旧民法・法例(明治23年)

法例 法律取調委員会上申案

参考原資料

法例 第一条 法律ハ公布アリタル日ヨリ満二十日ノ後ハ何人ト雖モ之ヲ遵守セサル可カラス但特別ノ規定アルモノハ此限ニ在ラス 第二条 法律ハ将来ノミヲ規定シ既往ニ遡ルノ効力ヲ有セス 第三条 人ノ身分及ヒ能力ハ其本国法ヲ以テ之ヲ支配ス 親属ノ関係及ヒ其関係ヨリ生スル権利義務ニ付テモ亦同シ 第四条 動産不動産ハ其所在地ノ法律ニ服従ス 然レトモ相続及ヒ遺贈ニ付テハ被相続人ノ本国法ニ従フ 第五条 外国ニ於テ為シタル合意ニ付テハ当事者ノ明示又ハ黙示ノ意思ニ従ヒテ何レノ国ノ法律ヲ適用ス可キヤヲ定ム 当事者ノ意思分明ナラサル場合ニ於テハ同国人ナルトキハ其本国法ヲ適用シ又同国人ニ非サルトキハ事実上合意ニ最大ノ関係ヲ有スル地ノ法律ヲ適用ス 第六条 外国人カ日本ニ於テ日本人ト合意ヲ為ストキハ外国人ノ能力ニ付テハ其本国法ト日本法トノ中ニテ合意ノ成立ニ最恵ナル法律ヲ選択シテ之ヲ適用ス 第七条 不当ノ利得不正ノ損害及ヒ法律上ノ管理ハ其原因ノ生シタル地ノ法律ヲ以テ之ヲ支配ス 第八条 本国法ヲ適用ス可キ諸般ノ場合ニ於テ何レノ国民分限ヲモ有セサル者又ハ地方ニ依リ法律ヲ異ニスル国ノ人民ハ其住所ノ法律ニ服従シ若シ住所知レサルトキハ其居所ノ法律ニ服従ス 日本人ト外国人トノ分限ヲ有スル者ハ日本法律ニ服従シ又二箇以上ノ外国国民分限ヲ有スル者ハ最後ニ之ヲ取得シタル国ノ法律ニ服従ス 第九条 公正証書及ヒ私署証書ノ方式ハ之ヲ作ル国ノ法律ニ従フ但一人又ハ同国人ナル数人ノ作ル私署証書ニ付テハ其本国法ニ従フモ自由ナリトス 第十条 要式ノ合意又ハ行為ト雖モ之ヲ為ス国ノ方式ニ従フトキハ方式上有効トス但故意ヲ以テ日本法律ヲ脱シタルトキハ此限ニ在ラス 第十一条 外国ニ於テ其国ノ方式ニ依リテ作リタル証書ハ不動産物上権ヲ移転スル行為ニ係ルトキハ其不動産所在地ノ地方裁判所長又他ノ行為ニ係ルトキハ当事者ノ住所又ハ居所ノ地方裁判所長其証書ノ適法ナルコトヲ検認シタル上ニ非サレハ日本ニ於テ其効用ヲ致サシムルコトヲ得ス 第十二条 第三者ノ利益ノ為メニ設定スル公示ノ方式ハ不動産ニ係ルトキハ其所在地ノ法律又他ノ場合ニ於テハ其原因ノ生シタル国ノ法律ヲ以テ之ヲ支配ス 第十三条 訴訟手続ハ其訴訟ヲ為ス国ノ法律ニ従フ 裁判及ヒ契約ノ執行方法ハ其執行ヲ為ス国ノ法律ニ従フ 第十四条 前数条ノ規定ニ拘ハラス刑罰法其他ノ公法ノ事項ニ関シ及ヒ公ノ秩序又ハ善良ノ風俗ニ関スルトキハ行為ノ地、当事者ノ国民分限及ヒ財産ノ性質ノ如何ヲ問ハス日本法律ヲ適用ス 第十五条 判事ハ法律ニ不明、不備又ハ欠缺アルヲ口実トシテ裁判ヲ為スヲ拒絶スルコトヲ得ス 第十六条 公ノ秩序又ハ善良ノ風俗ニ関スル法律ニ牴触シ又ハ其適用ヲ免カレントスル合意又ハ処分ハ不成立トス 第十七条 身分又ハ能力ヲ規定スル法律ヲ免カル合意又ハ処分ハ無効トス 第十八条 権利行為ノ無効ハ法律ノ正条ニ依ルコトヲ要シ之ヲ補足スルコトヲ得ス