旧民法・法例(明治23年)

民法草案 第三編

参考原資料

    法律取調委員会の議事筆記から抽出して作成した.

第三編 財産ヲ得取スル方法 前置条例 第六百一条 既ニ前編ノ両部ニ於テ記シタル物上及ヒ対人ノ権利ノ得取ノ原由ノ外右同一ノ権利ハ尚ホ本編ノ両部ニ記スル如ク或ハ特定即チ単一ノ名義或ハ一般即チ包括ノ名義ヲ以テ之ヲ得取スル事ヲ得 包括名義ニテ得取スル者ハ其前主ノ総テノ権利ト共ニ其総テノ義務ヲ承継ス但法律ニ記載シタル例外ヲ妨ケス 第一部 特定名義ニテ得取スルノ方法 第一章 先占 第六百二条 先占ハ無主ノ動産物ヲ所有スルノ意思ヲ以テ最先ノ占有ノ取得ニ因リ其動産物ノ所有権ヲ得取スルノ方法ナリ 第六百三条 所有者カ禽獣ヲ放置シ又ハ飼養シタル囲障地内ニ於テ其許ナクシテ右ノ禽獣ヲ取リタル者ハ原物又ハ対価ヲ以テ之ヲ返還スル事ヲ要ス 私有ニ係リ且囲障アル池、湖又ハ水流ノ中ニ於テ魚類ヲ取リタル者ニ付テモ亦同シ 第六百四条 狩猟並ニ捕魚ノ権利ノ行用及ヒ海上、河上並ニ陸上ノ遺失物ノ得取ハ特別法ヲ以テ之ヲ規定ス 戦時ニ為シタル略奪物及ヒ海上ノ搶掠物ニ付テモ亦同シ 第六百五条 原所有者ノ放棄シタリト主張セラレタル物ノ先占ニ付キ争アルノ場合ニ於テハ任意ノ放棄ノ証ハ先占ヲ利唱スル者ノ負担タリ 第六百六条 他人ノ物ノ中ニテ単ニ偶然ノ事ニ因テ発見シ所有者ノ知レサル埋蔵物ノ所有権ハ其半ハ発見者ニ属ス 埋蔵物カ埋モレ又ハ隠レタル物ノ所有者ノ権利ハ下ノ附添ノ章ニ之ヲ規定ス 第六百七条 埋蔵物ノ原所有者ハ発見後三ケ年ノ期間内ニアラサレハ前記ノ付典ニ反シテ自己ノ権利ヲ利用スルコトヲ得ス 此期間ハ同時ニ埋蔵物ノ発見セラレタル物ノ所有者タル者ニ対シテハ其発見ヲ知リタル後一ケ年ニ減縮セラル 然レトモ埋蔵物ノ占有者カ悪意ナルトキハ通常ノ法定ノ時効ヲ適用ス 第二章 附添 第六百八条 動産ト不動産トヲ問ハス一ノ物ノ所有者ハ其物ニ附従トシテ合シタル総テノモノヲ下ニ定メタル区別ニ従ヒ且償金ヲ以テ得取ス 第一節 不動産ニ関スル附添 第六百九条 総テノ建築、植付及ヒ土地又ハ建物ノ上及ヒ下ニ為シタル工作物ハ其何タルヲ問ハス右ノ土地及ヒ建物ノ所有者自費ニテ為シタリト推定セラル但反対ノ証アルトキハ此限ニ在ラス 総テノ場合ニ於テ第三者ノ利益ニ於ケル名義又ハ時効アラサルトキハ右ノ工作物及ヒ建築ノ所有権ハ土地及ヒ建物ノ所有者ニ属ス 植付ニ関スル場合ハ第六百十一条ニ之ヲ規定ス 第六百十条 若シ土地又ハ建物ノ所有者カ他人ニ属スル材料ヲ以テ建築又ハ其他ノ工作ヲ為シタルトキハ所有者カ悪意ナルトキト雖モ右工作物ヲ毀壊シテ其材料ヲ返付スルコトニ強要セラルルコトヲ得ス 又右ノ所有者ハ材料ノ属スル本主ニ其収去ヲ強要スルコトヲ得ス 然レトモ右ノ所有者ハ第四百五条ニ従ヒ之ニ記載シタル区別ヲ以テ材料ヲ以テ材料ノ所有者ニ賠償スヘキノ言渡ヲ受ク 第六百十一条 他人ニ属スル樹木、小樹木又ハ植物ノ植付ニ関シテハ其植付ヲ為シタル土地ノ所有者又ハ占有者ハ其年内ニ於テ植付物ヲ抜取リ且之ヲ返還スルコトニ強要セラルヽコトヲ得但損害アルトキハ之ヲ賠償スルコトヲ要ス 若シ右ノ樹木又ハ小樹木ノ所有者カ之ヲ引取ラサルコトヲ欲シ又ハ植付ノ時ヨリ一ケ年ヲ経過シタルトキハ其所有者ハ金円ヲ以テ賠償セラル 第六百十二条 取毀タルヽ為メ建築物ヲ売渡シ若クハ譲与シ又ハ抜取ラレ若クハ採伐セラルヽ為メ樹木ヲ売渡シ若クハ譲典シタル所有者又ハ占有者ハ工作物又ハ植付物ヲ保存スル為メ買主若クハ受贈者ニ賠償シテ常ニ其取毀チ又ハ採伐ヲ停ムルコトヲ得 第六百十三条 他人ノ土地又ハ建物ノ善意ノ占有者ニシテ右ノ土地又ハ建物ニ於テ自己ノ材料、樹木又ハ小樹木ヲ以テ建築工作又ハ植付ヲ為シタル者ハ真ノ所有者ヨリ不動産ノ回収ヲ請求セラルヽニ当リ右ノ建築、工作又ハ植付ヲ取払フノ責ニ任セス真ノ所有者ハ其撰択ヲ以テ占有者ニ或ハ材料及ヒ手間ノ代償或ハ不動産ニ付キ生シタル増価ヲ弁済ス 若シ建築者カ悪意ノ占有者タリシトキハ所有者ハ工作物及ヒ植付物ヲ除去シテ場所ヲ旧状ニ復スルコトヲ之ニ強要シ且損害アルトキハ之ヲ賠償セシムルコトヲ得又所有者ハ上ニ記載シタル如ク占有者ニ賠償シテ右ノ工作物及ヒ植付物ヲ保存スルコトヲ得 第六百十四条 寄洲即チ舟又ハ筏ノ通スヘキト否トヲ問ハス水流ノ漸積地ヨリ生スル増加ハ沿岸所有者ニ属ス 若シ漸積地カ水流ニ並行シ又ハ殆ト之ニ並行シテ数箇ノ沿岸地ニ生シタルトキハ所有者ノ各自ハ内部ニ於ケル所有地ノ広狭カ如何ニ拘ハラス水流ニ聯接シタル其土地ノ総テノ部分ニ付キ右ノ漸積地ヲ利ス 若シ之ニ反シテ漸積地カ水流ト角度ヲ成シ所有者ノ各自ニ沿岸者ノ分限ヲ保タシメテ之ニ帰スヘキ部分ヲ定ムルコト難キトキハ其各所有者ハ派分スルコトヲ得スト認メラレタル漸積地ノ部分ニ付キ水流ノ旧状ニテ其水流ニ接スル所有地ノ広狭ノ割合ニ応シ不分共有者タリ 如何ナル場合ニ於テモ沿岸者ハ行政庁ノ許可ナクシテ前来存スル挽船路又ハ河岸径ノ位置ヲ改様シ又中間ノ漸積地ニ於テ船ノ牽挽又ハ通航ノ使用ヲ妨クルコト有ルヘキ建築又ハ植付ヲ為スコトヲ得ス 第六百十五条 沿岸者ハ右同一ノ区別及ヒ条件ヲ以テ干潟即チ舟又ハ筏ノ通スルト否トヲ問ハス河川ノ棄テタル川床ノ部分ヲ利ス 然レトモ川床カ沿岸者又ハ公有ニ属スル水流ニ関シテハ漸次生シタル干潟ノ附添ハ旧川床ノ全幅員外ニ拡マリテ対岸ノ地ニ及ホスコトヲ得ス 此附添ノ権利ハ湖及ヒ池ニ関シテハ存立セス 又此附添ノ権利ハ海潟地ニ付テモ存立セス 其海潟地ハ第二十六条ニ従ヒ国ニ属ス 沿岸者ハ行政庁ノ行ヒタル堀割又ハ築堤ノ工事ニ因テ露出シタル舟又ハ筏ノ通スル水流ノ岸地ノ部分ヲ利セス但行政法ニ定メタル条件ヲ以テスル沿岸者ノ先買権ヲ妨ケス 第六百十六条 若シ河川ノ水ノ衝激カ植付ノ存スルト否トヲ問ハス沿岸地ノ一部分ヲ割去シテ下流ノ沿岸地又ハ対岸ニ転送シ其何レノ所有地ノ部分タルヤヲ仍ホ認知スルコトヲ得ルトキハ占有ヲ失ヒタル所有者ハ変災ヨリ一个年内ニアラサレハ其回収ヲ請求スルコトヲ得ス又一个年後ニ於テハ沿岸者カ未タ右ノ土壌ヲ占有セサル間ニアラサレハ其回収ヲ請求スルコトヲ得ス其他所有者ハ自費ニテ泥土ヲ収去シ且収去ニ因テ加ヘタル損害ヲ補償スルコトヲ要ス 又所有者ハ総テノ時期ニ於テ押流サレタル土壌ノ回収ヲ為スト其単純ナル放棄ヲ為ストノ間ニ其一ヲ択ムヘキコトニ付キ沿岸者ヨリ摧告セラルヽコトヲ得 此条例ハ既ニ土地ヨリ離サレタルト否トヲ問ハス水ノ衝激ニ因テ押流サレタル樹木及ヒ収護物ト建築ノ為メ準備セラレ又ハ建物ヨリ離サレタル材料ト方位ノ如何ヲ問ハス洪水ニ因リ押流サレテ他人ノ土地ニ転送セラレタル総テノ他ノ動産物トニ付キ右同一ノ条件ヲ以テ之ヲ適用ス但是等ノ物カ認知セラルヽコトヲ得ヘク且漂流物ノ性質ヲ有セサルコトヲ要ス 第六百十七条 舟又ハ筏ノ通スル河川ノ川床ニ於テ成リタル大小ノ中洲ノ所有権ハ交通路トシテ定メタル水流ノ等級ニ従ヒ国「デパルトマン」又ハ「コンミエーヌ」ニ属ス 舟モ筏モ通セサル水流中ニ成リタル小中洲ハ川床其モノノ如ク沿岸者ニ属ス 両岸側ノ沿岸者ノ権利ヲ定ムルニハ水流ノ中心ニ於テ縦線ヲ画シ各沿岸者ハ自己ノ側ニ在ル小中洲又ハ其部分ヲ得取ス 若シ小中洲カ同側ノ二箇又ハ数箇ノ所有地ノ前面ニ在ルトキハ第六百十四条第二項ヲ適用ス 第六百十八条 若シ第六百十六条ニ記載シタル如ク一箇ノ土地ヨリ割去セラレタル土地ノ部分カ大小ノ中洲ノ形ニテ水流中ニ止着スルトキハ所有者ハ其存在スル場所ニ於テ之ヲ占領スルコトヲ得 然レトモ公有ノ部分ヲ為ス水流ニ関シテハ国「デパルトマン」又ハ「コンミユーヌ」ハ漸積ノ中洲ノ所有権ニ付キ前条ニ為シタル区別ニ従ヒ予メ払フ可キ正当ノ賠償ヲ以テ其譲渡ヲ要求スルコトヲ得 第六百十九条 若シ舟又ハ筏ノ通スルト否トヲ問ハス水流カ新ニ支流ヲ為シ之カ為メ沿岸地ノ全部又ハ一分ヲ中洲ノ形ニテ環繞スルニ至リタルトキハ右ノ土地ノ所有者ハ其所有権ヲ保存ス但前条ニ定メタル如キ所有権徴収ノ権利ヲ妨ケス 第六百二十条 若シ二箇ノ土地ノ間ニ分界線ヲ成シ沿岸者ニ属スル舟モ筏モ通セサル水流カ突然且全ク其水路ヲ変シタルトキハ棄テラレタル川床ノ所有権ハ沿岸者ニ属シ第六百十七条ニ規定シタル小中洲ノ如ク之ヲ其沿岸者ノ間ニ派分ス 舟又ハ筏ノ通スル水流ニ関シテハ棄テラレタル川床ノ所有権ノ付与ハ第八章ニ之ヲ規定ス 第六百二十一条 私有地ノ魚類、鳩舎ノ鳩ニシテ計策ヲ以テ誘引セラレ又ハ停留セラレタルコト無クシテ他ノ池又ハ鳩舎ニ移リタルモノハ同一ノモノナリトノ証明ヲ以テ一週日内ニ求メラレサルトキハ其棲止シタル土地ノ所有者ニ属ス 群ヲ為シテ隣地ニ飛転シタル蜜蜂ニ関シテハ一週日間之ヲ追躡シ且之ヲ求ムルコトヲ得然レトモ隣人ガ之ヲ取得シテ停留シタルトキハ此権利ハ三日ノ後ニ止ム 本性野性ナルモ飼馴サレテ逃ケ易キ禽獣ニ関シテハ善意ニテ之ヲ飼置シタル者ニ対シ一ケ月間其回収権ヲ行フコトヲ得 第二節 動産ニ関スル附添 第六百二十二条 異別ノ所有者ニ属スル二箇又ハ数箇ノ動産物ガ所有者ノ意ニ因ルニ非スシテ第三者ニ因テ併セラレ且其何レノ物ニ付テモ著シキ損壊又ハ減価ナクシテ容易ニ分タレ得ルトキハ所有者ノ各自ハ其分離ヲ請求スルコトヲ得但賠償スヘキトキハ附合ヲ為シタル者其賠償ヲ負担ス 物ノ附合前ノ改様又ハ変化ハ之ヲ損壊ト看做スコトヲ得 第六百二十三条 若シ二箇ノ物カ分タレ得ス又ハ著シキ損壊若クハ減価ヲ以テシ又ハ過分ノ費用若クハ遅延ヲ以テスルニアラサレハ分タレ得サルトキハ何レノ所有者モ離分ヲ請求スルコトヲ得スシテ物ハ全部ニ付キ主タル物ノ所有者ニ留属ス但主タル物ノ所有者ハ従タル物ノ所有者ニ損害ヲ被ラシメテ己レヲ利シタル限度ニ於テ之ニ対シ賠償ヲ負担ス 他ノ物ノ便益、装飾又ハ補充ノ為メニ併セラレタル物ハ之ヲ附従タル物ト看做ス若シ此点ニ付キ二箇ノ物ガ同性質ナルトキハ従タル物ハ価格ノ少ナキ物タリ 其他ノ場合ニ於テハ各物ノ他物ニ対シ主タリ又ハ従タルノ性質ハ裁判所ノ査定ニ委ス 第六百二十四条 若シ附合カ主タル物ノ所有者ノ過愆又ハ詭譎ニ因テ生シ前記ノ規則ニ従ヒ其離分ヲ為スヘカラサルトキハ従タル物ノ所有者ノ賠償ハ第三百九十条及ヒ第四百五条ニ記載シタル如クニ査定シタル損害ニ準シテ之ヲ定ム 若シ従タル者ノ所有者カ附合ヲ為シタル者ナルトキハ他ノ所有者ノ利益ノ限度ニ於テノミ自己ノ損失ニ付キ賠償ヲ受ク 第六百二十五条 物カ不都合ナクシテ分タレ得サル右同一ノ場合ニ於テ若シ何レノ物モ或ハ其本性ニ因リ或ハ其品質又ハ価格ニ因リ他ノ物ニ対シ之ヲ主タル者ト看做スコトヲ得サルトキハ附合ニ因テ成リタル物ハ平等ノ部分ニテ各所有者ノ間ニ共有タリ但過愆アリ又ハ悪意アル者ヨリ賠償ヲ受クルヲ妨ケス 第六百二十六条 右同一ノ規則ハ異別ノ所有者ニ属スル流動物、固形物又ハ金属ノ混和即チ混同ニ右同一ノ区別ヲ以テ之ヲ適用ス 然レトモ離分スルコトヲ得サル物料カ同一ノ本性及ヒ品質ナルニ因リ利害ノ関係アル者ノ間ニ共有ト為ルヘキトキハ各自ノ権利ハ混和物中ニ己ヨリ出テタルモノヽ数量ノ割合ニ応ス 第六百二十七条 附合又ハ混和カ所有者ノ一人ノ所為ヨリ生スル場合ニ於テハ他ノ所有者ハ自己ノ物ノ優等ヨリ己レノ為メ生スヘキ専属ノ所有権ヲモ又物ノ重要及ヒ其互相ノ価格カ平等ナル事ニ基キタル不分ノ共有権ヲモ受諾スルノ責ナシ此場合ニ於テ他ノ所有者ハ附添ヲ為シタル者カ現物ニテ右ニ等シキ数量及ヒ品質ノ物又ハ金円ニテ其価額ヲ己レニ供スルコトヲ要求スルコトヲ得 第六百二十八条 若シ或人カ他人ノ物料ヲ以テ新ナル種類又ハ新ナル用方ノ物ヲ作リタルトキハ物料ノ所有者ハ手間代又ハ其手間ヨリ物料ニ生スル増価額ヲ払フテ右ノ物ノ所有権ヲ要求スルコトヲ得 然レトモ若シ手間ノ価格カ著シク物料ノ価格ヲ超ユルトキハ新ナル物ノ所有権ハ製作者ニ属ス但製作者ハ物料ノ所有者ニ賠償スルコトヲ要ス 若シ製作者カ同時ニ物料ノ一分ヲ供シタルトキハ其物料ノ価格ハ優先権ヲ定ムル為メ手間ノ価格ニ之ヲ附加ス 所有者ノ承諾ナクシテ物料ヲ用ヒタルトキハ其所有者ハ常ニ己レニ属スル優先権ヲ放棄シテ品質及ヒ数量ニテ自己ノ物料ニ等シキ物料又ハ金円ニテ其価額ヲ請求スルコトヲ得 第六百二十九条 若シ附合、混和又ハ製作カ利害ノ関係アル所有者ノ明示又ハ黙示ノ承諾ヲ以テ成ルトキハ所有権ハ合意ニ従ヒテ之ヲ定ム疑アルトキハ離分カ容易ニシテ且著シキ不都合ナルトキト謂モ其離分ヲ請求スルコトヲ得スシテ優先権又ハ共有権ニ関スル前記ノ条例ヲ適用ス 第六百三十条 前数条ニ定メサル動産物附添ノ場合ニ於テハ裁判所ハ前数条ニ定メタル場合トノ類例ヲ援引スヘキトキハ之ヲ援引シ且天然公平ノ原則ニ基キテ所有権及ヒ賠償ノ問題ヲ規定ス 第六百三十一条 第六百六条ニ従ヒ発見者ニ付与セラレサル埋蔵物ノ部分ハ附添権ニ因リ其埋蔵物ノ埋モレ又ハ隠レタル動産物又ハ不動産物ノ所有者ニ属ス 若シ意外ノ発見カ其動産物又ハ不動産物ノ所有者自身ニ因テ為サレタル時ハ埋蔵物ハ一半ハ先占ニ因リ他ノ一半ハ附添ニ因リ全部其所有者ニ属ス 所有者ニ因リ又ハ其命令ニ因リ又ハ其命令ナキ第三者ニ因テモ特ニ為シタル捜索ノ効力ニ因リ発見シタル埋蔵物ハ附添ヲ以テ全部所有者ニ属ス 原所有者ノ回収ニ対シ埋蔵物ノ発見者ノ為メ第六百七条ヲ以テ定メタル時効ハ此ニ之ヲ適用ス 第三章 善意ナル占有者ノ果実ノ収取 第六百三十二条 善意ナル占有者ノ天然及ヒ法定ノ果実ノ得取ハ第二百六条ヲ以テ之ヲ規定ス 第四章 引渡 第六百三十三条 種別及ヒ数量ノミヲ以テ定メテ各箇ニ即チ特定物トシテ定メラレサル物ノ所有権ハ第三百五十二条及ヒ第四百七十六条ニ従ヒ其物ノ属スル者ニ因リ又ハ其名ヲ以テ為サレタル引渡ニ因テ移転ス引渡ナキトキハ当事者互ニ立会ノ上ニテ物ヲ指定スルヲ以テ足ル 第五章 公用ニ因由スル所有権徴収ヲ為ス裁判上又ハ行政上ノ所為 第六百三十四条 公用ニ因由スル所有権徴収ニ服シタル財産ノ熟議ノ譲渡ナキトキハ所有権徴収ヲ宣告スル裁判上又ハ行政上ノ所為ハ其所為ヲ以テ定メタル負担及ヒ条件ヲ以テ国「デパルトマン」又ハ「コンミユヌ」ハ是等ノ者ノ権利ノ特別譲受人ニ右財産ノ所有権ヲ移転ス但総テ此法律ノ第三十二条並ニ第三百六十八条第五号ノ条例及ヒ所有権徴収ニ関スル特別法ニ従フコトヲ要ス 第六章 公売競落 第六百三十五条 裁判外ノ民事訴訟ニ関スル法律ニ従ヒ動産又ハ不動産ノ差押ニ付キ裁判上ニテ宣告セラレタル競落ハ競落証書ニ記載シタル負担及ヒ条件ヲ以テ其競落サレタル財産ノ所有権ヲ競落人ニ移転ス 法律ノ命シ又ハ許シタル諸種ノ場合ニ於ケル他ノ公売競落ニ付キテモ亦同シ 第七章 特別ノ没収 第六百三十六条 刑法ノ条例ニ憑リ特別ノ没収ヲ為ス判決書ハ国「デパルトマン」「コンミユーヌ」又ハ特ニ行政ノ法律及ヒ規則ヲ以テ指定シタル公ノ建設所ニ没収セラレタル物ノ所有権ヲ移転ス 第八章 法律ニ因ル直接ノ付与 第六百三十七条 若シ舟又ハ筏ノ通スル河川カ其川床ヲ棄テヽ新川床ヲ作ルトキハ全部又ハ一分ニ付キ新ニ浸没セラレタル土地ノ所有者ハ其失セタルモノヽ割合ヲ以テ各賠償ノ名義ヲ以テ棄テラレタル川床ヲ得取ス但旧川床ノ面積カ一層広キトキト雖モ亦同シ「仏民第五百六十三条伊民第四百六十一条」 第六百三十八条 右ノ外法律ノ直接ノ効力ニ因リ所有権、用収権、地役、抵当及ヒ物上並ニ対人ノ其他ノ権利ヲ得取スル場合ハ其関係アル事項ニ之ヲ規定ス 第九章 特定名義ノ贈遺 第六百三十九条 何人タリトモ無償名義ノ合意ヲ以テ処分スルコトヲ得ル財産ハ其死亡ノ時ノ為メ贈遺即チ遺嘱処分ヲ以テ無償ニテ之ヲ処分スルコトヲ得 第六百四十条 遺嘱ノ方式、遺嘱スルニ付キ要セラレタル能力、或ル相続人ノ為メ留保スヘキ財産ノ部合、贈遺ノ廃罷及ヒ無効ニ関スル規則ハ此編ノ第二部第五章ノ目的タル包括名義ノ遺嘱贈与ノ事項ニ之ヲ規定ス 第六百四十一条 各箇ニ定マリタル一箇又ハ数箇ノ動産物若クハ不動産物ヲ目的トスル単純又ハ有期ノ総テノ贈遺ハ受嘱者ノ知ラサルトキト雖モ遺嘱者死亡ノ当時ヨリ之ニ其所有権ヲ移転ス但贈遺ヲ拒ムコトヲ得ル受嘱者ノ権利ヲ妨ケス 収益権、使用権又ハ地役権ノ贈遺ニ付テモ亦同シ 若シ贈遺カ停止又ハ解除ノ条件附ナルトキハ其効力ハ合意ノ事項ニ於テ第四百二十八条以下ニ規定シタル如ク条件ノ到来ニ繋ル 第六百四十二条 贈遺カ量定物ヲ目的トスルトキハ其所有権ハ第三百五十二条及ヒ第四百七十六条ニ従ヒ引渡ニ因リ又ハ相続人ト立会ノ上為シタル他ノ指定ニ因ルニアラサレハ移転セラレス 弁済ノ一般ノ規則ハ此贈遺ノ弁償ニ之ヲ適用ス 第六百四十三条 遺嘱者ハ其相続人ニ為シ又ハ為ササルノ義務ヲ負ハシムルコトヲ得但其義務ノ効力ハ相続人カ不当ノ利得ニ憑リ受嘱者ニ対シテ義務ヲ負フタルトキト同一ナリ 第六百四十四条 遺嘱ハ遺嘱者カ受嘱者ノ物ニ付キ有スル地役又ハ其他総テノ物権ノ放棄ヲ目的トスルコトヲ得此場合ニ於テ権利ハ生存者間ノ放棄ニ因ルト等シク消滅ス 遺嘱者カ其債務者ニ債務ノ釈放ヲ為シタル処分ハ当然債務者ノ義務免除ヲ成シ死亡ノ日ヨリ利息ヲ止マシム 遺嘱者カ債務者ニ相続人ニ対スル其義務免除ヲ贈遺シタルトキモ亦同シ 無償名義ノ合意上ノ釈放ノ規則ハ適用スルコトヲ得ヘキ限リハ義務免除ノ贈遺ニ之ヲ適用ス 第六百四十五条 若シ遺嘱者カ不分ノ権利ノミヲ有スル物ヲ贈遺シタルトキハ受嘱者ハ同一ノ権利ヲ得取シ其参与スヘキ派分ハ遺嘱者ノ為メニ生スヘキ効力ヲ受嘱者ノ為メニ生ス 若シ贈遺セラレタル物カ遺嘱者ニ於テ不分ノ権利ノミヲ有スル相続又ハ其他ノ包括ノ部分ヲ為ストキハ受嘱者ハ派分ニ参与セス然レトモ受嘱者ハ若シ其物カ遺嘱者ノ相続人ノ配当部分ニ帰スルトキハ現物ヲ受ケ若シ其物カ他ノ共有者ノ一人ノ配当部分ニ帰スルトキハ其価額ヲ受ク 第六百四十六条 受嘱者ハ相続人ニ対シ為シタル引渡請求ノ時ヨリ後ニアラサレハ果実及ヒ利息ニ付キ権利ヲ有セス但期限ノ満了シ条件ノ成就シタル事ヲ要ス 然レトモ左ノ三箇ノ場合ニ於テハ受嘱者ハ死亡又ハ満期ノ時ヨリ請求ナク果実ニ付キ権利ヲ有ス 第一 遺嘱者カ此旨ヲ述ヘタルトキ 第二 贈遺カ養料ノ性質ヲ有スルトキ 第三 相続人カ受嘱者ノ為メ為サレタル遺嘱処分ヲ其受嘱者ニ故意ニテ隠匿シタルトキ 第六百四十七条 贈遺セラレタル物ハ若シ贈遺カ単純ナルトキハ遺嘱者ノ死亡ノ時ニ存スル形状ニテ若シ又贈遺カ有期又ハ停止ノ条件付ナルトキハ引渡ヲ要求スル事ヲ得ル日ニ存スル形状ニテ其天然ノ附従物ト共ニ受嘱者ニ引渡サルル事ヲ要ス 遺嘱者カ贈遺物ニ受ケシメ又ハ意外ノ事若クハ不可抗力ニ因リ之ニ生シタル改良又ハ損壊ハ受嘱者ヲ利シ又ハ之ヲ害ス 相続人カ物ニ加ヘタル右同一ノ改様ハ其相続人ト受嘱者トノ間ニ互相ノ賠償ヲ生セシム 若シ贈遺カ解除ノ条件附ニテ為サレテ其条件カ成就スルトキハ受嘱者又ハ其相続人ハ物ヲ其存スル形状ニテ返還ス但意外ノ事又ハ不可抗力ノ結果タラサル改良又ハ損壊ニ付キ当事者間ノ互相ノ賠償ヲ妨ケス 第六百四十八条 不動産ノ受嘱者ハ遺嘱者カ遺嘱後ニ土地又ハ建物ニ付テ為シタル得取ヲ利セス其土地又ハ建物カ不動産ニ聯接シ又ハ不動産ノ利用ヲ改良スルニ供ヘラレタルトキト雖モ亦同シ但受嘱者ノ為メ更ニ遺嘱処分ヲ為シタルトキ又ハ其得取シタル物カ新ナル囲障若クハ分界ノ取払ニ因リ遺嘱者ニ因テ不動産ニ合体セラレタルトキハ此限ニ在ラス 贈遺セラレタル土地ニ第三者ノ為シタル建築及ヒ植付ニシテ遺嘱者ノ得取シタルモノハ常ニ遺嘱者ニ因テ贈遺物ニ合体セラレタリト看做サル 右ノ外上ノ第二章ニ規定シタル如キ附添又ハ合体ノ場合ニ付テモ亦同シ 第六百四十九条 若シ贈遺セラレタル物カ遺嘱ノ前又ハ遺嘱ノ後遺嘱者又ハ第三者ノ債務ノ為メ抵当又ハ動産質トセラレタルトキハ相続人ハ引渡前ニ其物ノ負担ヲ免レシムルノ義務ナシ但遺嘱者カ相続人ニ此義務ヲ負ハシメタルトキハ此限ニ在ラス然レトモ若シ受嘱者カ抵当権ヲ以テ訴追セラレテ追奪セラレ又ハ債務ヲ弁償スル事ニ強要セラレタルトキハ相続人ニ対シ担保ノ求償権ヲ有ス 贈遺セラレタル物ノ移付ノ効力ニシテ贈遺ノ黙示ノ廃罷ヲ為スモノハ此編ノ第二部第五章ニ之ヲ規定ス 第六百五十条 各箇ニ定マリタル物ノ贈遺ハ若シ其所有権カ遺嘱者ノ死亡ノ時ニ於テ之ニ属セサルトキハ無効タリ 然レトモ若シ遺嘱ニ遺嘱者カ物ノ他人ニ属スル事ヲ知リテ相続人ニ受嘱者ノ為メ其物ヲ得取スヘキ義務ヲ負ハシメント欲シタル証アルトキハ相続人ハ右ノ得取ヲ為サザレバ贈遺セラレタル物ノ評価額ヲ負担ス 贈遺セラレタル物カ相続人ニ属シテ遺嘱其事カ指定セラレタルトキ常ニ遺嘱者ニ右ノ意思アリト推定ス 第六百五十一条 第三者又ハ相続人自身ニ属スル不動産ノ贈遺カ有効ナル場合ニ於テハ相続人ヨリ受嘱者ニ為シタル譲渡ノ登記ヲ為ス事ヲ要ス 第三百七十条ハ受嘱者ト不動産ニ関スル物権ノ他ノ譲受人トノ間ニ於ケル優先権ノ規定ニ之ヲ適用ス 第六百五十二条 遺嘱者ノ不動産ノ贈遺ニ関シテハ受嘱者ハ相続人カ任意ニテ承諾シタル引渡ノ日ヨリ其日ヲ算入シテ十五日内ニ其贈遺ノ登記ヲ為ス事ヲ要ス 若シ相続人カ贈遺ヲ争フトキハ引渡ノ請求ハ登記帳簿ニ抜書ヲ以テ之ヲ記入シタル後ニアラサレバ裁判上受理セラレス若シ又判決カ日後相続人ニ対シ為サレタルトキハ其判決ハ最早控訴スヘカラサルモノト為リタル日ヨリ其日ヲ算入シテ十五日内ニ請求書ノ縁辺附記ト共ニ其判決ヲ帳簿ニ登記スル事ヲ要ス 第六百五十三条 其他ノ場合ニ於テハ贈遺ハ猶ホ条件ニ因テ停止セラルヽトキト雖モ相続ノ開始ノ年内ニ之ヲ登記スル事ヲ要ス 第六百五十四条 前条ニ定メタル期間ニ於テ登記ヲ為サヽルトキハ不動産ノ贈遺ハ其不動産ニ付キ物権ヲ得取シ且第三百六十八条以下及ヒ先取特権並ニ抵当ノ事項ニ於テ定メタルモノニ従ヒ其物権ヲ最初ニ公示シタル第三者ニ之ヲ対抗スル事ヲ得ス 第十章 無名ノ合意及ヒ契約 第六百五十五条 合意及ヒ契約ニシテ法律ヲ以テ下ノ諸章ニ其規則及ヒ効力ヲ定メタルモノヽ外尚ホ各箇人ハ物権又ハ人権ヲ創造シ若クハ移転シ又ハ改様シ若クハ消滅スル為メ適宜ノ合意又ハ契約ヲ為ス事ヲ得但如何ナル場合ニ於テモ公ノ秩序又ハ善良ナル風俗ニ違ハサル事ヲ要ス 無名ト称スル此合意又ハ契約ハ第二編第二部ノ条例及ヒ有名契約ニシテ之ト最モ類似シタルモノノ条例ニ因テ管知セラル 第十一章 生存者間ノ贈与 第六百五十六条 生存者間ノ贈与ハ贈与者カ受諾スル受贈者ニ無償ニテ即チ対価ヲ受ケスシテ物権又ハ人権ヲ付与スル合意ナリ 又贈与ハ贈与者カ受贈者ノ物ニ付キ有スル物権ノ無償ノ放棄又ハ受贈者ニ対シテ有スル人権ノ釈放ヲ以テ成ル事ヲ得 第六百五十七条 贈与ハ単純ナリ、有期ナリ又ハ条件附ナル事ヲ得然レトモ停止又ハ解除ノ条件ハ贈与者ノ方ニ於テ純然随意タル事ヲ得ス若シ之ニ違フトキハ其贈与ハ無効タリ 贈与ハ法律ニ定メタル原由ノ為メニアラサレハ贈与者又ハ其相続人ニ因テ廃罷セラルル事ヲ得ス 第六百五十八条 生存者間ノ贈与カ他人ニ属スル物又ハ権利ヲ目的トスルトキハ無効タリ贈与カ贈与者ノ推定相続人ニ属スル物又ハ権利ヲ目的トスルトキモ亦同シ但贈与者カ物ノ他人ニ属スル事ヲ知リタル旨ヲ明言シタルト否トヲ区別スル事ヲ要セス 贈与者ハ受贈者ノ受ケタル追奪ノ担保人タラス但其追奪カ贈与以後ニ係ル贈与者一身上ノ所為ヨリ生シ又ハ他人ノ物ノ贈与ニ於テ詭譎アルトキハ此限ニ在ラス 第六百五十九条 不動産物権ノ生存者間ノ贈与ハ第三百六十八条以下ノ条例ニ従ヒ登記スル事ヲ要ス 其他有償名義ノ合意ニ関スル一般ノ規則ハ贈与ニ之ヲ適用ス但法律又ハ贈与証書ヲ以テ明示又ハ黙示ニテ之ニ違フノ意アルトキハ此限ニ在ラス 第六百六十条 生存者間ノ贈与ノ方式、与ヘ及ヒ受クルノ能力、相続人ノ為メ留保スヘキ財産ノ部分及ヒ贈与ノ廃罷ノ原由ハ此編ノ第二部第三章包括贈与ノ事項ニ之ヲ定ム 第十二章 売買 第一節 売買ノ総則 第一款 売買ノ本性及ヒ組成 第六百六十一条 売買ハ当事者ノ一方カ他ノ一方又ハ第三者ノ己レニ弁済スル事ヲ約スル金円ニテ定メタル代価ヲ受ケテ物ノ所有権又ハ其支分権ヲ他ノ当事者ニ移転シ又ハ移転スルノ義務ヲ負フ契約ナリ 売買契約ハ下ノ条例ニ反セサル総テノモノニ付テハ有償ニシテ双繋ナル契約ノ一般ノ規則ニ従フ 第六百六十二条 売買ハ当事者ノ承諾ノミヲ以テ完成ス 然レトモ当事者ハ売買ヲ各当事者ノ証ニ供スル公正証書又ハ私署証書ノ正本二通ノ録製ニ繋ラシムル事ヲ得 第六百六十三条 承諾セラレタル売リ又ハ買フノ片務ノ予約ハ要約者カ第三百二十九条ニ従ヒ契約ヲ為サント要求スル時ヨリ諾約者ニ其予約ニ於テ定メタル代価及ヒ条件ヲ以テ契約ヲ為スノ義務ヲ負ハシム 若シ明示又ハ黙示ニテ受諾ノ為メ何等ノ期間ヲモ定メサリシトキハ諾約者ハ要約者カ履行ヲ要求セスシテ経過シタルトキハ其予約ハ不成立ノモノト為スヘキ期間ヲ定メント裁判所ニ請求スル事ヲ得 第六百六十四条 若シ諾約者カ契約ヲ為ス事ヲ拒ムトキハ裁判所ニ於テ売買ハ其帯有スル効力ヲ以テ組成シタリトノ判決ヲ為ス 不動産権ノ売買ニ関スルトキハ其判決ヲ登記ス 若シ売買ノ予約カ予約トシテ登記セラレタルトキハ判決ハ右登記ノ縁辺ニ之ヲ附記シ其登記ハ売主ノ承権人ニ対シ既往ニ遡リテ効力ヲ生ス 第六百六十五条 若シ売リ及ヒ買フノ互相ノ予約アルトキハ各当事者ハ前条ニ記載シタル如ク契約ヲ為ス事ニ付キ他ノ当事者ヲ強要スル事ヲ得 又裁判所ハ此場合ニ於テ当事者ノ意思ヲ解釈シ売買ノ予約ハ即時ノ売買ノ効ヲ有シタル事若シ又期間ヲ定メタルトキハ其期間ハ履行ノミニ適用セラルル事ヲ決定スル事ヲ得 第六百六十六条 前四条ニ従ヒ当事者双方又ハ其一方カ日後売買及ヒ買受ノ契約ヲ為シ又ハ単ニ之ヲ録製スルノ義務ヲ負ヒタル場合ニ於テ予約ノ担保トシテ手附ヲ与ヘタルトキハ契約ヲ為シ又ハ之ヲ録製スル事ヲ拒ム一方ハ其与ヘタル手附ヲ失ヒ又ハ其受ケタル手附ヲ二倍ニシテ返付ス 第六百六十七条 即時ノ売買ニ於テハ手附ハ左ノ区別ヲ以テノミ解約スルノ方法トナル 第一 手附カ如何ナル本性ヨリ成ルヲ問ハス売主之ヲ与ヘタルトキハ売主ノ利益ノ為メ 第二 若シ手附カ金円ニアラサル物ヨリ成ルトキハ買主ノ利益ノ為メ 第三 当事者双方カ互ニ金円又ハ其他ノ物ニテ手附ヲ与ヘ且之ニ解約方法ノ性質ヲ明確ニ付与シタルトキハ双方ノ利益ノ為メ 契約カ全部又ハ一分ニ付キ履行セラレタルトキハ解約ハ如何ナル場合ニ於テモ又孰レノ方ヨリモ之ヲ為ス事ヲ得ス 第六百六十八条 若シ売買カ嘗試ニテ為サレタルトキハ其売買ハ情況ニ随ヒ買主ノ適意ノ停止条件附又ハ其拒絶ノ解除条件附ニテ為サレタリト看做サル事ヲ得 試味ノ慣習アル飲食品ノ売買ハ其物カ意ニ適スルノ停止条件附ニテ為サレタリト推定セラル 第六百六十九条 前条ニ定メタル二箇ノ場合ニ於テ買主カ己レニ属スル権能ノ行用ニ付キ期間ヲ定メサルトキハ短カキ期間ニテ決答スヘキ催告ヲ受クル事ヲ得若シ決答セスシテ売渡サレタル物又ハ飲食品ノ引渡ヲ受ケタルトキハ其買主ハ受諾シタリト推定セラレ又反対ノ場合ニ於テハ拒絶シタリト推定セラル 第六百七十条 売買ノ代価ハ全部ニ付テセサルモ少ナクトモ標本ニ付キ其契約ヲ以テ之ヲ定ムル事ヲ要ス 又其代価ハ或ハ同種類ノ商品ノ現時又ハ近時ノ市価ニ委セラレ或ハ契約ヲ以テ指定シタル第三者ノ評価ニ委セラルヽ事ヲ得 此終ノ場合ニ於テ若シ評価カ錯誤ニ出テ又ハ公平ニ反スル事ノ明白ナルトキハ其評価ヲ争フ事ヲ得但其争ハ損失ヲ受ケタリト主張スル一方カ評価ヲ知リタル時直チニ其者ヨリ起サルヽ事ヲ要ス 若シ第三者ト当事者ノ一方ノ間ニ共謀シタル詭譎アルトキハ第三百三十三条及ヒ第五百六十六条ヲ適用ス 当事者ノ定メタル代価ハ元本又ハ無期若クハ終身ノ年金権ヨリ成ル事ヲ得然レトモ若シ第三者カ代価ヲ定ムルトキハ其代価ハ元本ノミヨリスルニアラサレハ成ル事ヲ得ス但当事者カ明示ニテ一属広キ権限ヲ仲裁人ニ与ヘタルトキハ此限ニ在ラス 第六百七十一条 売買契約ノ費用ハ当事者双方平分シテ之ヲ負担ス但当事者双方カ別段ノ定ヲ為シタルトキハ此限ニ在ラス 第二款 売リ又ハ買フノ無能力 第六百七十二条 動産又ハ不動産ノ売買ノ契約ハ配偶者ノ間ニ於テ互ニ禁セラル 配偶者ノ一方カ他ノ一方ニ対シテ有スル真実ニシテ正当ナル債務ヲ消滅セシムル事ニ関スルトキハ配偶者ハ互ニ代物弁済ヲ為ス事ヲ得 此場合ニ於テ代物弁済ハ相当ノ証明ノ後民事裁判所ヨリ免許セラレタルトキニアラサレハ当事者ノ間ニ於テ有効且完全ナラス 若シ代物弁済カ不動産物権ヲ目的トスルトキハ其代物弁済ハ允許カ証書ノ登記中ニ附記セラレタルトキニアラサレハ第三者ニ対シテ有効ナラス 第六百七十三条 前条ニ基キタル無効即チ銷除ノ訴権ハ売却又ハ允許セラレサル代物弁済ヲ為シタル配偶者及ヒ其相続人又ハ其承権人ノミニ属ス其訴権ハ第五百六十六条以下ノ一般ノ条例ニ従フ 第六百七十四条 法律上、裁判上又ハ合意上ノ代理人又ハ管理者ハ直接ニ自己ノ名ヲ以テスルモ又間介人ニ因ルモ売ル事ヲ任セラレタル財産ニ付キ熟議上又ハ公売上ノ得取者ト為ル事ヲ得ス 右同一ノ制禁ハ公売ヲ処理シ又ハ指揮スル事ヲ法律ニ因テ任セラレタル公吏ニ之ヲ適用ス 第六百七十五条 前条ニ反シテ為シタル売買ノ無効訴権ハ原所有者、其相続人及ヒ其承権人ノミニ属ス 第六百七十六条 判事、検事、書記及ヒ書記補ハ其職務ヲ行フ裁判所ニ於テ争ハレ又ハ其裁判所ニ於テ訴訟ノ目的タルヘキ本性ノ物権又ハ人権ノ得取者トナル事ヲ得ス 右同一ノ制禁ハ弁護士及ヒ公証人カ其職務ヲ行フ地ヲ管轄スル裁判所ニ付セラルヽ事ヲ得ヘキ争ハレタル権利ニ付キ是等ノ者ニ之ヲ適用ス 第六百七十七条 前条ヨリ生スル無効訴権、譲渡人、争ハレ即チ争ニ係ル権利ノ被譲渡人及ヒ其相続人又ハ其承権人ニアラサレハ之ヲ行フ事ヲ得ス 又争ハレタル権利ノ被譲渡人ハ譲受人ニ其譲渡ノ現価ト弁済ノ日ヨリノ利息トヲ弁償シテ右ノ権利ノ受戻ヲ為ス事ヲ得 右ハ総テ違背者ニ対スル懲戒刑ノ適用ヲ妨ケス 第三款 売ル事ヲ得サル物 第六百七十八条 売買カ本性ニ因リ一般ニ通易スル事ヲ得サル物又ハ特別法ヲ以テ各人ニ処分権ヲ拒絶シタル物ヲ目的トスルトキハ其売買ハ無効タリ 此売買ノ無効ハ抗弁ノ方法ヲ以テスルト訴権ノ方法ヲ以テスルトヲ問ハス当事者双方ヨリ之ヲ援唱スル事ヲ得 若シ当事者ノ一方カ詭譎ヲ以テ売買ノ制禁ヲ隠蔽シタルトキハ其一方ハ損害賠償ノ責ニ任ス 第六百七十九条 他人ノ物ノ売買ハ当事者双方ニ対シテ無効タリ 然レトモ此無効ハ売主カ売買ノ際其物ノ他人ニ属スル事ヲ知ラサルトキニアラサレハ売主ニ因リ援唱セラルヽ事ヲ得ス互相ノ訴権並ニ抗弁ノ行用代価ノ返還及ヒ売主ノ負担シタル賠償ニ関スル規則ハ追奪ノ担保ノ事項ニ関スル次款ニ於テ之ヲ定ム 第六百八十条 若シ契約ノ当時ニ於テ物カ全部滅失シタルトキハ売買ハ無効タリ但売主カ此滅失ヲ知リタルトキ又ハ之ヲ知ラサルハ其過愆ナルトキハ善意ノ買主ニ対シ賠償ヲ負担ス 若シ物カ一分ノ三滅失シ買主之ヲ知ラサリシトキハ買主ハ其撰択ヲ以テ或ハ残ル所ノモノカ自己ノ要用ニ不充分ナル事ヲ証明シテ売買ヲ銷除セシメ或ハ代価ノ割合ノ減少ヲ以テ売買ヲ維持スル事ヲ得但右二箇ノ場合ニ於テ売主ニ過愆アルトキハ其損害賠償ヲ負担スル事ヲ妨ケス 銷除ノ請求ハ買主カ一分ノ滅失ヲ知リタル時ヨリ六ケ月後又代価減少ノ請求ハ二ケ年後ハ最早受理セラレス但其他明示又ハ黙示ノ確認ノ場合ヲ妨ケス 第二節 売買契約ノ効力 第一款 所有権ノ移転及ヒ危険 第六百八十一条 売買契約ハ売ラレタル物ノ所有権ノ移転及ヒ危険ニ付テハ第三百五十一条、第三百五十二条、第三百五十五条及ヒ第四百三十九条ニ定メタル如キ普通法ノ規則ニ従フ 第六百八十二条 若シ売買ノ目的カ不動産ナルトキハ其契約ヲ売主ノ特定且善意ノ承権人ニ対抗スル為メニハ第三百六十八条以下ノ明文ニ従ヒ之ヲ登記スル事ヲ要ス 第三百六十六条及ヒ第三百六十七条ハ右同一ノ目的ヲ以テ有体動産及ヒ債権ノ売買ニ之ヲ適用ス 第二款 売主ノ義務 第六百八十三条 量定物ニ関スルトキハ売主ハ所有権ヲ移転スルノ義務ノ外売ラレタル物ヲ引渡スノ義務、引渡ニ至ルマテ其物ヲ保存スルノ義務及ヒ下ニ定メタル原由ニ基キタル妨碍並ニ追奪ニ対シ買主ヲ担保スルノ義務ヲ有ス 第一則 引渡ノ義務 第六百八十四条 売主ハ売リタル物ヲ其合意セラレタル時期及ヒ場所ニ於テ其現存ノ形状ニテ引渡スノ責ニ任ス但保存ニ付キ懈怠アル場合ニ於テ買主ニ対スル賠償ヲ妨ケス 引渡ノ時期及ヒ場所ニ付キ合意アラサルトキハ第三百五十三条第六項及ヒ第七項ヲ適用ス 然レトモ若シ買主カ代価ノ弁済ニ付キ合意上ノ期間ヲ得サリシトキハ売主ハ其弁済ヲ受クルマテ物ノ占有ヲ留置スル事ヲ得 若シ買主売買ノ後破産シ若クハ無資力ト為リ又ハ売買ノ前ニ係ル其無資力ヲ隠秘シタルトキハ代価弁済ノ為メ期間ヲ許与セラレタルトキト雖モ売主ハ尚ホ引渡ヲ遅延スル事ヲ得 第六百八十五条 売主ハ一般ニ契約ニ於テ約束シタル数量ヲ過不及ナク引渡ス事ヲ要ス 然レトモ下ノ数条ニ記載シタル場合ニ於テハ其記載ノ区別ヲ以テ売主ハ右ノ数量ヨリ多クヲ譲渡シ又買主ハ此ヨリ多クヲ得取スルノ責ニ任ス 第六百八十六条 若シ売ラレタル物カ定マリタル不動産ニシテ契約ニ於テ各坪数ノ代価ヲ指示シテ其全面積ヲ明言シタル場合ニ於テ現実ノ面積カ指示セラレタル面積ニ足ラサルトキハ売主ハ面積ノ担保ナクシテ売リタル旨ヲ明言シタルトキト雖モ代価ノ割合ノ減少ヲ受クル事ヲ要ス 若シ現実ノ面積カ明言セラレタル面積ニ過クルトキハ買主ハ代価ノ割合ノ補足ヲ払フ事ヲ要ス 第六百八十七条 若シ全面積ヲ指示シ唯一ノ代価ヲ以テ不動産ヲ売リタルトキハ面積ノ不足ノ場合ニ於テ売主ハ悪意ナルトキ又善意ナルニ於テハ面積ヲ担保シタルトキ若クハ不足シタルモノガ少ナクトモ二十分一ナルトキニアラサレバ代価ノ減少ヲ受ケス 面積ヲ担保セス又ハ面積ハ概算ノミナリトノ附記ハ悪意ノ売主ノ責任ヲ減セス 超過ノ場合ニ於テハ買主ハ其超過カ二十分一ニ及ヘルトキニアラサレハ代価ノ補足ヲ弁済スル事ヲ要セス 第六百八十八条 若シ建物ノ存スルト否トヲ問ハス二箇又ハ数箇ノ土地ヲ一箇ノ契約ニ因リ其各箇ノ面積ヲ指示シ唯一ノ代価ヲ以テ売リタル場合ニ於テ一箇ノ土地ニ面積ノ超過アリ他ノ土地ニ面積ノ不足アルトキハ其土地ノ広狭ニ随ハス其坪ノ互相ノ価額ニ随ヒ不足シタルモノト超過シタルモノトヲ相殺ス 此ノ如ク為シタル後チ若シ相殺ニ因リ原価二十分一ノ過不及ヲ生スルトキハ代価ノ割合ノ増加又ハ減少ヲ成ス 此条例ハ一箇ノ土地ノ数部分カ異別ノ本性ニシテ其各部分ノ面積ヲ指示シタル場合ニ之ヲ適用ス 第六百八十九条 買主カ面積不足ノ為メ代価ノ減少ニ付キ権利ヲ有スル場合ニ於テ買主ハ亦損害賠償ヲ請求シ又約束シタル面積カ自己ノ需用ニ必要ナル事ヲ証シ且其他売買カ面積ノ担保ナクシテ為サレタルニアラサルトキハ契約ノ解除ヲモ請求スル事ヲ得 超過ノ場合ニ於テ若シ買主カ二十分一ノ代価ノ補足ヲ弁済スル事ヲ要スルトキハ単純ニ解約スル事ヲ得 第六百九十条 前記ノ規則ハ目方、員数及ヒ尺度ヲ以テ指示セラレタル数量カ買主ニ因リ容易且即時ニ調査セラルヽ事ヲ得サル飲食品及ヒ動産物ノ売買ニ之ヲ適用ス 第六百九十一条 前数条ニ依テ許サレタル代価改正、損害賠償又ハ契約解除ノ訴権ハ不動産ニ関シテハ一个年ノ期間ニ於テ又動産ニ関シテハ一个月ノ期間ニ於テ之ヲ行フ事ヲ要ス 右ノ期間ハ売主ノ為メニハ契約ノ日ヨリ又買主ノ為メニハ引渡ノ日ヨリ又合意セラレタル代価ヲ引渡ノ前ニ皆済シタルトキハ其皆済ノ日ヨリモ経過ス 第六百九十二条 動産又ハ不動産ノ売買ニ於テ錯誤カ売ラレタル物ノ品質ニ存スルトキハ第三百三十一条ヲ適用ス 第二則 追奪ノ担保ノ義務 第六百九十三条 他人ノ物ノ売買アリタル場合ニ於テ担保ノ事ニ付キ何等ノ特別ナル合意モ無カリシトキハ買主カ未タ追奪ノ恐アルニ至ラス且契約ノ当時其物ノ売主ニ属セサル事ヲ知リテ売主之ヲ知ラサリシトキト雖モ買主ハ売買ノ無効ヲ宣告セシムル事ヲ得 第六百九十四条 若シ買主ガ悪意ナリシトキハ売買ノ無効ト担保トノ効力ハ買主ニ其尚ホ負担スル代価ヲ弁済スルノ義務ヲ免カレシメ又ハ其既ニ弁済シタルモノヲ取戻ス事ヲ許スニ在ルノミ 買主ハ物ノ価格カ減少シタルトキト雖モ右取戻ニ於テ減少ヲ受クルノ責ナシ但減少カ自己ノ詭譎ニ出テ又ハ自己ノ利益ト為リタルトキハ此限ニ在ラス 総テノ場合ニ於テ買主カ其弁済シタル代価ヲ回収スルトキハ物ノ占有ヲ売主ニ返還スル事ヲ要ス 第六百九十五条 若シ買主カ契約ノ際善意ナリシトキハ右ノ外左ノモノヽ弁償ヲ受ク 第一 弁済シタル契約費用ノ一分 第二 売ラレタル物ニ付キ為ス事有リタル出費ニシテ真ノ所有者ヨリ弁償セラレサルモノ 第三 意外ノ事ニ因ルモ物カ得取スル事有リタル増価額 第四 所有者ノ請求ノ後ニ収取シタル果実ニシテ之ニ返還スル事ヲ要スルモノ 然レトモ買主ハ若シ果実ニ換ヘテ対応スル時期間ノ代価ノ法律上ノ利息ヲ受クル事ヲ欲スルトキハ之ヲ請求スル事ヲ得 又善意ノ買主ハ所有者ノ回収ノ訴ニ対スル答弁ノ費用及ヒ担保ノ請求ノ費用ノ如キ証明セラレタル其他総テノ損害賠償ヲ普通法ニ従ヒ請求スル事ヲ得 第六百九十六条 若シ売主カ契約ノ当時ニ於テ善意ナリシトキハ売主ハ第四百五条ニ従ヒ正当ニ予見スル事ヲ得タル限度内ニアラサレハ前条ノ第二号並ニ第三号及ヒ本項ニ定メタル賠償ヲ負担セス 第六百九十七条 若シ善意ノ売主カ契約ノ後物ノ他人ニ属スル事ヲ発見シタルトキハ売主ハ其物ノ引渡ノ請求ヲ受クルニ当リ買主ヨリ代価ノ弁済ヲ提供スト雖モ其売買ノ無効ヲ対抗シ且抗弁ノ方法ニ依リ担保ノ定メ方ヲ裁決セシムル事ヲ得但買主カ追奪ノ場合ニ於ケル総テノ求償権ヲ放棄スル旨ヲ明確ニ陳述シタルトキハ此限ニ在ラス 第六百九十八条 若シ引渡ノ後ニ至リ右ノ発見アリタルトキハ売主ハ即時ニ担保訴権ヲ行フ事ニ付キ又ハ己レト共ニ立会タル上第六百九十五条ニ従ヒ現ニ負担セラレタル賠償額ヲ証明セシムル事ニ付キ買主ヲ遅滞ニ付スル事ヲ得 此終ノ場合ニ於テ売主ハ実物提供ノ後其受取リタル代価ト共ニ右ノ評価額ヲ供託スルトキハ如何ナル時期ニ於テ担保ノ訴アルモ総テ他ノ責任ヲ免カル 供託シタル金額ヲ引取ルノ権利ヲ第五百条ノ明文ニ従ヒテ行用シタル売主ハ再ビ本条ノ利益ヲ利唱スル事ヲ得ス 第六百九十九条 若シ他人ノ物ノ売主カ日後其売ラレタル物ノ所有者ト為リタルトキハ売主ハ何時ニテモ担保訴権ヲ行フト証明セラレタル賠償ヲ以テ売買ヲ確認スルトノ中一ヲ択ムヘキ事ニ付キ買主ニ催告ヲ為ス事ヲ得 右同一ノ権利ハ他人ノ物ノ売主ノ相続人ト為リタル真ノ所有者及ヒ其所有者並ニ売主ニ相続シタル者ニ属ス 第七百条 若シ売ラレタル物ガ分割シタル部分ニ付キ完全ノ所有権又ハ虚有権ニテ第三者ニ属スル場合ニ於テ買主カ右ノ部分ハ之ヲ得取スルヲ得サル事ヲ知レハ其物ヲ買ハサルヘキ程其本性又ハ広狭ニ因リ有益ナル事ヲ証スルトキハ全部追奪ノ場合ニ付キ記載シタル如ク損害賠償ヲ得テ契約ノ銷除ヲ得ル事ヲ得 若シ買主カ契約ノ銷除ヲ宣告セシメサルトキハ其受ケタル直接ニシテ且現在ナル損失ノ限度ニ於テ賠償ヲ受ク 第七百一条 若シ不分ノ部分カ第三者ニ属スルトキハ其部分ノ重要如何ニ拘ハラス買主ハ損害賠償ヲ得テ契約ヲ銷除スルノ権利ヲ有ス 若シ買主カ契約ヲ銷除セシメサルトキハ物ノ価格カ減少シタルトキト雖モ買主ハ常ニ其得取代価ト契約費用トノ右ノ部分ニ対応スルニ分ヲ回収シ又物ニ増価アルトキハ其損害賠償ヲ受ク 第七百二条 売ラレタル土地ニ属スルモノトシテ契約中ニ述ヘタル働方地役ノ追奪アリタルトキ或ハ人為ヲ以テ設定シ契約中ニ述ヘサル受方地役、財産ノ一分又ハ全部ニ存スル用収権若クハ賃借権ニ関シテ第三者ノ要求アリタルトキハ第七百条ノ条例ヲ適用ス但全部ニ存スル用収権又ハ賃借権ニ関スルトキハ其経過スヘキ残余時期カ建物ニ付テハ一个年又土地ニ付テハ二个年ヲ超過セサルトキニ限ル 全部ノ用収権又ハ売ラレタル財産ノ全部ニ付キ存スル賃借権ニシテ其継続時期カ建物ニ付テハ一个年又土地ニ付テハ二个年ヲ超過スヘキニ関シテハ買主ハ自己ノ為メ残ル所ノ権利ノ不充分ナルヲ証スル事ヲ要セスシテ第七百一条ニ従ヒ売買ヲ銷除セシムル事ヲ得 第七百三条 若シ売ラレタル土地ニ契約中ニ述ヘタルト否トヲ問ハス先取特権又ハ抵当ノ負担アリテ買主カ其代価ノ弁済ノ前又ハ弁済ノ時土地ニ右ノ負担ヲ免カレシムル為メ必要ナル方式ヲ履行セサルニ因リ売主ノ債権者ニ依テ所有権ヲ取上ケラレタルトキハ其買主ハ売主ニ対シテ第六百九十五条及ヒ第六百九十六条ニ規定シタル如キ担保ノ求償権ヲ有ス 第七百四条 若シ売買カ差押ノ上ノ競落ヨリ生シタルトキハ追奪ヲ受ケタル買主ハ代価ノ返還ニ付キ被差押人ニ対シテ求償シ又被差押人カ無資力ナル場合ニ於テハ代価ノ配当ヲ受ケタル債権者ニ対シテ求償スル事ヲ得 買主ハ差押人カ差押ノ際物ノ債務者ニ属セサル事ヲ知リタルトキニアラサレハ其差押人ニ対シテ損害賠償ヲ要求スル事ヲ得ス又債務者ニ対シテハ債務者カ物ニ存スル第三者ノ権利ヲ詐欺ヲ以テ之レ無シト云ヒ又ハ之ヲ隠秘シタルトキニアラサレハ損害賠償ヲ要求スル事ヲ得ス 公売条件書ノ録製及ヒ競落ノ処理ニ任シタル公吏ハ其職務ノ本分ヲ甚シク缺キタルカ為メ買主ノ錯誤ヲ助成シタルトキニアラサレハ損害賠償ニ服セス 第七百五条 債権ノ売主ハ当然自己ノ利益ニ於ケル債権ノ成立及ヒ其有効ノ担保人タリ 売主ハ明示ニテ債権者ノ有資力ノ担保ヲ約シタルトキニアラサレハ其有資力ノ担保人タラス 右ノ場合ニ於テモ売主ハ債権カ既ニ満期ト為リタルトキハ現時即チ譲渡ノ日ニ於ケル有資力ノミニ付キ其受取リタル代価ノ限度ヲ以テ責ニ任ス但一層広キ明確ナル約務及ヒ裏書ヲ以テ譲渡スヘキ商ヒ証券ニ特別ナル規則ヲ妨ケス 若シ未タ満期トナラサル債権ニ関スル場合ニ於テ譲渡人カ他ノ特約ナクシテ債務者ノ将来ノ有資力ヲ担保シタルトキハ其担保ハ満期ヨリ一个年後又無期ノ年金権ニ関シテハ其譲渡ヨリ十个年後ニ被譲渡人カ無資力ト為リタルトキハ止ム 第七百六条 物上ト対人トヲ問ハス争ニ係ル権利ノ譲渡ニ於テハ譲渡人ハ特別ノ合意ナク且譲受人カ争アル事ヲ知リタルトキハ其主張ノ現実ニ付キ担保人タルノミニシテ譲渡シタル権利ノ真ノ成立ニ付テハ担保人タラス 権利ハ此条例ヲ適用スル為メニハ裁判上ナルト裁判外ナルトヲ問ハス既ニ基本ニ於ケル明確ナル争ノ目的タルトキニアラサレハ争ニ係ルモノト看做サレス 本条ノ場合ニ於テ担保カ負担セラレタルトキハ譲渡人ハ譲渡代価ノ返還ノ外譲受人カ正当ニ企望シタル利益ノ賠償ヲ負担ス 第七百七条 相続人又ハ包括名義ノ受嘱者トシテ既ニ開始シタル相続ノ全部又ハ一分ニ於ケル不分ノ権利ヲ売リタルモノハ其売リタル部分ニ付キ右ノ相続ニ於ケル自己ノ権利ノ成立ノ担保人タリ 其者ハ定マリタル得益ノ担保人タル事ヲ明示シタルトキニアラサレハ其担保人タラス 第七百八条 総テノ場合ニ於テ相続権ノ譲受人ハ相続ノ債務ニ因レル総テ日後ノ訴追ニ対シ売主ヲ担保スルコトヲ要ス 若シ売主カ右ノ債務ノ全部若クハ一分ヲ既ニ弁済シ又ハ財産保存ノ為メノ出費ヲ為シ又ハ自ラ相続ニ対シ債権ヲ有スルトキハ譲受人ハ之ヲ売主ニ計算スルコトヲ要ス 之ニ反シテ売主ハ自ラ相続ニ対シ負担スルモノノ相続ノ債権ニ付キ受取リタルモノ及ヒ相続ヨリ収メタル其他ノ利益ヲ譲受人ニ計算スルコトヲ要ス 第七百九条 特定又ハ包括ノ民事又商事会社ニ於ケル自己ノ権利ヲ売ル者ハ其権利ノ成立及ヒ其売買契約ニ示シタル如キ権利ノ広狭ニ付テノミ担保人タリ 売主ノ為メ会社ノ前来ノ行為ヨリ生シテ既ニ売主ノ利益トシ又ハ其負担トシテ清算セラレタル権利及ヒ義務ハ買主ヲ利セス又之ヲ害セス 第七百十条 前記ノ総テノ場合ニ於テ売買カ担保ナク又ハ何等ノ担保モナク為サレタルコトヲ合意シタルトキト雖モ若シ買主カ追奪セラレタルニ於テハ売主ハ代価ヲ返還スルノ責ニ任ス但買主カ同時ニ追奪ノ危険ヲ知リタルトキハ此限ニ在ラスシテ此場合ニ於テハ売主ハ此返還ヲモ負担セス 総テノ場合ニ於テ若シ売買カ買主ノ危険及ヒ危難ニテ為サレタルトキモ亦同シ 然レトモ如何ナル場合ニ於テモ又如何ナル要約ニ依ルモ売主ハ売買ノ前又ハ後ニ己レノ付与シタル権利ヨリ生スル妨碍又ハ追奪ノ担保ヲ免カルヽコトヲ得ス 第七百十一条 売主カ買主ノ追奪ヨリ生スル自己ノ義務ノ全部又ハ一分ヲ買主ノ悪意ノ故ヲ以テ免カレント主張スルトキハ売ラレタルモノニ関スル所為ヲ第三者ノ利益ノ為メ登記シアリト雖トモ其登記ハ買主カ売買ノ前ニ帳簿保管人ノ保証書ニ依リ又ハ其他ノ方法ニテ右ノ所為ヲ知リタル直接ノ証ヲ供スルノ責ヲ売主ニ免カレシメス 第七百十二条 第四百十九条及ヒ第四百二十条ハ附帯ノ担保ニ於ケル売主ノ召喚及ヒ追奪ヲ受ケタル買主其担保人ヲ訴訟ニ参カラシメサル為メ買主ノ失権ニ之ヲ適用ス 第三款 買主ノ義務 第七百十三条 買主ハ合意シタル時期ニ於テ代価ヲ弁済スルコトヲ要ス又此事ニ付キ特別ノ合意ナキトキハ引渡ノ当時ニ於テ之ヲ弁済スルコトヲ要ス 引渡ヲ遅延スル合意ハ当事者ノ意思ニ随ヒ代価ノ弁済ヲ暗ニ遅延スルモノト推定セラル 若シ売主カ引渡ノ為メノ恩恵期間ヲ裁判所ヨリ得タルトキハ買主ハ代価弁済ノ為メ同一ノ期間ヲ享有ス 之ニ反シテ代価弁済ノ為メ許与セラレタル恩恵期間ハ引渡ニ延及ス 第七百十四条 合意セラレタル場所ナキトキハ弁済ハ有体動産物ニ関シテハ引渡カ為サルル場所ニ於テ之ヲ為シ又不動産、債権争ニ係ル権利又ハ相続ノ権利ニ関シテハ証書ノ交付ノ場所ニ於テ之ヲ為ス 若シ引渡ノ前又ハ後ニ弁済ヲ要求スルコトヲ得ヘキトキハ其弁済ハ買主ノ住所ニ於テ之ヲ為ス 第七百十五条 若シ物カ菓実又ハ其他金円ニ見積ルコトヲ得ヘキ定期ノ利益ヲ生スルトキハ買主ハ引渡ノ時ヨリ当然代価ノ利息ヲ負担ス 反対ノ場合ニ於テハ利息ハ特別ノ合意又ハ弁済スヘキ催告ニ憑ルニアラサレハ負担セラレス 第七百十六条 若シ買主カ物上訴権ニ因リ妨碍セラレ又ハ妨碍セラルヽコトヲ恐ルヘキ正当ノ事由ヲ有スルトキハ売主ノ其妨碍若クハ危険ヲ止マシメ又ハ追奪ノ場合ニ在テハ買主ニ代価ヲ返還スルノ保証人ヲ立ツルマテ買主ハ右訴権ノ軽重ニ随ヒ代価ノ全部又ハ一分ヲ弁済スルコトヲ拒ムコトヲ得 此条例ハ若シ買主カ物ノ他人ニ属スルコトヲ直接ニ証スルコトヲ得ルトキハ買主ニ於テ売買ノ無効ヲ宣告セシメ及ヒ担保ノ訴権ヲ行フノ権利ヲ妨ケス 第七百十七条 若シ売ラレタル不動産ニ付キ抵当又ハ先取特権ノ記入アルトキハ買主ハ滌除ノ方式ヲ行フタル後ニアラサレハ代価ヲ弁済スルノ責ナシ但適法ノ期間ニ於テ滌除ヲ行フコトヲ要ス 第七百十八条 前二条ニ定メタル場合ニ於テ若シ売主ノ先取特権及ヒ第三者ニ対スル其解除ノ権利ノ保存ノ為メ必要ナル方式カ遵守セラレサルトキハ売主ハ当事者双方ノ名ヲ以テ買主ヲシテ猶予ナク代価ヲ供託セシメ当事者双方ノ承諾又ハ裁判所ノ判決ニ憑リ其手続終了ノ後ニアラサレハ其代価ヲ引取ルコトヲ得サル様為スコトヲ要求スルコトヲ得 第七百十九条 若シ動産物ノ買主カ代価ヲ弁済シタルト否トヲ問ハス引渡ヲ受クルノ権利ヲ有スル当時ニ於テ引渡ヲ受ケサルトキハ売主ハ第四百九十五条乃至第五百条ニ従ヒ其売ラレタル物ノ提供及ヒ供託ヲ為スコトヲ得 然レトモ飲食品又ハ其他速ニ敗損スヘキ物ニ関シテハ売主ハ若シ買主ノ為メ之ヲ転売スルコトヲ得ルトキハ其転売ヲ為スコトヲ得 第三節 売買ノ解除及ヒ銷除 第一款 義務ノ不履行ノ為メ解除 第七百二十条 若シ当事者ノ一方カ上ニ定メタル如キ自己ノ義務又ハ其特ニ負担スル総テ其他ノ義務ノ全部若クハ一分ヲ履行スルコトヲ缺キタルトキハ他ノ一方ハ損失アラハ其賠償ヲ得テ第四百四十一条乃至第四百四十四条ニ従ヒ契約ノ解除ヲ裁判上ニテ請求スルコトヲ得 若シ解除カ当事者ノ間ニ明示ニテ要約セラレタルトキハ裁判所ハ恩恵期間ノ特許ヲ以テ其解除ヲ遅延スルコトヲ得ス然レトモ其解除ハ若シ履行ヲ缺キタル当事者カ徒ラニ遅滞ニ付セラレタルトキニアラサレハ当然其効力ヲ生セス 第七百二十一条 弁済ヲ缺キ又ハ買主ノ其他ノ義務ヲ缺キタル為メノ解除ハ登記セラレタル売買証書ニ買主尚ホ代価ノ全部若クハ一分ヲ負担スルコトヲ記載シ又ハ買主ノ責任タル其他ノ負担及ヒ条件ヲ明示シタルトキニアラサレハ売主ヨリ転得者ニ対シテ之ヲ請求スルコトヲ得ス 然レトモ売主ハ第三百七十二条ニ記載シタル如ク事後ニ右ノ負担及ヒ条件又ハ其解除ノ請求ヲ公示シテ常ニ第三者ニ対スル其解除ノ権利ヲ保全スルコトヲ得 第七百二十二条 弁済ノ為メ期限ヲ定メテ為シタル動産ノ売買ニ於テ其引渡カ実行セラレタルトキハ売主ハ弁済ヲ缺キタル為メノ解除ノ権利ヲ買主ノ他ノ債権者ヲ害シテ行フコトヲ得ス 若シ売買カ期限ナクシテ為サレタルトキハ売主ハ引渡ヨリ八日内ニ売買ヲ解除セシムルコトヲ得然レトモ善意ナル第三者ノ既ニ得取シタル物権ヲ害スルコトヲ得ス 第二款 買戻ノ権能ノ行用 第七百二十三条 売主ハ売買証書ノ中ニ記入シタル買戻ト称スル約定ニ依リ若シ買主ノ弁済シタル代価及ヒ費用ノ一分ヲ定マリタル期間内ニ買主ニ返還スルトキハ其売買ヲ解除スヘキコトヲ要約スルコトヲ得 其期間ハ不動産ニ付テハ五个年又動産ニ付テハ二个年ニ過クルコトヲ得ス 若シ一層長キ時期ニ付キ要約ヲ為シタルトキハ其要約ハ当然右ノ期限ニ短縮セラル 期間カ一旦定メラレタル上ハ二个年又ハ五个年ノ制限内ト雖モ之ヲ長伸スルコトヲ得ス 然レトモ其長伸ハ買主ニ因レル再売ノ予約ト看做スコトヲ得此場合ニ於テハ其長伸ハ第六百六十三条及ヒ第六百六十四条ノ条例ニ従フ 売買ノ後ニ為シ又ハ別証書ヲ以テ為シタル買戻ノ要約ニ付テモ亦同シ 売主ハ若シ代価ノ半額又ハ半額以上ノ弁済ノ為メ期限ヲ与ヘ且其期限カ買戻ノ為メ定メタル期間ノ半ニ等シク又ハ半ヲ踰ユルトキハ有効ニ買戻ノ権能ヲ要約スルコトヲ得ス 第七百二十四条 不動産ニ付テハ法律ノ定メタル期間内ニ其定メタル条件ヲ以テ買戻ノ権能ヲ行ヒタルトキハ買主ノ付与シ又ハ其権利ニ依テ第三者ノ得取シタル総テノ物権ヲ免カレテ其不動産ヲ売主ノ手裏ニ復セシム但経過スヘキ残余期間カ三ケ年ニ過キサル賃借ハ此限ニ在ラス 動産物ニ関シテハ買戻ノ権能ハ善意ニテ其動産物ニ付キ物権ヲ得取シタル第三者ニ対シ之ヲ行フコトヲ得ス 第七百二十五条 売主ノ債権者ハ売主ニ代ハリテ買戻ノ権能ヲ行フ事ヲ得 然レトモ買主ハ右債権者カ予メ其債務者ノ無資力ヲ証明シ且第三百五十九条ニ従ヒ買戻ノ権能ノ行用ノ為メ裁判上ニテ売主ニ代位スル事ヲ要求スル事ヲ得 又買主ハ物ノ保存ノ費用トシテ売主ヨリ己レニ返還スヘキ金額ヲ控除シテ債権者ニ皆済スルニ因リ其債権者ノ訴ヲ止ムル事ヲ得 第七百二十六条 若シ売主カ買戻約定ヲ以テ売リタル物ヲ後日抵当トシ又ハ之ニ其他ノ物権ヲ負担セシメタルトキハ其権利ノ効力ハ売主自身又ハ前条ノ場合ニ於テハ其債権者ニ因レル買戻ノ行用ニ繋ル 若シ売主カ買戻ニ服シタル物ノ所有権ヲ移付シタルトキハ其得取者ハ自己ノ名ヲ以テ買戻ヲ行フコトヲ得然レトモ其得取者ハ売主ニ因リ移付前ニ承諾セラレ且登記ヲ以テ公示セラレタル他ノ物権ヲ尊重スルコトヲ要ス但担保ニ於ケル得取者ノ求償権ヲ妨ケス 第七百二十七条 買戻ノ権能ヲ行フ売主ハ定マリタル期間内ニ売買ノ原価及ヒ契約ノ費用ノ外物ノ保存ノ為メ為シタル出費ヲ買主ニ弁償スルコトヲ要セス 若シ買主カ右ノ金額ヲ受取ルコトヲ拒シタルトキハ其金額ハ猶予ナク供託セラルヽコトヲ要ス 又売主ハ物ヲ改良シタル出費ヲ弁償スルコトヲ要ス然レトモ売主ハ此事ニ付キ裁判所ヨリ猶予ヲ受クルコトヲ得 買主ハ右ノ金額ノ皆済ヲ受クルマテ物ノ留置権ヲ有ス 第七百二十八条 若シ買戻約定ニ於ケル売買カ不動産ノ不分ノ部分ヲ目的トシタルトキ買主カ己レニ対シテ促サレタル公売ニ因リテ財産全部ノ競落人ト為リタルニ於テハ売主ハ其受取リタル代価ニ公売ノ代価ヲ加ヘテ全部ノ為メスルニアラサレハ買戻ヲ行フコトヲ得ス 又買主ハ全部ノ買戻ニ故障ヲ述フルコトヲ得ス 若シ買主カ公売ヲ促シタルトキハ売主ハ其売リタル部分ニ付テノミ買戻ヲ行フコトヲ得 又買主ハ全部ノ買戻ニ故障ヲ述フルコトヲ得 第七百二十九条 若シ売主ニアラサル共有者ノ一人又ハ外人一利益ニ於テ公売ノ競落アルトキハ其何レノ当事者ヨリ之ヲ促シタルヲ問ハス売主ハ若シ公売ニ召喚セラレサリシ場合ニ於テ其売リタル部分ノミニ付キ競落人ニ対シ買戻ノ権利ヲ保存シ之ニ反スル場合ニ於テハ其権利ヲ失フ 第七百三十条 若シ現物ヲ以テ派分ヲ為シタルトキ売主カ派分ニ召喚セラレタルニ於テハ売買ハ何レノ当事者ヨリ派分ヲ促シタルヲ問ハス他ノ所有者ニ帰シタル部分ニ付キ何等ノ要求ヲモ為スコトヲ得ス其売主ハ買主ニ帰シタル部分ヲ取回スコトヲ得ルノミ但当事者双方買主ノ供給シ又ハ受取リタル補足額ヲ互ニ計算スルコトヲ妨ケス 若シ売主カ派分ニ召喚セラレサリシトキハ売主ハ其撰択ヲ以テ或ハ為サレタル派分ヲ確認シテ買主ニ対シ前ニ指示シタル権利ヲ行ヒ或ハ自己ノ受取リタル代価ヲ買主ニ弁償シテ共有者ニ対シ再派分ヲ促スコトヲ得 第七百三十一条 若シ不分物ノ共有者カ一箇ノ契約ヲ以テ唯一代価ニテ其物ヲ買戻約定ヲ以テ売リタルトキハ買主ハ一分ニ付キ買戻ニ服スルノ義務ナシ 又買主ハ売主ノ一人ヨリ為ス全部ノ買戻ニ故障ヲ述フルコトヲ得但其売主ノ一人カ他ノ売主ノ委任ニ憑リ買戻ヲ行ヒタルトキハ此限ニ在ラス 若シ一人ノ売主カ数人ノ相続人ヲ遺シテ死亡シタルトキモ亦同シ 若シ之ニ反シテ数人ノ共有者カ各別ノ契約ヲ以テ其各部分ヲ売リタルトキハ各自ハ各別ニテ買戻ヲ行フコトヲ得但第七百二十八条及ヒ第七百三十条ヲ適用スヘキトキハ之ヲ適用スルコトヲ妨ケス 第七百三十二条 若シ数名ノ買主カ一箇ノ契約又ハ各別ノ契約ニ因リ買戻約定ヲ以テ一箇ノ不動産ヲ得取シタルトキ売主カ買主ノ間ニ派分ヲ為サヽル前ニ買戻ヲ行ハント欲スルニ於テハ売主ハ或ハ併合シテ或ハ各別ニテ各買主ニ対シ其部分ニ付キ買戻ヲ行フコトヲ得 若シ既ニ派分アリタルトキハ売主ハ各買主ニ対シ派分又ハ公売ニ因リテ其各自ニ帰シタル部分ニ付テノミ買戻ヲ行フコトヲ得若シ一人ノ買主ガ数名ノ相続人ヲ遺シテ死亡シタルトキハ右同一ノ規則ヲ適用ス 第三款 折損ノ為メノ銷除 第七百三十三条 若シ不動産ノ売買カ契約ノ日ニ於ケル其実価ノ半以下ノ代価ニテ為サレタルトキハ売主ハ折損ノ為メ銷除ヲ請求スルコトヲ得但売主カ契約ヲ以テ明示ニテ此銷除ヲ放棄シ又ハ代価ノ補足ヲ放棄スルコトヲ述ヘタルトキモ亦同シ 折損ノ為メノ銷除ハ代価カ当事者間ニ合意シタル第三者ニ因リ定メラレタル場合ニ於テハ之ヲ許サス但第六百七十条第三項及ヒ第四項ノ適用ヲ妨ケス 第七百三十四条 銷除ハ売買カ条件附ナルトキト雖トモ契約ノ時ヨリ二个年内ニ之ヲ請求スルコトヲ要ス 此期間ハ売買契約ヲ以テ之ヲ増減スルコトヲ得ス 若シ買戻ノ権能カ要約セラレタルトキハ二箇ノ期間ハ最モ短キ期間ニ満ツルマテ混同ス 第七百三十五条 売買ノ日ニ於ケル不動産ノ価額ハ証書及ヒ証人又ハ鑑定人ヲ以テ之ヲ証ス 当事者ハ各常ニ一人ノ鑑定人ヲ選任スルコトヲ請求スルコトヲ得 総テノ場合ニ於テ裁判所ハ職権ヲ以テ鑑定人一人ヲ選任スルコトヲ要ス 右ノ外後ノ第五編及ヒ民事訴訟法ニ定メタル鑑定ノ一般ノ規則ヲ適用ス 第七百三十六条 折損ノ為メノ銷除ハ第三百七十二条第一項ニ従ヒ為シタル公示ニ先タチ証書ヲ登記シタル物権ノ転得者ニ対シ之ヲ行フコトヲ得ス 第七百三十七条 若シ買主カ第五百七十六条ヲ以テ許与セラレタル正当代価ヲ補足スルノ権能ヲ行ハント欲スルトキハ請求ノ日ヨリノ補足額ノ利息ヲ負担ス 若シ買主カ物ヲ返還スルコトヲ欲スルトキハ其弁済シタル代価ヲ請求後ノ利ト共ニ請求後ニ収取シタル果実ヲ返還ス 此終ノ場合ニ於テ買主ハ代価ノ皆済ヲ受クルマテ占有ヲ留置スルコトヲ得 第七百三十八条 買戻権能ノ可分又ハ不可分ノ行用ニ付キ第七百二十八条乃至第七百三十二条ニ定メタル規則ハ折損ノ為メノ銷除ニ之ヲ適用ス 第七百三十九条 公売ニテ為シタル売買ニ於テハ其売買カ任意ナルモ折損ノ為メノ銷除ハ存立セス但裁判所ノ権ヲ以テ為シタル売買ノ為メ定メタル公示及ヒ期間ヲ遵守シ且公売ノ自由ニ何等ノ妨碍ヲモ加ヘサリシコトヲ要ス 第七百四十条 売ラレタル権利又ハ弁済スヘキ代価ノ本性ニ因リ射倖ノ性質ヲ有スル売買ハ折損ノ為メ之ヲ銷除スルコトヲ得ス 第四款 隠レタル瑕疵ノ為メノ売買廃却訴権 第七百四十一条 動産ト不動産トヲ問ハス売ラレタル物ニ売買ノ当時ニ於テ買主ノ知ラサル不表見ニシテ修補スルコトヲ得サル瑕疵アリテ若シ其瑕疵カ物ヲ其本性若クハ当事者ノ一致ニ因リ供セラレタル用方ニ不適当ナラシメ又ハ買主其瑕疵ヲ知レハ購売セサルベキ程ニ物ノ使用ヲ減スルトキハ買主ハ売主ニ因レル引取即チ取回ヲ請求スルコトヲ得 此場合ニ於テ買主ハ其弁済シタル代価ト契約費用トヲ回収ス然レトモ代価ノ利息ハ請求ノ日ニ至ルマテノ物ノ収益又ハ使用ト相殺セラル 第七百四十二条 若シ買主ニ於テ隠レタル瑕疵カ売買廃却訴権ノ行フ程ニ重大ナルコトヲ証スル能ハス又ハ物ヲ保有スルコトヲ欲スルトキハ買主ハ其受クル便益喪失ノ割合ニ応シテ代価ノ減額ヲ請求スルコトヲ得 第七百四十三条 買主カ売主ニ対シテ物ノ取回又ハ代価ノ減少ヲ得タル二箇ノ場合ニ於テ若シ売主カ瑕疵ヲ知リタルトキハ買主ハ右ノ外其受ケタル損害又ハ失フタル利益ノ為メ損害賠償ヲ要求スルコトヲ得 第七百四十四条 隠レタル瑕疵ヲ担保セストノ要約ハ売主ヲシテ其知リナカラ詐偽ヲ以テ隠秘シタル瑕疵ノ責任ヲ免レシメス 第七百四十五条 売買ノ当時ニ於テ物ニ瑕疵アリタルコト並ニ其瑕疵ヨリ買主ノ為メ損害ノ生シタルコト及ヒ買主又ハ売主カ其瑕疵ヲ知リタルコトハ人証、鑑定又ハ総テ其他ノ適法ナル証拠方法ヲ以テ之ヲ証ス 第七百四十六条 売買廃却ノ訴及ヒ代価減少並ニ損害賠償ノ訴ハ左ノ期間ニ於テ之ヲ起スコトヲ要ス 不動産ニ付テハ六ケ月 動物ニアラサル動産物ニ付テハ三ケ月動物ニ付テハ一ケ月 此期間ハ引渡ノ時ヨリ之ヲ計算ス 然レトモ此期間ハ買主カ瑕疵ヲ知リタルノ証アリタル日ヨリ其半ニ短縮セラル 若シ買主カ意外又ハ不可抗ノ情況ニ因リ右ノ期間内ニ隠レタル瑕疵ヲ発見スルコト能ハサリシコトヲ証スルトキハ其期間満了ノ後ニ於テモ訴ヲ受理スルコトヲ得 第七百四十七条 隠レタル瑕疵ニ基キタル代価減少ノ訴権ハ物ノ無償ノ移付ニ因テモ又其有償名義ノ移付ニ因テモ買主ノ為メ喪失セス但有償名義ノ移付ノ場合ニ於テハ其移付カ瑕疵ノ為メ損失ヲ以テ為サレ又ハ買主自ラ其譲受人ヨリ訴ヘラレ若クハ訴ヘラルヽノ危険ニ在ルトキニ限ル 第七百四十八条 若シ売ラレタル物カ意外ノ事又ハ不可抗力ニ因リ全部又ハ半以上滅失シタルトキハ売買廃却訴権ハ最早受理セラレス 物ノ一分ノ滅失ノ多少ニ拘ラス代価減少ノ訴権ハ其残存スル部分ノ割合ニ応シテ存立ス 総テノ場合ニ於テ売主ハ隠レタル瑕疵其モノヨリ生スル全部又ハ一分ノ滅失ノ責ニ任ス 第七百四十九条 合式ニテ為シタル強売ハ廃却訴権ヲモ又代価減少ノ訴権ヲモ生セス 第七百五十条 或ル動物及ヒ或ル物品又ハ飲食品ノ売買ニ於ケル不表見ノ瑕疵ノ効力ヲ特別法ヲ以テ定ムルニ至ルマテ此法律ノ条例ハ区別ナク総テノ物品ノ売買ニ之ヲ適用ス 附録 不分物公売 第七百五十一条 不分財産ノ派分ヲ為ストキ若シ所有者ノ一人カ現物ノ派分ヲ拒ムニ於テハ財産ノ熟議売却又ハ公売ヲ為シ代価ハ有権者ノ部分ノ限度ニ随ヒテ之ヲ其各自ニ配当ス 第七百五十二条 若シ利害ノ関係人カ或ハ其間ノ一人又ハ第三者ニ熟議売却ヲ為スニ付キ或ハ其間ニ公売ヲ為スニ付キ一致スルコトヲ得ス又ハ其利害関係人中ニ失踪者若クハ無能力者アルトキハ不分物ノ公売ハ裁判所ニ於テ又ハ裁判所ノ指定シタル公吏ノ前ニテ他ノ公売ノ為メ要セラレタル公式ヲ以テ且民事訴訟法ニ定メタル方式ニ従ヒテ之ヲ為ス 共同公売者ノ各自ハ常ニ公売ニ付キ外人ノ参加ヲ許スコトヲ要求スルコトヲ得共有者ノ一人カ失踪シ又ハ無能力ナルトキハ外人ノ参加ハ当然ニシテ且必要ナリ 第七百五十三条 共有者ノ一人ガ物ノ全部ヲ得取シタルトキハ不分物公売又ハ熟議売却ハ其共有者間ノ派分ノ行為ト看做サレ会社及ヒ相続ノ派分ニ関シテ定メタル効力ヲ生ス 若シ第三者ニ競落又ハ熟議売却ヲ為シタルトキハ不分物公売ハ第三者ト原共有者トノ間ニ此章ニ規定シタル如キ売買ノ効力ヲ生ス 第十三章 交換 第七百五十四条 交換ハ一方ノ当事者カ己レノ得取シ又ハ己レニ約束セラレタル物又ハ権利ノ対価ト看做サレタル物ノ所有権又ハ総テ其他ノ権利ヲ他ノ一方ニ移転シ又ハ移転スルコトヲ約スル契約ナリ 若シ互ニ譲渡シタル権利ノ一カ価額ニ於テ他ノモノニ劣ルトキハ其不均等ハ金円又ハ其他ノ者ニ於ケル補足額ヲ以テ之ヲ填補ス 若シ金円ニ於ケル補足額カ受取リタル有価物ノ対換トシテ供給セラレタル有価物ノ価ニ超ユルトキハ其契約ハ売買ト看做サル 第七百五十五条 当事者ハ対換トシテ供給シ又ハ約束シタル物又ハ権利ニ関スル総テノ妨碍及ヒ追奪ノ担保ヲ互ニ負担ス 若シ当事者ノ一方カ己レニ約束セラレタル権利ヲ得取セサリシトキハ自己ノ撰択ヲ以テ或ハ金円ニ於ケル対価ヲ要求シ或ハ契約ノ解除ヲ請求シテ自己ノ与ヘタルモノヲ取回スコトヲ得但何レノ場合ニ於テモ損害賠償ヲ受クヘキトキハ之ヲ受ク 此場合ニ於テ解除ハ取戻ニ服スル不動産ニ付キ権利ヲ得取シタル第三者ニ対シテ之ヲ行フコトヲ得ス但第三百七十二条第一項ニ従ヒ請求ノ公示前ニ其第三者ノ名義ノ登記又ハ記入アリタルコトヲ要ス 第七百五十六条 売買ノ規則ハ交換ニ之ヲ適用ス但左ノ例外ハ此限ニ在ラス 第一 交換ハ配偶者ノ間ニ許サル但互ニ供給シタル価額ノ不均等カ間接ノ利益ヲ成ストキハ贈与ヲ禁制シ又制限スル規則ノ適用ヲ妨ケス 第二 定マリタル期間内ニ於ケル交換ノ任意ノ解除ニシテ当事者ノ一方又ハ双方ノ為メニ要約セラレタルモノハ第六百六十四条ニ従ヒ売買ノ予約カ第三者ニ対抗セラルヽコトヲ得ル条件ニ従フニアラサレハ之ヲ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス 第三 交換ハ折損ノ為メ之ヲ銷除スルコトヲ得ス 第十四章 和解 第七百五十七条 和解ハ当事者カ交互ノ譲合又ハ捐給ヲ為シテ既ニ発シタル争ヲ結了シ又ハ発スルコト有ルヘキ争ヲ予防スル契約ナリ 和解ハ其組成、有効、効力及ヒ証拠ニ付テハ下ノ改様ヲ以テ合意ノ一般ノ規則ニ従フ 第七百五十八条 無能力者ニ関スル和解ノ有効ニ付キ要セラレタル条件ハ此法律ノ第一編ニ之ヲ定ム 国「デハルトマン」、「コンミユーヌ」及ヒ公設所ニ関スル和解ハ行政法ヲ以テ管知セラル 第七百五十九条 和解ハ法律ノ錯誤ノ為メ之ヲ銷除スルコトヲ得ス但錯誤カ相手方ノ詭譎ニ出ツルトキハ此限ニ在ラス 第七百六十条 和解ハ偽造ノ書類又ハ無効ノ名義若クハ所為ニ憑リ承諾シタルモノトシテ之ヲ銷除スルコトヲ得ス但是等ノ事ヲ陳弁スルコトヲ得ヘキ当事者ニ於テ偽造又ハ法律カ所為ノ無効ヲ附着セシメタル事実ヲ知ラサリシトキハ此限ニ在ラス 第七百六十一条 定マリタル争ノ一箇又ハ数箇ノ原由ニ憑リ為シタル和解ハ若シ新ニ発見シタル証書ニ因リ当事者ノ一方カ争ノ一箇若クハ数箇ノ目的ニ付キ何等ノ権利ヲモ有セサリシコト又ハ他ノ一方カ之ニ付キ完全ニシテ且争フコトヲ得サル権利ヲ有セシコトノ顕ハレタルトキハ事実ノ錯誤ノ為メ亦之ヲ銷除シ又ハ取消スコトヲ得 若シ確定シタル判決又ハ攻撃スルコトヲ得サル契約ヲ以テ既ニ争ヲ結了シタルニ其判決又ハ契約ヲ知ルコトニ付キ利害ノ関係アリシ当事者カ之ヲ知ラサリシモ亦同シ 然レトモ若シ和解カ当事者双方ノ前来ノ原由ニ憑リ為スコト有ルヘキ総テ何等ノ争タリトモ之ヲ結了シ又ハ予防スルコトヲ目的トシタルトキハ当事者ノ一方ノ利益ニ於ケル確定証書ノ発見ハ其証書カ相手方ノ所為ニ因リ扣留セラレタルトキニアラサレハ銷除ヲ生セス 第七百六十二条 有効ナル和解ハ当事者ノ各自ノ利益ニ於テ互ニ認知セラレタル権利又ハ利益カ既ニ生シ又ハ予見セラレタル争ニ係リシトキハ当事者ノ間ニ於テ確定判決ノ純然タル権利認定ノ効力ヲ生ス此場合ニ於テ右ノ権利又ハ利益ハ前来ノ原由ニ憑リ保有セラレタリト看做サル但当事者双方ニ更改ヲ為スノ意アリシトキハ此限ニ在ラス 若シ之ニ反シ互ニ供給セラレ又ハ約束セラレタル権利又ハ利益カ全部若クハ一分ニ於テ争ニ係ラサリシトキハ和解ハ右ノ権利又ハ利益ニ付テハ物権又ハ人権ヲ生シ移転シ若クハ消滅スル有償名義ノ合意ノ規則ニ従フ 第十五章 特定会社 第一節 会社ノ本性及ヒ設立 第七百六十三条 会社ハ二人又ハ数人カ其間ニ配当セラルヘキ利益ヲ収ムル為メ財産ヲ共通シ又ハ共通セント約スル契約ナリ 第七百六十四条 会社ハ包括又ハ特定ナリ 包括会社ニ特別ナル規則ハ此編ノ第二部第二章ニ之ヲ定ム 特定会社ハ各社員カ或ハ定マリタル物ヲ共通シテ利用スル為メ或ハ作業ヲ成シ又ハ定マリタル職業ヲ行フ為メ其定マリタル物ノ出資ヲ為シ又ハ之ヲ約スル会社ナリ 第七百六十五条 社員ノ出資ハ或ハ動産又ハ不動産ノ所有権若クハ収益権或ハ金円労力又ハ芸術ヨリ成ルコトヲ得 出資ハ不均等及ヒ別異ノ本性タルコトヲ得 第七百六十六条 民事会社ハ当事者ノ意カ之ヲ無形人ト為スニ在ルトキハ無形人ヲ成ス 此場合ニ於テハ会社ニ一ノ社名ヲ付シ且其契約ハ商事会社ノ公告ノ為メ法律ノ定メタル方式ニ従ヒ抜書ヲ以テ之ヲ公告スルコトヲ要ス 会社ニ社名ヲ付シ又ハ結社契約ヲ公告シタルノ所為ノミヲ以テ社員ニ会社ヲ無形人ト為スノ意アリト推定セラル 第七百六十七条 合意ノ一般ノ規則ハ会社ニ之ヲ適用シ殊ニ当事者ノ承諾並ニ能力、目的、原由及ヒ証拠ニ関スルモノハ会社ニ之ヲ適用ス 商事会社ニ特別ナル規則ハ商法又ハ特別法ニ之ヲ定ム 第七百六十八条 目的ノ商事タラサル会社ハ商法ニ従ヒ資本ヲ株式ニ分チ且之ヨリ生スル有限責任ヲ以テ合資又ハ無名ノ会社ノ組織ヲ受クルコトヲ得但之カ為メ民事会社タルコトヲ妨ケス 買主ハ同一ノ場合ニ於テ鑑定人ノ評価シタル物ノ現時ノ価額ト債権者カ第七百二十七条ニ従ヒ売主ノ権利ニテ己レニ返還スヘキ金額トノ差額ニ達スルマテ債権者ニ対シテ自己ノ負担スルモノヲ弁済シテ亦其債権者ノ訴ヲ止ムルコトヲ得 第二節 社員ノ権利及ヒ義務 第七百六十九条 会社ハ契約ノ日ヨリ始マル但明示又ハ黙示ニテ他ノ期限又ハ条件ニ服シタルトキハ此限ニ在ラス 各社員ハ前同一ノ日ニ於テ及ヒ前同一ノ留保ヲ以テ其約束シタル出資ノ差出ヲ実行スルコトヲ要ス若シ之ヲ為サヽルトキハ其社員ハ当然果実並ニ利息及ヒ金額ニ対スルトキト雖モ遅延ノ為メ損害アルトキハ其賠償ヲ負担ス 第七百七十条 社員カ会社ニ対シ自己ノ芸術又ハ労力ヲ約束シテ之ヲ会社ニ供スルコトヲ欠キタルトキハ其社員ハ他ノ社員ノ撰択ニ随ヒ会社ニ対シ或ハ其義務ノ履行ヲ欠キタル当時ヨリ会社ノ受ケタル損害ノ賠償或ハ其時間又ハ芸術ヲ会社外ニ用ヒテ得タル利益ノ交付ヲ負担ス 第七百七十一条 動産ト不動産トヲ問ハス特定物ノ所有権ヲ会社ニ出資ト為スコトヲ述ヘタル社員ハ会社ニ対シ売主ニ対シ物ノ追奪面積又ハ数量ノ不足及ヒ隠レタル瑕疵ノ担保人タリ 若シ社員カ物ノ収益ノミヲ会社ニ約シタルトキハ賃貸人ニ等シク担保ノ責ニ任ス 第七百七十二条 若シ結社契約ヲ以テ社員中ニテ一名又ハ数名ノ管理人即チ業務担当者ヲ指定シタルトキハ其各自ハ己レニ付与セラレタル委任ノ権限ヲ踰エサルコトヲ要ス 権限ノ定マラサル管理人即チ業務担当者ハ共同ニテ又ハ各別ニテ管理ノ通常ノ所為ヲ為スニ止マル 又管理人即チ業務担当者ハ会社ノ目的中ニ存スル最大重要ノ所為ヲ共同ノミニテ為スコトヲ得異議アル場合ニ於テハ争ハレタル所為ヲ中止スルコトヲ要シ其所為ハ会合シタル社員議決権ノ多数ヲ以テ之ヲ決ス 第七百七十三条 若シ結社契約ヲ以テ何レノ社員ニモ管理権ヲ与ヘサリシ場合ニ於テ総社員ノ一致ニテ之ヲ定メサルノ間ハ社員ノ各自ハ前条ニ定メタル所為ヲ同条ニ記載シタル条件ニ従ヒテ為スノ権ヲ有ス 第七百七十四条 結社契約ヲ以テ管理人ニ選任セラレタル社員ハ正当ノ原由アルトキ又ハ管理人タル社員ノ承諾ヲ併セ総社員ノ同意アルトキニアラサレハ其委任ノ期限内ハ其解任ヲ為スコトヲ得ス 結社契約以後ノ所為ヲ以テ選任セラレタル者ハ之ヲ選任シタルト同一ノ方法ヲ以テ其承諾ヲ要セスシテ其解任ヲ為スコトヲ得 第七百七十五条 社員又ハ社員ニアラサル管理人ヲ選任シタル方法ノ如何ヲ問ハス若シ其中ノ一人又ハ数人ノ死亡、辞任又ハ解任アリテ是等ノ事件ニ因リ会社ノ解散セサルトキハ社員議決権ノ多数ヲ以テ其補闕ヲ為ス 第七百七十六条 会社定款ノ執行ニ付キ為スヘキ総テ其他ノ処分ハ亦社員議決権ノ完全多数ヲ以テ之ヲ定ム 定款ヲ変更スルコト又ハ定款ニ定メサル所為ヲ為スコトニ関シテハ総社員ノ一致ヲ必要トス 右ハ其定款又ハ法律ノ之ニ反スル規定ヲ妨ケス 第七百七十七条 若シ第三者カ会社ト業務担当ノ任アル社員ノ一人トニ対シテ同本性ノ債務ヲ負担シタルトキ其第三者カ二箇ノ債務ヲ消滅セシムルニ足ラサル金円又ハ有価物ヲ右ノ社員ニ弁済スルニ於テハ其社員ハ会社ノ債権ノ価額ニ比較シタル自己ノ債権ノ価額ノ割合ヲ以テスルニアラサレハ自己ノ債権ノ弁済ニ充当スルコトヲ得ス然レトモ債務者ノ為シタル充当ハ之ヲ遵守スルコトヲ要ス 然レトモ若シ債務者カ社員ノ債権ニ付キ全部ノ充当ヲ為スニ正当ノ利益ヲ有セスシテ其充当ヲ為シタルトキハ社員ハ弁済ニ於テ其割合ニ応スル部分ヲ会社ニ交付スルノ責ニ任ス 債務者又ハ社員カ有効ナル充当ヲ為サヽルトキハ第四百九十三条ニ従ヒ法律上ノ充当ノ規則ヲ適用ス 第七百七十八条 管理人タルト否トヲ問ハス社員ニシテ会社ノ債務者カ会社ニ対シテ負担シタル物ノ一分ヲ其債務者ヨリ受取リタル者ハ場合ノ如何ニ拘ハラス自己ノ部分ノ為メ受取証書ヲ与ヘタルトキト雖トモ其共同社員ニ之ヲ利セシムルコトヲ要ス 第七百七十九条 支配人タルト否トヲ問ハス各社員ハ其過愆又ハ懈怠ニ因リ会社ニ加ヘタル損害ヲ補償スルノ責ニ任ス 此損害ハ社員カ他ノ業務ニ於テ会社ニ得セシメタル利益ト相殺セラルヽコトヲ得ス但其業務カ互ニ牽連シタルトキハ此限ニ在ラス 第七百八十条 結社契約ヲ以テ管理人ヲ指定セサル為メニ業務ヲ担当シタル社員ハ会社ノ業務ニ自己ノ業務ト同一ノ注意ヲ加ヘサルトキニアラサレハ其過愆ノ責ニ任セス 第七百八十一条 各社員ハ会社資本ニ於テ処分スルコトヲ得ル金額ナキトキハ会社ニ属スル物ニ関スル必要及ヒ保持ノ出費ヲ自己ノ権利ノ割合ニ応シテ分担スルノ責ニ任ス 第七百八十二条 右ニ反シ業務担当者タルト否トヲ問ハス各社員ハ会社ヲシテ自己ノ出資外ニ会社ノ為メ有益ニ立替ヘタル金額ヲ返還セシメ又ハ会社ノ利益ノ為メ善意ニテ負担シタル約務ヲ確認セシメ又ハ会社業務ノ為メ自己ノ財産ニ受ケタル避クルコトヲ得サル損害ヲ賠償セシムルコトヲ得 第七百八十三条 会社業務ノ為メ社員ノ立替ヘタル金額ハ其使用ノ日ヨリ右社員ノ利益ニ於テ当然利息ヲ生ス 之ニ反シ各社員ハ自己ノ業務ノ為メ会社資本中ヨリ取用ヒタル金額ノ利息ヲ当然会社ニ対シテ負担ス但此場合ニ於テ一層大ナル損害アリタルトキハ之ヲ賠償スルコトヲ妨ケス 第七百八十四条 社員ハ会社ノ存続中ニ得タル利益ニ因リ増加シ又ハ受ケタル損失ニ因リ減少シテ会社解散ノ際ニ存スル会社資本ニ於テ其互相ノ部分ヲ結社契約又ハ其後ノ所為ヲ以テ自己ノ随意ニ定ムルコトヲ得但第七百八十六条ニ記載シタル二箇ノ例外ハ此限ニ在ラス 第七百八十五条 又社員ハ其中ノ一人又ハ数人ノ部分カ利益及ヒ損失ニ於テ同一ナラサルコトヲ合意スルコトヲモ得 然レトモ利益ノミヲ予見シテ右ノ部分ヲ定メタルトキハ損失ニ付テモ同一ノ定ヲ合意シタリト推定セラル 総テノ場合ニ於テ受ケタル損失ヲ扣除シ会社ノ貸方トシテ残ル所ノモノニアラサレハ配当スヘキ利益ト看做サス又右貸方ヲ竭シタル後負担トシテ残ル所ノモノニアラサレハ損失ト看做サス 右ハ会社ノ存続中利益又ハ損失ノ一分ノ配当アリタルトキト雖モ会社解散ノ際確定ニ計算セラル 第七百八十六条 会社資本ノ全部又ハ会社ノ得タル利益ノ全部ノミヲ社員中ノ一人ニ帰スヘキ約款ハ無効タリ 芸術ノミヲ出資ト為シタル社員ニアラサル社員ニ総テ損失ノ分担ヲ免レシムル約款ニ付テモ亦同シ 若シ結社契約中テ右ノ約款ヲ附記シタルトキハ其約款ハ契約ヲシテ全ク無効タラシム若シ又日後ニ右ノ約款ヲ採用シタルトキハ其約款ハ原契約ヲ存立セシメ会社ノ清算ハ第七百八十九条ニ従ヒテ為サル 第七百八十七条 社員ハ自己ノ選任シタル又ハ選任スヘキ社員又ハ外人タル一人若クハ数人ノ仲裁人ヲシテ会社解散ノ際各自ノ持分ヲ定メシムルコトヲ結社契約又ハ其後ノ所為ヲ以テ合意スルコトヲ得 仲裁人ノ為シタル定方ハ仲裁人カ仲裁契約ヲ以テ己レニ命セラレタル方式若クハ条件ヲ履行セス又ハ明カニ公平ニ違フタルトキニアラサレハ之ヲ攻撃スルコトヲ得ス 右定方ノ無効ノ請求ハ之ニ因リテ害セラレタリト主張スル社員ノ方ニ在テハ其社員カ其定方執行ヲ助成シタルトキ又ハ之ヲ知リタルヨリ三个月ヲ経過シタルトキハ之ヲ受理セス 第七百八十八条 結社契約ヲ以テ持分ノ定方ヲ仲裁人ニ任スヘキコトヲ定メタル場合ニ於テ少ナクトモ社員ノ過半数カ仲裁人ヲ選任スルコトニ一致スルコトヲ得サルトキハ裁判所ニ於テ其選任ヲ為ス 若シ指定セラレタル仲裁人カ定方ヲ為スコトヲ欲セス又ハ之ヲ為スコト能ハサルニ当リ社員カ之ヲ改選スルコトニ一致セサルトキモ亦同シ 第七百八十九条 社員自身ニテ若クハ仲裁人ヲ以テ持分ノ定方ヲ為サス又ハ仲裁人ノ決定カ取消サレタルトキハ会社資本及ヒ利益又ハ損失ハ社員交互出資ノ価額ノ割合ニ応シテ之ヲ其間ニ分配ス 社員カ其芸術ノミヲ出資ト為シタルトキ之ヲ評価セサルニ於テハ其社員ハ他ノ社員中出資ノ最モ少ナキ者ニ等シキ取扱ヲ受ク 社員ニシテ同時ニ其芸術ト他ノ財産ヲ出資ト為シタル者ハ前項ニ定メタル持分ノ外尚ホ右ノ財産ノ価格ニ随ヒ計算シタル他ノ持分ヲ収受シ又ハ之ヲ負担ス 第七百九十条 各社員ハ自己ノ持分ニ第三者ヲ加入セシメ又自己ノ持分ヲ抵当トシ又ハ譲渡スコトヲ得ルト雖モ是等ノ所為ハ会社ニ対抗セラルヽコトヲ得ス但結社ノ原契約ヲ以テ此権利ヲ認メ又ハ資本ヲ株式ニ分チタルトキハ此限ニ在ラス 右二箇ノ場合ニ於テ若シ会社カ社員ノ譲渡サント欲スル持分又ハ株式ヲ廃滅スル為メ先買権ヲ留保シタルトキハ其約款ハ遵守セラレ社員ハ会社カ其先買権ヲ行ヒ又ハ放棄スルコトニ付キ之ヲ遅滞ニ付スルコトヲ要ス 第七百九十一条 業務担当者カ会社ノ名ヲ以テ又ハ会社ノ業務ノ為メ有効ニ負担シタル約務ハ会社カ無形人ヲ成ストキハ各社員ノ一身上ノ債権者ニ先タチ会社資本ヲ以テ担保セラル 会社資本ノ不充分ナル場合ニ於テ又ハ訴追シタル債権者ニ会社資本ヲ示サヽル場合ニ於テハ総社員ハ連帯シテ会社ノ義務ヲ負担ス但資本ヲ株式ニ分ケタル場合ハ此限ニ在ラス 会社カ無形人ナラサルトキモ亦同シ 右二箇ノ場合ニ於テ確定ノ定方ハ第七百八十四条乃至第七百八十九条ニ定メタル如キ貸方及ヒ借方ニ於ケル各自ノ持分ニ従ヒ社員ノ間ニ為サル 第三節 会社ノ絶止 第七百九十二条 会社ハ左ノ諸件ニ因リ当然了終ス 第一 会社ノ契約セラレタル時期ノ満了又ハ会社ノ服スル解除条件ノ成就 第二 会社ノ目的タル作業ノ成功又ハ右成功ノ不能 第三 払込ミタル会社資本ノ全部又ハ半以上ノ滅失 第四 社員ノ一人ノ為メ労力又ハ収益ニ於ケル其継続ノ出資ヲ為スコトノ不能 第五 社員中一人ノ死亡、治産禁、宣言セラレタル破産又ハ顕然ノ無資力但第七百九十五条ニ記載シタルモノヲ妨ケス 第七百九十三条 会社ハ左ノ諸件ニ因リ解散セラルヽコトヲ得 第一 総テノ場合ニ於テ総社員ノ一致ノ意思 第二 会社ノ為メ明示又ハ黙示ノ定マリタル期間ナク且其他請求カ悪意ヲ以テモ又不都合ナル時期ニ於テモ為サレサルトキハ社員中一人ノ意思 第三 社員中一人ノ義務不履行ニ基キタル解除ノ訴又ハ会社ノ為メ定マリタル期間アルトキト雖モ正当ノ理由ニ基キタル解散ノ請求 第七百九十四条 当事者ハ会社ノ存続期ノ満了セサル前ニ明示又ハ黙示ニテ之ヲ長伸スルコトヲ得 又黙示ノ長伸ハ定マリタル時期ノ満了後ニ於テ会社業務カ何レノ社員ノ故障モ無ク継続セラレタル事実ヨリ生スルコトヲ得 此場合ニ於テ長伸セラレタル会社ハ第七百九十三条第二号ニ従ヒ一人ノ社員ノ意思ヲ以テ解散セラルヽコトヲ得 第七百九十五条 会社資本カ譲渡ヲ許シタル株式ニ分タレタルトキ第七百九十二条第五号ニ指定シタル原由ノ一カ株主中一人ノ一身ニ生スルニ於テハ右ノ原由ニ因ル会社ノ解散ナシ 又他ノ会社ニ於テハ右ノ原由カ会社ノ解散ヲ行ハスシテ会社ハ社員タルヲ止メタル者ノ持分ヲ定メテ他ノ社員ト共ニ継続スヘキコトヲ合意スルコトヲ得又会社ハ死亡シタル社員ノ相続人又ハ無能力若クハ無資力ト為リタルモ合式ニ代理セラレタル社員ト共ニ継続スヘキコトヲモ合意スルコトヲ得 第四節 会社ノ清算及ヒ配当 第七百九十六条 会社解散ノ後ハ社員ノ各自又ハ其承権人ヨリ清算ヲ請求スルコトヲ得 清算ハ配当前ニ之ヲ為スコトヲ要ス但社員ノ多数カ全部又ハ一分ノ配当ヲ先ニスルコトヲ請求シタルトキハ此限ニ在ラス 又会社ノ各債権者ハ清算前ニ配当ヲ為スコトニ付キ故障ヲ申立ツルコトヲ得 第七百九十七条 清算ニハ左ノ諸件ヲ包含ス 第一 始メタル業務ノ成就 第二 会社債務ノ弁済及ヒ第三者ニ対スル其債権ノ回収 第三 各社員ト会社トノ間ノ特別ナル計算ノ定方 第四 配当スヘキ貸方又ハ負担スヘキ借方ニ於ケル各社員又ハ其代人ノ持分ノ指定 第七百九十八条 清算人ノ選定及ヒ其権限ニ関スル結社契約ノ約款ハ若シ右ニ付キ妨碍ノ生セサリシトキハ之ヲ遵守スルコトヲ要ス 右ノ約款ナキトキハ清算ハ或ハ総社員ニ因リ或ハ社員ノ一致ヲ以テ選任シタル一人又ハ数人ノ社員ニ因テ為サレ又ハ社員ノ一致ヲ以テ選定シタル第三者ニ因リテモ為サル 若シ社員カ清算人ノ選定ニ付キ一致スルコトヲ得サルトキハ裁判所ニ於テ之ヲ選任ス 第七百九十九条 清算人ハ総テノ場合ニ於テ速ニ毀損又ハ滅尽スヘキ物ヲ移付スルコトヲ要ス 若シ満期ノ債務ノ弁償ノ為メ其他ノ動産物ヲ移付スルノ必要アルトキハ之ヲ移付スルコトヲ得 不動産ニ関シテハ清算人ハ社員ノ特別ナル委任ニ憑ルニアラサレハ之ヲ抵当トシ又ハ移付スルコトヲ得ス 此終ノ場合ニ於テ移付ハ公売競落ニ因ルニアラサレハ之ヲ為スコトヲ得ス但熟議上ニテ約定スルコトヲ許シタルトキハ此限ニ在ラス且右ハ総テ社員ノ多数決ニ因ル 清算人ハ社員ノ名ヲ以テ原告又ハ被告トシテ訴訟ヲ為スコトヲ得 清算人カ会社ノ債務又ハ債権ニ付キ承諾シタル和解及ヒ仲裁ハ第三者ト通謀シタル詭譎ノ為メニアラサレハ之ヲ攻撃スルコトヲ得ス 第八百条 清算ノ総計算ハ社員ノ認可ヲ受クルコトヲ要ス 右ノ計算ヲ認可スルニハ社員ノ多数決ヲ以テ足レリトス 其議決ハ併合セラレタル総テノ計算ニ付キ又ハ計算ノ或ル部分ニ付キ各別ニ之ヲ為スコトヲ得 認可セラレスシテ仕直スコトヲ得ヘキ計算ハ清算人ノ費用及ヒ注意ヲ以テ之ヲ為ス若シ仕直スコトヲ得サルトキハ清算人ハ代理ノ規則ニ従ヒ其過愆ニ因テ加ヘタル損害ノ責ニ任ス 清算人ノ己レニ委任セラレタル権限ニ憑リ又ハ前条ニ従テ為シタル所為ハ常ニ善意ナル第三者ノ為メ之ヲ維持ス 第八百一条 若シ民事会社カ株式ヲ以テ組織セラレタルトキハ商事株式会社ノ規則ニ従ヒテ清算ヲ為ス 第八百二条 会社ノ清算ノ後ハ不分ニ存スル財産ノ配当ハ旧社員ノ各自又ハ其承権人ヨリ之ヲ請求スルコトヲ得但当事者カ此法律第四十条ニ従ヒ不分ニ留マルコトヲ会社解散ノ後ニ合意シタル場合ハ此限ニ在ラス 第八百三条 配当部分ノ組成又ハ各当事者ニ対スル其配付ニ付キ当事者ノ一致セサルトキハ相続及ヒ其他財産ノ共通ノ派分ノ為メ此事ニ関シ此法律及ヒ民事訴訟法ニ定メタル規則ヲ遵守ス 第八百四条 会社資本中ノ物ニテ配当ニ因リ各社員ニ帰シタルモノニ関スル各社員ノ権利ハ会社解散ノ日ニ遡リ他ノ社員ヨリ其物ニ付キ付与シタル権利ハ解除セラル 第八百五条 共同配当者ハ配当ヲ以テ約束セラレタル権利ニ於テ受クルコト有ルヘキ妨碍及ヒ追奪ニ付キ其各自ノ部分ニ応シテ互ニ担保人タリ 若シ共同配当者ノ一人カ無資力ナルトキハ其一人ノ負担シタル賠償ノ部分ハ被担保人ヲ加ヘテ他ノ各共同配当者ノ間ニ之ヲ分配ス 第八百六条 配当ハ成年者ノ間ニ為サレ且動産有価物ヲ目的トシタルトキト雖モ不分ノ財産中ニテ受クヘキ部分ノ四分一ニ超ユル折損ヲ被リタル者ノ利益ニ於テ之ヲ銷除スルコトヲ得 折損ノ為メ売買ノ銷除ノ行用ニ付キ第七百三十四条以下ニ定メタル条件ハ会社ノ配当ノ折損ニ関スル銷除ニ付キ遵守セラル 第十六章 射倖契約 前置条例 第八百七条 射倖契約ハ契約者双方若クハ一方ノ利益又ハ損失ニ関スル其効力ノ全部又ハ一分カ将来ニシテ且不的確ナル事件ニ繋ル合意ナリ 第八百八条 契約ハ其本性ニ因リ又ハ当事者ノ意思ニ因リ射倖ノモノタリ 博奕及ヒ賭事終身年金権又ハ其他終身権利ノ設定、陸上及ヒ海上ノ保険、海上ノ利益ニ於ケル貸借即チ冒険貸借ハ其本性ニ因リ射倖ノモノタリ 其他ノ契約ハ其成立又ハ効力カ停止又ハ解除ノ偶然ノ条件ニ繋ルトキハ当事者ノ意思ニ因リ射倖ノモノタリ 第八百九条 海上保険及ヒ海上ノ利益ニ於ケル貸借ハ海商ニ関スル法律ニ因テ管知セラル 第一節 博奕及ヒ賭事 第八百十条 若シ博奕カ博奕者ノ勇気、力量、巧技ヲ発達スヘキ本性ナル体躯ノ運動タルニアラサレハ其約務履行ノ為メ裁判上ノ訴権ヲ許サス 賭事ニ基ク訴権ハ右ノ如キ運動ヲ為ス人ノ利益ニ関シ又ハ農業、工業若クハ商業ニ係ル作業ニシテ賭者ノ直接ニ参カルモノノ成功ニ関スルニアラサレハ亦之ヲ許サス 若シ右ノ博奕又ハ賭事ニ於テ約束セラレタル金額又ハ有価物カ情況ニ照シテ過度ナリト見ユルトキハ裁判所ハ之ヲ減スルコトヲ得ス全ク其請求ヲ棄却スルコトヲ要ス 第八百十一条 其他ノ場合ニ於テ博奕及ヒ賭事ハ法定又ハ天然ノ何等ノ義務ヲモ生セスシテ之カ為メ為シタル債務ノ認知、更改又ハ保証ハ無効タリ 然レトモ有能力者ガ右ノ約務ニ憑リ任意ニテ弁済シタルモノニ付テハ取戻スコトヲ許サス但勝者ノ方ニ於テ詭譎又ハ欺瞞アリタルトキハ此限ニ在ラス 第八百十二条 官許ヲ得サル富講ハ訴権ナキ博奕及ヒ賭事ト同視セラル 被告カ初ヨリ当事者ハ約束シタル金額又ハ有価物ノ引渡及ヒ弁済ヲ実行スルニ意ナク只互ニ相場昂低ノ差額ヲ計算スルノミノ意アリタルコトヲ証スルトキハ商品又ハ公ノ証券ノ投機ノ定期売買ニ付テモ亦同シ 商品又ハ公ノ証券ノ投機ノ定期売買ニ付テモ初メヨリ当事者ハ約束シタル金額又ハ有価物ノ引渡及ヒ弁済ヲ実行スルニ意ナク只互ヒニ相場昂低ノ差額ヲ計算スルノミノ意アリタルコトヲ被告カ証スルトキハ亦同シ 第八百十三条 若シ前二条ノ場合ニ於テ被告ヨリ無効ノ抗弁ヲ対抗セサルトキハ判事ハ職権ヲ以テ右無効ノ抗弁ヲ補充スルコトヲ得但契約又ハ請求ニ於テ債務カ博奕、富講又ハ相場差額ニ関スル賭事ヲ原由トスルコトヲ明示シタルトキニ限ル 第二節 終身年金権 第一款 終身年金権ノ設定 第八百十四条 終身年金権ハ動産若クハ不動産ノ元本ノ移付ノ報酬トシ又ハ為シ若クハ為スヘキ勤労ノ報酬トシテ有償名義ニテ之ヲ設定スルコトヲ得 又贈与又ハ遺嘱ヲ以テ無償名義ニテ終身年金権ヲ設定スルコトヲ得 此終ノ場合ニ於テハ終身年金ハ恩恵所為ノ方式、与ヘ並ニ受クルノ能力及ヒ財産ノ処分スルコトヲ得ヘキ部分ニ付テハ無償名義ノ所為ニ特別ナル規則ニ従フ 第八百十五条 終身年金ハ対価物ヲ供給シタル人ニアラサル他ノ人ノ利益ノ為メ之ヲ要約スルコトヲ得 此場合ニ於テ終身年金ハ要約者ト諾約者トノ間ニ於テハ有償名義ノ契約ノ規則ニ従ヒ要約者享益者トノ間ニ於テハ贈与ノ規則ニ従フ然レトモ贈与ノ方式ニ従ハス 又終身年金ハ有償又ハ無償ノ名義ニテ移付シタル元本ニ付キ之ヲ扣留スルコトヲ得 第八百十六条 終身年金権ハ債権者若クハ債務者ノ終身ヲ期シ又ハ第三者ノ終身ヲ期シテモ之ヲ設定スルコトヲ得 此終ノ場合ニ於テ若シ契約カ有償ナルトキハ其組成ニ付キ右第三者ノ承諾ヲ必要トス然レトモ此承諾前ニ弁済シタル利子ハ之ヲ取戻スコトヲ得ス 第八百十七条 終身年金権ハ同時又ハ順次ニ数人ノ終身ヲ期シテ之ヲ設定スルコトヲ得 此場合ニ於テハ用収権ニ関スル第百三条ノ条例ヲ適用ス 第八百十八条 有償名義ヲ以テ設定シタル終身年金権ノ契約ハ若シ年金権ヲ設定スル為メ終身ヲ期セラレタル人カ合意ノ当時ニ於テ既ニ死亡シタルトキハ当事者双方其死亡ヲ知ラスト雖モ無効ナリ 若シ右ノ人カ合意ノ当時ニ於テ既ニ罹リタル疾病ノ為メ六十日ノ期間内ニ死亡シタルトキハ其契約ハ当然解除セラル 第八百十九条 無償名義ニテ設定シタル終身年金権ハ設定者ニ於テ譲渡スベカラス且差押フヘカラサルモノト定ムルコトヲ得 右ノ約款ハ設定証書中ニ記入セラレタルトキニアラサレハ第三者ニ之ヲ対抗スルコトヲ得ス 養料トシテ無償ニテ終身年金権ヲ設定シタルトキハ其年金権ハ贈与又ハ遺嘱ニ於テ特ニ定メズト雖モ当然譲渡スヘカラス且差押フヘカラサルモノタリ 此条例ハ贈与シタル財産ニ付キ贈与者ノ利益ニ於テ扣留シタル終身年金権ニ之ヲ適用セス 第八百二十条 終身年金権ノ譲渡スヘカラサルコト及ヒ差押フヘカラサルコトハ是等ノ禁止ノ一ノミヲ要約シタルトキト雖モ二者共ニ存立ス 是等ノ禁止ハ決シテ満期ノ利子ニ之ヲ適用セス 第二款 終身年金権ノ契約ノ効力 第八百二十一条 債務者ハ年金権ヲ設定スル為メ終身ヲ期セラレタル人ノ生存中ハ其年金権ノ利子ヲ払フコトヲ要ス但特別ノ合意アラサルトキハ其年金権ノ買戻ヲ行フコトヲ得ス 第八百二十二条 利子ハ債権者日割ヲ以テ之ヲ得取ス但其支払ヲ月又ハ一層長キ時期ヲ以テ為スヘキトキト雖モ亦同シ 然レトモ若シ利子ヲ前払スヘキトキハ既ニ始マリタル時期ノ利子ハ全部負担セラル 第八百二十三条 利子ノ支払ナキトキト雖モ若シ債権者カ解除ノ権利ヲ留保セサルトキハ其支払ノ缺無ノ為メ契約ノ解除ヲ請求スルコトヲ得債権者ハ売却ヨリ生スヘキ元本ヲ以テ利子ノ支払ヲ保スル為メ債務者ノ財産中ニテ利子ヲ受クルニ足ルヘキ部分ヲ差押ヘ之ヲ売却セシムルコトヲ得ルノミ但他ニ参同スヘキ債権者アルトキハ之カ参同ヲ受ク 年金権カ無償名義ニテ設定セラレ又ハ贈与シ若クハ贈遺シタル元本ニ扣留セラレタルトキモ亦右同一ニ処弁ス 第八百二十四条 年金権ノ債務者ハ年金権ヲ設定スル為メ終身ノ期セラレタル人カ利子満期ノ日ニ生存セシ証カ供セラレサルトキハ其利子ノ支払ヲ拒絶スルコトヲ得 生存ノ保証書ハ其人カ現居所ノ地ノ「コンミユーヌ」長又ハ受持区公証人ヨリ之ヲ交付ス 第三款 終身年金権ノ消滅 第八百二十五条 若シ有償名義ニテ設定シタル年金権ノ債務者カ利子支払ノ為メ約束シタル抵保ヲ供スルコトヲ缺キ又ハ供シタル抵保ヲ減少スルトキハ債権者ハ契約ノ解除ヲ請求スルコトヲ得但既ニ得取シタル利子ノ何等ノ部分ヲモ返還スルノ責ニ任セス 右同一ノ権利ハ贈与シ又ハ贈遺シタル元本ニ付キ扣留シタル終身年金権ノ本主ニ属ス 其解除ハ若シ年金権ヲ設定スル為メ終身ノ期セラレタル人カ終局判決前ニ死亡シタルトキハ之ヲ宣告セス 第八百二十六条 普通法ニテ許シタル銷除即チ無効及ヒ廃罷ノ原由ハ終身年金権ニ之ヲ適用ス 終身年金権ハ尚ホ要約セラレタル買戻、更改、合意上ノ釈放、混同及ヒ時効ニ因テ消滅ス 然レトモ終身年金権カ第八百十九条及ヒ第八百二十条ニ従ヒ法律ノ条例又ハ人ノ処分ニ憑リ譲渡スヘカラス又ハ差押フヘカラサルモノナルトキハ其終身年金権ハ時効ニ係ラス 総テノ場合ニ於テ利子ハ満期後五ケ年ヲ以テ各別ニ時効ニ係ル 第八百二十七条 終身年金権ハ年金権ヲ設定スル為メ終身ノ期セラレタル人ノ死亡ニ因リ消滅ス但第八百十八条ニ記載シタルモノヲ妨ケス 然レトモ年金権ノ本主カ債務者ノ責ニ帰スヘキ不正ノ原由ニ因リ死亡シタル場合ニ於テ若シ年金権カ有償名義ニテ又ハ贈与若クハ贈遺ノ負担トシテ設定セラレタルトキハ契約又ハ恩恵所為ハ解除セラレ債務者ハ既ニ払ヒタル利子ノ何等ノ部分ヲモ回収セスシテ其得取シタル財産ヲ返還ス 若シ前ニ同シク年金権ノ本主カ債務者ノ過愆ニ因リ死亡シタル場合ニ於テ年金権カ直接ニ贈与又ハ贈遺セラレタルトキハ利子ノ支払ハ裁判所カ其本主ノ生命ノ継続期ト推測シテ定メタル期間内ハ利害ノ関係人ノ利益ニ於テ継続セラル 第十七章 消費貸借及ヒ無期年金権 第一節 消費貸借 第八百七十三条 消費貸借ハ当事者ノ一方カ代補スルコトヲ得ル物ノ所有権ヲ他ノ一方ニ移転シ他ノ一方カ或ル時間ノ後同量及ヒ同質ノ類似ノ物ヲ返還スルノ義務ヲ負担スル契約ナリ 第八百七十四条 若シ当事者カ弁償ノ時期ヲ定メサリシトキハ当事者ノ推測セラレタル意思ト情況トニ随ヒ裁判所之ヲ定ム 若シ弁償ハ貸借カ無利息ニテ為サレタルトキハ貸主ノ住所ニ於テ又反対ノ場合ニ於テハ借主ノ住所ニ於テ之ヲ為ス但其他ノ場所ヲ定メタルトキハ此限ニ在ラス 第八百七十五条 若シ借用物ノ返還カ不可抗力ニ因テ不能ト為リタルトキハ借主ハ貸借ノ実行セラレタル時日及ヒ場所ニ於テ計算シタル其物ノ評価額ヲ負担ス 第八百七十六条 貸主ニ属セサル物ノ貸借ハ無効タリ若シ其貸借カ利息附ニテ為サレ且借主カ善意ナリシトキハ担保ヲ生ス 其貸借ハ下ノ場合ニ於ケルニアラサレハ有効ト為ラス 第一 若シ借主カ善意ニテ借用物ヲ消費シタルトキ 第二 若シ借主カ時効ニ因リ真所有者ノ回収ノ請求ヲ排却シタルトキ 第三 若シ真所有者カ貸借ヲ確認シタルトキ 第八百七十七条 若シ借用物ニ借主ノ知ラスシテ貸主ノ知リタル不表見ノ瑕疵アリ其瑕疵カ身体又ハ財産ニ損害ヲ加フヘキ本性ニシテ且其瑕疵カ実際借主ヲ害シタルトキハ貸主ハ貸借カ無償ナルトキハ自己ノ方ニ於テ詭譎又ハ害スルノ意思アリタルトキニアラサレハ其損害ノ責ニ任セス 若シ貸借カ利息附ナルトキハ貸主ノ知ラサリシ隠レタル瑕疵ト雖モ之ヲ知ルコトヲ得ヘキトキハ其責ニ任ス 其他売買ノ廃却訴権ニ関スル第七百四十一条乃至第七百四十八条ノ条例ハ適用スルヲ得ヘキタケハ之ヲ貸借ニ適用ス 第八百七十八条 第四百八十四条乃至第四百八十七条ハ正貨又ハ強制通用ノ紙幣ニテ為シタル貸借ニ之ヲ適用ス 然レトモ貸主カ第四百八十六条ニ於テ許サレタル如ク金貨若クハ銀貨ヲ以テ指定セラレタル価額ノ弁償ヲ受ケ又ハ是等ノ貨幣ノ一ヲ以テ弁済ヲ受クルコトヲ要約スルニハ同本性ノ貨幣ヲ以テ又ハ他ノ貨幣若クハ紙幣ニ於ケル其対価ヲ以テ実際同一ノ価額ヲ貸付シタルコトヲ要ス 第八百七十九条 若シ貸借カ金銀塊ニテ為サレタルトキハ借主ハ総テ其他ノ商品ニ関シタルトキノ如ク同本性、同重量及ヒ同品質ノ金銀塊ヲ返還スルコトヲ要ス 第八百八十条 金、円、日用品又ハ商品ノ借主ハ使用ノ報酬トシテ元本ノ外「利息」ノ名目ヲ以テ借用シタル有価物ノ割合ニ応スル若干ノ金額又ハ有価物ヲ弁済スヘキコトヲ約スルコトヲ得 第八百八十一条 利息ノ要約セラレタルトキニ非サレハ借主ニ対シテ之ヲ要求スルコトヲ得ス 若シ借主ヨリ利息ヲ弁済スヘキノ合意アリテ其額ノ定ナキトキハ其利息ハ法律上ノ割合ニ於テ負担セラル 借主ハ要約セラレサル利息ト雖モ法律ノ設ケタル制限内ニテ任意ニ弁済シタルモノハ之ヲ還償セシムルコトヲ得ス又之ヲ元本ニ充当スルコトヲ得ス 第八百八十二条 合意上ノ利息ハ法律カ禁セサル場合ニ非サレハ法律上ノ利息ヲ超ユルコトヲ得ス 若シ利息カ法律ノ許ス割合ヲ超ユル割合ニ於テ顕ニ定メラレタルトキハ其利息ハ法律上ノ割合ニ減スルコトヲ得ヘク其以外ニ弁済シタルモノハ之ヲ元本ニ充当シ又ハ之ヲ還償セシム 若シ又債権者カ実際貸付シタル元本ヲ超ユル元本ヲ認知セシメ或ハ総テ其他ノ方法ヲ以テ右不正ノ利息ノ全部又ハ一分ヲ隠秘セシメタルトキハ其不正ノ利息ハ何等ノ部分ニ付テモ負担セラレス若シ之ヲ弁済シタルトキハ其全部還償セラル 第八百八十三条 若シ貸主ガ負担セラレタル元本ノ全部又ハ一分ヲ受取リ満期ノ利息ニ付キ留保ヲ為サルヽトキハ貸主ハ反対ノ証アルマテ其利息ヲ受取リ又ハ之ヲ放棄シタリト推定セラル 第八百八十四条 若シ十个年ヲ超ユル時期ニ付キ利息附貸借ヲ為シタルトキハ借主ハ如何ナル反対ノ合意アルモ十个年後常ニ之ヲ弁済スルノ権能ヲ有ス 然レトモ若シ年賦金カ利息ノ外元本ノ漸次償却ヲ包含スルトキハ其取越弁償ヲ為スコトヲ得ス 第八百八十五条 第八百八十一条乃至第八百八十四条ノ条例ハ貸借ヨリ生シタルモノニ非サル金円又ハ量定物ノ総テノ義務及ヒ合意上並ニ法律上ノ利息ニ之ヲ適用ス 第二節 無期年金権ノ契約 第八百八十六条 利息附貸主ハ何レノ時ニ至ルモ元本ヲ要求スルノ権利ヲ放棄スルコトヲ得此場合ニ於テハ其契約ヲ「無期年金権ノ設定」ト称ス 此放棄ハ明確ナルコトヲ要シ又ハ明ニ情況ヨリ生スルコトヲ要ス 第八百八十七条 無期年金権ヲ負担スル借主ハ如何ナル反対ノ合意アルニモ常ニ其受取リタル元本ノ弁償ヲ実行スルコトヲ得 然レトモ其借主ハ十ケ年ヲ超ユルコトヲ得サル或ル時期前ニ於テ右ノ弁償ヲ実行セサルコトヲ約スルコトヲ得 右ノ約務ハ常ニ之ヲ更新スルコトヲ得然レトモ十个年ヲ超ユルコトヲ得ス若シ之ヲ超ユルトキハ十个年ノ期限ニ短縮ス 弁償ハ反対ノ合意アラサルトキハ全部タルコトヲ要ス 債務者ハ六ケ月前ニ其弁償スルノ意思ヲ債権者ニ予告スルコトヲ要ス但当事者ニ於テ他ノ期間ヲ定メタルトキハ此限ニ在ラス 債務者自己ノ定メタル時期ニ於テ弁償セサルトキハ損害賠償ノ責ニ任ス然レトモ弁償ニ強要セラルルコトヲ得ス但更改アルトキハ此限ニ在ラス 第八百八十八条 債務者ハ第四百二十五条ニ総テ債務者ハ法律上ノ期限ノ利益ヲ失フト定メタル最初ノ三箇ノ場合及ヒ其他正式ノ付遅滞ノ後引続キ二ケ年間利子ノ弁済ヲ缺キタル場合ニ於テハ元本ノ弁償ニ強要セラルヽコトヲ得 此終ノ場合ニ於テ第四百二十六条ニ従ヒ債務者ニ恩恵期間及ヒ弁済ノ分割ヲ許与スル裁判所ノ権利ヲ妨ケス 第八百八十九条 前二条ノ条例ハ不動産移付ノ代価又ハ条件トシテ設定シタル無期年金権ニ之ヲ適用シ又無償名義ニテ設定シタル無期年金権ニモ之ヲ適用ス 右孰レノ場合ニ於テモ弁償ハ当事者ノ間ニ評価セラレタル元本又其評価ナキトキハ利息ノ法律上ノ割合ニ従ヒテ計算シタル毎年ノ利子ヲ生スヘキ元本ヲ以テス 若シ利子カ日用品ナルトキハ元本ノ弁償ハ特別ノ合意アルニアラサレハ終ノ十个年間ノ右日用品ノ平均代価ヲ利息ノ基礎ト為シテ右元本ノ弁償ヲ為ス 第十八章 使用貸借 第一節 使用貸借ノ本性 第八百九十条 使用貸借ハ当事者ノ一方カ他ノ一方ノ使用ノ為メ之ニ動産物又ハ不動産物ヲ交付シ他ノ一方カ明示又ハ黙示ニテ定メタル時期ノ後借受ケタル原物其物ヲ返付スルノ義務ヲ負担スル契約ナリ 此貸借ハ本来無償ナリ 第八百九十一条 借主ハ使用ノ物権ヲ得取セスシテ貸主及ヒ其相続人ニ対スル人権ノミヲ得取ス 借主ノ権利ハ其相続人ニ移ラス但相続人カ当事者ノ意思ノ右ト異ナレルコトヲ証スルトキハ此限ニ在ラス又相続人他ニテ右ト同一ナル物ノ使用ヲ求ムル為メ裁判所ヨリ期間ヲ得ルコトヲ妨ケス 第二節 貸借ヨリ生シ又ハ貸借ニ関シテ生スル義務 第八百九十二条 借主ハ物ノ本性ニ因リ又ハ合意ニ因リ定マリタル使用ニ於テ且貸付セラレタル時間ニ於テノミ其借用物ヲ用ユルコトヲ要ス 借主ハ他ノ使用又ハ期限後ノ使用ヨリ生スヘキ滅失又ハ損壊ハ勿論又其使用カ遠因トナリタル意外ノ滅失ニ付テモ其責ニ任ス 第八百九十三条 若シ借主カ自己ノ物ヲ用ヒテ借用物ニ右ノ滅失ヲ免カレシムルコトヲ得ヘトキ又ハ自己ノ物ト借用物ニ共同ノ危険ニ於テ自己ノ物ヲ救護シタルトキハ其借主ハ亦意外ノ事又ハ不可抗力ヨリ生スル滅失ノ責ニ任ス 第八百九十四条 借主ハ借用物保持ノ通常費用ヲ負担ス但貸主ニ対シテ還償ヲ求ムルコトヲ得ス 第八百九十五条 借主ハ合意セラレタル時期ニ於テ其借用物ヲ返還スルコトヲ要ス又右ノ時期前ニ於テモ若シ許サレタル使用カ終リ又ハ貸主カ自ラ其物ニ付キ急要ニシテ且予期セサル需用ヲ有スルトキハ其借用物ヲ返還スルコトヲ要ス 若シ何等ノ時期ヲモ合意セサル場合ニ於テ物ノ使用ニ際限ナキトキハ裁判所ハ貸主ノ請求ニ因リ返還ノ為メ適当ノ期間ヲ定ム 第八百九十六条 返還ハ借主カ物ノ第三者ニ属スル事ヲ知ルトキト雖モ貸主又ハ其代人ニ之ヲ為スコトヲ要ス但返還ニ付キ第三者ノ正式ニ成シタル故障アルトキハ此限ニ在ラス 此終ノ場合ノ外返還ハ貸主ノ住所又ハ其代人ノ住所ニ於テ之ヲ為ス 第八百九十七条 若シ数人カ連合シテ同時又ハ交番ニ用ユル為メ一箇ノ物ヲ借用シタルトキハ各自ハ他ノ者ト連帯ニテ前記ノ義務ヲ負担ス 第八百九十八条 貸主ハ其借用物保存ノ為メ為シタル必要ニシテ且急要ナル出費ヲ借主ニ弁償スルノ責ニ任ス 第八百九十九条 貸主ハ亦貸付物カ其瑕疵ニ因リ借主ニ加ヘタル損害ヲ之ニ賠償スルノ責ニ任ス但不表見ニシテ且貸主ノ知リタル此瑕疵ヲ借主カ知ラサルトキニ限ル 第九百条 借主ハ前二条ニ憑リ己レノ受クヘキモノヽ弁償ヲ得ル迄借用物ニ付キ留置権ヲ行フコトヲ得 第十九章 寄託及ヒ係争物寄託 第一節 真正ノ寄託 第九百一条 真正ノ寄託ハ一人カ他ノ一人ニ動産物ヲ交付シ他ノ一人之ヲ保存シ請求次第直チニ原物其モノヲ返還スル契約ナリ 寄託ハ本来無償ナリ 寄託ハ純然任意ノモノタリ又ハ已ムヲ得サルモノタリ 第一款 任意ノ寄託 第九百二条 任意ノ寄託ハ寄託者カ寄託ノ時日場所及ヒ受寄者其人ヲ自由ニ撰択スルコトヲ得ル情況ニ於テ生スルモノナリ 第九百三条 寄託ハ所有者ニ因テ為サヽルコトヲ得ルノミナラス尚ホ物ノ監守及ヒ保存ニ利益ヲ有スル各人又ハ是等ノ者ノ代人ニ因リ為サルヽコトヲ得 又寄託ハ無能力者ノ法律上ノ代人ニ因リ為サルヽコトヲ得 第九百四条 契約スルコトニ付キ完全ノ能力ヲ有スル者ニ非サレハ寄託ヲ受クルコトヲ得ス 然レトモ無能力者ハ仍ホ自己ノ手裏ニ存スル寄託物又ハ寄託ニ因テ利ヲ得タルモノヽ価額ノ返還ニ付キ民事上責ニ任ス但背信ノ場合ニ於テ刑事ノ訴ヲ為スヘキトキハ之ヲ為スコトヲ妨ケス 第九百五条 受寄者ハ受寄物ノ監守及ヒ保存ニ付テハ自己ノ財産ニ加フルト同一ノ注意ヲ加フルコトヲ要ス 然レトモ若シ受寄者自ラ求メテ寄託ヲ受ケ又ハ寄託カ単ニ受寄者ノ利益ノ為メ且需用ノ場合ニ於テ受寄者ニ物ノ使用ヲ許ス為メ為サレタルトキハ受寄者ハ善良ナル管理者ノ注意ヲ加フルノ責ニ任ス 第九百六条 前条ニ予定シタル終ノ場合ニ於テ受寄者カ物ヲ使用シタルトキハ第八百九十三条ヲ之ニ適用ス 総テ其他ノ場合ニ於テ若シ受寄物及ヒ受寄者ノ物カ共同ノ危険ニ罹リ受寄者其一ノミヲ救護スルコトヲ得ルトキ受寄物ノ価額カ著シク超ユルニ於テハ之ヲ救護スルコトヲ要ス但自己ノ物ノ価額ノ賠償ヲ受クルコトヲ妨ケス 第九百七条 返還スルコトノ遅滞ニ付セラレタル受寄者ハ普通法ニ従ヒ意外ノ滅失又ハ不可抗力ニ因ル滅失ノ責ニ任ス 第九百八条 寄託者カ受寄者ニ寄託物ノ本性ヲ隠秘シタル□□受寄者之ヲ知ラント求ムルコトヲ得ス又如何ナル場合ニ於テモ他人ニ之ヲ知ラシムルコトヲ得ス但損害アルトキハ其賠償ヲ為ス 第九百九条 受寄者ハ受寄物ヲ使用スルコトヲモ又其果実ヲ消費スルコトヲモ得ス但此カ為メ寄託者ヨリ明示又ハ黙示ノ許諾ヲ受ケタルトキハ此限ニ在ラス 此許諾ハ寄託ニ使用貸借ノ性質ヲ与フルニ足ラス 第九百十条 受寄者ハ其収取シタル果実及ヒ産物ト共ニ又ハ果実及ヒ産物ヲ金円ニ換ヘサルヲ得サリシトキハ其代価ト共ニ原物其物ヲ返還スルコトヲ要ス但前条ニ予定シタル場合ニ妨ナシ 若シ受寄者カ物ニ付キ或ル償金ヲ受取リ又ハ或ル権利若クハ利益ヲ得取シタルトキハ之ヲ寄託者ニ移転スルコトヲ要ス 若シ受寄者カ故意ニテ受寄物ヲ消費シ移付シ又ハ隠窃シタルトキハ遅滞ニ付セラルヽコト無クシテ当然総テノ損害賠償ノ責ニ任ス但背信ノ為メノ公訴ヲ妨ケス 第九百十一条 若シ受寄者ノ相続人カ寄託ヲ知ラスシテ寄託物ヲ消費シ又ハ移付シタルトキハ相続人ハ因テ得タル利益ノ額ニ満ツルマテ其責ニ任ス 右ノ条例ハ遺忘又ハ混淆ニ因リ自己ノ物ト思量シテ寄託物ヲ処分シタル受寄者ニ之ヲ適用ス 第九百十二条 寄託物ノ返還ハ寄託者若クハ其相続人又ハ其法律上若クハ合意上ノ代人ニ之ヲ為スコトヲ要ス 第九百十三条 返還ニ付キ場所ノ定ナキトキハ受寄者カ寄託物ヲ移置シタルトキト雖モ詐偽ナキトキハ其寄託物ノ現在ノ場所ニ於テ其返還ヲ為ス 第九百十四条 寄託者ノ請求次第物ヲ返還スヘキ受寄者ノ義務ハ左ノ場合ニ於テ止ム 第一 若シ受寄者カ其物レ己レニ属スルコトヲ証スルコトヲ得ルトキ 第二 若シ受寄者カ次条ニ従ヒ留置権ヲ行フヘキ場合ニ在ルトキ 第三 若シ渡方差押即チ返還ニ対スル故障カ正式ヲ以テ受寄者ニ告知セラレタルトキ 第四 若シ受寄者カ其物ノ盗マレタルモノナルコトヲ発見シテ其所有者ヲ知ルトキ此場合ニ於テハ受寄者ハ所有者ニ寄託ヲ告発シ相応ノ期間ヲ定メテ寄託者ト立会ノ上物ヲ要求スヘク若シ此期間ヲ過キテ所有者カ来到セサルトキハ寄託者ニ返還ヲ為スヘキ旨ヲ催告スルコトヲ要ス 第九百十五条 寄託者ハ物ノ保存ノ為メ受寄者ノ為シタル必要ノ出費ト物カ受寄者ニ加ヘタル損害トヲ之ニ賠償スルコトヲ要ス 右ノ償金ノ皆済ヲ受クルマテ受寄者ハ寄託物ニ付キ留置権ヲ行フコトヲ得 第二款 已ムヲ得サル寄託及ヒ旅店ニ於ケル寄託 第九百十六条 寄託者カ火災、洪水、難船、地震、暴動ノ如キ不可抗ニシテ且不測ノ事変ニ因リ寄託ヲ為スニ強要セラレタルトキハ其寄託ハ「已ムヲ得サル寄託」ト称セラル 已ムヲ得サル寄託ハ総テノ方法ニ因リ又情況ヨリ生スル事実ノ推定ニ因テモ之ヲ証スルコトヲ得 其他已ムヲ得サル寄託ハ任意ノ寄託ノ規則ニ従フ但背信ノ場合ニ於テハ刑法ニ記載シタル刑ノ加重ヲ妨ケス 第九百十七条 旅店主人及ヒ下宿屋主人ハ自己ノ方ニ止宿セシ旅人ノ携帯シタル手荷物ニ付テハ已ムヲ得サル受寄者ト看做サル 舟車運送人及ヒ其他水陸運送営業人ノ営業カ商業ナルトキハ自己ニ運送ヲ任カセラレタル荷物ニ関シテモ亦同シ 然レトモ本条ニ定メタル受寄者ハ有償名義ニ於ケル契約者ノ通常ノ責任ニ従フ 第二節 係争物寄託 第九百十八条 係争物寄託ハ二人又ハ数人ノ間ニ於テ争若クハ反対ノ主張ノ目的タル物ヲ第三者ノ手裏ニ委付スル寄託ナリ 係争物寄託ハ動産又ハ不動産ヲ目的トスルコトヲ得 係争物寄託ハ合意上又ハ裁判上ノモノタリ 第九百十九条 合意上ノ係争物寄託ハ寄託其事ニ付テモ係争物保管人タルヘキ者ノ選定ニ付テモ総テノ利害関係人ニ因リ承諾セラルヽコトヲ要ス 裁判上ノ係争物保管人ハ当事者カ其選定ニ付キ一致スルコトヲ得サルトキニ非サレハ裁判所ニ因リ職権ヲ以テ選定セラレス 裁判所ハ相争フ当事者ノ一人ヲ係争物保管人ニ選任スルコトヲ得 第九百二十条 合意上ナルト裁判上ナルトヲ問ハス係争物保管人ハ報酬ヲ受クルコトヲ得此場合ニ於テ係争物保管人ハ善良ナル管理者ノ通常ノ注意ヲ其物ニ加フルノ責ニ任ス 第九百二十一条 裁判上ノ係争物保管人ハ第百二十六条ニ従ヒ賃貸ヲ為スコトヲ得然レトモ合意上ノ係争物保管人ハ利害関係人ノ時特別ノ委任ニ憑ルニ非サレハ之ヲ為スコトヲ得ス 裁判上又ハ合意上ノ係争物保管人ハ其占有ヲ保存シ又ハ回復スル為メ占有ニ関スル訴権ヲ行フコトヲ得 係争物保管人ノ占有ハ当事者中確定ニ争ニ於テ勝ヲ得タル者ヲ利ス 第九百二十二条 係争物寄託ニ付セラレタル物ハ当事者中勝ヲ得タル者ニ之ヲ返還スルコトヲ要ス 然レトモ係争物保管人ハ自己ノ責任ヲ免カルヽ為メ相争フ当事者ノ許諾又ハ裁判所ノ命令ヲ求ムルコトヲ得 第九百二十三条 右ノ外真正ノ寄託ノ規則ハ合意上ノ係争物寄託及ヒ裁判上ノ係争物寄託ニ之ヲ適用ス 第九百二十四条 差押ヘラレタル物ノ裁判上ノ保管及ヒ弁済ニ提供シ債権者ノ受取ルコトヲ拒ミタル金額若クハ有価物ノ寄託即チ供託ハ民事訴訟法ニ之ヲ規定ス 第二十章 代理 第一節 代理ノ本性 第九百二十五条 代理ハ当事者ノ一方カ自己ノ名ヲ以テ且自己ノ利益ニ於テ即チ自己ノ為メ或ル事ヲ為スコトヲ他ノ一方ニ委任スル契約ナリ 若シ代理人カ自己ノ名ヲ以テスルモ常ニ委任者ノ利益ニ於テ即チ委任者ノ為メ事ヲ為スコトヲ要スルトキハ其契約ハ仲買ト称セラル 仲買ハ商法ニ之ヲ規定ス 第九百二十六条 代理ハ黙示ニテ之ヲ与ヘ及ヒ承諾スルコトヲ得 第九百二十七条 代理ハ若シ明示又ハ黙示ノ反対ノ合意アラサルトキハ無償ナリ 第九百二十八条 代理ハ一般ナリ、確定ナリ又ハ特別ナリ 一般ノ代理即チ為スヘキ所為ノ別段ナル指定ナキ代理ハ委任者ノ資産ノ管理所為ノミヲ包含ス 若シ代理カ管理又ハ所分若クハ義務負担ノ別段ニシテ且制限セラレタル本性ノ所為ノ全体ヲモ包含スルトキハ其代理ハ確定ナリ又其代理ハ或ハ原告ト為リ或ハ被告ト為リ又ハ訴訟ニ参カリテ裁判上ニテ為スヘキ若干ノ行為ヲ包含スルコトヲ得 若シ代理カ上ニ指定シタル本性ノ一箇又ハ数箇ノ成就スヘキ所為ヲ目的トスルトキハ其代理ハ特別ナリ 第九百二十九条 総テ代理ハ一般ナルト確定ナルト特別ナルトヲ問ハス其目的タル所為ヨリ必ス生スヘキ事件ヲ暗ニ包含ス 然レトモ元本ノ義務ヲ負担スルノ委任ハ其元本ハ償還スルノ委任ヲ包含セス 元本ヲ要約スルノ委任ハ其元本ノ弁済ヲ受取ルコトヲ許サス 訴訟ヲ為スノ委任ハ仲裁人ヲ撰任スルコトヲモ又請求ニ承服スルコトヲモ又ハ訴訟ヲ取下クルコトヲモ又和解スルコトヲモ許サス和解スルノ委任ハ仲裁人ニ争ヲ決セシムルコトヲ許サス又裁判所ニ争ヲ決セシムルコトヲモ許サス 又仲裁人ヲ選任スルノ委任ハ和解スルノ委任ヲ包含セス又裁判所ニ争ヲ決セシムルノ委任ヲモ包含セス 第九百三十条 代理ハ自身ニテ事ヲ為スノ能力ナキ人ニ有効ニ与ヘラルヽコトヲ得然レトモ其代理人ハ委任者ニ対シテハ無能力者ノ制限セラレタル責任ノミヲ負担ス 第九百三十一条 代理人ハ其管理所為ノ全部又ハ一分ニ付キ他人ヲシテ己レニ代ハラシムルコトヲ得但右ノ委任カ明示ニテ己レニ拒絶セラレサルトキ又ハ事務ノ本性ニ因リ其事務ヲ専ラ代理人ノミニ委託シタリト看做スヘキニ非サルトキニ限ル此場合ニ於テ代理人ハ自己ノ管理ニ於ケルカ如ク其代人ノ管理ノ責ニ任ス 若シ代理人ノ己レニ代ハラシムルコトヲ得ル人カ指定セラレタルトキハ代理人ハ指定セラレタル撰択ニ適従スル能ハサル場合ニ於テモ他人ヲ撰任スルコトヲ得ス若シ代理人カ指定セラレタル撰択ニ適従シタルトキハ代理人ハ其代人ノ無能又ハ不誠実ニ付テハ自ラ是等ノ事実ヲ知リ委任者ニ之ヲ告知シ又ハ代人ヲ解任スルコトヲ得ルノ時日アリタルニ非サレハ其責ニ任セス 禁止ニ拘ハラス代替ヲ為シ又ハ許サレタル者ニ非サル者ヲ撰択シタル場合ニ於テハ代理人ハ意外ノ事又ハ不可抗力ヨリ生スル損害ニ付テモ其責ニ任ス但右ノ代替ナケレハ損害ノ生セサルヘキトキニ限ル 第九百三十二条 前条ノ初ノ二項ニ定メタル場合ニ於テ委任者ハ代人ノ管理ニ関スル訴権ヲ直接ニ其代人ニ対シテ行フコトヲ得又同一ノ名義ニテ其代人ニ対シ直接ニ責ニ任ス 同条ノ第三項ニ定メタル反則代替ノ場合ニ於テ委任者ハ右直接訴権ト代理人ノ権利ヲ以テスル間接訴権トノ間ニ撰択ヲ有ス然レトモ直接訴権ノ行用ハ代替ノ確認ヲ帯フ 第二節 代理人ノ義務 第九百三十三条 代理カ第四節ニ列記シタル原由ノ一ニ由テ終了セサル間ハ代理人ハ明示セラレサルモ己レノ知リタル委任者ノ意思ヲモ斟酌シテ委任ノ方式及ヒ包有事項ニ従ヒ之ヲ成就スルノ責ニ任ス若シ之ニ違フトキハ損害賠償ヲ負担ス 若シ全部ノ執行ヲ為スコト能ハサルトキハ一分ノ執行ハ委任者ニ有益ナルトキニ非サレハ代理人之ヲ為スノ責ナク且之ヲ為スコトヲ得ス 第九百三十四条 若シ定マリタル代価ニテ買入ルヽノ委任ヲ受ケタル代理人カ右ノ定ヲ超ユル代価ヲ以テスルニ非サレハ物ヲ得ルコト能ハサリシトキハ代理人ハ代価ノ超過額ヲ取戻スコトヲ放棄シテ其買受ノ確認ヲ委任者ニ要求スルコトヲ得又委任者ハ自己ノ方ヨリハ代理人ノ弁済シタル代価ヲ以テ物ノ引渡ヲ要求スルコトヲ得 若シ売却スルノ委任ニ関スル場合ニ於テ代理人カ定メラレタル代価以下ニテ売却シタルトキハ代理人ハ代価ノ差額ヲ補充シテ其売却ヲ確認セシムルコトヲ得 第九百三十五条 代理人ハ委任ノ成就ニ付テハ善良ナル管理者ノ総テノ注意ヲ加フルノ責ニ任ス 然レトモ左ノ場合ニ於テハ代理人ノ過愆ハ較寛大ニ査定セラル 第一 代理人カ無償ニテ勤務ヲ為ストキ 第二 代理人カ自ラ進ミテ代理ヲ為シタルニ非サルトキ 第三 委任者カ代理人ノ不熟練ヲ知リ又ハ之ヲ推量シタルトキ 第四 代理人カ委任者ノ為メ其予期セサリシ利益ヲ生スル管理ノ或ル他ノ所為ヲ為シタルトキ 第九百三十六条 代理人ハ代理ノ終了シタルトキ及ヒ其終了ノ前ニテモ若シ委任者ヨリ管理ノ計算ヲ求メタルトキハ証拠書類ヲ添ヘテ其計算ヲ為スノ責ニ任ス 第九百三十七条 代理人ハ委任者ノ為メ又ハ自己ノ管理ニ因由シテ受取リタル総テノ金額若クハ有価物ヲ委任者ニ返還スルコトヲ要ス但其金額又ハ有価物カ正当ニ負担セラレス又ハ代理人カ之ヲ受取ルコトヲ許サレサリシトキト雖トモ亦同シ 代理人ハ己レノ収取スルコトヲ怠リ又ハ己レノ過愆ニ因テ滅失セシメタル有価物ノ額ヲ前数条ニ憑リ負担スル損害賠償ト共ニ其委任者ニ為スヘキ返還中ニ附加ス然レトモ次節ニ従ヒ委任者ヨリ受取ルヘキモノヲ減除ス 第九百三十八条 委任者ノ許諾ヲ受ケスシテ其元本ヲ自己ノ利益ニ用ヒタル代理人ハ其元本使用ノ日ヨリ当然利息ヲ負担ス但損害アリタルトキハ更ニ十分ナル賠償ヲ負担スルコトヲ妨ケス 単ニ残額タル金額ニ関シテハ代理人ハ其付遅滞ノ日ヨリ右金額ノ利息ヲ負担ス 第九百三十九条 若シ同一ノ事務ニ付キ数名ノ代理人アルトキハ其唯一ノ証書ヲ以テ設定セラレタルト別箇ノ証書ヲ以テ設定セラレタルトヲ問ハス各代理人ハ自己ノ過愆ニ付テノミ其責ニ任シ連帯カ要約セラレタルトキ又ハ過愆カ連合ノモノタルトキニ非サレハ其間ニ於テ連帯ナシ 第九百四十条 代理人ハ委任者ノ為メ其名ヲ以テ第三者ト為シタル所為ノ履行ニ付キ其第三者ニ対シテ責ニ任セス但代理人カ明示ニテ其履行ノ責ニ任シ又ハ第三者ニ対シテ己レノ有セサル権限ヲ有スルモノヽ如クニ示シタルトキハ此限ニ在ラス 第三節 委任者ノ義務 第九百四十一条 委任者ハ左ノ諸件ヲ負担ス 第一 代理人カ代理ノ執行ノ為メ支出シタル立替金及ヒ正当ノ費用ニ其支出シタル日以来ノ法律上ノ利息ヲ加ヘテ之ヲ代理人ニ弁償スルコト 第二 合意セラルヽコト有リタル給料ヲ代理人ニ弁済スルコト 第三 代理人カ其管理ニ因由シ又ハ其代理ニ関シ自己ノ過愆ナクシテ受ケタル損失又ハ損害ヲ代理人ニ賠償スルコト但予見スルコト有リタル損害ニシテ全部又ハ一分ニ付キ給料ノ約束ノ理由ト為リタルモノハ此限ニ在ラス 第四 代理人カ其管理ニ憑リ負担スルコト有リタル一身上ノ約務ノ免除又ハ賠償ヲ之ニ得セシムルコト 第九百四十二条 代理人ハ前条ニ規定シタル支出ヲ為スコトヲ自ラ約セサルトキハ之ヲ為スノ責ニ任セス然レトモ委任者ヨリ必要ナル準備ヲ供スルノ拒絶又ハ遅延ヲ証明セシメスシテ右ノ約束ナキ為メ代理ノ執行ヲ遅延スルコトヲ得ス 第九百四十三条 給料ハ代理カ全ク執行セラレタル后ニ非サレハ之ヲ負担セス但一分宛ニテ弁済スヘキ要約アリタルトキハ此限ニ在ラス 若シ全部執行カ代理人ノ責ニ帰スルコトヲ得サル原由ニ因テ妨ケラレタルトキハ給料ハ代理人ノ為シタルモノヽ割合ニ応シテ負担セラル 第九百四十四条 委任者ノ義務ノ弁償ニ至ルマテ代理人ハ代理ニ憑テ保有シ且債権者ト為ルノ原由タル物ノ留置権ヲ享有ス 第九百四十五条 若シ数人カ唯一ノ証書又ハ別箇ノ証書ヲ以テ共同事務ノ為メ代理ヲ設定シタルトキハ委任者ノ各自ハ連帯シテ前記ノ義務ヲ負担ス但反対ノ要約アルトキハ此限ニ在ラス 第九百四十六条 委任者ハ其代理人カ約定セシ第三者ニ対シ其委任ニ従ヒ委任者ノ名ニテ負担シタル総テノ約務ノ責ニ任ス 委任者左ノ場合ニ於テハ自己ノ与ヘタル権限外ニ為サレタルモノニ付テモ亦其責ニ任ス 第一 若シ委任者カ明示又黙示ニテ所為ヲ確認シタルトキ 第二 若シ委任者カ其所為ヲ利シタルトキ但其利益ノ限度ニ従フ 第三 若シ第三者カ善意ニシテ且代理人ニ権限アリト信スル正当ノ理由ヲ有シタルトキ 第四節 代理ノ絶止 第九百四十七条 代理ノ執行又ハ之ヲ執行スルノ不能及ヒ其代理ニ付スルコト有リタル期限又ハ条件ノ成就ノ外尚ホ代理ハ左ノ諸件ニ因リ了終ス 第一 委任者ノ為シタル廃罷 第二 代理人ノ放棄 第三 委任者又ハ代理人ノ死亡、破産、倒産、若クハ禁治産 第四 代理ヲ付与シ又ハ之ヲ受諾シタル資格ノ其代理人又ハ委任者ノ身ニ於ケル絶止 第九百四十八条 委任者ノ唯一ノ利益ニ於テ設ケタル代理ノ廃罷ハ給料ヲ約シタルトキト雖モ委任者何時ニテモ自己ノ意ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得 第九百四十九条 廃罷ハ将来ニ向テノミ成リ其廃罷ニ至ルマテ有効ニ為シタルモノヲ害セス 第九百五十条 若シ数名ノ委任者アルトキハ其中一人ノ為シタル廃罷ハ他ノ者ノ代理ヲ了終セス 第九百五十一条 代理ノ廃罷ハ黙示タルコトヲ得ルモノニシテ或ハ同一ノ事務ニ付キ新代理人ノ設定或ハ委任者其管理ノ回復又ハ総テ其他ノ情況ヨリ生スルコトヲ得 第九百五十二条 代理人ノ代理ノ放棄ハ若シ其放棄カ委任者ヲ害スヘキトキハ委任者ノ為メ賠償ヲ生ス正当又ハ必要ノ原由ニ基キタル場合ハ此限ニ在ラス 其放棄ハ亦黙示ニテ之ヲ為スコトヲ得 第九百五十三条 代理ヲ了終スル原由ハ委任者ヨリ出テタルト代理人ノ方ヨリ出テタルトヲ問ハス当事者ノ間ニ互ニ告知セラレ又ハ其他確実ナル方法ニテ知ラレタルトキニ非サレハ其当事者ノ間ニ於テ互ニ之ヲ対抗スルコトヲ得ス 当事者中一人ノ死亡シタル場合ニ於テハ其相続人ニ対シ又ハ其相続人ヨリ告知ヲ為スコトヲ要ス 第九百五十四条 右ニ同シキ代理絶止ノ原由ハ委任者カ代理人ノ手裏ヨリ委任状ヲ取戻シタルトキト雖トモ右代理ノ絶止后善意ニテ其代理人ト約定シタル第三者ニ之ヲ対抗スルコトヲ得ス 第九百五十五条 代理カ上ニ指定シタル原由ノ一ニ因リ了終シタルトキハ代理人又ハ其相続人ハ委任者又ハ其相続人カ其己ニ起生シタル利益ヲ自ラ処理シ又ハ新代理人ヲシテ之ヲ処理セシムルコトヲ得ルニ至ルマテ其利益ヲ処理スルコトヲ要ス 此条例ハ代理ノ絶止カ委任者ニ因レル廃罷ニ出ツルトキヨリモ代理人ノ放棄ニ出ツルトキハ一層厳ニ之ヲ適用ス 第二十一章 雇使及ヒ工作又ハ工業ノ賃貸 第一節 雇使ノ賃貸 第九百五十六条 使用人、番頭又ハ手代主人ノ身ニ随侍シ又ハ其家ニ奉仕スル僕婢、労力者又ハ日雇人及農業又ハ工業ノ職工ハ年、月又ハ日ヲ以テ定メタル賃銀又ハ給料ヲ受ケテ其雇使ヲ賃貸スルコトヲ得 右ノ場合ニ於テ賃貸ハ其地ノ慣習ニ因リ定マリタル時期又確定ノ慣習ナキトキハ総テノ時期ニ於テ双方中孰レヨリモ予メ与ヘタル解雇申入ニ因リ了終セサル間ハ継続ス但其解雇申入ハ不利ノ時期ニ於テ為サス又悪意ニ出テサルコトヲ要ス 第九百五十七条 是等ノ者ノ雇使ノ賃貸ハ亦使用人及ヒ僕婢ニ付テハ五ケ年又職工及ヒ労役者又ハ日雇人ニ付テハ一ケ年ヲ超ユルコトヲ得サル定期ニ付キ之ヲ為スコトヲ得但徒弟契約ニ関シ下ニ記載スルモノヲ妨ケス 一層長キ約務ヲ為シタル場合ニ於テハ当事者中一方ノ意ニ従ヒ其時期ニ短縮ス但同一ノ期間ニ付キ無限ノ更新ヲ為スノ権能ヲ妨ケス 第九百五十八条 雇使ノ賃貸カ定期ニ付キ為サレタルトキト雖モ其賃貸ハ或ハ当事者中一方ノ義務不履行ノ為メノ解除ニ因リ或ハ双方中一方ニ出テタル正当ニシテ且已ムヲ得スト認メラレタル原由ノ為メ其定期前ニ了終スルコトヲ得 総テノ場合ニ於テ主人ノ死亡ハ其身ニ対スル雇使ノ賃貸ヲ当然了終セシム 第九百五十九条 若シ雇使ノ賃貸ヲ了終セシムル正当ノ原由カ主人又ハ工長ノ一身ニ起リテ地方ノ慣習ニ従ヒ雇使ノ賃貸主カ新約務ヲ契約シ難キ年ノ季節ニ生シタルトキハ裁判所ハ情況ニ従ヒ定メタル償金ヲ其賃貸主ニ付与ス 第九百六十条 総テノ場合ニ於テ雇使ヲ供給スル者ノ死亡ハ契約ヲ了終セシム但其相続人ハ給料又ハ賃銀ノ中ニテ未タ経過セサル時期ニ付キ払ハレタルモノヲ返還ス 第九百六十一条 前記ノ規則ハ俳優音楽師、蹈舞師、角力者又ハ幼技師ト演劇、観物及ヒ其他公衆ノ観覧ニ供スル遊戯ノ興行者トノ間ニ為シタル賃貸ニ之ヲ適用ス 此規則ハ亦撃剣、武芸、工技又ハ工芸ノ授業者又ハ教師及ヒ獣医ニ之ヲ適用ス 第九百六十二条 医師、代言人、学術、文学及ヒ美術又ハ心芸ノ教師ハ其労務ヲ賃貸セス是等ノ者ハ其患者、訴訟人又ハ生徒ニ与フルコトヲ約シ若クハ与ヘ始メル世話ヲ与ヘ又ハ継続スルコトニ付キ民事上責ニ任セス又患者、訴訟人又ハ生徒ハ是等ノ者ノ世話又ハ労務ヲ求メテ其約諾ヲ得タル後其世話又ハ労務ヲ受クルノ責ニ任セス 然レトモ若シ世話又ハ労務ノ全部又ハ一分ニ於テ実際与ヘラレ又ハ供セラレタルトキハ其ノ互相ノ分限ト慣習及ヒ合意トヲ商量シテ其謝金又ハ報酬ヲ裁判上ニテ要求スルコトヲ得 是等ノ者ニ世話又ハ労務ヲ約セシメタル当事者ノ一方カ正当ノ原由ナクシテ之ヲ受クルコトヲ拒絶シタルトキハ若シ其拒絶ヨリ他ノ一方ノ為メ金銭上ノ損害ヲ生スルトキハ之ニ対シ賠償ノ言渡ヲ受ク 之ニ反シテ世話又ハ労務ヲ約シタル後正当ノ原由ナクシテ之ヲ拒絶シタル者ハ因テ加ヘタル損害ヲ補償スルノ言渡ヲ受ク 第二節 徒弟契約 第九百六十三条 工業人、工匠又ハ商人ハ「徒弟契約」ト称スル特別ノ契約ヲ以テ男女ノ徒弟ニ自己ノ工技又ハ職業ノ知識ト実験トヲ教ユルコトヲ約スルコトヲ得又徒弟ハ自己ノ方ニ於テ是等ノ者ノ労働ニ付キ之ヲ助クルコトヲ約ス 未成年ノ徒弟ハ其父、後見人又ハ其他総テ自己ニ対シ権力ヲ有スル人ニ輔佐セラレ又ハ代理セラレスシテ徒弟契約ヲ為スコトヲ得ス 第九百六十四条 合式ニ輔佐セラレタル未成年者又ハ其代人ノ為シタル徒弟約務ハ其未成年ノ時期ヲ超ユルコトヲ得ス但成年ニ達シタル徒弟ノ之ヲ更新シ又ハ伸長スルコトヲ妨ケス 第九百六十五条 徒弟契約ハ当事者互相ノ義務ノ本性及ヒ広狭ヲ規定ス 徒弟契約ニ缺ケタルモノハ主人又ハ工長カ其職業ヲ行フ地方ノ慣習ニ従ヒテ補ハルヽコトヲ得 第九百六十六条 主人又ハ工長ハ反対ノ要約又ハ地方慣習ナキトキハ徒弟ニ住居、食料、扶持及ヒ職業ノ器具又ハ機械ヲ供給スルコトヲ要ス 又主人又ハ工長ハ徒弟ニ其徒弟契約ノ目的タル工技又ハ職業ヲ学フコトヲ得セシムル為メニ必要ナル時間、世話及ヒ総テノ便利ヲ与フルコトヲ要ス 若シ未成年ノ徒弟カ未タ読書筆算ヲ知ラサルトキハ工長ハ何等ノ反対ノ合意アルニモ拘ハラス徒弟ニ其習業ノ為メ休憩時間外ニテ毎日少ナクトモ一時間ヲ与フルコトヲ要ス 第九百六十七条 又徒弟ハ其総テノ時間ト其学ハント欲スル工技又ハ職業ニ関スル労役ヲ工長ニ供スルコトヲ要ス 第九百六十八条 若シ徒弟カ疾病又ハ其他自身又ハ自身ノ方ニ於テ生スル不可抗ノ原由ニ因リ一ケ月以上引続キテ其労役ヲ供スル能ハサルコト一回又ハ数回ニ及ヒタルトキハ徒弟ハ其成年ニ達シタル後ト雖モ徒弟契約ノ期限満了ノ後以前ニ同シキ互相ノ条件ヲ以テ休業セシ時間タケ其労役ヲ伸長スルコトヲ要ス 第九百六十九条 徒弟契約ハ左ノ諸件ニ因リ当然了終ス 第一 工長又ハ徒弟ノ死亡 第二 工長又ハ徒弟ノ陸海軍ノ服役 第三 三个月以上ノ禁錮ヲ惹起スル重罪又ハ軽罪ノ為メ工長又ハ徒弟ノ処刑言渡 第四 合意又ハ法律ヲ以テ定メタル期限ノ満了 第九百七十条 左ノ原由アルトキハ契約ノ解除ハ利害関係人ノ請求ニ因リ裁判上ニテ宣告セラルヽコトヲ得 第一 不可抗ノ原由ニ因ルモ互相ノ義務ノ不履行 第二 徒弟ニ対スル工長ノ苛酷ナル取扱 第三 徒弟ノ平常ノ不品行 第四 前条ニ定メタル場合ノ外工長又ハ徒弟ノ犯罪 第五 合意ヲ履行スヘキ府県外ニ工長ノ転居 本条ニ憑リ解除ノ宣告ヲ受ケタル当事者ノ一方ハ若シ自己ノ方ニ於テ過愆アルトキハ他ノ一方ニ対シ亦損害賠償ノ言渡ヲ受ク前条ニ定メタル処刑言渡ノ場合ニ於テモ亦同シ 第四節 工作又ハ工業ノ賃貸 第九百八十一条 一個人カ或ハ仕事ノ全部ニ付キ或ハ其各部分又ハ各尺度ニ付予定代価即チ請負ニテ工業又ハ手工ノ定マリタル仕事ヲ為スコトニ任シタルトキハ其合意ハ若シ仕事ヲ託シタル者ヨリ主タル材料ヲ供シタルトキハ工作又ハ工業ノ賃貸ナリ若シ又製造人又ハ職工ヨリ主タル材料ト仕事トヲ供スルトキハ仕事ヲ為ス可キ条件ノ附キタル売買ナリ 第九百八十二条 前条ニ定メタル二箇ノ場合ニ於テ若シ全部又ハ一分ニ付キ既ニ仕事ノ為サレタル物ガ意外ノ事又ハ不可抗力ニ因リ滅失シタルトキハ材料ノ滅失ハ其材料ノ属スル者之ヲ負担シ職工ハ仕事賃ヲ失フ但他ノ一方カ仕事ヲ調査シ且之ヲ受取ルノ遅滞ニ在リタルトキハ此限ニ在ラス 若シ当事者ノ一方カ滅失ノ原由ヲ成シ又ハ引渡若クハ調査ニ付キ遅滞ニ在ルトキハ其一方ノミカ材料及ヒ手間ニ付キ其滅失ヲ負担ス但更ニ大ナル損害アルトキハ之カ賠償ヲ妨ケス 職工ヨリ材料ヲ供シタルトキハ一分ノ滅失又ハ単一ナル毀損ハ若シ其滅失又ハ毀損カ物ニ価額ノ半ヨリ多クヲ失ハシムルトキハ之ヲ全部ノ滅失ト同視ス若シ又減価カ半ヨリ少ナキトキハ第百五十八条第四百三十九条第三項及ヒ第四百四十条ヲ適用ス 若シ注文者ヨリ材料ヲ供シタルトキハ其注文者ハ存在スル材料ノ部分カ増価シタル限度ヲ以テ仕事賃ヲ弁済スルノ責ニ任ス 第九百八十三条 注文者ヨリ材料ヲ供シタル場合ニ於テハ引渡ハ仕事完成ノ後ニ非サレハ実行セラレサル可キトキト雖モ一分ニ付キ二作ノ調査セラレ且受取ラルヽコトヲ合意スルコトヲ得此場合ニ於テ若シ注文者カ既成ノ仕事ヲ調査シテ受取リ又ハ之ヲ調査スルノ遅滞ニ在ルトキハ職工ハ其既成ノ仕事ノ危険ヲ免カル 仕事中ニ注文者ヨリ前金又ハ内金ヲ供シタリト雖モ之ヲ以テ既成ノ仕事ヲ受取リタリト看做サス然レトモ若シ物カ注文者ノ明確ナル受取又ハ其付遅滞ノ前ニ滅失シタルトキハ注文者ハ為サレタル仕事ヲ超ユルモノヽ為メニ非サレハ前金又ハ内金ヲ取戻スコトヲ得ス 第九百八十四条 注文者留保ナクシテ工作物ヲ受取リタリト雖モ若シ注文者カ後日物ヲ其物ノ供シタル使用ニ不適当ト為ラシムル不表見ノ瑕疵ヲ発見スルトキハ注文者ハ其受諾ヲ取消シテ代価ノ減殺又ハ一分ノ返還ヲ請求スルノ権利ヲ失ハス 此権利ニ基キタル要求訴権ハ注文者ニ属スル動産又ハ不動産ニ付キ為シタル仕事ニ関スルトキハ全部ノ工作物受取ノ後三ケ月ニテ消滅ス 職工ヨリ材料ヲ供シタル製作物ニ関シテハ第七百四十六条ヲ適用ス 第九百八十五条 建物、屋根、墻壁、露台、堤又ハ其他地上ニ為シタル右ニ類似ノ大工作物ノ請負ニテ為ス製造ニ関シテハ其工事ヲ指揮シ又ハ為シタル工匠又ハ請負人ハ築造ノ瑕疵又ハ土地ノ瑕疵ヨリ生シタル右工作物ノ全部若クハ一分ノ滅失又ハ重大ナル損壊ノ責ニ任ス但請負人カ他人ノ土地ニ築造シタルト自己ノ土地ニ築造シタルト材料ヲ供シタルト之ヲ供セサリシトヲ区別セス 右責任ノ継続期ハ左ノ如シ 墻壁、露台及ヒ木、石又ハ瓦ヲ附従トシテ用ヰタル其他ノ土工ニ付テハ其受取後二个年 木材カ主タル材料タル建物ニ付テハ五个年 石又ハ煉瓦ノ建物及ヒ倉又ハ土蔵ニ付テハ十个年 第九百八十六条 右ノ責任ニ基ク賠償ノ訴権ハ左ノ時期ヲ以テ時効ニ係ル 物ノ全部滅失ノ場合ニ於テハ其滅失ノ時ヨリ一个年 一分滅失又ハ損壊ノ場合ニ於テハ請負人ノ責ニ任ス可キ期間ノ満了ノ時ヨリ六个月 第九百八十七条 若シ原図劃ノ変更ヨリ生スル代価ノ増額又ハ減額ヲ書面ヲ以テ定メサルトキハ其図劃ノ変更ヲ口実トシテ工匠又ハ請負人ハ合意セラレタル代価ノ増額ヲ請求スルコトヲ得ス又注文者ハ其減額ヲ請求スルコトヲ得ス 若シ請負中ニ包含セラレタル建築ト全ク異別ナル建築ノ増加又ハ合意セラレタル工事中分別シタル部分ノ廃止アリタルトキハ此条例ヲ適用セス此場合ニ於テ当事者間ニ一致ナキトキハ裁判所ハ原代価ノ増減ヲ定ム 請負人ハ原図劃又ハ変更セラレタル図劃カ注文者ヨリ命セラレタルヲ口実トシテ亦第九百八十五条ニ定メタル責任ヲ免カルヽコトヲ得ス但請負人カ書面ヲ以テ右ニ関スル責任ノ免除ヲ得タルトキハ此限ニ在ラス 第九百八十八条 請負人カ仕事ノミヲ供スルト材料ヲ併セ供スルトヲ問ハス注文者又ハ其相続人ハ常ニ自己ノ意ノミヲ以テ契約ヲ銷除スルコトヲ得然レトモ請負人ノ既ニ為シタル仕事ト其準備シタル材料ニ付キ受ケタル損失ト其他ノ損害トヲ請負人ニ賠償シ且請負人ノ其契約ヨリ得ヘキ正当利益ノ全部ヲ之ニ弁済スルノ義務ヲ負担ス 第九百八十九条 契約ヲ銷除シタルト又ハ他人ノ材料ノ全部若クハ一分ヲ以テ仕事ヲ為シタルトヲ問ハス請負人又ハ職工ハ仕事ノ為メ又ハ銷除ノ賠償ノ為メ自己ノ受ク可キモノヽ皆済ニ至ルマテ其材料ヲ留置スルコトヲ得 此留置権ハ動産物ノミニ之ヲ適用ス 第九百九十条 注文者カ請負人其者ノ仕事ヲ主眼トシテ契約ヲ為シタルトキハ其契約ハ請負人ノ死亡又ハ其仕事ヲ為スノ不能ニ因テ解除セラル 右二個ノ場合ニ於テ注文者ハ請負人又ハ其相続人ニ対シ自己ノ企図シタル目的ニ付キ利シタル仕事又ハ材料ノ価額ヲ弁済スルノ責ニ任ス 第九百九十一条 仕事ノ一部分ヲ為スコトヲ任シタル下請負人ハ其主タル請負人トノ各別ナル関係ニ付テハ前記ノ規則ニ従フ 主タル請負人カ下請負人ニ負担スルモノヲ弁済セサルトキハ下請負人ハ注文者カ尚ホ請負人ニ対シテ債務者タル限度ニ於テ注文者ニ対シ自己ノ名ヲ以テ直接ニ訴ヲ起スコトヲ得 尋常職工ハ己レヲ雇ヒタル者カ給料ヲ弁済セサルトキハ注文者ニ対シテ右同一ノ権利ヲ有ス 第二十三章 畜類ノ賃貸 本章全部刪除ノ意見ナリ其理由ハ原按者本章ヲ以テ民法草案中ニ編纂セシハ羅馬以下施行シ来リ大ニ国益アリト云フニ在ルカ如シ然レトモ今本邦民法ニ規定セラルヽアラハ人ヲシテ頗ル奇異ノ思ヲ懐カシムルノミナラス古来未曽有ノ事ナレハ更ニ民法中ニ編纂スルノ必要ヲ感セサルナリ若シ将来必要アルニ至ラハ特別法ヲ以テ規定スヘシ已ニ本邦古来最多キヲ占ムル田畑小作条例ノ如キモ草案中ニ規定セス且特別法ニ規定スルヲ以テ穏当ナリト思考ス 又本章刪除ノ意ナリト雖モ若シ於議場採用セラレサル時ハ必要ト思考スルニ依リ第九百九十二条以下逐条修正案ヲ付セリ 又第九百九十二条註釈ニ本案ノ主義ニ於テハ畜借ハ物ノ賃借ト著シク即主即チ畜借人ニ物権即チ賃借物上ニ付若クハ賃借物ニ於テ権利ヲ付与ストアリ然レハ畜類ノ賃貸借モ物上権ナリトノ趣旨ナリトス然ルニ賃借ノ章ニ動産タルト不動産タルトヲ問ハス有体物ノ賃借人ヨリ賃貸人ニ定期ニ金額又ハ其他ノ有価物云々トノミアリテ畜類ノ如キ賃貸借ヲ包含スト云フヲ得ス 故ニ畜類ノ賃貸借ヲ以テ物上権ナリトセハ之レカ明文ヲ置カサルヘカラス因ニ原案者中ニ質問セシニ付キ其返答ヲ待ツテ報告スヘシ 第一節 単純ナル畜類ノ賃貸 第九百九十二条 単純ナル家畜ノ賃貸ハ大小ノ畜類馬又ハ其他家畜ノ賃貸ニシテ此ニ因リテ賃借人カ其畜類ノ産物ノ一部分ヲ得テ其畜類ノ群又ハ若干頭ヲ保持シ飼養シ及ヒ世話スルノ責ニ任スルモノナリ 特別ナル合意アラサルトキハ賃借人ハ産子並ニ絨毛ノ半及ヒ乳、卵、肥料並ニ畜類使役ノ全部ヲ有ス 第九百九十三条 賃借人ハ畜類ノ全部又ハ一分ノ滅失カ直接又ハ間接ニ自己ノ過愆ヨリ生シタルトキニ非サレハ其滅失ヲ負担セス 賃借人ハ意外ノ事又ハ不可抗力ノ災害ノ責ニ任スルコトヲ得ス 借畜ニ付シタル評価ハ若シ賃借人カ後日借畜ニ意外ノ減価アリタルコトヲ証明セサルトキハ賃借人ノ責任ヲ定ムルノ基礎ト為ル 右同一ノ場合ニ於テ賃貸人ハ全部滅失ノ後借畜ニ生シタル増価ヲ申立ツルコトヲ得ス 第九百九十四条 賃借人ハ斃死シタル又ハ用ヲ為サヽルノ畜類ヲ補ヒタル後ニ残ル所ノモノニ非サレハ産子ノ派分ヲ請求スルコトヲ得ス 又賃借人ハ賃貸人ニ予告シタル後ニ非サレハ絨毛ヲ剪取スルコトヲ得ス 第九百九十五条 当事者カ期限ヲ定メサリシ畜類ノ賃貸ハ一个年間継続ス 若シ更ニ長キ期間ノ定アルトキハ賃借人ハ一个年後ニ其賃借ヲ放棄スルコトヲ得但賃貸人カ新賃借人ヲ発見スルニ足ル可キ時間ヲ存シテ予メ之ニ告知スルコトヲ要ス 賃借ノ継続ニ付キ期限ノ定アルト否トヲ問ハス若シ賃借人カ其賃借ノ適正ニ了終スルコト有ル可キ時期後尚ホ引続テ借畜ヲ占有スルトキハ更ニ一个年ノ時期ニ付キ黙示ノ更新アリ 第九百九十六条 若シ賃借人カ他ノ所有者ニ属スル耕地ノ小作人ナルトキハ其土地所有者ハ若シ畜類カ小作人ニ属セサリシコトヲ其賃貸ノ時ニ知ラサリシトキハ借地賃ノ弁済ノ為メ畜類ヲ差押フルコトヲ得 第二節 小作人又ハ分収小作人ニ為シタル畜類ノ賃貸 第九百九十七条 小作又ハ分収小作ニ於ケル耕地ノ賃貸人カ其小作人又ハ分収小作人ニ其利用ノ一分ヲ為スモノトシテ馬又ハ家畜ヲ交付シタルトキハ其畜類ノ賃貸ハ主タル賃貸ノ附従ニシテ之ト同一ノ継続期ヲ有ス然レトモ其他ニ付テハ下ノ例外ヲ除キ前節ノ規則ニ従フ 第九百九十八条 小作人ハ右畜類ノ総テノ産物ヲ有ス但斃死シタル又ハ用ヲ為サヽル畜類ヲ毎年産子ヲ以テ補フコトヲ要ス 又小作人ハ明示ノ合意ヲ以テ意外ノ滅失ヲ自己ノ負担ト為スコトヲ得 第九百九十九条 分収小作人ハ乳汁ノ全部ヲ有ス然レトモ産子及絨毛ハ土地ノ果実ニ於テ有スルト同一ノ部分ノミヲ有ス但総テ之ニ異ナリタル合意ヲ妨ケス 分収小作人ハ畜類ノ意外ノ滅失ヲ自己ノ負担ト為スコトヲ得ス 総テノ場合ニ於テ畜類ノ肥料及ヒ使役ハ専ラ之ヲ借地ニ用ユルコトヲ要ス 第三節 共通即チ会社ニ於ケル畜類ノ賃貸 第千条 第九百九十二条ニ記載シタル本性ノ畜類ノ所有者ハ均等又ハ不均等ノ出資ヲ為シテ共通元資ヲ成シ其中ノ一人ニ飼養保持及世話ヲ委スルコトヲ得 産子及絨毛ハ出資ノ割合ニ応シテ派分セラル 畜類ノ乳汁、肥料及ヒ使役ハ其保持ニ任スル者ノミヲ利ス 意外ノ事又ハ不可抗力ニ因ル滅失ハ右ニ等シキ割合ヲ以テ各自之ヲ負担ス 其他単純ナル畜類ノ賃貸ノ規則ハ会社ニ於ケル畜類ノ賃貸ニ之ヲ適用ス