第一編 人事
第一章 私権ノ享有及ヒ行用
第一条 何人ト雖モ活テ出生シタルトキハ私権ヲ享有ス
第二条 胎内ニ在ル子ト雖モ其利益ヲ保護スルニ付テハ既ニ出生シタル者ト看做ス
第三条 何人ト雖モ法律ニ定ムル無能力ノ場合ニ在ラサル限リハ躬ラ其私権ヲ行用スルコトヲ得
第四条 私権ノ行用ニ関スル成年即チ適法ノ年齢ハ満二十年ト定ム但シ法律ニ特別ノ規則アルトキハ此限ニ在ラス
第五条 外国人ハ法律ニ明瞭ノ禁止アルモノヲ除クノ外私権ヲ享有ス
第六条 無形人ハ公私ヲ問ハス法律ノ之ヲ認許スルニ非サレハ成立スルコトヲ得ス又法律ノ之ニ付与スルモノヲ除クノ外私権ヲ享有スルコトヲ得ス其設立ノ条件及ヒ其権利ハ此法律及ヒ特別法ニ之ヲ規定ス
第七条 法律ハ外国国家ヲ除クノ外外国無形人ノ成立ヲ認許セス但シ条約又ハ特許アルトキハ此限ニ在ラス
其成立ヲ認許シタル外国無形人ハ帝国ニ成立スル同種ノ者ト同一ノ権利ヲ享有ス
第二章 国民分限
第一節 国民分限ノ獲得
第八条 日本人ノ子ハ外国ニ生ルト雖モ日本人トス
父母其分限ヲ異ニスルトキハ父ノ分限ヲ以テ其子ノ分限ヲ定ム
父ノ知レサルトキハ子ハ其母ノ分限ヲ承続ス
父母共ニ知レサルトキハ帝国ニ生レタル子ハ日本人トス
第九条 左ノ場合其一ニ在ル子ハ日本人ノ分限ヲ撰択スルコトヲ得
一 父外国人タリト雖モ母日本人タルトキ
二 外国人ノ子タリト雖モ帝国ニ生レタルトキ
三 日本人ノ分限ヲ失ヒタル者ノ子ナルトキ
第十条 日本人ノ分限ヲ撰択セント欲スル子ハ本国法律ニ従ヒ其成年ニ至リシ時ヨリ一年内ニ其意思ヲ申述シ且ツ其申述ヨリ一年内ニ其住所ヲ帝国ニ定ム可シ
成年ノ後ニ至リ外国人ノ認知シタル庶出子ハ其認知ヨリ一年内ニ其意思ノ申述ヲ為スコトヲ得
第十一条 日本人ト婚姻スル外国ノ女ハ当然日本人ノ分限ヲ獲得シ婚姻解離ノ後ト雖モ其分限ヲ保有ス
第十二条 日本人ノ養子ト為ル外国人ハ当然日本人ノ分限ヲ獲得ス
第十三条 外国人ハ帰化ニ依リ日本人ノ分限ヲ獲得スルコトヲ得其条件及ヒ法式ハ特別法ヲ以テ之ヲ規定ス
帰化人ノ妻子ハ外国人ノ分限ヲ保有スト雖モ其成年ナルトキハ帰化ノ日ヨリ又其未成年ナルトキハ成年ヨリ一年内ニ第十条ニ従ヒ日本人ノ分限ヲ撰択スルコトヲ得
第十四条 帰国ノ意ナク帝国ニ其家ヲ定メタル外国人ハ十年ノ後当然日本人ノ分限ヲ獲得ス其妻子ハ前条第二項ニ従ヒ日本人ノ分限ヲ撰択スルコトヲ得
第二節 国民分限ノ喪失及ヒ回復
第十五条 日本人ハ左ノ場合ニ於テ其分限ヲ失フ但シ刑法第百二十九条ノ適用ヲ妨ケス
一 帰国ノ意ナク外国ニ其家ヲ定メタルトキ
十年以上外国ニ住所ヲ有スル日本人ハ帰国ノ意ナシト推測ス但シ反対ノ挙証ヲ妨ケス
二 随意ニ外国人ノ分限ヲ獲得シタルトキ
三 帝国政府ノ允許ナクシテ外国政府ノ官職ヲ受ケ又ハ外国ノ軍隊ニ入リタルトキ
日本人ノ分限ヲ失ヒタル者ノ妻子ハ其分限ヲ保有ス
第十六条 前条ノ場合ニ於テ日本人ノ分限ヲ失ヒタル者ハ帝国政府ノ允許ヲ得タル上帰国シテ其意思ヲ申述シ且ツ一年内ニ其住所ヲ帝国ニ定ムルトキハ其分限ヲ回復ス
第十七条 外国人ト婚姻スル日本ノ女ハ当然日本人ノ分限ヲ失フ
然レトモ婚姻解離ノ後帝国ニ現住シ又ハ復帰シ且ツ帝国ニ其住所ヲ定ムルコトヲ申述スルトキハ其分限ヲ回復ス
第三節 国民分限ノ変更ノ法式及ヒ効果
第十八条 国民分限ノ撰択又ハ回復ニ関スル申述ハ帝国ニ在リテハ現住地ノ身分取扱役所又外国ニ在リテハ帝国ノ公使館又ハ領事館ニ之ヲ為ス可シ
其申述ハ公正ニシテ特別ナル委任状ヲ与ヘ代理人ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得
第十九条 国民分限ノ変更ハ如何ナル場合ニ於テモ将来ニ非サレハ其効果ヲ生セス但シ兵役ニ服スルハ此限ニ在ラス
第二十条 国民分限ハ出生ノ時ヲ以テ之ヲ定ム然レトモ懐胎ヨリ出生マテノ間父又ハ母ノ分限変更シタルトキハ子ハ第二条ノ規則ニ従ヒ日本人ノ分限ヲ保有ス
第三章 親属
第一節 血属及ヒ姻属
第二十一条 血属トハ共同ノ始祖ヨリ出テタル者ノ間ニ連結セル血統ノ関係ヲ云フ
此関係ハ婚姻ヨリ起ルト否トニ従ヒ正出ノ血属又ハ庶出ノ血属ト為ス
法律ハ七親等ノ外ニ血属ノ関係ヲ認許セス
第二十二条 血属ノ遠近ハ世数ヲ以テ之ヲ定メ一世ヲ以テ一親等ト為ス
親等ノ連続スルヲ親系ト為ス彼ヨリ此ニ直降スル者ノ親系ヲ直系ト云ヒ其直降セスシテ共同ノ始祖ニ出ツル者ノ親系ヲ傍系ト云フ
直系ヲ分テ尊属及ヒ卑属ト為ス尊属親トハ自己ノ出ツル所ノ血族ヲ云ヒ卑属親トハ自己ヨリ出ツル所ノ血族ヲ云フ
第二十三条 父ノ血統ノ連結セル者ヲ父系ノ血族ト云ヒ母ノ血統ノ連結セル者ヲ母系ノ血族ト云フ
第二十四条 直系ニ於テハ両人間ノ世数ヲ計算シテ親等ヲ定ム
傍系ニ於テハ血族ノ一人ヨリ共同ノ始祖ニ遡リ又其始祖ヨリ他ノ一人ニ降リ其間ノ世数ヲ計算シテ親等ヲ定ム
第二十五条 縁組ハ養子ト養親及ヒ其血族トノ間ニ民法上血族ニ同シキ関係ヲ生ス
夫婦ノ一方ト他ノ一方ノ子トノ関係ハ親子ニ准ス
第二十六条 姻属トハ婚姻ニ因リ夫婦ノ一方ト其配偶者ノ血族トノ間ニ生スル関係ヲ云フ
夫婦ノ一方ノ血族ハ其親系及ヒ親等ニ於テ配偶者ノ姻族トス
姻属ノ関係ハ夫婦ノ一方死去ノ場合ヲ除クノ外婚姻ノ解離ニ因リ止息ス
第二節 養料ノ義務
第二十七条 直系ノ血族ハ正出ト庶出トヲ分タス躬ラ生活スルコト能ハサルトキハ其原由如何ヲ問ハス互相ニ養料ヲ給スル義務ヲ負担ス
第二十八条 兄弟姉妹ノ間及ヒ伯叔父母ト甥姪トノ間ハ其正出ト庶出トヲ分タス廃疾其他本人ノ責ニ帰セサル事故ニ因リ躬ラ生活スルコト能ハサル場合ニ限リ互相ニ養料ヲ給スル義務ヲ負担ス
第二十九条 直系ノ姻族ハ前条同一ノ条件ニ従ヒ互相ニ養料ヲ給スル義務ヲ負担ス
第三十条 養料ノ義務ヲ負担スヘキ者ノ順序左ノ如シ
第一 卑属親
第二 尊属親
第三 兄弟姉妹
第四 伯叔父母甥姪
第五 卑属ノ姻族
第六 尊属ノ姻族
卑属親又ハ尊属親ノ間ハ其親等ノ最近キ者養料ノ義務ヲ負担ス姻族ノ間モ亦同シ
養料ヲ受ク可キ者ノ順序モ亦前両項ノ例ニ従フ
第三十一条 養料ハ之ヲ受ク可キ者ノ需用ト之ヲ給ス可キ者ノ資産トニ応シテ其額ヲ定ム
第三十二条 養料ヲ給ス可キ者ハ或ハ定期ニ金穀ヲ支給シ或ハ其家ニ引取リ養フコトヲ得但シ裁判所ハ場合ニ依リ其方法ヲ定ムルコトアルヘシ
第三十三条 養料ヲ給ス可キ同順序ノ者数人アルトキハ各其資産ニ応シテ之ヲ負担ス此場合ニ於テ他人ノ負担ス可キ養料ヲ弁償シタル者ハ其負担者ヲシテ之ヲ償還セシムルコトヲ得
第三十四条 判決ニ因リテ養料ヲ受ク可キ者又ハ之ヲ給ス可キ者ノ資産ニ変更アリタルトキハ其増減ヲ地方裁判所ニ請求スルコトヲ得
養料ヲ給ス可キ同順序ノ者数多アリテ其各自ノ資産ニ変更アリタルトキ亦同シ
第三十五条 養料ハ他人ニ譲渡スコトヲ得ス又養料ニ原由スル債務ノ為メニ非サレハ之ヲ差押フルコトヲ得ス
第三十六条 養料ヲ給シタル者ハ之ヲ取還スコトヲ得ス
然レトモ第三者代理又ハ事務管理ニテ養料ヲ給セシトキハ其義務ヲ負担ス可キ者ニ対シ又其負担者無資力ト為リタルトキハ養料ヲ受ケタル本人ニ対シ之ヲ取還スコトヲ得
第三十七条 養料ノ義務ハ判決ニ基クトキト雖モ左ノ場合ニ於テ止息ス
一 養料ヲ給ス可キ者死去シ又ハ之ヲ給スルコト能ハサルトキ
二 養料ヲ受ク可キ者死去シ又ハ躬ラ生活スルコトヲ得ルトキ
此外姻族ノ間養料ノ義務ハ左ノ場合ニ於テ止息ス
一 養料ヲ受ク可キ者再婚シタルトキ
二 配偶者及ヒ其共同子ノ死去シタルトキ
第四章 婚姻
前置条例
第三十八条 婚姻ニ二種アリ普通婚姻及ヒ特例婚姻トス
婦其夫ノ氏ヲ称シ其身分ニ従フトキハ之ヲ普通婚姻ト云ヒ反対ノ場合ニ於テハ之ヲ特例婚姻ト云フ
特例婚姻ハ双方ノ明瞭ナル意思ニ出ツルコトヲ要ス其意思ニ疑ヒアルトキハ普通婚姻ト看做ス
本章ノ条例ハ特別ニ規定スルモノヲ除クノ外二種ノ婚姻ニ適用ス
第三十九条 婚姻ヲ為スヘキ約束ハ其婚姻ヲ為スノ義務ヲ生セス然レトモ約束者ノ一方正当ノ理由ナクシテ其履行ヲ拒ムトキハ他ノ一方其約束ヲ信シテ為シタル実費賠償ノ責ニ任ス
第一節 婚姻ヲ為スニ必要ナル条件
第四十条 男子ハ満十七年女子ハ満十四年ノ齢ニ至ラサレハ婚姻ヲ為スコトヲ得ス
第四十一条 配偶者アル者ハ重子テ婚姻ヲ為スコトヲ得ス
第四十二条 夫ノ失踪ニ原由スル離婚ノ場合ヲ除クノ外女子ハ前婚解離ノ後四个月内ニハ再婚ヲ為スコトヲ得ス
此制禁ハ其分娩シタル日ヨリ止息ス
第四十三条 奸通ニ原由スル離婚ノ場合ニ於テハ離婚ノ裁判宣告ヲ受ケタル曲者ハ其相奸者ト婚姻ヲ為スコトヲ得ス
第四十四条 直系ニ於テハ尊属親ト卑属親トノ間正出ト庶出トヲ分タス婚姻ヲ禁ス直系ノ姻族ノ間亦同シ
第四十五条 傍系ニ於テハ夫婦ト為ルヘキ双方ノ一方共同ノ始祖ト一親等ナルトキハ其正出ト庶出トヲ分タス婚姻ヲ禁ス
第四十六条 養子ト養親其尊属親及ヒ配偶者トノ間又養親ト養子ノ配偶者及ヒ卑属親トノ間婚姻ヲ禁ス
第四十七条 成年ニ至ラサル男女ハ父母ノ承諾ヲ得ルニ非サレハ婚姻ヲ為スコトヲ得ス
父母其意ヲ異ニスルトキハ父ノ許諾ヲ以テ足レリトス
父母ノ中一方死去シ又ハ其意ヲ表スルコト能ハサルトキハ他ノ一方ノ許諾ヲ以テ足レリトス
第四十八条 父母共ニ死去シ又ハ其意ヲ表スルコト能ハサルトキハ父系ノ祖父母ノ許諾ヲ請フ可シ
祖父母其意ヲ異ニスルトキハ祖父ノ許諾ヲ以テ足レリトス
祖父母ノ中一人死去シ又ハ其意ヲ表スルコト能ハサルトキハ他ノ一人ノ許諾ヲ以テ足レリトス
第四十九条 父母及ヒ父系ノ祖父母悉ク死去シ又ハ其意ヲ表スルコト能ハサルトキハ親族会ノ許諾ヲ受ク可シ
第五十条 父母又ハ父ノミニ対シ親子ノ分限確定セル庶出子ハ其父ノ許諾ヲ得ルニ非サレハ婚姻ヲ為スコトヲ得ス
母ノミニ対シ親子ノ分限確定セル庶出子ハ其母ノ許諾ヲ受ク可シ
右二項ノ庶出子ニ付テモ亦前二条ヲ適用ス
親子ノ分限確定セサル庶出子ハ親族会ノ許諾ヲ受ク可シ
第五十一条 養子ハ婚姻ヲ為スニ付第四十七条及ヒ第四十八条ニ従ヒ養家ノ父母祖父母ノ許諾ヲ請フ可シ実家ノ父母祖父母ノ許諾ヲ要セス
養子ノ婚姻ニ付テモ亦第四十九条ヲ適用ス
第二節 婚姻前ノ法式
第五十二条 婚姻ノ公式ヲ行フノ前身分取扱人ハ婚姻ノ公告ヲ為ス可キモノトス
公告ハ双方、其父、其後見人又ハ此等ノ者ノ特別代理人ノ請求ニ依リ之ヲ為ス可シ
第五十三条 公告ハ身分取扱役所ノ門前ニ公告書ヲ満五日間掲示スルモノトス
公告書ニハ双方ノ氏名、年齢、族称、職業、其出生地、住所及ヒ居所其父母ノ氏名、族称、職業及ヒ住所又ハ居所、婚姻ノ公式ヲ行フヘキ地並ニ公告ノ年月日ヲ記載ス可シ
此外特例婚姻及ヒ婚姻ニ由ル縁組ニ関スルトキハ公告書ニ其旨ヲ記載ス可シ
第五十四条 公告ハ双方ノ居所ノ地並ニ住所ノ地ニ於テ之ヲ為ス可シ但シ重大ノ事由アルトキハ地方裁判所検事ハ公告ノ日限及ヒ婚姻ノ公式ヲ行フ地外ノ公告ヲ免除スルコトヲ得
身分取扱人ハ双方ノ定メタル当日ニ公告ヲ為ス可シ
第五十五条 婚姻ノ公式ハ其公告ノ日限ヲ過キタル後ニ非サレハ之ヲ行フコトヲ得ス但シ公告ヲ免除シタルトキハ格別ナリトス
第五十六条 公告ノ日限ノ後六个月ヲ過キタルトキハ更ニ公告ヲ為スニ非サレハ婚姻ノ公式ヲ行フコトヲ得ス
第五十七条 婚姻ノ公式ヲ行フノ前双方左ノ書類ヲ身分取扱人ニ差出ス可シ
一 出生証書ノ謄本
二 前婚ノ解離ヲ証スル死去証書又ハ裁判宣告書ノ謄本
三 尊属親若クハ親族会ノ許諾書並ニ尊属親ノ死去シ又ハ其意ヲ表スル能ハサルコトヲ証スル書類
四 婚姻公告ノ証明書又ハ公告ニ関スル免除書
五 故障ナキノ証明書又ハ故障排斥ノ判決書ノ謄本
第五十八条 双方又ハ一方其出生証書ヲ呈示スルコト能ハサルトキハ其出生ノ地、住所若クハ居所ノ区裁判所判事ノ授付シタル保証書ヲ以テ出生証書ニ代用スルコトヲ得
保証書ハ男女ヲ問ハス又血族ト否トヲ問ハス三名ノ証人左ノ諸件ニ付区裁判所判事ニ為シタル申述ヲ記載ス
一 本人ノ氏名、族称、職業、住所及ヒ居所並ニ其父母分明ナルトキハ其氏名、族称、職業、住所及ヒ居所
二 本人出生ノ地並ニ年、月、日
三 本人出生証書ヲ呈示スルコト能ハサル原因及ヒ証人其事実ヲ聞知シタル縁由
第五十九条 尊属親ハ自身出席シテ許諾ヲ与フル場合ノ外本人並ニ其配偶スヘキ他ノ一方ノ氏名、族称、職業、住所又ハ居所ヲ明記シタル公正証書ヲ以テ許諾ヲ与フ可シ且ツ其許諾書ニハ許諾ヲ与フル者ノ氏名、族称、職業、住所及ヒ其親等ヲ記載ス可シ
親族会ノ許諾ハ右同一ノ記載アル決議書ヲ以テ之ヲ証ス可シ
第三節 婚姻ノ故障
第六十条 父母其他尊属親ハ其許諾ヲ与フヘキ順序ニ従ヒ婚姻ヲ為スヘキ卑属親ノ年齢ニ拘ラス其婚姻ニ故障ヲ為スコトヲ得
第六十一条 後見人ハ未成年者カ親族会ノ許諾ヲ得スシテ婚姻セントスルトキハ其婚姻ニ故障ヲ為スコトヲ得
又親族会ハ代理人ニ委任シテ其婚姻ニ故障ヲ為サシムルコトヲ得
第六十二条 重婚セントスル者ノ配偶者ハ其婚姻ニ故障ヲ為スコトヲ得
配偶者其意ヲ表スルコト能ハサルトキハ尊属親ハ故障ヲ為スコトヲ得
第六十三条 第四十二条ニ違背シテ寡婦再婚セントスルトキハ亡夫ノ尊属親及ヒ相続人ハ其婚姻ニ故障ヲ為スコトヲ得
離婚又ハ婚姻無効ノ場合ニ於テ婦四ヶ月内ニ再婚セントスルトキハ前夫ハ其婚姻ニ故障ヲ為スコトヲ得若シ前夫死去シ又ハ其意ヲ表スルコト能ハサルトキハ尊属親及ヒ相続人ハ故障ヲ為スコトヲ得
第六十四条 検事婚姻ノ公式ヲ行フノ妨碍ト為ルヘキ法律上ノ原由ヲ聞知シタルトキハ其婚姻ニ故障ヲ為ス可シ
第六十五条 婚姻ノ故障書ニハ故障者ノ身分ト尊属親ヲ除クノ外故障ヲ為ス法律上ノ原由トヲ明記シ並ニ婚姻ノ公式ヲ行フヘキ地ニ臨時住所ヲ撰定シタルコトヲ記載ス可シ之ニ違フトキハ其故障ハ無効トス
第六十六条 故障書ハ執達吏ヲ以テ双方並ニ婚姻ノ公式ヲ行フヘキ身分取扱人ニ送達ス可シ身分取扱人ハ其正本ニ認印シ且ツ即時ニ公告簿ノ欄外ニ簡略ノ記載ヲ為ス可シ
第六十七条 故障ヲ為スノ権利ヲ有スル者適法ニ故障ヲ為シタルトキハ身分取扱人ハ故障ノ随意取消又ハ排斥ノ裁判確定マテハ婚姻ノ公式ヲ停止ス可シ
第六十八条 故障ノ随意取消ハ故障者自身婚姻ノ公式ニ出席シ若クハ公証人ノ証書ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得
故障排斥ノ訟求ハ始審並ニ控訴ニ於テ其訟求ヨリ十日内ニ審理ヲ始ム可シ
第六十九条 故障排斥ノ裁判宣告アリタルトキハ故障者ハ尊属親及ヒ検事ヲ除クノ外損害賠償ノ責ニ任ス故障排斥ノ裁判宣告ヲ受ケタル者ハ再ヒ故障ヲ為スコトヲ得ス
第四節 婚姻ノ公式
第七十条 婚姻ノ公式ハ双方ノ中一方ノ住所又ハ居所ノ身分取扱役所ニ於テ身分取扱人ノ面前ニテ公ケニ行フ可シ
第七十一条 公告ノ日限過キタル後双方ノ定メタル当日ニ身分取扱人ハ証人二名ノ前ニ於テ双方本人ニ対シ先ツ出生証書ヲ朗読シ次キニ夫婦財産契約ヲ為シタルヤ否ヤヲ質問シ若シ之ヲ為シタルニ於テハ其契約ノ日付及ヒ之ヲ作リタル公証人ノ氏名、居所ヲ申述セシメ次キニ本章第九十九条、第百条及ヒ第百一条ヲ読聞カセ其後双方ニ対シ各別ニ夫婦ト為ルヤヲ問ヒ其承諾ヲ聴取ル可シ
此公式ヲ行ヒタル後即時ニ身分証書ノ章ニ定ムル規則ニ従ヒ婚姻証書ヲ作ル可シ
第七十二条 特例婚姻ニ於テハ其公式ヲ行フ時ニ双方其旨ヲ身分取扱人ニ申述ス可シ其申述ハ婚姻証書ニ之ヲ記載スルコトヲ要ス
第七十三条 婚姻ノ承諾ハ口頭ニテ之ヲ与フ可シ但シ已ムコトヲ得サルトキハ筆記又ハ形容ヲ以テ之ヲ為スコトヲ妨ケス
婚姻ノ承諾ハ単純ナルコトヲ要シ期限及ヒ条件ハ無効トス
第七十四条 正当ノ原由アリテ双方若クハ一方身分取扱役所ニ出席スルコト能ハサルトキハ身分取扱人ハ其管内ニ限リ書記ト共ニ其家ニ出張シテ証人四名ノ前ニ於テ第七十一条ニ従ヒ婚姻ノ公式ヲ行フコトヲ得
第七十五条 双方ノ住所又ハ居所ニ非サル地ニ於テ婚姻ノ公式ヲ行フノ必要アルトキハ管轄身分取扱人ハ其地ノ身分取扱人ニ其嘱託ヲ為スコトヲ得
第七十六条 身分取扱人ハ婚姻ノ公式ヲ行フノ妨碍ト為ルヘキ法律上ノ原由アルニ非サレハ其公式ヲ行フコトヲ拒ムコトヲ得ス
身分取扱人婚姻ノ公式ヲ行フコトヲ拒ムトキハ其理由ヲ明記シタル拒絶書ヲ授付ス可シ
其拒絶ヲ受ケタル者之ヲ不当ナリト思料スルトキハ地方裁判所ニ抗告シテ其取消ヲ求ムルコトヲ得裁判所ハ要急事件トシテ之ヲ裁判ス可シ
第五節 日本人外国ニ於テ並ニ外国人帝国ニ於テ為ス婚姻
第七十七条 外国ニ於テ婚姻ヲ為サントスル日本人ハ帝国ニテ有セシ最後ノ住所又ハ居所ニ於テ婚姻ノ公告ヲ為ス可シ
第七十八条 外国ニ於テ日本人ノミノ間又ハ日本人ト外国人トノ間婚姻ヲ為ストキハ其国ニ慣用スル規則ニ従ヒ其公式ヲ行フコトヲ得但シ本章第一節ニ定メタル条件ニ違背セサルコトヲ要ス
第七十九条 日本人ノミノ間婚姻ヲ為ストキハ其国ニ在ル帝国ノ公使館又ハ領事館ニ於テ帝国ノ法律ニ従ヒ婚姻ノ公式ヲ行フコトヲ得
第八十条 外国人帝国ニ於テ婚姻ヲ為サントスルトキハ其能力ハ本国ノ法律ニ従フ但シ第四十一条乃至第四十六条ノ条件ニ違背セサルコトヲ要ス
外国人ハ其本国ノ相当官署ノ認定書ヲ以テ婚姻ヲ為スニ妨碍ナキコトヲ証スルニ非サレハ身分取扱人其公式ヲ行フコトヲ得ス
第六節 婚姻成立ノ証拠
第八十一条 何人ト雖モ婚姻成立ノ証拠ヲ挙クルニ非サレハ婚姻ヨリ生スル民法上ノ効果ヲ求ムルコトヲ得ス
婚姻成立ノ証拠ハ婚姻証書ヲ以テ之ヲ為ス可シ但シ第四百五十六条ニ規定スルモノハ此限ニ在ラス
第八十二条 夫婦ノ間ニ於ケルト夫婦ト第三者トノ間ニ於ケルトヲ問ハス婚姻ノ効果ヲ求ムル為メニ身分ノ占有ノミヲ以テ婚姻ノ成立ヲ証スルコトヲ得ス
然レトモ身分ノ占有アリテ婚姻証書ニ符合スルトキハ其証書ニ違式アリト雖モ占有ヲ以テ其証書ノ無効ヲ補フ
第八十三条 父母共ニ死去シ又ハ其意ヲ表スルコト能ハサルニ因リ其子父母ノ婚姻証書ヲ呈示スルコトヲ得スト雖モ出生証書ニ反セサル正出子ノ身分ヲ占有スルトキハ父母常ニ公然夫婦ノ如ク生活シタルコトヲ以テ其婚姻ヲ証スルコトヲ得
第八十四条 婚姻証書ヲ増減毀棄匿奪シ若クハ片紙ニ記載シタル場合ニ於テ刑事又ハ民事ノ訴訟ニ依リ婚姻ノ成立ヲ認メタル判決ハ之ヲ身分証書ノ簿冊ニ記載シテ婚姻証書ニ代用スルコトヲ得
第七節 婚姻ノ不成立及ヒ無効ノ請求
第八十五条 人違ニ由リ若クハ心神喪失ノ時為シタル婚姻ハ不成立トス
又身分取扱人ノ立会ナクシテ為シタル婚姻ハ不成立トス
婚姻ノ不成立ハ何人ニ限ラス何時ニテモ訴権又ハ抗弁方法ニ依リ之ヲ申立ツルコトヲ得
第八十六条 第四十条、第四十一条、第四十三条、第四十四条、第四十五条及ヒ第四十六条ニ違ヒ婚姻ヲ為シタルトキハ双方、尊属親、親族会若クハ現実ナル利益ヲ有スル者ヨリ何時ニテモ其無効ヲ請求スルコトヲ得
同上ノ場合ニ於テ検事ハ夫婦ノ存生中ニ限リ職権ヲ以テ婚姻ノ無効ヲ請求スルコトヲ得
第八十七条 双方若クハ一方ノ適齢ナラサル婚姻ノ無効ハ適齢ナル一方及ヒ不適齢ノ事由ヲ知リ許諾シタル尊属親若クハ親族会ヨリ之ヲ請求スルコトヲ得ス
又不適齢ニ付婚姻ノ無効ヲ請求スルノ権利ハ左ノ場合ニ於テ消滅ス
一 適齢ナラサリシ者適齢ニ至リ明瞭ニ婚姻ヲ確認シ若クハ三个月ヲ過キタルトキ
二 婦独リ適齢ナラスシテ無効ノ請求アリト雖モ其懐胎シタルトキ
三 夫適齢ナラスシテ婦ノ懐胎シタルトキ但シ婦ノ奸通ヲ証スルトキハ此限ニ在ラス
第八十八条 重婚ニ原由スル無効ノ請求アリタル場合ニ於テ双方前婚ノ無効若クハ離婚ヲ主張スルトキハ予メ其実否ヲ裁判ス可シ
前婚ノ配偶者失踪シタルトキハ其失踪中ハ無効訴権ヲ行フコトヲ得ス
第八十九条 管轄ニ非サル身分取扱人ノ前ニ於テ行ヒタル婚姻ハ第八十六条ニ指定シタル者ヨリ其無効ヲ請求スルコトヲ得
無効訴権ハ婚姻ヲ行ヒタル後一个年ヲ過キタルトキハ之ヲ受理ス可ラス
第九十条 第四十七条乃至第五十一条ニ定ムル許諾ナクシテ婚姻ヲ為シタルトキハ婚姻ノ当時許諾ヲ与フ可キ者又ハ之ヲ受ク可キ者ヨリ其無効ヲ請求スルコトヲ得
又許諾アリタルトキト雖モ其許諾ノ暴行若クハ身上ノ錯誤ニ原由シタルトキ亦同シ
第九十一条 前条ノ場合ニ於テ父若クハ祖父婚姻ヲ確認セスシテ死去シ又ハ其意ヲ表スルコト能ハサルトキハ母若クハ祖母無効訴権ヲ行フコトヲ得
婚姻ノ当時許諾ヲ与フ可キ者婚姻ヲ確認セスシテ死去シ又ハ其意ヲ表スルコト能ハサルトキハ法律ニ定ムル順序ニ従ヒ其許諾ヲ与フ可キ者無効訴権ヲ行フコトヲ得
第九十二条 第九十条ノ無効訴権ハ左ノ場合ニ於テ消滅ス
一 配偶者ト婚姻ノ許諾ヲ与フ可キ者トニ対シテハ其許諾ヲ与フ可キ者明瞭又ハ暗黙ノ確認ヲ為シ若クハ婚姻ノ事ヲ知リタル後三个月ヲ過キタルトキ
二 許諾ヲ与フ可キ者ノミニ対シテハ三个月内ナリト雖モ配偶者成年ニ至リ若クハ死去シタルトキ
三 配偶者ノミニ対シテハ成年ニ至リ明瞭又ハ暗黙ノ確認ヲ為シ若クハ三个月ヲ過キタルトキ
此外配偶者無効ノ請求ヲ起シ其訴訟中ニ許諾ヲ与フ可キ者明瞭ノ確認ヲ為ストキハ無効訴権ハ消滅ス
第九十三条 暴行ニ因リ婚姻ヲ承諾シタルトキハ其暴行ヲ受ケタル者ニ非サレハ無効ヲ請求スルコトヲ得ス
暴行ノ査定ハ第八百三十五条以下ノ規則ニ従フ
第九十四条 詐偽ノ為メ身上ノ錯誤ニ陥リ婚姻ヲ承諾シタルトキハ其錯誤ニ陥リタル者ニ非サレハ無効ヲ請求スルコトヲ得ス
第九十五条 前二条ノ場合ニ於テ配偶者其暴行ヲ免脱シ若クハ其錯誤ヲ認知シタル時ヨリ明瞭ノ確認ヲ為シ若クハ一个月間引続キテ同居シタルトキハ婚姻ノ無効ヲ請求スルコトヲ得ス其同居セサル場合ニ於テモ無効訴権ハ一年ヲ以テ消滅ス
第九十六条 婚姻無効ノ訴訟中裁判所ハ夫婦一方ノ請求ニ依リ若クハ職権ヲ以テ夫又ハ婦ニ住家ヲ去ルヘキコトヲ命スルヲ得
第九十七条 無効ノ裁判宣告アリタル婚姻ハ法律ニ特定スルモノヲ除クノ外双方若クハ一方ニ対シテハ其善意ナリシトキニ非サレハ民法上ノ効果ヲ生セス
善意ハ法律上又ハ事実上ノ錯誤ニ原由スルヲ問ハス婚姻ヲ為シタル当時ニ存スルヲ以テ足レリトス
第九十八条 然レトモ無効ノ婚姻ハ其子ニ対シテハ其出生ノ婚姻前後ナルヲ問ハス双方ノ善意ナラサルトキト雖モ常ニ民法上ノ効果ヲ生ス
夫婦共ニ善意ナラサルトキハ裁判所ハ子ノ監護ニ任スヘキ者ヲ定ム可シ
第八節 婚姻ノ効果
第一款 夫婦ノ権利及ヒ義務
第九十九条 夫婦ハ互ニ信実ヲ守リ住居ヲ同クシ相扶助ス可シ
第百条 夫ハ婦ヲ保護シ婦ハ夫ニ聴順ス可シ
夫ハ婦ヲ住居ニ迎待シ婦ハ夫ノ住居ヲ定ムル処ニ随行ス可シ
第百一条 夫婦ハ其資力ニ応シテ婚姻ヨリ生スル一切ノ費用ヲ負担ス可シ
夫ハ婦ニ対シ身分相応ノ給養ヲ為ス可シ
第百二条 正当ノ理由アリテ夫婦ノ一方同居ヲ拒ムトキハ地方裁判所ハ会議局ニ於テ夫婦ノ陳述及ヒ検事ノ意見ヲ聴キ其義務ヲ免スルコトヲ得
裁判所ハ共同子ノ監護及ヒ教育ニ関スル夫婦ノ権利義務並ニ夫婦ノ一方ヨリ他ノ一方ニ支給スル可キ養料ヲ定ム可シ
第百三条 夫婦ノ中正当ノ理由ナクシテ同居ヲ拒ム者ハ子ノ監護及ヒ養料ニ権利ヲ有セス
第二款 婦ノ無能力
第百四条 婦ハ夫ノ允許ヲ得ルニ非サレハ贈与ヲ為シ又ハ受諾シ不動産ヲ移付シ書入シ又ハ質入シ借財ヲ為シ元本ヲ譲渡シ質入シ又ハ領収シ保証ヲ約シ及ヒ使役ノ賃貸ヲ為スコトヲ得ス並ニ右諸般ノ行為ニ関シテ和解ヲ為シ仲裁ヲ受ケ及ヒ訴訟ヲ起スコトヲ得ス
第百五条 夫ノ允許ハ特定又ハ総括ナルコトヲ得但シ総括ノ允許ハ公正証書ヲ以テスルニ非サレハ之ヲ与フルコトヲ得ス
夫ハ夫婦財産契約ニ依リ与ヘタル允許ト雖モ之ヲ廃止スルコトヲ得
第百六条 左ノ場合ニ於テハ婦ハ夫ノ允許ヲ得ルコトヲ必要トセス
一 夫未成年ナルトキ失踪ノ推測アリタルトキ若クハ民事上又ハ刑事上ノ禁治産ヲ受ケタルトキ
二 婦商業ヲ営ムトキ
第百七条 夫其婦ニ允許ヲ与フルコトヲ拒ムトキ若クハ夫ノ不在ニ因リ其允許ヲ請フコトノ困難ナルトキハ婦ハ其住所ノ地方裁判所ノ允許ヲ請求スルコトヲ得
夫ハ場合ニ依リ婦ノ得タル允許ノ廃止ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得
第百八条 夫ハ婦ニ与ヘタル允許ニ因リ一身上ニ義務ヲ負担セス但シ夫婦財産契約ノ効果ニ依リ此規則ニ変更ヲ生スルハ格別ナリトス
裁判所ノ与ヘタル允許ハ夫ノ利益ヲ害スルコトヲ得ス
第百九条 夫又ハ裁判所ノ允許ヲ得スシテ婦ノ為シタル行為ハ無効トス
此無効ハ夫婦及ヒ婦ノ承権人ニ非サレハ之ヲ請求スルコトヲ得ス
第百十条 婦ハ夫ノ允許アルニ非サレハ其行為ノ確認ヲ為スコトヲ得ス
夫ノ与ヘタル確認ハ婦之ヲ了知セサルトキト雖モ夫婦ニ対シテ其効ヲ有ス
婦ノ請求ニ依リ裁判所ノ与ヘタル確認ハ夫ニ対シテ其効ヲ有セス
第百十一条 夫婦ノ間ニ於テ利益ノ相反スル行為ヲ為サントスルトキハ婦ハ裁判所ノ允許ヲ得ルコトヲ必要トス
裁判所ノ允許ヲ得サル行為ノ無効ハ婦又ハ其承権人ニ非サレハ之ヲ請求スルコトヲ得ス
裁判所ハ婦ノ請求ニ依リ其行為ノ確認ヲ為スコトヲ得
第百十二条 夫ニ属スル無効訴権ハ婚姻ノ解離ニ因リ消滅ス
婦又ハ其承権人ニ属スル無効訴権ハ婚姻解離ノ日ヨリ五年ヲ以テ消滅ス
此他第千六十八条第千七十一条第千七十四条第千七十五条第千八十条ハ此無効訴権ニ適用ス
第九節 婚姻ノ解離
第百十三条 婚姻ハ左ノ原由ニ依リ解離ス
一 夫婦ノ一方ノ死去
二 婚姻無効ノ裁判宣告
三 離婚
第十節 罰則
第百十四条 婚姻ノ公告ヲ為サス又ハ証人ノ立会ナクシテ其公式ヲ行ヒタル身分取扱人ハ五円以上五十円以下ノ罰金ニ処ス
第七十七条ノ公告ヲ為サスシテ外国ニ於テ婚姻ヲ行ヒタル者並ニ其婚姻ヲ許諾シタル者ハ右同一ノ罰金ニ処ス
第百十五条 婚姻ノ無効ヲ惹起スヘキ法律上ノ原由アルコトヲ知リテ其公式ヲ行ヒタル身分取扱人ハ一月以上一年以下ノ軽禁錮ニ処シ十円以上弐百円以下ノ罰金ヲ附加ス
第百十六条 双方ノ中婚姻ノ無効ヲ惹起シタル原由ヲ知リテ他ノ一方ニ之ヲ隠秘シタル者ハ一月以上一年以下ノ軽禁錮ニ処シ十円以上二百円以下ノ罰金ヲ附加ス但シ被害者ハ現実ノ損害ヲ証明セスト雖モ其賠償ヲ請求スルコトヲ得
第百十七条 第四十二条ニ違背シテ再婚シタル婦ハ十円以上弐百円以下ノ罰金ニ処ス
配偶者及ヒ身分取扱人前婚ノ存シタルコトヲ了知シタルトキハ右同一ノ罰金ニ処ス
第百十八条 此他本章ノ規則ニ違背シタル身分取扱人ハ其違背ノ如何ナルヲ問ハス弐円以上三十円以下ノ罰金ニ処ス
第五章 離婚
第一節 双方協議ノ離婚
第百十九条 夫婦ハ下ニ定メタル条件及ヒ法式ニ従ヒ其協議ヲ以テ離婚ヲ為スコトヲ得
第百二十条 如何ナル場合ニ於テモ離婚スル夫婦ハ第四章第一節ノ規則ニ従ヒ各其父母又ハ尊属親ノ許諾ヲ得ルコトヲ要ス但シ其死去シ若クハ其意ヲ表スルコト能ハサルトキハ此限ニ在ラス
第百二十一条 協議ヲ以テ離婚セント欲スル夫婦ハ予メ証書ヲ作リ左ノ諸件ヲ定ム可シ
一 離婚ノ予試中夫婦ノ一方移居スヘキ家屋
二 夫又ハ婦ノ資力欠乏スルトキハ予試中其配偶者ヨリ支給スヘキ養料
三 予試中及ヒ離婚ノ後其子ニ関スル処置
四 財産ニ関スル夫婦互相ノ権利ノ分定
第百二十二条 夫婦ハ四十年以上ノ親族又ハ知友二名ヲ同伴シ自身ニテ其住所ノ地方裁判所ニ出テ所長若クハ其指名シタル判事ノ面前ニ於テ其意思ヲ申述シ且ツ左ノ書類ヲ差出ス可シ
一 前条ニ記載シタル証書
二 夫婦ノ出生証書及ヒ婚姻証書
三 共同子ノ出生証書及ヒ死去証書
四 父母又ハ尊属親ノ自身出廷セサル場合ニ於テハ其許諾書又其死去シ又ハ其意ヲ表スルコト能ハサルトキハ死去証書若クハ其事由ヲ証明スル書類
第百二十三条 判事ハ同伴人ノ面前ニ於テ夫婦ニ相当ノ説諭ヲ為シ詳細ニ離婚ノ結果ヲ示シ其和諧ヲ試ム可シ
第百二十四条 夫婦其意思ヲ固執スルトキハ判事ハ夫婦共ニ離婚ヲ請求シ及ヒ承諾スルコトヲ承認シ且ツ夫婦ノ一方ハ二十四時間ニ予定ノ家屋ニ移リ離婚ノ裁判宣告アルマテ居住スヘキ旨ヲ命ス可シ
第百二十五条 書記ハ調書ヲ作リ前三条ノ手続ヲ履行シタルコトヲ逐一記載ス可シ此調書ハ夫婦ノ差出シタル書類ト共ニ同伴人ノ中年長ノ者ニ渡置ク可シ
第百二十六条 夫婦ハ其意思ノ陳述ヨリ六个月ノ後三十日内ニ第百二十二条ノ手続ニ従ヒ再ヒ地方裁判所ニ出テ前条ノ調書及ヒ附属書類ヲ差出シ各別ニ離婚ノ允許ヲ請求ス可シ
判事更ニ説諭ヲ加フルト雖モ夫婦其意思ヲ固執スルトキハ夫婦ノ意思及ヒ証明書類ノ呈出ヲ承認ス可シ
書記ハ調書ヲ作リ夫婦、同件人、及ヒ判事ト共ニ署名捺印ス可シ若シ夫婦又ハ同件人署名スルコト能ハサルトキハ其事由ヲ記載ス可シ
判事ハ三日内ニ其始末ヲ裁判所ニ報告スル旨ヲ口達シ且ツ其旨ヲ調書ノ末ニ記載ス可シ
第百二十七条 検事ハ書記ノ送致スル書類ヲ受取リ夫婦カ前諸条ノ法式ヲ遵守シ及ヒ条件ヲ具備シタルコトノ証拠ヲ認ムルトキハ法律ハ離婚ヲ允許スト云ヒ反対ノ場合ニ於テハ法律ハ離婚ヲ允許セスト云フノ意見ヲ陳フ可シ
裁判所ハ会議局ニ於テ法式ノ遵守及ヒ条件ノ具備如何ヲ審査シ離婚ヲ允許スルトキハ理由ヲ付セス又反対ノ場合ニ於テハ理由ヲ付シテ其裁判ヲ宣告ス可シ
第百二十八条 離婚ヲ允許セサル判決ニ対スル控訴ハ夫婦異別ノ控訴状ヲ以テ各之ヲ為シ且ツ始審ノ判決ヨリ早クモ十日ノ後又遅クモ一个月内ニ之ヲ為スニ非サレハ受理ス可カラス
第百二十九条 控訴院ノ検事長ハ訴訟書類ヲ受取リタル日ヨリ十日内ニ其意見書ヲ差出シ又控訴院ハ其意見書ヲ受取リタル日ヨリ十日内ニ会議局ニ於テ専任判事ノ報告ヲ聴キ裁判ヲ為ス可シ
第二節 特定原由ノ為メ一方ヨリ為ス離婚
第一款 離婚並ニ不受理ノ原由
第百三十条 離婚ハ法律ニ定メタル原由アルニ非サレハ之ヲ請求スルコトヲ得ス
第百三十一条 離婚ヲ請求スルヲ得ヘキ原由左ノ如シ
一 奸通又ハ太甚シキ不行跡
二 同居ニ堪ヘサルヘキ暴虐脅迫及ヒ重大ノ侮辱
三 重罪ノ処刑宣告並ニ窃盗、詐欺取財、家資分散、私印私書偽造及ヒ猥褻ノ罪ニ付重禁錮一年以上ノ処刑宣告
四 故意ノ棄絶
五 失踪ノ宣言
第百三十二条 離婚ノ原由タル事実ノ生シタル後若クハ離婚ノ請求ヲ為シタル後夫婦ノ間和諧アリタルトキハ離婚ノ請求ヲ受理ス可カラス但シ和諧ノ後生シタル事実ニ付離婚ヲ請求スルトキハ以前ノ事実ヲ援用スルコトヲ得
第百三十三条 離婚ノ請求ヲ為ス者ニ対シ存スル離婚ノ原由ハ其請求不受理ノ原由ト為サス此場合ニ於テハ他ノ一方モ反訴ヲ以テ離婚ヲ請求スルコトヲ得
然レトモ第百三十一条第三ニ記載スル重罪又ハ軽罪ノ処刑宣告ヲ受ケタル者ハ其配偶者ノ処刑宣告ヲ原由トシテ離婚ヲ請求スルコトヲ得ス
第二款 仮処置
第百三十四条 離婚ノ訴訟中子ノ監護ハ原告又ハ被告タルヲ問ハス夫ニ属ス
然レトモ地方裁判所ハ婦、親族若クハ検事ノ請求ニ依リ子ノ利益ヲ慮リ婦又ハ第三者ニ其監護ヲ命スルコトヲ得
第百三十五条 婦ハ原告又ハ被告タルヲ問ハス訴訟中裁判所ノ允許ヲ得テ共同ノ住家ヲ去ルコトヲ得此場合ニ於テハ衣服其他日用ノ物品ヲ持去リ且ツ必要アルトキハ養料及ヒ訴訟費ヲ請求スルコトヲ得
裁判所ハ夫ノ意見ヲ聴キ婦ノ移居スヘキ家屋ヲ指示ス可シ若シ婦正当ノ理由ナクシテ其家屋ヲ去ルトキハ夫ハ養料及ヒ訴訟費ヲ拒ムコトヲ得
第百三十六条 特例婚姻及ヒ婚姻ニ由ル縁組ノ場合ニ於テハ裁判所ハ離婚ノ訴訟中夫ヲシテ共同ノ住家ヲ去ラシムルコトヲ得
第百三十七条 裁判所ハ夫婦ノ中住家ヲ去ル者ノ請求ニ依リ其権利ヲ保存スル為メ必要ノ処置ヲ命スルコトヲ得
第三款 離婚ノ訴
第百三十八条 離婚ヲ求ムルノ訴権ハ夫婦ノミニ属シ其一方死去スルトキハ消滅ス随テ離婚ヲ宣告シタル判決未タ確定セサルトキハ当然其効ヲ失フ
第百三十九条 夫婦ノ一方民事上ノ禁治産ヲ受ケタルトキハ後見人若クハ副後見人ハ親族会ノ允許ヲ得テ離婚ヲ請求スルコトヲ得
第百四十条 離婚ヲ求ムル原由ノ証拠ハ普通法ニ従ヒ之ヲ立ツ可シ但シ自認又ハ宣誓ヲ以テ証スルコトヲ得ス又親族若クハ雇人ノ身分ニ原由スル忌避ノ規則ヲ適用セス
第百四十一条 離婚ノ訴訟ヲ提起シ審理シ及ヒ判決スルノ手続ハ訴訟法ニ之ヲ規定ス
第三節 離婚ノ効果
第百四十二条 離婚ハ之ヲ宣告スル判決確定ノ後ニ非サレハ其効果ヲ生セス
若シ適法ノ公示ヲ為サヽルトキハ善意ノ第三者ニ離婚ノ判決ヲ対抗スルコトヲ得ス
第百四十三条 夫婦中離婚ノ裁判宣告ヲ得タル直者ハ子ノ監護ニ任ス可シ
然レトモ裁判所ハ親族又ハ検事ノ請求ニ依リ子ノ利益ヲ慮リ之ヲ他ノ一方又ハ第三者ノ監護ニ付スルコトヲ得
第百四十四条 夫婦ノ中子ノ監護ニ任スル者ハ親権ヲ行フ
第三者ハ其監護スル子ノ行状ニ付不満ノ事由アルトキハ其意見ヲ親族会ニ申立テ親族会ヲシテ父母ノ意見ヲ聴キ第八章ニ定ムル懲戒処分ヲ允許セシムルコトヲ得
第百四十五条 何人ニ子ノ監護ヲ付シタルヲ問ハス父母ハ其子ノ養成及ヒ教育ヲ検視スルノ権利ヲ有シ各其資力ニ応シテ費用ヲ負担ス
第百四十六条 夫婦ノ共同子ハ離婚ニ拘ハラス夫婦財産契約ノ自己ニ与フル権利ヲ保有ス
第百四十七条 裁判所ハ離婚ノ判決ヲ以テ曲者タル一方ヨリ他ノ一方ニ養料ヲ給スヘキコトヲ命スルヲ得其給スヘキ養料ノ額ヲ定ムルニハ他ノ一方其離婚前ノ地位ヲ保有スルコトヲ標準ト為ス可シ
此養料ノ義務ハ双方ノ一方死去シ若クハ之ヲ受ク可キ者再婚シタルトキハ止息ス
第六章 親子ノ分限
第一節 正親子ノ分限
第一款 正親子ノ分限ノ証拠
第百四十八条 婚姻ノ成立確実ナルトキハ其婚姻ヨリ生レタル子ノ母子ノ分限ハ出生証書ヲ以テ之ヲ証スルコトヲ得但シ必要アルニ於テハ出生証書ニ指示スル者ト同人ナルコトヲ証スルヲ要ス
此証明ハ証人ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得但シ其子出生証書ニ反スル身分ヲ占有スルトキハ筆記ノ証端アルコトヲ要ス
母子ノ分限確実ナルトキハ父子ノ分限ノ証拠ハ下ニ定ムル法律上ノ推測ヨリ生ス
第百四十九条 婚姻中ニ懐胎シタル子ハ夫ノ子ト推測ス
第百五十条 婚姻ノ公式ヨリ百八十日後婚姻ノ解離ヨリ三百日内ニ生レタル子ハ婚姻中ニ懐胎シタル者ト推測ス此期間ハ時ヲ以テ計算ス
第百五十一条 前婚ノ解離若クハ夫ノ失踪ヨリ三百日内ニシテ婦ノ再婚ヨリ百八十日後ニ生レタル子ニ関スルトキハ地方裁判所ハ事実ヲ査定シテ其父子ノ分限ヲ定ム可シ
婚姻ノ解離若クハ夫ノ失踪ヨリ百八十日後ニシテ三百日内ニ生レ母及ヒ第三者カ其庶出ト認知シ且ツ其子正出子ノ分限ヲ有セサルトキ亦同シ
第百五十二条 婚姻ノ解離若クハ夫ノ失踪ヨリ三百日後ニ生レタル子ハ正出子ニ非サルモノトス
第百五十三条 出生証書ヲ提出スルコト能ハサルトキハ親子ノ分限ハ正出子タル身分ノ占有ヲ以テ之ヲ証スルコトヲ得但シ第四百五十六条ノ適用ヲ妨ケス
第百五十四条 身分ノ占有ハ夫婦両人ト其婚姻ヨリ生レタリト主張スル者トノ間其出生ノ時ヨリ親子ノ分限ヲ証スルニ足ル事実ノ集合ヨリ生ス其著明ナルモノ左ノ如シ
一 子ハ常ニ其父ナリト主張スル者ノ氏ヲ称シタルコト
二 其父母ナリト主張スル者ハ常ニ之ヲ正出子ノ如ク取扱ヒ其養成及ヒ教育ニ従事シタルコト
三 親族及ヒ世上ニ於テ常ニ之ヲ夫婦ノ正出子ト認メタルコト
第百五十五条 何人ト雖モ出生証書ニ符合スル身分ヲ占有スルトキハ之ト異ナル身分ヲ請求スルコトヲ得ス
何人ト雖モ出生証書ニ符合スル身分ヲ占有スル者ニ対シ其身分ヲ争拒スルコトヲ得ス
第百五十六条 出生証書及ヒ身分ノ占有共ニ存セサルトキ若クハ出生証書ニ父母ノ名ヲ記セス又ハ偽名ヲ記シタルトキハ母子ノ分限ハ証人ヲ以テ之ヲ証スルコトヲ得
出生証書ニ符合スル身分ノ占有アルトキト雖モ子ノ変換若クハ偽設アリタルコトヲ主張スルトキ亦同シ
第百五十七条 原告人ハ其母ナリト主張スル者ノ子ヲ生ミタルコト及ヒ其生ミタル者ト同人ナルコトヲ証ス可シ但シ別ニ出生証書ノ偽造若クハ其記載ノ虚妄ヲ証スルニ及ハス
此挙証ハ筆記ノ証端アルカ若クハ証明ヲ待タスシテ確実ナル事実ヨリ生スル重大ノ憑徴アルニ非サレハ之ヲ允許ス可カラス
第百五十八条 筆記ノ証端トハ家ノ系譜父母ノ帳簿書類若クハ尺牘並ニ現時生存スルニ於テハ訴訟ニ利益ヲ有スヘク若クハ現ニ訴訟ニ関係スル者ニ出テタル公私ノ書類ヲ云フ
第百五十九条 原告人カ其母ナリト主張スル婦ノ子ニ非サルコト又其婦ノ子タルコトノ証明アリト雖モ其婦ノ夫ノ子ニ非サルコトノ反証ハ諸般ノ方法ヲ以テ立ツルコトヲ得
第二款 否認訴権
第百六十条 婚姻中懐胎シタル子ノ否認訴権ハ左ノ場合ニ非サレハ之ヲ允許セス
一 子ノ出生ヨリ遡算シ第百八十日ヨリ第三百日ニ至ルノ期間中夫カ失踪又ハ離隔ノ原由並ニ外見ノ無勢力又ハ重病ノ効果ニ依リ事実上其婦ト同室スル能ハサリシコトヲ証スルトキ
二 離婚ノ請求中夫婦別居ノ場合若クハ婦ノ奸通ノ場合ニ於テ尚ホ他ノ事実ヲ以テ夫カ其婦ト同室スル能ハサリシコト又ハ生理上夫ノ子ニ非サルコトヲ証スルトキ
第百六十一条 婚姻ノ公式ヨリ百八十日ヲ過キサル前ニ生レタル子ノ否認訴権ハ条件ヲ要セス
然レトモ夫其子ヲ我子ト明瞭ニ認知シタルトキハ否認訴権ヲ行フコトヲ得ス
左ノ場合ニ於テハ暗黙ニ之ヲ認知シタルモノトス
一 夫其婚姻前ニ懐胎ノ事ヲ了知シタルトキ
二 夫其誘拐又強奸シタル女ト婚姻ヲ為シタルトキ
三 夫カ自己又ハ代理人ヲ以テ出生ヲ申述シ若クハ証人トシテ立会ヒタルトキ但シ出生証書中子ノ認知ニ反スル記載アルトキハ格別ナリトス
四 夫其子ヲ我子ノ如ク取扱ヒタルトキ
否認セラレサル子ハ其出生ノ時ヨリ正出子トス
第百六十二条 否認訴権ハ夫ノミニ属ス但シ子ノ出生後ニ非サレハ之ヲ行フコトヲ得ス
第百六十三条 夫カ民事上ノ禁治産ヲ受ケタルトキハ其後見人若クハ副後見人ハ親族会ノ允許ヲ得テ否認訴権ヲ行フコトヲ得
第百六十四条 夫否認訴権ヲ行ハスシテ適法ノ期限内ニ死去シタルトキハ其血族ハ三親等ニ至ルマテ之ヲ行フコトヲ得
其他包括名義ノ相続人ハ子カ相続財産ヲ占有シ又ハ其占有ヲ侵害セントスルニ非サレハ否認訴権ヲ行フコトヲ得ス
第百六十五条 否認訴権ハ子ノ住所ノ地方裁判所ニ申立ツ可シ其子未成年ナルトキハ裁判所ハ之ヲ代表スル為メ臨時保管人ヲ撰任シ且ツ職権ヲ以テ其母ヲ訴訟ニ召喚ス可シ
第百六十六条 夫カ子ノ出生ノ場所ニ在ルトキハ出生ヨリ三个月ノ期限内ニ否認訴権ヲ行フ可シ
夫其婦ト其居ヲ異ニシ若クハ子ノ出生ヲ夫ニ隠秘シタルトキハ三个月ノ期限ハ其出生ヲ了知シタル日ヨリ起算ス
夫カ子ノ出生ノ場所ニ在ラサルトキハ其期限ヲ四个月トシ其出生ヲ了知シタル日ヨリ起算ス
第百六十七条 血族及ヒ相続人ハ其訴権ヲ行フコトヲ得ヘキ日ヨリ四个月ノ期限ヲ有ス
第百六十八条 此等ノ期限ハ時効ノ中断及ヒ停止ノ原由ニ服セス之ヲ過クレハ其訴権ヲ失フ但シ失権ノ挙証ハ被告人ニ在リトス
第三款 親子タル身分ノ請求及ヒ争拒ノ訴権
第百六十九条 親子タル身分請求ノ訴権ハ子及ヒ其卑属親ノミニ属ス此訴権ハ時効若クハ放棄ニ由リテ消滅セス
第百七十条 子ノ卑属親ヲ除キ其他ノ相続人ハ金銭上ノ利益ヲ有シ且ツ其子二十五年前ニ死去シ若クハ其身分ヲ了知セスシテ死去シタル場合ニ非サレハ此訴権ヲ行フコトヲ得ス
又子其訴訟中ニ死去シタルトキハ相続人ハ金銭上ノ利益ヲ有スレハ之ヲ継続スルコトヲ得但シ訴訟ノ願下若クハ訴訟手続ノ消滅アリタルトキハ此例ニ在ラス
第百七十一条 何人ト雖モ其血族ナリト主張スル者ニ対シ其身分ヲ争拒スルコトヲ得此訴権ハ時効、放棄若クハ承認ニ由リテ消滅セス
第百七十二条 身分ニ関スル判決ハ既判事件ノ効ヲ定ムル規則ニ従フ可シト雖モ二箇ノ判決相牴触スルトキハ子ハ其父ノ氏ヲ称シ其族称ヲ冒スコトヲ得
第二節 庶親子ノ分限
第一款 庶親子ノ分限ノ証拠
第百七十三条 庶出子ハ其出生証書ヲ以テ母子ノ分限ヲ証スルコトヲ得但シ必要アルニ於テハ第百四十八条第二項ニ従ヒ出生証書ニ指示スル者ト同人ナルコトヲ証ス可シ
第百七十四条 子ト其父若クハ母ナリト主張スル者トノ間親子ノ関係ヲ指示スルニ足ル事実ノ集合スルトキハ子ハ父若クハ母ニ対シ其身分ノ占有ヲ以テ親子ノ分限ヲ証スルコトヲ得
第二款 庶出子ノ認知
第百七十五条 庶出子ノ認知ハ身分取扱人若クハ公証人ノ作リタルモ証書ヲ以テ之ヲ為スコトヲ要ス
第百七十六条 此認知ハ父母各躬ラ之ヲ為スコトヲ要ス無能力者ト雖モ躬ラ之ヲ為スヲ得
代理人ヲ以テ之ヲ為ストキハ特別ニシテ公正ノ委任状アルコトヲ要ス
第百七十七条 父母ハ胎内ニ在ル子ト雖モ認知スルコトヲ得但シ父ハ母ノ承諾ヲ得ルコトヲ要ス
又父母ハ其死去シタル子ト雖モ認知スルコトヲ得
第百七十八条 夫若クハ婦ハ其婚姻中認知シタル子ヲ其住家ニ入ルヽコトヲ得ス但シ配偶者承諾スルトキハ格別ナリトス
第百七十九条 庶出子ノ認知ハ左ノ場合ニ於テ無効トス
一 知覚錯乱中ニ之ヲ為シタルトキ
二 公正証書ヲ以テ之ヲ為サヽルトキ
三 子ノ人違アリタルトキ
第百八十条 何人ニ限ラス利益ヲ有スル者ハ何時ニテモ認知ノ真実ナラサルコトヲ申立テ之ヲ訟撃スルコトヲ得
無能力者ノ為シタル認知ヲ無効ト為ス詐欺若クハ誑惑アルトキ其他普通法ニ認許スル無効ノ原由アルトキ亦同シ
第百八十一条 子ノ認知ハ一旦之ヲ為シタルトキハ廃滅スルコトヲ得ス但シ遺嘱ヲ以テ為シタル認知ハ此限ニ在ラス
第百八十二条 父母若クハ其子認知証書ニ指示スル者ト同人ニ非サルコトノ争ヲ生シタルトキハ普通法ニ従ヒ其同人ナルコトヲ証明スルコトヲ得
第三款 親子ノ分限捜索ノ訴権
第百八十三条 父子ノ分限ヲ捜索スルハ法律ノ禁止スル所トス但シ左ノ場合ニ限リ子及ヒ其卑属親又此等ノ者ノ為メ子ノ母及ヒ代表人ノ特ニ之ヲ允許ス
一 誘拐又ハ強奸アリタルトキ但シ其時期母ノ懐胎ノ時期ニ符合スルトキハ地方裁判所ハ誘拐又ハ強奸ヲ為シタル者ノ子ト認定スルコトヲ得
二 婚姻ノ約束又ハ誑奸アリタルトキ但シ其約束又ハ誑奸ノ筆記ノ証端アルカ若クハ証明ヲ待タスシテ確実ナル事実ヨリ生スル重大ノ憑徴アルコトヲ要ス
第百八十四条 母子ノ分限ヲ捜索スルハ子及ヒ其卑属親又此等ノ者ノ為メ子ノ父及ヒ代表人ニ常ニ法律ノ允許スル所トス
此分限ヲ捜索スル者ハ其母ナリト主張スル女ノ分娩シタルコト及ヒ其生レタル者ハ其子ト同人ナルコトヲ証ス可シ但シ此両件ニ付筆記ノ証端アルカ又ハ証明ヲ待タスシテ確実ナル事実ヨリ生スル重大ノ憑徴アルニ非サレハ其捜索ヲ允許セス
第百八十五条 第百五十八条及ヒ第百六十九条乃至第百七十二条ハ之ヲ庶出子ニ適用ス
第四款 庶出子ノ准正
第百八十六条 庶出子ハ其父母ノ婚姻ニ因リ当然正出子ニ准ス但シ親子ノ分限適法ニ確定シタルコトヲ要ス
第百八十七条 死去シタル子ト雖モ其父母ノ婚姻ニ因リ正出子ニ准ス此場合ニ於テハ准正ノ効果ハ其子ノ生ミタル正出又ハ庶出子ニ利益ス
第百八十八条 正出子ニ准セラレタル者ハ婚姻ノ時マテニ其分限ノ確定シタルトキハ婚姻ノ日ヨリ又婚姻後ニ其分限ノ確定シタルトキハ其確定ノ日ヨリ正出子ノ権利ヲ有ス
若シ其子数人アルトキ又ハ婚姻ノ公式ヨリ百八十日ヲ過キサル前ニ生レタル子アルトキ其倫次ヲ定ムルニハ年齢ニ従フ
第三節 親子ノ分限ヨリ生スル効果
第百八十九条 子ハ終身其父母ニ孝養ヲ尽シ其他尊属親ニ対シテモ尊敬ヲ致ス可シ
第百九十条 父母ハ其子ヲ養成シ訓戒シ及ヒ教育スルノ義務ヲ負フ
然レトモ子ノ教育宗旨及ヒ職業ヲ定ムルハ親権ヲ行フ者ニ属ス之ニ反スル合意ハ無効トス
第百九十一条 正出子ノ父母ハ夫婦財産契約ノ制ニ従ヒ又庶出子ノ父母ハ其資力ニ応シテ養成及ヒ教育ノ入費ヲ負担ス可シ
父母其子ヲ養成シ及ヒ教育スルニ充分ノ資力ヲ有セサルトキ若クハ父母死去シテ子ノ財産不足スルトキハ尊属親其他親族ハ養料ノ義務ノ順序ニ従ヒ其入費ヲ負担ス可シ
第百九十二条 父母共ニ其義務ヲ尽サヽルトキ若クハ親権ヲ行フ者其義務ヲ尽サヽルトキハ血族及ヒ検事ハ地方裁判所ニ訴フルコトヲ得
何人ト雖モ父母其教育ノ義務ヲ尽サヽルコトヲ聞知シタルトキハ之ヲ検事ニ通知ス可シ
裁判所ハ父母ニ対シ親権ノ喪失ヲ宣告スルコトヲ得
第百九十三条 子ハ其父母ニ対シ婚姻其他ノ方法ニ依リ一家ヲ成スノ資財ヲ求ムル訴権ヲ有セス
第百九十四条 正出子ハ其父ノ氏ヲ称シ其族称ヲ冒ス
第百九十五条 庶出子ハ其父母ノ中親子ノ分限確定シタル者ノ氏ヲ称シ其族称ヲ冒ス又父母ニ対シ親子ノ分限確定シタルトキハ其最初ニ確定シタル者ノ氏ヲ称シ其族称ヲ冒ス但シ成年若クハ認知ヨリ一个年内ニ身分取扱人ニ申述シテ其氏ヲ撰択スルコトヲ得
第七章 縁組
第百九十六条 法律ハ三種ノ縁組即チ普通ノ縁組婚姻ニ由ル縁組及ヒ遺嘱ノ縁組ヲ認許ス
縁組ハ一旦成立シタルトキハ之ヲ廃棄スルコトヲ得ス
本章ノ条例ハ特別ニ規定スルモノヲ除クノ外三種ノ縁組ニ適用ス
第一節 縁組ノ為メ必要ナル条件
第百九十七条 何人ト雖モ満四十年以上ニシテ且ツ其養ハントスル者ヨリ年長ナルニ非サレハ養子ヲ為スコトヲ得ス
然レトモ四十年未満ノ者ト雖モ婚姻ニ依リ養子ヲ為スコトヲ得
遺嘱ヲ以テ養子ヲ為スノ能力ハ遺嘱ヲ為ス能力ニ関スル規則ニ従フ
第百九十八条 自家ニ正出若クハ庶出ノ子孫又ハ養子アル者ハ特許ヲ得ルニ非サレハ養子ヲ為スコトヲ得ス但シ婚姻又ハ遺嘱ニ由ル縁組ハ此例ニ在ラス
特許ハ正当ノ理由アルニ非サレハ之ヲ与フ可カラス
第百九十九条 後見人ハ其管理ノ計算ヲ為サヽル前ニ其後見スル未成年者ヲ養子ト為スコトヲ得ス但シ遺嘱ノ縁組ハ此例ニ在ラス
管理ノ計算ハ未成年者ノ副後見人ニ之ヲ為シ親族会ノ允許ニ付ス
第二百条 配偶者アル者ハ其承諾ヲ得ルニ非サレハ養子ヲ為シ又ハ養子ト為ルコトヲ得ス但シ配偶者ノ失踪宣言アリタルトキハ此例ニ在ラス遺嘱ヲ以テ養子ヲ為ストキ亦同シ
第二百一条 何人ト雖モ夫婦ノ養子ト為ルノ外同時又ハ順次ニ数人ノ養子ト為ルコトヲ得ス
第二百二条 家督相続ヲ為シ戸主ト為リタル者ハ他人ノ養子ト為ルコトヲ得ス
第二節 縁組ノ法式
第二百三条 普通ノ縁組ハ契約ヲ以テ之ヲ為スモノトス
縁組契約ハ養親又ハ養子ノ住所若クハ居所ノ身分取扱人ノ前ニ於テ証人二名ノ立会ニテ之ヲ為ス可シ
第二百四条 未成年者ノ縁組ハ其父母ノ承諾ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得但シ其子現場ニ在ルコトヲ要ス
父母ノ中一人死去シ又ハ其意ヲ表スルコト能ハサルトキハ他ノ一人ノ承諾ヲ以テ足レリトス
第二百五条 父母共ニ死去シ又ハ其意ヲ表スルコト能ハサルトキハ親族会其縁組ヲ承諾スルコトヲ得
育児院ニ在リテ父母ノ知レサル子ノ縁組ハ院長之ヲ承諾スルコトヲ得
第二百六条 未成年者ノ縁組ハ之ヲ為ス地ノ地方裁判所ノ認可ヲ経ルニ非サレハ未成年者ニ対シテ完成セス
裁判所ノ認可アリタル縁組ハ契約ノ日ヨリ其効果ヲ生ス可シ
第二百七条 右ニ就キ未成年者ノ代表人ハ契約ヨリ一个月内ニ契約書ノ謄本ヲ地方裁判所長ニ差出ス可シ
裁判所ハ其縁組ノ条件完備スルヤ其縁組ハ未成年者ノ為メ不利益ト為ラサルヤ及ヒ其養親ハ不名誉ノ者ニ非サルヤヲ考査シ会議局ニ於テ検事ノ意見ヲ聴キ他ノ手続ヲ要セス又理由ヲ付セス単ニ縁組ヲ允許ス若クハ縁組ヲ允許セスト宣告ス可シ
第二百八条 縁組ノ契約ヲ為シ未タ地方裁判所ノ認可ヲ経サル前ニ養親ノ死去シタルトキト雖モ未成年者ノ代表人ハ其手続ヲ継続シ縁組ヲ完成スルコトヲ得
第二百九条 身分取扱人ハ予メ双方ヨリ左ノ書類ヲ呈示セシム可シ
一 双方ノ出生証書若クハ之ニ代用スル保証書
二 養親住所ノ身分証書ノ簿冊ニ記載シタル正出子庶出子及ヒ養子ナキコトヲ証スル認定書又ハ縁組ノ特許書
三 配偶者アルトキハ其承諾書失踪ノ宣言書若クハ死去証書
四 副後見人ニ管理ノ計算書ヲ差出シタル証明書
第二百十条 身分取扱人ハ縁組ノ妨碍ト為ルヘキ法律上ノ原由アルニ非サレハ其縁組ヲ拒ムコトヲ得ス
身分取扱人ハ其拒絶ノ理由ヲ明記シタル拒絶書ヲ授付ス可シ
当事者其拒絶ヲ以テ不当ナリト思料スルトキハ之ニ対シテ地方裁判所ニ抗告スルコトヲ得
第二百十一条 婚姻ノ章第七十八条及ヒ第七十九条ノ規則ハ之ヲ縁組ニ適用ス但シ本章第一節ニ定メタル条件ニ違背セサルコトヲ要ス
第二百十二条 婚姻ニ由ル縁組ハ婚姻ノ公式ニ因テ成立ス
此場合ニ於テハ縁組ニ必要ナル条件ノ欠缺スルヲ原由トシテ婚姻ノ章ニ定ムル規則ニ従ヒ故障ヲ為スコトヲ得
第二百十三条 婚姻ノ公式ヲ行フ時養親ハ予メ身分取扱人ニ縁組ヲ為スノ意思ヲ申述ス可シ
身分取扱人ハ養子ト為ル者ニ婚姻及ヒ縁組ヲ承諾スルヤヲ質問ス可シ
養子ト為ル者ノ婚姻ニ与フル承諾ハ縁組ノ承諾ヲ帯有ス
第二百十四条 遺嘱ニ由ル縁組ハ公正ノ遺嘱書ヲ以テ之ヲ為ス可シ
此縁組ハ養親死去ノ日ニ家督相続ヲ為スヘキ正出若クハ庶出ノ子孫及ヒ生存者間ノ養子アラサルトキハ有効トス
此縁組ノ受諾ハ相続開始ノ地ノ身分取扱人ニ之ヲ為ス可シ
第二百十五条 養子ノ未成年中ニ遺嘱ノ開始シタルトキハ第二百四条及ヒ第二百五条ニ指定シタル者縁組ヲ受諾ス可シ
此縁組ハ第二百七条ノ手続ニ従ヒ地方裁判所ノ認可ニ付スルコトヲ要ス
第二百十六条 身分取扱人ハ縁組ノ契約婚姻ノ公式又ハ遺嘱縁組ノ受諾ノ後第四百七十六条ニ従ヒ縁組証書ヲ作ル可シ
第二百十七条 未成年者ノ縁組ハ第四百七十八条ニ従ヒ其認可ノ裁判ヲ縁組証書ノ欄外ニ追記シタル後ニ非サレハ第三者ニ之ヲ対抗スルコトヲ得ス
第三節 縁組ノ証拠
第二百十八条 縁組ハ縁組証書ヲ以テ之ヲ証ス可シ
若シ縁組証書ヲ呈示スルコト能ハサルトキハ身分証書ノ章第四百五十八条ニ規定スルモノヽ外尚ホ左ノ証書ニ依リ縁組ヲ証スルコトヲ得
一 婚姻ニ由ル縁組ニ係ルトキハ其事由ヲ記載シタル婚姻証書
二 未成年者ノ縁組ニ係ルトキハ之ヲ認可シタル裁判宣告書
第二百十九条 婚姻証書ニ縁組ノ事由ヲ記載セサルトキト雖モ身分ノ占有アリテ婚姻公告書ニ符合スルトキハ之ニ依リ其縁組ヲ証スルコトヲ得
婚姻ノ章第八十二条及ヒ第八十四条ノ規則ハ之ヲ縁組ニ適用ス
第四節 縁組ノ不成立及ヒ無効
第二百二十条 縁組ハ左ノ場合ニ於テハ成立セス
一 公式ヲ欠キタルトキ
二 人違ニ由リ若クハ心神喪失ノ時縁組ヲ為シタルトキ
三 裁判所未成年者ノ縁組ヲ認可セス若クハ当事者期限内ニ其認可ヲ請求セサルトキ
第二百二十一条 縁組ハ第一節ニ定ムル条件ノ一ヲ欠キタルトキハ無効トス
此無効ハ養親養子其他何人ニ限ラス現実ノ利益ヲ有スル者ヨリ何時ニテモ之ヲ請求スルコトヲ得
第二百二十二条 官吏ノ管轄違ニ原由スル縁組ノ無効ハ何人ト雖モ之ヲ請求スルコトヲ得但シ一个年ヲ過キタルトキハ其請求ヲ允許ス可カラス
第二百二十三条 第百九十九条及ヒ第二百条ニ違ヒタル縁組ノ無効ハ未成年者及ヒ配偶者ニ非サレハ之ヲ請求スルコトヲ得ス
未成年者其成年ニ至リ若クハ配偶者縁組ヲ了知シタル後之ヲ確認シ若クハ一个年ヲ過キタルトキハ其権利ヲ失フ
第二百二十四条 身上ノ錯誤若クハ暴行ニ原由スル縁組ノ無効ハ錯誤ニ陥リ若クハ暴行ヲ受ケタル者ニ非サレハ之ヲ請求スルコトヲ得ス但シ錯誤ヲ認知シ若クハ暴行ヲ免脱シタル後確認ヲ為シ若クハ一个年ヲ過キタルトキハ無効ヲ補フ
第二百二十五条 未成年者ノ争拒ニ拘ラス縁組ヲ為シタルトキハ裁判所ハ場合ニ従ヒ未成年者ノ請求ニ依リ其無効ヲ宣告スルコトヲ得但シ未成年者成年ニ至リ確認ヲ為シ若クハ一个年ヲ過キタルトキハ其権利ヲ失フ
第二百二十六条 婚姻ニ由ル縁組ニ於テハ婚姻ノ無効ハ当然縁組ノ無効ヲ帯有ス然レトモ縁組ノ無効ハ婚姻ノ無効ヲ帯有セス
第五節 縁組ノ効果
第二百二十七条 養子ハ実家ノ氏及ヒ族称ヲ棄テ養家ノ氏及ヒ族称ヲ冒ス可シ
第二百二十八条 養子ハ其実家ヲ去リ養家ニ入ルモノトス但シ親属ノ関係ヨリ生スル養料ノ義務ハ為メニ変更スルコトナシ
第二百二十九条 然レトモ婦ノ養子ハ其養母ノ実家ノ氏ヲ称シ夫ノ家ニ入ラス
婦其夫ノ子ヲ養子ト為ストキハ養子ハ夫家ノ氏ヲ保有シ其家ヲ去ラス但シ特例婚姻ニ於ケル婦其夫ノ子ヲ養子ト為ストキハ前条ノ規則ニ従フ
第二百三十条 縁組ハ養子ト養親及ヒ其親族トノ間養料ノ義務ヲ生ス
此義務ハ実親族ノ間ニ於ケルト其規則ヲ同フス
第二百三十一条 養子ノ未成年ナルトキハ養親ハ之ヲ養成シ訓戒シ及ヒ教育スルノ義務ヲ負フ
養親其養子ヲ養成シ及ヒ教育スルニ充分ノ資力ヲ有セサルトキ若クハ其死去シテ養子ノ財産不足スルトキハ養家ノ尊属親其他ノ親族ハ養料ノ義務ノ順序ニ従ヒ其入費ヲ負担ス可シ
此義務ハ実家ノ父母尊属親其他ノ親族ノ義務ニ先ス可シ
第百八十九条第百九十二条及ヒ第百九十三条ハ之ヲ養子ニ適用ス
第二百三十二条 養親ハ次章ニ定ムル規則ニ従ヒ養子ニ対シ監護及ヒ懲治ノ権ヲ有ス
第二百三十三条 養子ハ其特参シ又ハ相続贈与遺嘱ニ依リ得タル財産ノ所有権ヲ有ス但シ未成年中其財産ノ管理ハ次章ノ規則ニ従ヒ養親ニ属ス
第二百三十四条 養子ハ其縁組ノ日ニ生レタルモノト看做シ其日ヨリ正出子ノ権利ヲ有ス
第二百三十五条 縁組ノ後生レタル養子ノ子ハ養家ニ於テ正孫ト同一ノ地位及ヒ権利ヲ有ス縁組前ニ生レタル子ト雖モ其縁組ニ之ヲ包含シタルトキ又同シ
第二百三十六条 縁組ヨリ生スル相続ノ権利ハ相続ノ章ニ之ヲ規定ス
第六節 罰則
第二百三十七条 本章第二節ノ規則ニ違背シタル身分取扱人ハ二円以上五十円以下ノ罰金ニ処ス
第八章 親権
第一節 父母其子ノ身上ニ有スル権
第二百三十八条 子ハ其成年若クハ自治ニ至ルマテ親権ニ服従ス
第二百三十九条 婚姻ノ継続スル間ハ父親権ヲ行フ
若シ父之ヲ行フコト能ハサルトキハ其間母此権ヲ行フ
若シ父母ノ中一人死去シタルトキハ生存者此権ヲ行フ但シ其再婚シテ他家ニ入ル時ハ此限ニ在ラス
第二百四十条 婚姻ノ無効若クハ離婚ノ裁判宣告アリタル後子ノ監護ニ任スル者親権ヲ行フコト能ハス若クハ之ヲ失ヒタルトキハ他ノ一方之ヲ行フ
第二百四十一条 子ハ其服従スル父若クハ母ノ允許ヲ得ルニ非サレハ父母ノ家若クハ其指定シタル家ヲ去ルコトヲ得ス
若シ此允許ナクシテ子其家ヲ去リタルトキハ父若クハ母ハ地方裁判所長ニ請願シテ強ヒテ之ヲ帰家セシムルコトヲ得
第二百四十二条 子ハ其父若クハ母若クハ後見人ノ允許ヲ得ルニ非サレハ未成年中兵役ヲ出願スルコトヲ得ス
第二百四十三条 父若クハ母ハ家内ニ於テ其子ヲ懲戒スルノ権ヲ有ス但シ過度ノ懲戒ヲ加フルコトヲ得ス
第二百四十四条 父若クハ母其子ノ行状ニ付重大ナル不満ノ事由ヲ有スルトキハ地方裁判所長ニ請願シテ其子ヲ相当ノ感化場若クハ懲戒場ニ入ルヽコトヲ得
此請願ハ口頭ニテ之ヲ為スコトヲ得ヘク又拘引状ニハ其事由ヲ明示シ且ツ其他裁判上ノ書面及ヒ手続ヲ用ユルコトヲ得ス
入場ノ日数ハ十六年未満ノ子ナレハ三个月又満十六年以上ノ子ナレハ六个月ヲ超過スルコトヲ得ス但シ父若クハ母ハ常ニ裁判所長ニ請願シテ其日数ヲ延長シ又ハ減縮スルコトヲ得
第二百四十五条 父母及ヒ子ハ裁判所長ノ決定ニ対シテ控訴院長ニ抗告スルコトヲ得
所長及ヒ院長ハ検事ノ意見ヲ聴キ裁判ス可シ
第二百四十六条 父若クハ母ハ必要ノ事情アルニ於テハ同居スル成年若クハ自治ニ至リタル子ヲ其家ヨリ遠サクルコトヲ得
第二節 子ノ財産ノ管理
第二百四十七条 父ハ一般ノ権利行為ニ於テ其未成年ナル子ヲ代表シ自己ノ財産ニ於ケル如ク其子ノ財産ヲ管理ス
第二百四十八条 此管理ニ於テハ第三百二十九条ニ列記シタル行為ハ尚ホ之ヲ管理所為ト看做ス
父ハ地方裁判所ノ允許ヲ得ルニ非サレハ第三百三十条ニ列記シタル行為ヲ為スコトヲ得ス此允許ハ必要若クハ利益ノ判然タルトキニ非サレハ之ヲ与フ可カラス
後見ノ章ニ於テ動産及ヒ不動産ノ売買ノ方法ニ関スル規則並ニ資本其他所得ノ利用法及ヒ利子ニ関スル規則ハ父ノ管理ノ性質ニ違ハサルニ於テハ之ヲ此管理ニ適用ス
第二百四十九条 子ハ其父ト異ナル職業若クハ労力ニ因リ獲得シタル利益並ニ相続贈与若クハ遺嘱ニ因リ獲得シタル財産ノ所有権ヲ有ス
父ハ相続贈与若クハ遺嘱ノ受諾ヨリ二个月内ニ其財産ノ目録ヲ作ル可シ若シ之ヲ作ラサルトキハ其箇数及ヒ価額ハ世評ヲ以テスルモ之ヲ証スルコトヲ得
第二百五十条 父子ノ利益相反スルトキ若クハ同父ノ権ニ服従スル数子ノ利益相反スルトキハ其住所ノ地方裁判所ハ其子ノ為メ臨時保管人ヲ命ス可シ
第二百五十一条 父ハ其管理ノ止息シタルトキハ所有権並ニ所得ノ計算ヲ為ス可シ但シ子ノ養成及ヒ教育ノ入費ヲ支出ノ部ニ算入スルコトヲ得
此計算ニ付テハ地方裁判所ハ父ノ善意ト其常習トヲ斟酌シテ苛細ナル証明ヲ要ム可カラス
後見人ノ計算書差出ノ義務ニ関スル時効ハ之ヲ父ノ計算書差出ノ義務ニ適用ス
第二百五十二条 父其権限内ニ於テ為シタル行為ハ子損失ヲ原由トシテ其無効ヲ請求スルコトヲ得ス
父法律ニ定ムル条件ヲ遵守セスシテ為シタル行為ハ当然無効トス
第二百五十三条 本節ノ規則ハ母其子ノ財産ヲ管理スル場合ニモ亦之ヲ適用ス
然レトモ母ハ常ニ其子ノ財産ノ管理ヲ辞避スルコトヲ得此場合ニ於テハ後見ヲ開始ス
第三節 親権ノ喪失
第二百五十四条 刑法第三百五十二条ニ依リ処刑ノ宣告ヲ受ケタル父若クハ母ハ其総テノ子ニ対シテ当然親権ヲ失フ
第二百五十五条 父若クハ母親権ヲ濫用スルトキ若クハ其不行跡ノ世上ニ著明ナルトキハ地方裁判所ハ検事ノ請求ニ依リ其失権ヲ宣告スルコトヲ得
第二百五十六条 生存者再婚シテ其配偶者前二条ノ所為ヲ犯ストキト雖モ地方裁判所ハ生存者ニ対シテ失権ヲ宣告スルコトヲ得
婚姻ノ無効若クハ離婚ノ裁判宣告アリタル後子ノ監護ニ任スル父若クハ母ノ再婚シタル場合ニモ亦前項ノ規則ヲ適用ス
第二百五十七条 親権ヲ失ヒタル父若クハ母ハ其子ノ婚姻若クハ縁組ヲ承諾シ並ニ其子ニ自治ヲ与フルノ権ヲ失フ
第二百五十八条 財産ノ管理ニ於テ父若クハ母重大ノ過失ヲ為シ若クハ不正実ノ所為アルトキハ地方裁判所ハ検事ノ請求ニ依リ保管人ヲ命シ之ニ管理ヲ委任スルコトヲ得
父若クハ母ノ浪費又ハ家事衰替ニ因リ子ノ財産ニ危険ヲ来タスノ恐アルトキ亦同シ
第二百五十九条 血族姻族其他何人ト雖モ本節ニ規定スル事実ヲ聞知シタルトキハ之ヲ検事ニ通知ス可シ
子モ亦躬ラ之ヲ申告スルコトヲ得
地方裁判所ハ会議局ニ於テ父母及ヒ子ノ陳述及ヒ検事ノ意見ヲ聴キ裁判ス可シ
第二百六十条 法律上父母ニ属スル権ヲ変更スル合意ハ無効トス但シ第二百六十八条ニ規定スルモノハ此限ニ在ラス
第四節 庶出子ノ父母ニ特別ナル規則
第二百六十一条 前三節ニ設定スル規則ハ下ノ特例ヲ除クノ外之ヲ庶出子ノ父母ニ適用ス
第二百六十二条 父母ノ中一方ノミニ対シ親子ノ分限確定シタルトキハ其分限ノ確定シタル者親権ヲ行フ
第二百六十三条 父母双方ニ対シ親子ノ分限確定シタルトキハ父親権ヲ行フ
若シ父死去シ若クハ之ヲ行フコト能ハサルトキハ後見ヲ開始ス
第二百六十四条 父母ノ中子ノ監護ニ任スル者ハ其子ヲ代表シ其財産ヲ管理ス
第二百六十五条 子ノ監護ニ任スル者他人ト婚姻ヲ為シタル場合ニモ第二百五十六条第一項ノ規則ヲ適用スルコトヲ得
第九章 後見
総則
第二百六十六条 後見ハ未成年者ノ父若クハ母ナル生存者ノ死去ニ依リテ開始ス
父母共ニ存シ若クハ生存者アリト雖モ親権ヲ失ヒ又ハ之ヲ行フコト能ハサルトキ亦同シ
第二百六十七条 未成年者ノ人数ノ多少ヲ問ハス後見人ハ一名タル可シ但シ正出庶出ノ未成年者アルトキハ庶出未成年者ノ為メニ別ニ後見人ヲ置ク
若シ同一ノ後見ニ属スル数人ノ未成年者ノ間ニ利益相反スルトキハ其住所ノ地方裁判所ハ特別ノ保護ヲ要スル未成年者ニ臨時保管人ヲ付ス
第二百六十八条 親権又ハ後見ニ属スル未成年者ニ財産ヲ贈与シ又ハ贈遺スル者ハ其指名スル保管人ヲシテ其贈与又ハ贈遺スル財産ヲ管理セシム可キ条件ヲ付スルコトヲ得此管理ニ付保管人ハ後見人ニ均キ任務ヲ有ス
未成年者ノ成年ニ達セサル間ニ此管理罷ムトキハ地方裁判所其替代者ヲ命ス
第二百六十九条 後見人ハ親族会ノ認免セサル限リハ後見ヲ承諾セサル可カラス若シ後見人之ヲ承諾セス又ハ其任務ノ執行ヲ怠ルトキハ関係人及ヒ検事ノ請求ニ依リ裁判所ハ後見ノ管理者ヲ命スルコトヲ得
後見人ハ此管理ノ費用ヲ負担シ且ツ其管理者ノ管理ノ責ニ任ス
第一節 後見人
第二百七十条 父母ノ中生存シテ親権ヲ行フ者ハ其生前ニ血族姻族若クハ他人ノ中ニテ後見人ヲ指定スル権ヲ有ス
第二百七十一条 前条後見人ノ指定ハ遺嘱書又ハ公正証書ヲ以テシ若クハ区裁判所判事及ヒ其書記ノ面前ニ於テスル申述ヲ以テスルコトヲ要ス
第二百七十二条 父若クハ母後見人ヲ指定セサリシトキハ当然父系ノ祖父ヲ以テ後見人ト為シ父系ノ祖父之ヲ辞避シ又ハ既ニ死去セシトキハ母系ノ祖父ヲ以テ後見人トス
第二百七十三条 未成年ナル子父若クハ母ノ指定スル後見人モ父系若クハ母系ノ祖父ナル後見人モ有セサルトキ又此後見人認免又ハ斥除セラレ若クハ死去スルトキハ親族会後見人ヲ撰定ス
第二百七十四条 身分取扱人ハ未成年者ヲ遺セシ人ノ死去シタル申述ヲ聴受シ又ハ未成年者ヲ有スル父若クハ母ノ婚姻ヲ為シ他家ニ入リタルコトヲ知リタルトキハ直チニ未成年者ノ住所ノ区裁判所判事ニ之ヲ通知セサル可カラス
未成年者ノ親族ハ親族会ノ招集ヲ請求スルコトヲ得
何人ヲ問ハス後見人ヲ設定ス可キ事実ハ之ヲ区裁判所判事ニ通告スルコトヲ得
第二百七十五条 親子ノ分限確定セサル未成年者アルトキハ検事ノ請求ニ依リ其地ノ地方裁判所後見人ヲ指定ス
父母共ニ知レサル子ノ出生シタル申述ヲ受クル身分取扱人ハ之ヲ其地ノ地方裁判所ノ検事局ニ通知セサル可カラス
第二百七十六条 父母双方若クハ父ノミニ対シ親子ノ分限確定セル庶出未成年者ノ父死去スルトキハ後見ハ遺託後見人ニ属シ之ヲ欠クトキハ父系ノ祖父ニ属シ又之ヲ欠クトキハ親族会後見人ヲ撰定ス
母ノミニ対シ親子ノ分限確定セル庶出未成年者アリテ其母死去スルトキハ後見人ノ設定ハ前項ノ例ニ従フ
第二百七十七条 育児院ニ在ル未成年者ノ後見ハ特別法ヲ以テ之ヲ規定ス
第二節 副後見人
第二百七十八条 後見ニハ一名ノ副後見人ヲ付スルコトヲ要ス此副後見人ハ親族会之ヲ撰定ス
第二百七十九条 遺託後見人及ヒ尊属後見人ハ後見ノ事務ヲ執ル前ニ副後見人撰定ノ為メ親族会ヲ招集セシメサル可カラス若シ後見人カ副後見人ノ撰定前其事務ニ干渉シ詐欺ノ所為アリタルトキハ親族会ハ後見人ノ任務ヲ解クコトヲ得
第二百八十条 親族会後見人ヲ撰定スルトキハ副後見人ハ同時ニ之ヲ撰定スルコトヲ要ス
副後見人ハ後見人ノ属セサル親族若クハ他人ノ中ニ就キテ之ヲ撰定ス但シ庶出子ノ副後見人ニハ必ス他人ヲ撰定ス可シ
未成年者ノ同父母兄弟ハ其一人ヲ後見人ト為シ他ノ一人ヲ副後見人ト為スモ妨ケナシ
第二百八十一条 後見人ヲ改定スル場合ニ於テハ副後見人ノ任務ハ罷ム然レトモ其副後見人ハ再撰セラルヽコトヲ得
第二百八十二条 本章第四節及ヒ第五節ノ条例ハ之ヲ副後見人ニ適用ス
第三節 親族会
第二百八十三条 親族会ハ区裁判所判事及ヒ未成年者ノ最近親族四名ヲ以テ組成ス
区裁判所判事ヲ以テ親族会ノ会長トス
第二百八十四条 未成年者ノ尊属親同父母兄弟伯叔父ハ其順序ヲ逐フテ権利上親族会員ト為ル
若シ四名以上ノ尊属親ヲ存スルトキハ最近親族ヲ以テシ兄弟ノ間若クハ伯叔父ノ間ニ於テハ年長者ヲ以テス
此等ノ親族ヲ欠クトキハ区裁判所判事ハ未成年者ノ父系若クハ母系ノ親族ノ中ニ就キテ未成年者トノ親等ノ関係及ヒ其利益ヲ酌量シ親族会員ヲ撰定ス
親族ヲ欠クトキハ区裁判所判事ハ未成年者ノ父母ト親懇ナルヲ以テ知ラレタル人ヲ撰ンテ会員ト為ス
第二百八十五条 後見人副後見人及ヒ臨時保管人ハ管理事務ニ係ル説明ヲ与フル為メ親族会ノ会議席ニ加列ス然レトモ会議ノ可否決ニ与ルコトヲ得ス
満十六年ニ達セル未成年者モ亦其席ニ列スルコトヲ得
第二百八十六条 若シ親族会員タル人隔遠ノ地ニ住スルノ原由其他正当ナル事由ノ為メ会員タルコトヲ得サルトキハ区裁判所判事ハ之ヲ認免シ第二百八十四条ノ規則ニ従ヒ其替代者ヲ撰定ス
後見ノ継続中ニ会員ノ任務罷ムトキ其替代者ヲ撰定スルモ第二百八十四条ノ規則ニ従フ
第二百八十七条 親族会員タル者ハ親族ナルト朋友ナルトヲ問ハス躬ラ会議ニ臨席スルコトヲ要ス
正当ノ事由ナクシテ会議ニ列セサル者ハ壱円九十五銭以下ノ科料ニ処ス此科料ハ区裁判所判事之ヲ宣告ス
毎ニ欠席スル会員アルトキハ区裁判所判事ハ之ヲ罷免シ地方裁判所ノ検事ニ其旨ヲ通知シ裁判所ハ検事ノ請求ニ依リ五円以上百円以下ノ罰金ニ処スルコトヲ得
区裁判所判事其替代者ヲ撰定スルハ第二百八十四条ニ従フ
第二百八十八条 親子ノ分限確定セル庶出未成年者ノ親族会ハ前数条ノ規則ニ従ヒ之ヲ組成ス但シ父子ノ分限確定セル場合ニ於テハ父ノ姻族母及ヒ母系ノ血族ハ会員タルコトヲ得ス
親子ノ分限確定セサル未成年者アルトキハ区裁判所判事ハ管内ニ於テ市町村会議員タル資格ヲ有スル者ノ中ニ就キテ親族会員ヲ撰定ス
第二百八十九条 未成年ナル養子ノ親族会員ニハ実家ノ親族ヲモ撰定スルコトヲ得
第二百九十条 親族会ハ後見開始ノ時ニ於テ未成年者ノ住所ノ区裁判所判事前数条ノ規則ニ従ヒ之ヲ組成ス
此親族会ハ会員ノ死去認免若クハ罷黜ニ因リ替代スルノ外常存ス
後見人若クハ会員ノ請求ニ依リ裁判所カ親族会ノ在所ヲ移サヽル限リハ未成年者ノ原住所ヲ以テ其在所トス
第二百九十一条 区裁判所判事ハ職権ヲ以テ親族会ヲ招集シ又ハ後見人、副後見人、保管人、親族会員、関係人若クハ検事ノ請求ニ依リ之ヲ招集ス
招集ハ予メ会議ノ目的ヲ知ラシムルコトヲ要ス
第二百九十二条 親族会集会ノ期日ハ区裁判所判事之ヲ定メ若シ会員尽ク一市町村内ニ住シ又ハ三里以内ニ住スルトキハ集会ノ当日ト集会通達ノ日トニ少クトモ三日ノ期間ヲ存スルコトヲ要ス若シ此里程外ニ住スル会員アルトキハ八里毎ニ一日ヲ加フ可シ八里ニ満タサルモノト雖モ三里以上ナルトキ亦同シ
第二百九十三条 参集セサル親族会員ヲ待ツノ必要アルトキ又ハ其替代者ヲ指定スルコトヲ要スルトキハ区裁判所判事ハ集会ヲ延期スルコトヲ得
未成年者ノ利益カ延会ヲ要スルトキ亦同シ
第二百九十四条 親族会ノ集会ハ区裁判所判事ノ宅ニ於テ之ヲ開ク但シ区裁判所判事他ノ場所ヲ指定スルハ此限ニ在ラス
第二百九十五条 親族会ノ会議ヲ為スニハ総テノ会員ヲ招集シ区裁判所判事ノ外少クトモ二名以上ノ会員ノ臨席ヲ要ス
会議ハ過半数ヲ以テ之ヲ決シ同数ナルトキハ区裁判所判事之ヲ決ス
第二百九十六条 親族会員ハ自己ノ利益ノ関係スル会議ニ列スルコトヲ得ス
第二百九十七条 親族会ノ決議全会一致セサルトキハ各会員ノ意見ハ其理由ト共ニ会議録ニ之ヲ登載ス可シ
第二百九十八条 後見人、副後見人、保管人、検事及ヒ決議ニ同意セサル親族会員区裁判所判事ハ親族会ノ為シタル決議ノ本案ヲ訟撃スルコトヲ得
第二百九十九条 親族会ノ決議ハ左ノ場合ニ於テハ不成立トス
一 区裁判所判事欠席シ若クハ関係セスシテ会議ヲ為シタルトキ
二 総会員ヲ招集セサリシトキ
三 会議ノ際区裁判所判事ノ外会員二名以上ナラサリシトキ
四 会議カ第二百九十五条ニ定ムル多数ニ依リ決セラレサリシトキ
第三百条 前条ノ場合ヲ除キ他ノ違法ノ所為アリテ未成年者ノ利益ヲ害スルトキハ其決議ヲ無効ト為スコトヲ得
第三百一条 第三者ハ自己ノ権利ヲ害スル決議ヲ訟撃スルコトヲ得
然レトモ法式違背ニ関スル第三者ノ訟撃ハ第二百九十九条ニ違フトキニ非サレハ之ヲ為スコトヲ得ス
未成年者ノ利益ノ為メニ設ケタル其他ノ法式ニ関シテハ第三者ハ其利益カ未成年者ノ利益ト混同スルトキ非サレハ其法式ノ違背ヲ申立ルコトヲ得ス
第三百二条 如何ナル場合ト雖モ親族会ヲ招集スル必要アルトキハ総テ本節ノ規則ニ従フ
第四節 後見ノ認免
第三百三条 左ニ掲クル者ハ後見人タルコトヲ認免ス
一 現役ニ服スル軍人軍属
二 後見ヲ設定スル府県ノ外ニ於テ官ノ職務ニ従事スル人
三 公務ヲ帯ヒテ外国ニ在ル人
第三百四条 前条ニ掲クル人其職務ヲ有スルニ拘ラス後見ヲ承諾セルトキハ此原由ニ依リ更ニ認免セラルルコト無シ
其職務ノ終ニ当リ現任後見人其解任ヲ請求シ又ハ後見ノ認免ヲ得タル人就任ヲ請求スルトキハ親族会ハ此請求ヲ認許スルコトヲ得
第三百五条 未成年者ノ親族ニ非サル者ハ後見ヲ設定スル地ノ地方裁判所管内ニシテ五里以内ニ後見ニ適スル親族アルトキハ後見ヲ承諾セサルコトヲ得
若シ親族タル者後見ヲ認免セラレタル原由罷ムトキハ親族ニ非サル後見人ハ其後見ノ解任ヲ請求スルコトヲ得
第三百六条 後見人ハ其認免若クハ解任ヲ得ル為メニ法律ニ掲ケサル原由ヲモ申立ルコトヲ得
第三百七条 認免及ヒ解任ハ総テ親族会ノ会議ニ付ス
認免及ヒ解任ノ請求ヲ拒却セラレタル人ハ地方裁判所ニ抗告スルコトヲ得但シ其裁判宣告マテハ後見ノ任務ヲ執行セサル可カラス
第三百八条 後見人解任ヲ請求スルトキハ親族会ハ何時ニテモ未成年者ノ利益ノ為メニ之ヲ許スコトヲ得若シ全会一致ニテ之ヲ決定セサリシトキハ裁判所ノ認可ニ付スルコトヲ要ス
第五節 後見人及ヒ親族会員ノ欠格斥除及ヒ罷黜
第三百九条 左ニ掲クル者ハ後見人タルコトヲ得ス又親族会員タルコトヲ得ス
一 未成年者
二 民事上禁治産者及ヒ准禁治産者
三 婦女但シ未成年者ノ尊属親ヲ除ク
四 未成年者ノ身分若クハ財産ノ主要ナル部分ニ関シテ訴訟ヲ為ス人及ヒ其尊属親卑属親配偶者
若シ此等ノ欠格者カ後見事務ヲ管理スルトキハ親族会ノ決議ニ依リ之ヲ放棄セシム
第三百十条 左項ニ掲クル者ハ後見及ヒ親族会ヨリ斥除セラル可シ現ニ任務ニ従事スル者ハ之ヲ罷黜ス
一 太甚シキ不行跡ナル者
二 後見人ニシテ其管理ニ不能力若クハ不正実ヲ彰示スル者
三 裁判所ニ於テ子ノ財産ノ管理ヲ止メラレタル者
四 不能力不行跡若クハ不正実ノ原由ニ依リ後見ヲ解任斥除罷黜セラレ若クハ親権ヲ喪失シタル者
五 任務ヲ免セラレタル裁判上ノ保管人
六 剥奪公権停止公権及ヒ刑事上禁治産ノ宣告ヲ受ケタル者
七 復権ヲ得サル破産者
第三百十一条 後見人ヲ斥除若クハ罷黜ス可キトキハ副後見人ノ請求ニ依リ又ハ区裁判所判事ノ職権ヲ以テ招集スル親族会ニ於テ之ヲ為ス
未成年者ノ親族ニシテ従兄弟以内ノ親等ノ者此招集ヲ請求スルトキハ区裁判所判事ハ之ヲ為ササル可カラス
第三百十二条 後見人ノ斥除若クハ罷黜ニ関スル親族会ノ決議ハ其理由ヲ付ス可シ但シ此決議ハ後見人ノ陳述ヲ聴キ又其召喚ヲ為シタル後ニ非サレハ之ヲ為スコトヲ得ス
第三百十三条 若シ後見人会議ノ決議ヲ承認スルトキハ之ヲ会議録ニ載セ後任ノ後見人直チニ其任務ニ従事ス
若シ後見人決議ヲ承認セサルトキハ副後見人ハ地方裁判所ニ其決議ノ認可ヲ請求シ裁判所ハ後見人ノ陳述ヲ聴キ裁判ス此裁判ニ対シテハ抗告スルコトヲ得
斥除若クハ罷黜セラレタル後見人ハ其任務ヲ保有スル為メ副後見人ニ対シテ起訴スルコトヲ得
第三百十一条第二項ニ従ヒ親族会ノ招集ヲ請求セル親族ハ其訴訟ニ参加スルコトヲ得
此訴訟ハ要急事件トシテ審理シ裁判スルコトヲ要ス
第六節 後見人ノ管理
第三百十四条 遺託後見人及ヒ尊属後見人後見ノ開始ヲ知ルトキハ直チニ其任務ニ就クコトヲ要ス若シ其場所ニ在ラサルトキハ何人ニテモ此開始ヲ区裁判所判事ニ通知シ区裁判所判事之ヲ後見人ニ通知ス
親族会ニ於テ後見人ヲ撰定シ其後見人列席スルトキハ直チニ任務ニ就キ若シ列席セサルトキハ区裁判所判事ノ之ヲ通知セル当日ヨリ其任務ニ就クコトヲ要ス
第三百十五条 後見人ハ懇切ニ未成年者ヲ待遇シ未成年者ハ後見人ニ対シ恭順ナラサル可カラス
第三百十六条 後見人ハ未成年者ヲ監護シ其教育ヲ担任ス若シ在来ノ住居若クハ教育方法ヲ変更セントスルトキハ親族会ニ協議セサル可カラス協議詣ハサルトキハ地方裁判所ニ申立テ裁判所ハ未成年者満十二年以上ナルトキハ其意見ヲ聴キ之ヲ裁判ス
副後見人及ヒ親族会員ハ未成年者ノ住居若クハ教育ニ付意見アルトキハ何時ニテモ親族会ノ招集ヲ請求スルコトヲ得
第三百十七条 後見人ハ第二百四十三条ニ従ヒ未成年者ヲ懲戒スル権ヲ有ス
未成年者ノ行状ニ付重大ナル不満アルトキハ後見人ハ親族会ニ之ヲ通知シ其允許ヲ得タル上第二百四十四条ニ従ヒ未成年者ヲ処分スルコトヲ得
若シ後見人其権ヲ妄用シ若クハ其義務ヲ怠ルトキハ未成年者其他総テノ親族ハ親族会ニ之ヲ申告スルコトヲ得
第三百十八条 後見人ハ一切ノ権利行為ニ於テ未成年者ヲ代表シ善良ノ管理者ノ如ク其財産ヲ管理シ管理ノ不良ヨリ生スル損害賠償ノ責ニ任ス
第三百十九条 後見人ハ当然其任務ニ就クヘキ日ヨリ起算シテ十日内ニ未成年者ノ財産ニ係ル封印ノ開放ヲ請求シ副後見人ノ立会ニ於テ直チニ財産ノ調査ニ従事セサル可カラス
財産目録ノ調製ハ一个月内ニ之ヲ終ラサル可カラス区裁判所判事ハ事宜ニ依リ延期ヲ許スコトヲ得
遺嘱ヲ以テ目録調製ヲ釈免セサルトキハ此釈免ハ不成立ト看做サル可シ
第三百二十条 若シ後見人カ未成年者ノ債務者或ハ債権者ナルトキハ目録ノ調製前之ヲ公証人ニ明言セサル可カラス
後見人其債権ノ存在ヲ知リテ之ヲ明言セサリシトキハ其債権ヲ喪失ス若シ債務ノ存在ヲ知リテ之ヲ明言セサリシトキハ其後見ヲ罷黜スルコトヲ得此終ノ場合ニ於テハ地方裁判所ハ後見人ヲ五円以上百円以下ノ罰金ニ処スルコトヲ得
第三百二十一条 適法ノ期限内ニ正確ナル目録ヲ調製セサリシ後見人ハ其任務ヲ罷黜セラルヘシ此場合ニ於テハ前条ノ罰則ヲ適用ス正確ナル目録ヲ調製セサリシ動産ノ箇数及ヒ価直ハ世評ヲ以テモ之ヲ定ムル事ヲ得
第三百二十二条 財産目録ノ調製ヲ終ラサル間ハ後見人ハ要急欠ク可カラサル管理行為ノミヲ為ス事ヲ得
第三百二十三条 後見人ハ目録調製ヲ終リタル後親族会カ保存ニ及ハスト認ムル有形動産ヲ一个月内ニ副後見人ノ立会ニテ糶売ニ付ス
親族会ハ其動産ノ示談売却ヲ後見人ニ許スコトヲ得
第三百二十四条 後見任務ノ執行ノ始ニ於テ親族会ハ未成年者ニ与フヘキ教育ノ程度ト其資産トニ従ヒ毎年費スヘキ金額及ヒ財産管理ニ係ル費用ヲ規定ス
親族会ハ相当ノ給料ヲ与フル一名若クハ数名ノ管理者ヲ後見人カ自己ノ責任ヲ以テ用ユルコトヲ許スヲ得
第三百二十五条 後見人ハ未成年者ノ資本及ヒ収入ノ剰額ヲ其都度貯金預金所ニ預ケ置ク可シ其預ケサリシ金額ニ付テハ法律上ノ利息ヲ弁済ス可シ
後見人未成年者ノ資産ニ付他ノ利用法ヲ為サントスルトキハ親族会ノ允許ヲ必要トス
後見人未成年者ノ財産ヲ自己ノ用ニ供セシトキハ当然其利息及ヒ其利息ノ利息ヲ弁済セサル可カラス
第三百二十六条 尊属後見人ヲ除クノ外後見人ハ親族会ノ指定スル時期ニ一个年内ノ管理ノ状況ヲ親族会ニ報告セサル可カラス親族会ハ会員一名ニ命シ之ヲ調査セシメ決議ノ上区裁判所書記局ニ其状況書ヲ差出シ置ク可シ
第三百二十七条 後見人ハ財産管理ノ権ヲ有スルニ止リ此権外ノ行為ハ法律ニ定ムル条件ニ依ルニ非サレハ之ヲ為スコトヲ得ス
後見人ハ管理ノ為メ其権内ニ於テ債務ヲ約スルコトヲ得
第三百二十八条 親族会ハ法律ニ規定セル後見人ノ権限ヲ変改スルコトヲ得ス
第三百二十九条 左ニ掲クル行為ニ関シテハ後見人ハ親族会ノ允許ヲ得サル可カラス
一 未成年者ノ資本ヲ領受シ之ヲ利用スルコト
二 動産不動産ヲ獲得スルコト但シ未成年者ノ日用ノ為メ及ヒ其財産ノ管理ノ為メ獲得スルハ此限ニ在ラス
三 新築改築増築若クハ大修繕ヲ為スコト
四 第六百二十六条ニ定ムル時期ヲ超過スル賃貸ヲ為スコト
五 相続贈遺及ヒ贈与ヲ受諾スルコト
六 分派若クハ仮分派ノ請求ヲ為ス事但シ分派訴権ヲ受クルニ付テハ親族会ノ允許ヲ要セス
第三百三十条 左ニ掲クル行為ニ関シテハ後見人ハ親族会ノ允許及ヒ地方裁判所ノ認可ヲ得サル可カラス
一 未成年者ノ動産不動産ヲ移付シ若クハ之ニ物上権ヲ負ハシムルコト但シ収実ヲ時価ニテ売却シ又ハ毀損スヘキ動産ヲ売却スルハ此限ニ在ラス
二 借財ヲ為スコト
三 相続贈遺若クハ贈与ヲ拒却スルコト
四 未成年者ノ動産不動産ノ権限ニ係ル訴権ヲ行フコト訴権ヲ放棄スルコト訴権ニ抗弁スルコト又此権利ニ関シ請求ニ承服スルコト和解ヲ為スコト仲裁ニ付スルコト
第三百三十一条 親族会ノ允許ハ各行為ニ対シテ特別ナラサル可カラス
財産ノ移付物上権ノ設定借財ハ必要ノ原由若クハ明確ノ利益ノ存スルニ非サレハ之ニ允許ヲ与フ可カラス
親族会ハ売却スヘキ財産及ヒ其売却ニ係ル条件ヲ定ムルコトヲ要ス其売却ハ訴訟法ニ定ムル条例ニ従フ但シ親族会ハ示談売却ヲ允許スルコトヲ得
第三百三十二条 親族会ノ決議ニ付認可ノ請求アリタルトキハ地方裁判所ハ検事ノ意見ヲ聴キ会議局ニ於テ之ヲ決定ス
裁判所ハ末成年者ノ利益ニ必要ト認定スルトキハ親族会ノ決議ヲ改修スルコトヲ得
第三百三十三条 未成年者ニ未分ニテ属スル財産ノ売却ハ糶売ニ依ル其手続ハ民事訴訟法ニ定ムル条例ニ従フ
第三百三十四条 後見人ハ未成年者ノ財産ヲ買得スルコトヲ得ス又未成年者ニ反対シテ権利ノ譲受人タルコトヲ得ス
第三百三十五条 後見人ハ親族会ノ允許及ヒ地方裁判所ノ認可ヲ得ルニ非サレハ未成年者ノ家屋土地ヲ賃借スルコトヲ得ス
第三百三十六条 後見人其権内ニ於テ為シタル行為ハ未成年者ヲ羈絆ス
後見人適法ノ手続ヲ為サスシテ為シタル行為ハ当然無効トス
第七節 副後見人ノ任務
第三百三十七条 副後見人ハ後見人ノ管理ヲ監視スルノ任ヲ有ス
副後見人ハ後見人ヲ欠クトキト雖トモ後見任務ヲ行ハス此場合ニ於テハ直チニ後任ノ後見人撰定ノ手続ヲ為ササル可カラス此手続ヲ為ササルトキハ因テ生スル所ノ損害賠償ノ責ニ任ス
第三百三十八条 未成年者ノ利益ト後見人ノ利益ト相反スル場合ニ於テハ副後見人ハ未成年者ヲ代表ス此場合ニ於テハ臨時副後見人ヲ撰定ス
第三百三十九条 如何ナル場合ニ於テモ副後見人ハ保存行為ヲ為スコトヲ得
第三百四十条 法律上副後見人ノ立会フヘキ行為ニシテ其立会無クシテ為シタルモノハ無効トス
第八節 後見ノ了終
第三百四十一条 後見ハ一身ノ任務ニシテ後見人ノ相続人ニ転移スルモノニ非ス
相続人ハ後見人ノ為シタル管理ニ付責任ヲ有ス若シ相続人成年者ナルトキハ後任後見人ノ任務ニ就クマテ管理ヲ継続セサル可カラス
第三百四十二条 罷黜認免若クハ解任セラレタル後見人ハ其後任者ノ任務ニ就クマテ仍ホ後見ニ係ル管理ヲ負担ス
第三百四十三条 未成年者カ成年ニ達シ若クハ自治ニ至ルニ依リ後見罷ムトキハ後見人ハ其計算ヲ終ルマテ其管理ヲ継続ス
第三百四十四条 仮リニ後見ノ管理ヲ為ス者ハ必要ナルカ若クハ明瞭ニ有益ナル行為ノミヲ為ス事ヲ得
第九節 後見ノ計算
第三百四十五条 後見人ハ其管理ノ了終スルトキニ管理ノ計算ヲ為ササル可カラス
贈与者ノ為ス管理計算ノ釈免ハ不成立ト看做サル可シ
第三百四十六条 後見ノ決算ハ副後見人ノ立会ニテ未成年者ノ成年ニ達シタル者又ハ自治ニ至リタル未成年者ニ対シテ之ヲ為ス
後見カ若シ後見人ノ身ニ係リ了終スルトキハ決算ハ後任後見人ニ対シテ之ヲ為シ親族会ノ認許ニ付ス
後見カ若シ未成年者ノ死去ニ依リテ了終スルトキハ決算ハ其相続人ニ対シテ之ヲ為ス
後見ノ決算ニ係ル費用ハ未成年者ノ担任ニ属ス後見人ハ其立替払ヲ為ス可シ
第三百四十七条 後見ノ決算ハ管理了終ノ日ヨリ起算シ三个月内ニ之ヲ為ササル可カラス
地方裁判所ハ当事者ノ請求ニ依リ其延期ヲ許ス事ヲ得
第三百四十八条 後見人ト未成年者ノ成年ニ達セル者トノ合意ハ如何ナルモノタルヲ問ハス後見ノ決算ヲ為シ親族会其決算ヲ査認シタル後ニ為シタルモノニ非サレハ無効トス
第三百四十九条 後見ノ費用ハ予算ノ定額ヲ超ユルト雖モ後見人其有益タルコトヲ証明シタルトキハ之ヲ後見人ニ弁償ス可シ
第三百五十条 後見人ノ未成年者ニ返済スヘキ金額ニシテ未タ返済セサルモノハ決算完結ノ日ヨリ当然利息ヲ生ス
未成年者ノ後見人ニ返済スヘキ金額ハ決算完結ノ後後見人ノ催告ニ因リ利息ヲ生ス
第三百五十一条 後見管理ノ計算ニ係ル未成年者ノ訴権ハ十年ノ時効ヲ以テ消滅ス後見人其他後見管理ヲ為シタル人ノ未成年者ニ対スル訴権モ亦同シ
未成年者ト副後見人若クハ親族会員トノ間ニ於テ後見ニ係ル訴権ニ関シテモ亦前項ヲ適用ス
此期限ハ未成年者ノ成年ニ達シ若クハ死去シタル日ヨリ起算ス第三百四十八条ノ場合ニ於テ管理ノ計算ニ係ル訴権ニ付テハ契約無効ノ裁判宣告ノ日ヨリ之ヲ起算ス
第三百五十二条 後見人副後見人親族会員其他後見管理ヲ為シタル者ハ代理契約ノ原則ニ従ヒ其過失ノ責ニ任ス
第十章 未成年者ノ自治
第三百五十三条 未成年者ハ其婚姻ニ依リ直チニ自治ノ権ヲ有ス
第三百五十四条 親権ヲ行フ父若クハ母ハ満十五年ニ達セル未成年ノ子ニ自治ヲ許スコトヲ得
此自治ハ身分取扱人ニ為シタル申述ニ依リ成立ス
第三百五十五条 父母ヲ有セサル未成年者満十八年ニ達スルトキハ親族会ハ未成年者ニ自治ヲ許スコトヲ得
此場合ニ於テハ自治ハ親族会ノ決議ヨリ生ス
第三百五十六条 若シ後見人カ未成年者ニ自治ヲ許スノ発議ヲ為ササルトキハ区裁判所判事ハ職権ヲ以テ親族会ヲ招集シ之ヲ議セシムル事ヲ得
親族ノ請求アルトキハ区裁判所判事ハ此招集ヲ為ササル可カラス
第三百五十七条 自治ノ未成年者ハ之ヲ保管ニ付ス
親権ヲ行ヒタル父若クハ母ハ当然其保管人トス
父母ノ中生存シテ親権ヲ行フ者ハ生前第二百七十一条ニ従ヒ保管人ヲ指定スルコトヲ得
夫ハ当然未成年ナル婦ノ保管人トス
其他ノ場合ニ於テハ親族会保管人ヲ撰定ス
第三百五十八条 後見人ニ関シテ定メタル認免欠格斥除罷黜ハ之ヲ保管人ニ適用ス
第三百五十九条 自治ノ未成年者ハ単独ニテ純然ノ管理行為ノミヲ為スコトヲ得
第三百六十条 父ニシテ其子ノ財産ヲ管理シタル者ハ保管人ノ立会ニテ其自治ノ子ニ管理ノ決算ヲ為ササル可カラス
此場合ニ於テ親族会ハ臨時保管人ヲ撰定ス
第三百六十一条 自治ノ未成年者ハ其保管人ノ立会アルニ非サレハ資本若クハ所得ヲ領受スルコトヲ得ス
保管人ハ自治ノ未成年者カ其日用ニ供セサル金額ヲ貯金預所ニ預クルコトヲ監視ス
金額ノ其他ノ利用法ハ親族会ノ允許ヲ要ス
第三百六十二条 第三百二十九条ニ掲クル行為ハ自治ノ未成年者其保管人ノ立会アルニ非サレハ之ヲ為スコトヲ得ス
第三百六十三条 第三百三十条ニ掲クル行為ハ自治ノ未成年者親族会ノ允許地方裁判所ノ認可及ヒ保管人ノ立会アルニ非サレハ之ヲ為スコトヲ得ス
第三百三十一条及ヒ第三百三十二条ハ此場合ニモ亦之ヲ適用ス
第三百六十四条 自治ノ未成年者カ保管人ノ立会ヲ要スル行為ヲ其立会無クシテ為シタルトキハ其未成年者ハ損失ノ原由ニ基キ契約ノ無効訴権ヲ有ス
法律ニ規定セル法式ニ依ラスシテ為シタル行為ニ付テハ自治ノ未成年者ハ損失ヲ証明セスシテ無効ヲ請求スルコトヲ得
第三百六十五条 保管人カ自治ノ未成年者ノ行為ニ立会フコトヲ拒ムトキハ其未成年者ハ親族会ヲシテ臨時保管人ヲ撰定セシムルコトヲ得
第三百六十六条 父母ヲ除クノ外保管人ハ後見人ト一般ニ其過失ノ責ニ任ス
第三百六十七条 自治ノ未成年者ハ其不行跡若クハ財産管理ノ不良ニ依リ自治者タルニ適セサルトキハ親族会ハ其自治ヲ止ムルコトヲ得
親権ヲ行ヒタル父母若シ父母ヲ欠クトキハ親族会員及ヒ保管人ハ自治ノ廃止ヲ請求スルコトヲ得
自治廃止ノ当日ヨリ其未成年者ハ親権若クハ後見ニ属シ成年ニ達スルマテ復タ自治ヲ許サルルコトヲ得ス
第十一章 禁治産
第一節 民事上禁治産
第三百六十八条 心神喪失ノ常況ニ在ル者ハ仮令ヒ時々本心ニ復スルコトアルモ治産ヲ禁セラル可シ
第三百六十九条 禁治産ハ血族配偶者及ヒ検事之ヲ請求スルコトヲ得
禁治産ヲ請求スル権利ヲ有スル一人ノ申立ニ依リ宣告セル裁判ハ他ノ総テノ人ニ対シ既判ノ効ヲ有ス
第三百七十条 禁治産者ハ之ヲ後見ニ付ス
配偶者ハ当然互相ニ後見人ト為ル可シ若シ配偶者ヲ欠クトキハ禁治産者ノ父ヲ以テ後見人ト為ス之ヲ欠クトキハ親権ヲ行フコトヲ得ヘキ母ヲ以テ後見人ト為ス
法律上ノ後見人ハ第二百七十一条ノ法式ニ従ヒ後見人ヲ指定スルコトヲ得
若シ法律上ノ後見人及ヒ遺託後見人存セス又後見人認免斥除若クハ罷黜セラレタルトキハ後見ノ章ニ定メタル法式ニ従ヒ親族会ニ於テ後見人ヲ撰定ス
第三百七十一条 配偶者尊属親卑属親ヲ除クノ外何人タリトモ十个年以上禁治産者ノ後見ヲ担任スルニ及ハス
第三百七十二条 未成年者ノ後見ニ係ル規定ハ禁治産者ノ後見ニ適用ス
禁治産者ハ其財産ニ付未成年者ト同視セラルヘシ
第三百七十三条 禁治産者ノ所得ハ療治其他本人ノ保養ノ為メニ之ヲ用ユ可シ
其疾病ノ性質ト其資産ノ状況トニ従ヒ自宅ニ於テ療養セシメ若クハ病院ニ入ラシムルハ親族会之ヲ決ス但シ瘋癲病院ニ入ラシメ又ハ自宅ニ監置スル手続ハ特別法ヲ以テ之ヲ定ム
第三百七十四条 禁治産者ノ後見人ハ其住居ニ使用スル家具ヲ売却ス可カラス
第三百七十五条 法律上ノ後見人ハ第三百二十六条ニ定ムル管理ノ状況ヲ報告スルコトヲ要セス
第三百七十六条 配偶者ナキ禁治産者ノ財産ヲ以テ其子孫ノ婚姻若クハ営業ノ為メ資財ヲ与ヘントスルトキハ親族会之ヲ決シ地方裁判所ノ認可ニ付ス可シ
第三百七十七条 禁治産者ハ禁治産ノ裁判宣告ノ当日ヨリ無能力者トス
裁判宣告後ニ為シタル禁治産者ノ行為ハ当然無効トス
後見人禁治産者其相続人及ヒ承権者ハ無効ヲ請求スルコトヲ得
第三百七十八条 禁治産ノ裁判宣告前ニ係ル行為ト雖モ其行為ノ当時ニ於テ失心明確ナルトキハ之ヲ無効ト為スコトヲ得
若シ禁治産者ト結約シタル者其失心ノ状況ヲ知リタルトキハ仮令ヒ失心明確ナラスト雖モ契約ヲ無効ト為スコトヲ得
第三百七十九条 禁治産ノ原由罷ミタルトキハ本人其配偶者親族若クハ検事ノ請求ニ依リ其禁ヲ解ク可シ
禁治産者ハ解禁ノ裁判宣告後ニ非サレハ其権利ヲ回復スルコトヲ得ス
第二節 准禁治産
第三百八十条 心神耗弱者聾唖者生盲者及浪費者ハ之ヲ保管ニ付スルコトヲ得
保管人ハ配偶者三親等マテノ血族及ヒ尊属タル姻族ノ請求ニ依リ地方裁判所ニ於テ検事ノ意見ヲ聴キ之ヲ指定ス
第三百八十一条 第三百五十八条第三百五十九条第三百六十一条第三百六十二条第三百六十三条第一項第三百六十五条及ヒ第三百六十六条ハ親族会ニ係ルモノヲ除クノ外之ヲ准禁治産ニ適用ス但シ第三百六十五条ニ於ケル臨時保管人ハ地方裁判所之ヲ指定ス
裁判所ハ状況ニ従ヒ准禁治産者保管人ノ立会フニ非サレハ管理行為ヲモ為スコトヲ得スト裁判スルコトヲ得
第三百八十二条 准禁治産ノ原由罷ミタルトキハ本人及ヒ第三百八十条第二項ニ掲クル者ノ請求ニ依リ其禁ヲ解ク可シ
第三節 刑事上禁治産
第三百八十三条 刑事上禁治産ヲ受ケタル者ハ其財産ヲ管理スルコトヲ得ス又遺嘱ヲ以テスルノ外ハ其財産ヲ処置スルコトヲ得ス
禁治産ノ効果ハ裁判確定ノ当日ヨリ生ス
第三百八十四条 刑事上禁治産者ニハ治産人ヲ付シ其財産ヲ治セシム此治産人ノ指定及ヒ治産ノ方法ハ民事上禁治産者ノ後見ニ係ル条例ヲ適用ス
第三百七十六条ノ場合ニ於テハ禁治産者ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス
第三百八十五条 禁治産者ノ所得ハ領収ノ都度貯金預所ニ預ケ刑期間ハ之ヲ禁治産者ニ与フルコトヲ得ス
第三百八十六条 刑事上禁治産ノ効果ハ主刑ノ終ニ於テ罷ム
附録 瘋癲者ノ仮管理
第三百八十七条 禁治産ヲ受ケサル瘋癲者アルトキハ配偶者親族及ヒ検事ハ特別法ニ定ムル手続ニ従ヒ地方裁判所長ノ允許ヲ得テ之ヲ瘋癲病院ニ入レ若クハ自宅ニ監置スルコトヲ得
此場合ニ於テハ裁判所ハ関係人及ヒ検事ノ請求ニ依リ会議局ニ於テ直チニ仮管理人ヲ指定ス
第三百八十八条 瘋癲病院ニ入リ若クハ自宅ニ監置セラレタル者ハ其入院若クハ監置ノ間ハ其財産ヲ管理シ及ヒ処置スルコトヲ得ス
第三百八十九条 仮管理人ハ一切ノ権利行為ニ於テ瘋癲者ヲ代表シ禁治産者ノ後見人ト同視セラルヘシ但シ必要ナルカ若クハ明瞭ニ有益ナル行為ニ非サレハ之ヲ為スコトヲ得ス
第三百九十条 瘋癲者入院若クハ監置中ニ為シタル行為ハ本人其承権者及ヒ仮管理人之ヲ訟撃スルコトヲ得
裁判所ハ瘋癲者入院若クハ監置中ニ行為ヲ為シタルノ証拠アルトキハ其行為ヲ無効ト為スコトヲ得但シ対手人ハ瘋癲者本心ニテ行為ヲ為シタルコトヲ証明スルトキハ此限ニ在ラス
第三百九十一条 瘋癲者ノ無能力ハ裁判所仮管理ヲ解クトキニ罷ム
仮管理ハ入院若クハ監置ヲ求メタル原由ノ罷ムトキハ特別法ノ手続ニ従ヒ之ヲ解クコトヲ得
第十二章 戸主及ヒ家族
第三百九十二条 独立シテ一家ヲ成ス者ヲ戸主ト為シ其家内ニ在ル親族ヲ家族ト為ス
戸主及ヒ家族ノ婦ハ其戸主ノ家族ト為ス
第三百九十三条 家族ハ婦及ヒ未成年者ヲ除クノ外分家ヲ為シ又ハ親属ニ係ル廃絶家ヲ再興スルコトヲ得
第三百九十四条 他家ノ入夫若クハ婦ト為リタル者婚姻無効若クハ離婚ノ場合ニ於テハ実家ニ復帰シ其家族ト為ルモノトス実家已ニ廃絶シ又ハ之ニ復帰スルコトヲ欲セサルトキハ其廃絶家ヲ再興シ若クハ一家ヲ新立スルコトヲ得
第三百九十五条 父母ノ知レサル子ハ其認知ヲ受ケサル間ハ一家ヲ新立シタルモノト為ス
第三百九十六条 第二百廿九条第一項ニ記載シタル養子ハ一家ヲ新立シタルモノトス
第三百九十七条 特例婚姻ノ場合ニ於テハ婚姻ノ継続中其夫ヲ以テ戸主ト為ス
第三百九十八条 戸主失踪ノ宣言ヲ受ケタル後其家督ノ占有ヲ得タル者ハ其占有中戸主ト為ス
第三百九十九条 失踪ノ宣言ヲ受ケタル単身戸主ノ亡失若クハ最後音信ノ日ヨリ満三十个年ニ至リ又ハ其齢満百年ニ至ルマテ家督相続ノ占有者無キトキハ当然絶家トス
第四百条 戸主死去ノ後家督相続ヲ為ス者無キトキハ当然絶家トス此場合ニ於テ其家族ハ各一家ヲ新立シタルモノト看做ス戸主廃家シ若クハ国民分限喪失シタル場合ニ於テモ亦同シ
第四百一条 家督相続ニ因リ戸主ト為リタル者ハ他家ノ入夫ト為リ又ハ婦ト為ルコトヲ得ス
第十三章 住所
第四百二条 何人ト雖モ私権ノ行用ニ関シテハ其生計ノ中心タル所ノ地ニ其住所ヲ有ス
住所ニハ法定ノモノアリ又随意ノモノアリ
第四百三条 家督相続ヲ為シ戸主ト為ル者ハ其前戸主ノ住所ヲ以テ其住所ト為ス
家族ハ能力者タリト雖モ其戸主ノ住所ヲ以テ其住所ト為ス
第四百四条 法定ノ住所ハ法律ノ之ヲ付与シタル原由ト共ニ止息ス
然レトモ法定ノ住所止息シタル後反対ノ意ヲ申述セサル者ハ同処ニ住所ヲ定メタルモノト推測ス
第四百五条 戸主其生計ノ中心ヲ他処ニ定ムルノ意思ヲ以テ其居所ヲ移ストキハ住所ノ変更ヲ生ス
此意思ハ其居住セント欲スル地ノ身分取扱役所ニ為シタル申述ヲ以テ其証トス
民事上禁治産ヲ受ケタル戸主ノ住所ハ後見人本条ノ規則ニ従ヒ之ヲ変更スルコトヲ得
第四百六条 家族タル者一家ヲ成ストキハ其生計ノ中心ヲ定ムル地ノ身分取扱役所ニ其意見ヲ申述シテ其住所ヲ定ムルコトヲ得
外国人モ本条ノ規則ニ従ヒ其住所ヲ帝国内ニ定ムルコトヲ得
第四百七条 左ノ場合ニ於テハ居所ハ住所ニ代用ス
一 一個人ノ住所全ク知レサルトキ
二 帝国ニ住所ヲ定メサル外国人ニ関スルトキ
第四百八条 何人ト雖モ或ル行為又ハ事務ノ為メ臨時住所ヲ撰定スルコトヲ得
又法律ハ或ル場合ニ於テ臨時住所ノ撰定ヲ命スルコトアリ
第四百九条 臨時住所ノ撰定ハ明瞭ナルコトヲ要シ合意ト同証書又ハ別証書ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得
其撰定ハ其地ト人トヲ指シ若クハ単ニ其地ノミヲ指シテ之ヲ為スコトヲ得
債務者ノ普通ノ住所ニモ亦其撰定ヲ為スコトヲ得
第四百十条 臨時住処ノ撰定ハ債権者ノ利益ノ為メニ為シタル者ト推測シ普通ノ住所ヲ除斥セス但シ債務者ノ専一又ハ共同ノ利益ノ為メニ之ヲ為シタルコトノ証拠アルトキハ此限ニ在ラス
第十四章 失踪
第一節 失踪ノ推測
第四百十一条 一個人其住所並ニ居所ヨリ亡失シ若クハ其音信ヲ絶止シテ其生死ノ分明ナラサルトキハ之ヲ失踪者ト推測ス
失踪ノ推測ハ本人ノ住所ノ地方裁判所ニ之ヲ申訴シテ判決ヲ受ク可シ
第四百十二条 失踪ノ推測ヲ受ケタル者総括代理人ヲ定メ置キタルトキハ其代理人ハ失踪ノ推測中本人ノ財産ヲ管理ス但シ裁判所ハ事宜ニ依リ其解任ヲ宣告シ若クハ其後任ヲ指定スルコトヲ得
第四百十三条 失踪ノ推測ヲ受ケタル者総括代理人ヲ定メ置カサリシトキハ裁判所ハ現実ノ利益ヲ有スル関係人推測ノ相続人及ヒ検事ノ請求ニ依リ其財産ノ管理人ヲ指定ス
此管理人ハ成ル可ク本人ノ推測相続人ノ中ニ就キテ之ヲ指定スルコトヲ要ス然レトモ現在ノ配偶者ハ当然共通財産及ヒ自己ノ特有財産ヲ管理ス
第四百十四条 代理人若クハ管理人ハ単ニ管理ノ権限ノミヲ有ス其他ノ行為ニ付テハ必要ノ場合ニ限リ裁判所ノ允許ヲ得テ之ヲ為スコトヲ得
代理人若クハ管理人ハ本人既得ノ利益ニ関係アル所ノ目録調製計算分派及ヒ精算ニ於テ之ヲ代表ス
第四百十五条 裁判所ノ指定シタル管理人ハ検事ノ立会ニテ公証人ヲシテ失踪者ノ動産及ヒ証書ノ目録ヲ調製セシム可シ又管理人ハ其不動産ノ状況ヲ確定セシムル為メ裁判所ニ鑑定人ノ指定ヲ請求スルコトヲ得其報告書ハ裁判所ノ認可ニ付スルコトヲ要ス此等手続ノ入費ハ本人ノ財産ヲ以テ支弁ス
此規則ハ関係人推測相続人若クハ検事ノ請求ニ依リ本人ノ定メ置キタル代理人ニモ之ヲ適用スルコトヲ得
第四百十六条 代理人若クハ管理人ハ裁判所ノ定メタル給料ヲ受ク其管理及ヒ財産返還ノ担保トシテ保証人又ハ相当ノ抵保ヲ立ツルコトヲ要ス
第四百十七条 失踪ノ推測中ニ於テ現在ノ配偶者其共同子ノ婚姻若クハ営業ノ為メ資財ヲ与フルコトハ夫婦財産契約ノ章ニ之ヲ規定ス
失踪者ノ前婚又ハ庶出ノ子ノ婚姻若クハ営業ノ為メ資財ヲ与フルコトニ付テハ第三百七十六条ヲ適用ス
第四百十八条 検事ハ特ニ失踪ノ推測ヲ受ケタル者ノ保護ニ任シ一般之ニ関係アル請求ニ付テハ其意見ヲ陳フルコトヲ要ス
第二節 失踪ノ宣言
第四百十九条 失踪者代理人ヲ定メ置カサルトキハ満三个年又其代理人ヲ定メ置キタルトキハ其任期ノ長短ヲ問ハス満六个年ニ至ルモ其生死ノ音信ヲ得サルニ於テハ失踪者ノ死去ニ発起スル権利ヲ其財産上ニ有スル者ハ住所ノ地方裁判所ニ失踪ノ宣言ヲ請求スルコトヲ得
第四百二十条 此請求ノ允許スヘキモノナルトキハ裁判所ハ其証拠書類ニ拘ラス失踪者ノ住所及ヒ最後居所ノ地ニ於テ検事ト対審ニテ証人訊問ヲ開クコトヲ命ス可シ此証人訊問ニ付テハ訴訟法ニ定ムル期限及ヒ忌避ノ規則ヲ適用セス
第四百二十一条 証人訊問ヲ命スル判決ノ宣告アリタルトキハ検事ハ直チニ其判決書ノ謄本ヲ司法大臣ニ進達シ司法大臣ハ適宜ニ其判決ヲ公示ス可シ
第四百二十二条 裁判所ハ失踪宣言ノ請求ヲ裁判スルニ当リ失踪ノ理由及ヒ失踪者ノ音信ヲ得ル妨碍ノ原由ヲ斟酌ス可シ
第四百二十三条 失踪宣言ノ判決ハ証人訊問ヲ命シタルヨリ満一个年ノ後ニ非サレハ之ヲ宣告ス可カラス
此判決ハ第四百二十一条ノ手続ニ従ヒ之ヲ公示ス可シ
第三節 失踪宣言ノ効果
第四百二十四条 失踪宣言ノ裁判アリタル後失踪者ノ遺嘱書ハ関係人又ハ検事ノ請求ニ依リ之ヲ開封ス可シ失踪者ノ配偶者其亡失又ハ最後音信ノ日ニ於ケル推測相続人其他失踪者ノ死去ニ発起スル権利ヲ其財産上ニ有スル者ハ相続ノ開始シタルカ如ク直チニ其権利ヲ行フコトヲ得
第四百二十五条 失踪者ノ財産占有ニハ総テ相続ノ規則ヲ適用ス
此占有ヲ得タル者ハ第三者ニ対シ其財産ノ所有者トス
然レトモ占有者ハ財産返還ノ担保トシテ裁判所カ相当ト認ムル保証人又ハ抵保ヲ立ツ可シ若シ之ヲ立ツルコト能ハサルトキハ動産ニ付テハ裁判所ノ命スル利用法ヲ為サヽル可カラス其保証人ノ義務又ハ抵保ハ満十五个年ノ後当然止息ス
第四百二十六条 若シ失踪者現出シ又ハ音信ヲ与フルトキハ失踪宣言ノ効果ハ即時ニ止息ス
失踪者ハ其財産ヲ現状ノ侭ニテ回復シ又占有者カ其処置行為ニ因テ不当ニ利益シタルモノヲ取還スコトヲ得
第四百二十七条 然レトモ果実ニ付テハ失踪者其亡失又ハ最後音信ノ日ヨリ満十五个年前ニ現出スルトキハ其五分ノ一又満十五个年後ニ現出スルトキハ其十分ノ一ノミヲ取還スコトヲ得満三十个年ノ後ハ果実ノ全部ヲ失フ
第四百二十八条 失踪者ノ卑属親ハ他ノ相続人カ財産占有ヲ得タルヨリ満三十个年間其財産ノ返還ヲ請求スルコトヲ得
財産占有ヲ得タル相続人ヨリ最近ナル傍系ノ血族アルトキ亦同シ
右何レノ場合ニ於テモ果実ハ前条ノ規則ニ従ヒ之ヲ取還スコトヲ得
第四百二十九条 失踪者死去ノ確証アルトキハ其相続ハ死去ノ日最近ナル相続人ノ為メニ開始ス可シ其相続人ハ相続開始ノ日ヨリ満三十个年間相続財産ヲ請求スルコトヲ得
失踪者ノ財産ヲ占有スル者ハ之ヲ返還セサル可カラス但シ第四百二十七条ニ依リ獲得シタル果実ハ此限ニ在ラス
第四節 失踪ノ推測及ヒ宣言ノ両期ニ通用スル規則
第四百三十条 生存確実ナラサル人ニ帰シタル権利ヲ請求スル者ハ其人カ其権利開始ノ当時ニ生存セシコトヲ証明スルヲ要ス此証明ヲ為サヽル間ハ其請求ヲ受理ス可カラス
第四百三十一条 生存確実ナラサル人ノ為メニ相続ノ開始スルトキハ其相続ハ之ト同順位ヲ有スル者又ハ其次キノ順位ヲ有スル者ニ属ス
失踪者ニ帰スヘキ財産ヲ相続スル者ハ其目録ヲ調製シ且ツ第四百二十五条ニ従ヒ利用法ヲ為シ若クハ其返還ノ担保トシテ保証人又ハ抵保ヲ立テサル可カラス其保証人ノ義務又ハ抵保ハ満十五个年ノ後ニ止息ス
第四百三十二条 前二条ノ規則ハ失踪者又ハ其相続人及ヒ承権人ニ属スル相続ノ訟求其他ノ権利ヲ害スルコト無シ此等ノ権利ハ普通ノ時効ニ依ルニ非サレハ消滅セス
第四百三十三条 失踪者若クハ其相続人及ヒ承権人其権利ヲ行ハサル間ハ相続ヲ為シタル者其善意ニテ収穫シタル果実ヲ保有ス
附録 不在者ニ関スル規則
第四百三十四条 生存確実ナル者住所又ハ居所ヲ去リ其財産ヲ管理スル者アラサルトキ若クハ裁判所失踪ヲ認定セスト雖モ本人不在ノ為メ其財産棄置カルヽトキ若クハ失踪者失踪ノ推測中又ハ宣言後ニ其生存分明ト為リタルトキハ裁判所ハ関係人推測相続人又ハ検事ノ請求ニ依リ必要ノ保存処分ヲ命スルコトヲ得
第四百三十五条 帝国ニ住所又ハ居所ヲ有スル外国人失踪シ其財産ヲ棄置キタル場合ニモ亦前条ヲ適用スルコトヲ得
第十五章 身分証書
第一節 総則
第四百三十六条 身分証書ハ各個人ノ身分ニ関スル事件ヲ記載スルモノニシテ其簿冊ハ身分取扱人之ヲ掌ル
身分取扱人ハ管轄市町村内ニ於テ其職ヲ行フ
第四百三十七条 身分証書ノ簿冊ハ一箇又ハ数箇ヲ設備シ出生婚姻縁組及ヒ死去ノ証書ニ付テハ正本二冊ヲ調製シ其他種々ノ証書ニ付テハ正本一冊ヲ調製ス可シ
第四百三十八条 身分証書ニハ之ヲ作ル年月日時ト其証書ニ記載ス可キ人ノ氏名年齢族称職業住所及ヒ居所トヲ記載ス可シ
第四百三十九条 身分証書ニハ法律ノ命シタルモノヽノ外何事タリトモ附記スルコトヲ得ス
第四百四十条 身分証書ニ記載ス可キ事件ノ届出人ハ証人ヲ同伴シ身分取扱人ノ面前ニ於テロ頭又ハ書面ヲ以テ申述ス可シ
其申述ハ失踪死去其他特別ニ規定スルモノヲ除クノ外本人之ヲ為スヘシ若シ家族ナルトキハ戸主若クハ其後見人ヲ同伴シ又ハ其申述書ヲ添ヘテ之ヲ為ス可シ但シ止ムコトヲ得サル場合ハ此限ニ在ラス
第四百四十一条 本人躬ラ出席スルニ及ハサル場合ニ於テハ公正ニシテ特別ノ委任状ヲ以テ任シタル代理人ヲ差出スコトヲ得
第四百四十二条 証人及ヒ代理人ハ親族ト否トニ拘ラス日本人ニシテ成年ノ男子タル可シ
第四百四十三条 身分取扱人ハ届出人ノ申述ヲ受ケ証人ノ面前ニ於テ直チニ其事件ヲ簿冊ニ記載シ之ヲ出席人ニ読ミ聞カセ供ニ署名捺印ス可シ若シ出席人其氏名ヲ手署スルコト能ハサルトキハ身分取扱人代署シテ捺印セシメ且ツ其旨ヲ附記ス可シ
其証書ニハ之ヲ読ミ聞カセタルコトヲ記載ス可シ
第四百四十四条 身分取扱人ハ身分証書ノ記載ニ従ヒ簿冊毎トニ氏ノ「イロハ」順ヲ以テ氏名種目番号ヲ摘記シタル見出目録ヲ作リ添ヘ置ク可シ
第四百四十五条 身分取扱役所ニハ身分証書ノ外別ニ戸籍ヲ設備シ身分証書ニ拠リ各戸ヲ区別シ戸主家族ヲ編録シ其続柄ヲ簡明ニ記載ス可シ但シ其編録ノ方法ハ特別法ノ定ムル所ニ従フ
第四百四十六条 身分証書ノ簿冊ハ公用罫紙ヲ以テ調製シ其記載ヲ為ス前ニ地方裁判所長若クハ其代理判事之ヲ検閲シ其紙数ヲ表紙ノ裏面ニ掲記シ之ニ官氏名ヲ署シ官印ヲ捺シ初葉ト末葉トニ記号ヲ附シ且ツ毎葉ノ綴目ニ契印ヲ捺ス可シ
第四百四十七条 身分証書ハ其簿冊上日次ヲ逐ヒ空行ナク連続シテ記載ス可シ
欄外ノ追記ハ証書ノ本文ト同シク出席人及ヒ身分取扱人共ニ之ヲ承認シテ署名捺印ス可シ
身分証書ヲ作ルノ際錯誤脱漏ヲ発見シタルトキハ其所ニ誤脱ヲ記入シタル上其字数ヲ欄外ニ記載シ身分取扱人出席人ト共ニ之ニ捺印ス可シ但シ其消スヘキ文字ハ之ヲ線抹シ尚ホ読得ヘキコトヲ要ス
第四百四十八条 身分証書ニ記載スル文字ハ明瞭ニシテ読ミ易キコトヲ要ス又年月日時及ヒ年齢ニ係ル数字ハ一二三六八十ノ字ニ限リ必ス壱弐参陸捌拾ノ字ヲ用フ可シ
第四百四十九条 本人住所外ノ地ノ身分取扱人身分証書ヲ作リタルトキハ十日内ニ其謄本ヲ本人住所ノ身分取扱人ニ送付シ其送付ヲ受ケタル身分取扱人ハ直チニ之ヲ簿冊ニ記載ス可シ
身分取扱人欄外追記ヲ為ス可キ場合ニ於テ其役所ニ原証書アラサルトキハ其原証書ノ存スル所ノ身分取扱人ニ其追記ノ事ヲ通知ス可シ
第四百五十条 身分取扱人ハ毎年十二月末日ニ於テ最終ノ証書ノ後ニ閉結ノ旨ヲ記シ署名捺印シ正本二冊ノ内一冊ハ其役所ニ保蔵シ一冊ハ翌年一月中ニ地方裁判所ノ検事局ニ差出ス可シ但シ正本一冊ノミノ簿冊ハ其役所ニ保蔵ス可シ
身分証書ニ添ヘ置ク可キ申述書及ヒ其他ノ書類ハ身分取扱人其都度出席人ト共ニ署名捺印シ其書類ノ数ヲ本証書ニ附記シ之ヲ整頓シテ検事局ニ差出ス可キ簿冊ニ附添ス可シ
第四百五十一条 地方裁判所ノ検事ハ身分証書ノ簿冊ノ設備ヲ監督シ常ニ其整頓ニ注意シ其領収シタル簿冊並ニ附添書類ヲ検査シ書記ノ立会ニテ其結果ヲ記シ之ニ認印シテ其裁判所ノ書記局ニ保蔵セシム可シ
検事若シ身分証書ニ付犯則アルコトヲ発見シタルトキハ其裁判所ニ相当ノ処分ヲ請求ス可シ
第四百五十二条 既ニ記載シタル身分証書ニ追記ヲ為ス可キトキハ当事者ノ請求ニ依リ身分取扱人ハ其証書ノ欄外ニ之ヲ記入ス可シ但シ地方裁判所ノ書記局ニ保蔵スル証書ニ其追記ヲ為スニ付テハ身分取扱人ハ三日内ニ其旨ヲ検事ニ報告シ検事ハ裁判所書記ヲシテ之ヲ記入セシメ且ツ其記入ノ彼此同一ナル可キコトヲ検視ス
第四百五十三条 身分証書ノ簿冊ハ何人ニ限ラス身分取扱役所ニ於テ展閲ヲ乞ヒ且ツ費用ヲ出シテ其謄本ヲ身分取扱人ニ求ムルコトヲ得
身分取扱人ハ各個人ノ請求ニ応シテ其証書ノ捜索ヲ為サヽル可カラス
其謄本ハ原本ト同一ニ騰写シ之ニ相違ナキ旨ヲ附記シ署名捺印シテ授付ス可シ
第四百五十四条 有効ノ身分鐙書並ニ其正式ノ謄本ハ身分取扱人ノ自認スル事実ノ真正ナルコトヲ証ス但シ偽造ノ訴ヲ妨ケス
出席人ノ申述ハ反対ノ証拠アルマテ真正ナルモノト看做ス
法律ノ命セサル記載及ヒ資格ナキ者ノ申述ハ無効トス
第四百五十五条 身分証書ノ記載上ノ違式若クハ誤脱ハ其証書ヲ無効ト為サス但シ左ノ場合ハ此限ニ在ラス
一 身分取扱人之ヲ作ラサルトキ
二 簿冊ニ之ヲ記載セサルトキ
三 身分取扱人之ニ署名捺印セサルトキ
第四百五十六条 身分証書ノ簿冊ノ設備ナク若クハ中絶シタルトキ又ハ其全部若クハ一部ノ毀損亡滅シタルトキ又ハ其記載上ニ甚シキ違式若クハ誤脱アリテ信用ヲ置ク可カラサルトキ又ハ身分取扱人ノ詐欺若クハ過失ニ因リ身分証書ヲ作ラサリシトキハ戸籍証人若クハ私ノ書類ヲ以テ其身分上ノ事件ヲ証明スルコトヲ得但シ詐欺ヲ以テ其事由ヲ醸成シタル者ハ此限ニ在ラス
第四百五十七条 日本人外国ニ於テ其国ノ法式ニ従ヒ作ラシメタル身分証書ハ有効トス
此場合ニ於テハ本人其証書ノ謄本ヲ三个月内ニ其国駐在ノ帝国公使若クハ領事ニ差出ス可シ
若シ其国ニ帝国公使若クハ領事ノ駐在ナキトキハ本人帰国ノ後三个月内ニ其証書ノ謄本ヲ住所ノ身分取扱人ニ差出シ其記載ヲ求ム可シ
第四百五十八条 外国在留日本人ハ帝国公使館又ハ領事庁ニ於テ帝国ノ法式ニ従ヒ身分証書ヲ作ラシムルコトヲ得
公使館又ハ領事庁ニ於テ作リ若クハ本人ヨリ受取リタル身分証書ノ謄本ハ三个月内ニ外務大臣ニ送致シ外務大臣ハ之ヲ本人住所ノ身分取扱人ニ送付ス可シ但シ本人ノ住所不詳ナルトキハ之ヲ司法省ニ蔵置ス
第四百五十九条 前二条ニ掲クル身分証書ノ謄本ヲ受取リタル身分取扱人ハ直チニ之ヲ簿冊ニ記載ス可シ
第二節 出生証書
第四百六十条 出生アリタルトキハ届出人ハ分娩ヨリ十日内ニ証人一名ヲ同伴シ其所ノ身分取扱人ニ申述ヲ為ス可シ
身分取扱人ハ必要ト思料スルトキハ医師ヲ派遣シ又ハ躬ヲ其子ヲ臨視スルコトヲ得
第四百六十一条 出生ノ後十日ヲ過キタルトキハ地方裁判所ノ命令アルニ非サレハ其証書ヲ作ル可カラス
第四百六十二条 出生ハ父ヨリ申述ス可シ若シ父ノ在ラサルトキハ同居ノ親族若クハ分娩ノ時臨席シタル医師産婆其他ノ人ヨリ申述ス可シ若シ常ニ住居セサル他ノ家ニ於テ分娩シタルトキハ父ニ次キ其家主若クハ管理人ヨリ申述ス可シ
母モ亦其申述ヲ為スコトヲ得
右申述ヲ受ケタル身分取扱人ハ直チニ其証書ヲ作ル可シ
第四百六十三条 出生証書ニハ出生ノ年月日時場所子ノ男女其子ニ命シタル名及ヒ其父母申述人証人ヲ記載ス可シ
若シ双児以上ノ分娩ニ係ルトキハ其出生ノ前後ヲ記ス可シ
第四百六十四条 庶出子ニ付テハ父之ヲ認知シタル場合ニ非サレハ届出人其父ノ氏名ヲ申述スト雖モ之ヲ出生証書ニ記載ス可カラス
第四百六十五条 病院監獄其他公立院舎ニ於テ出生アリタルトキハ二十四時内ニ院長典獄又ハ管理人ヨリ其所ノ身分取扱人ニ報告ス可シ
身分取扱人ハ其報告ニ拠リ直チニ出生証書ヲ作ル可シ
第四百六十六条 棄児ヲ発見シタル者ハ其児並ニ附属シタル衣服其他ノ物品ヲ其所ノ身分取扱人ニ差出シ且ツ発見ノ場所日時其他ノ景況ヲ申述ス可シ
身分取扱人ハ調書ヲ作リ其児ヲ貌閲シタル年齢其男女其児ニ命シタル氏名及ヒ其児ヲ引渡ス所ノ育児院若クハ之ヲ引受ケ養育スル者ノ氏名年齢族称職業住所又ハ居所ヲ記入シ其調書ヲ身分証書ノ簿冊ニ記載ス可シ
第四百六十七条 出生証書ヲ作ラサル前ニ其生レタル子又ハ発見シタル棄児死去シタルトキハ生レタル子ニ付テハ医師ノ診断書又棄児ニ付テハ保安官ノ検視調書ヲ身分取扱人ニ差出シ申述ヲ為ス可シ身分取扱人ハ死去証書ノ簿冊ニ其申述ノミヲ記載ス可シ
第四百六十八条 航海中ニ出生アリタルトキハ官ノ艦船ニ在テハ其艦船ノ事務官其他ノ船舶ニ在テハ船長二十四時内ニ其父ト乗組人中ヨリ撰ミタル証人一名トノ面前ニ於テ証書ヲ作ル可シ
其証書ハ乗組人名簿ノ末ニ記載ス可シ
第四百六十九条 前条ノ手続ヲ為シタル後其艦船帝国ノ海港ニ着シタルトキハ其証書ノ謄本ヲ其港ノ身分取扱人ニ送付シ身分取扱人ハ父母ノ住所ノ身分取扱人ニ之ヲ送致ス可シ
又外国ノ海港ニ着シタルトキハ其謄本ヲ其国ニ駐在スル帝国公使又ハ領事ニ送付シ公使領事ハ之ヲ外務大臣ニ送致シ外務大臣ハ之ヲ父母ノ身分取扱人ニ送付ス可シ
前二項ノ謄本ヲ受取リタル身分取扱人ハ直チニ之ヲ簿冊ニ記載ス可シ
第四百七十条 正出子ノ否認ハ地方裁判所書記ヨリ送致スル裁判宣告書ノ謄本ニ依リ其子ノ出生証書ノ欄外ニ之ヲ追記ス可シ
第四百七十一条 庶出子ノ認知ハ身分取扱人之ヲ其出生証書ノ欄外ニ記入ス可シ
公証人若クハ裁判所書記ハ認知証書又ハ裁判宣告書ノ謄本ヲ其出生証書ノ存在スル所ノ身分取扱人ニ送付シ身分取扱人ハ其証書ノ欄外ニ之ヲ追記ス可シ
第四百七十二条 庶出子ノ准正ハ身分取扱人之ヲ其出生証書ノ欄外ニ記入ス可シ
第三節 婚姻及ヒ離婚証書
第四百七十三条 婚姻公告書ハ特別ノ簿冊ニ記載ス可シ
第四百七十四条 婚姻証書ニハ左ノ諸件ヲ記載ス可シ
一 夫婦
二 父母養父母
三 婚姻ニ必要ナル許諾
四 婚姻公告ノ日附又ハ免除
五 夫婦ノ承諾
六 証人
七 夫婦財産契約ノ有無其契約アルトキハ其契約ノ制並ニ日附及ヒ之ヲ作リタル公証人ノ氏名居所
八 特例婚姻ナルカ又ハ婚姻ニ由ル縁組ナルトキハ其事由
九 婚姻公式ヲ行ヒタル年月日時場所
第四百七十五条 婚姻ノ不成立及ヒ無効又ハ離婚ノ確定裁判アリタルトキハ其裁判所書記ヨリ十日内ニ宣告書ノ謄本ヲ曩ニ婚姻ヲ為シタル所ノ身分取扱人ニ送達シ身分取扱人ハ婚姻証書ノ欄外ニ之ヲ追記ス可シ
第四節 縁組証書
第四百七十六条 縁組証書ニハ左ノ諸件ヲ記載ス可シ
一 養子
二 養父母及ヒ実父母
三 養子ヲ為ス者ノ配偶者ノ承諾若シ承諾ヲ得ル能ハサルトキハ其事由
四 養父母及ヒ養子ノ承諾又ハ遺嘱養子ノ受諾
五 未成年者ヲ養子ト為ストキハ其父母又ハ親族会ノ許諾
六 育児院ニ在リテ父母ノ知レサル子ハ院長ノ許諾
七 実子アル者ノ縁組ニ付テハ其特許
八 遺嘱養子ハ遺嘱証書ノ日附及ヒ遺嘱者死去ノ年月日時
九 証人
十 婚姻ニ由ル縁組ナルトキハ其事由
十一 養子ト為リタル年月日時場所
第四百七十七条 婚姻ニ由ル縁組ニ於テハ婚姻証書ノ外別ニ縁組証書ヲ作ル可シ
第四百七十八条 地方裁判所ニ於テ未成年者ノ縁組ノ認可アリタルトキハ当事者ハ二个月内ニ其裁判宣告書ヲ縁組証書ノ欄外ニ追記セシム可シ
縁組ノ認可アラサルトキハ其裁判所書記ノ通知ニ依リ欄外追記ヲ為ス可キモノトス
第四百七十九条 縁組ノ不成立及ヒ無効ノ確定裁判アリタルトキハ其裁判所書記ヨリ十日内ニ裁判宣告書ノ謄本ヲ身分取扱人ニ送達シ身分取扱人ハ縁組証書ノ欄外ニ之ヲ追記ス可シ
第五節 死去証書
第四百八十条 死去アリタルトキハ葬送前ニ其死去ヲ実見シタル戸主若クハ親族又ハ其他ノ者証人一名ヲ同伴シテ其所ノ身分取扱人ニ申述ヲ為ス可シ但シ主治医ノ診断書ヲ差出ス可シ
第四百八十一条 死去証書ニハ左ノ諸件ヲ記載ス可シ
一 死者
二 死去ノ年月日時場所
三 配偶者ノ有無
四 死者ノ父母養父母
五 申述人並ニ証人
右諸件中若シ知悉スル能ハサルコトアルトキハ其旨ヲ附記ス可シ
第四百八十二条 遺骸ハ身分取扱人ノ認許証ヲ得ルニ非サレハ之ヲ葬送スルコトヲ得ス
身分取扱人ハ死去後二十四時ヲ過クルニ非サレハ葬送ノ認許証ヲ与フ可カラス且ツ必要ト思料スルトキハ死者ノ形状ヲ臨視シ又ハ医師ヲ派遣スルコトヲ得但シ衛生取締ノ為メ特別ノ規則アル場合ハ此限ニ在ラス
第四百八十三条 変死又ハ変死ト思料ス可キ摸様アルトキハ保安官医師ノ立会ヲ以テ死体ノ刑状及ヒ之ニ関スル諸般ノ景況ト死者ノ男女氏名年齢族称職業住所及ヒ居所トヲ検査シ且ツ届出人証人ノ氏名年齢族称職業住所ヲ併セテ調書ヲ作リ之ヲ其所ノ身分取扱人ニ報告シ身分取扱人ハ其調書ニ拠リ直チニ死去証書ヲ作ル可シ
遺骸ハ其手続ヲ為シタル上保安官ノ認許ヲ得ルニ非サレハ之ヲ葬送スルコトヲ得ス
第四百八十四条 災害ニ罹リタル者ノ形体ヲ発見又ハ認識スルコト能ハサルトキハ保安官前条ニ従ヒ臨検調書ヲ作リ地方裁判所ノ検事ニ報告シ検事ハ裁判所ノ認可ヲ得テ其調書ヲ身分取扱人ニ送付シ之ヲ死去証書ノ簿冊ニ添ヘ置ク可シ
第四百八十五条 病院学校其他公立院舎ニ於テ死去アリタルトキハ院長校長若クハ管理人ヨリ二十四時内ニ其所ノ身分取扱人ニ報告ス可シ
第四百八十六条 監獄ニ於テ死去アリタルトキハ典獄ヨリ在監人名簿ニ拠リ二十四時内ニ其所ノ身分取扱人ニ報告ス可シ
死刑ノ執行アリタルトキ亦同シ
第四百八十七条 前二条ノ場合ニ於テ身分取扱人ハ其報告ニ拠リ直チニ死去証書ヲ作ル可シ
第四百八十八条 変死又ハ監獄内ニ於テ死去若クハ刑死シタル者ノ死去証書ニハ其事故ヲ記載ス可カラス
第四百八十九条 航海中ニ死者アリタルトキ其死去証書ヲ作リ及ヒ之ヲ送付スルノ方法ニ付テハ第四百六十八条第四百六十九条ノ規則ヲ適用ス
艦船ノ難破ニ因テ乗組人並ニ乗客悉皆死去シタル場合ニ於テハ管轄官庁其確報ヲ得テ死者住所ノ身分取扱人ニ報告ス可シ
若シ乗組人又ハ乗客ノ一部死去シ乗組人名簿ノ管守者モ死者中ニ在ルトキハ其生存者ノ証言ニ拠テ調書ヲ作リ死者住所ノ身分取扱人ニ報告ス可シ
報告ヲ受ケタル身分取扱人ハ直チニ死去証書ヲ作ル可シ
第六節 種々ノ証書
第四百九十条 家督相続又ハ其他ノ事由ニ因リ戸主ト為リタル者ハ十日内ニ証人一名ヲ同伴シ其所ノ身分取扱人ニ申述ヲ為ス可シ但シ辞産相続ノ場合ニ於テハ辞産者モ亦其申述ヲ為ス可シ
第四百九十一条 戸主証書ニハ左ノ諸件ヲ記載ス可シ
一 戸主
二 戸主無能力者ナルトキハ其代表人
三 前戸主其続柄及ヒ生死
四 父母其生死
五 戸主ト為リタル事由
六 証人
七 戸主ト為リタル年月日
第四百九十二条 国民分限ヲ獲得シ若クハ回復スルノ申述アリタルトキハ身分取扱人直チニ其証書ヲ作リ其者原日本人ニ係ルトキハ其出生証書ノ欄外ニ追記ス可シ
第四百九十三条 国民分限喪失ノ裁判アリテ確定シタルトキハ其裁判所書記ヨリ十日内ニ裁判宣告書ノ謄本ヲ本人原住所ノ身分取扱人ニ送達シ身分取扱人ハ之ヲ簿冊ニ記載シ且ツ其出生証書ノ欄外ニ追記ス可シ
第四百九十四条 未成年者自治ヲ得タルトキハ身分取扱人直チニ之ヲ其出生証書ノ欄外ニ記入ス可シ
自治ヲ廃止スル親族会ノ決議ハ十日内ニ保管人ヨリ身分取扱人ニ申述シ身分取扱人ハ其欄外追記ヲ為ス可シ
第四百九十五条 後見人保管人治産人及ヒ仮管理人ハ其就任ヨリ十日内ニ其後見自治禁治産若クハ仮管理ノ事由ヲ具シテ後見自治禁治産若クハ仮管理ヲ受クル本人住所ノ身分取扱人ニ申述ス可シ
身分取扱人ハ直チニ之ヲ其簿冊ニ記載ス可シ
第四百九十六条 後見自治禁治産及ヒ仮管理ニ付テハ左ノ諸件ヲ記載ス可シ
一 未成年者自治ノ未成年者禁治産者准禁治産者又ハ瘋癲者
二 後見人及ヒ副後見人保管人治産人又ハ仮管理人
三 後見自治禁治産若クハ仮管理開始ノ年月日
第四百九十七条 未成年者成年ニ達シ禁治産者准禁治産者其禁ヲ解カレ刑事上禁治産者主刑終リ瘋癲者其原由ノ罷ムニ因リ後見人保管人治産人若クハ仮管理人ヲ廃シタルトキハ十日内ニ本人ヨリ事由ヲ具シテ其所ノ身分取扱人ニ申述ス可シ
身分取扱人ハ直チニ其事件ヲ記載シタル簿冊ノ欄外ニ追記ス可シ
第四百九十八条 失踪ノ推測又ハ宣言ノ裁判アリタルトキハ十日内ニ請求人ヨリ其所ノ身分取扱人ニ其謄本ヲ差出シ簿冊ニ記載セシム可シ
失踪者其生存ヲ届出タルトキハ身分取扱人ハ失踪ヲ記載シタル簿冊ノ欄外ニ追記ス可シ
第四百九十九条 氏名変更ノ許可ヲ得タルトキハ其許可書ヲ具シテ本人ヨリ其所ノ身分取扱人ニ申述ス可シ
身分取扱人ハ直チニ其出生証書ノ欄外ニ追記ス可シ
第五百条 住所変更又ハ設定ノ申述アリタルトキハ新住所ノ身分取扱人ハ其証書ヲ作リ其変更ニ係ルモノハ謄本ヲ旧住所ノ身分取扱人ニ送付ス可シ旧住所ノ身分取扱人ハ直ニ原簿冊ノ欄外ニ追記ス可シ
第五百一条 外国人帝国ニ住所又ハ居所ヲ定ムルトキハ其本国氏名年齢及ヒ身分ヲ其所ノ身分取扱人ニ申述ス可シ
若シ其外国人ニ妻子アルトキハ其名及ヒ年齢並ニ居留中ニ生レタル子ノ名及ヒ生年月日ヲ申述ス可シ
其他自治又ハ禁治産ニ因リ其身分ニ変更アルトキハ之ヲ申述ス可シ
其申述ヲ受ケタル身分取扱人ハ之ヲ簿冊ニ記載ス可シ
第五百二条 本節ニ掲クル証書ヲ作ルニ付テハ証人ヲ要セス但シ戸主証書ハ此例ニ在ラス
第七節 特別ノ身分証書
第五百三条 出征中ノ軍人軍属ニ係ル身分証書ハ陸海軍ノ規則ニ定メタル士官之ヲ作ル可シ
第五百四条 出征中作リタル身分証書ノ正本ハ其士官ヨリ陸海軍大臣ニ差出シ陸海軍大臣ハ其謄本ヲ本人住所ノ身分取扱人ニ送付ス可シ
謄本ノ送付ヲ受ケタル身分取扱人ハ直チニ之ヲ簿冊ニ記載ス可シ
第八節 身分証書ノ訂正
第五百五条 身分証書ノ訂正ヲ要スルトキハ其事ニ関係アル者ヨリ地方裁判所ニ請求スルコトヲ得
第五百六条 地方裁判所ノ検事ハ公ケノ秩序又ハ貧民ノ為メ身分証書ノ訂正ヲ其裁判所ニ請求スルコトヲ得
第五百七条 訂正ノ裁判ハ請求人及ヒ適法ニ召喚ヲ受ケタル関係人ニ対スルニ非サレハ其効力ヲ有セス
第五百八条 訂正ノ裁判確定シタルトキハ其謄本ヲ請求人ヨリ身分取扱人ニ差出シ身分取扱人ハ直チニ訂正スヘキ身分証書ノ欄外ニ追記ス可シ
第九節 罰則
第五百九条 本章ノ条則ニ違背シタル身分取扱人若クハ其職務ヲ行フ者及ヒ身分証書ノ管守人ハ二円以上十円以下ノ罰金ニ処ス但シ第四百五十五条ノ但書ニ拠リ身分証書ノ無効ヲ惹起スル所為アリタルトキハ一月以上一年以下ノ軽禁錮ニ処ス
第五百十条 本章ニ於テ申述期限又ハ報告期限ノ定メアル事件ヲ其期限内ニ申述又ハ報告セサル者ハ二十銭以上一円九十五銭以下ノ科料ニ処ス
第四百五十七条第二項ニ違背シタル者亦同シ