲ管理スル者ハ贈与中ニ包含スル不動産物権ノ登記ヲ為スコトヲ怠リテ受贈者ニ損害ヲ及ホスコト有ルトキハ其責ニ任ス 第四百五十三条 婦ハ贈与ニ因リテ得タル不動産物権ノ登記ヲ為スコトニ付テハ夫ノ許可ヲ要セス 夫モ亦婦ノ依託ヲ要セスシテ婦ノ名ヲ以テ登記ヲ為スコトヲ得 第四百五十四条 贈与ハ贈与者ノ現有ノ財産ノミヲ包含ス若シ将来ノ財産ヲ包含シタルトキハ其財産ニ付テハ贈与ハ無効トス 然レトモ数額ノ定マリタル金銭又ハ定量物ノ贈与ハ贈与者ノ現有スルト否トヲ問ハス有効トス 第四百五十五条 贈与ノ性質又ハ諾約ニ因リテ受贈者カ贈与者ノ債務ヲ弁済スルノ義務ヲ負ヒタルトキハ其義務ハ贈与ノ時既ニ存在シタル債務ニ非サレハ包含セス 受贈者カ贈与者ノ将来ノ債務ヲ弁済ス可キノ諾約ヲ為シタルトキハ其諾約ハ無効トス 第四百五十六条 贈与者カ贈与財産ノ中ニテ特定ノ物又ハ金額ヲ処分スルノ権能ヲ留保シタルトキハ其権能ハ贈与者ノ死亡ニ因リテ消滅ス但遺贈其他ノ方法ニ因リテ此権能ヲ相続人又ハ第三者ニ移転シタルトキハ此限ニ在ラス 第四百五十七条 動産ノ贈与ハ慣習ノ贈物又ハ単一ノ手渡ニ成ル贈与ヲ除クノ外贈与証書ニ贈与者及ヒ受贈者又ハ受贈者ノ名ニテ受諾ヲ為ス者ノ署名シタル評価目録ヲ添フ可シ 評価目録ニ記載セサル動産ニ付テハ贈与ノ効ヲ生セス 第四百五十八条 贈与者カ贈与財産ノ全部又ハ一分ニ付キ自己又ハ第三者ノ利益ニ用益権ヲ留保シタルトキハ受贈者ハ用益権ノ終ニ至リ其財産ヲ現状ニテ収受ス但用益者ノ過失又ハ懈怠ニ因リテ毀損シ又ハ滅尽シタル財産ニ付テハ用益者又ハ其相続人ニ対シテ賠償ヲ要求スルコトヲ得 此賠償額ヲ査定スルニハ不動産ニ付テハ用益権終了ノ時ニ於ケル価格ニ従ヒ動産ニ付テハ目録ノ評価ニ従フ 第四百五十九条 贈与者ハ自己ノ利益ニ於テスルニ非サレハ自己ニ先タチテ受贈者ノ死亡スルトキ其贈与ヲ解除ス可キ条件ヲ要約スルコトヲ得ス 若シ贈与者カ其相続人又ハ第三者ノ利益ニ於テ此解除条件ヲ要約シタルトキハ其条件ハ無効トス 第四百六十条 前条第一項ノ規定ニ従ヒテ有効ニ要約シタル解除条件ノ成就ハ受贈者ノ相続人ニ対スルト第三者ニ対スルトヲ問ハス普通ノ合意ニ於テ要約シタル解除条件ト同一ノ効果ヲ生ス 然レトモ受贈者ノ婦ハ解除ニ拘ハラス左ノ二箇ノ条件具備スルトキハ贈与財産ニ付キ法律上ノ抵当権ヲ保有ス 第一 贈与カ夫婦財産契約ヲ以テ夫ノ為メ為サレタルモノナルトキ 第二 贈与財産ノ外ナル夫ノ特有財産ヲ以テ婦ノ特有財産ノ返還ヲ担保スルニ足ラサルトキ 第二款 贈与廃罷ノ原因 第四百六十一条 贈与ハ合意ヲ無効ト為ス普通ノ原因ノ外尚ホ贈与者ノ要約シタル条件ノ不履行又ハ受贈者ノ忘恩ノ為メ之ヲ廃罷スルコトヲ得 第四百六十二条 条件ノ不履行ニ基ク贈与ノ廃罷ハ贈与者又ハ其承継人ヨリ之ヲ請求スルコトヲ得 第四百六十三条 条件ノ不履行ニ基キ贈与ヲ廃罷シタル場合ニ於テハ受贈者ニ対スルト第三者ニ対スルトヲ問ハス未必条件ノ成就ニ因リテ合意ヲ解除シタルトキト同一ノ効果ヲ生ス 第四百六十四条 贈与ハ左ニ掲ケタル原因ノ一アルニ非サレハ忘恩ノ為メ之ヲ廃罷スルコトヲ得ス 第一 受贈者カ悪意ヲ以テ贈与者ノ身体財産又ハ名誉ニ対シ軽罪又ハ重罪ニ該ル可キ所為ヲ為シタルトキ 第二 受贈者カ贈与者ニ養料ヲ給スルコトヲ拒ミタルトキ但養料ヲ給ス可キ親族アラサルトキニ限ル 第四百六十五条 忘恩ニ基ク贈与ノ廃罷訴権ハ第四百六十八条第一号但書ノ場合ヲ除クノ外贈与者ノ一身ニ属ス 第四百六十六条 忘恩ニ基ク贈与ノ廃罷ハ贈与財産ニ付キ第三者ノ善意ヲ以テ取得シタル権利ヲ害スルコトヲ得ス但贈与者カ財産編第三百五十二条ノ規定ニ従ヒ贈与証書ノ登記ニ廃罷ノ訴状ヲ附記シタル後ニ受贈者ヨリ贈与財産ニ付キ物権ヲ取得シタル者ハ自己ノ善意ヲ主張スルコトヲ得ス 第四百六十七条 忘恩ニ基キ贈与ヲ廃罷セラレタル受贈者ハ左ノ責ニ任ス 第一 現有スル贈与財産ノ返還 第二 廃罷請求ノ日ヨリ贈与財産ニ付キ収取シ又ハ収取ヲ怠リタル利息及ヒ果実ノ返還 第三 前条ノ規定ニ従ヒテ第三者カ権利ヲ得タルニ因リ贈与者ノ受ケタル損害ノ賠償 第四 忘恩ノ所為ヨリ以後受贈者ノ過失又ハ懈怠ニ因リテ贈与財産ニ致シタル毀損又ハ滅尽ノ賠償 賠償額ハ廃罷請求ノ時ニ於ケル物件ノ価格ニ従ヒテ之ヲ定ム 第四百六十八条 忘恩ニ基ク贈与廃罷ノ訴権ハ左ノ原因ニ由リテ消滅ス 第一 受贈者又ハ贈与者ノ死亡但贈与者ノ死亡カ忘恩ノ所為ニ原因セシトキハ其相続人ヨリ贈与ノ廃罷ヲ請求スルコトヲ得 第二 公正証書又ハ私署証書ヲ以テ為シタル贈与者ノ宥免 第三 満一个年間訴権ノ不行使但此期間ハ訴権ヲ有スル者カ受贈者ニ忘恩ノ所為アリタルコトヲ知リタル日ヨリ之ヲ算ス 第四百六十九条 慣習ノ贈物及ヒ単一ノ手渡ニ成ル贈与ハ忘恩ニ基キ之ヲ廃罷スルコトヲ得ス 第四節 婚姻ノ為メ第三者ノ為シタル贈与 第四百七十条 婚姻ノ為メニ第三者ノ為シタル贈与ハ特定ナルト包括ナルトヲ問ハス下ノ特例ヲ除クノ外普通ノ贈与ノ規定ニ従フ 第四百七十一条 婚姻ノ為メニ為シタル贈与ハ離婚ノ場合ニ於テハ解除ス可キ条件ヲ以テ為シタルモノト看做ス但此解除ハ贈与者又ハ其相続人ノ請求ニ因リテ裁判上之ヲ宣告ス 第四百七十二条 前条ノ解除ハ普通ノ合意ノ解除ト同一ノ効果ヲ生ス然レトモ贈与物ニ付キ受贈者ノ収取シタル利息及ヒ果実ハ解除請求ノ日ヨリ起算スルニ非サレハ之ヲ請求スルコトヲ得ス 第四百七十三条 解除訴権ハ明示ノ放棄ニ因リ又ハ離婚ノ日ヨリ満五个年ノ時効ニ因リテ消滅ス 第四百七十四条 夫婦財産契約ト異ナル証書ニ因リテ婚姻ノ時ニ第三者カ贈与ヲ為シタルノミノ事情ハ婚姻ノ為メニスル贈与ヲ推定セス 又婚姻ノ儀式後ニ第三者カ為シタル贈与ニ付テハ仮令証書ニ婚姻ノ為メニスル旨ヲ明記シタルモ贈与者ハ本節ニ規定シタル利益ヲ主張スルコトヲ得ス 第五節 夫婦財産契約ヲ以テ為シ又ハ婚姻中ニ為ス夫婦間ノ贈与 第四百七十五条 夫婦ハ夫婦財産契約ヲ以テスルト婚姻中ノ合意ヲ以テスルトヲ問ハス普通ノ方式ニ従ヒ且其処分スルコトヲ得ル財産ノ部分ニ限ルニ非サレハ一方ヨリ他ノ一方ニ又ハ相互ニ贈与スルコトヲ得ス 此他夫婦間ノ贈与ハ下ノ特例ニ従フ 第四百七十六条 未成年ノ夫又ハ婦ハ婚姻ノ許諾ヲ与フ可キ人ノ許諾及ヒ立会ヲ得且財産契約ヲ以テスルニ非サレハ贈与ヲ為スコトヲ得ス 第四百七十七条 夫婦間ノ贈与ハ財産契約ヲ以テスルト婚姻中ノ合意ヲ以テスルトヲ問ハス前節ニ規定シタル解除ノ条件ニ従フ 第四百七十八条 夫婦間ノ贈与ハ婚姻ノ継続中ニ限リ贈与者随意ニ之ヲ廃罷スルコトヲ得 婦ハ夫又ハ裁判所ノ許可ヲ要セスシテ贈与ノ廃罷ヲ為スコトヲ得 第四百七十九条 前条ノ規定ニ従ヒタル贈与ノ廃罷ハ第三者ニ対シテ効力ヲ有セス但贈与ノ登記ニ廃罷ノ訴状ヲ附記シタル後ニ受贈者ノ遺産所持者ヨリ贈与財産ニ付キ物権ヲ取得シタル第三者ニ対シテハ此限ニ在ラス 第四百八十条 贈与ヲ廃罷シタル場合ニ於テ返還ス可キ物ニ付テハ第四百六十七条ノ規定ヲ適用ス 第四百八十一条 本節ニ定メタル制限ニ違ヘル贈与ノ約款ハ之ヲ記セサルモノト看做ス 第四百八十二条 夫婦間ノ贈与ハ前来ノ義務履行又ハ有償契約ニ擬スルト他人ノ名ヲ借ルト間接ナルトヲ問ハス本節ニ定メタル制限ニ従フ 第四百八十三条 夫婦ノ一方権利ヲ放棄シ其利益カ他ノ一方ニ帰ス可キトキハ其放棄ハ間接ノ贈与ヲ成ス 第六節 遺贈 第一款 遺言ノ普通方式 第四百八十四条 遺言ハ遺言者ノ自筆ノ証書、公正証書又ハ秘密ノ方式ニ依リテ之ヲ為スコトヲ得 然レトモ二人以上ノ人ハ第三者ノ利益ニ於テスルト相互ノ利益ニ於テスルトヲ問ハス一箇ノ証書ヲ以テ遺言ヲ為スコトヲ得ス 第四百八十五条 自筆ノ遺言書ハ遺言者カ其全文、日附及ヒ氏名ヲ自書シテ捺印シタルニ非サレハ其効ヲ有セス 第四百八十六条 公正証書ニ依ル遺言ハ公証人一人及ヒ証人二人又ハ公証人二人ノ前ニ於テ遺言者カ遺言ノ旨趣ヲ口授シ公証人ノ一人之ヲ筆記シ朗読シタル後遺言者及ヒ立会人各其氏名ヲ自書シテ捺印シタルニ非サレハ其効ヲ有セス 然レトモ氏名ヲ自書スル能ハサル者アルトキハ其事由ヲ証書ノ末尾又ハ縁辺ニ記載スルヲ以テ足ル 第四百八十七条 秘密ノ方式ニ依ル遺言書ハ遺言者ノ自書シタルト他人ノ之ヲ書シタルトヲ問ハス左ノ諸件ヲ具備スルニ非サレハ其効ヲ有セス 第一 遺言者カ氏名ヲ自書シテ捺印シタルコト 第二 遺言書ヲ封シテ遺言者カ之ニ封印シタルコト 第三 遺言者カ公証人一人及ヒ証人二人ノ前ニ封書ヲ提出シテ自己ノ遺言書タル旨ヲ陳述シタルコト 第四 公証人カ遺言者ノ陳述ト之ヲ聴キタル日附トヲ封紙ニ記シテ遺言者及ヒ証人ト共ニ各其氏名ヲ自書シテ捺印シタルコト但此場合ニ於テ氏名ヲ自書スル能ハサル証人アルトキハ公証人其事由ヲ封紙ニ記スルヲ以テ足ル 公証人ハ遺言者ノ死亡ノ後其相続人ノ立会ノ上ニ非サレハ開封セサル旨ヲ記シタル領収書ヲ遺言者又ハ其指定シタル証人中ノ一人ニ授付スヘシ 第四百八十八条 遺言者カ言語ヲ発スル能ハスト雖モ文字ヲ書クコトヲ得ル場合ニ於テハ秘密ノ方式ニ依ル遺言ヲ為スコトヲ得 然レトモ此場合ニ於テハ公証人及ヒ証人ノ前ニ於テ封内ノ書ハ自己ノ遺言タル旨ヲ封紙ニ自書ス可シ 第四百八十九条 秘密ノ方式ニ依ル遺言トシテ有効ナル為メ上ニ定メタル条件ニ欠クルモノ有リト雖モ其全文、日附及ヒ氏名共ニ遺言者ノ自書ニ係ルトキハ自筆ノ遺言書トシテ有効トス 第四百九十条 受遺者、遺言ニ立会フ公証人ノ筆生其他普通ノ無能力者ハ遺言ノ証人ト為ルコトヲ得ス 第二款 遺言ノ特別方式 第四百九十一条 軍人及ヒ軍属ニシテ遠征中ニ在ル者又ハ内地ト雖モ交戦中若クハ合囲中ニ在ル者ハ将校一人証人二人ノ前ニ於テ遺言書ヲ作ルコトヲ得 第四百九十二条 遠征中、交戦中又ハ合囲中ニ在ル軍人及ヒ軍属ニシテ疾病又ハ傷痍ノ為メ病院ニ在ル者ハ其院ノ医官及ヒ事務官ノ補助ヲ受ケテ遺言書ヲ作ルコトヲ得 第四百九十三条 伝染病ノ為メ行政処分ヲ以テ交通ヲ遮断シタル地方ニ在ル者ハ其疾病中ナルト否トヲ問ハス警察官一人及ヒ証人一人ノ前ニ於テ遺言書ヲ作ルコトヲ得 第四百九十四条 前三条ノ方式ニ従ヒテ作リタル遺言書ハ遺言者ノ普通方式ニ従ヒテ遺言書ヲ作ルコトヲ得ルニ至リシ時ヨリ六个月ノ後ハ無効トス 第四百九十五条 航海中ハ左ノ方式ニ従ヒテ遺言書ヲ作ルコトヲ得 第一 官ノ艦船ニ在テハ其事務官他ノ船舶ニ在テハ船長ノ前ニ於テ他ノ事務員ノ補助ヲ受クルコト 第二 証人二人ノ立会アルコト但乗組人員ノ不足スルトキハ其事由ヲ附記スルヲ以テ足ル 第四百九十六条 如何ナル場合ニ於テモ前条ノ方式ニ従ヒタル遺言書ハ正本二通ヲ作ルコトヲ要ス 第四百九十七条 艦船又ハ船舶カ日本領事ノ在勤スル外国ノ海港ニ到着スルトキハ遺言書ノ正本一通ヲ封シテ之ヲ領事ニ差出タシ領事ハ之ヲ外務大臣ニ送致シ外務大臣ハ之ヲ遺言者ノ住所ノ区裁判所ニ送付ス可シ 第四百九十八条 艦船又ハ船舶カ日本ノ海港ニ到着スルトキハ遺言書ノ正本二通ヲ封シ若シ前条ノ規定ニ従ヒテ旅行中ニ其一通ヲ領事ニ差出タシタルトキハ他ノ一通ヲ封シ其地ノ郡市役所又ハ区裁判所ニ差出タシ之ヲ領取シタル官署ハ遺言者ノ住所ノ区裁判所ニ送付ス可シ 第四百九十九条 海上ニテ遺言書ヲ作リ及ヒ着港ノ際相当官署ニ之ヲ差出タシタルトキハ毎次其旨ヲ航海日誌ニ記載ス可シ 第五百条 海上ニテ作リタル遺言書ハ遺言者ノ上陸シテ普通方式ニ従ヒ之ヲ作ルコトヲ得ヘキ地ニ留マリシ時ヨリ六个月ノ後ハ無効トス 第五百一条 海上ニテ作リタル遺言書ニ乗船役員ノ利益ト為ル可キ財産処分ヲ包含スルトキハ其処分ハ無効トス但其役員カ遺言者ノ親族タルトキハ此限ニ在ラス 第五百二条 本款ノ規定ニ従ヒテ作リタル遺言書ニハ遺言者、代書者及ヒ立会人各其氏名ヲ自書シテ捺印ス可シ 氏名ヲ自書シ又ハ捺印スルコト能ハサル者アルトキハ其事由ヲ遺言書ノ末尾又ハ縁辺ニ記載スルヲ以テ足ル 第五百三条 外国ニ在ル日本人ハ第四百八十五条ニ定メタル自筆ノ方式ニ依リ又ハ其地ニ用ユル公正ノ方式ニ従ヒテ遺言ヲ為スコトヲ得 第五百四条 外国ニ於テ作リタル遺言書ハ遺言者ノ日本国内ニ有スル住所ノ区裁判所ノ簿冊ニ之ヲ登録シ若シ住所ノ知レサルトキハ最終居所ノ区裁判所ノ簿冊ニ之ヲ登録シタル後ニ非サレハ日本国内ニ在ル財産ニ付キ其遺言ヲ執行スルコトヲ得ス 又其遺言書ニ日本国内ニ在ル不動産ノ処分ヲ包含スルトキハ其不動産所在地ノ区裁判所ニ登記ヲ求メタル後ニ非サレハ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス 第五百五条 日本ニ在ル外国人ハ日本ノ法律ニ従ヒ又ハ其本国ノ法律ニ従ヒテ遺言ヲ為スコトヲ得 然レトモ不動産ニ関スル遺言ノ処分ハ日本ノ法律ニ従ヒテ之ヲ公示シタル後ニ非サレハ第三者ニ対シテ効力ヲ有セス 第三款 遺言ノ効力及ヒ執行 第五百六条 単純又ハ有期ノ遺贈ハ遺言者ノ死亡ノ時ヨリ受遺者ノ知ルト否トヲ問ハス包括ノ遺贈ニ付テハ其包含スル働方及ヒ受方ノ財産ヲ受遺者ニ移転シ特定ノ遺贈ニ付テハ其遺贈物ノ権利ヲ受遺者ニ移転ス然レトモ有期ノ遺贈ハ満期ニ至ルマテ其執行ヲ止ム 停止又ハ解除ノ条件附ニ於ケル遺贈ノ効力ハ合意ノ事項ニ関シテ規定シタル如ク其条件ノ成就如何ニ従フ 遺贈ノ目的物カ代替物ナルトキハ其所有権ハ財産編第三百三十二条ノ規定ニ従ヒテ移転ス 如何ナル場合ニ於テモ受遺者ハ遺贈ヲ放棄スルコトヲ得 第五百七条 遺贈カ受遺者ニ属スル物ノ上ニ遺言者ノ有スル地役其他ノ物権ヲ放棄スルヲ目的ト為シタルトキハ其地役、物権ハ遺言者ノ死亡ニ因リテ当然消滅ス 遺言者カ遺言ヲ以テ自己ノ債務者ニ対シ其債務ヲ免除シタルトキハ其債務ハ遺言者ノ死亡ノ時ヨリ当然消滅ス 合意上ノ無償ノ免除ニ関スル規則ハ債務ヲ免除スル遺贈ニ之ヲ適用ス 第五百八条 遺言者カ不分ノ権利ヲ有スル物ヲ遺贈シタルトキハ受遺者ハ遺言者ト同一ナル権利ヲ取得ス 若シ遺贈物カ相続其他包括財産ノ一分ヲ成セルトキハ受遺者ハ分配ニ参加セスト雖モ其物カ遺言者ノ相続人ノ配当部分ニ帰シタルトキハ現物ニテ之ヲ受取リ他ノ共同所有者ノ配当部分ニ帰シタルトキハ其価額ヲ受取ル可シ 第五百九条 受遺者ハ遺贈物ノ引渡ヲ請求シタル時ヨリ後ニ非サレハ遺贈物ノ果実ヲ収受スル権利ヲ有セス但期限ノ到来シ又ハ未必条件ノ成就シタルコトヲ要ス 然レトモ左ノ三箇ノ場合ニ於テハ受遺者ハ遺言者ノ死亡、満期又ハ条件成就ノ時ヨリ請求ヲ待タスシテ直チニ果実ヲ収受スル権利ヲ有ス 第一 遺言者カ果実ヲ収受スル権利ヲ明示シタルトキ 第二 遺贈カ養料ノ性質ヲ有スルトキ 第三 相続人カ悪意ヲ以テ遺言ヲ隠秘シタルトキ 第五百十条 遺贈物ハ其遺贈ノ単純ナルトキハ当然ノ附従物ト共ニ遺言者ノ死亡ノ時ニ於ケル現状ニテ之ヲ引渡ス可シ其遺贈ノ有期又ハ未必条件附ナルトキハ引渡ヲ請求スルコトヲ得ヘキ時ニ於ケル現状ニテ之ヲ引渡ス可シ 遺言者ノ遺贈物ニ加ヘタル改良又ハ毀損及ヒ意外ノ事又ハ不可抗力ヨリ生シタル増加又ハ毀損ハ受遺者ノ利益又ハ損害ニ帰ス 相続人カ遺贈物ニ加ヘタル改良又ハ毀損ハ相続人ト受遺者トノ間相互ニ賠償ヲ請求スル権利ヲ生ス 解除ノ未必条件ヲ以テ遺贈ヲ為シタル場合ニ於テ其条件ノ成就シタルトキハ受遺者又ハ其相続人ヨリ遺贈物ヲ現状ニテ還付ス可シ但人為ニ因ル改良又ハ毀損ニ付キ双方ノ間ニ於ケル相互ノ賠償ヲ妨ケス 第五百十一条 遺言者カ遺言ノ後ニ取得シタル土地又ハ建物ハ遺贈ノ不動産ニ接著シ又ハ其不動産ノ利用ヲ改良スル為メニ供ヘタルモノト雖モ其不動産ノ受遺者ヲ利セス 第五百十二条 遺言書ハ公正証書ヲ除クノ外相続発開地ノ区裁判所ノ検証ヲ得タル後ニ非サレハ之ヲ執行スルコトヲ得ス 封印アル遺言書ハ区裁判所ニ於テスルニ非サレハ開封スルコトヲ得ス 前二項ノ規定ニ違フ者ハ百円以下ノ過料ニ処ス 第五百十三条 受遺者ハ前条ノ検証ノ後要求スルヲ得ヘキ遺贈物ノ引渡ヲ相続財産ノ所持者ニ対シテ請求スルコトヲ得但貯存財産ヲ組成スル為メ第四百三十六条ノ規定ニ従ヒテ減殺ス可キトキハ此限ニ在ラス 第五百十四条 遺言ノ執行及ヒ遺贈物ノ引渡ニ関スル費用ハ相続財産ノ負担トス但貯存財産ニ負担セシムルコトヲ得ス 第五百十五条 不動産物権ノ遺贈ハ遺言者ノ死亡ノ後受遺者カ其遺贈ヲ知リタル時ヨリ三十日内ニ之ヲ登記シタルニ非サレハ遺言者ノ死亡ノ日ニ遡リテ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス 登記ノ費用ハ受遺者ノ負担トス 第四款 遺言執行者 第五百十六条 遺言者ハ合意又ハ遺言ヲ以テ遺贈ノ執行ヲ一人又ハ数人ニ委託スルコトヲ得但此委託ヲ受ケタル遺言執行者ハ一般ニ義務ヲ負フコトヲ得ル能力者タルコトヲ要ス 第五百十七条 遺言執行者ハ委託証書ニ指定シタル執行方法ニ従ヒ善良ナル管理者タル注意ヲ以テ遺言ヲ執行ス可シ 委託証書ニ執行方法ヲ指定セス又ハ其指定ノ不明若クハ不法ナルトキハ下ノ数条ノ規定ニ従フ 第五百十八条 遺言執行者ハ遺言者死亡ノ日ヨリ十日内ニ相続人又ハ其代人ノ立会ノ上若クハ適法ニ之ヲ召喚シタル上ニテ公証人ヲシテ其財産ノ目録ヲ作ラシム可シ 第五百十九条 遺言執行者ハ前条ノ方式ヲ終ヘタル後相続財産ノ所持者ニ対シテ有効ニ遺言ヲ執行スルニ足ル財産ノ引渡ヲ請求ス可シ 又執行スル遺言ニ付キ争アルトキハ訴訟ニ参加ス可シ 第五百二十条 金銭ノ遺贈ヲ弁済スルニ足ル可キ金額カ相続財産中ニ現存セサルトキハ処分スルコトヲ得ル部分ノ限度内ニ於テ先ツ動産ノ競売ヲ請求シ尚ホ不足スルトキハ不動産ノ競売ヲ請求ス可シ 然レトモ包括承継人ハ遺贈ヲ弁済スルニ足ル可キ金額ヲ提出シテ競売ヲ停止スルコトヲ得 第五百二十一条 遺言執行者数人アルトキハ其中ノ一人ハ他ノ者ノ不在又ハ事故アルニ拘ハラスシテ遺言ノ執行ヲ為シ及ヒ連帯ニテ計算ヲ為スノ責ニ任ス但遺言者ノ委託ヲ以テ執行ヲ各執行者ニ分任シ且各執行者カ委託ヲ受ケタル限度内ニ於テ執行シタルトキハ此限ニ在ラス 第五百二十二条 遺言執行者ハ前数条ニ規定シタルモノ丶外尚ホ代理人ノ普通義務ニ服ス 第五百二十三条 遺言執行ノ委託ハ遺言者ノ死亡ヲ除クノ外代理終了ノ原因ニ由リテ消滅ス 遺言執行ノ委託ノ消滅シタルトキハ遺言執行者ハ相続人及ヒ受遺者ニ対シテ其執行ノ計算ヲ為ス可シ但遺言執行者ノ死亡ニ因リテ委託ノ消滅シタルトキハ其相続人此計算ヲ為ス可シ 第五百二十四条 遺言執行ノ為メニ要スル財産ノ目録、競売、訴訟参加其他ノ費用ニ付テハ第五百十四条ノ規定ヲ適用ス 第五款 遺言ノ廃罷及ヒ失効 第五百二十五条 遺言ハ遺言者随意ニ之ヲ廃罷スルコトヲ得 廃罷ハ明示又ハ黙示ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得 第五百二十六条 遺言者カ遺言ノ方式ニ従ヒ遺言ノ全部又ハ一分ヲ廃罷スル意思ヲ証書ニ記載シタルトキハ其廃罷ハ明示ノモノトス 第五百二十七条 後ノ遺言ヲ以テ前ノ遺言ニ包含スル物ヲ処分シタルトキハ其物ニ付テハ前ノ遺言ヲ黙示ニテ廃罷シタルモノトス 金銭其他定量物ニ付テハ後ノ遺言ハ前ノ遺言ヲ廃罷シタルモノトセス 本条ノ規定ハ遺言者カ生存中遺言ニ包含スル物ヲ有償又ハ無償ニテ処分シタル場合ニモ亦之ヲ適用ス 第五百二十八条 廃罷ニ帰シタル遺言ハ其廃罷ノ原因タリシ処分ノ無効ト為ルトキト雖モ有効ニ復セス 第五百二十九条 遺言ハ受遺者ノ条件不履行ノ為メ又ハ遺言者ヲ死ニ致シタル原因ノ為メ第四百六十二条以下ノ規定ニ従ヒテ相続人ヨリ廃罷ヲ請求スルコトヲ得 第五百三十条 遺言者ヲ死ニ致シタル原因ニ基ク遺言廃罷ノ訴権ハ第四百六十八条第三号ニ定メタル期間ノ経過ニ因リテ消滅ス 第五百三十一条 遺言ハ方式上完全ノモノト雖モ左ノ場合ニ於テハ其効ヲ失フ 第一 受遺者カ遺言者ヨリ先ニ死亡シタルトキ 第二 停止条件附ノ遺言ニ付キ其条件ノ成就前ニ受遺者ノ死亡シタルトキ 第三 停止条件ノ成就セサルトキ 第四 受遺者カ遺贈ヲ放棄シタルトキ 第五 受遺者カ遺贈ニ因リテ収受スル能力ヲ有セサルトキ 第六 遺言者ノ生存中ニ遺贈物ノ全部ノ滅尽シタルトキ 第七 停止条件附ノ遺贈物ノ全部カ其条件ノ成就前ニ不可抗力ニ因リテ滅尽シタルトキ 第五百三十二条 廃罷又ハ失効ニ帰シタル遺言ノ部分ニ付テハ曽テ遺言アラサリシモノト看做ス但遺言者カ同一又ハ別異ノ遺言ヲ以テ其部分ヲ利得ス可キ者ヲ指定シタルトキハ此限ニ在ラス 第五百三十三条 遺言ノ廃罷又ハ失効ニ帰シタル部分ヲ利得ス可キ者ノ指定ハ明示ナルコトヲ要ス 第十五章 夫婦財産契約 総則 第五百三十四条 夫婦タラントスル者ハ風俗ヲ壊ラス又ハ公ノ秩序ヲ害セサル限リハ其財産ニ付キ任意ニ契約ヲ為スコトヲ得但風俗ヲ壊リ又ハ公ノ秩序ヲ害スル約款アルトキハ其約款ノミ無効トス 第五百三十五条 夫婦財産契約ハ婚姻ノ儀式前ニ之ヲ為シ及ヒ公証人ヲシテ其証書ヲ作ラシムルニ非サレハ成立セス 第五百三十六条 財産契約ノ変更ハ公証人ヲシテ其証書ヲ作ラシメ且契約ニ関係スル諸人ノ立会ヒ及ヒ承諾スルニ非サレハ無効トス 婚姻ノ儀式後ハ契約ヲ変更スルコトヲ得ス 第五百三十七条 財産契約ノ変更ニシテ前条ノ規定ニ適合スルモノト雖モ原契約書ノ原本ニ其変更ヲ附記シタルニ非サレハ第三者ニ対シテ効力ヲ有セス 原契約書ノ謄本ニ変更ヲ附記セスシテ之ヲ交付シタル公証人ハ第三者ニ対シテ損害賠償ノ責ニ任ス 第五百三十八条 婚姻ヲ為スコトヲ得ル未成年者ハ婚姻ノ許諾ヲ与フ可キ尊属親又ハ後見人ノ立会ニテ財産契約ヲ為スコトヲ得 第五百三十九条 財産契約ヲ為サスシテ婚姻ヲ為シタル者ハ法定ノ制ニ従ヒタルモノト看做ス 第五百四十条 如何ナル財産契約ヲ以テ婚姻ヲ為ストキト雖モ婚資ハ之ヲ設定スルコトヲ得 第五百四十一条 日本ニ於テ財産契約ヲ為サスシテ婚姻ヲ為シタル外国人ハ夫タル者ノ本国ニ行ハル丶普通ノ制ニ従ヒタルモノト看做ス 第五百四十二条 法定ト合意トヲ問ハス財産契約ハ婚姻ノ儀式ヲ行フニ因リテ開始ス其開始ノ時期ハ合意ヲ以テ之ヲ変更スルコトヲ得ス 第一節 法定ノ制 第五百四十三条 婦又ハ入夫カ婚姻ノ儀式ノ時ニ於テ現ニ所有シ又ハ将来ニ所有ス可キ特有財産ヨリ婚姻中ニ生スル果実及ヒ自己ノ労力ニ因リテ婚姻中ニ得タル所得ハ婚姻ニ原因スル費用分担ノ為メ之ヲ配偶者ニ供出シタルモノト看做ス 第五百四十四条 夫又ハ戸主タル婦カ配偶者ノ特有財産ニ付テ有スル権利ハ用益者ノ権利ニ同シ 又配偶者ノ特有財産ニ関シテ収益ヲ為ス夫又ハ戸主タル婦ハ用益者ノ負担スル修繕其他収益ヲ以テ弁済ス可キ義務ヲ負フ 第五百四十五条 夫ハ婦ノ特有財産及ヒ婦ノ収益権ヲ有スル財産ヲ管理ス 日常ノ家事管理ハ婦之ヲ為ス 第五百四十六条 婦カ家事管理権ヲ濫用シテ過度ノ債務ヲ生セシメタルトキハ夫ハ婦ノ家事管理権ヲ停止シ且其公示ノ処分ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得 第五百四十七条 夫ハ婦ノ承諾ヲ得ルニ非サレハ婦ノ特有財産ヲ譲渡シ又ハ之ヲ担保ニ供スルコトヲ得ス 然レトモ婦カ事実上又ハ法律上承諾ヲ表スル能ハサル場合ニ限リ夫ハ親族会ノ許可ヲ得テ婦ノ特有財産ヲ以テ共同子又ハ婦ノ前婚若クハ私出ノ子ノ婚姻又ハ営業ノ資ニ供スルコトヲ得 第五百四十八条 入夫ハ婦ノ承諾ヲ得スシテ婚姻中ノ所得ヲ譲渡シ又ハ之ヲ担保ニ供スルコトヲ得 然レトモ入夫ハ婦ノ承諾ヲ得ルニ非サレハ無償ニテ婚姻中ノ所得ヲ譲渡シ又ハ他人ノ為メニ之ヲ担保ニ供スルコトヲ得ス但慣習ノ贈物ヲ為スハ此限ニ在ラス 第五百四十九条 夫カ婦ノ特有財産ニ付キ其承諾ヲ得スシテ為ス賃貸借ニ関シテハ財産編第百十九条以下ノ規定ヲ適用ス 第五百五十条 夫カ婦ノ特有財産ヲ売却シテ其代価ヲ復用セス又ハ婦ノ為メニ之ヲ利用セサルトキハ婦ハ婚姻解消ノ時ニ於テ夫ニ対シテ賠償ヲ要求スルコトヲ得 第五百五十一条 夫カ婦ノ特有財産ノ復用ノ為メニ為ス取得ハ婦カ承諾ヲ表シタルニ非サレハ復用ノ効ヲ生セス 第五百五十二条 管理者タル入夫又ハ婦カ自己ノ特有財産ノ復用ノ為メニ為ス取得ハ其取得ノ当時ニ於テ復用ノ為メニスル旨ヲ明示シタルニ非サレハ復用ノ効ヲ生セス 第五百五十三条 管理ノ失当ニ因リ夫カ婦ノ特有財産ヲ危険ニ置クトキハ婦ハ自ラ其財産ヲ管理セント請求スルコトヲ得 第五百五十四条 婦又ハ入夫カ婚姻ノ儀式ノ時ニ於テ負ヘル債務ノ元本及ヒ婚姻中ニ包括権原ヲ以テ財産ヲ取得スルニ因リテ負ヘル債務ノ元本ニ付テハ債権者ハ婦又ハ入夫ノ特有財産ニ対シテ権利ヲ行フコトヲ得 第五百五十五条 婦又ハ入夫カ自己ノ名ヲ以テ婚姻中ニ生セシメタル債務ニ付テハ債権者ハ婦又ハ入夫ノ特有財産ニ対シテ権利ヲ行フコトヲ得 第五百五十六条 婦ノ名ヲ以テ生セシメタル債務ニ付テハ債権者ハ其債務カ家事管理ノ為メ生シタルコトヲ証スルトキニ限リ夫ニ対シテ其弁済ヲ請求スルコトヲ得 入夫ノ名ヲ以テ生セシメタル債務ニ付テハ債権者ハ其債務ノ財産管理ノ為メニ生シタルコトヲ証スルトキニ限リ戸主タル婦ニ対シテ其弁済ヲ請求スルコトヲ得 第五百五十七条 夫ハ婦カ家事管理ノ為メニ生セシメタル債務又戸主タル婦ハ入夫カ財産管理ノ為メニ生セシメタル債務ニ付テハ其全額ヲ負担ス 第五百五十八条 婦又ハ入夫ノ特有財産タルコトヲ証セサル財産ハ総テ夫又ハ戸主タル婦ニ属スルモノト看做ス 第五百五十九条 何人ヲ問ハス婦又ハ入夫ノ特有財産タルコトヲ証スルニハ総テノ証拠方法ヲ用井世評ト雖モ之ヲ用ユルコトヲ得 然レトモ入夫カ自己ノ特有財産タルコトヲ証スルニハ普通ノ証拠方法ヲ用ユ可シ 第二節 婚資 第五百六十条 婚資トハ婚姻ニ原因スル費用ニ供スル為メ婚資ノ名義ヲ以テ婦タラントスル者カ設定シ又ハ第三者カ婦タラントスル者ニ贈与スル財産ヲ謂フ 第五百六十一条 婦ハ婚姻ノ儀式ノ時ニ於テ現ニ所有シ及ヒ将来ニ所有ス可キ財産又ハ現ニ所有シ若クハ将来ニ所有ス可キ財産又ハ或種若クハ特定ノ財産ヲ以テ婚資ヲ設定スルコトヲ得 総テノ財産ヲ婚資ト為スノ合意ハ将来ニ所有ス可キ財産ヲ包含セサルモノト看做ス 第五百六十二条 婚資ノ設定者ハ其目的物ニ付キ担保ノ義務ヲ負フ 第五百六十三条 婚資ハ弁済期限ノ定メ無キトキニ限リ婚姻ノ儀式ノ日ヨリ当然利息ヲ生ス 第五百六十四条 婦ハ其設定シタル婚資ノ所有権ヲ保有ス 第三者ノ設定シタル婚資ハ如何ナル財産契約ノ制ニ於ケルモ婦ノ特有財産ト為ル 第五百六十五条 婦ノ設定シタルト第三者ノ設定シタルトヲ問ハス婚資ノ収益ハ婚姻中ノ費用ニ之ヲ供ス 第三者ノ設定シタル婚資カ用益権又ハ年金権ナルトキハ其果実又ハ年金ニ付テモ亦同シ 此用益権及ヒ年金権ハ婚姻ノ解消ト共ニ消滅ス但別段ノ合意アルトキハ此限ニ在ラス 第五百六十六条 婚資ヲ設定シタル第三者ハ婦カ随意ニ其所得ノ一分ヲ使用スルコトヲ得ルヲ約款ト為スコトヲ得 婚資ヲ設定シタル婦モ亦自己ノ為メニ随意ノ使用ヲ保有スルコトヲ約款ト為スコトヲ得 本条ノ場合ニ於テ使用スルコトヲ得ヘキ部分ニシテ使用セサリシモノハ婦ノ特有財産ト為ル 第五百六十七条 婚資ノ管理ハ夫ニ属ス 第五百六十八条 婚資ハ婚姻中ニ譲渡シ又ハ担保ニ供スルコトヲ得ル約款アル場合ヲ除クノ外其動産タルト不動産タルトヲ問ハス夫婦ノ一致ニ出ツル承諾及ヒ区裁判所ノ許可アルニ非サレハ之ヲ譲渡シ又ハ之ヲ担保ニ供スルコトヲ得ス 裁判所ハ明ニ必要又ハ便益アリト認ムル場合ニ非サレハ許可ヲ与フルコトヲ得ス 第五百六十九条 裁判所ノ許可ヲ得テ婚資ニ換ヘ取得シタル物又ハ金額ハ代位婚資トス但其金額ハ不動産又ハ確実ナル記名証券ニ換フ可シ 金額ヲ以テ設定スルコトヲ約シタル婚資ノ弁済ノ為メ引渡シタル動産又ハ不動産ハ当然代位婚資トス 第五百七十条 婚資ヲ譲渡シ又ハ担保ニ供スルノ行為ハ財産契約又ハ裁判所ノ之ヲ許スニ非サレハ夫婦ノ一致ニ出ツル承諾アルトキト雖モ無効トス 第五百七十一条 前条ノ無効ハ婦及ヒ其相続人ヨリ婚姻ノ解消後ト雖モ之ヲ請求シ又夫ハ婚姻中ニ之ヲ請求スルコトヲ得 然レトモ婚資ノ譲渡又ハ担保ノ行為ヲ承諾シタル夫又ハ婦ハ其合意中ニ目的物ノ婚資タルコトヲ明言セサリシトキハ譲受人又ハ債権者ニ対シテ損害賠償ノ責ニ任ス 第五百七十二条 婚資ノ管理者ハ用益者ノ如ク収益ノ負担タル修繕其他ノ義務ヲ負フ 管理者ハ婚資ニ関シ自己ノ過失ニ因リテ生セシメタル毀損及ヒ第三者ノ為メニ生シタル時効ニ付テハ其責ニ任ス 第五百七十三条 婚資タル財産ニ付テハ夫婦、設定者及ヒ公証人ノ署名捺印シタル目録ニ其詳細ヲ点記シ且婚資設定ノ旨ヲ婚姻証書ニ記載ス可シ此記載ヲ為シタル後ニ非サレハ第三者ニ対シテ婚資設定ノ効ヲ生セス 記載ヲ為シタル後ト雖モ無記名ノ動産ヲ譲渡シ又ハ担保ニ供シタル場合ニ於テハ譲受人又ハ債権者ノ善意ナルトキニ限リ其譲渡又ハ担保ハ有効トス 第五百七十四条 婚資ハ前条ノ規定ニ従ヒテ其設定ノ記載ヲ為シタル後ハ婚姻中ニ何等ノ義務ヲモ負フコト無シ又債権者ノ差押ヲ受クルコト無シ 然レトモ婚姻ノ儀式前ニ生シタル債務ノ債権者ハ債務者タル婦ノ設定シタル婚資ヲ差押フルコトヲ得 第五百七十五条 婚資ノ所有者ハ管理者ニ対シヲ有スル婚資取回ノ債権ヲ他人ニ譲渡スコトヲ得ス 第五百七十六条 夫カ婚資ヲ危険ニ置クトキ又ハ管理者タルノ義務ヲ尽サ丶ルトキハ婦ハ自ラ管理ヲ為シ又ハ他人ヲシテ之ヲ為サシムルコトヲ区裁判所ニ求ムルコトヲ得 夫婦カ相共ニ婚資ヲ危険ニ置クトキハ婚資ヲ設定シタル第三者ヨリ相当ノ処置ヲ区裁判所ニ求ムルコトヲ得 第五百七十七条 婚姻ノ解消ニ因リテ婚資ノ返還ヲ請求スル者ハ管理者ノ婚資ヲ領収シタルコトヲ証ス可シ 然レトモ婚資弁済ノ期限後満十个年間婚姻ノ継続シタルトキハ管理者ノ婚資ヲ領収シタルコトヲ証セスシテ其返還ヲ請求スルコトヲ得但管理者カ弁済ヲ得ル為メ行ヒタル手続ノ効ナカリシコトヲ証スルトキハ此限ニ在ラス 第五百七十八条 婦カ自ラ設定シタル婚資ニ付テハ通常ノ証拠方法ニ従フニ非サレハ前条第一項ノ領収ヲ証スルコトヲ得ス然レトモ第三者ノ設定シタル婚資ニ付テハ証人ニ依リ又ハ推定ヲ以テ其領収ヲ証スルコトヲ得 第五百七十九条 管理者カ現物ヲ以テ返還ス可キ婚資ニ付テハ婚姻ノ解消後直チニ之ヲ返還ス可ク又対価物ヲ以テ返還ス可キ婚資ニ付テハ婚姻ノ解消後満一个年内ニ之ヲ返還ス可シ 第五百八十条 婚資ハ婚姻ノ解消シタル日ヨリ当然所有者ノ為メニ果実及ヒ利息ヲ生ス